JP4163349B2 - ストローク長調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明はストローク長調整装置に関し、更に詳しくは、潤滑油の使用量を低減することができ、より効果的にベアリング等に潤滑油を供給することができ、構造をより簡単にすることができ、小型化を実現することができるストローク長調整装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
従来から、例えば、ストローク長調整装置を採用したストローク長調整式の往復動ポンプ等においては、リードスクリューの外周部、リードスクリュー接続部等に設けられた軸受を潤滑する方法として、例えば、
(イ)油貯留槽内に貯留された潤滑油中に、前記軸受あるいは前記軸受の一部が浸漬するように、潤滑油のオイルレベルを上げる方法、
(ロ)ウォーム軸にオイルインペラ、潤滑油供給インペラ等を取り付けて、フレーム内に設けた油流通孔を通じて、オイルインペラ、潤滑油供給インペラ等によって前記軸受に潤滑油を供給する方法、
(ハ)回転部分にスリンガ、給油円盤等を取り付けて、油だまりからスリンガ、給油円盤等によって前記軸受に潤滑油を供給する方法、
(ニ)グリースを充填してなるグリース封入式のシールドベアリング(「密封軸受」と称することもできる。)を用いる方法等があった。
【0003】
しかしながら、
前記(イ)の方法においては、例えば、多量の潤滑油、具体的には例えば、油貯留槽内を殆ど満たすほどに潤滑油を使用しなければならないという問題、このように潤滑油を多く必要とするから、潤滑油の供給過多となったり、潤滑油が漏れ出たりするという問題等があり、
前記(ロ)の方法においては、例えば、オイルインペラ、潤滑油供給インペラ、油流通孔等の潤滑油供給手段を設ける必要があり、装置が複雑になるという問題等があり、
前記(ハ)の方法においては、例えば、スリンガ、給油円盤、油だまり等の潤滑油供給手段を設ける必要があるという問題等があり、
前記(ニ)の方法においては、例えば、シールドベアリングとしては、通常ボールベアリングが用いられているので、荷重の制限が有り、比較的小型のポンプには採用することができても、より大型のポンプには採用することができないという問題等があった。
【0004】
この発明は前記諸問題を解決することを目的とする。
【0005】
この発明の目的は、潤滑油の使用量を低減することができ、より効果的にベアリング等に潤滑油を供給することができ、構造をより簡単にすることができ、小型化を実現することができるストローク長調整装置を提供することにある。
【0006】
この発明の他の目的は、従来の装置よりも部品点数が少なく、したがって組み立ての容易なストローク長調整装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するためこの発明は、
縦方向の中心軸を中心にして回転可能に配置され、上端から下端に貫通する貫通孔を備え、油貯留槽内に貯留された潤滑油に浸漬される下端部を有してなるクランク部材と、
このクランク部材の回転に対してベアリングを介して回転不可能に前記クランク部材の上端に配置されたリードスクリュー接続部に設けられたメスネジ孔に螺合し、前記貫通孔に挿入されると共に前記潤滑油に常時浸漬される下端部を有するリードスクリューと、
回転駆動手段による回転運動を前記クランク部材の回転運動に伝達し、前記リードスクリューの回転によって昇降する前記クランク部材の昇降位置に応じて前記クランク部材の回転運動をストローク長の異なる往復運動に変換する往復運動変換手段とを備えてなり、
前記クランク部材は、前記リードスクリューの外周面に形成されたオスネジを前記潤滑油が上昇する方向に、回転することを特徴とするストローク長調整装置であり、
この発明の他の好適な態様においては、前記貫通孔は、その内周面にメスネジが形成されてなり、
この発明のさらに好適な態様においては、前記貫通孔の内周面に形成されたメスネジが、前記リードスクリューの外周面に形成されたオスネジに対して逆ネジである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の一実施例について図面を参照しながら説明する。なお、この発明は、以下の具体的説明の内容に限定されるものではない。
【0009】
図1〜図6に示すように、この発明の一実施例であるストローク長調整装置1は、回転力を付与する回転駆動手段2により回転可能に形成され、支持手段3により回転可能に支持された円筒体4と、軸線方向移動手段5により上下動可能に形成されたクランク部材6と、このクランク部材6の軸線に対して直交する方向において前記クランク部材6に装着されるカム7と、このカム7の回転により往復運動をする往復運動体8と、油貯留槽9とを備える。
【0010】
前記円筒体4は、油貯留槽9の上面に開口する開口部10にはめ込まれた蓋体11に固定されたところの、前記円筒体を支持することができる円筒形のスリーブ部12と、油貯留槽9の底面に設けられたところの、前記円筒体4を支持することができる円筒形状の据え付け部13とで、ベアリングを介して、前記油貯留槽9内の所定の位置に、回転可能に立設保持される。
【0011】
なお、このスリーブ部12及び前記据え付け部13の組み合わせは、油貯留槽9内でこの円筒体4を回転可能に保持する支持手段3であり、また、この油貯留槽9内で円筒体4を回転可能に立設する円筒体据え付け手段でもある。
【0012】
この円筒体4の長さは、この円筒体4が立設状態にある場合に、後述するクランク部材6が軸線方向移動手段5により下死点及び上死点のいずれにおいても、クランク部材6の一部または全部が円筒体4内に存在するように決定される。クランク部材6の全部が円筒体4内に存在すると、荷重及び偶力の分散をより大きく行うことができるという利点がある。
【0013】
この円筒体4の中央部には、図3に示されるように、相対向する位置関係を持って開設された二つの開口部が形成される。これらを第1開口部14a及び第2開口部14bと称する。この第1開口部14a及び第2開口部14bは、それらの正面から見ると何れも同じ四角形状をしている。この第1開口部14a及び第2開口部14bには、後述するようにカム7の一部が挿入される。
【0014】
図1及び図2に示されるように、円筒体4の下部には、ウオームホイール15が取り付けられる。すなわち、ウオームホイール15は、前記円筒体4を嵌合することができるように形成された円形の取り付け穴16を有し、この円形の取り付け穴16に前記円筒体4の下部が嵌合されている。この円筒体4の外周面下部にはキー17が取り付けられていて、これによって、ウオームホイール15が回転すると円筒体4も共に回転することができる。前記ウオームホイール15の外周面には、歯が形成されていて、駆動手段たとえばモータ(図示せず。)の回転軸に結合されたウオームシャフト18とこの歯とが噛み合っている。したがって、モータ(図示せず。)が駆動すると、この円筒体4も共に回転することができる。
【0015】
この実施例においては、駆動手段の回転力をこの円筒体4に伝達する回転駆動手段2が、前記モータ、ウォームシャフト18及びウォームホイール15を含んでなる一連の組み合わせにより、形成される。
【0016】
前記クランク部材6は、前記円筒体4内に嵌合状態で配置される。このクランク部材6は、図4に良く示されるように、前記円筒体4の軸線と同じ軸線を有する円柱体の外周面の一部をなし、しかも前記円筒体4の内周面と摺動可能に形成された外周面部19と、この円柱体の周側面に円柱体の一端から他端へと溝状に穿設形成された一対の斜行する第1溝60a及び第2溝60bを有する。この第1溝60a及び第2溝60bは、互いに背中合わせに形成される。
【0017】
この第1溝60aは、このクランク部材6の軸線に対して所定の角度で斜行する第1斜行面61aとこの第1斜行面61aに相対向して平行に斜行する第2斜行面61bと、この第1溝60aの底面となるように形成された、第1斜行面61a及び第2斜行面61bとは直交する平面である第1底面62aとで、クランク部材の周面に凹状に形成される。このクランク部材6のその軸線に直交する方向における断面において、第1斜行面61aの端縁線と第1底面62aの端縁線とは直交し、また第2斜行面61bの端縁線と第1底面62aの端縁線とは直交して顕れる。
【0018】
前記第2溝60bは、このクランク部材6の軸線に対して所定の角度で斜行する第3斜行面61cと、この第3斜行面61cに相対向して平行に斜行する第4斜行面61dと、この第2溝60bの底面となるように形成された、第3斜行面61c及び第4斜行面61dとは直交する平面である第2底面62bとで、クランク部材6の周面に凹状に形成される。このクランク部材6のその軸線に直交する方向における断面において、第3斜行面61cの端縁線と第2底面62bの端線縁とは直交し、また第4斜行面61dの端縁線と第2底面62bの端縁線とは直交して顕れる。
【0019】
前記第1底面62aと第2底面62bとは互いに並行に、且つ背中合わせに形成される。この例では、前記第1斜行面61aと第3斜行面61cとは同じ平面にあり、また第2斜行面61bと第4斜行面61dとは同じ平面にある。
【0020】
この実施例においては、前記第1溝60a及び第2溝60bが、この発明におけるカム案内部に相当する。更に言うと、この第1溝60aにおける第1斜行面61a及び第2斜行面61bと、第2溝60bにおける第3斜行面61c及び第4斜行面61dとは、円筒体4の軸線を中心とする回転に応じてクランク部材6が回転することによりカム部材7を回転させる回転力伝達面であり、しかも、円筒体4内でクランク部材6が移動するのに応じてカム部材7を円筒体4の軸線に直交する平面内で偏心させるカム移動力伝達面でもある。
【0021】
なお、見方を変えて言うと、このクランク部材6は、前記円筒体4の内周面と摺動可能に形成された円柱体の一端から他端にかけて、この円柱体の周側面に背中合わせに、且つ側面から見て斜行する一対の第1溝60a及び第2溝60bを有するクランク部材である。
【0022】
また、前記クランク部材6の中心部には、貫通孔65が、このクランク部材6の上端から下端に向かって貫通するように形成されている(図1及び図2参照)。貫通孔65には、後述する軸線方向移動手段5の備えるリードスクリュー53が挿通する。このリードスクリュー53の長さは、油貯留槽9内に貯留された潤滑油にこのリードスクリュー53の少なくとも先端が浸漬するに足る長さを有する。また、見方を変えて言うと、このリードスクリュー53は、その先端が前記潤滑油に浸漬するように、配置される。
【0023】
このリードスクリュー53の直径は、前記貫通孔65の直径よりも0.6mm〜1mmだけ短くなっている。換言すると、貫通孔65にリードスクリュー53を挿入すると、リードスクリュー53と貫通孔65との間に0.3mm〜0.5mmの間隙が生じている。このような間隙が生じているので、潤滑油が、その粘性及びハイドロダイナミック効果によって、その間隙中を上昇する。
【0024】
このクランク部材6は、軸線方向移動手段5により前記円筒体4内でその軸線に沿って往復動可能に形成されている。したがって、軸線方向移動手段5におけるリードスクリュー53が回転すると、その回転方向に応じてクランク部材6が昇降し、リードスクリュー53と貫通孔65との間隙に存在する潤滑油が上昇する。つまり、クランク部材が回転すると、貫通孔とリードスクリューとの間隙に存在する粘性のある潤滑油も回転運動をし、その回転方向はリードスクリューのネジを上昇する方向であるので、潤滑油が前記間隙内を上昇していく。
【0025】
図1及び図2に示されるように、前記軸線方向移動手段5は、円筒状軸体51とリードスクリュー接続部(クランク部材6の上に、クランク部材6の上面を覆うように配置されることから、「キャップ部」と称することもできる。)52とリードスクリュー53とロックナット54とハンドル部56とを備えている。なお、この実施例においては、前記円筒状軸体51とリードスクリュー接続部52とロックナット54とハンドル部56とを有して、クランク部材6を上下方向に移動させるクランク部材移動手段が構成されている。
【0026】
前記円筒状軸体51は、前記クランク部材6の上面に、前記クランク部材6と同一の軸線を有するように立設され、その上端にはこの円筒状軸体51の外周よりも大きな直径を有する円盤状のフランジ51cが取り付けられている。前記円筒状軸体51の中心部においては、前記リードスクリュー53が挿通するリードスクリュー挿通孔51bが軸線に沿って開設されている。前記リードスクリュー挿通孔51bは、クランク部材6の有する貫通孔65と同一の直径を有している。
【0027】
リードスクリュー接続部52は、上端に閉塞面が形成され、下方に向かって開口する有底円筒体であり、前記閉塞面には、前記リードスクリュー53が螺合するメス螺子孔が形成されている。このリードスクリュー接続部52における開口下端部には前記円筒状軸体51を挿入することのできる円形孔を有する円盤状の保持板が取り付けられている。この保持板がクランク部材の上端面と前記フランジ51cとの間に挿入され、保持板に取り付けられたベアリング51aによりクランク部材6が回転可能になり、クランク部材6の回転に伴ってこのリードスクリュー接続部52が回転することがないように、つまり回転不能に構成されている。
【0028】
前記リードスクリュー接続部52は、前記リードスクリュー53が回転したときに前記リードスクリュー接続部52が回転しないように、また、リードスクリュー接続部52の位置が固定されるように、固定部材52aが設けられている。
【0029】
リードスクリュー53の略上端部には、半径方向に沿って外側に延在する鍔状部53aが設けられる。前記鍔状部53aとリードスクリュー53の下端部との間における外周面には、オス螺子山が形成されている。前記リードスクリュー53は、前記オス螺子山と前記リードスクリュー接続部52におけるメス螺子孔に螺合する。
【0030】
前記リードスクリュー53は、前記鍔状部53aの近傍における、前記鍔状部53aを挟んで前記リードスクリュー接続部52が螺合する側とは反対側の部分において、蓋部11によって、回動可能に保持されている。前記リードスクリュー53における蓋部11の上方にはナット(図示せず。)及びロックナット54が螺合している。これによって前記リードスクリュー53は、軸線方向に移動したり脱落したりしないように保持される。
【0031】
前記リードスクリュー53におけるロックナット54よりも上方には、歯車55aが固定されている。尚、前記歯車55aは、前記蓋部11の上面に螺子止めされた有底円筒状の軸受け部覆い11aの側面に設けられたストローク表示カウンタ55bの備える駆動歯車に噛み合っている。更に、前記リードスクリュー53は、前記有底円筒状の軸受け部覆い11aの上端に位置する閉塞面の中央部に形成された開口部を回転可能に貫通する。図1及び図2におけるリードスクリュー53の上端には、下方に向かって開口した有底円筒状のハンドル部56が装着されている。
【0032】
前記ハンドル部56を回転させると、リードスクリュー53が回転し、前記リードスクリュー53に螺合するリードスクリュー接続部52が、前記リードスクリュー53の回転方向に応じて下降し、又は上昇する。リードスクリュー接続部52が下降し、又は上昇すると、それに伴って円筒状軸体51が下降し、又は上昇し、クランク部材6も下降し、又は上昇する。又、前記リードスクリュー接続部52には、前述のようにベアリング51aを介して前記円筒状軸体51が回転可能に装着されているから、前記クランク部材6がその軸線を中心にして回転しても前記リードスクリュー接続部52及びリードスクリュー53は回転することなくそのままの位置を保ち、ネジポンプの機能を発揮する。
【0033】
前記カム7は、図5及び図6に示されるように、第1カム部材30aと第2カム部材30bとを有する。
【0034】
この第1カム部材30aは、前記第2カム部材30bと突合したときに形成される、前記円筒体4の直径よりも大きな直径を有する円の一部となる第1内周面部31aと、この第1内周面部31aに対応する第1外周面部32aと、前記第1開口部14aにはまりこむ第1案内平面部63aと、この第1案内平面部63aから突出する第1斜行突出部64aとを有する。また、前記第2カム部材30bは、前記第1カム部材30aと突合したときに形成される、前記円筒体4の直径よりも大きな直径を有する円の一部となる第2内周面31bと、この第2内周面31bに対応する第2外周面32bと、前記第2開口部14bにはまりこむ第2案内平面部63bと、この第2案内平面部63bから突出する第2斜行突出部64bとを有する。
【0035】
第1カム部材30aの第1内周面部31aの直径と、第2カム部材30bの第2内周面部31bの直径とは同じである。図5及び図6に示されるように、第1カム部材30aと第2カム部材30bとを突合したときに前記第1内周面部31aと第2内周面部31bとで形成される相対向する一対の円弧の直径Rは、円筒体4内に装着されたクランク部材6の第1溝60aに第1斜行突出部64aが嵌合され、また第2溝60bに第2斜行突出部64bが嵌合された状態で、円筒体4内でクランク部材6が軸線に沿って移動することによって、円筒体4がクランク部材6に対して軸線に直交する平面内で相対的に直線移動することができ、しかも、円筒体4がクランク部材6における前記第1内周面部31a又は第2内周面部31bに衝突しない程度の寸法になるように、設計される。
【0036】
前記第1案内平面部63a及び第2案内平面部63bは、第1カム部材30a及び第2カム部材30bの内周面において互いに相対向して平行に形成される。この第1案内平面部63a及び第2案内平面部63bは、円筒体4内に装着されたクランク部材6が円筒体4の軸線に沿って移動したときにカム7が円筒体4の軸線に直交する平面内で直線移動をすることができるようにカム7を案内する。
【0037】
前記第1斜行突出部64a及び第2斜行突出部64bは、クランク部材6に形成された第1溝60a及び第2溝60b内に嵌合され、円筒体4内をクランク部材6が移動すると円筒体4の軸線に直交する平面においてカム7を直線運動させる。
【0038】
したがって、この第1斜行突出部64a及び第2斜行突出部64bは、前記第1溝60a及び第2溝60bに嵌合する幅を有し、しかも第1溝60a及び第2溝60bと同じ傾斜角をもって傾斜する傾斜板に形成される。前記第1溝60a内を第1斜行突出部64aが摺動することにより、カム7の直線運動が可能になり、換言するとカム7の偏心が可能になるので、この第1斜行突出部64aは第1溝60aにより案内される被案内部であると言える。第2斜行突出部64bについても第1斜行突出部64aと同様であり、被案内部であると言える。
【0039】
図5及び図6に示されるように、前記カム7には、このカム7を装着保持する円形の開口部36を備えたカム保持部37と、一端において前記カム保持部37と一体に形成され、他端においてシリンダー(図示せず。)に嵌挿されたピストン(図示せず。)に結合された連接棒39とで形成された往復運動体8が取り付けられる。前記カム7は、往復運動体8におけるカム保持部37に回転可能に填め込まれるようにして取り付けられる。前記往復運動体8は、カム7の偏心回転運動を往復運動に変換する機能を有する。
【0040】
この実施例においては、軸芯が同じになるように、しかも一体となって回転可能になるように円筒体4を嵌合装着したウォームホイール15の回転によって円筒体4が回転し、前記円筒体4の回転と共にクランク部材6も回転する。軸線方向移動手段5により上下動させられて所定の位置にあるクランク部材6が回転運動すると、クランク部材6に対するカム7の位置に応じてカム7が偏心運動し、その結果、往復運動体8におけるピストンのストローク長が、クランク部材6の位置に応じて調整される。
【0041】
次に、図1及び図2に示されたストローク長調整装置1における潤滑作用について説明する。
【0042】
このストローク長調整装置1においては、リードスクリュー53及びクランク部材6それぞれの少なくとも下端が、潤滑油に浸漬している。その状態で、クランク部材6が回転すると、クランク部材6における貫通孔とリードスクリュー53との間隙に存在する潤滑油も回転する。そうすると潤滑油の粘性効果とハイドロダイナミック効果とによって、貫通孔内のリードスクリュー53におけるネジ上を潤滑油が上昇する。上昇する潤滑油が貫通孔の上端開口部から溢流する。クランク部材6の上端面で前記間隙から漏出した潤滑油は、円筒体4の内周面とクランク部材6の外周面との隙間に流出してこれらを潤滑し、また、クランク部材6の上端面にあるベアリング51aをも潤滑する。
【0043】
結局、リードスクリュークランク53を中心としてクランク部材6が回転することによって潤滑油も回転し、全体としてポンピング作用が発揮され、潤滑油が、クランク部材6の上端面から流出し、円筒体4及びクランク部材6に付随するベアリング及び各摺動面が潤滑油で潤滑される。
【0044】
この場合、潤滑油の粘性が大きいほど、また、貫通孔の内径とリードスクリューの外径との差が小さい程、またリードスクリューとクランク部材との相対的な回転速度が大きいほど、ハイドロダイナミック効果が大きい。
【0045】
以下に、図1及び図2に示されたストローク長調整装置1の他の作用について説明する。
【0046】
前記ストローク長調整装置1は、停止中及び運転中にかかわらず、0%から100%まで、ストローク長を無段階に調節することができる。その原理は、クランク部材6の上下運動により、このクランク部材6の回転中心とカム7の回転中心とが一致したり、あるいは離れたりすることによって、ストローク長が調節されることにある。
【0047】
図7(A)とはストローク0%である状態を示す。ことのとき、前記クランク部材6が最低の位置にある。このとき、モータ(図示せず。)を駆動すると、ウォームシャフト18も回転し、ウォームシャフト18に噛み合う歯を備えたウォームホイール15も回転する。ウォームホイール15と円筒体4とがキー17により結合されているので、ウォームホイール15の回転に応じて円筒体4も回転する。カム7の備える第1斜行突出部64aは、円筒体4の第1開口部14aから円筒体4の内部に挿入され、クランク部材6の備える第1溝60aに嵌装されている。同様に、第2斜行突出部64bは、円筒体4の第2開口部14bから円筒体4の内部に挿入され、前記クランク部材6における第2溝に嵌挿されている。よって、円筒体4の回転に応じてクランク部材6も円筒体4の軸線h1の回りに回転する。クランク部材6が回転すると、第1溝60aと第2溝60bとで挟まれた偏心軸が偏心回転する。しかし、図7(A)においては、カム7の軸線h2は前記円筒体4の軸線h1上に位置する。よって、カム7は、前記軸線h1の回りに回転するから、連接棒39に接続された例えばピストンのストロークが0になる。
【0048】
図7(B)と、ストローク100%である状態を示す。ことのとき、前記クランク部材6が最高の位置にある。この状態においても、ストローク量0%のときと同様に、カム7の備える第1斜行突出部64aは、円筒体4の第1開口部14aから円筒体4の内部に挿入され、クランク部材6の備える第1溝60aに嵌装されている。そして、第2斜行突出部64bは、円筒体4の第2開口部14bから円筒体4の内部に挿入され、前記クランク部材6における第2溝に嵌挿されている。よって円筒体4が回転すると、円筒体4の回転に応じてクランク部材6も円筒体4の軸線h1の回りに回転する。ここで、カム7の軸線h2は、前記軸線h1から隔たっている。よって、カム7は、前記軸線h1と軸線h2との間の距離で与えられる偏心半径で、前記軸線h1の回りに偏心回転をするから、連接棒39に接続されたピストンは最大ストローク長で往復動する。
【0049】
したがって、軸線方向移動手段5によりクランク部材6を上下動させることにより、カム7を偏心軸における任意の位置になるように調整すると、連接棒39の一端に結合されたピストン38のストローク長を0〜100%の範囲における任意の値に調整することができる。
【0050】
このとき、このストローク長調整装置1においては、クランク部材6の回転に連動する偏心軸の回転により強制的に偏心回転させられるカム7を介して伝わる荷重は、クランク部材6における外周面部19を介して円筒体4に伝わる。円筒体4に伝わった荷重は、スリーブ12及び据え付け部13に分散して伝わる。
【0051】
また、クランク部材6の外周面部19が円筒体4の内周面に接して摺動回転するから、偏心軸の偏心回転において発生する偶力が円筒体4に分散して加わる。したがって、偶力が集中して特定の部材に加わることがないので、この実施例のストローク長調整装置1は、故障原因が少ない。
【0052】
この実施例におけるストローク長調整装置1においては、クランク部材6が上下動することによりクランク部材6の位置が変化しても、クランク部材6による荷重はこのクランク部材6を収容する円筒体4の内面に加わる。円筒体4自体はクランク部材6の荷重を分散して受けることになる。したがって、この実施例におけるストローク長調整装置1は、従来のストローク長調節装置におけるように回転子を収容する保持部材全体で荷重を受けることがなく、従来装置よりも荷重の受ける範囲を小さくすることができる。この点によっても、この実施例のストローク長調整装置1は小型化される。
【0053】
前記ストローク長調整装置1においては、ハンドル部56を回動させるとリードスクリュー53が回転し、クランク部材6の有する円筒状軸体51に装着されたリードスクリュー接続部52が、前記リードスクリュー53の回転方向に応じて上下し、これに伴ってクランク部材6も上下する。したがって、ハンドル部56を左右何れかの方向に回転させてクランク部材6を上下させても、ハンドル部56及びリードスクリュー53は上下には移動しないので、軸線方向移動手段5全体をより小型にまとめることができる。更に、カム7が偏心回転運動をすると、クランク部材6に突き上げ力と突き下げ力とが交互に作用するが、リードスクリュー接続部52には固定部材52aが設けられているから、前記突き上げ力及び突き下げ力によってリードスクリュー接続部52が回転することは無い。したがって、前記リードスクリュー接続部52に螺合しているリードスクリュー53も前記突き上げ力及び突き下げ力によって回転することはないから、前記リードスクリュー53に回り止めを設けて前記リードスクリュー53の回転を防止する必要はない。したがって、この点によっても、前記ストローク長調整装置1における軸線方向移動手段5は小型化される。
【0054】
この発明は前記実施例に限定されるものではなく、この発明の要旨の範囲内において適宜に設計変更を行うことができる。
【0055】
【発明の効果】
この発明のストローク長調整装置によれば、潤滑油の使用量を低減することができ、より効果的にベアリング等に潤滑油を供給することができ、構造をより簡単にすることができ、小型化を実現することができる
この発明によると、従来の装置よりも部品点数が少なく、したがって組み立ての容易なストローク長調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、この発明の一例であるストローク長調整装置を示す縦断面図である。
【図2】図2は、この発明の一例であるストローク長調整装置を示す縦断面図である。
【図3】図3は、この発明の一例であるストローク長調整装置に採用することができる円筒体を示す斜視図である。
【図4】図4は、この発明の一例であるストローク長調整装置に採用することができるクランク部材を示す斜視図である。
【図5】図5は、この発明の一例であるストローク長調整装置に採用することができるカムを示す斜視図である。
【図6】図6は、この発明の一例であるストローク長調整装置に採用することができるカムと往復運動体とを示す概略図である。
【図7】図7は、この発明の一例であるストローク長調整装置における円筒体、クランク部材及びカムを組み合わせて、ストローク長が0%である状態及びストローク長が100%である状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1・・・ストローク長調整装置、2・・・回転駆動手段、3・・・支持手段、4・・・円筒体、5・・・軸線方向移動手段、6・・・クランク部材、7・・・カム、8・・・往復運動体、9・・・油貯留槽、10・・・開口部、11・・・蓋体、12・・・スリーブ、13・・・据え付け部、14・・・円筒体、14a・・・第1開口部、14b・・・第2開口部、15・・・ウォームホイール、16・・・取り付け穴、17・・・キー、18・・・ウォームシャフト、19・・・外周面部、20a・・・第1傾斜面、20b・・・第2傾斜面、21・・・内壁面、22a・・・第1凹陥部、22b・・・第2凹陥部、30a・・・第1カム部材30a、30b・・・第2カム部材、31a・・・第1内周面部、31b・・・第1外周面部、33a・・・第1突出部、33b・・・第2突出部、34a・・・第1側面部、34b・・・第2側面部、35a・・・第1傾斜先端面、35b・・・第2傾斜先端面、36・・・装着穴、37・・・カム保持部、39・・・連接棒、40・・・第1外周面部、41a,41b・・・平面部、42・・・基部、43・・・第2外周面部、44・・・第1摺動傾斜面、45・・・第2摺動傾斜面、46・・・突出部、48・・・開口部、49・・・第1案内溝、51・・・軸体、51a・・・ベアリング、51b・・・リードスクリュー挿通孔、52・・・キャップ部、53・・・リードスクリュー、54・・・ロックナット、55a・・・歯車、55b・・・ストローク表示カウンタ、56・・・ハンドル部、57・・・リードスクリュー接続部材、57a・・・隔壁、57b・・・回り止め、58・・・棒螺子部材、59・・・回動部材、60a・・・第1溝、60b・・・第2溝、61a・・・第1斜行面、61b・・・第2斜行面、61c・・・第3斜行面、61d・・・第4斜行面、62a・・・第1底面、62b・・・第2底面、63a・・・第1案内平面部、63b・・・第2案内平面部、64a・・・第1突出部、64b・・・第2突出部、65・・・貫通孔、66・・・軸体。
Claims (3)
- 縦方向の中心軸を中心にして回転可能に配置され、上端から下端に貫通する貫通孔を備え、油貯留槽内に貯留された潤滑油に浸漬される下端部を有してなるクランク部材と、
このクランク部材の回転に対してベアリングを介して回転不可能に前記クランク部材の上端に配置されたリードスクリュー接続部に設けられたメスネジ孔に螺合し、前記貫通孔に挿入されると共に前記潤滑油に常時浸漬される下端部を有するリードスクリューと、
回転駆動手段による回転運動を前記クランク部材の回転運動に伝達し、前記リードスクリューの回転によって昇降する前記クランク部材の昇降位置に応じて前記クランク部材の回転運動をストローク長の異なる往復運動に変換する往復運動変換手段とを備えてなり、
前記クランク部材は、前記リードスクリューの外周面に形成されたオスネジを前記潤滑油が上昇する方向に、回転することを特徴とするストローク長調整装置。 - 前記貫通孔は、その内周面にメスネジが形成されてなる前記請求項1に記載のストローク長調整装置。
- 前記貫通孔の内周面に形成されたメスネジが、前記リードスクリューの外周面に形成されたオスネジに対して逆ネジである前記請求項2に記載のストローク長調整装置。
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