JP4162461B2 - 球状黒鉛鋳鉄及び製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、球状黒鉛鋳鉄とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋳鉄は、一般に炭素(C)を1.7〜4.2体積%含有する鉄−炭素合金であるが、組成が同じであっても、鋳造の際の冷却速度の違い、等によって、その機械的性質は異なることが知られ、又、炭素が黒鉛として存在するかセメンタイト(Fe3C)として存在するかによっても機械的性質は異なり、更には、黒鉛状態であっても、片状黒鉛であるか微細な球状黒鉛であるかによっても、その機械的性質は著しく異なる合金である。
【0003】
その鋳鉄の中で球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄とも呼ばれる)は、機械的性質が高く、比較的安価であることから、様々な用途に使用されている。用途として、例えば自動車部品が挙げられ、特に、ロアーアーム、アッパーアーム、ナックルハウジング、サスペンション、等の足回り部品に好適に用いられている。
【0004】
この球状黒鉛鋳鉄の、機械的性質のうち引張強さは、通常400〜800MPaの範囲であり、伸びは2〜20%程度である。しかしながら、引張強さは合金配合等により800MPa程度にすることが出来るが、伸びは、強度の増加に反して低下する関係にあり、4〜6%乃至それ以下に低下してしまう。そして、伸びを高くしようとすると、今度は引張強さが反対に小さくなってしまうという傾向がある。本出願人は、従来より改善を図っている(特許文献1参照)が、引張強さと伸びを両立させることは容易ではない。
【0005】
近年、地球温暖化に影響が大きいといわれる自動車の燃料消費の低減が世界的に強く求められ、その対応の一手段として軽量化が強く叫ばれている自動車用部品等の分野では、安価で、肉厚を薄く設計出来る材料として、例えば引張強さが700MPa以上且つ伸びが7%以上という、伸びと引張強さ両方の機械的性質を同時に兼ね備えた球状黒鉛鋳鉄が要求されている。特に、過酷な使用環境に晒される足回り部品等の用途においては、その改善要望は強い。
【0006】
この条件を概ね満足出来るものとしては、従来よりベイナイト球状黒鉛鋳鉄が知られている。ベイナイト球状黒鉛鋳鉄は、例えば、鋳造したものをオーステナイト化温度に加熱後、塩浴炉中に急冷し、そのまま同炉中に恒温保持した後、取り出して得ることが出来る。又、例えば、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)を適量加えて、熱処理をしないで、所謂鋳放しの状態で得ることが出来る。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−194479号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、熱処理により得られるベイナイト球状黒鉛鋳鉄は、熱処理による歪みが発生し易い上に、塩浴を用いた熱処理によりコストが高いという欠点がある。又、Ni、Moを添加するベイナイト球状黒鉛鋳鉄は、特にMoが高価であり、同様にコストアップを招来するという欠点がある。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、引張強度と伸びの両方の機械的性質をバランスよく且つ高レベルに兼ね備え、製造される製品の軽量化を図ることが出来るとともに、低コストな、高強度、高靱性の球状黒鉛鋳鉄を提供することにある。
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋳鉄製造の基本に返り立ち、原料組成と、鋳造後の冷却過程と、について検討を行った。球状黒鉛鋳鉄の原料には、鋳物用銑鉄の価格が高騰したこと、及び、自動車産業の成長により車体を中心にプレスによる打抜屑が多量に発生し、安価に供給されるようになったこと、等の理由により、鋼屑が多く用いられるようになっている。そして、近年、鋼屑の主な供給源である自動車に使用される鋼材には、マンガン(Mn)を多く含有する高張力鋼板(所謂ハイテン)の薄板の占める割合が高くなってきている。
【0011】
一方、球状黒鉛鋳鉄の原料には、銅(Cu)も不可避的に増加し含有される傾向にある。Cuは高張力鋼板に多量に含まれるものではないが、球状黒鉛鋳鉄の材質によっては引張強さを向上させるために、Cuを所定量添加させることが知られており、その鋳造時の湯道や押湯等の戻り材を原料として再利用することが、通常、行われることから、球状黒鉛鋳鉄の原料のCu含有率は制御下にはないと考えられる。
【0012】
このように、近年では、球状黒鉛鋳鉄の原料にMn及びCuが不可避的な量として多めに含有されることが避け得ない状況になっている。そこで、原料組成の面では、Mn及びCuが所望以上含有されていても、引張強さ及び伸びを高レベルにバランスよく満足する機械的性質を備えた球状黒鉛鋳鉄を得るべく、研究を重ねた。
【0013】
又、鋳造後の冷却過程においては、冷却速度を工夫することにより、ベイナイト相生成領域を避け、フェライト相析出後、パーライト相析出領域を通過させ安定化させて固化することにより、引張強さ及び伸びを高レベルにバランスよく満足する機械的性質を備えた球状黒鉛鋳鉄を得るべく、研究を重ねた。
【0014】
本発明は、以上の検討、研究を経て、以下に示す課題解決手段を見出すに至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
即ち、本発明によれば、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計量が0.5質量%以下であることを特徴とする球状黒鉛鋳鉄が提供される。
【0016】
又、本発明によれば、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計量が0.5質量%以下である球状黒鉛鋳鉄であって、その球状黒鉛鋳鉄は、0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却され作製されたものであることを特徴とする球状黒鉛鋳鉄が提供される。
【0017】
上記球状黒鉛鋳鉄は、その肉厚が20mm以上であることが好ましい。尚、通常、自動車用足回り部品として用いられる場合には、肉厚は20〜50mm程度である。
【0018】
更に、本発明によれば、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下含む鋳鉄溶湯を作製し、所定形状の鋳型に鋳込んだ後、0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造方法が提供される。
【0019】
尚更に、本発明によれば、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計量が0.5質量%以下である鋳鉄溶湯を作製し、所定形状の鋳型に鋳込んだ後、0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造方法が提供される。
【0020】
上記の球状黒鉛鋳鉄の製造方法においては、鋳鉄溶湯を鋳型に鋳込み冷却して成形される鋳造成形体の肉厚は、20mm以上であることが好ましい。尚、通常、鋳造成形体として自動車用足回り部品を作製する場合には、肉厚は20〜50mm程度である。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加え得るものである。尚、本明細書にいう球状黒鉛鋳鉄の引張強さ及び伸びという機械的性質は、JIS Z2201で規定されている試験法に従って求めたものである。
【0022】
本発明は、成分としてMn及びCuを所定量含有する球状黒鉛鋳鉄においても、Mn及びCuの各々の含有量及び総含有量を所定範囲内とするか、あるいは、当該組成の鋳鉄を所定の冷却速度で冷却することで、引張強さが700MPa以上で伸びが7%以上という如く、両特性をバランスよく具備し、しかも加工性(即ち、切削性)に優れた球状黒鉛鋳鉄を得たことに、その特徴を有するものである。
【0023】
先ず、球状黒鉛鋳鉄について説明する。本発明の球状黒鉛鋳鉄では、より具体的には、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含むとともに、MnとCuの合計量が0.5質量%以下であることが極めて重要で、必須の条件とするものである。Mn及びCuの含有量が上記の範囲となる場合には、得られる球状黒鉛鋳鉄の特性は、引張強さが700MPa以上、且つ、伸びが7%以上というように、望ましい機械的性質が付与されることになる。高価なMoを添加する必要もなく、又、製造コストがかかる熱処理した結果において機械的性質が向上して得られるのではなく、鋳放しで上記機械的性質が付与され得る。
【0024】
Mnは、パーライト安定元素として強度向上に寄与するが、入れ過ぎると伸びを低下させてしまう。高強度且つ高靭性の機械的性質を有する本発明の球状黒鉛鋳鉄は、Mnを0.4質量%以下含有することが肝要である。Mnを0.35質量%以下含有することが更に好ましい。
【0025】
Mnの含有量は、0.4質量%を超えると伸びが確保出来なくなるために好ましくない。尚、Mnは原料から不可避的に混入してくるものであり、一般に、その含有量を0.05質量%未満まで低下させることは、技術上、困難である。
【0026】
Cuは、強度改善を図ることが出来る元素であるが、入れ過ぎると衝撃値が低下するので好ましくない。高強度且つ高靭性の機械的性質を有する本発明の球状黒鉛鋳鉄は、Cuを0.2質量%以下含有することが肝要である。Cuを0.15質量%以下含有することが更に好ましい。
【0027】
Cuの含有量は、0.2質量%を超えると靱性が確保出来なくなるために好ましくない。尚、Cuは、FCD700やFCD800のようなCuを多く含む材料が混入すると、高濃度になってしまうことがあり得る。一般に、その含有量を低下させるためには、鋼屑や銑鉄等、Cuを殆ど含有しない原料を用いて濃度を下げる、といった方法が知られている。
【0028】
更に、Mnの含有量が0.4質量%以下であり、Cuの含有量が0.2質量%以下であっても、MnとCuとの含有量の合計が上記の範囲外となる場合には、得られる球状黒鉛鋳鉄の特性として、引張強さが700MPa以上且つ伸びが7%以上という機械的性質を実現することは困難である。この場合、薄肉部材で軽量化を図らんとする自動車用部品分野への適用は難しい。
【0029】
Niは、珪素(Si)と同じく黒鉛の晶出を促す作用特性を有する。従って、Niを所定量含有していれば、黒鉛が良好に晶出され、期待される機械的性質を保持し得る。高強度且つ高靭性の機械的性質を有する本発明の球状黒鉛鋳鉄は、Niを2.0〜4.0質量%含有することが肝要である。Niを2.2〜3.8質量%含有することが好ましく、2.5〜3.5%含有することが、更に好ましい。
【0030】
2.0質量%未満では、引張強さ及び伸びの機械的性質も満足出来る値とならず、又、4.0質量%を超えると、引張強さは確保されるが伸びが確保出来なくなるために、好ましくない。
【0031】
次に、球状黒鉛鋳鉄の製造方法について説明する。本発明の球状黒鉛鋳鉄の製造方法においては、鋳鉄溶湯を、0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却することにより、引張強さ及び伸びの両特性をバランスよく具備した球状黒鉛鋳鉄を得ることが出来る。溶湯は、少なくともNiを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下含むことが肝要である。以下に、図1のグラフを用いて説明する。
【0032】
図1は、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下含む鋳鉄溶湯を、種々の冷却速度で冷却した際に発生する鋳鉄の相変態過程を表す連続冷却変態曲線(Continuous Cooling Transfomation,CCT)を示している。図1において、Pはパーライト相、Bはベイナイト相、Mはマルテンサイト相を示す。
【0033】
図1から理解されるように、鋳鉄溶湯を0.1〜0.5℃/秒の範囲の冷却速度で常温まで冷却すると、500〜700℃でパーライト相析出領域を通過するため、常温で得られる球状黒鉛鋳鉄は、図13(写真)に示す如く、パーライト相が細かく分散し、フェライト相も黒鉛の周りに形成される。
【0034】
加熱温度(冷却開始温度)は、Ac1(オーステナイトが出始める温度、750℃)以上であればよく、限定されるものではないが、好ましくはAc1+100℃以上、より好ましくは図1に示されるようにAc1+200℃以上(950℃)である。
【0035】
このように冷却された球状黒鉛鋳鉄は、少なくとも上記のように組成制御されていれば、引張強さが700MPa以上、伸びが7%以上という如き両特性がバランスよく付与され得る。Niの規定の他に、Mn及びCuの総含有量が0.5質量%以内とした溶湯に、上記冷却工程を施せば、尚好ましい機械的性質が付与され得る。
【0036】
又、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄は、Mn及びCuの各々の含有量及び総含有量を所定範囲内としたもの、あるいは、所定の組成の鋳鉄溶湯を所定の冷却速度で冷却して得られたもの、何れであっても、加工性に優れている。FCD700やFCD800とは異なり、基地組織中に被削性のよいフェライトを有することにより、FCD600相当の被削性が得られる。
【0037】
本発明に係る球状黒鉛鋳鉄は、従来公知の鋳鉄製造工程により製造することが出来る。又、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄の製造方法は、従来公知の鋳鉄製造工程に組み入れることが出来る。
【0038】
鋳鉄製造工程の一例を説明する。先ず、原料として、鋼屑、銑鉄、等、各種の鉄合金材料が配合成分量を考慮して配合され、電気炉(低周波炉又は高周波炉)あるいはキュポラを用いて鋳鉄溶湯に溶製される。目標組成通りに溶製された溶湯は、黒鉛球状化剤を用いて取鍋内で溶湯処理が行われる。この際、必要に応じて接種剤が取鍋内添加されるか、又は、注湯流接種される。
【0039】
溶湯処理が行われた後、溶湯は取鍋から造型機により造型された鋳型に注湯されて鋳込まれ、鋳型内でそのまま凝固、冷却される。尚、このとき薄肉部における炭化物の生成を防止するとともに、黒鉛粒径を微細化してパーライト相が偏って出現することを抑制するために、接種剤を鋳型への鋳込み中の注湯流に添加する2次接種(注湯流接種)を行うことがより好ましい。
【0040】
鋳型内の物品が冷却されると、ドラムクーラーで物品と造型砂に分離された後、ショットブラストで物品の表面に付着した砂を除去し、鋳仕上げ工程にかけられる。この鋳仕上げ工程において、堰、バリ取り、等の仕上げが行われて製品たる鋳鉄鋳物が得られる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものでない。
【0042】
(実施例1)高周波溶解炉にて、Niを2.0〜4.0質量%、Cuを0.10質量%、Mnを0.40質量%、Cを3.1〜4.0質量%、Siを1.8〜3.0質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Mgを0.02〜0.06質量%に調整し、溶製した。
【0043】
尚、C、Si、P、S、及びMgの成分範囲を上記のように定めた理由は次のとおりである。Cが3.1質量%未満では、炭化物が現れて伸びの減少を招き易い。Cが4.0質量%を超えると、初晶黒鉛が浮上して介在し、引張強さの低下の原因となり易い。Siが1.8質量%未満では、炭化物が現れて伸びの減少を招き易い。Siが3.0質量%を超えると、初晶黒鉛が浮上して介在し、引張強さの低下の原因となり易い。Pが0.05質量%を超えると、ステダイト相が現れて脆化し易い。Sが0.02質量%を超えると、Mg処理時にMgSを生成し、溶存Mg量が低下して黒鉛球状化が阻害され易く、ノロも増えて好ましくない。Mgが0.02質量%未満では、黒鉛を球状化し難く、引張強さが確保し難い。Mgが0.06質量%を超えると、炭化物が現れ易くなるとともに、Mgは高価でありコスト増を招き、好ましくない。
【0044】
次に、大きさの異なる4つの供試材用砂型に約1400℃で注湯し、砂型内で常温まで自然放冷(鋳放し)した。その後、それぞれの供試材からテスト・ピースを採取し、引張強さ及び伸びをJIS Z 2201の13号試験片で測定した。結果を図4及び図5に示す。尚、テストピースの大きさは、縦20mm×横120mm×厚さ3mmである。
【0045】
(実施例2)Mnの含有量を0.35質量%とした以外は、実施例1と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図4及び図5に示す。
【0046】
(実施例3)Mnの含有量を0.30質量%とした以外は、実施例1と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図4及び図5に示す。
【0047】
(実施例4)Cuの含有量を0.03質量%とした以外は、実施例1と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図6及び図7に示す。
【0048】
(実施例5)Cuの含有量を0.03質量%とした以外は、実施例2と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図6及び図7に示す。
【0049】
(実施例6)Cuの含有量を0.03質量%とした以外は、実施例3と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図6及び図7に示す。
【0050】
(比較例1)Cuの含有量を0.25質量%とした以外は、実施例1と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図8及び図9に示す。
【0051】
(比較例2)Cuの含有量を0.25質量%とした以外は、実施例2と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図8及び図9に示す。
【0052】
(比較例3)Cuの含有量を0.25質量%とした以外は、実施例3と同様にして、各テストピースの引張強さ及び伸びを測定した。結果を図8及び図9に示す。
【0053】
実施例4及び比較例1の測定結果より、Mnの含有量が0.40質量%のときの各テストピースの引張強さ及び伸びを、Cuの含有量が0.03質量%の場合と0.25質量%の場合に分けて、図10及び図11に示す。
【0054】
(実施例7)高周波溶解炉にて、Niを2.0〜4.0質量%、Cuを0.15質量%、Mnを0.40質量%、Cを3.1〜4.0質量%、Siを1.8〜3.0質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Mgを0.02〜0.06質量%に調整し、溶製した。
【0055】
次に、供試材用砂型に約1400℃で注湯し、所定の時間経過した後、強制冷却し、その後、供試材からテストピースを採取した。尚、テストピースの大きさは縦20mm×横120mm×厚さ3mmとした。又、冷却速度は、0.11℃/秒、0.25℃/秒、0.34℃/秒、0.50℃/秒、とし、それぞれ供試材を成形し、それぞれテストピースを得た。そして、得られた各テストピースの引張強さ及び伸びをJIS Z 2201に従い測定した。結果を図2及び図3に示す。
【0056】
(比較例4)冷却速度を、0.07℃/秒、0.57℃/秒とした以外は、実施例7と同様にして、各テストピースを得て引張強さ及び伸びを結果を図2及び図3に示す。
【0057】
(実施例8)Cuの含有量を0.04質量%とした以外は、実施例1と同様のテストピースを得て、そのテストピースについて切削試験を行い、逃げ面磨耗量を測定した。結果を図12に示す。
【0058】
(比較例5)Cuの含有量を0.25質量%とした以外は、実施例1と同様のテストピースを得て、そのテストピースについて切削試験を行い、逃げ面磨耗量を測定した。結果を図12に示す。
【0059】
(考察)本発明に係る球状黒鉛鋳鉄は、Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計で0.5質量%以下含むようにしたので、従来必要とした熱処理をしなくても鋳放し状態で、図4〜図7、及び図10、図11に示すように、引張強さが700MPa以上及び伸びが7%以上の機械的性質が得られる。
【0060】
又、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄においては、少なくともNiを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下含み、0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却され作製されたものであり、特殊な熱処理をしなくても鋳放し状態で、図2、図3に示すように、引張強さが700MPa以上及び伸びが7%以上の機械的性質が得られる。
【0061】
更に、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄は、加工性に優れていることが確認出来た。加工性を示す指標として、切削試験を行った場合の逃げ面磨耗量を用いると、図12に示すように、本発明に係るCuを0.04質量%含む球状黒鉛鋳鉄は、Cuを0.25質量%含む場合に比較して、何れの切削距離においても逃げ面磨耗量が小さくなっている。例えば、切削距離が1.7kmにおいて、Cuを0.04質量%含む球状黒鉛鋳鉄は0.10mm以下であるが、Cuを0.25質量%含む場合は0.12mm以上である。尚、図中に示さないが従来の球状黒鉛鋳鉄(FCD700相当)の場合には概ね0.16mmであり、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄の優れた加工性が理解される。
【0062】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、熱処理を施すことなく、引張強度と伸びの両方の機械的性質を高いレベルでバランスよく具備した球状黒鉛鋳鉄が提供される。加えて、加工性にも優れることから、本発明に係る球状黒鉛鋳鉄の使用範囲は、従来の球状黒鉛鋳鉄よりも拡大し、例えば自動車用部品、特に足廻り部品として好ましく採用可能である。そして、機械的性質に優れ低コストな本発明に係る球状黒鉛鋳鉄を使用すれば、自動車用部品の軽量化を通して自動車の燃費向上に寄与出来、環境負荷の低減にも役立つという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、連続冷却変態曲線(Continuous Cooling Transfomation,CCT)を示すグラフである。
【図2】 実施例における冷却速度と引張強さとの関係を表すグラフである。
【図3】 実施例における冷却速度と伸びとの関係を表すグラフである。
【図4】 実施例におけるMn含有量と引張強さとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図5】 実施例におけるMn含有量と伸びとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図6】 実施例におけるMn含有量と引張強さとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図7】 実施例におけるMn含有量と伸びとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図8】 実施例におけるMn含有量と引張強さとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図9】 実施例におけるMn含有量と伸びとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図10】 実施例におけるCu含有量と引張強さとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図11】 実施例におけるCu含有量と伸びとの関係を肉厚毎に表すグラフである。
【図12】 実施例における切削試験結果を表すグラフである。
【図13】 本発明に係る球状黒鉛鋳鉄の製造方法により得られる球状黒鉛鋳鉄の表面を400倍に拡大した写真であり、晶出した黒鉛の周りにフェライト相が形成されるとともに、パーライト相が分散して存在する様子を表している。
Claims (5)
- Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計量が0.5質量%以下であり、更に、Cを3.1〜4.0質量%、Siを1.8〜3.0質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Mgを0.02〜0.06質量%含み、残部がFeであり、
0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却され作製され、パーライト相が分散しフェライト相が黒鉛の周りに形成されてなり、引張強さが700MPa以上、伸びが7%以上であることを特徴とする球状黒鉛鋳鉄。 - 肉厚が20mm以上である請求項1に記載の球状黒鉛鋳鉄。
- Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下含み、更に、Cを3.1〜4.0質量%、Siを1.8〜3.0質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Mgを0.02〜0.06質量%含み、残部がFeである鋳鉄溶湯を作製し、
所定形状の鋳型に鋳込んだ後、
0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造方法。 - Niを2.0〜4.0質量%、Mnを0.4質量%以下、Cuを0.2質量%以下含み、且つ、MnとCuの合計量が0.5質量%以下であり、更に、Cを3.1〜4.0質量%、Siを1.8〜3.0質量%、Pを0.05質量%以下、Sを0.02質量%以下、Mgを0.02〜0.06質量%含み、残部がFeである鋳鉄溶湯を作製し、
所定形状の鋳型に鋳込んだ後、
0.1〜0.5℃/秒の冷却速度で冷却することを特徴とする球状黒鉛鋳鉄の製造方法。 - 鋳型で成形された鋳造成形体の肉厚が20mm以上である請求項3又は4に記載の球状黒鉛鋳鉄の製造方法。
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