一般によく普及している所謂ドアクローザと呼ばれる商品は、ドアを油の粘性抵抗で減速しながら強いバネの力で静かに鍵をかけるもので、ドアを開くときに、ドアを閉めるに必要な粘性抵抗やバネの力が、抵抗になりドアが重たく感じる欠点がある。この欠点を除去するために、ドアを閉めて手鍵をかけるに必要なバネの力をドアの開閉に影響しないように、図2(a)に示したように、ドアを開くに従いバネの力の働く方向を徐々にドアの円運動の接線方向から半径方向に移行させ、バネの力とドアを閉める分力との割合が小さくし、バネの力大きくなってもドアを閉める分力は一定を保つようにする。またこれに図2(b)に示したようなドアに鍵をかけるに必要な力がドアの開閉に負荷させない方法を組み合わせる。
ドアの天端に2つの車輪を取り付け、片方の車輪に図2(a)に示した板Aが車輪Bを押さえる機構を取り入れ、他方の車輪に図2(b)に示した車輪Bを押さえる板Aの接触面
の形状が円運動する車輪Bを包絡する円弧である機構を取り入れると、第1の課題は解決されるが、接触面の形状が非線形である板を1つの車輪に押さえつけるようにして第1の課題を解決する。
図3〜図5は直線状の板AがドアD天端の取り付けた車輪Bを押さえる図2(a)に示したドア開閉機構の動作説明図で、板Aの回転軸Qが車輪Bから見てドアの回転軸側にある場合について、 ドアの回転軸Oと車輪Bの回転軸Cに直交する水平面における動作を示す。D0,D30,D60,D90及びC0,C30,C60,C90及びA0,A30,A60,A90はドアが0度30度60度90度開いた時のドア、車輪Bの回転軸、直線状の板、のそれぞれの位置を示す。以下、(添え字の0,30,60,90などはドアの回転角を意味する。)Sはドアの回転軸Oが固定される壁に固定される引きバネの接続軸である。
ドアの回転角ηが大きくなるに従い、接点Eと車輪の中心Cを結ぶ直線ECと車輪の円運動の接線とのなす角度Θは大きくなり、力の方向を示す直線ECは図3(a)においてはドアの回転の遠心方向になり、図3(b)においてはドアの回転の求心方向になる。図3(a)においてはドアが閉まった状態η=0のとき、力の方向を示す直線ECと車輪の円運動の接線とが一致し直線状の板AがドアD天端の取り付けた車輪Bを100%の効率で押さえる。図3(b)においてはドアが開いた状態η=60のとき力の方向を示す直線ECと車輪の円運動の接線とが直交し直線状の板AがドアD天端の取り付けた車輪Bを押さえつける力の100%がドアの開閉に関与しなくなる。
Rは回転軸Oを中心とする円弧で円運動する車輪Bの包絡線である。車輪との接触面が包絡線Rである板が車輪Bを押さえるとき、回転軸Q’がどの位置にあっても板が車輪Bを押さえる力はドアの開閉に関与しない。直線状の板Aの回転軸がY軸上を移動してQ’に近づくとき、板の接触面が包絡線Rである場合に近似し、板が直線状であっても車輪Bを押さえる力はドアの開閉に関与しない状態に近づく。R'は直線状の板Aの先端を折り曲げたもので、ドアが閉まった状態η=0のとき、車輪Bを押さえる力の方向は車輪の円運動の接線で、車輪Bを100%の効率で押さえるが、その他の場所ではドアの開閉に関与しない。直線状の板Aの先端を折り曲げたR'は、ドアが閉まった状態のときドアの動きを止める当りでもあり、R'を強制的に回転して当りを外せばドアは自由に動くことが出来る。
Sは壁に固定された仮想の引きバネの片方の支点で、他方の支点はドアに取り付けられるものとすると、バネがドアを引く方向はドアの回転角ηが大きくなるに従い、ドアの回転の中心に向かい、仮想の引きバネの機構においても、直線状の板Aが車輪Bを押さえつける上記の機構と同様の効果が得られることが解かる。
図4は直線状の板Aの回転軸QがX軸上を移動する場合で、回転軸Qがドアの回転軸Oに近づくほどドアの回転に対する板の回転が大きく、車輪Bを押さえる力の方向ECの変化も大きい。したがって回転軸Qがドアの回転軸Oに近づくほど車輪Bを押さえる力はドアの開閉に関与せず、鍵をかける場合にも板の回転が大きいので、小さな力でも鍵をかけることができる。
曲線Rは常に車輪Bを円運動の接線方向に押さえる板で、図4(a)の場合より回転軸Qがドアの回転軸Oに遠い図4(b)の場合のほうが、曲線Rの曲率は大きく板は直線状でも常に車輪Bを円運動の接線方向に押さえ、曲線にしても変わりはない。
板Aを引きバネの力で回転させることを考える。Sは壁に固定された引きバネの片方の支点で、他方の支点はドアに取り付けられ、他方の支点SS0, SS30,SS60,SS90はそれぞれドアの回転角η0,η30,η60,η90に対応する。バネの片方の支点SをY軸に平行に移動するとき、壁側の引きバネの支点Sが板の回転中心Qに近いほど、引きバネの伸縮は小さく
、力の方向の変化は大きい。したがって板Aが車輪Bを押さえるための板Aを回転させ引きバネの力自体が、ドアが閉まるとき強くなり、ドアが開閉する区間では弱くなる。
図5はドアが90度に開いたとき直線状の板Aが車輪Bをドアの回転軸に向かって押さえるように、板Aの回転軸QがX軸に平行な直線X‘上を移動する場合で、回転軸QがY軸から遠ざかるほど、車輪Bを押さえる力は、ドアが閉まるときドアの円運動の接線方向に働き、回転軸QがY軸に近づくほど、車輪Bを押さえる力はドアの開閉に関与しない。
回転軸QがY軸に近く、車輪Bを押さえる力がドアの開閉に関与しない図5(a)において、折れ線Rはドアが閉まるときドアの円運動の接線方向に働くようにしたもので、曲線R‘は折れ線Rの2つの直線を接線とする円で結ぶものである。
図5(a)において、折れ線Rはドアが閉まるときドアの円運動の接線方向に働くようにしたもので、曲線R‘は折れ線Rの2つの直線を接線とする円で結ぶものである。図5(b)において、折れ線R0はドアが閉まるときドアの円運動の接線方向に働くようにしたもので、曲線R0‘は折れ線Rの2つの直線を接線とする円で結ぶものである。折れ線R90は車輪Bを押さえる力がドアの開閉に関与しないようにしたもので、曲線R90‘は折れ線Rの2つの直線を接線とする円で結ぶものである。車輪との接触面が曲線R0‘と曲線R90‘とで構成されるようにして、車輪との接触面をSの字の曲線にすると、車輪Bを押さえる力がドアの開閉に関与しないようになり、ドアが閉まるときドアの円運動の接線方向に働くようになる。
図6は板がドア天端に取り付けた車輪を押さえる図2(a)に示したドア開閉機構の実施例を示すもので、閉まる速度を減速する第2の課題を解決する手段として、ドア天端の取り付けた車輪の代わりに自在輪を取り付けるものである。簡単のため板Aの接触面は直線状とする。
自在輪Bは旋回軸Zを中心に旋回するが常に進行方向に対して車輪の回転軸が旋回軸の後ろになるように走行する。図6において自在輪の旋回軸Zは板Aの先端側にあり、自在輪の車輪の回転軸が板Aの回転軸Q側にあって、自在輪の向きは自在輪が板Aの回転軸側から先端に向かって前進する向きである。
ドアが開くとき、自在輪は旋回軸Zが先行し車輪を後に従えて前進する。車輪の向きは移動方向に一致するが、ドアが閉まるとき自在輪は、自在輪Bは旋回軸Zを中心に旋回して旋回軸と車輪の前後関係を逆転しようとして、車輪の向きを180度回転しようとする。ここで自在輪の旋回を180度の回転をさせずに、当たりをつけて30度程度にとどめておくと、車輪の進行方向は移動方向に対して30度の方向となり、車輪が先行し旋回軸Zを後に従えて後退する向きで逆戻りをする。車輪が30度の方向に進行できないので、車輪は板の接触面とスリップしながら回転し、車輪にブレーキがかかる。
車輪にブレーキがかかる過程において車輪は接触面とスリップしながら回転するので、仮に磨耗しても車輪の円形は保たれ、ブレーキの機能を損なうものではない。自在輪の車輪の向きが進行方向でなくても、車輪面が接触面と直角であるならば、車輪の外周面に片減りは起きない。
図3〜図5のように板Aの回転軸Qが車輪Bから見てドアの回転軸側にある場合よりも図6の場合のように板Aの回転軸Qが車輪Bから見てドアの回転軸の反対側にある場合のほうが、ドアが閉まった状態で車輪の位置がバネの位置に近く、バネで板Aが車輪Bを押さえる力は数倍強く働く。
図6(a)においてドアの回転軸を反対側のO´に移して、図3〜図5のように板Aの回転軸Qが車輪Bから見てドアの回転軸側にあるようにしても、ドアは開閉可能であるが、この場合板Aが車輪Bを押さえる方向が、ドアが開くにつれてドアの回転の接線方向になって、ドアを開けば開くほど抵抗が大きくなるので、図6(a)に示した装置は勝手を逆にして使用できない。
図6の場合、板Aは引きバネの力Vで回転する。Sは壁に固定された引きバネVの片方の支点で、ドアに取り付けられる他方の支点SS0, SS30,SS60,はそれぞれドアの回転角η0,η30,η60,に対応している。ここで、ドアが開くに従い引きバネVは伸びて板Aを引き戻す力は大きくなるが、引きバネVの向く方向は板Aに平行な方向に近づき、引きバネVの力のほとんどが板Aの回転に寄与しないことになる。すなわちドアを閉めたとき鍵をかけるに要する大きな力は、ドアを開くとき大きく作用しないことになる。
図6(a)においては、板Aが閉じれば閉じるほど板Aを閉じる力が強く働くように、引きバネVの支点Sの位置を考える。引きバネVの支点Sの位置が板Aの回転軸Qを原点とするxy座標軸においてy軸上正の方向にあって板Aの回転軸に近い位置であればあるほど、すなわち支点Sと板Aの回転軸との距離Lsが小さいほど、板Aの回転に伴う引きバネVの回転が大きく、引きバネVが板Aを引き戻す力の方向も大きく変化する。また引きバネの伸縮も板が閉じた状態に近い範囲では大きく、板が回転すればするほど小さくなる。引きバネVの支点Sの位置がx軸上負の方向にある場合、引きバネVが板Aを引き戻す力の方向は板Aの回転に伴い、板Aの回転の半径方向から接線方向に移り、板Aの回転軸に遠い位置であればあるほど、板Aの回転に伴う引きバネVの回転は小さく、引きバネの伸縮の変化も小さくなる。板Aを引き戻す力が閉じた状態で強く働き、開けば開くほど弱くするには、板Aが閉じた状態で板Aの回転の接線方向に引きバネVを働かせ、引きバネVの支点Sの位置が板Aの回転軸に近い位置であればあるほどよいことになる。
ドアに取り付けられるバネの支点の板Aからの距離Lは調整でき、距離Lを大きくするとバネの強さは大きくなり、閉まるときバネの力の働く方向は板の回転の接線方向に近く。またドアが少し開いた状態で、直ちにバネの力の働く方向は板の回転の半径方向に近づき、閉まるときのバネの力より弱い力がドアの回転に作用することになる。
図6(a)に示すように、板A30、あるいはA60に対して垂直でありドアの回転軸Oを通る垂線Tを境にして板Aはドアの回転角ηが0度或いは90度方向に回転することになる。ドアが閉じた状態から垂線Tの位置に至るまで板Aは回転軸Qを中心に反時計回りに回転しバネは伸びてドアを引き戻そうとするが、垂線Tの位置を過ぎると、板Aは回転軸Qを中心に時計回りに回転しバネは縮んでドアを全開方向に押し出そうとする。
ドアの回転角ηが30度から60度の間では板Aの回転はほとんどなく、引きバネもほとんど伸縮しない。すなわちドアの回転角ηが30度から60度の間では板Aは勝手に動くことはない。曲線Rは、板Aが垂線Tを境にしてドアの回転角ηが0度或いは90度方向に勝手に回転するように、板の接触面に曲げを加えたものである。
図6(a)において、Raは板Aの円運動の軌跡でδaはドアの先端がドア枠の外に飛び出した長さである。板Aの全長をドアの先端がドア枠内に収まる長さに縮めると、図6(b)に示すように車輪Bが板Aの先端から離れてしまう。図6(b)はドアに車輪Bから離れた板Aの先端を受け止める受けBbを取り付け、ドアが受けBbから板Aの先端が離れてしまうまで開かないように、ドアに当たりをつけるものである。
ドアを閉めてから、鍵がかかる時のドアの回転角は非常に小さく、鍵をかける力はドアの開閉時に必要な力に比べて非常に大きい。従ってドアが僅かに回転する間にバネの長さが
大きく変化する必要がある。図7に示すように、板Aの回転軸Qをドアが閉まったときの車輪Bの位置に近づけると、ドアが閉まる付近で板Aは大きく回転しバネの長さが大きく変化する。図6のように板Aの回転軸Qと車輪Bとの間の距離が大きい場合、板Aは大きく回転しない。板Aを大きく回転させるためには板Aの回転軸Qの位置を車輪Bに近く、ドアの外面から離れた位置にして、車輪Bを巻き込むようにする。
板Aの回転軸Qがドアの外面から離れた位置にすると、板Aの必要最小限の長さが短くなり、ドアを閉めたときドア枠の外に飛び出してしまう長さも短くなる。図7(a)において、Rは板Aの円運動の軌跡でδはドアの先端がドア枠の外に飛び出した長さである。図6(a)の場合のδaより小さい。したがって板Aの回転軸Qをドアの外面から離すと、ドアの先端をドア枠ないに収めることが可能になることが解る。
板Aの回転軸Qをドアが閉まったときの車輪Bに近づけることは。図6(a)に示した垂線Tが90度よりの位置からお0度よりの位置に移ることを意味しており、図7の場合ドアが30度程度に開かれると、右にも左にも勝手に動くことはなく静止状態を保つ、ドアが30度程度に開かれた位置でドアが閉まる方向に勝手に動くようにするには、板の接触面をドアの回転中心に向かって凹に曲げる必要がある。
図7(a)においてB30の位置で板の接触面をドアの回転中心に向かって凹に曲げると、ドアが閉まったB0の位置では板の先端がドアの外面より内部に入るため、板の先端をドアの回転中心に向かって凸に曲げる必要がある。板の先端を凸に曲げるとドアを全開したとき静止状態を保つことが出来るが、凸に曲げた位置が図6(a)で説明した垂線Tの位置であり、凸に曲げた位置が板Aの回転軸Qに近い場合、ドアを少し開けると全開方向に勝手に動くことになる。全開方向に勝手に動く位置を出来るだけ、ドアの全開の位置に近づけるには、回転軸Qの位置からB30の位置で凹に曲げた位置まで板Aを直線にするか或いはドアの回転中心に向かって凸に曲げればよい。
図7の板Aは、図3(b)に示した円弧Rに近似しており、板が車輪を押す方向が常にほぼドアの円運動の半径方向である。図7の場合は図6の場合のように板の先端がドア枠からはみ出す問題よりも、ドアを閉まる前に止まってしまう問題のほうが大きい。
図7(b)は図7(a)の自在輪Bの前に固定輪BBを取り付けたものである。図7(b)に示すように、ドアが約30度ほど開くまでの間は固定輪の後の自在輪が板に接触して滑走し、ドアが約30度ほどを過ぎるとドア外面に近い固定輪が板に接触して滑走する。すなわちドアの開閉には自在輪は板に接触することもなくブレーキをかけない。鍵が掛かる付近にだけ板に接触しブレーキをかける。さらに自在輪Bの後に点線で示す固定輪BBBを取り付けたとすると、固定輪BBBは、鍵が掛かる瞬間にだけ板に接触しブレーキをかけない。固定輪BBBを取り付ける戸、ドアの開き始めにおいても抵抗なく開きやすくする
固定輪が接触している間は、自在輪は板に接触していないので自重で旋回し車輪面は水平面から傾斜している。鍵が掛かる直前に板に接触するが、はじめから車輪面が傾いているので板に接触すると同時にドアの回転にブレーキがかかる。開いたドアを勝手に閉めるためにバネを仕込むと、閉まるときに加速するのでブレーキかかるようにするのであるが、図6図7のいずれの場合についても、ドアの取り付く壁が閉まったドアの平行でない場合は、ドアは全開しない。図6の場合は壁に板の先端が当たり、図7の場合は車輪が当たる。
従来のドアクローザが取り付いたドアは、図1に示すように、ドアの回転角とリンクSPの回転角は比例し回転軸Sに仕込まれた捩じりバネの強さはドアの回転角に比例する。図6は本発明の実施例の1例を示すものであるが、本発明においてはドアに作用するバネの力
はドアの回転角に比例しない。本発明のバネはドアが開いてからは比較的伸縮しない。従来のドアクローザとは仕込まれたバネの力の最大値に違いがあり、バネの力の反力を支持する壁に要求される耐力に違いがある。開けば開くほどバネの強さが大きくなる従来のドアクローザは、金属製のドアとドア枠でなければならないが、開いてもバネの強さが大きくならない本発明の場合はドアとドア枠は木製でもよい可能性がある。
また従来のドアクローザは本発明のように、ドアに作用するバネの伸縮が、鍵がかかる僅かな間に集中し、ドアの開閉の間は殆ど変化しないものではないので、開き始めて鍵が外れたあとでも負荷が連続的に増加し、ドアを開きはじめの段階でドアの抵抗が大きく感じられる。これに対して本発明の装置を取り付けるドアは、開き始めて鍵が外れた後は装置を取り外した状態に近くなる。図6の場合より図7の場合のほうが、バネの伸縮が鍵がかかる瞬間に集中するので、鍵が外れた瞬間にドアの開閉は軽くなる。
図6図7は板がドア天端に固定した車輪を板で押さえてドアが開閉するものであるが、逆に板を固定して、固定した板を車輪が押さえてドア開閉することも出来る。図8はドア天端の取り付けた車輪Bをバネで動くようにし、固定した板A30或いはA60或いはR´を車輪Bで押し付けるようにしてドアを開閉するものである。
図6図7はバネを仕込んだ装置をドア枠に取付けるもので、図8は市販のドアクローザのようにドアに取付けるものである。どちらに取付けたとしても、バネの力を与える方にも受け取るほうにも、作用反作用が働き、それを支持する耐力がドアとドア枠に要求される。市販のドアクローザには捩じりバネが仕込まれ仕込まれた回転軸の回転に比例して力が発生するが、引きバネ或いは押しバネを試用する場合は、鍵を掛けるバネの力の初期値が同じでもそれ以後のバネの力がドアの回転に比例して増加しない。本発明の市販のドアクローザとは、バネの力がそれほど強くならない違いがあり、ドアとドア枠にバネの力を支持する耐力が要求しない違いがある。
図8に示すドアD天端に取り付けた車輪Bは、接続軸Cを中心に回転し、バネが仕込まれ固定した板R´を押さえつけて滑走する。車輪Bは旋回軸をZとする自在輪で、アームAの先端に取り付き、アームAはドアに取り付けた回転可能な接続軸Cに取り付く。
R´はQを中心とする円弧のレールで、Rはドアの回転軸Oを中心とする円弧である。円弧Rの半径は車輪とドアの回転軸Oとの距離の最小値である。車輪Bが円弧R上を移動する仮定するとアームAは回転しない。
図8(a)において、ドアが全開の位置から閉まっていくとき車輪Bは弧のレールR´を移動し、車輪とドアの回転軸Oとの距離を縮める。車輪が坂道を下るように、重力の代わりにバネの力が作用して車輪Bは円弧のレールR´を滑走し、ドアが閉まるとき円弧のレールR´端部の「ドアの回転中心に向かって凸に曲げた部分」に落ち込む。車輪Bが上記凸に曲げた部分に落ち込むとき、アームAは大きく回転し大きくバネの長さも変化する。しかも車輪Bが上記凸に曲げた部分を押さえる方向がドアの回転の接線方向であることから、ドアを強く閉めて鍵を掛けることになる。
図8(b)のドアD天端に取り付けた車輪Bにはバネが仕込まれ、車輪Bは接続軸Cを中心に回転する。図8(b)は車輪Bが固定した板R´を押さえつけて滑走し、ドアを開閉するものである。車輪Bは旋回軸をZとする自在輪で、アームAの先端に取り付き、アームAはドアに取り付けた枝Fの先端の回転可能な接続軸Cに取り付く。ドアに枝Fを取り付けアームAの回転軸CをドアDの外面より離すことで、ドアが閉まったときに、車輪Bがドアの開く方向側に位置して、ドアの取付け枠内部に入り込まないようにしている。
アームAは引きバネVの力で回転するが、アームAを引き戻す力がドアを閉じた状態で強く働き、ドアを開けば開くほど弱くするために、ドアが閉じた状態でアームAの回転の接線方向に引きバネVを働かせ、引きバネVの支点Sの位置をアームAの回転軸に近い位置にする。
R´はQを中心とする円弧のレールで、Rはドアの回転軸Oを中心とする円弧で、半径はドアが全開したときの車輪と円弧のレールR´との接点とドアの回転軸Oとの距離である。
車輪Bが円弧R上を移動すると仮に考えるとアームAの回転はないが、ドアが全開の位置から閉まっていくとき車輪Bは弧のレールR´を移動し、アームAは回転し、車輪Bとドアの回転軸Oまでの距離が縮まる。バネの力が車輪Bに作用しながら車輪Bは円弧のレールR´上を滑走し、ドアが閉まるとき円弧のレールR´端部の切り欠き部分に落ち込む。車輪Bが切り欠き部分に落ち込むとき、アームAは大きく回転し大きくバネの長さも変化する。しかも車輪Bが切り欠き部分を押さえる方向がドアの回転の接線方向であり、ドアを強く閉めて鍵を掛ける。
ドアを閉めたとき鍵をかけるのに力は要ってもドアを開閉するにはほとんど力は要らない。ドアを開閉する区間では動慣性の助けもあるが、ドアを閉めたとき鍵を掛ける場合、ドアが閉まって止まっている静の状態からでも鍵がかかる必要があり、ドアを開閉に要する力に比べて格別の力が必要で、ドアを閉めたとき鍵を掛ける力さえあれば、ドアを開閉に要する力は要らないといっても過言ではない。ドアを閉めて鍵を掛ける間のドアの回転角は小さく、例えば10度とすると、ドアを90度開いたときバネの力は9倍になる。全く力は要らないといっても差し支えのない範囲で、9倍のバネの力が働いてしまうのである。
全開したときバネの力を9倍にしないために、図6においては、板の回転軸に仕込むバネの取り付け位置に工夫し、鍵を掛ける力がドアを閉めたときにだけ働くようにドアを開閉する力をドアの円運動の半径方向に働かせてドアの開閉に抵抗しないようにした。図7図8においては、鍵を掛けるときにだけアームAを大きく回転させ且つバネを大きく伸縮させて、ドアの開閉時にはアームAの回転を小さくして且つバネを伸縮させないようにしている。
図9はドアを直接バネで引くもので、ドアをバネで引くだけであるなら、閉まるときの速度は閉まるに従い加速するので、閉まる直前に減速するようにしたものである。ドアを減速するだけで特に軽く開くようにするものではない。図9の場合はバネの伸び縮みが直接ドアの回転に結びつき、図6図7図8のようにバネの伸び縮みを板やアームの回転に結びつけバネの力を調整できるものではないが、図9のようにドアをバネで直接引く場合はバネの強さもバネの方向が変わることで、ドアの回転と比例関係にはなく、ドアは開くほどにバネの力がドアに作用しなくなる。
図9(a)では、外開きドアの内側の壁のドア上部にプレートWが水平に固定され、図9(b)では外開きドアの外側の壁に固定される。プレートWにはバネの片方の支点が取り付き、バネの他方の支点はドアの天端に取り付く。バネV0、V30,V60及びバネの他方の支点の位置SS0、SS30,SS60はそれぞれドアの回転角η0、η30、η60、に対応している。
図9(a)において、V60はドアに平行で、図9(b)においてV60はドアの回転中心を通る。ドアの回転角ηが増加すると、バネVの方向は図9(a)においても図9(b)においても「バネの他方の支点位置SSのドアの回転軸Oを中心とする円運動の半径方向」に対して、直角方向から始まり平行方向に向きを変え、バネの力の作用線Vとドアの回転軸Oとの距離が減少し、図9(a)においても図9(b)においても、ドアを開けば開く
ほど、ドアに働く回転モーメントは小さくなる。
ドアに働く回転モーメントは小さくなる傾向はバネの支点位置S,SSにより異なり、バネの支点位置によってはドアに働く回転モーメントは大きくなる。バネVの方向は図9(c)図9(d)において「バネの他方の支点位置SSのドアの回転軸Oを中心とする円運動の半径方向」に対して、平行方向から始まり直角方向に向きを変え、バネの力の作用線Vとドアの回転軸Oとの距離が増加し、図9(a)においても図9(b)においても、ドアを開けば開くほど、ドアに働く回転モーメントは大きくなる。
プレートWにドアの天端に取付けた枝Fに自在輪Bが取り付き、自在輪の取り付き状態は上下逆の車輪が車輪の取付け座より上になる状態で、車輪面が鉛直状態で図6図7図8の車輪面が水平な状態とは異なる。自在輪BはプレートWに下から当てがわれ、ドアが閉まる付近の範囲内で接触し、ドアが閉まる付近以外の範囲では接触しない。図6図7図8の自在輪はドアの回転にブレーキを掛けるものでもあり、回転を与えるものであったが、図9の自在輪はもっぱらブレーキを掛けるだけのものでもあり、ドアの開閉のほとんどの範囲ではプレートWと離れた位置にある。図6図7図8のようにレールは連続する必要はなく途中で切れてよい。
ドアが閉まった状態から開くとき自在輪は旋回軸のあとに車輪の順で侵入し、プレートの進入口の切り口が自在輪の回転軸Oを中心とする公転の半径方向であることから、自在輪の車輪の向きは公転の接線方向で、プレートW下面を抵抗なく滑走する。これに対してドアが開いた状態から閉まるとき自在輪は車輪のあとに旋回軸の順で侵入し、プレートの進入口の切り口が自在輪の回転軸Oを中心とする公転の半径方向より角度を持っていることから、自在輪の車輪の向きはプレートWに当たると同時に公転の接線方向より外側に傾いた状態で侵入し、プレートW下面を減速しながら滑走する。
プレートWは自在輪の車輪が磨耗しても折衝を保つように、上下に移動可能な状態で常に車輪を上から押さえつけている。車輪の片減りがなく車輪の円形が保たれれば、車輪が磨耗してもブレーキ性能などは損なわれない。
以下に説明する装置は、図9のように直接ドアをバネで引くものではなく、リンクを介してドアをバネで引くもので、図9のドアを引くバネのドアと反対側の支点Sのように固定したものではなく、ドアを引くリンクのドアと反対側の支点が移動するもので、リンクがドアを引く方向もドアの回転の接線方向から半径方向に移行するものである。その結果ドアは開くほどにバネの力が伝わりにくくなる。
図9のようにバネの伸び縮みが直接ドアの回転に結びつくものではなく、また図6図7図8のように板やアームの回転がドア天端に取り付けた車輪の回転に結びつくものではない。図10はドアに連結したリンクAAでドア天端の接続軸Cを牽引するもので、牽引する方向が変わり、牽引する力の強さもその他のリンクに働くバネの強さやバネの方向を変えることで調整できるものである。
図10の場合も図9の場合と同様に、自在輪はドアが閉まる直前で滑走面Kに接触し、ドアに鍵を掛けるときとドアが閉まる直前以外のドアが開閉するときは滑走面Kに接触しない。ドアに鍵を掛けるときは滑走面K終端に施された窪みKKに嵌まり込むことはなく、ドアが閉まる直前以外のドアが開閉するときは滑走面Kと離れている。
閉まる直前にのみ減速の役目を果たす。図9の場合と異なり図10の場合の自在輪は車輪面が水平であり、滑走面Kに接触と非接触を繰り返し、非接触時に自在輪は自重により旋回し車輪面が水平面から傾く。ドアが閉まるときで車輪Bが旋回軸Zより先に滑走面Kに
侵入するとき、車輪面が水平面から傾いたままの状態で侵入するので侵入と同時にブレーキがかかる。ドアが開くときは旋回軸Zが車輪Bより先に滑走面Kを滑走するので車輪Bは進行方向を向いて水平になる。
図10(a)は外開きのドアの部屋内にプレートWを取り付けるもので、車輪が進入する角度は滑走面Kに対して直角でその後アームAAが倒れて滑走面を長く滑走するようにし、アームAAとアームAの接続軸Pを接続軸Cに近づけることにより「ドアが閉まる直前からドアに鍵がかかるまでの間に車輪が滑走面を滑走する距離」を長く拡大して、ドアが閉まる直前でドアが一旦停止状態に近い状態にしてから鍵がかかるようにする。この間バネの長さの変化はあまり認められない。実線で書かれた状態はドアが閉まる直前の状態で、点線で書かれた状態はドアに鍵かかった状態である。
ドアが閉まるときはリンクAAの先端の自在輪の車輪Bは滑走面に押さえつけられるが、ドアを開くとき車輪Bは滑走面Kから浮き上がり抵抗しない。ドアを開くときは「閉まる直前でドアが一旦停止状態して回転するときのリンクAAの回転中心の位置C15の位置」をドアが停止することなく通過するので、自在輪の車輪Bは滑走面の始点KKから途中の滑走面に接触することなく滑走面の終点に至る。
図10(b)(c)は図10(a)と同じく、外開きのドアの部屋内にプレートWを取り付けるもので、車輪が進入する角度は滑走面Kに対して平行で、ドアが閉まる直前でドアの回転にブレーキをかけてから鍵がかかるようになる。図10(a)のように一旦停止しない。図10(b)において実線で書かれた状態はドアが閉まる直前の状態で、点線で書かれた状態はドアに鍵がかかった状態である。図10(c)はドアに鍵がかかった状態とドアが全開した状態を示す。
図11は、図10(a)の部分詳細図で、図11(a)は側面図、図11(b)は平面図、図11(c)、11(d)は図11(b)に示すイーイ矢視図で自在輪の部分詳細図、図11(e)は滑走面Kの断面図である。図中Bdは自在輪の旋回を制限する当たりで、自在輪を左右に30度程度以上に旋回しないようにしている。Beは車輪と滑走目との接地点である。本発明の自在輪は、車輪が先行し旋回軸が後続して自在輪が進行する場合、直ちに180度旋回する性能を有もので、この旋回性能のよい自在輪に当たりをつけて旋回しないようにしたもので、車輪径に対して車輪の厚みが大きい直進性の強い車輪は使用しない。本発明の自在輪は、厚みが薄く出来るだけ車輪径が大きい車輪を使用する。
車輪が先行し旋回軸が後続して自在輪が進行する場合(図11(c)(d)(f)(g)に示すx方向)、図11(d)に示すように自在輪が旋回し車輪の向きが進行方向から傾き、図11(e)に滑走面断面図に示すように、接地点がBe1の位置からBe2の位置に移動して、滑走面断面中央の直進する軌道の両側の溝に嵌まり込む。
車輪が直進する場合は図11(c)に示すように接地点Be1は滑走面中央に位置にあって車輪は滑走面中央を直進するが、自在輪が旋回し車輪の向きが進行方向から傾く場合は図11(d)に示すように接地点Be2が滑走面中央から左右に移動する。図11(d)に示すようナ場合、車輪の向きが進行方向から傾いていても車輪は車輪の向く方向に進むのではなく、進行方向は中央の直進する軌道と平行な溝の軌道を直進する。車輪の向きが進行方向から傾いていて車輪が進行方向に移動しなくても、車輪は回転するので車輪にブレーキをかけるのではなく、車輪の直進方向の移動を減速する。図11(e)に示したように滑走面断面中央に直進する軌道の両側に溝がなく、図11(a)に示すように滑走面全体が平坦であっても減速する。
旋回軸が先行し車輪が後続して自在輪が進行する場合(図11図11(c)(d)(f)
(g)に示すxx方向)、図11(d)に示すように自在輪が車輪の向きが進行方向から傾き、図滑走面の両側の溝に嵌まり込んでいても、車輪の向きは直ちに進行方向を向き接地点が中央に移るので、車輪は中央の軌道に乗り上げ直進する。
図11(f)(g)に示すように旋回軸Zが滑走面の中央の軌道CLを通り滑走面に垂直な平面内において進行方向に対して傾くと、旋回軸が滑走面に垂直な場合よりも、接地点が旋回軸に近づき、旋回軸が先行し車輪が後続して自在輪が進行する場合は、車輪の向きが直進方向に向いて直ちに中央の軌道に乗り上げて直進する傾向が強くなり、車輪が先行し旋回軸が後続して自在輪が進行する場合は、車輪の向きが直進方向からそれて直ちに中央の軌道から脱輪して滑走面の両側の溝に嵌まり込む傾向が強くなる。
ドアが閉まる過程において車輪が先行し旋回軸が後続して自在輪が進行する場合(図11(f)に示すx方向)、図10(a)においては旋回軸が前傾して滑走面の円弧部分の入り口に差し掛かるので、車輪の向きが直ちに直進方向からそれて車輪の直進方向の移動を減速し、出口においては旋回軸が後ろに傾くので、車輪の向きが直進方向に向いて直ちに車輪の直進に対して抵抗がなくなるようにして鍵をかけるようになる。この場合滑走面の円弧部分の入り口において車輪が滑走面中央の山に乗り上げるだけで車輪の向きが変わり、出口において滑走面中央の山の部分が途切れるだけで車輪の接地点が両側の溝から中央の軌道CLに戻って直進状態になる。
図10(a)において滑走面中央に山がなく平坦な場合を考えると、旋回軸が前傾して滑走面の円弧部分の入り口に差し掛かるので、車輪の向きが変わりやすい状態であり、直ちに直進方向からそれて車輪の直進方向の移動を減速し、出口においては旋回軸が後ろに傾くので、車輪の向きが直進方向に向きやすい状態なので直ちに車輪の直進に対して抵抗がなくなるようになる。この場合ドアが閉まる直前において、車輪の減速がなくなり鍵をかけるときに衝撃を伴うので、鍵をかける直前まで車輪を減速するように、出口において旋回軸が後ろに傾いて車輪の向きが直進方向に向きやすいので、図11(h)に示すように滑走面中央の山の部分を設けて車輪の向きが直進方向に向かないようにする必要がある。
図10(a)において、ドアが開く過程で旋回軸が先行し車輪が後続する場合、図11(g)の図中のxx方向に示すように、旋回軸が前傾して滑走面の円弧部分の入り口に差し掛かるので、自在輪は旋回しやすく車輪の向きが直ちに直進方向にむき、車輪の直進に対して抵抗がなくなるようになる。滑走面の円弧部分の出口においては旋回軸が後ろに傾くので、車輪の向きが直進方向に向気安い状態で、直ちに車輪の直進に対して抵抗がなくなるようになる。
図12(a)(b)は外開きのドアの外部にプレートWを取り付けるもので、図10(a)が引きバネVで引くのに対して、図12(a)(b)は押しバネUで押す違いがある。また図10においてドアを牽引するリンクに連結されるリンクAはプレートWに固定した回転軸Qを中心に円運動するが、図12(a)(b)のリンクAの両端の接続軸には車輪が取り付き移動することが可能で、どちらの端部もプレートWに固定されない。
図12(a)はドアに鍵かかった状態を示し、図12(b)はドアが閉まる直前の状態を示す。滑走面K上をバネVで移動するリンクAは両端に車輪B,BBが取り付き、先端には図12(c)に示す3個の車輪が取り付き、車輪の向きが進行方向である車輪B(請求項2および9記載の走行車輪)を中央にして、両側に進行方向より外に向いた車輪BBB(請求項2および9記載の減速車輪)が取り付く。
滑走面KはL型の滑走面で、閉まったドアに直角の滑走面にはガイドレールKKが取り付き先端の3つの車輪の中央の車輪Bだけが乗って走るようになっており、両側の外に向いた車輪BBBは滑走面Kから浮き上がり抵抗しない。また閉まったドアに平行な滑走面に
はガイドレールKKがなく、3つの車輪の、両側の外に向いた車輪BBBだけが滑走面上を滑走し中央の車輪B滑走面Kから浮き上がりブレーキをかける。ドアが閉まる直前の図12(b)の状態では3つの車輪が進入する角度は閉まったドアに平行な滑走面Kに対して直角で、ドアが閉まる直前でドアが一旦停止してから鍵がかかるようになる。
図12(b)において、車輪Bが接続軸BB30の位置を中心に円運動RBBするように、滑走面の接触面を円弧に加工すると、車輪Bが円運動RBBする間に接続軸BB30の位置は移動することはなく、ドアは回転せず停止している。接触面が円弧ではなく直線であっても、車輪Bが閉まったドアに平行に大きく動く間に、接続軸BB30の位置は僅かに移動するだけで、ドアが一旦停止する時間が長く強いバネの力で鍵がかかるようになる。
アーム先端の車輪が滑走面に進入しアームと滑走面の角度が直角のとき、車輪は停止するが、直角から僅かに傾けば車輪は移動可能となる。この場合滑走面に進入する角度が直角に近いほど車輪の移動量が大きい。図12図13は車輪の移動量を大きくして、アームの移動を小さくし、ドアの回転を減速するものである。図12は外開きのドアの部屋外にプレートWを取り付けるもので図13は外開きのドアの部屋内にプレートWを取り付けるもので、図12と左右対称であり裏返して使えるようにすれば、右勝手のドアにも左勝手のドアにも使用できる。
図12においても図13においてもドアが閉まった状態から開いていく過程において、ドア上部に取り付けた接続軸Cに取り付くリンクAA先端の車輪BBは滑走面K上を「閉まったドアに直角方向に」動くだけであり、リンクAA(すなわち力の作用線)とドアの回転軸Oとの距離を遠ざけながら、リンクAAの向く方向(すなわち力の作用線の方向)を閉まったドアに直角方向から平行な方向に向きを変える。図13(b)に示すように、車輪BBがドアの回転中心に近づくに従い、リンクAA(すなわち力の作用線)とドアの回転軸との距離はL30、L90に示すように減少し、バネが伸びてバネの力が大きくなっても、バネの力とドアの回転軸との距離との積(ドアに与える回転力)を一定に保つようにしている。このことから車輪BBの運動の軌跡が「ドアが開くに従いドアの回転中心に近づく軌跡」である必要があると言える。
図13(a)はドアが閉まる直前の状態を示し、「ドアが閉まる直前の接続軸C15の位置」を中心に、「リンクAの先端の車輪A」が円運動してドアが停止している状態を示すものである。図13(b)はドアが全開した状態を示し、ドアの接続軸Cを牽引するリンクAAに仕込まれたバネが伸びてドアが開く状態を示すもので、ドアの回転に必要なバネとドアに鍵をかけるバネを別々にして、別々に調整できるようにしている。
図13(b)に示すように、リンクAの2つの車輪はドアの開閉する区間では両輪共に滑走面の直線部分にあって、「車輪の向きが進行方向に一致する2つの車輪」B,BBだけが滑走面に接触して、先端の「車輪の向きが進行方向に一致しない車輪」BBBは接地しない。したがってドアが閉まる方向に回転するときブレーキはからない。ブレーキをかけるようにすると、ドアを開くときに「ドアを勝手に閉まるようにする必要最小限の力」がブレーキをかけただけ余分に必要となり、ドアが重たく感じられる結果を招くので、「先端のブレーキをかける車輪」を滑走面から離して、ドアの開閉に抵抗しないようにしている。
ドアを閉めるときに一定の力がかり続けるとき、ドアは等加速度運動をしてドアが閉まる瞬間にはドアの回転速度が最大になり、大きな衝撃を伴う。本発明はこれを避けるためにドアが閉まる直前に一旦停止状態に近づけるものであり、ドアが開く方向に回転するときブレーキをかけないようにして、ドアを開くときにドアが重たく感じられないようにするものである。
図12図13のように、車輪が凹面の内側滑走面に直角方向に進入する場合、ドアを閉める力に対しては抵抗し、ドアを急激に閉めた場合にブレーキがかかることになる。ドアを閉めるときドアに力を入れても動かないが、車輪を滑走面と平行方向に力が作用すると車輪は動き、車輪が動くとドアは動くことになる。車輪を凹面の内側を滑走させるためには、押しバネが必要であり、押しバネは伸縮量が大きいとき座屈して湾曲するので、出来るだけ引きバネの使用が望ましいが、凹面の滑走面には上述の急ブレーキがかかる特徴がある。
図10図12図13はドア上部の回転軸Cを2つのアームA及びAAを連結してアームに取付く車輪Bが滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置であるが、以下は1つのアームA先端に取付く車輪Bが滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置である。また押しバネは座屈して湾曲するので採用せずに、ブレーキをかけながらドアを閉めて鍵をかける装置である。
図14は「ドア上部に取り付けられた回転軸Cを中心に回転するアームA先端に取付く車輪B」が滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置で、ドアが閉まるときブレーキをかけながらドアを閉めて鍵をかける装置である。鍵をかける瞬間に車輪Bは滑走面Kの末端の窪みKKに嵌まり込み引き、バネVの力で板AAが回転して車輪Bを押さえ込む、滑走面Kの末端の窪みKKの深さが大きいほど、また車輪Bが回転中心Qに近いほど板Aは大きく回転し、板Aが車輪Bを押さえる方向が車輪Bの接続軸Cを中心にする円運動の接線方向に近づく。
T0、T15、T45は接続軸Qを中心に回転する板AAと、ブレーキ付き車輪BBとの接点における接線に直角な垂線で、垂線Tがドアの回転中心Oと距離を持つことで、ドアを閉める方向のモーメントが生まれる。垂線T上にある板AAの内側凹面の焦点はドアが開くに従いドアの回転軸Oに近づき、垂線Tとドアの回転軸Oとの距離は小さくなり、引きバネVの強さが増してもドアに作用する力は減少し、ドアを開くときに重たく感じることはない。また引きバネVの伸びがドアを開くに従い増加の一途を辿るので、ドアが閉まる途中でドアの動きが止まることはない。
アームAの回転軸Cを中心に回転は当たりGによって止められ、図14(c)に示すようにドアを開く過程の途中からアームAはドアDに固定された状態になり、車輪Bは滑走面Kから離れる。ドアが閉まるとき滑走面から離れた車輪Bが滑走面に侵入するとき、侵入角度は当初は滑走面に対して直角に近いが、次第に滑走面と平行になる。この過程においてドアの僅かな回転で車輪Bは大きく滑走面を移動し、ドアの回転の減速に従事する時間を長くする効果がある。但し図14のブレーキ車輪はドアが開くときも閉まるときもブレーキが効いた状態である。以下に紹介する装置に取り付くブレーキ車輪はドアが閉まるときにブレーキが効き、ドアが開くときにブレーキが効かない装置である。
図15はドア上部の回転軸CをアームAに取付く車輪Bが滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置である。ドアが開くに従い車輪Bはドアの回転軸Oに近づき、且つ引きバネVの伸びがドアを開くに従い増加の一途を辿り、引きバネVの強さが増してもドアに作用する力は減少し、ドアを開くときに重たく感じることはない。図15(b)に示すようにドアが開く過程において、車輪Bは板Aを引き上げながら板A上をドアの回転軸Oに近づく方向に移動する。この際車輪Bは滑走面Kから離れて回転し滑走面には接触せずに板A上を移動する。板A上を移動した後滑走面に接触して車輪の回転は停止して車輪の移動も停止するが、直後に車輪Bは板Aを引き上げながら板A上を移動しはじめる。
図15(d)に示すようにドアが閉まる過程において、車輪Bは板Aと滑走面Kに挟まれな
がらバネの力で押し出され、ドアの回転軸Oに遠ざかる方向に移動する。この際車輪Bが回転すると板Aと滑走面Kのどちらか一方に対しては進行方向に対して逆回転となるので、2つの接触面を持つ車輪は回転せずに滑りながら移動する。ここで使用する車輪は例えば金属製で滑りやすく、ゴム製のように摩擦のおおきな車輪は2つの接触面に挟まれて動かない場合がある。
板Aが湾曲しているのは、車輪Bがドアの回転軸Oから遠ざかるに従い、2つの接触面が車輪を挟む角度が減少しないようにするためで、車輪Bがドアの回転軸Oから遠ざかるに従い、バネの力が減少するので2つの接触面が車輪を挟む角度を広げるように設計する。図15のように滑走面が直線状のとき板Aを湾曲する必要があるが、滑走面が湾曲する場合、板の形状は直線状に近づく。
図16は「ドア上部に取り付けられた回転軸CをアームA先端に取付く車輪B」が凸面外側の滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置で、滑走面が凸面であり、しかもドアが開くに従い車輪がドアの回転中心Oに向かって近づいているので、ドアが閉まるときドアの回転の接線方向にドアDを牽引してドアを閉めて鍵をかけ、ドアが開くときドアDを牽引する方向を、ドアの回転の接線方向から半径方向に移行して、引きバネVの強さが増してもドアに作用する力は減少するようにした装置である。
滑走面Kを凸面にすることで、引きバネの伸縮量は少なく、図16(c)に示すように滑走面が直線状である場合よりも凸面の円の中心に近い位置Sに引きバネ端部を固定することが出来、ドアが開く過程においてバネの長さは増加の一途をたどる。図16(c)に示すように滑走面が直線状である場合、引きバネが滑走面に立てた垂線上にあるとき引きバネの長さは最小になり、変化しないので、車輪Bは停止する。
図16(d)図16(e)に示すアーム先端部の2つの車輪は密着した車輪或いは噛合った歯車であり、回転方向が互いに反対であるので、また2つの車輪を取付けたリンクAAはアームAと回転可能な接続軸Pで連結され、引きバネ端部の取付け位置が2つの車輪の中間に位置しているので、図16(d)に示すようにドアを閉めるときは2つのリンクA,AAはその接続位置で折れ曲がり、2つの車輪の両方が滑走面K上を移動してブレーキがかかり、図16(e)に示すようにドアを開くときは2つのリンクA,AAは一直線になって、2つの車輪の片方だけが滑走面K上を移動して、ブレーキはかからない。
図14図15図16は1つのアームA先端に取付く車輪Bが滑走面K上を移動しドアDを牽引する装置であるが、バネ1本で動作するものである。バネの力はドアが全開したとき最大でドアが閉まるとき最小であり、バネの力が最小のときに鍵をかける最大の力が要求される。図14図15図16の装置は鍵をかけるときの力が不足する欠点があり図17はこれを補うため、ドアの開閉に必要なバネVとは別に、鍵をかけるバネを追加するものである。
図17は図15の装置に、鍵をかける装置を組み合わせたもので、図15に示した2つの接触面に挟まれて減速する機能を持ち合わしている。図17(b)に示すようにドアを開くとき車輪Bは板AAを引き寄せ、板AAは当たりGに当たって回転軸Qの周りの回転を停止する。ドアを開くとき車輪Bは滑走面K上を滑走せず、静止した板AAの内側の円弧上を移動するが、ドアを閉めるときドアから手が離れると、引きバネVはドアDとアームAを互いに引き合うようにするだけで、板AAに力を及ぼさない。
ドアから手が離れると、車輪Bは引きバネVVにより滑走面に押さえつけられ、図17(c)に示すように車輪Bは滑走面Kと板AAとに挟まれる。車輪Bは回転せずに滑りながら移動し、ドアが閉まる速度は減速される。図17(c)に示す滑走面Kと板AAとは平行
であり、車輪Bは同じ幅を持つ溝状の通路を移動することになる。従って車輪Bと滑走面Kと板AAとは滑りやすく磨耗しにくい金属製である必要がある。
既に述べたようにドアに鍵がかかるときドアは回転しながら鍵がかかるので、鍵がかかる直前で停止した状態から鍵がかかる力があれば、ドアはどの位置で手を離しても勝手に閉まる力を有している。従って鍵をかける力が必要な力の最大値である。ドアを閉める装置は上記最大の力にブレーキをかけながらドアを閉める瞬間にブレーキを開放する装置でもある。しかし上記最大の力は鍵をかけるときにしか必要としない。また鍵がかかる時のバネの伸び縮みは最小であり、バネの力の最小値である。バネの力の最小値を上記最大の力に設定するより、鍵をかけるときにだけ作用して、それ以外のときは作用しないようにするのが得策である。
図18(a)に示す円弧の板Aは円弧の中心がドアの回転中心Oであり、円弧の板Aの両端のドアの静止状態以外の位置では、ドアが回転しても板Aは回転軸Qを中心に回転しない。ドアに取り付く車輪Bを板Aが押さえる力の方向はドアの回転中心Oに向かい、図2(b)に説明したようにドア天端に取り付けた車輪をドアの円運動の半径方向に力が作用し、板で車輪を押さえる力はドアの回転に影響しない。また図18(b)に示す円弧の滑走面Kは円弧の中心がドアの回転中心Oであり、図18(a)の場合と同様に円弧の滑走面Kの両端のドアの静止状態以外の位置では、滑走面を押しバネUで押す車輪はドアの回転中心方向に動かない。車輪が滑走面を押さえてドアの円運動の半径方向の反力を受けるが、ドアの回転に影響しない。
バネの力が鍵をかけるときにだけ作用して、それ以外のときは作用しないようにする装置の構造は、鍵がかかるときの僅かにドアが回転するときにだけ、大きな変形が起こり大きくバネが伸縮し、その他のドアの回転によっては全く変形しない構造であり、これに図9に示したドアに回転を与える引きバネを組み合わせることで、手を放しても勝手に閉まり鍵がかかるドアとなる。図18(a)、(b)に示す滑走面Kに末端には鍵をかけるための窪みKKがあり、窪みに連続する部分KKKで滑走面に凹凸を付けて、車輪を減速するようにしている。
図19は図17の装置に、鍵をかけるときにだけバネの力が作用する図18(a)の装置を組み合わせたもので、図17の装置と同様に図15に示した2つの接触面に挟まれて減速する機能を持ち合わしている。図18(b)に示すようにドアを開くとき車輪Bは板AAを引き寄せ、板AAは当たりGに当たって回転軸Qの周りの回転を停止する。ドアを開くとき車輪Bは滑走面K上を滑走せず、静止した板AAの内側の円弧上を移動するが、ドアを閉めるときドアから手が離れると、引きバネVはドアDとアームAを互いに引き合うようにするだけで、板AAに力を及ぼさない。
ドアから手が離れると、引きバネVVにより車輪Bが滑走面に押さえつけられ、図19(c)に示すように車輪Bは滑走面Kと板AAとに挟まれる。車輪Bは回転せずに滑りながら移動し、ドアが閉まる速度は減速される。図19(c)に示す滑走面Kと板AAとは平行であり、車輪Bは同じ幅を持つ溝状の通路を移動することになる。図17の装置と同様に車輪Bと滑走面Kと板AAとは滑りやすく磨耗しにくい金属製である必要がある。
図19(b)に示す静止した板AAの内側の円弧の円の中心はドアの回転中心Oであり、引きバネVVの力はドアの回転に作用しない。図19(a)に示すように「滑走面Kと板AAとに挟まれて移動し滑走面末端に至った車輪B」は板AAの末端で折り曲げられた部分に押されてドアが閉まる。ここで初めて引きバネVVの長さに変化があり、引きバネVVが鍵をかけるときにだけ機能することが理解できる。このとき引きバネVに鍵をかける力がなくても問題はない。
ドアから手を離すと勝手に閉まる装置は、ドアのどの位置においても静止したドアを動かす力が働いている必要があり、どの位置においても力が働く以上運動は加速されるので、ドアが閉まるときにはドアの速度が最大になり衝撃を伴う。上述の装置はドアの閉まる速度を減速するものであるが、ドアが閉まる直前においてドアが一旦停止するようにするのが望ましい。
滑走面が図12図13のように直線である場合、車輪が滑走面に進入するときアームと滑走面の角度は、進入当初に始め直角であっても、アームの侵入に伴い車輪が移動しアームは直角から次第に傾き、車輪の移動量が次第に減少する。滑走面を円周に近づけると、車輪が移動してもアームと滑走面の角度は直角に保たれ、アームの侵入に伴う車輪の移動量の減少はなくなる。図20に示すように滑走面をアームの回転軸を中心にする円周にすると、車輪がいくら移動してもアームの回転軸の移動はなくドアは一旦停止する。アームと滑走面の角度は常に直角に近い状態に保たれ、図12図13に認められた「アームの侵入に伴う車輪の移動量の減少」はない。
図20(a)に示すようにドアが全開した状態から閉まっていくとき、アームの回転軸Cはドアの回転軸Oを中心に円運動Roするが、ドアが閉まる直前のアームの回転軸の位置をC10として、アーム先端の車輪がC10を中心に円運動Rcするようにすると、ドアの閉まる直前においてはアーム先端の車輪が上記C10を中心に円運動するようなり、アーム先端の車輪が上記円運動する間は、ドアの回転が一旦停止する。
図20(a)に示すようにドアが全開した状態から少し閉まり始めて暫らくすると、車輪の位置がほとんど動かずアームだけが回転するようになり、アームの回転軸Cが車輪の位置を中心に円運動Roをするようになる。車輪の近くにバネの端部を取り付けると車輪の位置がほとんど動かない位置では、ドアを開いてもバネの長さの増加はすくなく、ドアに働くバネの力は小さく、ドアの開閉に抵抗が少なくなる。閉まる直前にアームの回転軸が上記C10の位置に至ると、ドアの回転がとまりアームの回転軸Cの移動は少なく、車輪だけが大きく動く。また図20(b)に示すように閉まりはじめにおいて回転軸Cの大きな移動にもかかわらずバネの伸縮は少なく、バネの全体の伸縮量を小さく設計できる。
図20(b)に示す構造の装置を動作させるバネは押しバネとなる。ドアの開閉の全過程において、バネの動きがドアの開閉と1対1の対応関係にあるようにし、バネの伸縮が増加或いは減少の一途をたどるようにする押しバネの固定端Sの位置は決まりにくい。図19のように滑走面の円弧と平行な湾曲した板を追加し、車輪を滑走面に沿う幅が一定の溝を移動するような構造を取り入れるか、或いは押しバネを採用するにしても図12図13の構造にしなければ動作しない。説明の簡単のため図20は押しバネで動作するものとする。
図20(a)に示すようにドアが全開した状態から閉まっていく過程において、「ドアが閉まる直前のアームの回転軸の位置C10」を中心とする円周Rc上をアーム先端の車輪が移動するようにした場合、ドアが全開した状態から閉まっていく過程において、アームAの方向はアーム先端の車輪Bの進行方向と一致した状態から次第にアーム先端の車輪の進行方向に直角方向に移行し、アームの回転軸Cの進行方向とアーム先端の車輪の進行方向とが互いに平行になり、またアームの回転軸が円運動するに従いアーム先端の車輪の進行が少なくなるので、アーム先端の車輪の進行がドアの回転に結びつかなくなる。
図20(a)に示すドアの回転軸Oを中心とする円r0はドアが全開した状態から少し閉まり始めたときのアームの延長線C80B90が接線となる円で、図20(a)に示される点線は「アームの回転軸Cのドアが全開した状態から閉まっていく過程におけるそれぞれの
位置」を始点とする円r0の接線であり、この接線上に仮想するアーム先端の車輪の軌跡はr1に示される。アーム先端の車輪が軌跡r1上を運動するようにすると、ドアを牽引する力とドアの回転軸Oとの距離が一定になり、バネが伸びた増分だけドアに作用するモーメントは大きくなるが、車輪が円周Rc上を円運動する場合に比べて、大きく移動しアーム先端の車輪の進行とドアの回転とが結びつく。
アーム先端の車輪が軌跡r1上を運動するとき、アームの延長線CBとドアの回転軸Oとの距離が一定となるが、アームの延長線CBはドアの回転に作用する力の作用線であり、ドアが全開した状態から閉まっていくに従い、バネの力も弱まっていくので、ドアに作用する回転力も小さくなり、上記回転力が一定でなければ、閉まる途中の位置でドアの回転が止まることになる。
ドアを開閉にバネの力を作用させるには車輪が円周Rcから離れて、車輪が「閉まったドアに直角方向」に大きく移動して、アームの方向が閉まったドアに平行になるような回転をしないようにする必要がある。図20(b)は図20(a)に示した軌跡r1の部分を直線にしたもので、図20(b)に実線で示したドアが閉まる直前の状態では、アームの方向が「閉まったドアに平行な方向」というより直角方向に近い。
図20(b)に示すように、ドアが全開した状態から閉まっていくに従い、アームの延長線CBとドアの回転軸Oとの距離は増加し、弱まっていくバネの力とアームの延長線CBとドアの回転軸Oとの距離との積を一定値に近づけ、ドアに働く回転モーメントを常に一定に保つようにする。図20(b)に示す車輪Bの運動の軌跡は図20(a)に示した円周の軌跡Rcと図13(b)で説明した「ドアが開くに従いドアの回転中心に近づく軌跡」を組み合わせたものである。
図20(b)において車輪が滑走面Kの直線部分を移動するときは、バネはドアを閉める仕事をしているが、車輪が円周Rc上を移動するときには、車輪を移動させるだけでドアの回転の仕事をしない。ドアの回転が止まって、車輪に負荷がかからないので、車輪はバネの力で一瞬にして円周を回ってしまう。車輪にブレーキをかけて円周部分を通過する時間を長くしなければ、ドアが閉まらずに一旦停止している時間はないことになる。
ドアを閉めるときで車輪が円周Rc上を移動するとき、バネの力は車輪を滑走面に押さえつけて、摩擦力を発生させる。ドアを閉まった位置から開くとき、車輪の回転軸Cが円周Rcの中心C10を通過すると、車輪が円周Rcに接触することなくアームは回転し、車輪の回転軸Cに位置は円周Rc上を飛び越えて一気に直線部分に飛びつくことになる。ドアを閉まった位置から開く過程において車輪が滑走面に接触することはないので、車輪にブレーキがかかることはない。
図20(b)においてアーム先端の2つの車輪は、前輪BBが車輪の向きが走行方向に向かない車輪で走行中にブレーキがかかる車輪で、後輪Bは車輪の向きが走行方向に一致する車輪で走行中にブレーキがかからない車輪である。滑走面K両端の窪みKKに車輪が嵌まり込むときと車輪が直線部分上にあるときは後輪Bが接地して前輪BBは滑走面から離れている。また車輪が円周Rc上にあるときは、ドアが閉まるとき前輪に抵抗がかかって後輪Bが浮くようにアームが回転し、ドアが開くときアームがバネに押されて前輪BBが浮くように回転する。
滑走面の車輪が円周Rc上にあるときは、バネの力はドアの回転に無関係であり、車輪が直線部分上にあるときはバネの力はドアの回転に抵抗を加えるので、バネの力はドアから手を離して勝手に閉まる力が必要最小限あればよいことになる。バネの力が必要となるのはドアに鍵を掛けるときだけで、車輪が滑走面の末端の窪みに嵌まり込んだときのバネの
長さの変化δが大きいだけでよい。この部分だけバネの長さが大きく変化しその他の部分では出来るだけ変化しないのほうがよい。図20(b)においてはバネの方向が、車輪が滑走面の末端の窪みに嵌まり込むときは車輪の進行方向に一致してドアの静止状態を保つが、その他の部分では出来る限り車輪の進行方向に直角方向である。
図21は、図20(b)のアーム先端部の車輪の詳細図で、図21(a)は側面図で図21(b)に示すイーイ矢視図、図21(b)は平面図、図21(c)は図21(a)に示すローロ矢視図である、図中、前輪BBが車輪の向きが走行方向に向かない車輪で走行中にブレーキがかかる車輪(請求項2および9記載の減速車輪)で、後輪Bは車輪の向きが走行方向に一致する車輪で走行中にブレーキがかからない車輪(請求項2および9記載の走行車輪)である。
図21(b)に示す滑走面K0、K1、K2、K3はそれぞれ前後輪のBB,Bが、前輪のBBだけが、後輪のBだけが、後輪のBだけが接触した状態を示し、滑走面K1はドアが閉まる方向に回転し、車輪がx方向に移動してアームが進行方向に対して後に回転し後輪が滑走面から離れた状態を示し、滑走面K2はドアが開く方向に回転し、車輪がxx方向に移動してアームが進行方向に対して前に回転し前輪が滑走面から離れた状態を示す。滑走面K3は後輪が図21(b)の直線の滑走面上にあって前輪が滑走面から離れた状態を示す
ドアに鍵を掛けるときドアが回転しながら鍵がかる。ドアに鍵を掛けるときに必要な力はドアを回転させる力に加えて鍵をかける力が必要である。したがって単に開いたドアを引き戻すにはドアに鍵を掛けるときに必要な力より小さい力より小さい力が働ければよいことになり、引き戻す力がドアに働くとドアを開くときに抵抗になって、ドアに働く力を必要最小限に小さくするほうがよい。ドアに鍵を掛けるときバネの伸び縮みに加えて、ドアを開いていくに従い、さらにバネの伸び縮みが付加される。本発明は、バネの長さが増加しても、上述したようにドアに働く力をドアに鍵を掛けるときに必要な力より小さくし、バネの力がドアの回転に全く作用しない状態にまで軽減できるようにするものである。
ドアに鍵を掛けるときに必要な力があればドアを引き戻す力を保有していることになるが、ドアに鍵を掛けるときバネの伸び縮み以外に、その他の部分でのバネの伸び縮みがなくては、開いたドアを引き戻すことは出来ない。開いたドアを引き戻すとき、ドアに鍵を掛けるときに必要な力を蓄えたまま消費することさえなければ、常にドアを引き戻すに十分な力を保有しているので、バネは閉まるに従い少しずつバネを伸縮させて、ドアに鍵を掛けるときバネの伸縮を残していればよいことになる。したがって、ドアに鍵を掛けるとき以外のバネの伸び縮みは少しだけあればよいことになる。
バネの力がドアの回転に全く作用しない状態にするとは言っても、バネの長さは増加の一途をたどりドアに作用する力は増加する。ドアに作用する力をドアの回転の半径方向に働かせて、ドアの回転運動に抵抗しないように出来るが、ドアの回転の半径方向に働く力はドアの回転軸に摩擦力となって働き、ドアはきしみながら開閉することになる。したがってアに鍵を掛けるときのバネの伸び縮み以上にバネを伸び縮みさせないことが肝要である。
バネの伸び縮みはドアに鍵を掛けるときの伸び縮みとその他の部分の伸び縮みの和であるので、バネの伸び縮みをドアに鍵を掛けるときだけ大きくして、且つその他の部分では出来るだけ小さくして伸び縮みの総量を出来るだけ小さくする。バネの力はバネの全長とバネの伸び縮みとの割合に比例するので、バネの全長を長くしてバネの伸び縮みを大きく力に変換しないようにするか、バネの全長が短くても弱いばねを採用して大きな力にしないようにするかをして、ドアに鍵を掛けるときの力以上の力を作用させないようにする、バネの全長に対してバネの伸び縮みが大きいバネはないので、図22はバネの全長を長くし
て、バネの固定端側の支点の位置をドアに鍵を掛けるときの伸び縮みを大きく評価する位置にするものである。
図22はドアDに取付けた枝Fの回転軸CにアームAを取り付け、アーム先端をバネで引くもので、バネの片方の支点Sは外開きドアの内側の壁に取り付けられるプレートWに固定される。またアーム先端には車輪Bが取り付き車輪Bは滑走面Rq上を滑走する。滑走面Rqは「ドアが閉まる直前でドアが一旦停止するときの回転軸Cの位置C15」を中心とする円弧である。ドアが閉まる直前でドアが一旦停止するときの回転軸Cの位置を定点Qとする。
ドアに装置を取付けるとき、図22(b)に示すようにドアを閉まる直前の状態にして、回転軸Cの位置と円弧の中心Qの位置とが一致するようにしてプレートWを固定する。回転軸Cの位置が決まればプレートWの位置も決まるので、ドアに取付ける枝の位置と枝の長さを調整して取り付ける。
車輪Bは滑走面Rq上を移動しアームAで連結したドアを牽引しドアに回転を与えるものであるが、車輪Bは滑走面Rq上の区間K15を滑走するとき、定点Qを中心とする円運動をしているのでドアとアームの接続軸C15の位置は動くことなく、ドアは一旦停止状態になる。仮にドアの回転が定点Qを通り越しても、車輪Bが定点Qを中心とする円運動をしている限りアームの接続軸C15の位置は定点Qに引き戻される。或いはバネで行く手を阻むように設計できる。ドアの一旦停止状態の継続時間は区間K15の長さが長いほど大きく、区間K15を滑走するときの減速の度合いによって更に長くなる。
車輪Bが引きバネによって引き寄せられ、定点Qを中心とする円運動を終了すると、車輪Bは区間K0(すなわち円弧Rqに連続する円弧Rqの接線部分)を移動しアームAでドアを引き寄せドアに鍵を掛ける。このとき引きバネV0の車輪Bを引く方向はほぼ車輪Bの移動方向に一致し、車輪Bがドアを引く方向もドアの回転の接線方向で、全ての力が効率のよい方向を向いて作用している。
これに対してドアを少し開いてからは、引きバネV0の車輪Bを引く方向はほぼ車輪Bの移動方向に直交し、車輪Bがドアを引く方向もドアの回転の半径方向で、全ての力が効率の悪い方向を向いて作用している。車輪Bが短い区間K90を移動する間にドアは約15度から90度まで大きく回転する。また車輪Bが長い区間K15とK0を大きく移動する間にドアは僅かに15度程度回転するだけである。
ドアが閉まる直前から鍵を掛けるまでのドアの僅かな回転に対して、バネの長さが大きく変化することは、ドアが閉まって鍵を掛ける瞬間に大きな力が働くことを意味しており、ドアが僅かに開いてから全開するまでのドアの大きな回転に対して、バネの長さが少ししか変化しないことは、ドアを開閉する間はほとんど力が働かないことを意味している。
図22以外の装置において、車輪はドアを閉めるとき滑走面に押さえつけられ、ドア開くとき滑走面から引き離される。図22の装置はこれらの装置とは逆で、車輪はドアを閉めるとき滑走面から引き離され、ドア開くとき滑走面に押さえつけられる。ドアを閉めるときブレーキがかからず、ドア開くときブレーキがかかるので、車輪Bが図22のK15とK0の長い区間を、ドアを閉める方向に移動するとき、車輪にブレーキがかかるようにし、ドアを開く方向に移動するとき、車輪にブレーキがかからない状態にしなければならない。
図23は、図22のアーム先端部の車輪の詳細図で、ブレーキとして働く3個の車輪の外側の車輪をアームA先端部に取付け、ブレーキをかけながら走行する上記3個の車輪の外側の車輪を開閉する蝶番に取付けて、ドアを閉める方向に移動するとき内側に閉じて、中央の車輪が浮いて外側の車輪が接触するようにし、ドアを開く方向に移動するとき外側に開いて、外側の車輪が浮いて中央の車輪が接触するようにする。
図23(a)、図23(b)、図23(c)は平面図、図23(d)、図23(e)は側面図で図23(d)は図23(c)に示すイーイ矢視図、図23(e)は図23(d)に示すローロ矢視図である。図中、後輪BBが車輪の向きが走行方向に向かない車輪(請求項2および9記載の減速車輪)で走行中にブレーキがかかる車輪で、前輪Bは車輪の向きが走行方向に一致する車輪で走行中にブレーキがかからない車輪(請求項2および9記載の走行車輪)である。
前輪BはアームAに固定される回転軸に取付けられ、後輪BBはアームAの延長部Baに取付けられる蝶番Bcに取付けられる。滑走面Kは前後輪の3つの車輪が接触しうる滑走面で、滑走面KKは後輪だけが接触しうる幅の狭い滑走面である。
図23(a)はドアが閉まる方向に回転し後輪BBが先に滑走面Kに侵入して蝶番Bcが回転して図23(c)に示すように後輪BB自立し前輪が滑走面から離れた状態になる。図23(b)はドアが開く方向に回転し後輪BBがあとから滑走面Kに侵入して蝶番Bcが回転して後輪BBが倒れ滑走面から離れた状態を示す。車輪の向きが走行方向に向かない車輪BBは走行中にブレーキがかかる車輪で、車輪と滑走面の間で摩擦がある以外に、車輪側面と車輪枠とが接触する部分に摩擦が生じる。
ドアを押して開くときバネが例えば伸びて、ドアから手を離すとバネが縮んで閉まるが、ドアを開閉する過程においてバネの長さは増加或いは減少の一途をたどり、ドアを閉じる過程においてバネの長さは途中で止まることなく変化し続ける。またドアを開閉する過程においてバネの長さ、回転軸Sの周りのバネの回転、滑走面上を移動する車輪の位置B、ドアの回転に伴うアームの接続軸Cの位置がそれぞれ変化するが、バネの長さと滑走面上を移動する車輪の位置Bとは1対1の対応関係にあり、回転軸Sの周りのバネの回転も接続軸Cの位置も滑走面上の車輪の位置に従属する。つまりドアの回転角度が決まればその他の変数の値も決定する。またドアを開閉する過程において可逆である。
しかし、図20においてドアを押して開くとき押しバネは縮みながら固定端Sを中心に回転するが、押しバネの回転方向は車輪Bが滑走面に沿ってドアの回転中心に近づく方向でなければならない。図20に示したようにアームAより押しバネが滑走面側にある場合は押しバネの回転方向は車輪Bが滑走面から離れドアの回転中心から遠ざかる方向で、滑走面に沿うことはない。アームAより押しバネが滑走面側にある場合も押しバネよりアームAが滑走面側になる場合も永久にその位置関係が逆転することはない。
図22の引きバネの場合においても同じことが言え、ドアの開閉の全過程において上記位置関係の逆転がある場合、上述したドアの回転角度と車輪の位置Bとの1対1の対応関係は成立しない。成立させるためには、車輪Bが強制的に滑走面Kに沿って移動させるようにしなければならない。図23図24は車輪が円運動するので、円運動の中心を回転軸とするアームに車輪を接続して車輪の運動を規制したものである。
図24(a)(b)において、円Roの中心はドアの回転軸Oで、円Rqの中心はアームAA(請求項3記載の第二のアーム)の回転軸Qで、アームAAの回転軸Qは円Roの円外である。図24(a)はドアを牽引するアームA(請求項3記載の第一のアーム)の長さが短い場合でドアが開いている状態を示し、図24(b)はドアを牽引するアームAの長さが長い場合でドアが閉まっている状態を示す。点線で示し2つの円上の各点を結ぶ線分CPは、ドアの回転に従い空間を移動するアームAを表す。
アームAが短い場合は長い場合よりも、ドアの回転に対して接続軸Pの移動は少なく、ド
アが閉まる直前にドアの一旦停止状態が認められる。ドアが全開する直前においての接続軸Pの一旦停止状態が認められ、アームAは停止した接続軸Pを中心に回転する。アームAはどちらか一方の端部が他方の端部を中心にして円運動をし、途中で円運動する側の端部が入れ替わるが、この入れ替わりの際、アームAが互いに円運動の半径方向に向くようになり、装置は動きにくい機構となる。
この傾向はアームAが短い場合のほうが長い場合よりも顕著であり、図24(a)に示す線分CPはほとんど、ドアの回転軸OとアームAAの回転軸Qを結ぶ直線に平行であり図24(b)に示す線分CPは、ドアの回転軸OとアームAAの回転軸Qを結ぶ直線と傾斜している。図24(a)に示すようにアームAを短くする場合、アームAが互いに円運動の半径方向に向くときアームAの長さが変化するようにすると動きやすくなる。図24(c)はアームAに引きバネを内蔵する伸縮継ぎ手を設けるもので、図24(d) は押しバネを内蔵する蝶番を仕組んだ関節を設けるものである。
ドアが閉まる直前において、アームAのドア側の接続軸Cはほとんど動かず、アームAのドア側の接続軸Pは大きく移動する。接続軸Pの移動速度を減速するとドアの一旦停止状態が長く継続する。ドアが全開する直前においてはドアが閉まる直前における場合と反対に、アームAのドア側の接続軸Cは大きく移動し、アームAのドア側の接続軸Pはほとんど動かない。接続軸Pの移動が少ないことは、回転軸Qを中心とするアームAAの回転も少ないことで、引きバネの伸縮も少ないことになり、ドアは少ない力で開くことになる。
一般に片方の小さい動きで他方を大きく動かすとき、小さい動きをする側に大きな力が必要で、大きく動くほうは僅かな力で動くことになる。図24の場合においては、ドアが全開に近づくほど僅かな力で動くことになり、ドアが閉まる直前においては僅かな力でドアをしめることになる。ドアが閉まる過程においてドアを強く押しても車輪と滑走面に僅かな摩擦力があれば動かない。すなわち片側を動かせば他方は簡単に動くが、他方を動かしても片方は簡単に動かない特徴がある。ドアから手を離してドアが閉まるとき強い風が吹いてもドアは急に動かない効果がある。
図24図25においてドアの開閉に関与するバネと鍵をかけるバネは別に用意され、鍵をかける装置は図18(B)に示す方式を採用する。図24に示す固定した滑走面Kは「アームAAの回転中心Q」を中心とする円弧で、バネを内蔵し滑走面を押しつける車輪は回転軸Qを中心に回転するアームAAの接続軸に取付けられる。ドアの開閉の全過程において車輪Bは滑走面を押さえ続け、滑走面末端において窪みKKに嵌まり込んでバネが働いて鍵をかけることになる。滑走面末端以外の場所では、車輪に内蔵しバネの長さに変化はなく鍵をかけるに要する力が滑走面にかかり続けるが、力の方向がドアの回転軸方向に一致するので、ドアの開閉に影響しない。
ドアを開く途中から車輪Bが滑走面Kを離れる場合、ドアから手を離して閉まる過程において、車輪Bが滑走面Kに侵入するとき、車輪に内蔵しバネが伸びきった状態からドアの開閉に関与するバネが縮むが、このとき鍵をかけると同じ力が必要となる。車輪Bが滑走面Kに侵入する場所ではドアの開閉に関与するバネが伸びた状態で滑走面Kに乗り上げるに十分な力を有しているものとし、ドアが閉まる直前ではドアの開閉に関与するバネが縮んだ状態でも、車輪と滑走面の摩擦に抵抗して車輪が止まることなく、ドアを回転させる力を保有しているものとする。
「ドアが閉まる直前で車輪が滑走面の摩擦に抵抗して進行するに要するドアの開閉に関与するバネの力」は滑走面末端の窪みKKに嵌まり込んだとき開放され、鍵をかける力に置換される。一般にドアの開閉に関与するバネの力の「ドアが閉まる直前で摩擦に抵抗して進行する力」が、鍵をかける力を上回れば鍵をかける装置は要らない。
図25(a)(b)に示す車輪はアームAA(請求項3記載の第二のアーム)の接続軸に取付けられる車輪で、ドアが閉まる方向xに進むとき減速し、ドアが開く方向xxに進むとき減速しない。図25(a)において、車輪Bの前方に取り付くスカートJaは回転軸Iを中心に回転しドアが閉まる方向xに進むとき車輪に触れる方向に回転し、ドアが開く方向xxに進むとき車輪から離れる方向に回転する。図25(b)において、車輪BBの車輪枠Jbは蝶番の回転軸Iを中心に回転しドアが閉まる方向xに進むときブレーキシュウGに触れる方向に回転し、ドアが開く方向xxに進むとき当たりGから離れる方向に回転する。点線で示す車輪Bは車輪BBの蝶番が閉じた状態のときの車輪でブレーキシュウGに触れることなく回転する。
図25(c)(d)において、円Roの中心はドアの回転軸Oで、円Rqの中心はアームAAの回転軸Qで、アームAAの回転軸Qは円Roの円内である。図25(c)はドアを牽引するアームA(請求項3記載の第一のアーム)の長さが短い場合でドアが開いている状態を示し、図25(d)はドアを牽引するアームAの長さが長い場合でドアが閉まっている状態を示す。点線で示し2つの円上の各点を結ぶ線分CPは、ドアの回転に従い空間を移動するアームAを表し、アームAが短い場合も長い場合も、ドアの回転速度と接続軸Pの移動速度とはほとんど比例関係にあり、図24で認められるドアの一旦停止状態は認められない。
また図24の場合と比べてドアDとアームAとのなす角度の変化は少なく、ドアが全開状態で直角に近くドアを開いていくときドアが重たく感じられることになる。このことはドアを開いていくとき接続軸Pがドアの回転中心に近づかない理由に基づく。また回転軸Qを中心とするアームAAの回転も大きく、接続軸Pの移動も大きい。
ドアが急に開いたときにドアの回転に鍵をかけるために「遠心力を利用した停止装置」や、ドアをゆっくりと開閉させるために「粘性抵抗による減速装置」を取付ける手段があるが、これらの装置はドアの回転に連動するもので、ドアの回転に負荷を与え、ドアの回転に抵抗を与えるものである。本発明はドアの回転に連動するものではなく、重量による自然落下現象に基づいて別途に動くものであり、ドアが静止した状態から開き初めて一定時間後に一定の位置を通過するかどうかを判定するもので、ドアの回転が一定速度を越えた場合、より早く上記一定の位置に到達するので、上記一定の位置で出し入れされる当たりが外れる以前にドアの一部が衝突して、ドアの回転が停止するものである。
本発明は「静止した状態から運動し始めて一定時間後に一定速度を越える物体を、下り勾配の通路の一定区間を一定の所要時間で通過する鋼球の重心移動で上下する当りで制止させる物体の急加速を制止する装置」で、ドアに限らず一般の急に加速する物体を制止させる装置として広く応用できるものである。
すなわち、「、物体が上記測定区間を侵入したと同時に鋼球が下り勾配の通路を転がり始めるようにして、下り勾配の通路の終端に上記鋼球が到達して上記鋼球の重量で当たりを上下させ、上記当りが物体の軌道内から排除されない以前に、物体が上記測定区間を通過し終えたとき当りにあたって制止し、鋼球の重量で上記当りが物体の軌道内から排除された以後に、物体が上記測定区間を通過し終えるとき当りにあたらず運動を継続するようにした物体の急加速を制止する装置」である。
物体が測定区間を移動する所要時間によって物体が区間終点を通過する速度を設定することができ、物体が測定区間を移動する所要時間は鋼球が下り勾配の通路を転がる長さで測定できる。鋼球が下り勾配の通路を転がり始めて、下り勾配の通路の終端に到達するまでに要する時間は下り勾配の通路の長さで決まり、直線状の下り勾配の通路の長さが下り勾配の平面内に設定できない場合、下り勾配の通路を直線からS字に蛇行させた通路にして通路の長さを大きくする。
図26は上記物体の急加速を制止する装置を図20のドア開閉装置に取り入れたもので、図26(a―1)にしめす位置D1で運動し始めて一定時間後に図26(b―1)にしめす位置D2でドアの回転速度が一定速度を越えているかどうかを判定する。滑走面はKKとKの2つの部分に分かれ、運動し始めの位置D1で車輪BがKKの部分から離れると図26(b―1)にしめすようにKKの部分は回転軸Iを中心に回転し、KKの部分の延長部の長穴KKKも平行移動する。
図26(a―3)にしめすように長穴KKKには勾配がついており、ドアが運動し始める以前では図26(a―2)にしめすように、長穴KKKの上側接触面KHが「鋼球Nの通路である管Mの末端に取り付く当たりGn」を上から押さえて鋼球Nを通路Mの始点に留め置いているが、長穴KKKが平行移動すると、図26(a―3)にしめすように下側接触面KLが当たりGnを下から突き上げる。図26(b―2)にしめすように管Mは回転軸Imを中心に回転し下り勾配になり、鋼球Nが管Mの内部を下り始め終点に向かう。鋼球Nが管Mの内部の終点に至るまで、管Mの終点に取り付く当たりGmは車輪の通り道xを塞ぐ高さを維持し、鋼球Nが終点に至ると管Mは回転軸Imを中心に更に回転し更に下り勾配になって、当たりGmは車輪の通り道xを塞ぐ高さから下に移動し車輪の通り道xを空けることになる。
鋼球Nが終点に至るまでに、車輪Bが当たりGmのある位置に至ると、図26(b―1)にしめすように車輪Bが当たりGmに衝突する。鋼球Nが終点に至った後に、車輪Bが当たりGmのある位置に至ると図26(b―3)にしめすように、車輪の通り道xが空けられた状態になっているので、ドアは全開できる。図26(b―3)にしめすように鋼球Nが終点にある状態では、長穴KKKの上側接触面KHが管Mの末端の当たりGnを上から押さえているが、ドアが閉まる途中で車輪Bが滑走面KKに当たって滑走面KKを回転させ、長穴KKKが平行移動して管Mの末端の当たりGnを上から押さえて、図26(a―2)にしめすように鋼球Nを通路Mの始点に戻す。
図27は図17の実施例の部品構成図で、H1はカバーW1をドア枠に取り付けるボルト、H2は滑走面KにカバーW1を取付けるボルト、H3は車輪Bを2枚のプレートW2でドアに取付けるボルトである。車輪Bを取り付ける車輪枠Fの車輪とプレートとの間隙に板Aが貫通し、車輪Bは滑走面Kと板Aとの間に挟まれる。
図28は図24の実施例の部品構成図で、H1はカバーW1をドア枠に取り付けるボルト、H2はプレートW3にカバーW1を取付けるボルト、H3はプレートW2をドアに取付けるボルトである。図24の構造とは異なり、蝶番Iを中心に回転する滑走面Kは押しバネUで車輪Bを押さえつける。滑走面Kの内面には内歯車のような加工が施され車輪Bの移動速度を減速している。滑走面Kの蝶番Iの近くの折れ曲がりは鍵をかけるためのものである。