JP4160868B2 - 葉タバコ中のニトロソアミン含量の低減方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、葉タバコ中のタバコ特異的ニトロソアミン(Tabacco Specific Nitrosamine;以下「TSNA」と記す)含量を低減する方法に関する。より詳しくは、TSNAの前駆物質である亜硝酸の生成に関与する微生物の増殖を抑制することにより葉タバコ中のTSNA含量を低減する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
乾燥した葉タバコに特異的に含まれるTSNAは、収穫直後の葉タバコには存在しない。しかし、その後の乾燥と貯蔵の過程において、葉タバコに含まれる亜硝酸態窒素とアルカロイドが反応することによって生成される。このように生成されるTSNAの主成分は、N−ニトロソノルニコチン(以下「NNN」と記す)、4−(N−ニトロソメチルアミノ)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(以下「NNK」と記す)、N−ニトロソアナタビン(以下「NAT」と記す)およびN−ニトロソアナバシン(以下「NAB」と記す)などである。
【0003】
日本で栽培されているタバコは、大きく、黄色種、バーレー種および在来種の三つの品種に分類することができる。
これらのタバコの葉は、収穫時には緑色をしているが、乾燥過程を経ることによりクロロフィルが分解されてカロチノイド系色素が現れる。このカロチノイド系色素は黄色の色素であるので、葉タバコの色は黄変する。
黄色種では、黄変した段階で脱水速度を速めて葉肉および中骨が乾固され、葉色が黄色に固定される。
一方、在来種やバーレー種では、黄変後も引き続き乾燥が行われ、この続く乾燥過程においてカロチノイド系色素は分解し、褐色の色素が生成されて葉タバコは褐色に変化する。その後、葉肉や中骨を乾固して乾燥は終了する。このように、バーレー種および在来種は、収穫後に黄変期、褐変期および中骨乾燥期を経て乾葉となる。
【0004】
また、黄色種と、バーレー種および在来種とでは乾燥方法が異なる。黄色種は、収穫した葉タバコを加熱器の装備された乾燥機(バルク乾燥機)内に吊り込み、風火力を利用して温度および湿度を制御しながら乾燥し、黄変期、色沢固定期および中骨乾燥期を順次経て5〜7日間で乾燥される。これに対してバーレー種および在来種の乾燥は、収穫した葉タバコをパイプハウスや木造乾燥室に吊り込んで、主に自然の温度および湿度条件下での制御を行いながら乾燥を実行し、黄変期、褐変期および中骨乾燥期を経て、25〜35日間に亘って乾燥される。
【0005】
このような葉タバコの乾燥は、葉タバコ中の水分を除いて乾かすというだけでなく、葉タバコ中の内容成分を変化させ、品種特有の色と香喫味を付与する目的をもっている。そして、乾燥過程を経た葉タバコはさらに香喫味を熟成するために貯蔵が行われる。しかし、このような乾燥と貯蔵の過程において、葉タバコ中の亜硝酸態窒素とアルカロイドが反応することによってTSNAが生成される。黄色種の場合、TSNAは主に加熱乾燥中に生成され、バーレー種の場合、TSNAは、乾燥過程の褐変期から中骨乾燥期に生成する。
【0006】
収穫直後の葉タバコの葉身(ラミナ)中には、アミノ酸、タンパク質およびアルカロイドが含有されると共に、硝酸塩と亜硝酸塩も含まれることが知られている。通常、植物はその体内で硝酸塩から亜硝酸塩を経てアミノ酸を生成し、植物体の形成に利用する。その一方で、高濃度の亜硝酸塩は生体の生存に悪影響を及ぼすので、植物体の形成に利用するための最小限を合成するのみである。従って、収穫直後の葉タバコ中の亜硝酸態窒素含量は1ppm以下である。
【0007】
しかしながら、葉タバコの乾燥過程で、葉タバコ表面に存在する微生物の硝酸還元酵素の作用により、葉タバコ中の硝酸塩が亜硝酸塩に還元されてしまう。この生成された亜硝酸塩が、葉タバコ中のアルカロイドと反応してTSNAが生成される。
【0008】
従来から葉タバコ中のTSNA含有量を低減するために様々な技術が提案されており、例えば以下のようなものがある。
タバコの栽培面では、窒素肥料の施用量を低減する方法が挙げられる。窒素肥料の施用量を減らすことによってTSNAの生成原因物質である葉中のアルカロイド含量が減少する。この方法によって葉中のTSNA含量が低下することも証明されている。
【0009】
品種改良の面からは、例えば、葉中のアルカロイド含量の低い品種の新たな開発が行われている。このような開発では、アルカロイド含量が低い個体から種子を採取し栽培することによって、TSNA含量が低い品種を得ることが可能である。
【0010】
黄色種タバコに関しては、直熱方式から間熱方式の乾燥機を用いる方法が提案されている。これは、間熱方式の乾燥機の使用によって、TSNAの前駆物質である燃料由来のNOxを減少させ、乾燥中のTSNA生成を抑制する方法である(特許文献1)。
また、乾燥初期のTSNA含量の低い黄変期の葉タバコに対してマイクロ波処理を行って、急激脱水を施して乾燥を終了する方法が提案されている(特許文献2)。しかしながらこの方法では、従来の乾燥の途中でその乾燥を終了させることになり、乾燥の目的である葉中に含まれる内容成分を変化させ、特有の色と香喫味を出すことができない。従って、従来法によって乾燥した葉タバコよりも喫味が悪くなってしまうという問題がある。
【0011】
また、葉タバコの乾燥過程で、葉タバコ表面に生存する微生物の硝酸還元酵素の作用により、葉タバコ中の硝酸塩が亜硝酸塩に還元されることを阻害するために、葉タバコ表層の関与する微生物を取り除く方法が提案されている。例えば、重炭酸ソーダなどで洗浄する方法(特許文献3)、二酸化塩素ガスなどで微生物を死滅する方法(特許文献4)が知られている。
また、葉タバコに由来する微生物を利用し、乾燥を終了した葉タバコの脱窒素処理をする方法も開示されている(特許文献5)。しかし、この方法は、乾燥が終了した葉タバコの硝酸含量および窒素化合物を低減する方法であって、TSNAを効果的に低減することはできない。
なお、本発明者らは、乾燥/貯蔵中に生成する葉タバコ中のTSNA含量を低減する方法としてTSNA分解菌を用いる方法を提案している(特許文献6)。
【0012】
【特許文献1】
US2001/386号公報
【特許文献2】
特表2001−503247号公報
【特許文献3】
WO01/35770号公報
【特許文献4】
WO02/13636号公報
【特許文献5】
特開昭58−501573号公報
【特許文献6】
特願2002−135777号
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、葉タバコの乾燥中に生成するTSNAを微生物により生成抑制し、TSNA含量の低減を行うことを目的としたものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、収穫直後の黄変期では、シュードモナス(Pseudomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)およびキサントモナス(Xanthomonas)属の微生物など、非腸内微生物(即ち、好気性微生物)が優勢種であるが、続く褐変期になると、硝酸還元能を有する腸内微生物(即ち、通性嫌気性微生物、以下「嫌気性微生物」と表記することもある)、特にエンテロバクター属(Enterobacter)やパントエア(Pantoea)属の微生物が優勢種となることを見出した。
【0015】
通気性嫌気性微生物は、好気性微生物に比較して、高い硝酸還元能を有する。TSNAは葉タバコ中の葉タバコに含まれる亜硝酸態窒素とアルカロイドが反応することによって生成されることから、亜硝酸態窒素の蓄積を阻害することが可能になれば葉タバコ中のTSNA含量を低減することができる。
【0016】
本発明は、嫌気性微生物の増殖を抑制することで葉タバコ中の亜硝酸生成を阻害し、TSNA含量を低減する方法である。
すなわち、本発明は、葉タバコを硝酸還元能を有せず、且つ嫌気性微生物に対して生育拮抗作用もつ微生物で処理することにより葉タバコ中の亜硝酸生成を阻害し、葉タバコ中のTSNAを低減する方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
上述したように葉タバコを乾燥する過程では、葉タバコ葉面の微生物相が変化する。収穫直後の黄変期では、シュードモナス(Pseudomonas)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)およびキサントモナス(Xanthomonas)属の微生物など、非腸内微生物(即ち、好気性微生物)が優勢種である。続く褐変期になると、硝酸還元能を有する腸内微生物(即ち、通性嫌気性微生物)、特にエンテロバクター属(Enterobacter)やパントエア(Pantoea)属の微生物が優勢種となる。
【0018】
これらの微生物群のうちでも通性嫌気性微生物は、好気性微生物に比較して、高い硝酸還元能を有する。実際に、褐変期に葉面上から分離されたエンテロバクター属およびパントエア属の微生物を葉タバコに処理してみると、葉タバコ中に亜硝酸態窒素が蓄積され、TSNA含量も増加していた。
【0019】
一方、エンテロバクター属およびパントエア属の微生物と同時に褐変期に葉タバコ葉面に存在する微生物を詳しく調べたところ、硝酸を亜硝酸へ還元する能力を有しない微生物が存在することを発見し、これを単離した。
単離した微生物を葉タバコに処理したところ、乾燥中に優勢種となるエンテロバクター属およびパントエア属の微生物と拮抗して存在し、葉タバコ中の亜硝酸態窒素の蓄積を阻害し、結果としてTSNAの生成を抑制することを確認した。そして、更にこのTSNAの生成を抑制する微生物を単離した微生物の菌学的性質を調べたところ、この微生物がフラビモナス・オリズィハビタンス(Flavimonas oryzihabitans)に属する菌と同定された。
【0020】
本発明者らは、この菌株をフラビモナス・オリズィハビタンス K6001と命名した。フラビモナス・オリズィハビタンス K6001は、硝酸還元能を有しない菌で、かつ嫌気性微生物であるエンテロバクター属またはパントエア属の微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物である。従って、本発明で葉タバコを処理する微生物は、硝酸還元能を有せず、嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物であればよい。ここでいう嫌気性微生物は、特に限定されるものでないが、例えば、エンテロバクター属またはパントエア属の微生物が挙げられる。また、硝酸還元能を有せず、嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物は例えばフラビモナス属微生物が挙げられる。好ましくは、フラビモナス・オリズィハビタンスに属する微生物であり、さらに好ましくはフラビモナス・オリズィハビタンス K6001である。
【0021】
フラビモナス・オリズィハビタンス K6001は、発明者らが新たに単離した菌株であるが、葉タバコ表層から単離可能な微生物である。なお、この菌株は日本たばこ産業株式会社葉たばこ研究所に保存しており、出願人において分譲可能である。
【0022】
本発明の方法は、当該微生物を処理する以外は、現行の葉タバコ乾燥方法を変更することなく利用して実施することが可能である。
また本発明により処理される葉タバコは、通常の乾燥を行うものであれば何れの品種であってもよい。好ましい例は、具体的には自然乾燥されるバーレー種および在来種である。
【0023】
本発明の方法に従って、微生物を処理するための時期は、葉タバコ中の硝酸が還元される期間であればいつでもよいが、硝酸還元能を有する嫌気性微生物が優勢種となる前、すなわち葉タバコの褐変期以前に行うことが好ましい。例えば、収穫直前にほ場で処理し、その後に収穫して乾燥に供してもよいし、収穫直後に処理してから乾燥に供してもよい。
【0024】
微生物の処理は、1回行っても、一定期間毎に2回〜3回処理してもよい。
本発明における微生物を「処理」するとは、対象となる葉タバコに対して微生物を添加することをいい、例えば、本発明に従う微生物の懸濁液の噴霧、および微生物の菌体を含む粉末の塗布など、それ自身公知の何れの方法により行ってもよい。
【0025】
本発明に使用される微生物を培養するための培地は、微生物培養用としてそれ自身公知の何れの培地を使用してもよい。また、微生物を培養するための条件は、例えば、温度が25〜35℃の範囲、pHが6.0〜8.0の範囲であればよく、好ましくは温度が28〜32℃、pHが7.0前後である。
【0026】
本発明に従う何れかの微生物を本発明に使用する場合、当該微生物を一定期間培養した後に、遠心分離により集菌して、特定の緩衝液に懸濁して菌液を作成すればよい。本菌体を懸濁させる緩衝液は、例えば、滅菌蒸留水およびリン酸緩衝液を使用してよい。
また、本発明に従う何れかの菌体を緩衝液に懸濁する場合には、緩衝液1mL当たり、107〜1012個、好ましくは108〜1010個であり、この濃度に当該何れかの菌体を懸濁して用いることが好ましい。
【0027】
上述のように調製した菌体を用いて葉タバコの処理を行う。例えば、必要な菌量を含有する当該菌液に滅菌蒸留水を加えて接種液を作成し、この液を葉タバコに均一に噴霧すればよい。
噴霧量は、上記のように調製した菌体懸濁液を葉タバコ1枚当たり、収穫直後および乾燥初期では2〜10mL、乾燥中期以降では0.5〜3mLでよい。また、処理回数は、乾燥および/または貯蔵期間中に少なくとも1回、好ましくは間隔をおいて2回から3回処理すればよい。
【0028】
本発明によれば、TSNA含量が低減された原料としての葉タバコが提供される。本発明の方法は、当該微生物を処理すること以外、乾燥方法の手順に大きな相違がないため、本来の品質および喫味に何ら影響を与えることなくTSNA含量を低減することが可能である。
【0029】
【実施例】
[実施例1]葉タバコ葉面からの微生物の単離
栃木県小山市のタバコ畑の葉タバコから微生物を分離した。
【0030】
バーレー種タバコのみちのく1号の本葉を収穫し、収穫した葉タバコの葉肉部分の一部を切り取ってサンプルとした。得られたサンプルを5mm角に細断し、その約10gを300mL容の三角フラスコに採取した。200mLの10mMリン酸緩衝液(pH7.0)を添加し、これをホモジナイザーで粉砕した。得られた懸濁液を、微生物分離用のタバコ懸濁液とした。
【0031】
タバコ懸濁液を微生物が分離できる濃度(102〜105倍)に前述と同様のリン酸緩衝液を用いて希釈した。
得られた希釈液をYG寒天平板培地(酵母エキス:1.0g、グルコース:1.0g、K2HPO4:0.3g、KH2PO4:0.2g、MgSO4・7H2O:0.2g、寒天:15g、蒸留水:1000mL、pH6.8)に0.1mLずつ滴下して塗抹した後、30℃で7日間培養した。
【0032】
生育したコロニーを新しいYG寒天平板培地を用いて単一コロニーに分離した。分離した微生物は使用時まで−80℃で保存した。
供試微生物の培養には、YG寒天平板培地を使用した。生育した微生物を滅菌蒸留水に約107cfu/mLになるように懸濁し、微生物懸濁液とした。
【0033】
Giltay培地(KNO3:1.0g、アスパラギン:1.0g、1%ブロモチモールブルー溶液:5mL、クエン酸ナトリウム:8.5g、MgSO4・7H2O:1.0g、FeCl3・6H2O:0.05g、KH2PO4:1.0g、CaCl2・6H2O:0.2g、蒸留水:1,000mL、pH7.0)を1mLずつ入れた試験管に、微生物懸濁液を100μLずつ接種し、30℃で7日間培養した。
【0034】
Giltay培地については、グリース・イロスベイ試薬(1液 スルファニル酸:0.5g、酢酸:30mL、蒸留水:70mL、2液 α−ナフチルアミン:0.5g、酢酸:30mL、蒸留水:70mL、1液と2液を当量混合する)を添加することにより、培地中の亜硝酸塩生成の有無を調査した。
【0035】
その結果、上記培地中に亜硝酸を生成しない、即ち、硝酸還元能を有さない微生物を3菌株分離した。
【0036】
[実施例2]TSNAの低減効果
葉タバコに、分離した硝酸還元能を有さない3菌株を処理したときの葉タバコ中のTSNA含量を調べた。
【0037】
トリプチックソイ液体培地(Difco社製、Bacto Tryptic Soy Brot;即ち、Soybean−Casein Digest Medium;以下、1/10TS液体培地と記す)に選抜した3菌株を接種し、30℃で72時間培養した。
[1/10TS液体培地の組成]
・最終容量 蒸留水で1000mlにする
・カゼイン 1.7g
・D−グルコース 0.25g
・NaCl 0.5g
・K2HPO4 2.5g
【0038】
培養後、この菌体を含む培地を5,000rpmで遠心して菌体を集めた。得られた菌体を滅菌蒸留水で2回洗浄した後、再度滅菌蒸留水に懸濁した。懸濁液の菌体濃度を108〜1010cfu/mLに蒸留水で調整した。
【0039】
前述の微生物懸濁液を、収穫して乾燥に供するバーレー種(きたかみ1号)の葉タバコに対して処理した。
また、実施例1と同様にして分離したEnterobactor cloacaeを菌体濃度108〜1010cfu/mLに調整し、収穫して乾燥に供するバーレー種(きたかみ1号)の葉タバコに対して処理した。
処理時期は、収穫直後、収穫3日および8日後の3回(褐変期前)で、葉タバコ1枚当たり10mLとなるように、葉タバコの表裏に噴霧器を使用して処理した。
【0040】
葉タバコの乾燥は、パイプハウスを使用して行った。
乾燥10日および21日目に無処理区と各処理区の葉タバコを採取した。採取した葉タバコを、葉肉部分と中骨部分に分離した後、凍結乾燥を行った。
【0041】
凍結乾燥した葉肉部分のサンプルを、ミキサーを使用して粉砕し、TSNA含量を測定した。
前述の粉砕処理した各区の葉肉サンプル約5gを200mL容三角フラスコに量り取り、0.01MのNaOH溶液(Thimerosal:100μg/mL含有)を100mL加え、振盪機により室温で2時間抽出した。その後、ろ紙(ADVANTEC社、No.5C)を用いて抽出液を濾過した。
【0042】
TSNA4成分量(NNN、NNK、NATおよびNAB)の定量は、次の方法で行った。即ち、抽出液中のNNN、NNK、NATおよびNABを、改良Spiegelhalder法に準じたガスクロマトグラフィによって定量した(Spiegelhalder B., Kubacki S. and FischerS.(1989)Beitr. Tabakforsch. Int., 14(3), 135−143, Fischer S.and Spiegelhalder B.,(1989)Beitr.Tabakforch. Int.,14(3)),145−153)。
【0043】
まず、各濾液の10mLをキーゼルグール(粒径60−160mm、MERCK社)及びアスコルビン酸を充填したカラムに添加した。ジクロロメタンを用いてTSNAを転溶、流下させた。このジクロロメタンの流下液をガスクロマトグラフィ用のサンプルとした。得られたサンプルを、カラムDB−17(J&W社)、検出器TEA−543(Thermedics社)を装備したガスクロマトグラフィHP6890(Hewlett Packard社)を用いて分析した。
【0044】
結果を表1に示す。なお、TSNAの含量が最も低減していた1菌株をK6001菌株として、他の2菌株(非硝酸還元菌A,B)と区別して示した。
【0045】
【表1】
【0046】
TSNA含量は、Enterobactor cloacaeで処理した区が最も高く、一方、非硝酸還元菌3種株処理区にもバラツキがあり、非硝酸還元菌A,B処理区のTSNA含量は無処理区より高い値を示した。
以上の結果から、K6001菌株は、またEnterobactor属微生物が優勢となる葉タバコの乾燥においても生存拮抗可能であり、葉タバコ中のTSNAの生成を抑制することが示唆された。
【0047】
[実施例3]亜硝酸態窒素含量の測定
非硝酸還元菌処理の葉タバコの亜硝酸態窒素含量の測定は、K6001菌株と非硝酸還元菌Aについて実施した。
【0048】
亜硝酸態窒素含量の定量方法を次に示す。
まず、各区の葉肉サンプル約0.5gを50mL容の遠沈管に量り取り、下記に示す抽出液25mLを加え、室温で30分間振盪して亜硝酸態窒素を抽出した。これらの抽出液を濾紙(ADVANTEC社、No.1)を用いて濾過した後、濾液10mLを別の遠沈管に採取し、活性炭0.5gを加えて、室温で15分間振盪した。更に、濾紙(ADVANTEC社、No.5C)を用いて濾過し、活性炭を除去した。得られた濾液を亜硝酸態窒素定量用試料とした。
抽出液:KCl (1%KCl)
スロファニルアミド (0.5%スロファニルアミド)
トリトンX−100 (0.1%トリトンX−100)。
【0049】
抽出液中の亜硝酸態窒素含量の定量には、アートアナライザー(BRAN+LUEBBE社、AACSII)を使用し、550nmのフィルターの透過率から亜硝酸態窒素含量を換算した。
なお、亜硝酸態窒素の発色には、1%スルファニルアミドと0.1%N−ナフチルエチレンジアミン二塩酸塩を使用した。
【0050】
結果を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
非硝酸還元菌では、菌株に相違が見られたが、K6001菌株処理区の亜硝酸態窒素含量は、無処理区に比べて乾燥10日目は高かったが、乾燥21日目では低かった。一方、TSNA含量の低減が認められなかった非硝酸還元菌A菌株処理の亜硝酸態窒素含量は、無処理区より高かった。
以上の結果から、K6001菌株は、葉タバコ中への亜硝酸態窒素の生成を抑制することが示され、TSNAの生成が抑制されたこと、即ち、硝酸還元菌に対して拮抗作用を示すことが示唆された。
【0053】
K6001菌株の菌学的性質を表3に示す。
【0054】
【表3】
【0055】
この結果から、K6001菌株は、フラビモナス・オリズィハビタンス(Flavimonas oryzihabitans)に属する菌であると同定された。なお、菌の同定は、財団法人日本食品分析センターに依存して行った。
【0056】
【発明の効果】
以上のような本発明によれば、現在行われている乾燥および/または貯蔵形態において使用することが可能な、TSNAを低減する方法が提供された。
Claims (5)
- 硝酸還元能を有せず且つ嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物で、葉タバコを処理することを特徴とする葉タバコ中のTSNA含量の低減方法。
- 葉タバコ中の嫌気性微生物が微生物相の優勢種になる前に、葉タバコを硝酸還元能を有せず且つ嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物で処理することを特徴とする葉タバコ中のTSNAの低減方法。
- 前記嫌気性微生物がエンテロバクター属またはパントエア属の微生物である請求項1乃至2の何れか1項に記載の方法。
- 前記硝酸還元能を有せず且つ嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物が、フラビモナス属微生物である請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
- 前記硝酸還元能を有せず且つ嫌気性微生物に対して生育拮抗作用を示す微生物が、フラビモナス・オリズィハビタンス K6001菌株である請求項1乃至3の何れか1項に記載の方法。
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