JP4156406B2 - サーモプロテクタ及びサーモプロテクタの動作方法 - Google Patents

サーモプロテクタ及びサーモプロテクタの動作方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は所定融点の可溶合金片をエレメントとしたサーモプロテクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気機器を熱的に保護するためのサーモプロテクタとして合金型温度ヒューズが汎用されている。
合金型温度ヒューズは、リード導体間に所定融点の可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、このフラックス塗布可溶合金片をケースや絶縁フィルムや樹脂で封止した構成を備え、被保護機器に熱的に接触して取り付けられ、機器が故障により発熱すると、その発生熱で可溶合金片が溶融され、この溶融合金が既に溶融され活性化されているフラックスの作用を受けつつリード導体端部に濡れ拡がって球状化分断され、この分断の進行により電気的絶縁が完結されて機器への通電が遮断され、機器の常温への温度降下に伴い前記の球状化分断合金が冷却凝固される。
【0003】
従来の合金型温度ヒューズの定格は、高いものでもDC10A,50Vであり、かかる高定格の合金型温度ヒューズとしては図10に示す筒型温度ヒューズが用いられている。
図10において、11',11'は一対のリード導体、12'はリード導体11',11'間に接続した可溶合金片、13'は可溶合金片12'に塗布したフラックス、14'は絶縁筒、15',15'は接着剤による封止部であり、リード導体間に可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒を挿通し、該絶縁筒各端と各リード導体との間を接着剤で封止してある。
図11は合金型温度ヒューズの理想的な分断動作結果を示し、凝固した球状化分断合金120',120'間が回路電圧に耐え得る絶縁距離L'で隔てられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した通り、従来の合金型温度ヒューズの電圧定格は、高くてもDC50V程度であるが、近来、DC400Vといった高い定格電圧で使用できる合金型温度ヒューズが要請されている。
従来の筒型温度ヒューズをかかる高電圧のもとで使用すると、動作時のアークのために溶融合金や溶融フラックスの噴出や接着剤封止部の破壊や絶縁筒の破壊等が避けられない。すなわち、異常モードの発生が避けられない。更に、アークが一旦消滅しても、アークで炭化されたフラックス等が抵抗体となって付着し、この抵抗体の通電発熱により絶縁筒の破壊が惹起されたり、抵抗体の加熱気化等により抵抗体路が断たれて再アークが発生して絶縁筒やリード導体が溶断される異常モードが発生することもある。
前記の高電圧、例えばDC400Vのもとで筒型温度ヒューズを正常に動作させるために、図11における絶縁距離L'を長くすることが考えられるが、筒型温度ヒューズの長尺化が避けられない。
【0005】
本発明の目的は、高い電圧例えばDC400Vで使用しても、異常モードの発生を充分に抑制して安全動作を保証できるサーモプロテクタを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係るサーモプロテクタは、一対のリード導体間に可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒を挿通し、該絶縁筒各端と各リード導体との間を接着剤で封止した略同一の2箇の筒型温度ヒューズを直列に接続し、その接続された片側のリード導体で熱伝導継手を形成し、他方側のリード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装を施し、しかも両絶縁筒が長手方向に相互にずらされていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係るサーモプロテクタは、略同一のフラックス塗布可溶合金片の2箇の一端が熱伝導継手を介して接続され、各フラックス塗布可溶合金片の他端にリード導体が接続され、各フラックス塗布可溶合金片が略同一の絶縁筒で覆われ、各絶縁筒の両端が接着剤で封止され、リード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装が施され、しかも両絶縁筒が長手方向に相互にずらされているることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係るサーモプロテクタは、請求項1または2においてサーモプロテクタ本体の手前側のリード導体に接着剤封止部にわたって絶縁被覆が施されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係るサーモプロテクタは、請求項1〜3何れかにおいて防爆外装が弾性を有することを特徴とする。
【0010】
請求項5に係るサーモプロテクタは、請求項1〜4何れかにおいてサーモプロテクタ本体がキャップ内に収容され、弾性を有するシーリング材が前記キャップ内に充填されて防爆外装が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係るサーモプロテクタは、請求項5においてキャップ及び弾性を有するシーリング材がシリコーンゴム製であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係るサーモプロテクタは、請求項1〜6の何れかにおいて可溶合金がIn−Sn−Bi系合金、Bi−Sn−Sb系合金、In−Sn系合金、In−Bi系合金、Bi−Sn系合金、In系合金、Sn系合金の何れかであることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係るサーモプロテクタは、請求項7においてIn−Sn−Bi系合金の組成が(1)43%<Sn≦70%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(2)25%≦Sn≦40%,50%≦In≦55%,残Bi、(3)25%<Sn≦44%,55%<In≦74%,1%≦Bi<20%、(4)46%<Sn≦70%,18%≦In<48%,1%≦Bi≦12%、(5)5%≦Sn≦28%,15%≦In<37%,残Bi(但し、Bi57.5%,In25.2%,Sn17.3%とBi54%,In29.7%,Sn16.3%のそれぞれを基準にBi±2%,In及びSn±1%の範囲を除く)、(6)10%≦Sn≦18%,37%≦In≦43%,残Bi、(7)25%<Sn≦60%,20%≦In<50%,12%<Bi≦33%、(8)(1)〜(7)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(9)33%≦Sn≦43%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(10)47%≦Sn≦49%,51%≦In≦53%の100重量部にBiを3〜5重量部を添加、(11)40%≦Sn≦46%,7%≦Bi≦12%,残In、(12)0.3%≦Sn≦1.5%,51%≦In≦54%,残Bi、(13)2.5%≦Sn≦10%,25%≦Bi≦35%,残In、(14)(9)〜(13)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(15)10%≦Sn≦25%,48%≦In≦60%,残Biを100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Bi−Sn−Sb系合金の組成が(16)30%≦Sn≦70%,0.3%≦Sb≦20%,残Bi、(17)(16)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In−Sn系合金の組成が(18)52%≦In≦85%,残Sn、(19)(18)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In−Bi系合金の組成が(20)45%≦Bi≦55%,残In、(21)(20)の組成の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Bi−Sn系合金の組成が(22)50%<Bi≦56%,残Sn、(23)(22)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In系合金の組成が(24)Inの100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(25)90%≦In≦99.9%,0.1%≦Ag≦10%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(26)95%≦In≦99.9%,0.1%≦Sb≦5%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Sn系合金組成が(27)3.5%≦Ag≦7%,残Sn、(28)3.5%Ag,0.75%Cu,残Sn、(29)0.75%Cu,残Snの100重量部にNi0.01重量部添加の何れかであることを特徴とする。
【0014】
請求項9に係るサーモプロテクタの動作方法は、一対のリード導体間に可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒を挿通し、該絶縁筒各端と各リード導体との間を接着剤で封止した略同一の2箇の筒型温度ヒューズを直列に接続し、その接続された片側のリード導体のみで熱伝導継手を形成し、他方側のリード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装を施したサーモプロテクタを被保護機器に配設し、被保護機器の異常による発熱時、一方のフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始後の電流続流中に、そのフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始に伴う発生熱の前記熱伝導継手を介しての他方のフラックス塗布可溶合金片の加熱助成下、他方のフラックス塗布可溶合金片の溶断作動を開始させて前記の続流を停止させると共に被保護機器への通電を遮断する方法であり、前記一方のフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始時から電流続流停止時までの時間を1000ミリ秒以内とするように、前記熱伝導継手の熱伝達性能を設定することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1の(イ)は本発明において使用するサーモプロテクタの一例を示す断面図、図1の(ロ)は図1の(イ)におけるロ−ロ断面図である。
図1において、1,1は実質的に同一寸法・同一材料で実質的に同一の性能の筒型温度ヒューズであり、一対のリード導体11,110間に可溶合金片12を接続し、該可溶合金片12にフラックス13を塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒14を挿通し、該絶縁筒14の各端と各リード導体11,110との間を接着剤15,15で封止してある。
【0016】
これら両筒型温度ヒューズ1,1の一方のリード導体110,110を接続して両者を電気的に直列に導通すると共に一方の温度ヒューズの可溶合金片から他方の温度ヒューズの可溶合金片に至る熱伝導継手を形成してある。このリード導体110,110の接続には、捩じり接続、スリーブ圧縮接続、はんだ付け等も使用できるが、熱伝導性の高い溶接を使用することが好ましい。
2は弾性材から成る防爆外装であり、プロテクタ本体の手前のリード導体11,11の所定部分111,111を除いたサーモプロテクタ本体上に被覆してある。
【0017】
図2は本発明において使用するサーモプロテクタの別例を示し、フラックス13を塗布した略同一の可溶合金片12の2箇の一端を熱伝導継手1100を介して接続し、各フラックス塗布可溶合金片の他端にリード導体11,11を接続し、各フラックス塗布可溶合金片を略同一の絶縁筒14で覆い、各絶縁筒14の両端を接着剤15で封止し、リード導体11,11の所定長さ部分を除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装2を被覆してあり、図1に示したサーモプロテクタに対し、熱伝導継手1100に図1におけるリード導体110とは別の曲がり部材を使用している点を除けば、図1に示したサーモプロテクタと実質的に同一の構成である。
図2において、1は筒型温度ヒューズに相当する。
このサーモプロテクタでは、熱伝導継手1100にリード導体11に較べて熱伝導率の高い金属材のものや径の大なるものを使用することが好ましい。
【0018】
次に、本発明に係るサーモプロテクタの動作について説明する。
前記サーモプロテクタに用いた温度ヒューズの単一体では、異常モードの発生確率が大である。
図3の(イ)はその単一温度ヒューズの異常モード動作時の電流状態の一例を示している。図3の(イ)において、機器が許容温度に達し、時点t1で単一温度ヒューズが動作開始し、アークが発生している。このアーク熱によりフラックス等が炭化し、この炭化フラックスが絶縁筒内面に付着して抵抗体路が形成される。この抵抗体路に回路電圧の課電下、電流iが流れ、この抵抗体路がジュール発生熱で分解消滅されて時点t2で電流iが中断され、時点t3で再度アークが発生しアーク電流Iが流れている。電流iが中断されずに再アークが発生してアーク電流が流れる場合もある。このアーク電流のために異常モードが発生する。上記再アークの発生に至らなくても、炭化フラックス等の抵抗体路のジュール発熱量が大きいために異常モードが発生することもある。
異常モードは、温度ヒューズの動作後、異常モードが発生するまでの時間の長短或いは破壊エネルギーの大小により軽重傷度の差が生じ、軽傷のものから示せば、(1)異常モード1:リード導体と封止部との界面や封止部と絶縁筒との界面からの溶融合金やフラックスの噴出、(2)異常モード2:封止部の破壊、(3)異常モード3:絶縁筒の破壊、(4)異常モード4:再アークによる絶縁筒やリード導体の溶融等となる。
【0019】
本発明では、上記異常モード1〜4を防止できるか、軽度の異常モードに抑えることができる。
図3の(ロ)は本発明におけるサーモプロテクタの動作開始後の電流状態の一例を示している。
本発明では、2箇の温度ヒューズが実質的に同じでも、ミリ秒の時間スケールでは同時に動作開始する確率は0に近く、図3の(ロ)における時点t1で何れか一方の温度ヒューズが先に動作開始し、図3の(イ)に示した電流経過を辿ろうとするが、前記した炭化フラックス抵抗体路のジュール熱やアーク熱が熱伝導継手を経て他方の温度ヒューズの可溶合金片に伝わって当該可溶合金片の加熱が助長され、被保護機器からの加熱との重畳で当該可溶合金片が迅速に溶融分断され、先に動作開始した一方の温度ヒューズの可溶合金片の分断箇所に作用する電圧が後で動作開始した温度ヒューズの可溶合金片分断箇所での電圧分担分だけ軽減される結果、先に動作開始した温度ヒューズの炭化フラックス抵抗体路通電が図3の(ロ)における時点t4で停止され、サーモプロテクタ全体を通じての通電が遮断されるに至る。
この時点t4に至るまでの時間Δtが充分に短いと上記単一温度ヒューズで生じた異常モードの発生が防止される。而るに、一方の温度ヒューズの発生熱を熱伝導継手を介して他方の温度ヒューズの可溶合金片に伝えて他方の温度ヒューズを迅速に動作させているから、上記Δtを充分に短くでき、従って異常モードの発生をよく防止でき、安全動作を保証できる。
たとえ、前記一方の温度ヒューズに異常モードが生じても、再アーク突入に至らない軽度のものにとどめ得る。万一、一方の温度ヒューズが再アークに突入しても、その再アーク継続時間を充分に短くできるので、単一温度ヒューズでの前記した重度の異常モードを排除して充分に軽度の異常モードにとどめ得る。このように、一方の温度ヒューズに異常モードが発生しても、軽度の異常モード、すなわち破壊エネルギーの低い異常モードにとどめ得るから、防爆外装の優れた耐圧性により外観に現れるのを防止できる。従って、サーモプロテクタの安全動作を充分に保証できる。
【0020】
本発明によれば、被保護機器の異常による発熱時、一方のフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始後の電流続流中に、そのフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始に伴う発生熱の前記熱伝導継手を介しての他方のフラックス塗布可溶合金片の加熱助成下、他方のフラックス塗布可溶合金片の溶断作動を迅速に開始させて前記の続流を停止させると共に被保護機器への通電を遮断でき、一方の温度ヒューズが動作開始した後、他の温度ヒューズが作動開始するまでの時間差を一方の温度ヒューズのフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始に伴う発生熱を利用して短くすることにより異常モードの発生を防止するか、軽度の異常モードにとどめている。
【0021】
この時間差Δtが長くなればなる程、炭化フラック抵抗体路の通電発熱やアーク熱のために溶融フラックスや溶融合金が噴出する度合、封止部が破壊する度合、絶縁筒が破壊する度合、絶縁筒やリード導体が溶融する度合が増大する。
本発明に係るサーモプロテクタでは、この時間差Δtを短くして異常モードの発生を防止でき、たとえ発生してもエネルギーの低い軽度の異常モードにとどめ得、その異常モードを防爆外装により外部に対し遮断でき、サーモプロテクタの安全動作を保証できる。
【0022】
更に、耐圧セルを被着すれば防爆性能を高めて安全動作性を一層に向上でき、図4に示すように耐圧キャップ21にサーモプロテクタ本体を収納し、キャップ21とプロテクタ本体との間に弾性シーリング材22を充填することもできる。この場合、キャップと弾性シーリング材との熱膨張係数の差異が原因でサーモプロテクタ使用中でのヒートサイクル等で両部材の界面が剥離するのを防止するために、両部材を同材質とすることが好ましい。例えば、キャップにシリコーンゴムキャップを、弾性シーリング材にシリコーンゴムコンパゥンドを使用することが好ましい。
【0023】
本発明では、サーモプロテクタにおける熱伝導継手は熱伝達性能を高めるために可及的に短くすることが望まれ、他方、サーモプロテクタ本体の手前側の両リード導体の接着剤封止部間の間隔は封止部からの噴出合金の連合によるサーモプロテクタ本体手前でのリード線間電気短絡を防止するために可及的に広くすることが望まれる。而して、図5に示すように、両温度ヒューズ1,1をV型配置とし、サーモプロテクタ本体手前側を広い間隔Wとし、サーモプロテクタ本体遠方側を狭い間隔W'とすることができる。
図6に示すように、両温度ヒューズ1,1を平行配置とし、サーモプロテクタ本体の手前側の両リード導体の接着剤封止部の中間に耐熱性の絶縁体バリヤ3、例えばセラミック板片を介在させることもできる。
また、図7に示すように両温度ヒューズ1,1を長手方向にずらし(図7においてΔLはずれを示している)サーモプロテクタ本体手前側の両接着剤封止部151、151の位置を不一致にして封止部からの噴出合金の連合による前記電気短絡の危険性を半減させることも有効である。
更に、図8に示すように温度ヒューズの手前側の前記リード導体11,11に接着剤封止部151,151にわたって絶縁被覆4を施し、一方の温度ヒューズの手前側リード導体の接着剤封止部からの噴出溶融合金aを他方の温度ヒューズの絶縁筒外面に向わせ、他方の温度ヒューズの手前側リード導体の接着剤封止部からの噴出溶融合金bを他方の温度ヒューズの絶縁被覆リード導体に向わせてサーモプロテクタ本体手前での電気短絡を全面的に排除することがより一層好ましい。
【0024】
前記絶縁被覆はリード導体への絶縁チューブ例えばシリコーンゴムチューブの挿通、好ましくは熱収縮性絶縁チューブの挿通−加熱収縮により施すことができる。また絶縁被覆線をリード導体として使用することもできる。
【0025】
前記絶縁筒には、耐熱性や熱伝導性に優れた材質であれば適宜のものを使用でき、例えばセラミックス筒、ガラス筒等の無機質絶縁筒を使用できる。
【0026】
前記リード導体には、例えば銅線、錫メッキ銅線、鋼線、鉄線、銅メッキ鋼線、銅メッキ鉄線等を使用できる。
【0027】
前記熱伝導継手には、例えば銅線、アルミニウム線等を使用できる。
【0028】
前記フラックスには、天然ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)及びこれらの精製ロジンにジエチルアミンの塩酸塩、ジエチルアミンの臭化水素酸塩、有機酸例えばアジピン酸等を添加したものを使用できる。
前記接着剤には、例えばエポキシ樹脂を使用でき、特に常温硬化性エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0029】
前記可溶合金片には、サーモプロテクタの動作温度に適合する融点を有し、かつ定格電流に対する自己発熱を実質的に排除できる低抵抗値のものを使用するが、環境衛生上、生体系に有害な元素を含まない合金、例えば、In−Sn−Bi系合金、Bi−Sn−Sb系合金、In−Sn系合金、In−Bi系合金、Bi−Sn系合金、In系合金、Sn系合金を使用することが好ましい。
【0030】
In−Sn−Bi系合金の組成には、例えば(1)43%<Sn≦70%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(2)25%≦Sn≦40%,50%≦In≦55%,残Bi、(3)25%<Sn≦44%,55%<In≦74%,1%≦Bi<20%、(4)46%<Sn≦70%,18%≦In<48%,1%≦Bi≦12%、(5)5%≦Sn≦28%,15%≦In<37%,残Bi(但し、Bi57.5%,In25.2%,Sn17.3%とBi54%,In29.7%,Sn16.3%のそれぞれを基準にBi±2%,In及びSn±1%の範囲を除く)、(6)10%≦Sn≦18%,37%≦In≦43%,残Bi、(7)25%<Sn≦60%,20%≦In<50%,12%<Bi≦33%、(8)(1)〜(7)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(9)33%≦Sn≦43%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(10)47%≦Sn≦49%,51%≦In≦53%の100重量部にBiを3〜5重量部を添加、(11)40%≦Sn≦46%,7%≦Bi≦12%,残In、(12)0.3%≦Sn≦1.5%,51%≦In≦54%,残Bi、(13)2.5%≦Sn≦10%,25%≦Bi≦35%,残In、(14)(9)〜(13)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(15)10%≦Sn≦25%,48%≦In≦60%,残Biを100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加したもの等を使用できる。
【0031】
Bi−Sn−Sb系合金の組成には、例えば(16)30%≦Sn≦70%,0.3%≦Sb≦20%,残Bi、(17)(16)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加したもの等を使用できる。
【0032】
In−Sn系合金の組成には、例えば(18)52%≦In≦85%,残Sn、(19)(18)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加したもの等を使用できる。
【0033】
In−Bi系合金の組成には、例えば(20)45%≦Bi≦55%,残In、(21)(20)の組成の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加したもの等を使用できる。
【0034】
Bi−Sn系合金の組成が(22)50%<Bi≦56%,残Sn、(23)(22)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加
【0035】
In系合金の組成には、例えば(24)Inの100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(25)90%≦In≦99.9%,0.1%≦Ag≦10%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(26)95%≦In≦99.9%,0.1%≦Sb≦5%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加したもの等を使用できる。
【0036】
Sn系合金の組成には、例えば(27)3.5%≦Ag≦7%,残Sn、(28)3.5%Ag,0.75%Cu,残Sn、(29)0.75%Cu,残Snの100重量部にNi0.01重量部添加したもの等を使用できる。
【0037】
前記防爆外装、耐圧キャツプ、シーリング材には、サーモプロテクタの感温性を高めるために良熱導伝性粉粒、例えば金属粉粒、無機質粉粒等を添加することが好ましい。
【0038】
本発明では、高い電圧、例えばDC400Vのもとでも溶融合金や溶融フラックスの噴出等の異常モードの発生なく動作させることができ、このことは次の実施例と比較例との対比からも確認できる。
【0039】
【実施例】
〔実施例〕
図1に示した構成のサーモプロテクタであり、筒型温度ヒューズには、絶縁筒がセラミックス製,内径2.5mmφ,外径3.5mmφ,長さ11.5mmであり、リード導体が外径1.0mmφの錫メッキ軟銅線であり、可溶合金片が融点184℃,外径1.0mmφ,長さ5.0mmであり、フラックスがロジンであり、接着剤がエポキシ樹脂であるものを使用した。2箇の筒型温度ヒューズの配置は平行であり、その間隔を0〜3mmとした。サーモプロテクタ本体をシリコーンゴムキャップ内に収納し、シリコーンゴムコンパゥンドを充填して防爆外装を被覆した。
実施例品をエアオーブン中に収容し、DC500V/DC7.4Aを課電し、2℃/1分でエアオーブンを昇温した。
動作時の電流波形を測定したところ、図9の(イ)に示す通りであり、異常モードの発生無く正常に動作させ得た。
図9の(イ)において、t=0で一方の温度ヒューズが動作開始し、約100ミリ秒まではアーク熱により生成されたフラックス炭化物の抵抗体路に電流が流れたが、それ以後は電流が全く流れていない。これは、t=約100ミリ秒の時点で他方の温度ヒューズが動作開始して電流が完全に遮断された結果である。
【0040】
上記と同じ実施例品100箇を製作して上記と同様に動作させたところ、再アークが発生しても、再アーク開始後1000ミリ秒以内で再アークが遮断され、異常モードが外部に現れたものは皆無であった。
【0041】
〔比較例〕
実施例で使用した筒型温度ヒューズの一箇をエアオーブン中に収容し、実施例と同様にDC500V/DC7.4Aを課電し、2℃/1分でエアオーブンを昇温した。
動作時の電流波形を測定したところ、図9の(ロ)に示す通りであった。t=0で動作開始し、動作開始後約150ミリ秒後に動作時アークによって生成された炭化物に電流が流れ、これが約250ミリ秒付近で消滅し、その直後に再導通し、以後アーク電流が継続し、t=約4000ミリ秒でセラミックス筒及びリード導体溶断の異常モードが発生した。
【0042】
【発明の効果】
本発明によれば、高い電圧のもとで使用しても異常モードの発生なく安全に動作させ得る。もしくは、軽度の異常モードにとどめ得、防爆外装でその異常モードを外部から遮断できる。従って、高い電圧のもとで使用しても安全なカットオフ作動を保証できる。
【0043】
特に、防爆外装の弾性のために軽度異常モードのエネルギー(溶融合金や溶融フラックスの噴出圧力)を効果的に緩和できるから、安全性の一層の向上を図ることができる。
特に、キャップの耐圧性のために防爆性能を一層に高くでき、安全性の一層の向上を図ることができる。
特に、サーモプロテクタ使用中でのヒートサイクル等によるキャツプとシーリング材との界面剥離をよく防止でき、初期の感温性を安定に維持できる。
特に、噴出溶融合金による両温度ヒューズ手前でのリード導体間短絡の危険性を半減でき、更に、その短絡の危険性をより一層効果的に排除でき、サーモプロテクタ動作の一層の安全化を図ることができる。
特に、環境保全の要請を満たす合金型サーモプロテクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において使用されるサーモプロテクタの一例を示す図面である。
【図2】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図3】 図3の(イ)は単一筒型温度ヒューズの異常モードでの作動状態を示す図面、図3の(ロ)は本発明に係るサーモプロテクタの作動状態を示す図面である。
【図4】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図5】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図6】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図7】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図8】 本発明において使用されるサーモプロテクタの上記とは別例を示す図面である。
【図9】 本発明の実施例と比較例との動作モードを示す図面である。
【図10】 筒型温度ヒューズを示す図面である。
【図11】 筒型温度ヒューズの理想的な分断作動状態を示す図面である。
【符号の説明】
1 筒型温度ヒューズ
11 リード導体
110 リード導体
12 可溶合金片
13 フラックス
14 絶縁筒
15 接着剤封止部
1100 熱伝導継手
2 防爆外装
41 キャップ
42 充填材
4 絶縁被覆

Claims (9)

  1. 一対のリード導体間に可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒を挿通し、該絶縁筒各端と各リード導体との間を接着剤で封止した略同一の2箇の筒型温度ヒューズを直列に接続し、その接続された片側のリード導体で熱伝導継手を形成し、他方側のリード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装を施し、しかも両絶縁筒が長手方向に相互にずらされていることを特徴とするサーモプロテクタ。
  2. 略同一のフラックス塗布可溶合金片の2箇の一端が熱伝導継手を介して接続され、各フラックス塗布可溶合金片の他端にリード導体が接続され、各フラックス塗布可溶合金片が略同一の絶縁筒で覆われ、各絶縁筒の両端が接着剤で封止され、リード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装が施され、しかも両絶縁筒が長手方向に相互にずらされていることを特徴とするサーモプロテクタ。
  3. サーモプロテクタ本体の手前側のリード導体に接着剤封止部にわたって絶縁被覆が施されていることを特徴とする請求項1または2記載のサーモプロテクタ。
  4. 防爆外装が弾性を有することを特徴とする請求項1〜3何れか記載のサーモプロテクタ。
  5. サーモプロテクタ本体がキャップ内に収容され、弾性を有するシーリング材が前記キャップ内に充填されて防爆外装が形成されていることを特徴とする請求項1〜4何れか記載のサーモプロテクタ。
  6. キャップ及び弾性を有するシーリング材がシリコーンゴム製であることを特徴とする請求項5記載のサーモプロテクタ。
  7. 可溶合金がIn−Sn−Bi系合金、Bi−Sn−Sb系合金、In−Sn系合金、In−Bi系合金、Bi−Sn系合金、In系合金、Sn系合金の何れかであることを特徴とする請求項1〜6何れか記載のサーモプロテクタ。
  8. In−Sn−Bi系合金の組成が(1)43%<Sn≦70%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(2)25%≦Sn≦40%,50%≦In≦55%,残Bi、(3)25%<Sn≦44%,55%<In≦74%,1%≦Bi<20%、(4)46%<Sn≦70%,18%≦In<48%,1%≦Bi≦12%、(5)5%≦Sn≦28%,15%≦In<37%,残Bi(但し、Bi57.5%,In25.2%,Sn17.3%とBi54%,In29.7%,Sn16.3%のそれぞれを基準にBi±2%,In及びSn±1%の範囲を除く)、(6)10%≦Sn≦18%,37%≦In≦43%,残Bi、(7)25%<Sn≦60%,20%≦In<50%,12%<Bi≦33%、(8)(1)〜(7)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(9)33%≦Sn≦43%,0.5%≦In≦10%,残Bi、(10)47%≦Sn≦49%,51%≦In≦53%の100重量部にBiを3〜5重量部を添加、(11)40%≦Sn≦46%,7%≦Bi≦12%,残In、(12)0.3%≦Sn≦1.5%,51%≦In≦54%,残Bi、(13)2.5%≦Sn≦10%,25%≦Bi≦35%,残In、(14)(9)〜(13)の何れか100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(15)10%≦Sn≦25%,48%≦In≦60%,残Biを100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Bi−Sn−Sb系合金の組成が(16)30%≦Sn≦70%,0.3%≦Sb≦20%,残Bi、(17)(16)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In−Sn系合金の組成が(18)52%≦In≦85%,残Sn、(19)(18)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In−Bi系合金の組成が(20)45%≦Bi≦55%,残In、(21)(20)の組成の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Sb、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Bi−Sn系合金の組成が(22)50%<Bi≦56%,残Sn、(23)(22)の100重量部にAg、Au、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、In系合金の組成が(24)Inの100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(25)90%≦In≦99.9%,0.1%≦Ag≦10%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、(26)95%≦In≦99.9%,0.1%≦Sb≦5%の100重量部にAu、Bi、Cu、Ni、Pd、Pt、Ga、Ge、Pの1種または2種以上を合計0.01〜7重量部添加、Sn系合金組成が(27)3.5%≦Ag≦7%,残Sn、(28)3.5%Ag,0.75%Cu,残Sn、(29)0.75%Cu,残Snの100重量部にNi0.01重量部添加の何れかであることを特徴とする請求項7記載のサーモプロテクタ。
  9. 一対のリード導体間に可溶合金片を接続し、該可溶合金片にフラックスを塗布し、該フラックス塗布可溶合金片上に絶縁筒を挿通し、該絶縁筒各端と各リード導体との間を接着剤で封止した略同一の2箇の筒型温度ヒューズを直列に接続し、その接続された片側のリード導体のみで熱伝導継手を形成し、他方側のリード導体の所定長さを除いてサーモプロテクタ本体に防爆外装を施したサーモプロテクタを被保護機器に配設し、被保護機器の異常による発熱時、一方のフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始後の電流続流中に、そのフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始に伴う発生熱の前記熱伝導継手を介しての他方のフラックス塗布可溶合金片の加熱助成下、他方のフラックス塗布可溶合金片の溶断作動を開始させて前記の続流を停止させると共に被保護機器への通電を遮断する方法であり、前記一方のフラックス塗布可溶合金片の溶断動作開始時から電流続流停止時までの時間を1000ミリ秒以内とするように、前記熱伝導継手の熱伝達性能を設定することを特徴とするサーモプロテクタの動作方法。
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