JP4158208B2 - 天然鉱物により流動層燃焼炉での燃焼及び有害ガスの排出を改善する方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、天然鉱物により流動層燃焼炉での燃料の燃焼及び有害ガスの排出を改善する方法及び装置に係り、特に流動層燃焼炉ベッド材にボーキサイトもしくは活性ボーキサイトを混合することにより、燃焼炉内で発生したN2O及び高級炭化水素を分解して流動層燃焼炉での燃焼及び有害ガスの排出を改善する方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
発電・ゴミ燃焼等の目的で石炭等の燃料を流動層燃焼炉で燃焼させるとき発生する酸化二窒素(N2 O)は、放出後成層圏へ拡散してオゾン層を破壊すると共に温室効果への寄与も大きいことが明らかになり、地球環境問題の一つとしてその排出抑制が強く望まれている。
【0003】
又、燃焼炉の石炭供給口付近で生成されるガス・タール等の高級炭化水素は、燃料中に含まれる塩素分とフリーボード後段で反応して有機塩素化合物(ダイオキシン等)を生成する可能性があり、この有機塩素化合物も環境に悪影響を及ぼすことから、その生成の原因となる高級炭化水素の排出抑制が望まれている。
【0004】
そして、流動層燃焼炉からの排ガスに含まれるN2 Oの除去技術としては、燃焼方式の改良によるN2 Oの低減、プラズマ照射によるN2 Oの分解、触媒によるN2 Oの分解除去等があるが、最初の2つは高温材料,熱効率,コストなどの面で実用化に問題があるので、ある種の金属化合物を触媒として用いてN2 Oを除去することが検討されている。
【0005】
この触媒によるN2 O除去の場合、触媒層などを備えたN2 O除去装置を別途流動層燃焼炉の排ガスラインに設置する方法と、触媒を流動層の流動媒体(ベッド材)として充填する方法とがある。前者の方法においては、ゼオライトやTiO2 のハニカムにN2 O分解活性を有する金属を担持した触媒を使用し、空気予熱器後方の低温(約400℃)域にこのN2 O除去装置を設置する。後者の方法においては、γ−アルミナ又はγ−アルミナと金属(Na,K等)化合物との混合物が流動層の流動媒体として使用される(特開平6−123406号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ゼオライトやTiO2 のハニカムにN2 O分解活性を有する金属を担持した触媒を用いる前者の方法においては、触媒のN2 O分解率が低いことに加えて触媒の寿命が短いという大きな欠点があり、余り実用的でない。
【0007】
一方、γ−アルミナ又はγ−アルミナと金属化合物との混合物を流動層の流動媒体(ベッド材)として充填する後者の方法においては、γ−アルミナにより有効なN2 O分解率がもたらされるものの、γ−アルミナ及び他の金属化合物が比較的高価なため、ベッド材として多量の触媒を充填する必要上コスト面で問題があった。
【0008】
この触媒をベッド材として充填する方法に関する上記特開平6−123406号の公報には、「流動層はγ−アルミナ又はγ−アルミナと金属化合物との混合物のみによって形成するのが好ましい…必要に応じてγ−アルミナと通常の流動媒体(砂,石灰石,石炭灰など)との混合物によって形成することもできる」とあり、最適の触媒機能を達成するには比較的高価なγ−アルミナ及び金属化合物を多量に使用してベッド材に充てる必要があること、すなわちコストが高くなるという問題があることが明らかである。
【0009】
又、このγ−アルミナ又はγ−アルミナと金属化合物との混合物を流動層のベッド材として充填する方法の場合、燃焼炉内で発生する高級炭化水素(上述のように有機塩素化合物生成の原因となる)の除去については、一切考慮していないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、天然鉱物により流動層燃焼炉内で燃料を燃焼及び有害ガスの排出する際に、発生するN2 O及び高級炭化水素を効果的かつ安価に除去できる方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、流動層燃焼炉で燃料を流動層ベッド材と共に流動化させながら行う燃焼を改善する方法において、流動層ベッド材にボーキサイトもしくは活性ボーキサイトを混合して、流動層燃焼炉内に発生するN2O及び炭化水素を分解するように構成される。
【0013】
請求項2の発明は、上記炭化水素が、ガス・タール等の高級炭化水素であるように構成される。
【0014】
請求項3の発明は、流動層燃焼炉で燃料を流動層ベッド材と共に流動化させながら行う燃焼を改善する装置において、流動層燃焼炉内に発生するN2O及び炭化水素を分解すべく、流動層ベッド材にボーキサイトもしくは活性ボーキサイトを混合する装置を設けて構成される。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面により説明する。
【0016】
図1には、発電・ゴミ燃焼等の目的で石炭等の燃料を燃焼・利用すると共にその排ガスを処理する流動層燃焼プラント30の一部が示されている。燃料を流動化させながら燃焼する流動層燃焼炉1は、その下部に燃料21を供給する燃料供給ライン15が接続されると共にその上部に排ガス排出ライン16が接続される。排ガス排出ライン16は、図に示されるように順に接続されたサイクロン10,セラミックフィルタ11,脱硫装置12,及び流動層燃焼炉1へ供給する燃焼用空気20を排ガスで予熱する空気予熱器14から主に構成される。脱硫装置12は、その内部にアルカリ吸着剤(CaCO3 等)13を有する。
【0017】
図示の流動層燃焼炉1は、通気性を有する下部空気分散板2及び上部空気分散板6により燃焼炉下段部18及び上段部19の上下2段に分割されている。上段部19は、フリーボード9を有する。下段部18と上段部19との間には、燃焼炉1内に発生した顕熱を利用するための熱交換器5が設けられる。また、燃焼炉下段部18及び上段部19には、サイクロン10から延びて各段部18,19にベッド材(硅砂,シリカ,アルミナ,灰などの混合物)4,8を供給するベッド材供給ライン17が接続される。
【0018】
本実施の形態においては、又、ベッド材供給ライン17を介して活性ボーキサイトからなる天然鉱物(図示されず)が脱N2O分解触媒(及び脱高級炭化水素分解触媒)としてベッド材4,8に混合され、よって、このベッド材供給ライン17が、本発明の流動層燃焼炉での燃焼を改善する装置を構成する。
【0019】
下部空気分散板2上には、ベッド材供給ライン17を介して供給されるベッド材4,燃料供給ライン15を介して供給される燃料21及び空気予熱器14から供給される燃焼用空気20により形成される下部流動層3が位置し、一方、上部空気分散板6上には、ベッド材供給ライン17を介して供給されるベッド材8,燃料21及び燃焼用空気20により形成される上部流動層7が位置する。
【0020】
本実施の形態において、下部流動層3,上部流動層7は、上述のようにベッド材供給ライン17を介して供給される脱N2O分解触媒(及び脱高級炭化水素分解触媒)としてのボーキサイトもしくは活性ボーキサイトからなる天然鉱物(図示せず)を含む。従って、上下部流動層3,7は、触媒層でもある。
【0021】
この触媒(すなわちボーキサイトもしくは活性ボーキサイト)は、空気分散板2,6の上に粒状のまま供給されても、あるいは固形状触媒として空気分散板2,6の定位置に固定されてもよい。
【0023】
本発明の脱N2O剤及び脱高級炭化水素剤としてのボーキサイトまたは活性ボーキサイトは大きな吸着能力を備えた多孔質構造を有する。
【0024】
燃焼炉1の空気分散板2,6上に、ベッド材供給ライン17を介してベッド材4,8及びボーキサイトもしくは活性ボーキサイトからなる触媒粒が供給されると共に燃料21が燃料供給ライン15を介して供給され、ここに空気予熱器14から供給される燃焼用空気20が空気分散板2,6を介して流入すると、燃料21とベッド材4,8及び触媒粒とが流動化され、燃焼炉下段部18の下部流動層3と燃焼炉上段部19の上部流動層7とが各々形成される。又、このとき、ベッド材4,8に混入された触媒(ボーキサイトもしくは活性ボーキサイト)粒により、各流動層3,7において顕著な粒子下降流がもたらされる。
【0025】
流動層3,7では燃料が高温(約800〜1000℃)で燃焼される。この燃焼により生成するNH3 ,HCNが下式のように反応してN2 Oを生成する。
【0026】
2NH3 +2O2 → N2 O+3H2 O …(1)
2HCN+3O2 → N2 O+2CO2 +H2 O …(2)
又、燃焼炉下段部18内の燃料供給ライン15付近では、上記の燃焼により、高級炭化水素(ガス・タール等)が生成される。
【0027】
さて、上述のように生成されたN2Oは、ベッド4,8に混入されている触媒(ボーキサイトもしくは活性ボーキサイト)に接触すると共にこれらの触媒に吸着され、分解される(下記参照)。
【0028】
つまり、ボーキサイトもしくは活性ボーキサイトは、上述のように多孔質構造を有し大きな比表面積及び大きな吸着能力を備えているので、N2Oはこれらの触媒と効率よく接触し、しかもN2Oは燃焼炉1内部のような高温条件下で(これらの触媒により)分解されやすい、特に図2に示すように、ボーキサイトは、活性白土や酸性白土に比べて、500〜700℃でのN 2 O分解率が高くベット材に混入して用いるのに好適である。このN2Oは下記の反応に基づき速やかに分解されると共に無害化される。
【0029】
2N2O → 2N2 + O2 …(3)
なお、本発明の触媒(ボーキサイトまたは活性ボーキサイト)は、やはり排ガスに含まれていてN2Oの発生源となるアンモニア及びHCNを効率的に分解することが分かっている。
【0030】
一方、上述のように燃焼炉下段部18内の燃料供給ライン15付近で生成された高級炭化水素も、各流動層3,7内でベッド材4,8に混入されている触媒(ボーキサイトまたは活性ボーキサイト)に接触すると共にこの触媒に吸着され、触媒により低級炭化水素あるいはCO2になるまで分解される。この本発明の触媒による炭化水素の分解作用に関する試験結果が、表1に示されている。
【0031】
【表1】
【0032】
表1は、上記の触媒の一つである活性ボーキサイトをベッド材に加えて石炭(A及びBの2種類)を流動層燃焼炉で燃焼した場合の燃焼試験結果、特に炭素マスバランス値を示す。ちなみに、炭素マスバランス値とは石炭中の炭素分がCO2,CO,CH4といった低級炭化水素(ガス)に分解された割合を示す値であり、その値が1前後であれば、石炭中の炭素分がほぼ完全にCO2等に分解されたことを意味する。図示されるように、石炭A,石炭Bの両方において、活性ボーキサイトを加えた場合の炭素マスバランス値がほぼ1であり、従って、活性ボーキサイト(又、ボーキサイトも活性ボーキサイトとほぼ同様の効果を発揮する)の触媒作用により、石炭中の炭素分(ガス・タール等の高級炭化水素を含む)が低級炭化水素に効率よく分解されることが分かる。
【0033】
つまり、本実施の形態においては、燃焼炉1内で発生した高級炭化水素が各流動層3,7において上記の触媒の作用により速やかに分解され、この結果、燃焼炉1のフリーボード9における有機塩素化合物の生成(燃料中に含まれる塩素分と高級炭化水素とが反応して起こる)が、顕著に抑制される。
【0034】
又、上述のように触媒(粒)により各流動層3,7内に顕著な粒子下降流がもたらされるので、高級炭化水素が燃焼炉1の酸素リッチな底部に効果的に引き下ろされ、これによってもフリーボード9後段における有機塩素化合物の生成が抑制される。
【0035】
こうしてN2O及び高級炭化水素を除去された排ガスは、排ガス排出ライン16によりサイクロン10,セラミックフィルタ11,脱硫装置12へと順に導入される。脱硫装置12では、その内部のアルカリ吸着剤13に混合された触媒(ボーキサイトまたは活性ボーキサイト)により、排ガス中に残存しているN2O及び高級炭化水素がさらに分解除去される。このとき、脱硫装置12の内部温度はまだ高温(約850℃)に維持されているので、N2O分解率も高い値に保たれる(図2参照)。こうしてN2Oを除去された排ガスは、他の排ガス処理設備(図示せず)を経て大気放出される。
【0036】
なお、触媒(ボーキサイトまたは活性ボーキサイト)の供給に関しては、各流動層3,7及びアルカリ吸着剤13に供給することに加えて、燃料供給ライン15を介して供給される燃料(図示せず)に混合して供給してもよい。
【0037】
本発明に係る優れたN2O分解活性を有する触媒の分解能力を高めるためには、反応が高温条件下で行われること、及び充分な量の触媒が使用されること等の条件が満たされねばならないが、本実施の形態においては、反応は高温条件下で行われ、また触媒のボーキサイトまたは活性ボーキサイトはいづれも安価であり容易に充分な量を供給できるから、100%近いN2O分解率を低コストで達成できる。
【0038】
以上要するに本発明によれば、高温条件下において優れたN2O分解能力を有する天然鉱物(ボーキサイトまたは活性ボーキサイト)を、触媒として高温の流動層燃焼炉の流動層のベッド材、脱硫装置のアルカリ吸着剤及び燃料に混合することにより、燃料の燃焼により発生するN2O(及びアンモニア,HCN)を高い分解率で分解除去可能である。これらの天然鉱物は比較的安価であるから、必要に応じて充分な量を供給可能であり、ゆえに100%近いN2O(及びアンモニア)除去率を低コストで達成可能である。
【0039】
又、上記の天然鉱物から成る触媒は、優れた炭化水素分解能力も有するので、燃焼炉下段部18で生成されたガス・タール等の高級炭化水素がこの触媒により速やかに吸着・分解され、よって、フリーボード後段における有害な有機塩素化合物の生成を抑制可能である。
【0040】
又、上記の触媒(粒)により各流動層内に顕著な粒子下降流がもたらされるので、発生した高級炭化水素が燃焼炉底部に効果的に引き下ろされ、これによってもフリーボード後段における有機塩素化合物の生成が抑制される。
【0041】
【発明の効果】
以上要するに本発明に係る天然鉱物による燃焼及びN2 O排出を改善する方法及び装置によれば、以下の優れた効果がもたらされる。
【0042】
(1) 本発明で触媒として用いられる活性ボーキサイトまたはボーキサイト(天然鉱物)は、多孔質構造を有し大きな比表面積及び大きな吸着能力を備えているので、N2Oはこれら触媒と効率よく接触可能であり、高い分解率がもたらされる。また上記の触媒は、高温条件下において高いN2O分解率を示すので、流動層燃焼炉及びその付属設備で使用されると、極めて高い分解率を達成できる。
【0043】
(2) 本発明で触媒として用いられる活性ボーキサイトまたはボーキサイトは比較的安価な天然鉱物であり、これを触媒として多量に供給することにより、100%近いN2O除去率を低コストで達成可能である。
【0044】
(3) 上記の天然鉱物から成る触媒は、優れた炭化水素分解能力も有するので、燃焼炉下段部で生成されたガス・タール等の高級炭化水素がこの触媒により速やかに吸着・分解され、よって、フリーボード後段における有害な有機塩素化合物の生成を抑制可能である。
【0045】
(4) 流動層内に上記の触媒粒により顕著な粒子下降流がもたらされるので、発生した高級炭化水素が燃焼炉底部に効果的に引き下ろされ、これによってもフリーボード後段における有機塩素化合物の生成が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の天然鉱物触媒によるN2 O排出抑制方法の好適実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の好適実施の形態において用いられる触媒の反応温度とN2 O分解率(%)の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 流動層燃焼炉
2 下部空気分散板
3 下部流動層
4,8 ベッド材
5 熱交換器
6 上部空気分散板
7 上部流動層
9 フリーボード
10 サイクロン
11 セラミックフィルタ
12 脱硫装置
13 アルカリ吸着剤
14 空気予熱器
15 燃料供給ライン
16 排ガス排出ライン
17 ベッド材供給ライン
18 燃焼炉下段部
19 燃焼炉上段部
20 燃焼用空気
21 燃料
30 流動層燃焼プラント
Claims (3)
- 流動層燃焼炉で燃料を流動層ベッド材と共に流動化させながら行う燃焼を改善する方法において、流動層ベッド材にボーキサイトもしくは活性ボーキサイトを混合して、流動層燃焼炉内に発生するN2O及び炭化水素を分解することを特徴とする天然鉱物により流動層燃焼炉での燃焼及び有害ガスの排出を改善する方法。
- 上記炭化水素が、ガス・タール等の高級炭化水素である請求項1記載の天然鉱物により流動層燃焼炉での燃焼及び有害ガスの排出を改善する方法。
- 流動層燃焼炉で燃料を流動層ベッド材と共に流動化させながら行う燃焼を改善する装置において、流動層燃焼炉内に発生するN 2 O及び炭化水素を分解すべく、流動層ベッド材にボーキサイトもしくは活性ボーキサイトを混合する装置を設けたことを特徴とする天然鉱物により流動層燃焼炉での燃焼及び有害ガスの排出を改善する装置。
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-
1997
- 1997-04-22 JP JP10454597A patent/JP4158208B2/ja not_active Expired - Fee Related
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