JP4160237B2 - ビームモニター装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、粒子線加速器からの加速粒子線について、その位置、形状、荷電粒子数、および線量を測定するビームモニター装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、日本における死亡原因の約3分の1を占めるがんの治療方法として、陽子や重粒子を用いた粒子線治療法が注目されている。この方法では、加速器から出射された陽子ビーム、あるいは重粒子ビームをがん細胞に照射することで、正常細胞にほとんど影響を与えることなく、がん細胞のみを死滅させることができる。
【0003】
この方法による粒子線治療装置において、体内患部に照射する線量を制御するために線量モニターが使用される。すなわち、線量モニターで検出する照射線量が、治療計画であらかじめ決められた予定線量に到達すると、直ちにビーム停止命令がビーム制御装置に送られて治療ビームが停止される。この線量モニターとしては、容器中にて粒子線の電離作用により生じた電荷を平行電極で収集する電離箱や、容器内に配置された二次電子放出膜から放出される二次電子を計測するSEM装置などが用いられる。
【0004】
図7は、従来用いられている線量モニターの概略構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図7において、モニター容器13の内部に一つ以上の高電圧電極3、および一つ以上の電荷収集電極5が配置された電離箱を構成している。電荷収集電極5には、容器13に入射する粒子線ビーム量に応じた電荷が収集される。電荷収集電極5にはコネクタ7が接続されており、電荷収集電極5からコネクタ7を介して計測回路へ出力がされ、照射線量が計測される。
【0005】
医用粒子線照射装置では、上記計測回路で計測された照射線量が、治療計画であらかじめ決められた規程値に到達すると、ビーム制御装置にビーム停止命令が送られ、粒子線照射が停止される。したがって、線量モニターにおける測定精度が必要となってくる。
【0006】
また、粒子線治療装置において用いられるモニター装置としては、線量モニターの他に、粒子線のビーム形状を計測するために用いるビーム形状モニター(位置モニター)がある。このビーム形状モニターには、例えば、電離箱の電荷収集電極を複数の短冊状に加工したマルチストリップ型モニターや、電荷収集電極を複数のワイヤで形成したマルチワイヤ型モニターがあり、いずれもビーム形状に応じた分布が各ストリップ(マルチワイヤ型では各ワイヤ)から出力される。
【0007】
図8は、マルチストリップ型モニターの概略構成を示す図である。図8において、このモニターでは一つ以上の高電圧電極3、および一つ以上の電荷収集電極4(4x、4y)が配置されている。
【0008】
各電荷収集電極4は、1軸方向へ電気的に非接続な多数のストリップで区切られた構成を持つ。これらストリップを流れる電離電流は、それぞれコネクタ7(7x、7y)を介して計測回路に流れ、この計測回路において積分、演算がなされ、各ストリップでの単位時間あたりの線量分布が出力される。これは、すなわちビームの分布を示しているため、ビームの形状、位置を測定することができる。
【0009】
医用粒子線照射装置では、上述したビーム形状モニターから出力されるビーム形状に異常がある場合、インタロック信号が制御システムに送信され、治療が中断される。ビームの形状、位置を正確に測定するためには、各ストリップにおける出力が、線量や場所に依存せず正確に出力される必要がある。
【0010】
位置検出分解能は、ストリップの間隔に依存する。しかしながら、ストリップの間隔を狭めて本数を多くすることは、すなわちストリップ一本あたりの信号強度が小さくなることである。また、分解能を向上させようとした場合、暗電流や電気的外乱を極力避け、より正確な線量分布を測定しなくてはならない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の線量モニターでは、高電圧電極と電荷収集電極との間に静電力が働き引き合うため、電極中央部近傍では外周部と比較して電極間距離が短くなってしまい、中央部に入射したビーム強度を精度良く測定できないという問題があった。
【0012】
また、従来のビーム位置モニター(形状モニター)では、線量モニターと同様、高電圧電極と電荷収集電極との間に静電力が働き引き合うため、電極中央部近傍では外周部と比較して電極間距離が短くなってしまい、中央部に入射したビーム強度を精度よく測定できないという問題があった。この電極間距離の不均一性は、ビーム形状を歪ませ、精度の良いビーム中心位置とビーム形状の測定をできなくする。
【0013】
また、一般的にビーム位置モニター(形状モニター)は、ビームの位置や形状を測定すると同時に、全チャンネルの電荷総和量を算出することによりビーム線量を測定するため、線量モニターの補助モニターとして使用される。よって、上述した電極間距離の不均一性により、精度良くビーム線量を測定することができなくなる。
【0014】
また、マルチストリップ型の電極の場合、張力をかけた状態で電極枠に接着すると、たやすく破れてしまうため、接着が困難である。破れを防ぐには電極を厚くすることが必要になるが、この場合、電極でのビームの散乱が増大してしまい、適確なビーム形状で患部に照射することの妨げになる。
【0015】
また、上記の線量モニターおよびビーム位置モニターは、従来個別に配置されている。そのため、ビーム取り出し窓および電極でのビームの散乱が無視できないという問題点もある。
【0016】
以上のように、従来の線量モニターおよびビーム位置モニターでは、高電圧電極と電荷収集電極との間の距離を空間的に一定に保つことが困難であった。このため、測定される照射線量の誤差が大きく、また、ビーム位置およびビーム形状を精度良く測定できないという問題があった。
【0017】
本発明の目的は、高電圧電極と電荷収集電極の間の距離を均一に保つことが可能になり、精度の良い線量測定、ビーム位置、形状測定を可能にするビームモニター装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決し目的を達成するために、本発明のビームモニター装置は以下の如く構成されている。
【0019】
(1)本発明のビームモニター装置は、容器内に、複数の電極基板を組み合わせて構成され、前記電極基板のうち一枚を両面を、一定間隔でスリット状電極が配置されるようスリット加工した第1の電極とし、この第1の電極を前記電極基板のうち二枚からなる第2の電極で挟み、前記第1の電極と前記第2の電極を所定距離をもって保持する構成とし、前記第2の電極に電圧が印加されることで、前記第1の電極から各スリット状電極の電離電流を取り出す位置検出部を備え、前記位置検出部を互いに直交する方向に一対設け、ビームの位置を検出する位置モニターと、前記電極基板のうち一枚を第3の電極とし、この第3の電極を前記第2の電極で挟み、前記第3の電極と前記第2の電極を所定距離をもって保持する構成とし、前記第2の電極に電圧が印加されることで、前記第3の電極から電離電流の総和を取り出す線量検出部を備えた線量モニターと、から構成されている。
【0020】
上記ビームモニター装置によれば、位置モニターと線量モニターを一体化させることにより、ビーム軸方向の長さを短縮し、気中での散乱等による測定誤差を減少させることができる。また、ビーム取り出し窓を共通化させることで、ビームの散乱を減少させ、適確なビーム形状で患者の治療を行うことができる。また、電離空間が増加するため、電離電流が増加し、信号量が増加する。そのため、強度の小さいビームに対してもS/N比を大きく得ることが可能となるので、測定のダイナミックレンジを大きく取ることが可能となり、さらに精度の高い測定が可能となる。
【0021】
また、高圧電極と電荷収集電極の間に働く静電力は、電荷収集電極の両面に対して同位置の力で作用するため、電荷収集電極のひずみが生じなくなり、測定精度を向上させることができる。
【0022】
(2)本発明のビームモニター装置は上記(1)に記載の装置であり、かつ前記位置モニターにおける各スリット状電極の電離電流の総和から線量を求める。
【0023】
上記ビームモニター装置によれば、位置モニター部分を線量モニターの補助として使用することにより、線量信号の信頼性を向上させることが可能となる。
【0024】
(3)本発明のビームモニター装置は上記(1)または(2)に記載の装置であり、かつ前記線量モニターにおける前記第3の電極と前記第2の電極を複数対設けている。
【0025】
上記ビームモニター装置によれば、線量モニター部分を複数配置することによって、線量の検出精度を向上させることができ、線量モニターの信頼性を向上させることができる。また、一対の線量モニターが機能しなかった場合であっても患者に過剰の線量を照射すること無く治療を行うことが可能となる。
【0026】
(4)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記位置モニターにおける直交する前記位置検出部の対を複数組設けている。
【0027】
上記ビームモニター装置によれば、位置モニター部分を複数配置することによって、ビームの軸ずれを判断し、軌道およびビーム位置を正確に求めることが可能となり、ビーム位置検出の信頼性を向上させることができる。
【0028】
(5)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の装置であり、かつビームが入射または出射される二枚のビーム取り出し窓の両面もしくは片面に導電体が蒸着され、それらが接地されている。
【0029】
上記ビームモニター装置によれば、帯電を防止し、かつ導電体性の材料を用いた場合と比較して散乱を小さくすることが可能となり、外部からの電気的外乱の影響を減少させ、S/Nを向上させることで、精度の高い測定を行うことができる。
【0030】
(6)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の装置であり、かつビームが入射または出射される二枚のビーム取り出し窓、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記第3の電極を、すべて一定の間隔で配置している。
【0031】
上記ビームモニター装置によれば、ビーム入射窓、出射窓は接地電位にあるため、電荷収集電極が高電圧電極を引っ張る力と同じ大きさで、方向が逆向きの力を高電圧電極に働かせることになる。すなわち、高電圧電極に働く力の総和はゼロになり、電荷収集電極と高電圧電極の距離は一定に保たれる。したがって、電離する気体の容積を固定でき、精度の良い線量測定、ビーム位置、形状測定が可能になる。
【0032】
(7)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記位置モニターにおける各スリット状電極の幅を0.6〜1.0mmに微細化している。
【0033】
上記ビームモニター装置によれば、0.6〜1.0mmの間隔での線量分布が測定され、通常、位置演算は単位時間あたりの積分値から、重心位置およびビームの分布を求めるものであるため、スリット間隔が小さくなることによって、位置検出の分解能および精度が向上する。
【0034】
(8)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記位置モニターにおける前記第1の電極は、絶縁シートの表面に下地としてニッケルを蒸着し、その上に銅を蒸着し、エッチングにより加工している。
【0035】
上記ビームモニター装置によれば、スリット加工をエッチングにより行うため、スリット状電極の端部を均一に加工することが可能となる。そのため、各スリット状電極の面積を均一にでき、スリット状電極毎の感度の不均一性を抑制し、位置検出精度の高い測定を行うことができる。また、微細加工によって、スリット状電極とスリット状電極の間の空隙領域を最小限にすることが可能になるため、空隙部分における検出されない粒子を最小限にすることができる。
【0036】
(9)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(7)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記位置モニターにおける前記第1の電極は、絶縁シートの表面にアルミニウムを蒸着、あるいはニッケルを蒸着、あるいは下地としてニッケルを蒸着しその上に銅を蒸着し、レーザーで金属部分のみ蒸発させて加工している。
【0037】
上記ビームモニター装置によれば、スリット状電極をレーザー加工によって製作することで、スリット状電極の間隔を容易に変化させることが可能であるため、均一性の高い電極を容易に製作することができる。
【0038】
(10)本発明のビームモニター装置は上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の装置であり、かつ前記第2の電極は、ガスの導入口と通風溝を有する。
【0039】
上記ビームモニター装置によれば、微量のガスを常時一様に導入することが可能であり、ガスを導入することによって電離空間のガス密度を一定に保持するため、ガス密度の変化によって出力が変化することを防止でき、安定した出力を得ることが可能となり、検出精度が向上する。
【0040】
(11)本発明のビームモニター装置は上記(10)に記載の装置であり、かつ前記通風溝に圧力計を設けている。
【0041】
上記ビームモニター装置によれば、圧力計によりガスの流量調整を一定に保持、調整可能となり、最適なガス流量条件において安定した出力を得ることができる。
【0042】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第1の実施の形態を説明する。
【0043】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成を示す図である。図2は、位置検出電極基板の構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。なお、このビーム位置・線量モニターは、図示しないモニター容器の内部に収容されている。
【0044】
図1において、粒子線ビームは、一方の押え板1に保持されたビーム取り出し窓6からモニター内に入射される。また粒子線ビームは、他方の押え板1に保持されたビーム取り出し窓6からモニター外に出射される。位置検出電極基板4(4x,4y)は、二枚の高圧電極基板3に挟まれて配置されている。入射されたビームは、位置検出電極基板4と高圧電極基板3の間の電離空間にて電離作用を生じる。各高圧電極基板3には、それぞれ外部から高圧電圧が印加される。図2に示すように、位置検出電極基板4の両面には、導電体からなるスリット状電極10が配されている。
【0045】
各スリット状電極10は、それぞれシグナル線でコネクタ7と接続されており、それぞれの領域での電離電流をコネクター7から外部に取り出す事ができる。この取り出された信号により、外部に設けられた位置信号処理回路8にてビーム位置の算出が行なわれる。
【0046】
各基板3,4は、絶縁物からなるスペーサー2によって、基板間の距離が保持されている。これら高圧電極基板3、位置検出電極基板4の各基板、およびコネクター7、スペーサー2は合わせて一組の位置検出部をなしており、この位置検出部は更に一組配置されている。これら位置検出部は、互いに直交する方向に配置されている。
【0047】
線量検出電極基板5は、二枚の高圧電極基板3に挟まれて配置されている。入射されたビームは、線量検出電極基板5と高圧電極基板3の間のスペーサー2によって形成される電離空間にて電離作用を生じる。各高圧電極基板3には、それぞれ外部から高圧電圧が印加され、線量検出電極基板5から検出面全面の電離電流の総和を線量信号として外部に取り出す事ができる。この取り出された線量信号により、外部に設けられた線量信号処理回路9にて線量の算出が行なわれる。
【0048】
基板3,4,5は、絶縁物からなるスペーサー2によって、基板間の距離が保持されている。そして、高圧電極基板3、線量検出電極基板5の各基板は合わせて線量検出部をなしている。なお、すべての基板3,4,5は、押え板1により固定されている。
【0049】
本第1の実施の形態によれば、ビーム位置モニターと線量モニターを一体化させることにより、ビーム軸方向の長さを短縮し、気中での散乱等による測定誤差を減少させることができる。また、ビーム取り出し窓6を共通化させることで、ビームの散乱を減少させ、適確なビーム形状で患者の治療を行うことができる。また、電離空間が増加するため、電離電流が増加し、信号量が増加する。そのため、強度の小さいビームに対してもS/N比を大きく得ることが可能となるので、測定のダイナミックレンジを大きく取ることが可能となり、さらに精度の高い測定が可能になる。
【0050】
また、高圧電極基板3と位置検出電極基板4および線量検出電極基板5との間に働く静電力は、電荷収集電極の両面に対して同位置の力で作用するため、電極基板4、5にひずみが生じなくなり、測定精度を向上させることができる。
【0051】
(第2の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第2の実施の形態を説明する。
【0052】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターに適用される信号処理回路の構成を示す図である。
【0053】
図3において、スリット状電極10にて検知された電離電流は、位置信号処理回路8内部の積分器81によって一定時間積分された後、ADC82にてデジタル信号化され、処理部83にて位置の算出が行われる。その際、ADC82にてデジタル化した信号を分岐し、全スリット状電極10の信号量の総和を、線量信号処理回路9にて計算することで、一定積分時間における線量を測定することが可能となる。
【0054】
すなわち、位置モニター部分を線量モニターの補助として使用することにより、線量信号の信頼性を向上させることが可能となる。
【0055】
(第3の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第3の実施の形態を説明する。
【0056】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成の一部を示す図である。
【0057】
このビーム位置・線量モニターでは、各二枚の高圧電極基板3の間に、それぞれ線量検出電極基板51、52、…、5nを配している。すなわち、線量検出電極基板5と高圧電極基板3を複数対設けている。そして、線量信号処理回路9にて線量検出電極基板51、52、…、5nからの各出力信号を比較することにより、モニター本体の異常を検知することが可能になる。
【0058】
また、一対の線量モニターが機能しなかった場合であっても、線量検出電極基板51、52、…、5nから出力される信号が一定値を超えた場合に、ビームを停止させることにより、患者に過剰の線量を照射すること無く治療を行うことが可能となる。
【0059】
(第4の実施の形態)
次に、本発明に係るビームモニター装置の第4の実施の形態を説明する。
【0060】
図5は、本発明の第4の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成を示す図である。
【0061】
図5におけるビーム位置・線量モニターは、二枚の高圧電極基板3に挟まれた、水平方向の位置検出電極基板4x1、および垂直方向の位置検出電極基板4y1によって構成され、位置モニター部分を複数組配するものである。
【0062】
例えば、ビームの軸が所定の軌道上になかった場合等に、一組の位置モニターでは、正常な出力を行う可能性があるが、ビーム軸方向に複数の位置モニターを配置することにより、その出力結果からビームの軸ずれを判断し、軌道を正確に求めることが可能となる。また、1組のモニターが正常に動作しない場合であっても、ビーム位置を求めることが可能となる。
【0063】
(第5の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第5の実施の形態を説明する。
【0064】
本第5の実施の形態では、図1に示す構成のビーム位置・線量モニターにおいて、二枚のビーム取り出し窓6の両面もしくは片面に導電体を蒸着し、それらを接地する。一般にビーム取出し窓6は、散乱の影響を抑えるため、カプトン等の絶縁物によって構成される。荷電粒子が絶縁物に照射された場合、絶縁物が帯電し、ビームおよびモニターの検出精度に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
このように、ビーム取出し窓6の片面もしくは両面に導電体を蒸着し、それらを接地することで、帯電を防止し、なおかつ導電体性の材料を用いた場合と比較して散乱を小さくすることが可能となる。
【0066】
(第6の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第6の実施の形態を説明する。
【0067】
本第6の実施の形態では、図1に示す構成のビーム位置・線量モニターにおいて、ビーム取り出し窓6、高圧電極基板3、位置検出電極基板4および線量検出電極基板5を、すべて一定の間隔で配置する。
【0068】
本構成のビーム位置・線量モニターにおいて、ビーム取り出し窓6、位置検出電極基板4および線量検出電極基板5は、接地電位にある。そのため、高圧電極3に高電圧を印加することによって、高圧電極3と、ビーム取り出し窓6、位置検出電極基板4および線量検出電極基板5との間に静電力による張力が発生する。
【0069】
この張力の大きさは、高電圧の大きさと、電極間の距離に依存する。各電極間の距離を一定に保持することによって、高電圧電極に働く力の総和はゼロになり、電荷収集電極と高電圧電極の距離は一定に保たれる。したがって、精度よい線量測定、ビーム位置、形状測定が可能になる。
【0070】
(第7の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第7の実施の形態を説明する。
【0071】
本第7の実施の形態では、図2に示す位置検出電極基板4について、スリット状電極10の幅を0.6〜1.0mmに微細化する。位置検出電極基板4からの出力は、横軸に各スリット状電極10の位置、縦軸にスリット状電極10毎の電離電流をとったヒストグラムとなる。そのためスリット状電極10の幅は、位置検出の分解能に影響を及ぼす。よって、スリット状電極10の幅を微細にすることにより、位置検出の分解能を向上させることが可能となる。
【0072】
(第8の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第8の実施の形態を説明する。
【0073】
本第8の実施の形態では、図2に示す位置検出電極基板4について、スリット状電極10を、絶縁シートの表面に下地としてNi(ニッケル)を蒸着し、その上にCu(銅)を蒸着し、エッチングにより加工することによって製作する。
【0074】
このようにスリット加工をエッチングによって行うため、スリット状電極10の端部を均一に加工することが可能となる。そのため、各スリット状電極10の面積を均一にできるので、スリット毎の感度の不均一性を抑制し、精度の高い測定を行うことができる。また、微細加工によって、スリット状電極10間の空隙領域を最小限にすることが可能になるため、空隙部分における検出されない粒子を最小限にすることができる。
【0075】
(第9の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第9の実施の形態を説明する。本第9の実施の形態では、図2に示す位置検出電極基板4について、スリット状電極10を、絶縁シートの表面にAl(アルミニウム)を蒸着、あるいはNi(ニッケル)を蒸着、あるいは下地としてNi(ニッケル)を蒸着し、その上にCu(銅)を蒸着し、レーザーで金属部分のみ蒸発させて加工することによって製作する。
【0076】
このように、レーザー出力によってスリットの間隔を容易に変化させることが可能であるため、均一性の高い電極を容易に製作できる。
【0077】
(第10の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第10の実施の形態を説明する。
【0078】
図6は、本発明の第10の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターに適用される高圧電極基板の構成を示す図である。
【0079】
図6に示す高圧電極基板3’は、ガス導入口11を有するとともに、ガスが流れるよう複数の通風溝12を有する。ビームの軌道は必ずしもモニターの全領域ではないため、密閉された空間においては、ビームの軌道によって、空間内のガス密度に不均一性が生じる。このガス密度の不均一性は、電離電流の不均一性につながるため、信号出力に時間的、空間的な不均一を生じさせるものである。
【0080】
本第10の実施の形態では、ガス導入口11から微量のガスを常時導入することによって、電離空間のガス密度を一定に保持するため、安定した出力を得ることが可能となり、検出精度が向上する。また、本第10の実施の形態の構成を、高圧電極基板だけでなく、位置検出電極基板4および線量検出電極基板5について実施してもよい。
【0081】
(第11の実施の形態)
以下、本発明に係るビームモニター装置の第11の実施の形態を説明する。
【0082】
本第11の実施の形態では、図6に示す高圧電極基板3’の通風溝12の一箇所に図示しない圧力計を設ける。この圧力計によりガスの通風量を一定に保持し、出力を更に安定化させることができる。また、本第11の実施の形態を、高圧電極基板だけでなく、位置検出電極基板4および線量検出電極基板5について実施してもよい。
【0083】
なお、本発明は上記各実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。さらに、上記各実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも一つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、高電圧電極と電荷収集電極の間の距離を均一に保つことが可能になり、精度の良い線量測定、ビーム位置、形状測定を可能にするビームモニター装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成を示す図。
【図2】本発明の実施の形態に係る位置検出電極基板の構成を示す図。
【図3】本発明の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターに適用される信号処理回路の構成を示す図。
【図4】本発明の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成の一部を示す図。
【図5】本発明の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターの構成を示す図。
【図6】本発明の実施の形態に係る第10の実施の形態に係るビーム位置・線量モニターに適用される高圧電極基板の構成を示す図。
【図7】従来例に係る線量モニターの概略構成を示す図。
【図8】従来例に係るマルチストリップ型モニターの概略構成を示す図。
【符号の説明】
1…押え板
2…スペーサ
3,3’…高圧電極基板
4…位置検出電極基板
5…線量検出電極基板
6…ビーム取出し窓
7…コネクタ
8…位置信号処理回路
9…線量信号処理回路
10…スリット状電極
11…ガス導入口
12…通風溝
13…モニター容器
Claims (11)
- 容器内に、複数の電極基板を組み合わせて構成され、
前記電極基板のうち一枚を、複数のスリット状電極が配置されるようスリット加工した第1の電極とし、この第1の電極を前記電極基板のうち二枚からなる第2の電極で挟み、前記第1の電極と前記第2の電極を所定距離をもって保持する構成とし、前記第2の電極に電圧が印加されることで、前記第1の電極から各スリット状電極の電離電流を取り出す位置検出部を備え、前記位置検出部を互いに直交する方向に一対設け、ビームの位置を検出する位置モニターと、
前記電極基板のうち一枚を第3の電極とし、この第3の電極を前記第2の電極で挟み、前記第3の電極と前記第2の電極を所定距離をもって保持する構成とし、前記第2の電極に電圧が印加されることで、前記第3の電極から電離電流の総和を取り出す線量検出部を備えた線量モニターと、
を具備したことを特徴とするビームモニター装置。 - 前記位置モニターにおける各スリット状電極の電離電流の総和から線量を求めることを特徴とする請求項1に記載のビームモニター装置。
- 前記線量モニターにおける前記第3の電極と前記第2の電極を複数対設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のビームモニター装置。
- 前記位置モニターにおける直交する前記位置検出部の対を複数組設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のビームモニター装置。
- ビームが入射または出射される二枚のビーム取り出し窓の両面もしくは片面に導電体が蒸着され、それらが接地されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のビームモニター装置。
- ビームが入射または出射される二枚のビーム取り出し窓、前記第1の電極、前記第2の電極、および前記第3の電極を、すべて一定の間隔で配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のビームモニター装置。
- 前記位置モニターにおける各スリット状電極の幅を0.6〜1.0mmに微細化したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のビームモニター装置。
- 前記位置モニターにおける前記第1の電極は、絶縁シートの表面に下地としてニッケルを蒸着し、その上に銅を蒸着し、エッチングにより加工したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のビームモニター装置。
- 前記位置モニターにおける前記第1の電極は、絶縁シートの表面にアルミニウムを蒸着、あるいはニッケルを蒸着、あるいは下地としてニッケルを蒸着しその上に銅を蒸着し、レーザーで金属部分のみ蒸発させて加工したことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のビームモニター装置。
- 前記第2の電極は、ガスの導入口と通風溝を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のビームモニター装置。
- 前記通風溝に圧力計を設けたことを特徴とする請求項10に記載のビームモニター装置。
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