JP4164517B2 - 耐応力緩和特性に優れた銅合金板およびその製造方法 - Google Patents

耐応力緩和特性に優れた銅合金板およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、耐応力緩和特性に優れた銅合金板およびその製造方法に関し、特に自動車用端子・コネクタなどの接続部品用として適する耐応力緩和特性に優れた銅合金板およびその製造方法に関する。
近年の自動車用端子・コネクタなどの接続部品には、エンジンルームのような高温環境下で信頼性を確保できる性能が求められるようになっている。この高温環境下での信頼性において最も重要な特性のひとつは、接点嵌合力の維持特性、いわゆる耐応力緩和特性である。すなわち銅合金からなるばね形状部品に定常の変位を与えた場合、例えばオス端子のタブをメス端子のばね形状をした接点で嵌合しているような場合、これらの接続部品がエンジンルームのような高温環境下に保持されていると、経時とともにその接点嵌合力を失っていくが、耐応力緩和特性とは、これに対する抵抗特性である。
耐応力緩和特性に優れる銅合金としては、従来から、Cu−Ni−Si系合金、Cu−Ti系合金、Cu−Be系合金などが広く知られている。これらはいずれも強酸化性元素(Si、Ti、Beなど)を含有するため、大気中への開口部が広く開いた大規模溶解炉では溶解できず、生産性の面から高コストは避けられない。
これに対し、添加元素量が比較的少ないCu−Ni−Sn−P系合金は、いわゆるシャフト炉造塊が可能で、その高生産性ゆえに大幅な低コスト化が可能である。このCu−Ni−Sn−P系合金でも、耐応力緩和特性の向上策などが、従来から種々提案されている。
例えば、下記特許文献1には、耐応力緩和特性に優れたコネクタ用銅基合金の製造方法が開示されている。この製造方法は、Cu−Ni−Sn−P系合金について、マトリックス中にNi−P金属間化合物を均一微細に分散させ、電気伝導度を向上させると同時に耐応力緩和特性等を向上させたものであり、同文献によれば、所望の特性を得るためには、熱間圧延の冷却開始、終了温度、その冷却速度、さらにはその後の冷間圧延工程途中で施す5〜720分の熱処理の温度と時間とを厳密に制御する必要がある。
また、下記特許文献2、3には、耐応力緩和特性に優れたCu−Ni−Sn−P合金及びその製造方法として、なるべくP含有量を下げて、Ni−P化合物の析出を抑えた固溶型銅合金とすることが開示されている。これによれば、高度な熱処理技術を必要とせず、きわめて短時間の焼鈍熱処理で製造可能であるという利点がある。
特許第2844120号公報 特開平11−293367号公報 特開2002−294368号公報
社団法人自動車技術会の規格JASO−C400では、耐応力緩和特性に関して、150℃×1000hr保持後の応力緩和率が15%以下と定めている。図1(a)、(b)に、耐応力緩和特性の試験装置を示す。この試験装置を用い、短冊状に切り出した試験片1の一端を剛体試験台2に固定し、他端を片持ち梁式に持ち上げて反らせ(反りの大きさd)、これを所定の温度及び時間で保持した後、室温下で除荷し、除荷後の反りの大きさ(永久歪み)をδとして求める。応力緩和率(RS)は、RS=(δ/d)×100で表される。
銅合金板の応力緩和率には異方性があり、試験片の長手方向が銅合金板の圧延方向に対しどの方向を向いているかによって異なった値となる。一般的に、圧延方向に対し平行方向の方が直角方向より応力緩和率は小さい。しかし、前記JASO規格では、この方向についての規定がなく、そのため、従来は、圧延方向に対し平行方向か直角方向のいずれか一方について、15%以下の応力緩和率が達成されていればよいとされている。しかし、近年では、銅合金板は、その圧延方向に対して直角方向に、高い耐応力緩和特性を有することが望ましいとされている。
図2に代表的な箱形コネクタ(メス端子3)の断面構造を示す。図2において、上側ホルダー部4に押圧片5が片持ち支持され、オス端子6が挿入されると押圧片5が弾性変形し、その反力によりオス端子6が固定される。なお、図2において、7はワイヤ接続部、8は固定用舌片である。ここにおいて、銅合金板をプレス加工してメス端子3を製造する場合、メス端子3の長手方向(押圧片5の長手方向)が圧延方向に対し直角方向を向くように板取りされる。押圧片5において特に高い耐応力緩和特性が要求されるのは、押圧片5の長さ方向への曲げ(弾性変形)に対してである。したがって、銅合金板には、その圧延方向に対して直角方向に、高い耐応力緩和特性を有することが要求される。
これに対して、前記特許文献2、3に開示された固溶型銅合金では、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性は、圧延方向に対して平行方向にはほぼ達成されているが、直角方向にはいまだ達成されていない。
そのため、ユーザー側から、この種の固溶型銅合金に関して、圧延方向に対し平行方向よりも、圧延方向に対して直角方向に、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が求められるようになっている。
これらの点に鑑み、本発明は、Cu−Ni−Sn−P系合金について、圧延方向に対して直角方向に、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性を達成することを目的とする。
この目的を達成するための、本発明耐応力緩和特性に優れた銅合金の要旨は、質量%で、Ni:0.1〜3.0%、Sn:0.01〜3.0%、P:0.01〜0.3%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなり、不純物としてのSiを0.1%以下(但し0.1%を除く)に規制した、銅合金であって、下記抽出残渣法により目開きサイズ0.1μm のフィルター上に抽出分離された抽出残渣における下記Ni量が、前記銅合金中のNi含有量に対する割合で40%以下とする。
ここで、上記抽出残渣法は、10質量%の酢酸アンモニウム濃度のメタノール溶液300mlに、10gの前記銅合金を浸漬し、この銅合金を陽極とする一方、白金を陰極として用いて、電流密度10mmA/cm2 で定電流電解を行い、この銅合金を溶解させた前記溶液を、目開きサイズ0.1μm のポリカーボネート製メンブレンフィルターによって吸引ろ過し、このフィルター上に未溶解物残渣を分離抽出するものとする。
また、上記抽出残渣中の上記Ni量は、前記フィルター上の未溶解物残渣を王水と水とを1対1の割合で混合した溶液によって溶解した後に、ICP発光分光法によって分析して求めるものとする。
更に、上記目的を達成するための、本発明耐応力緩和特性に優れた銅合金板の製造方法の要旨は、上記要旨乃至後述する好ましい態様の銅合金の板を製造する方法であって、銅合金の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼鈍により銅合金板を得るに際し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内とし、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱間圧延終了までの所要時間を1200秒以下とする。
本発明によれば、Cu−Ni−Sn−P系の銅合金において、圧延方向に対して直角方向に、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性を達成することができる。また、曲げ特性に優れ、および強度(約480MPa以上の耐力)にも優れるなど、端子・コネクタ用として優れた特性を有する銅合金を得ることができる。
本発明者らは、前記した従来のNi−P化合物の析出を抑えた固溶型銅合金において、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が、圧延方向に対して平行方向にはほぼ達成されているが、直角方向にはいまだ達成されていない理由について検討した。
この結果、一定サイズ以上の粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物を抑制してやれば、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が、圧延方向に対して直角方向に達成されることを知見した。
即ち、この一定サイズ以上の粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物とは、上記本発明要旨における、目開きサイズ0.1μm のフィルター上に抽出分離された抽出残渣におけるNi量に相当する。この抽出残渣におけるNi量を上記本発明要旨のように、前記銅合金中のNi含有量に対する割合で40%以下と抑制してやれば、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が、圧延方向に対して直角方向に達成される。また、同時に、曲げ特性、および強度にも優れさせることができる。
また、このように、0.1μm を越える一定サイズ以上の粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物などのNi化合物(Ni生成物)を抑制すれば、一方で、0.1μm 以下の微細なNi化合物(ナノレベル以下の微細なNiのクラスターを含む)などの量や、Niの固溶量を確保できることに繋がる。なお、Niのクラスターとは、原子構造レベルでの、結晶化する前の原子の集団を言う。
前記した特許文献1のような、Cu−Ni−Sn−P系合金マトリックス中にNi−P金属間化合物の均一微細分散だけでは、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性を向上できず、上記0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量を確保する必要がある。ただ、これら0.1μm 以下の微細なNi化合物やNiの固溶量自体は直接測定することができない。
これに対して、本発明では、上記0.1μm を越える粗大なNi化合物を抑制することで、間接的に、これら0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が確保することが特徴的である。
本発明で、上記0.1μm を越える粗大なNi化合物を抑制するとともに、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量を確保するためには、常法とは異なる製造条件が必要となる。即ち、上記本発明銅合金板の製造方法の要旨の通り、銅合金の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼鈍により銅合金板を得るに際し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの短時間化と、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱間圧延終了までの短時間化が必要である。
一般的なこの種銅合金板の製造工程においては、これらの所要時間が長時間化しやすい。このため、添加されたNi含有量の大部分が、溶解・鋳造時に生じた酸化物、晶出物、および鋳塊の均熱から熱延終了までに生じた粗大析出物に取られてしまい、添加されたNi含有量に応じて生成すべき0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が意外に少なくなってしまう。
通常、一般的なこの種銅合金板の製造工程においては、熱間圧延、そして冷間圧延と焼鈍の繰り返しにより最終(製品)板を得て、主に冷延条件、焼鈍条件により、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量を制御する。その際、ほどよく分散した金属間化合物への、Ni等の合金元素の拡散が、Ni等の固溶量および微細生成物の析出量を安定化させ、これによって強度レベル等の機械的特性の制御をなそうとする。
しかし、これら一般的な製造工程においては、上記して通り、前段の工程において、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量の絶対量が少なくなっている、このため、熱延以降の冷延条件、焼鈍条件により、前記微細生成物を多く析出させようとしても、0.1μm 以下の微細なNi化合物やNiの固溶量の絶対量が不足し、強度と耐応力緩和特性を向上させることは困難であった。
更に、上記粗大な酸化物、晶出物、および析出物(Ni化合物)が多い場合、冷延、焼鈍工程で析出した微細生成物は、この粗大生成物にトラップされてしまい、マトリックス中に独立して存在する微細生成物はますます少なくなる。このため、前記した一般的な製造方法では、Niの添加量が多い割には、十分な強度と優れた耐応力緩和特性を得ることができなかった。
これに対して、本発明では、上記0.1μm を越える粗大なNi化合物を抑制することで、必要な(有用な)0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が確保できる。この結果、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が、圧延方向に対して直角方向に達成される。また、同時に、曲げ特性、および強度にも優れさせることができる。
(銅合金成分組成)
先ず、本発明銅合金の成分組成につき、以下に説明する。本発明では、銅合金の成分組成を、前提として、前記した通り、シャフト炉造塊が可能で、その高生産性ゆえに大幅な低コスト化が可能なCu−Ni−Sn−P系合金とする。
そして、自動車用端子・コネクタなどの接続部品として要求される、圧延方向に対して直角方向の高い耐応力緩和特性と、同時に、曲げ特性、および強度にも優れさせるために、基本的に、Ni:0.1〜3.0%、Sn:0.01〜3.0%、P:0.01〜0.3%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金とする。なお、各元素の含有量の%表示は、全て質量%の意味である。以下に銅合金の合金元素につき、その添加理由や抑制理由について説明する。
(Ni)
Niは、Pとの微細な析出物を形成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.1%未満の含有では、最適な本発明製造方法によっても、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量の絶対量が不足する。このため、Niの効果を有効に発揮させるには、0.1%以上の含有が必要である。
但し、3.0%を超えて過剰に含有させると、Niの酸化物、晶出物、析出物などの化合物が粗大化、あるいは粗大なNi化合物が増大して、上記抽出残渣におけるNi量を銅合金中のNi含有量に対する割合で40%以下とできない。この結果、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が低下する。また、これらの粗大化したNi化合物は、破壊の起点となるため、強度や耐応力緩和特性だけでなく、曲げ加工性も低下する。したがって、Niの含有量は0.1〜3.0%の範囲とする。好ましくは、0.3〜2.0%の範囲とする。
(Sn)
Snは、銅合金中に固溶して強度を向上させる。さらに、Sn系析出物は焼鈍中の再結晶による軟化を抑制する。但し、本発明に係る銅合金において、Sn系析出物を積極的に生成させるためには、より高温での焼鈍が必要となるが、Sn含有量が0.1%未満では、焼鈍中の再結晶による軟化を抑制できず、強度が低下する。したがって、Sn含有量が0.1%未満では、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加するなどして、高強度化を行なう必要がある。この場合には、導電率や耐応力緩和特性の若干の低下を伴う。但し、Sn含有量が0.01%未満では、Snが少な過ぎて、焼鈍後の最終冷延の圧下率を増加しても強度が低すぎ、これら特性バランスが所望のレベルに達しない。一方、3.0%を超えると導電率が低下し、30%IACS以上を達成できない。したがって、Snの含有量は0.01〜3.0%の範囲、好ましくは0.1〜2.0%の範囲、より好ましくは0.3〜2.0%の範囲とする。
(P)
Pは、Niと微細な析出物を形成して、強度や耐応力緩和特性を向上させるのに必要な元素である。0.01%未満の含有ではP系の微細な析出物粒子が不足するため、0.01%以上の含有が必要である。但し、0.3%を超えて過剰に含有させると、Ni−P金属間化合物析出粒子が粗大化し、強度や耐応力緩和特性だけでなく、熱間加工性も低下する。したがって、Pの含有量は0.01〜0.3%の範囲とする。好ましくは、0.02〜0.2%の範囲とする。
(Fe、Zn、Mn、Si、Mg)
Fe、Zn、Mn、Si、Mgは、スクラップなどの溶解原料から混入しやすい。これらの元素は、各々の含有効果があるものの、総じて導電率を低下させる。また、含有量が多くなると、シャフト炉で造塊しにくくなる。したがって、Si:0.1%以下(但し0.1%を除く)とする。また、30%IACS以上の導電率を得る場合には、各々、Fe:0.5%以下、Zn:1%以下、Mn:0.1%以下、Mg:0.3%以下とする。言い換えると、本発明では、これら上限値以下の含有は許容する。
Feは、Snと同様に、銅合金の再結晶温度を高める。しかし、0.5%を超えると導電率が低下して30%IACSを達成できない。より好ましくは、0.3%以下とする。
Znは、錫めっきの剥離を防止する。しかし、1%を超えると導電率が低下して30%IACSを達成できない。また、シャフト炉で造塊する場合は0.05%以下が望ましい。そして、自動車用端子として使用する温度領域(約150〜180℃)であれば、0.05%以下の含有でも錫めっきの剥離を防止できる効果がある。
Mn、Siには脱酸剤としての効果がある。しかし、0.1%を超えると、導電率が低下して30%IACSを達成できない。また、シャフト炉で造塊する場合には、更に、Mn:0.001%以下、Si:0.002%以下と各々することが望ましい。
Mgは耐応力緩和特性を向上させる作用がある。しかし、0.3%を超えると、導電率が低下して30%IACSを達成できない。また、シャフト炉で造塊する場合には、0.001%以下が望ましい。
(Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Au、Pt)
本発明銅合金は、更に、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Au、Ptを、これらの元素の合計で1.0%以下含有することを許容する。これらの元素は、結晶粒の粗大化を防止する作用があるが、これらの元素の合計で1.0%を越えた場合、導電率が低下して30%IACSを達成できない。また、シャフト炉で造塊しにくくなる。
この他、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルは不純物であり、これらの元素の合計で0.1%以下に制限する。
(抽出残渣規定)
本発明では、前記した通り、0.1μm の一定サイズを越える粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物(Ni化合物)を抑制し、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性を、圧延方向に対して直角方向に達成する。
この一定サイズ以上の粗大なNi化合物量を、本発明では、目開きサイズ0.1μm のフィルター上に抽出分離された抽出残渣におけるNi量と規定する。そして、この抽出残渣におけるNi量(粗大なNi化合物量)を、前記銅合金中のNi含有量に対する割合で40%以下に規定する。
このように、一定サイズ以上の粗大なNi化合物量を抑制すれば、これら粗大Ni化合物の抑制効果と、0.1μm 以下の微細なNi化合物量や、Niの固溶量を確保する効果とが生じる。この結果、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性が、圧延方向に対して直角方向に達成される。また、同時に、曲げ特性、および強度にも優れさせることができる。
上記抽出残渣におけるNi量の、前記銅合金中のNi含有量に対する割合が40%を越えた場合、上記粗大化合物量が増加する。また、これに応じて、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が不足する。このため、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性や強度が低下する。と同時に、上記粗大化合物が破壊の起点となるため、曲げ加工性も低下する。
(抽出残渣法)
本発明で規定する抽出残渣法は、測定に再現性をもたせるために、具体的な測定条件を規定する。即ち、10質量%の酢酸アンモニウム濃度のメタノール溶液300mlに、10gの前記銅合金を浸漬し、この銅合金を陽極とする一方、白金を陰極として用いて、電流密度10mmA/cm2 で定電流電解を行う。これによって、この銅合金を溶解させた前記溶液を、目開きサイズ0.1μm のポリカーボネート製メンブレンフィルターによって吸引ろ過し、このフィルター上に未溶解物残渣を分離抽出するものとする。なお、このフィルターの目開きサイズ0.1μm は、現状では最も小さいフィルターの目開きサイズとなる。
前記銅合金を溶解させた溶液では、銅マトリックス中に予め固溶したNiは溶解しており、0.1μm を越える粗大なNi化合物と、0.1μm 以下の微細なNi化合物とが、溶解せずに分散している。このため、前記目開きサイズ0.1μm のフィルター上に分離抽出される未溶解物残渣は、0.1μm を越える粗大なNi化合物のみとなる。一方、予め固溶したNiと、0.1μm 以下の微細なNi化合物とは、溶液とともに前記フィルターを透過する。
(抽出残渣中のNi量)
また、上記分離抽出された残渣中のNi量は、前記フィルター上の未溶解物残渣を王水と水とを1対1の割合で混合した溶液によって溶解した後に、ICP発光分光法によって分析して求めるものとする。
(銅合金製造方法)
次に、本発明銅合金の製造方法について以下に説明する。本発明銅合金は工程自体は常法により製造できる。即ち、成分組成を調整した銅合金溶湯の鋳造、鋳塊面削、均熱、熱間圧延、そして冷間圧延と焼鈍の繰り返しにより最終(製品)板を得る。そして、強度レベル等の機械的特性の制御も、主に冷延条件、焼鈍条件により、0.1μm 以下の微細生成物の析出を制御することによってなされる。
但し、本発明銅合金板を製造するために最適な製造方法としては、銅合金の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍により銅合金板を得るに際し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内とし、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱延終了までの所要時間を1200秒以下とする。
本発明で、上記0.1μm を越える粗大なNi化合物を抑制するとともに、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量を確保するためには、このように、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの短時間化と、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱間圧延終了までの短時間化が必要である。
一般的なこの種銅合金板の製造工程においては、これらの所要時間が長時間化しやすい。このため、添加されたNi含有量の大部分が、溶解・鋳造時に生じた酸化物、晶出物、および鋳塊の均熱から熱延終了までに生じた粗大析出物に取られ、添加されたNi含有量に応じて生成すべき0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量が少なくなってしまう。
したがって、後段の主に冷延条件、焼鈍条件により、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量を制御しようとしても、上記前段の工程において、0.1μm 以下の微細なNi化合物量やNiの固溶量の絶対量が少なくなっている。更に、上記粗大なNi化合物が多い場合、冷延、焼鈍工程で析出した微細生成物は、この粗大生成物にトラップされてしまい、マトリックス中に独立して存在する微細生成物はますます少なくなる。このため、前記した一般的な製造方法では、Niの添加量が多い割には、十分な強度と優れた耐応力緩和特性を得ることができなかった。
このため、本発明では、上記製造工程において、より上流側で粗大Ni化合物を抑制する。即ち、特に粗大Ni化合物の抑制のために、(1)溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの時間管理、および(2)加熱炉より鋳塊を抽出してから熱延終了までの時間管理を重要とする。
先ず、溶解・鋳造自体は、連続鋳造、半連続鋳造などの通常の方法によって行うことができる。但し、前記(1)の溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの時間管理においては、溶解炉での元素添加が完了してから1200秒以内、好ましくは1100秒以内に鋳造を行い、冷却・凝固速度を0.1℃/秒以上、好ましくは0.2℃/秒以上とすることが望ましい。
これにより、Niを含む酸化物や晶出物の生成や成長・粗大化を抑制し、これらを微細に分散させることができる。Niを含む酸化物の生成抑制の観点からは、真空溶解・鋳造、または酸素分圧の低い雰囲気下での溶解・鋳造を行うことがより好ましい。
従来、添加元素を含むCu−Pなどの母合金を確実に溶解し、固溶した添加元素を溶湯中に均一に分散させるため、かつ原料追装後の再分析が必要なため、鋳造を開始するまでに1500秒程度以上の時間を要していた。しかし、このように鋳造までに時間をかけると、Niを含む酸化物の生成・粗大化を促進し、かつ添加元素の歩留りを低下させることが分かった。
このようなNiを含む酸化物の生成・粗大化を避けるため、本発明の銅合金の製造の際には、上記のように溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内、好ましくは1100秒以内となるように短縮する。このような鋳造までの時間の短縮は、過去の溶製実績を基に原料追装後の組成を予測し、再分析に要する時間を短縮すること等によって達成することができる。
次に、前記(2)の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱延終了までの時間管理において、鋳塊を加熱炉にて加熱後、炉から取り出された鋳塊は熱延開始まで待ち時間が生じる。しかし、本発明のNi化合物の粗大化を抑制した銅合金を製造するには、前記溶解から鋳造開始までの時間および冷却・凝固速度の制御を行うと共に、鋳塊を加熱炉より抽出した時点から熱延終了までの所要(総経過)時間を1200秒以下、好ましくは1100秒以下に制御することが推奨される。
従来は、この様な加熱炉抽出から熱延終了までの時間を管理することは検討されておらず、加熱炉から熱延ラインへの運搬や、生産性向上を狙ったスラブの大型化に伴う熱延時間の延長によって、1500秒を超える時間が費やされるのが一般的であった。しかし、この様に時間がかかると、その間に、Ni系の粗大析出物が析出し、また溶解・鋳造中に生じた晶出物や酸化物を核としてNiやPが析出することが分かった。これら粗大な析出粒子が増加すると、前記Ni残査量も過剰に増加するため、強度や耐応力緩和特性が低下する。
このような固溶Niの減少とNi化合物の粗大化などの作用を回避するため、本発明合金の製造に際しては、上記のように積極的に、加熱炉抽出から熱延終了までの合計所要時間を1200秒以内に管理する。このような時間管理は、加熱炉から熱延ラインへ鋳塊を迅速に運搬したり、熱延時間が長くなる大型スラブの使用を避け、あえて小型スラブを使用することなどによって達成することができる。
熱間圧延については、常法に従えばよく、熱間圧延の入り側温度は600〜1000℃程度、終了温度は600〜850℃程度とされる。熱間圧延後は水冷又は放冷する。
その後、冷間圧延と焼鈍を行なって、製品板厚の銅合金板などとする。焼鈍と冷間圧延は、最終(製品)板厚に応じて繰り返されても良い。冷間粗圧延は最終仕上げ圧延において30〜80%程度の加工率が得られるように、加工率を選択する。冷間粗圧延の途中に適宜中間の再結晶焼鈍を挟むことができる。
冷間粗圧延後の銅合金板に対する仕上げ焼鈍は、連続焼鈍でもバッチ焼鈍でも良い。ただ、微細なNi−P金属間化合物の析出量を多くするためには、必然的に、連続焼鈍(短時間)では保持温度を高く、バッチ焼鈍(長時間)では保持温度を低くする。この点、処理温度(実体温度)と保持時間の目安として、連続焼鈍では500〜800℃×10〜60秒、バッチ焼鈍(長時間)では300〜600℃×2〜20時間が好ましい。なお、この仕上げ焼鈍後は10℃/秒以上の冷却速度で急冷することが望ましい。
最終仕上げ冷間圧延後の歪み取り焼鈍、あるいは安定化焼鈍は、実体温度250〜450℃×20〜40秒で行うのが望ましい。これにより最終仕上げ圧延で導入された歪みが除去され、かつ材料の軟化がなく強度の低下が少ないからである。
以下に本発明の実施例を説明する。組織中のNi化合物の状態が異なる、Cu−Ni−Sn−P系合金の種々の銅合金薄板を製造し、強度、導電率、耐応力緩和特性などの特性を評価した。
具体的には、表1に示す各化学成分組成の銅合金をそれぞれコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法で造塊して、厚さ70mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を得た。これら各鋳塊を、共通して、以下の条件にて圧延して銅合金薄板を製造した。各鋳塊の表面を面削して加熱後、熱間圧延を行って厚さ16mmの板とし、650℃以上の温度から水中に急冷した。
この板を、酸化スケールを除去した後、冷延→連続焼鈍→冷延→歪み取り焼鈍を行なって、銅合金薄板を製造した。即ち、一次冷間圧延(粗冷間圧延、中延べ冷間圧延)後の板を面削し、仕上げ焼鈍を660℃の実体温度に20秒保持する連続焼鈍にて行なった後に、圧下率を50%として仕上げ冷間圧延を行った。但し、表2の発明例16と比較例19のみは、Sn含有量が0.1%未満と少なく、焼鈍による軟化(焼鈍中の再結晶)を抑制できず、強度が低下するために、仕上げ冷間圧延の圧下率を80%と比較的高くして強度向上を図った。この後、実体温度400℃×20秒の低温の歪み取り焼鈍を行って、厚さ0.25mmの銅合金薄板を得た。
この際、表2に示すように、溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間(表2では鋳造開始までの所要時間と記載)、鋳造の際の冷却凝固速度、加熱炉抽出温度、熱延終了温度、加熱炉抽出から熱延終了までの所要時間(表2では熱延終了までの所要時間と記載)を種々変えて、銅合金薄板組織中のNi化合物の状態を制御した。
このようにして得た各銅合金薄板から、10gの抽出残渣測定用の試験片を採取し、前記した方法により、目開き0.1μm のメッシュによって抽出分離された抽出残渣に含まれるNi量を、前記したICP発光分光分析法によって求めた。そして、前記銅合金のNi含有量に対する割合(%)を求めた。これらの結果を表2に示す。
また、各例とも、得た各銅合金板から試料を切り出し、引張試験、導電率測定、応力緩和率測定、曲げ試験を行った。これらの結果も表2に示す。
(引張試験)
前記銅合金薄板から試験片を採取し、試験片長手方向が板材の圧延方向に対し直角方向となるように、機械加工にてJIS5号引張試験片を作製した。そして、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で、機械的な特性を測定した。なお、耐力は永久伸び0.2%に相当する引張り強さである。
(導電率測定)
前記銅合金薄板から試料を採取し、導電率を測定した。銅合金板試料の導電率は、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mm の短冊状の試験片を加工し、JIS−H0505に規定されている非鉄金属材料導電率測定法に準拠し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により導電率を算出した。
(応力緩和特性)
前記銅合金薄板の、圧延方向に対して直角方向の応力緩和率を測定し、この方向の耐応力緩和特性を評価した。具体的には、前記銅合金薄板から試験片を採取し、図1に示す片持ち梁方式を用いて測定した。幅10mmの短冊状試験片1(長さ方向が板材の圧延方向に対し直角方向になるもの)を切り出し、その一端を剛体試験台2に固定し、試験片1のスパン長Lの部分にd(=10mm)の大きさのたわみ量を与える。このとき、材料耐力の80%に相当する表面応力が材料に負荷されるようにLを決める。これを180℃のオーブン中に30時間保持した後に取り出し、たわみ量dを取り去ったときの永久歪みδを測定し、RS=(δ/d)×100で応力緩和率(RS)を計算する。なお、180℃×30時間の保持は、ラーソン・ミラーパラメーターで計算すると、ほぼ150℃×1000時間の保持に相当する。
(曲げ加工性の評価試験)
銅合金板試料の曲げ試験は、日本伸銅協会技術標準に従って行った。板材を幅10mm、長さ30mmに切出し、曲げ半径0.5mmでGood Way(曲げ軸が圧延方向に直角)曲げを行い、曲げ部における割れの有無を50倍の光学顕微鏡で目視観察した。割れの無いものを○、割れが生じたものを×と評価した。
表2から明らかな通り、表1の本発明組成内の銅合金(合金番号1〜13)である発明例1〜16は、溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間が1200秒以内、鋳造の際の冷却凝固速度が0.5℃/秒以上、加熱炉抽出から熱延開始までの所要時間が1200秒以内、の好ましい条件内で製造されている。また、加熱炉抽出温度、熱延終了温度ともに適切である。
このため、表2の発明例1〜16は、前記した抽出残渣法により抽出分離された抽出残渣中のNi量の、合金Ni含有量に対する割合が80%以下であるように、0.1μm を越える粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物などのNi化合物が抑制されている。したがって、0.1μm 以下の微細なNi化合物(ナノレベル以下の微細なNiのクラスターを含む)などの量や、Niの固溶量を確保できているものと推考される。
この結果、発明例1〜16は、圧延方向に対して直角方向に、応力緩和率15%以下の高い耐応力緩和特性を達成することができている。また、曲げ特性に優れ、強度にも優れるなど、端子・コネクタ用として優れた特性を有している。
ただ、表2の発明例1〜6の中での比較において、溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間が比較的長い発明例2、6、加熱炉抽出から熱延開始までの所要時間が比較的長い発明例3、4は、これらが比較的短い発明例1、5に比して、耐応力緩和特性が比較的低い。
また、表2の発明例1〜16の中でも、その他の元素量が前記した好ましい上限を越える発明例9〜15(表1の合金番号6〜12)は、導電率が、発明例1〜8に比して、低くなっている。なお、ここで、発明例12(表1の合金番号9)は、表1、2では発明例欄に記載されているものの、Siが上限を越えて高い比較例である。
発明例9〜13(但し12を除く)は、各々、Fe、Zn、Mn、Mgが、表1の合金番号6〜10の通り、前記した好ましい上限を越えて高い。
発明例14は、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Au、Ptの元素の合計が、表1の合金番号11の通り、前記した好ましい上限1.0質量%を越えて高い。
発明例15は、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの合計が、表1の合金番号12の通り、前記した好ましい上限0.1質量%を越えて高い。
一方、発明例16は、表1の合金13の通り、Sn含有量が0.1%未満と低く、仕上げ冷間圧延の圧下率を前記した通り比較的高くして強度向上を図ったが、焼鈍による軟化によって、他の発明例に比して強度が比較的低い。
これに対して、表2の比較例23〜26は、表1の本発明組成内の銅合金(合金番号1)であるにもかかわらず、各々製造条件が好ましい範囲から外れる。
比較例23、24は溶解炉での合金元素添加完了から鋳造開始までの所要時間が1200秒を越えて長過ぎる。また、比較例25、26は加熱炉抽出から熱延開始までの所要時間が1200秒を越えて長過ぎる。
このため、表2の比較例23〜26は、前記した抽出残渣法により抽出分離された抽出残渣中のNi量の、合金Ni含有量に対する割合が40%を越えており、0.1μm を越える粗大なNiの酸化物、晶出物、析出物などのNi化合物が多過ぎ、抑制されていない。したがって、0.1μm 以下の微細なNi化合物などの量や、Niの固溶量が確保できていないものと推考される。
この結果、比較例23〜26は、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性が発明例に比して著しく低い。
表2の比較例17〜22は、表1の合金番号14〜19の本発明組成外の銅合金を用いている。このため、製造条件が好ましい範囲内であるにもかかわらず、抽出残渣中のNi量の、合金Ni含有量に対する割合、耐応力緩和特性、曲げ特性、導電率、強度のいずれかが、発明例に比して著しく劣る。
比較例17の銅合金はNiの含有量が下限を低めに外れている(表1の合金番号14)。このため、強度や耐応力緩和特性が低い。
比較例18の銅合金はNiの含有量が上限を高めに外れている(表1の合金番号15)。このため、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低い。
比較例19の銅合金はSnの含有量が下限を低めに外れている(表1の合金番号16)。このため、比較例19は、仕上げ冷間圧延の圧下率を前記した通り比較的高くして強度向上を図ったが、焼鈍による軟化によって、強度が低すぎる結果となった。
比較例20の銅合金はSnの含有量が上限を高めに外れている(表1の合金番号17)。このため、導電率が低い。
比較例21の銅合金はPの含有量が下限を低めに外れている(表1の合金番号18)。このため、強度、耐応力緩和特性が低い。
比較例22の銅合金はPの含有量が上限を高めに外れている(表1の合金番号19)。このため、強度、耐応力緩和特性、曲げ加工性が低い。
以上の結果から、高強度、高導電率化させた上で、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性や曲げ加工性に優れさせるための、本発明銅合金板の成分組成、組織、更には、組織を得るための好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
Figure 0004164517
Figure 0004164517
以上説明したように、本発明によれば、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性が高く、高強度、優れた曲げ加工性を兼備したCu−Ni−Sn−P系合金を提供することができる。この結果、特に自動車用端子・コネクタなどの接続部品用として、圧延方向に対して直角方向の耐応力緩和特性が要求される用途に適用することができる。
銅合金板の耐応力緩和試験を説明する断面図である。 箱形コネクタの構造を示す断面図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、Ni:0.1〜3.0%、Sn:0.01〜3.0%、P:0.01〜0.3%を各々含有し、残部銅および不可避的不純物からなり、不純物としてのSiを0.1%以下(但し0.1%を除く)に規制した、銅合金であって、下記抽出残渣法により目開きサイズ0.1μm のフィルター上に抽出分離された抽出残渣における下記Ni量が、前記銅合金中のNi含有量に対する割合で40%以下であることを特徴とする耐応力緩和特性に優れた銅合金。
    ここで、上記抽出残渣法は、10質量%の酢酸アンモニウム濃度のメタノール溶液300mlに、10gの前記銅合金を浸漬し、この銅合金を陽極とする一方、白金を陰極として用いて、電流密度10mmA/cm2 で定電流電解を行い、この銅合金を溶解させた前記溶液を、目開きサイズ0.1μm のポリカーボネート製メンブレンフィルターによって吸引ろ過し、このフィルター上に未溶解物残渣を分離抽出するものとする。
    また、上記抽出残渣中の上記Ni量は、前記フィルター上の未溶解物残渣を王水と水とを1対1の割合で混合した溶液によって溶解した後に、ICP発光分光法によって分析して求めるものとする。
  2. 前記銅合金が、更に、質量%で、Fe:0.5%以下、Zn:1%以下、Mn:0.1%以下、Mg:0.3%以下とした請求項1に記載の耐応力緩和特性に優れた銅合金。
  3. 前記銅合金が、更に、Ca、Zr、Ag、Cr、Cd、Be、Ti、Co、Au、Ptの含有量を、これらの元素の合計で1.0質量%以下とした請求項1〜3に記載の耐応力緩和特性に優れた銅合金。
  4. 前記銅合金が、Hf、Th、Li、Na、K、Sr、Pd、W、S、C、Nb、Al、V、Y、Mo、Pb、In、Ga、Ge、As、Sb、Bi、Te、B、ミッシュメタルの含有量を、これらの元素の合計で0.1質量%以下とした請求項1〜4に記載の耐応力緩和特性に優れた銅合金。
  5. 請求項1乃至4のいずれかの銅合金の板を製造する方法であって、銅合金の鋳造、熱間圧延、冷間圧延、仕上げ焼鈍により銅合金板を得るに際し、銅合金溶解炉での合金元素の添加完了から鋳造開始までの所要時間を1200秒以内とし、更に、鋳塊の加熱炉より鋳塊を抽出してから熱間圧延終了までの所要時間を1200秒以下とする耐応力緩和特性に優れた銅合金板の製造方法。
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