JP4158143B2 - 高輝性インキおよび高輝性積層シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属調の意匠性の印刷物を与え得る高輝性インキ、およびそのインキを用いて金属調意匠を有する積層シート、特に自動車関連部材、建材部材、家電品等の外装塗装不要のシートとして有用な積層シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、成型部材は一般に射出成型などで成型された後、意匠性、表面保護の観点からスプレー塗装が施され、焼き付けにより架橋させる方法で塗装がなされている。しかしながら、揮発性有機溶剤の排出に対する作業環境保護、外部環境保護の観点から粉体塗料の使用等の無溶剤化が図られている。同時に、着色シートを成型性樹脂と積層させて一体として成型する方法が紹介されている。
【0003】
特に金属調の意匠性を有するシートとして、アルミ蒸着したポリエチレンテレフタレートフィルムやポリプロピレンフィルム等をドライラミネートした積層シートが知られている。また、特開平5−111991号公報には鱗片状でかつ表面が平滑なアルミニウム粒子を含有するアクリレート系エマルジョン層を有する積層シートが記載されている。
しかしながら、これらのシートは、平面として金属調意匠を有しているものの、蒸着面に展延性が十分にないことや、インキ層を表面層としていることのため、真空成型またはインモールド成型等の成型加工を施した場合に、成型後に光沢のムラを生ずる等、金属調層の意匠性が不十分であった。
【0004】
また、特開2002−46230号公報には、金属薄膜細片を結着樹脂ワニス中に分散したインキ皮膜を有する積層シートを用いることが提案されている。この方法によれば、展延性や光沢ムラを改善することができるが、金属調の意匠を有するシートを与える高輝性インキに用いる金属薄膜細片は鱗片状で、このような形状の顔料を用いてインキ皮膜を形成し、さらに積層シートとした場合、結着樹脂と顔料の密着力が低いため界面から剥離し、インキ層が凝集剥離しやすいと言う欠点がある。
このため、結着樹脂と顔料表面との密着性を向上させる目的で顔料表面をシランカップリング処理したり、カルボン酸などの極性官能基を含有する密着性向上剤をインキ中に配合したりすることが行われてきたが、なかでも、インキ中の結着樹脂にカルボキシル基などの極性官能基を含有させることが有効である。
しかしながら、このような極性官能基を含有する結着樹脂と金属薄膜顔料、有機溶剤からなるインキは、顔料表面と極性官能基との相互作用により、インキが経時的に増粘したり、顔料と結着樹脂が凝集して分離したり、ゲル状となることがある。インキに若干の水分が混入した場合、特にその傾向が著しい。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、金属調の意匠性を与え、剥離強度、保存安定性に優れた高輝性インキ、および、そのインキを用いた金属調の意匠性を持ち、かつ成型時に必要な展延性を有する積層シートを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、検討の結果、金属薄膜細片及び結着樹脂、有機溶剤を含むインキにおいて、特定の結着樹脂および金属薄膜細片、および無水酸基を有する化合物を含有することを特徴とする高輝性インキとすること、および積層された成型用合成樹脂フィルムの積層界面に、この金属薄膜細片及び結着樹脂を含むインキ皮膜を有する装飾層を備えることにより上記課題を解決し本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は第一に、金属薄膜細片、結着樹脂及び無水酸基を有する化合物を含有する高輝性インキであって、該結着樹脂がカルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、硝酸基、アミノ基および/又はそれらの金属塩のいずれか一種以上を含有し、不揮発分に対する金属薄膜細片の含有量が3〜60質量%であり、該金属薄膜細片に対し、無水酸基を有する化合物を、無水酸残基として0.01〜30質量%含有することを特徴とする高輝性インキを提供する。更に、本発明は第二に、複数積層された少なくとも2枚の成型用合成樹脂フィルムの何れかの積層界面に金属調の光沢を有する装飾層を有し、該装飾層が、前記した高輝性インキの皮膜からなり、該皮膜厚が0.05〜2.0μmであることを特徴とする積層シートを提供する。
【0008】
上記手段により、金属調の意匠性を与え、剥離強度、保存安定性に優れた高輝性インキ、および成型時に必要な展延性を有する積層シートを提供することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の高輝性インキは、金属調の意匠性の印刷物を与え、剥離強度、保存安定性に優れた高輝性インキであり、かつ本発明の積層シートは、複数積層された少なくとも2枚の成型用合成樹脂フィルムの何れかの積層界面に本発明の高輝性インキによる金属調の光沢を有する装飾層を有する高輝性積層シートである。尚、本発明においては、この装飾層を形成する高輝性塗工液を「インキ」と称するが、実施業界の慣用に従ってこれを「塗料」等と言い換えても、何ら差し支えない。
【0010】
(1.高輝性インキ)
本発明の高輝性インキは、金属薄膜細片を結着樹脂ワニス中に分散し、さらに無水酸基を有する化合物を含む、金属調で高光沢を有する高輝性インキである。金属薄膜細片のインキ中の不揮発分に対する含有量は3〜60質量%の範囲である。通常メタリックインキには金属粉が使用されるが、金属薄膜細片を使用した場合は、該インキを印刷又は塗布した際に金属薄膜細片が被塗物表面に対して平行方向に配向する結果、従来の金属粉では得られない高輝度の鏡面状金属光沢が得られる。
【0011】
(金属薄膜細片)
装飾層に使用するインキに用いられる金属薄膜細片の金属としては、アルミニウム、金、銀、銅、真鍮、チタン、クロム、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等を使用することができる。金属を薄膜にする方法としては、アルミニウムのように融点の低い金属の場合は蒸着、アルミニウム、金、銀、銅など展性を有する場合は箔、融点が高く展性も持たない金属の場合は、スパッタリング等を挙げることができる。これらの中でも、蒸着金属薄膜から得た金属薄膜細片が好ましく用いられる。金属薄膜の厚さは、0.01〜0.1μmが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.08μmである。インキ中に分散させる金属薄膜細片の面方向の大きさは、5〜25μmが好ましく、さらに好ましくは10〜15μmである。大きさが5μm未満の場合は、塗膜の輝度が不十分となり、25μmを超えると金属薄膜細片が配向しにくくなるので輝度が低下する。またインキを、グラビア方式あるいはスクリーン印刷方式で印刷又は塗布する場合は、版の目詰まりの原因となる。
【0012】
以下に金属薄膜細片の作成方法を、特に好ましい蒸着法を例として説明する。金属を蒸着する支持体フィルムには、ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムなどを使用することができる。まず支持体フィルム上に塗布によって剥離層を設けた後、剥離層上に所定の厚さになるよう金属を蒸着する。蒸着膜面には、酸化を防ぐためトップコート層を塗布する。剥離層およびトップコート層形成用のコーティング剤は同一のものを使用することができる。
【0013】
剥離層、あるいはトップコート層に使用する樹脂は、特に限定されない。具体的にはたとえば、セルロース誘導体、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、EVA樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化EVA樹脂、石油系樹脂等を挙げることができる。また溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を使用することができる。
【0014】
上記金属蒸着フィルムを、剥離層およびトップコート層を溶解する溶剤中に浸積して撹拌し、金属蒸着膜を支持体フィルムから剥離した後、さらに撹拌して金属薄膜細片の大きさを約5〜25μmとし、濾別、乾燥する。溶剤は、剥離層あるいはトップコート層に使用する樹脂を溶解するものであること以外に、特に限定はない。金属薄膜をスパッタリングで作成した場合も、上記と同様の方法で金属薄膜細片とすることができる。金属箔を用いる場合は、溶剤中でそのまま攪拌機で所定の大きさに粉砕すればよい。
【0015】
金属薄膜細片は、インキ中における分散性を高めるために表面処理するのが好ましい。表面処理剤としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の有機脂肪酸、メチルシリルイソシアネート、ニトロセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体が挙げられ、公知慣用の方法で金属薄膜細片表面に吸着させる。
【0016】
(結着樹脂)
結着樹脂は、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に通常使われているものをベースに、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、硝酸基、アミノ基及び/又はそれらの金属塩の何れか一種以上を含有させたものを用いる。具体的にはたとえば、塗料用アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢ビ樹脂、エチレン−酢ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂などの重合系樹脂に、(メタ)アクリル酸やフタル酸、フマル酸および/またはその塩、(メタ)アクリロイロキシエチルスルホニルナトリウム塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリル酸エステル等を共重合させたもの、あるいは塗料用ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂などの縮合系樹脂の場合に、ポリオール成分、ポリカルボン酸成分の一部に、2,2−ジメチロ−ルプロピオン酸、5−スルホン酸フタル酸、ジエタノールアミノエチルジイソプロピル燐酸エステル等を、用いたもの、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等を塩化酢酸、ブロム酢酸、濃硫酸、濃硝酸などで変性したもの等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。更に、成型工程に於いて、装飾層が十分に展延するために、成型用合成樹脂フィルムに含有される樹脂の軟化点より低い軟化点を有する樹脂が好ましい。その差が20℃以上有ることがさらに好ましい。これらの結着樹脂を用いることによって、積層シート中の装飾層が、容易に凝集剥離することを防止することが出来る。
また、この結着樹脂の他に、本発明の趣旨を損なわない範囲で、一般にインキまたは塗料に用いられるアクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢ビ樹脂、エチレン−酢ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂を併用しても差し支えない。
【0017】
(無水酸基を有する化合物)
本発明の高輝性インキに含まれる、無水酸基を有する化合物としては、無水酢酸などの一塩基酸の無水化二量体のほか、二塩基酸の無水化物、具体的にはたとえば、無水コハク酸および/またはその置換化合物、無水フタル酸および/またはその置換化合物、ピロメリット酸二無水物および/またはその置換化合物、脂環族二塩基酸の無水化物および/またはその置換化合物が挙げられる。なかでも、二塩基酸の無水化物が好ましい。
上記の官能基含有結着剤を含有する高輝性インキは、印刷、塗工する際に、インキ液が空気中の水分を吸湿した場合、それらを回収、保存すると、インキの増粘やゲル化に至ることがあるが、これらの無水酸基を有する化合物を加えることによって、それを防止することができる。これらの無水酸基を有する化合物は、高輝性インキ中の金属薄膜細片に対し、無水酸残基として0.01〜30質量%含有することが好ましい。
0.01%未満ではインキ安定化の効果がなく、30%を越えると、かえって安定性が悪化することがある。
ここで、無水酸残基とは、−C(=O)OC(=O)−基(分子量72)をさす。
【0018】
(その他の添加剤)
装飾層に使用する高輝性インキには、必要に応じて、意匠性、展延性を阻害しない限り、インキ中に消泡、沈降防止、顔料分散、流動性改質、ブロッキング防止、帯電防止、酸化防止、光安定性、紫外線吸収、内部架橋等を目的として、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使用されている各種添加剤を使用することができる。このような添加剤としては、着色用顔料、染料、ワックス、可塑剤、レベリング剤、界面活性剤、分散剤、消泡剤、キレート化剤、ポリイソシアネート等を挙げることができる。
【0019】
(溶剤)
装飾層に使用する高輝性インキに用いられる溶剤は、従来のグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、あるいは塗料等に使われている公知慣用の溶剤を使用することができる。具体的にはたとえば、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0020】
(インキの調製方法)
一般にインキの配合原料を安定して分散させるには、ロールミル、ボールミル、ビーズミル、あるいはサンドミル等を使用して練肉することにより、顔料その他添加剤をサブミクロンまで微粒子化する。しかし、本発明の高輝性インキおよび高輝性積層シートの装飾層に使用する高輝性インキに、金属光沢を発現させるために配合する金属薄膜細片は5〜25μmの大きさが好ましい。上記練肉を行った場合は金属薄膜細片が微粒子化してしまい、金属光沢が極端に低下する。したがって、本発明においては練肉は行わず、単に上記配合原料を混合してインキとする。そのためには、分散性を向上させる目的で、前記したように金属薄膜細片を表面処理しておくことが好ましい。
【0021】
(2.積層シート)
本発明の高輝性積層シートは、複数積層された少なくとも2枚の成型用合成樹脂フィルムの何れかの積層界面に本発明の高輝性インキによる金属調の光沢を有する装飾層を有する高輝性積層シートである。
【0022】
(成型用合成樹脂フィルム)
本発明に用いる成型用合成樹脂フィルムとしては、透明、半透明又は着色剤含有の単層又は多層フィルムであって、延伸性を有するフィルムが用いられる。尚、透明又は半透明とは、透明又は半透明の着色クリアの場合も含むものとする。装飾層の少なくとも1方の側の成型用合成樹脂フィルムが透明又は半透明であることが好ましい。
真空成型等の熱による成型工程が必要な場合には、熱可塑性樹脂を主体とするフィルムが好ましく、例を挙げれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アクリル樹脂、シリコン−アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリウレタン、ナイロン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオネート、ポリビニリデンフルオネート等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。これらの中でも、軟化点が30〜300℃の範囲であるフィルムが好ましく用いられる。
【0023】
(装飾層)
本発明の高輝性積層シートに用いる装飾層は、複数積層された少なくとも2枚の成型用合成樹脂フィルムの何れかの積層界面に位置し、本発明の高輝性インキからなる皮膜を含有する、皮膜厚が0.05〜2.0μm、好ましくは0.5〜2.0μmである金属調の光沢を有する層である。皮膜厚を1μm未満に設定する場合は、皮膜中の金属薄膜細片の含有量を20〜60質量%にすることが好ましい。
【0024】
(印刷または塗工方法)
本発明の高輝性積層シートの装飾層、該装飾層にさらに積層してもよいインキ、および接着剤の印刷又は塗工方式は、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷方式、グラビアコーター、グラビアリバースコーター、フレキソコーター、ブランケットコーター、ロールコーター、ナイフコーター、エアナイフコーター、キスタッチコーター、キスタッチリバースコーター及びコンマコーター、コンマリバースコーター、マイクログラビアコーター等の塗工方式を用いることが出来る。
【0025】
(積層)
印刷又は塗工された装飾層にさらに前記した各種の成型用合成樹脂フィルムから選ばれた成型用合成樹脂フィルムを積層する。この積層には、装飾層と成型用合成樹脂フィルムの界面に接着剤を介しても介さなくても良い。接着剤としては、ドライラミネート接着剤、ウェットラミネート接着剤、ヒートシール接着剤、ホットメルト接着剤等が好ましく用いられる。装飾層に接着性樹脂を用いた場合、特別の接着剤層を用いない熱ラミネートでも良い。
【0026】
金属薄膜細片および結着樹脂を含むインキ皮膜を有し金属調の光沢を有する装飾層には、さらに着色剤含有インキの皮膜を積層することも出来る。また、装飾層と着色剤含有インキの皮膜の間に透明ニス層を設けても良い。また、装飾層には、透明ニス層を介して、装飾層と同様のインキ皮膜を積層されていても良い。着色剤含有インキに用いられるワニス用結着樹脂としては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル樹脂、ビニリデン樹脂、エチレン−酢ビ樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エチレン−アクリル樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂等の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。またインキ皮膜を有する装飾層が十分に展延するために、成型用合成樹脂フィルムに含有される樹脂の軟化点より低い軟化点を有する樹脂が好ましい。
【0027】
装飾層にさらに積層してもよい着色剤含有インキ皮膜の乾燥膜厚は0.05〜100μm程度が好ましい。着色剤含有インキ皮膜を有する場合、成型する際の、表面層からは、インキ皮膜を透し、着色された金属調の意匠性を得ることが出来る。この場合の金属薄膜細片および結着樹脂を含むインキ皮膜を有する装飾層の膜厚は、透過性の観点から1.0μm以下程度であることが好ましい。
【0028】
また、装飾層にさらに積層される着色剤含有インキ皮膜を、金属調の光沢を有する装飾層と同色系のインキにした場合には、着色剤含有インキ皮膜により隠蔽性を付与することができる。
【0029】
(接着剤)
装飾層は、成型用合成樹脂フィルムを介して複数層有っても良い。この場合、装飾層と成型用合成樹脂フィルムの界面に接着剤を介しても介さなくても良い。接着剤としては、ドライラミネート接着剤、ウェットラミネート接着剤、ヒートシール接着剤、ホットメルト接着剤等が好ましく用いられる。各層に接着性樹脂を用いた場合、特別の接着剤層を用いない熱ラミネートでも良い。
【0030】
(粘着剤)
本発明の高輝性積層シートでは、一方の成型用合成樹脂フィルムに、更に粘着剤層を設けることが出来る。粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、ポリアルキルシリコン系、ウレタン系、ポリエステル系等が好ましく用いられる。
【0031】
(保護層)
本発明の高輝性積層シートでは、成型の際の表面層側に、意匠性、耐摩擦性、耐擦傷性、耐候性、耐汚染性、耐水性、耐薬品性及び耐熱性等の性能を付与するために、透明、半透明若しくは着色クリアのトップコート層を1層以上設けることができる。トップコート剤としては積層シートの展延性を阻害しない限り、ラッカータイプ、イソシアネート又はエポキシ等による架橋タイプ、UV架橋タイプ又はEB架橋タイプが好ましく用いられる。
【0032】
(着色クリア層)
更に、意匠性を付与するために、及び/又は密着性向上のために、透明又は半透明の成型用合成樹脂フィルムと装飾層の間に、透明又は半透明の着色クリア層を設けることができる。
【0033】
(用途)
本発明の高輝性積層シートは各種成型法の表面層として用いることが出来る。例を挙げると、透明又は半透明の成型用合成樹脂フィルムを表面側に配置し、熱成型により三次元形状を有する予備成型体とした後、射出成型金型内にインサートし、射出樹脂と一体化するインサート射出成型法で成型することが出来る。更には、射出成型金型にシート状で挿入し、金型内で射出樹脂と一体化するインモールド射出成型法で成型することが出来る。本発明の高輝性積層シートの優れた展延性により、展延度合いの大きい箇所も意匠性、即ち高い光沢を保つことが出来る。
【0034】
(展延性)
尚、展延性を、表面光沢値の変化率を用いて、以下の様に定義する。積層シートを構成する材料の軟化点よりも高い温度で成型加工を行った後、積層シートの厚さを測定し、成型加工前と同じ厚さを有する部分(非展延部)及び、成型加工前の1/2の厚さを有する部分(200%展延部)についての表面光沢を、光沢計:micro−TRI−gloss(BYK Gardner製)を用い、(A)側から、60゜/60゜の条件で測定する。表面光沢値の変化率=(非展延部の光沢値−200%展延部の光沢値)÷(非展延部の光沢値)×100(%)と定義する。
【0035】
本発明の高輝性積層シートの展延性は、200%展延時に於ける、透明又は半透明の成型用合成樹脂フィルム側の表面光沢値の変化率が目安となるが、20%以下であることが好ましい。特に10%以下が好ましい。
【0036】
【実施例】
以下に、実施例をもって、本発明を具体的に説明するが、これらに何ら制限されるものではない。実施例中の、部および%は、質量部、質量%を表す。
【0037】
(インキ調製例B−1)
(1)アルミニウム薄膜細片
ニトロセルロース(HIG7)を、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤に溶解して6%溶液とした。該溶液を、スクリーン線数175線/インチ、セル深度25μmのグラビア版でポリエステルフィルム上に塗布して剥離層を形成した。十分乾燥した後、剥離層上に厚さが0.04μmとなるようにアルミニウムを蒸着し、蒸着膜面に、剥離層に使用したものと同じニトロセルロース溶液を、剥離層の場合と同じ条件で塗布し、トップコート層を形成した。
【0038】
上記蒸着フィルムを、酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4の混合溶剤中に浸積してポリエステルフィルムからアルミニウム蒸着膜を剥離したのち、大きさが約150μmとなるよう攪拌機でアルミニウム蒸着膜を粉砕し、アルミニウム薄膜細片を調製した。
【0039】
(2)アルミニウム薄膜細片スラリー
アルミニウム薄膜細片 10部
酢酸エチル 35部
メチルエチルケトン 30部
イソプロピルアルコール 30部
上記を混合し、撹拌しながら、下記組成のニトロセルロース溶液5部を加えた。
【0040】
ニトロセルロース(HIG1/4) 25%
酢酸エチル:イソプロピルアルコール=6:4混合溶剤 75%
上記混合物を、温度を35℃以下に保ちながら、ターボミキサーを使用して、アルミニウム薄膜細片の大きさが5〜25μmになるまで攪拌し、アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%)を調製した。
【0041】
(3)インキ
(インキ調製例B−1)
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 カルボン酸含有塩ビ−酢ビ樹脂 3部
(UCC社製「ビニライト VMCH」)
ウレタン樹脂
(荒川化学製「ポリウレタン2593」不揮発分32%)8部
酢酸エチル 23部
メチルエチルケトン 26部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%であるインキB−1を調製した。
【0042】
(インキ調製例B−1A)
インキ調製例B−1 100部に、大日本インキ化学工業社製 エピクロンB−4400を1部(無水酸部分含有量55%、インキ中のアルミニウム薄膜細片に対し18.3%)配合し、無水酸基含有化合物を含むインキB−1Aを調製した。
【0043】
(インキ調製例B−2)
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 カルボン酸含有ウレタン樹脂(大日本インキ化学工業社製
「タイフォースNT−810−45」不揮発分45%)12部
酢酸エチル 28部
メチルエチルケトン 20部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%であるインキB−2を調製した。
【0044】
(インキ調製例B−2A)
インキ調製例B−2 100部に、トリメリット酸を0.5部(無水酸部分含有量37.5%、アルミニウム薄膜細片に対し6.3%)配合し、無水酸基含有化合物を含むインキB−2Aを調製した。
【0045】
(インキ調製例B−2B)
インキ調製例B−2 100部に、ドデセニル無水コハク酸を0.04部(無水酸部分含有量28%、アルミニウム薄膜細片に対し0.37%)配合し、無水酸基含有化合物を含むインキB−2Bを調製した。
【0046】
(インキ調製例B−3)
アルミニウム薄膜細片スラリー(不揮発分10%) 30部
結着樹脂 水酸基含有塩ビ−酢ビ樹脂 3部
(UCC社製「ビニライト VAGH」)
ウレタン樹脂
(荒川化学製「ポリウレタン2593」不揮発分32%)8部
酢酸エチル 28部
メチルエチルケトン 21部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウム薄膜細片濃度35質量%であるインキB−3を調製した。
【0047】
(インキ調製例B−4)
アルミペースト(不揮発分13%) 25部
(ハイプリントTD−200T:東洋アルミニウム社製)
ウレタン樹脂(荒川化学製「ポリウレタン2593」) 20部
酢酸エチル 27部
メチルエチルケトン 18部
イソプロパノール 10部
上記を混合し、不揮発分中のアルミニウムペースト濃度35質量%であるインキB−4を調製した。
(インキの保存安定性)
上記のインキ6種を、そのまま、およびそれぞれグラビア塗工した残肉を、密閉して40℃の恒温槽に一週間保管し、液の状態を観察した。結果を表1に示す。
【0048】
(接着剤調製例D−1)
主剤として、芳香族ポリエーテルウレタン樹脂(ディックドライAS−106A:大日本インキ化学工業社製)100部及び硬化剤として、エポキシ(LR−100:大日本インキ化学工業社製)10部からなる2液型接着剤(以下、接着剤D−1)を得た。
【0049】
(透明ニスの調製例)
ウレタン樹脂(ポリウレタン2593:荒川化学社製)50部、酢酸エチル30部、メチルエチルケトン20部、酢酸エチル10部を配合し透明ニスを得た。
【0050】
成型用合成樹脂フィルムとして、透明で表面光沢値が150(60°/60°)、厚さ100μmのゴム変性PMMAフィルム(以下、フィルムA)、および、グレー、不透明で厚さ300μmのABSフィルム(以下、フィルムC)を用いた。
【0051】
(アルミ蒸着フィルムの作成例)
ゴム変性PMMAフィルム(フィルムA)にアクリル系蒸着アンカー剤(METNo.1850:大日本インキ化学工業社製)をグラビアコーターにて、乾燥膜厚1.0μmに塗工し、塗工面にアルミニウムを0.06μm蒸着した。
【0052】
(実施例1)
層構成を、フィルムA/インキB−1A/接着剤D−1/フィルムCとし、インキB−1Aはグラビアコーターにて、乾燥膜厚2.0μmに1回塗工、接着剤D−1はグラビアコーターにて、塗布量5.0g/m2に塗工した。得られた積層シートを40℃で3日間エージングし、その後、真空成型法にて成型加工した。成型加工は、底面が1辺5cm、開口面が1辺7cmの正方形であり、側面の稜が2cmの台形状の試験用金型を用いることにより、底面部分が展延せず、側面部分が200%展延するように加工した。
【0053】
尚、成型加工は、シート温度155℃、金型温度60〜80℃の条件にて行った。
【0054】
(実施例2)
層構成を、フィルムA/インキB−2A/接着剤D−1/フィルムCとし、インキB−2Aはグラビアコーターにて、乾燥膜厚2.0μmに1回塗工、接着剤D−1はグラビアコーターにて、塗布量5.0g/m2に塗工した。得られた積層シートを40℃で3日間エージングし、その後、真空成型法にて実施例1と同様の成型加工を施した。
【0055】
(実施例3)
層構成を、フィルムA/インキB−1A/ニス/インキB−1A/接着剤D−1/フィルムCとし、インキB−1Aは何れもグラビア印刷方式にて、乾燥膜厚2.0μmに1回塗工し、ニスはグラビアコーターにて、乾燥膜厚4.0μmに塗工し、接着剤D−1はグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/m2に塗工した。実施例1と同様成型加工を施した。
【0056】
(実施例4)
層構成を、フィルムA/インキB−2B/接着剤D−1/フィルムA/インキB−2A/接着剤D−1/フィルムCとし、インキB−2Bは何れもグラビアコーターにて、乾燥膜厚2.0μmに塗工、接着剤D−1はグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/m2に塗工した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0057】
(比較例1)
層構成のうち、高輝性インキをB−1AからB−1に変えたほかは、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0058】
(比較例2)
層構成のうち、高輝性インキをB−2AからB−2に変えたほかは、実施例2と同様にして積層フィルムを作成した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0059】
(比較例3)
層構成のうち、高輝性インキをB−1AからB−3に変えたほかは、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0060】
(比較例4)
層構成のうち、高輝性インキをB−1AからB−4に変えたほかは、実施例1と同様にして積層フィルムを作成した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0061】
(比較例5)
層構成を、アルミ蒸着フィルム/接着剤D−1/フィルムCとし、接着剤D−1はグラビアコーターにて、乾燥塗布量5.0g/m2に塗工した。実施例1と同様の成型加工を施した。
【0062】
成型加工後、加工前の積層シートの厚さと同じ厚さを有する部分(非展延部)及び、加工前の厚さの1/2の厚さを有する部分(200%展延部)についての表面光沢を、光沢計:micro−TRI−gloss(BYK Gardner製)を用い、60゜/60゜の条件で測定した。結果を表2に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
*)リゴー社製ザーンカップNo.3による落下秒数(室温23度で測定)
【0065】
【表2】
【0066】
表2中の剥離強度*)は、フィルムAとフィルムCをT字剥離した際の剥離強度(N/インチ)を示す。(測定不可*)は、アルミ蒸着層が塗膜切れのため測定不可を示す。
【0067】
【発明の効果】
本発明によれば、金属調の意匠性を与え、剥離強度が高く保存安定性良好な高輝性インキ、および成型時に必要な展延性を有し、光沢の変化の少ない優れた積層シートが得られる。
Claims (7)
- 金属薄膜細片、結着樹脂及び無水酸基を有する化合物を含有する高輝性インキであって、該結着樹脂が、カルボキシル基、燐酸基、スルホン酸基、硝酸基、アミノ基及び/又はそれらの金属塩のいずれか一種以上を有し、不揮発分に対する金属薄膜細片の含有量が3〜60質量%であり、該金属薄膜細片に対し、無水酸基を有する化合物を、無水酸残基として0.01〜30質量%含有することを特徴とする高輝性インキ。
- 複数積層された少なくとも2枚の成型用合成樹脂フィルムの何れかの積層界面に金属調の光沢を有する装飾層を有し、該装飾層が、請求項1に記載のインキからなるインキ皮膜からなり、該皮膜厚が0.05〜2.0μmであることを特徴とする積層シート。
- 装飾層の少なくとも1方の側の成型用合成樹脂フィルムが透明又は半透明のフィルムである請求項2に記載の積層シート。
- 成型用合成樹脂フィルムが熱可塑性樹脂を含有する請求項2又は3に記載の積層シート。
- 成型用合成樹脂フィルムが熱可塑性樹脂を含有し、装飾層の結着樹脂の軟化点が、該熱可塑性樹脂の軟化点よりも低いものである請求項2〜4の何れかに記載の積層シート。
- 成型用合成樹脂フィルムと装飾層の界面に、接着剤層を有する請求項2〜5の何れかに記載の積層シート。
- 装飾層の少なくとも1方の側の成型用合成樹脂フィルムが透明又は半透明のフィルムである積層シートであって、200%展延時に於ける透明又は半透明の成型用合成樹脂フィルム側の表面光沢値の変化率が20%以下である請求項2〜6の何れかに記載の積層シート。
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