JP4154889B2 - 四輪駆動車の駆動力配分制御装置 - Google Patents

四輪駆動車の駆動力配分制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、四輪駆動車の駆動力配分制御装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両の走行状態に応じてトルク配分用クラッチの締結力を調整する駆動力配分制御装置としては、特開昭61−157437号公報に記載されるように、駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の大きさに略比例してトルク配分用クラッチの締結力を増大させるようにした駆動力配分制御装置や、更には、特開昭63−141831号公報に記載されるように、駆動輪となる後輪と副駆動輪となる前輪の間の回転速度偏差の大きさに略比例してトルク配分用クラッチの締結力を増大させると共に加速度検出手段によって横加速度を検出し、横加速度の増大に応じてトルク配分用クラッチの締結力を減少させるようにした駆動力配分制御装置が既に提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭61−157437号公報の駆動力配分制御装置の場合、駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差のみに基いてトルク配分用クラッチの締結力を調整していたため、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が生じていない状況下では副駆動輪に駆動力が伝達されず、四輪駆動車として十分な牽引力を発揮できなくなる問題がある。一方、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が生じるような状況下では副駆動輪に駆動力を伝達することは可能であるが、この場合、駆動輪の側に必ずスリップが生じているので、前記と同様、四輪駆動車として十分な牽引力を発揮できなくなるといった不都合が生じる。
【0004】
特開昭63−141831号公報の駆動力配分制御装置は、専ら、後輪を駆動輪として前輪を副駆動輪とした四輪駆動車の運動性能を向上させるためのもので、慣性ドリフトが生じ難く大きな横加速度が検出され易い高μ路においてトルク配分用クラッチの締結力を減少させて駆動輪である後輪の駆動力を相対的に増大させることにより危険な慣性ドリフトが発生する前にパワードリフトによる走行を許容し、また、これとは逆に、慣性ドリフトが生じ易く大きな横加速度が検出され難い低μ路においてトルク配分用クラッチの締結力を増大させて副駆動輪となる前輪の駆動力を相対的に増大させることでアンダーステア気味の走行安定性を確保しようとするものであるが、専用の横加速度検出手段が必要となるため車両の製造コストが増大するといった弊害が生じる。
【0005】
そこで、本出願人らは、これらの不都合を解消するため、駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差に加え、更に、駆動輪に与えられる駆動トルクの大きさをも考慮してトルク配分用クラッチの締結力を調整することで、専用の横加速度検出手段を必要とせず、しかも、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が生じていない状況下でも副駆動輪に駆動力を伝達することが可能な四輪駆動車の駆動力配分制御装置に関する研究および開発を進め、既に、特願2001−372817として提案している。
【0006】
これにより、前述した従来技術の不都合の大半は解決されたが、特願2001−372817の駆動力配分制御装置は、駆動トルクの大きさが直ちにトルク配分用クラッチの締結力の調整に反映されるような構成であったため、圧雪路のような低μ路の走行には適するが、乾燥したアスファルト路のような高μ路を走行した場合にトルク配分用クラッチの締結力が頻繁に強くなってクラッチや歯車が発熱したり燃費が悪化するといった弊害が生じる可能性があった。
【0007】
【発明の目的】
本発明の目的は、前記従来技術の不都合を改善し、低μ路を走行する場合であっても高μ路を走行する場合であっても、路面の状況に応じて駆動トルクの大きさを適切に反映させて過不足なくトルク配分用クラッチの締結力を調整することのできる四輪駆動車の駆動力配分制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンによって直接的に駆動される駆動輪とトルク配分用クラッチを介してエンジンに接続された副駆動輪とを備えた四輪駆動車に配備され、車両の走行状態に応じてトルク配分用クラッチの締結力を調整する四輪駆動車の駆動力配分制御装置であり、前記目的を達成するため、特に、
駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の大きさを所定周期毎に検出し、回転速度偏差検出のサンプリング期間内に検出された回転速度偏差の平均値を算出する平均値算出手段と、
この平均値算出手段で求められた回転速度偏差の平均値に対応する大きさの補正係数を設定し、駆動輪に与えられる駆動トルクの大きさに略比例した値と前記補正係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を設定するトルク対応指令値算出手段と、
駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の現在値の増大に対応させて値を増加させるかたちで回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を設定する回転速度偏差対応指令値算出手段と、
トルク対応指令値算出手段で設定されたトルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応指令値算出手段で設定された回転速度偏差対応締結力調整指令値とを加算して最終的な締結力調整指令値を求め、この締結力調整指令値の大きさに対応させてトルク配分用クラッチの締結力を調整する締結力調整手段とを備えたことを特徴とする構成を有する。
【0009】
以上の構成により、平均値算出手段が駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の大きさを所定周期毎に検出し、回転速度偏差検出のサンプリング期間内に検出された回転速度偏差の平均値を算出する。そして、トルク対応指令値算出手段は、平均値算出手段で求められた回転速度偏差の平均値に対応する大きさの補正係数を設定し、駆動輪に与えられる駆動トルクの大きさに略比例した値と前記補正係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を設定する。
従って、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が連続的に発生し易い低μ路の走行に際しては、比較的短時間の内に回転速度偏差の平均値が増大し、これに応じて補正係数の値も増大するので、駆動輪に与えられる駆動トルクの大きさに応じて素早くトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値を増大させて、副駆動輪に十分な駆動力を伝達することができる。
また、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が連続的に発生し難い高μ路の走行に際しては、回転速度偏差の平均値が回転速度偏差の瞬間値の影響を受けて直ちに増大するといったことがないので、駆動トルクが大きい場合であっても瞬間的なスリップ等によってトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値が頻繁に変動して副駆動輪に過剰な駆動力が伝達されるといった問題が解消され、クラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題を未然に防止することができる。
【0010】
平均値算出手段は、設定されたなまし係数に基いて所定周期毎に回転速度偏差の一次遅れ平均値を算出するように構成することが可能である。
【0011】
なまし係数に基いて所定周期毎に回転速度偏差の一次遅れ平均値を算出すれば、回転速度偏差のデータを多数保存して平均値を算出する必要がないので、演算処理に必要とされるメモリの低容量化が達成され製造コストの面で有利となる。
【0012】
更に、平均値算出手段には、駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させてなましの度合いが大きくなるようになまし係数を設定するなまし係数調整機能を設けるようにしてもよい。
【0013】
このような構成を適用すれば、駆動トルクを制限した走行状況、例えば、圧雪路のような低μ路を走行するような状況下で駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が生じた場合において、比較的大きな値のなまし係数で素早く回転速度偏差の一次遅れ平均値を増大させて補正係数の値を増大させることができるので、アスファルト路のような高μ路から圧雪路のような低μ路に移行した場合であっても、素早くトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値を増大させて、副駆動輪に十分な駆動力を伝達することができる。
また、高い駆動トルクでアスファルト路のような高μ路を走行する場合には一次遅れ平均値の算出に用いられるなまし係数の値が小さくなるので、回転速度偏差の瞬間的な変動が回転速度偏差の一次遅れ平均値に与える影響が軽減されることになり、駆動トルクが大きい状態で生じる瞬間的なスリップ等に起因する副駆動輪への過剰な駆動力の伝達によるクラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題が効果的に解消される。
【0014】
また、この平均値算出手段は、駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させて所定期間(回転速度偏差検出のサンプリング期間)を増長するサンプリング期間調整機能を備えた構成とすることも可能である。
【0015】
この場合、回転速度偏差を記憶するためのメモリ容量は必要となるが、駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させて回転速度偏差検出の所定期間を増長させることで、前述したなまし係数調整機能を適用した場合と略同等に、低μ路や高μ路の走行に応じてトルク対応締結力調整指令値の応答特性を調整することができる。
つまり、駆動輪に与えられる駆動トルクが小さい場合には平均値の算出に用いられる回転速度偏差のサンプリング期間つまりサンプリング数が少なくなるので、素早く回転速度偏差の平均値を変化させ補正係数を増大させてトルク対応締結力調整指令値の応答を速くすることができ、また、駆動輪に与えられる駆動トルクが大きい場合には、平均値の算出に用いられる回転速度偏差のサンプリング期間つまりサンプリング数が多くなるので、回転速度偏差の瞬間的な変動が回転速度偏差の平均値に与える影響が軽減され、駆動トルクが大きい状態で生じる瞬間的なスリップ等に起因する副駆動輪への過剰な駆動力の伝達によるクラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題が効果的に解消される。
【0016】
更に、トルク対応指令値算出手段には、駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合と駆動輪の回転速度が高速走行判定値よりも値の小さな低速走行判定値に不足した場合に回転速度の超過量および不足量の大きさに対応させてトルク対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正する走行速度・トルク対応指令値補正機能を設けるようにしてもよい。
【0017】
このような構成を適用すれば、車両が高速で走行している場合と低速で走行している場合に副駆動輪に対する駆動力の配分を減少させることができるので、低速走行時におけるタイトコーナーブレーキ現象を軽減することができ、特に、前輪を駆動輪として後輪を副駆動輪とした構成において、高速走行時のハンドリング特性をアンダーステア傾向として走行安定性を高めることができる。
【0018】
また、回転速度偏差対応指令値算出手段には、駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合に回転速度の超過量の大きさに対応させて回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正する走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能を配備することが可能である。
【0019】
前記と同様、車両が高速で走行している場合に副駆動輪に対する駆動力の配分を減少させることができるので、前輪を駆動輪として後輪を副駆動輪とした構成において、高速走行時のハンドリング特性をアンダーステア傾向として走行安定性を高めることができる。特に、この走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能と前述した走行速度・トルク対応指令値補正機能を併設した構成においては、高速走行時における副駆動輪への駆動力の配分を大幅に減少させることができるので、燃費の向上の面で有利である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明を適用した一実施形態の四輪駆動車の主要部を概略で示したシステムブロック図である。
【0021】
エンジン1からの出力はトランスミッション2を介して駆動輪である前輪3,3に伝達され、また、エンジン1からの出力の一部はトランスファ4およびトルク配分用クラッチ5とデファレンシャルギア6を介して副駆動輪となる後輪7,7に伝達される。トルク配分用クラッチ5は、従来と同様、電子制御可能なクラッチ等によって構成されるもので、トルク配分用クラッチ5の締結力、つまり、前後輪への動力配分の割合は、駆動力配分制御装置8からの制御信号によって設定される。
【0022】
右前車輪回転速度検出センサ9,左前車輪回転速度検出センサ10,右後車輪回転速度検出センサ11,左後車輪回転速度検出センサ12は、通常の四輪駆動車が備えるアンチ・ロック・ブレーキシステム(ABS)のセンサを流用したもので、各車輪の回転速度を検出する。車輪回転速度検出センサ9,10,11,12から出力された回転速度信号は駆動力配分制御装置8に入力され、駆動力配分制御装置8は、右前車輪回転速度検出センサ9で検出された回転速度と左前車輪回転速度検出センサ10で検出された回転速度の平均を前車輪回転速度として、また、右後車輪回転速度検出センサ11で検出された回転速度と左後車輪回転速度検出センサ12で検出された回転速度の平均を後車輪回転速度として認識する。
【0023】
また、エンジン1にはスロットル開度検出センサとエンジン回転速度検出センサとが設けられており、これらのセンサからの出力は、エンジン1に併設されたエンジン・コントロールユニット(ECU)を介して駆動力配分制御装置8に入力される。
【0024】
駆動力配分制御装置8は、演算処理用のCPUと、制御プログラムを格納したROM、および、演算データの一時記憶に用いられるRAM等によって構成され、前輪3,3に与えられる駆動トルクの大きさ、および、前輪3,3と後輪7,7との間に生じる回転速度偏差の大きさ等に基いてトルク配分用クラッチ5を制御することにより、エンジン1によって直接的に駆動される前輪3,3と、デファレンシャルギア6およびトルク配分用クラッチ5とトランスファ4を介してエンジン1に接続された後輪7,7との間の駆動力の配分を調整する。
【0025】
図2は、駆動力配分制御装置8の演算機能の概略を示した機能ブロック図である。
【0026】
駆動力配分制御装置8のエンジントルク算出手段13は、エンジン・コントロールユニットを経由してスロットル開度検出センサから入力されたスロットル開度と、エンジン・コントロールユニットを経由してエンジン回転速度検出センサから入力されたエンジン回転速度とに基いてエンジン出力トルクを求める。
【0027】
駆動力配分制御装置8の減速比算出手段14は、エンジン・コントロールユニットを経由してエンジン回転速度検出センサから入力されたエンジン回転速度と、右前車輪回転速度検出センサ9で検出された回転速度と左前車輪回転速度検出センサ10で検出された回転速度の平均である前車輪回転速度とに基いてトランスミッション2の減速比を算出する。
【0028】
駆動力配分制御装置8の駆動トルク推定手段15は、エンジントルク算出手段13で求められたエンジン出力トルクに減速比算出手段14で求められたトランスミッション2の減速比を乗じて最終的な駆動トルクを求める。
【0029】
駆動力配分制御装置8の回転速度偏差算出手段16は、右前車輪回転速度検出センサ9で検出された回転速度と左前車輪回転速度検出センサ10で検出された回転速度の平均である前車輪回転速度と、右後車輪回転速度検出センサ11で検出された回転速度と左後車輪回転速度検出センサ12で検出された回転速度の平均である後車輪回転速度とに基いて、前輪3,3と後輪7,7との間の回転速度偏差の大きさを求める。
【0030】
駆動力配分制御装置8の平均値算出手段17は、回転速度偏差算出手段16が算出する回転速度偏差を所定周期毎に検出し、所定期間内に検出された回転速度偏差の平均値を算出する。
この平均値算出手段17は、駆動トルク推定手段15によって求められた駆動トルクの増大に対応させて一次遅れ平均値の算出に用いるなまし係数を減少させて設定するなまし係数調整機能、あるいは、駆動トルク推定手段15によって求められた駆動トルクの増大に対応させて平均値をサンプリングする所定期間を増長して設定するサンプリング期間調整機能の何れか一方を選択的に備える。
【0031】
そして、駆動力配分制御装置8のトルク対応指令値算出手段18は、平均値算出手段17で求められた回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数であるトルク対応指令値補正第一係数を設定し、更に、駆動トルク推定手段15によって求められた駆動トルクの大きさに略比例するトルク対応締結力対応基本指令値を求め、このトルク対応締結力対応基本指令値とトルク対応指令値補正第一係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を設定する。
但し、このトルク対応指令値算出手段18には、駆動輪となる前輪3,3の回転速度に応じてトルク対応締結力調整指令値の値を補正するための走行速度・トルク対応指令値補正機能が設けられている。
【0032】
駆動力配分制御装置8の回転速度偏差対応指令値算出手段19は、回転速度偏差算出手段16で求められた回転速度偏差の大きさに略比例して回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を設定する。
この回転速度偏差対応指令値算出手段19には、駆動輪となる前輪3,3の回転速度に応じて回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を補正するための走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能が設けられている。
【0033】
そして、最終的に、駆動力配分制御装置8の締結力調整手段20は、トルク対応指令値算出手段18によって求められたトルク対応締結力調整指令値の値と回転速度偏差対応指令値算出手段19によって求められた回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を加算して締結力調整指令値を求め、この締結力調整指令値を制御信号としてトルク配分用クラッチ5に出力することで、トルク配分用クラッチ5の締結力、要するに、後輪7,7に対する駆動力の配分を調整する。
【0034】
次に、駆動力配分制御装置8のCPUによって所定周期毎に繰り返し実行される締結力調整処理の概略を示した図3および図4のフローチャートを参照して、エンジントルク算出手段13,減速比算出手段14,駆動トルク推定手段15,回転速度偏差算出手段16,平均値算出手段17,トルク対応指令値算出手段18,回転速度偏差対応指令値算出手段19,締結力調整手段20,平均値算出手段17におけるなまし係数調整機能実現手段,トルク対応指令値算出手段18における走行速度・トルク対応指令値補正機能実現手段、および、回転速度偏差対応指令値算出手段19における走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUの処理動作について詳細に説明する。
【0035】
この実施形態は、平均値算出手段17になまし係数調整機能を配備した場合の実施形態である。
【0036】
所定周期毎の締結力調整処理を開始したCPUは、まず、車輪回転速度検出センサ9,10,11,12から出力された回転速度信号と、エンジン・コントロールユニットを経由して入力されたスロットル開度およびエンジン回転速度を読み込んで一時記憶すると共に、右前車輪回転速度検出センサ9で検出された回転速度と左前車輪回転速度検出センサ10で検出された回転速度の値を平均して前車輪回転速度を求め、同時に、右後車輪回転速度検出センサ11で検出された回転速度と左後車輪回転速度検出センサ12で検出された回転速度の値を平均して後車輪回転速度を求める(ステップA1)。
【0037】
次いで、エンジントルク算出手段13として機能するCPUは、ステップA1の処理で読み込んだスロットル開度とエンジン回転速度とに基いて図7に示されるようなエンジントルクマップを参照し、スロットル開度とエンジン回転速度の現在値に対応するエンジン出力トルクを求める(ステップA2)。
【0038】
本実施形態においては、スロットル開度を一定にしてエンジン回転速度のみを変化させた時のエンジン出力トルクの変化を示す複数の関数f1〜f5(但し、f1〜f5はエンジン回転速度の関数)が駆動力配分制御装置8のROMにエンジントルクマップとして記憶されており、CPUが、スロットル開度の現在値に最も近似した関数をf1〜f5の内から選択し、この選択された関数にエンジン回転速度の現在値を代入することによってエンジン出力トルクが求められるようになっている。
【0039】
次いで、減速比算出手段14として機能するCPUは、ステップA1の処理で読み込んだエンジン回転速度の値をステップA1の処理で求めた前車輪回転速度の値で除してトランスミッション2の減速比を算出する(ステップA3)。
【0040】
そして、駆動トルク推定手段15として機能するCPUは、ステップA2の処理で求められたエンジン出力トルクにステップA3の処理で求められた減速比を乗じて最終的な駆動トルクの値を算出する(ステップA4)。
定速走行でシフトアップ操作を行った場合にはトランスミッション2の減速比が減少して駆動トルクが減少し、また、シフトダウン操作を行った場合にはトランスミッション2の減速比が増大して駆動トルクが増大するので、変速操作の前後においてもトルク配分は略一定に保持されることになる。
【0041】
次いで、トルク対応指令値算出手段18として機能するCPUは、ステップA4の処理で求められた駆動トルクの値に基いて図8に示されるようなトルク対応締結力調整基本指令値のマップを参照し、駆動トルクの現在値に対応するトルク対応締結力調整基本指令値の値を求める(ステップA5)。
【0042】
本実施形態においては、駆動トルクとトルク対応締結力調整基本指令値との対応関係を示す関数が、例えば、関数f6(但し、f6は駆動トルクの関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に駆動トルクの現在値を代入することによってトルク対応締結力調整基本指令値が求められるようになっている。図8に示される通り、駆動トルクの増大に略比例してトルク対応締結力調整基本指令値の値も増大する。
【0043】
そして、トルク対応指令値算出手段18における走行速度・トルク対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUは、ステップA1の処理で求められた前車輪回転速度の値に基いて図9に示されるようなトルク対応指令値補正マップを参照し、前車輪回転速度の現在値に対応するトルク対応指令値補正第二係数の値を求める(ステップA6)。このトルク対応指令値補正第二係数は、前車輪回転速度に応じてトルク対応締結力調整指令値の値を補正するための補正係数である。
【0044】
本実施形態においては、前車輪回転速度とトルク対応指令値補正第二係数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f7(但し、f7は前車輪回転速度の関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に前車輪回転速度の現在値を代入することによってトルク対応指令値補正第二係数が求められるようになっている。
【0045】
図9に示される通り、前車輪回転速度が低速走行判定値と高速走行判定値との間にある場合のトルク対応指令値補正第二係数の値は1で、前車輪回転速度が高速走行判定値を超過した場合には、その超過量に略比例してトルク対応指令値補正第二係数の値が減少し、また、前車輪回転速度が低速走行判定値に満たない場合にも、その不足量に略比例してトルク対応指令値補正第二係数の値が減少するようになっている。
【0046】
低速走行判定値は車両が低速走行を行っているか否かを識別するための値であり、実質的な値としては、一般的な公道に設定されたタイトコーナーを車両が安全に走行できる最高速度に相当する程度の前車輪回転速度の値である。また、高速走行判定値は車両が高速走行を行っているか否かを識別するための値であり、実質的な値としては、車両が高速道路を普通に走行するときの速度に相当する程度の前車輪回転速度の値である。
【0047】
次いで、回転速度偏差算出手段16として機能するCPUは、ステップA1の処理で求められた前車輪回転速度の値から後車輪回転速度の値を減じ、当該処理周期における前輪3,3と後輪7,7との間の回転速度偏差の大きさを求める(ステップA7)。
【0048】
そして、平均値算出手段17のなまし係数調整機能実現手段として機能するCPUは、ステップA4の処理で求められた駆動トルクの値に基いて図10に示されるようななまし係数選択マップを参照し、駆動トルクの現在値に対応したなまし係数の値を求める(ステップA8)。
【0049】
本実施形態においては、駆動トルクとなまし係数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f8(但し、f8は駆動トルクの関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に駆動トルクの現在値を代入することによってなまし係数の値が求められるようになっている。
【0050】
図10に示される通り、駆動トルクが高μ路判定値を超過した場合のなまし係数の値は相対的に小さく、また、駆動トルクが低μ路判定値に満たない場合のなまし係数の値はそれよりも大きく、駆動トルクが高μ路判定値と低μ路判定値との間にある場合にはなまし係数の値は駆動トルクの増大に対応して減少する。
【0051】
低μ路判定値は車両が駆動トルクを制限した状況で走行しているか否か、つまり、圧雪路のような低μ路を走行しているか否かを識別するための値であり、また、高μ路判定値は車両が駆動トルクを制限しない状況で走行しているか否か、つまり、アスファルト路のような高μ路を走行しているか否かを識別するための値である。
図10から明らかなように、駆動トルクを制限して圧雪路のような低μ路を走行している状況下では一次遅れ平均値の算出に用いられるなまし係数の値が大きくなり、また、これとは逆に、駆動トルクを制限せずにアスファルト路のような高μ路を走行している状況下では一次遅れ平均値の算出に用いられるなまし係数の値は小さくなる。
【0052】
次いで、平均値算出手段17として機能するCPUは、前周期の締結力調整処理のステップA11の処理でRAMに記憶された回転速度偏差の一次遅れ平均値の値を読み出し(ステップA9)、ステップA7の処理で求められた当該処理周期の回転速度偏差の値から前周期の一次遅れ平均値の値を減じ、更に、この値にステップA8の処理で求められたなまし係数を乗じて前周期の一次遅れ平均値の値に加算して当該処理周期における一次遅れ平均値を算出し、この一次遅れ平均値を当該処理周期における回転速度偏差の平均値として記憶する(ステップA10)。
【0053】
このように、前周期の締結力調整処理で求められた一次遅れ平均値の値と当該処理周期で求められた回転速度偏差の値のみに基いて当該処理周期の一次遅れ平均値を求め、この値を回転速度偏差の平均値として利用することにより、前周期以前に求められた多数の回転速度偏差を記憶して平均値を算出する必要がなくなり、RAMのメモリ容量の節約に繋がる。
【0054】
次いで、平均値算出手段17として機能するCPUは、ステップA10の演算処理で求められた結果を前周期の締結力調整処理で求められた回転速度偏差の一次遅れ平均値としてRAMに記憶する(ステップA11)。この値が、次周期の締結力調整処理のステップA9で読み出される値である。
【0055】
次に、トルク対応指令値算出手段18として機能するCPUは、ステップA10の処理で求められた回転速度偏差の平均値に基いて図11に示されるようなトルク対応指令値補正マップを参照し、回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数であるトルク対応指令値補正第一係数の値を求める(ステップA12)。
【0056】
本実施形態においては、回転速度偏差の平均値とトルク対応指令値補正第一係数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f9(但し、f9は回転速度偏差の平均値の関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に回転速度偏差の平均値の値を代入することによってトルク対応指令値補正第一係数が求められるようになっている。
【0057】
そして、トルク対応指令値算出手段18およびトルク対応指令値算出手段18における走行速度・トルク対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUが、ステップA5の処理で求められたトルク対応締結力対応基本指令値に、ステップA6の処理で求められたトルク対応指令値補正第二係数、即ち、前輪3,3の回転速度に応じてトルク対応締結力調整指令値の値を補正するための補正係数と、ステップA12の処理で求められたトルク対応指令値補正第一係数、即ち、回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を求める(ステップA13)。
【0058】
ここで、前車輪回転速度が低速走行判定値と高速走行判定値との間にある場合はトルク対応指令値補正第二係数の値が1であるから、ステップA5の処理で求められたトルク対応締結力調整基本指令値の値が駆動トルクの大きさに略比例した値としてそのまま反映される。一方、前車輪回転速度が高速走行判定値を超過した場合、あるいは、前車輪回転速度が低速走行判定値に満たない場合には、トルク対応指令値補正第二係数の値は0以上1未満の値となるので、何れの場合においても、駆動トルクの大きさに略比例した値は、トルク対応締結力調整基本指令値を基準として減少方向に補正されることになる。このようにして車両が低速で走行している場合と高速で走行している場合にトルク対応締結力調整基本指令値の値を減少方向に補正することにより、低速走行時におけるタイトコーナーブレーキ現象を軽減することができ、更に、高速走行に際しては、駆動輪である前輪3,3の駆動力を相対的に増大させた状態でアンダーステア傾向のハンドリング特性を得て走行安定性を高めることができる。
【0059】
また、駆動輪である前輪3,3と副駆動輪である後輪7,7との間に回転速度偏差が連続的に発生し易い低μ路の走行に際しては、所定周期毎に繰り返されるステップA7の処理で継続して略一定の回転速度偏差が求められるため、比較的短時間の内に回転速度偏差の平均値が増大し、これに応じてトルク対応指令値補正第一係数の値も増大するので、トルク対応締結力対応基本指令値の大きさに応じて素早くトルク対応締結力調整指令値の値を増大させて後輪7,7に十分な駆動力を伝達することができる。これに対し、前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が連続的に発生し難い高μ路の走行に際しては、回転速度偏差の平均値が回転速度偏差の瞬間値の影響を受けて直ちに変化することはないので、瞬間的なスリップ等によって一時的に値の大きな回転速度偏差が検出されても平均値に略比例するトルク対応指令値補正第一係数の値が急激に変動することはなく、トルク対応締結力調整指令値の変動も防止されるので、後輪7,7に伝達される駆動トルクの変動によって歯車の発熱や燃費の悪化が生じるといった問題を未然に防止することができる。
【0060】
しかも、実際には、車両が駆動トルクを制限した状況で低μ路を走行している場合にはなまし係数の値は大きく、また、車両が駆動トルクを制限しない状況で高μ路を走行している場合にはなまし係数の値は小さくなるので、圧雪路のような低μ路を走行するような状況下で前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が生じた場合には、大きななまし係数で素早く回転速度偏差の一次遅れ平均値を増大させてトルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を増大させることができる。また、これとは逆に、アスファルト路のような高μ路を走行するような場合には一次遅れ平均値の算出に用いられるなまし係数の値が小さくなっているので、回転速度偏差の瞬間的な変動が回転速度偏差の一次遅れ平均値に与える影響が大幅に軽減され、駆動トルクが大きい状態で生じる瞬間的なスリップ等に起因する一次遅れ平均値やトルク対応指令値補正第一係数の変動、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の変動が効果的に防止される。
【0061】
次いで、回転速度偏差対応指令値算出手段19として機能するCPUは、ステップA7の処理で求められた回転速度偏差の値に基いて図12に示されるような回転速度偏差対応締結力調整基本指令値のマップを参照し、回転速度偏差の現在値に対応する回転速度偏差対応締結力調整基本指令値の値を求める(ステップA14)。
【0062】
本実施形態においては、回転速度偏差と回転速度偏差対応締結力調整基本指令値との対応関係を示す関数が、例えば、関数f10(但し、f10は回転速度偏差の関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に回転速度偏差の現在値を代入することによって回転速度偏差対応締結力調整基本指令値が求められるようになっている。
【0063】
図12に示される通り、前車輪回転速度と後車輪回転速度が一致して回転速度偏差が発生していない状態では回転速度偏差対応締結力調整基本指令値の値は0で、駆動輪である前輪3,3のスリップ等によって前車輪回転速度が後車輪回転速度を上回って回転速度偏差が増大した場合、あるいは、ブレーキング等によって後車輪回転速度が前車輪回転速度を上回って回転速度偏差が増大した場合の何れにおいても、回転速度偏差の大きさ(絶対値)に略比例して回転速度偏差対応締結力調整基本指令値の値が増大する。
【0064】
そして、回転速度偏差対応指令値算出手段19における走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUは、ステップA1の処理で求められた前車輪回転速度の値に基いて図13に示されるような回転速度偏差対応指令値補正マップを参照し、前車輪回転速度の現在値に対応する回転速度偏差対応指令値補正係数を求める(ステップA15)。
【0065】
本実施形態においては、前車輪回転速度と回転速度偏差対応指令値補正係数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f11(但し、f11は前車輪回転速度の関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に前車輪回転速度の現在値を代入することによって回転速度偏差対応指令値補正係数が求められるようになっている。
【0066】
図13に示される通り、前車輪回転速度が高速走行判定値以下の場合の回転速度偏差対応指令値補正係数の値は1で、前車輪回転速度が高速走行判定値を超過した場合には、その超過量に略比例して回転速度偏差対応指令値補正係数の値が減少するようになっている。
【0067】
次いで、回転速度偏差対応指令値算出手段19の走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUは、ステップA14の処理で求められた回転速度偏差対応締結力調整基本指令値にステップA15の処理で求められた回転速度偏差対応指令値補正係数を乗じ、車両の走行速度を加味した最終的な回転速度偏差対応締結力調整指令値を算出する(ステップA16)。
【0068】
ここで、前車輪回転速度が高速走行判定値以下の場合は回転速度偏差対応指令値補正係数の値が1であるから、ステップA14の処理で求められた回転速度偏差対応締結力調整基本指令値の値が最終的な回転速度偏差対応締結力調整指令値としてそのまま反映される。また、前車輪回転速度が高速走行判定値を超過した場合には、回転速度偏差対応指令値補正係数の値は0以上1未満の値となるので、最終的な回転速度偏差対応締結力調整指令値の値は、回転速度偏差対応締結力調整基本指令値を基準として減少方向に補正されることになる。このようにして、車両が高速で走行している場合に回転速度偏差対応締結力調整基本指令値の値を減少方向に補正することで高速走行時におけるアンダーステア傾向のハンドリング特性による走行安定性が保証され、同時に、後輪7,7への駆動力の配分制限により燃費が向上するメリットがある。特に、本実施形態においては、車両の高速走行時に回転速度偏差対応締結力調整指令値およびトルク対応締結力調整指令値が共に減少方向に補正されるようになっているので、高速走行における燃費を大幅に向上させることができる。
【0069】
そして、最終的に、締結力調整手段20として機能するCPUが、ステップA13の処理で求められたトルク対応締結力調整指令値にステップA16の処理で求められた回転速度偏差対応締結力調整指令値を加算して締結力調整指令値を求め(ステップA17)、この締結力調整指令値を制御信号としてトルク配分用クラッチ5に出力することで、トルク配分用クラッチ5の締結力、要するに、後輪7,7に対する駆動力の配分を調整する(ステップA18)。
【0070】
前述した通り、図3および図4の締結力調整処理は所定周期毎に繰り返し実行され、その都度、新たに求められる回転速度偏差の平均値に略比例したトルク対応指令値補正第一係数に基いてトルク対応締結力調整指令値の値が算出されることになるが、一次遅れ平均値の算出に用いられるなまし係数の値が駆動トルクの大小に応じて自動調整され、駆動トルクを制限した低μ路の走行に際してはなまし係数の値が大きくなり、また、駆動トルクを制限しない高μ路の走行に際してはなまし係数の値が小さくなる。
【0071】
従って、低μ路を走行する際に前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が生じた場合には、大きななまし係数で素早く回転速度偏差の一次遅れ平均値を増大させ、トルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を増大させて後輪7,7に駆動力を伝達することができ、また、これとは逆に、高μ路を走行する際に前輪3,3と後輪7,7との間に瞬間的な回転速度偏差が生じた場合には、小さななまし係数により瞬間的な回転速度偏差の変動を吸収して回転速度偏差の一次遅れ平均値を安定させることができるので、トルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を安定させて後輪7,7に伝達される駆動力の急激な変動を防止し、クラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題を未然に防止することができる。
【0072】
以上に述べた通り、駆動トルクの大小に応じて一次遅れ平均値の算出に用いるなまし係数の値を調整することにより、路面のμに応じた最適のトルク対応締結力調整指令値を算出することが可能となる。
【0073】
次に、平均値算出手段17にサンプリング期間調整機能を配備した場合の実施形態の処理について図5および図6の締結力調整処理のフローチャートを参照して説明する。
【0074】
このうちステップS1〜ステップS7の処理に関しては前述したステップA1〜ステップA7の処理と同様であるので説明を省略する。
【0075】
ステップS7の処理で当該処理周期における前輪3,3と後輪7,7との間の回転速度偏差の大きさを求めた後、平均値算出手段17のサンプリング期間調整機能実現手段として機能するCPUは、所定周期毎にステップS7の処理で求められる回転速度偏差の最近の値を所定数nだけ記憶する図14(a)のような回転速度偏差記憶テーブルの第1アドレスから第n−1アドレスに記憶された回転速度偏差のデータを下位アドレス側から順に1アドレス分ずつ下位のアドレスにシフトして上書きし(ステップS8)、この処理周期におけるステップS7の処理で求められた最新の回転速度偏差の値を第1アドレスに記憶させる(ステップS9)。
【0076】
図14は駆動力配分制御装置8のRAM内に設けられた回転速度偏差記憶テーブルを示した概念図であり、図14(a)では電源投入時の初期化処理によって第1アドレスから第nアドレスの全ての回転速度偏差のデータが0に初期化された状態を、また、図14(b)から図14(d)では、初期化処理完了後に所定周期毎に繰り返される締結力調整処理のスップS7の処理において順に回転速度偏差a,回転速度偏差b,回転速度偏差c,・・・が検出されたものと仮定して、回転速度偏差記憶テーブルのデータの推移を示している。
【0077】
次いで、平均値算出手段17のサンプリング期間調整機能実現手段として機能するCPUは、ステップS4の処理で求められた駆動トルクの値に基いて図10に示されるような定数選択マップを参照し、駆動トルクの現在値に略比例した定数iの値を求める(ステップS10)。
【0078】
本実施形態においては、駆動トルクと定数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f8’(但し、f8’は駆動トルクの関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に駆動トルクの現在値を代入することによって定数iの値が求められるようになっている。
【0079】
図10に示される通り、駆動トルクが高μ路判定値を超過した場合の定数iの値は回転速度偏差記憶テーブルの最大データ記憶数に相当する値n(但し、nは自然数)である。また、駆動トルクが低μ路判定値に満たない場合の定数iの値はm(但し、mはm<nの自然数)で、駆動トルクが高μ路判定値と低μ路判定値との間にある場合には定数iの値は駆動トルクの大きさに略比例して増大する自然数の値をとる。
【0080】
図10から明らかなように、駆動トルクを制限して圧雪路のような低μ路を走行している状況下では平均値の算出に用いられる定数iの値が小さくなり、また、これとは逆に、駆動トルクを制限せずにアスファルト路のような高μ路を走行している状況下では平均値の算出に用いられる定数iの値は大きくなる。
【0081】
次いで、平均値算出手段17として機能するCPUは、ステップS10の処理で求められた定数i(但し、iはm≦i≦nの自然数)の値に基いて、回転速度偏差記憶テーブルのアドレス1からアドレスiに記憶されている回転速度偏差のデータを全て加算し、この加算値を個数iで除して回転速度偏差の平均値を算出する(ステップS11)。
【0082】
次に、トルク対応指令値算出手段18として機能するCPUが、ステップS11の処理で求められた回転速度偏差の平均値に基いて図11に示されるようなトルク対応指令値補正マップを参照し、回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数であるトルク対応指令値補正第一係数の値を求める(ステップS12)。
【0083】
本実施形態においては、回転速度偏差の平均値とトルク対応指令値補正第一係数との対応関係を示す関数が、例えば、関数f9(但し、f9は回転速度偏差の平均値の関数)として駆動力配分制御装置8のROMに記憶されており、この関数に回転速度偏差の平均値の値を代入することによってトルク対応指令値補正第一係数が求められるようになっている。
【0084】
そして、トルク対応指令値算出手段18およびトルク対応指令値算出手段18における走行速度・トルク対応指令値補正機能実現手段として機能するCPUが、ステップS5の処理で求められたトルク対応締結力対応基本指令値に、ステップS6の処理で求められたトルク対応指令値補正第二係数、即ち、前輪3,3の回転速度に応じてトルク対応締結力調整指令値の値を補正するための補正係数と、ステップS12の処理で求められたトルク対応指令値補正第一係数、即ち、回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を求める(ステップS13)。
【0085】
ここで、前車輪回転速度が低速走行判定値と高速走行判定値との間にある場合はトルク対応指令値補正第二係数の値が1であるから、ステップS5の処理で求められたトルク対応締結力調整基本指令値の値が駆動トルクの大きさに略比例した値としてそのまま反映される。一方、前車輪回転速度が高速走行判定値を超過した場合、あるいは、前車輪回転速度が低速走行判定値に満たない場合には、トルク対応指令値補正第二係数の値は0以上1未満の値となるので、何れの場合においても、駆動トルクの大きさに略比例した値は、トルク対応締結力調整基本指令値を基準として減少方向に補正されることになる。このようにして車両が低速で走行している場合と高速で走行している場合にトルク対応締結力調整基本指令値の値を減少方向に補正することにより、低速走行時におけるタイトコーナーブレーキ現象を軽減することができ、更に、高速走行に際しては、駆動輪である前輪3,3の駆動力を相対的に増大させた状態でアンダーステア傾向のハンドリング特性を得て走行安定性を高めることができる。
【0086】
また、駆動輪である前輪3,3と副駆動輪である後輪7,7との間に回転速度偏差が連続的に発生し易い低μ路の走行に際しては、所定周期毎に繰り返されるステップS7の処理で継続して略一定の回転速度偏差が求められるため、比較的短時間の内に回転速度偏差の平均値が増大し、これに応じてトルク対応指令値補正第一係数の値も増大するので、トルク対応締結力対応基本指令値の大きさに応じて素早くトルク対応締結力調整指令値の値を増大させて後輪7,7に十分な駆動力を伝達することができる。仮に、定数iの値が5であるときに連続して5回の締結力調整処理で回転速度偏差aの値が検出されたとすれば、5回の締結力調整処理が繰り返された段階で回転速度偏差の平均値の値が回転速度偏差aの値と一致する。これに対し、前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が連続的に発生し難い高μ路の走行に際しては、回転速度偏差の平均値が回転速度偏差の瞬間値の影響を受けて直ちに変化することはないので、瞬間的なスリップ等によって一時的に値の大きな回転速度偏差が検出されても平均値に略比例するトルク対応指令値補正第一係数の値が急激に変動することはなく、トルク対応締結力調整指令値の変動も防止されるので、後輪7,7に伝達される駆動トルクの変動によって歯車の発熱や燃費の悪化が生じるといった問題を未然に防止することができる。仮に、定数iの値が5であるときに1回の締結力調整処理で回転速度偏差aの値が検出されたとすれば、回転速度偏差の平均値の瞬間的な変化量は、今回瞬間的に検出された回転速度偏差aと前回の平均値との相違に対して1/5程度に抑制されることになる。
【0087】
しかも、実際には、車両が駆動トルクを制限した状況で低μ路を走行している場合には定数iの値は小さくなって回転速度偏差検出のサンプリング期間(サンプリング回数)が短縮され、また、車両が駆動トルクを制限しない状況で高μ路を走行している場合には定数iの値が大きくなって回転速度偏差検出のサンプリング期間(サンプリング回数)が増長されるので、圧雪路のような低μ路を走行するような状況下で前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が生じた場合には、短いサンプリング期間(僅かなサンプリング回数)で素早く回転速度偏差の平均値を増大させてトルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を増大させることができる。仮に、駆動トルクが低いために定数iの値が1になっていたとすれば、1回の締結力調整処理が実行された段階で回転速度偏差の平均値の値が直ちに現在の回転速度偏差の値と一致することになる。また、これとは逆に、アスファルト路のような高μ路を走行するような場合には平均値の算出に用いられる定数iの値が大きくなって回転速度偏差検出のサンプリング期間(サンプリング回数)が増長されているので、回転速度偏差の瞬間的な変動が回転速度偏差の平均値に与える影響が大幅に軽減され、駆動トルクが大きい状態で生じる瞬間的なスリップ等に起因する平均値やトルク対応指令値補正第一係数の変動、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の変動が効果的に防止される。仮に、駆動トルクが高いために定数iの値が10になっていたとすれば、1回の締結力調整処理が実行された段階で回転速度偏差が平均値に与える影響は、今回検出された回転速度偏差と前回の平均値との相違に対して1/10程度の割合である。
【0088】
ステップS14〜ステップS18の処理に関しては前述したステップA14〜ステップA18の処理と同様であるので説明を省略する。
【0089】
前述した通り、図5および図6の締結力調整処理は所定周期毎に繰り返し実行され、その都度、新たに求められる回転速度偏差の平均値に略比例したトルク対応指令値補正第一係数に基いてトルク対応締結力調整指令値の値が算出されることになるが、平均値の算出に用いられる定数iの値が駆動トルクの大小に応じて自動調整され、駆動トルクを制限した低μ路の走行に際しては定数iの値が小さくなり、また、駆動トルクを制限しない高μ路の走行に際しては定数iの値が大きくなる。
【0090】
従って、低μ路を走行する際に前輪3,3と後輪7,7との間に回転速度偏差が生じた場合には、小さな定数iで素早く回転速度偏差の平均値を増大させ、トルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を増大させて後輪7,7に駆動力を伝達することができ、また、これとは逆に、高μ路を走行する際に前輪3,3と後輪7,7との間に瞬間的な回転速度偏差が生じた場合には、大きな定数iにより瞬間的な回転速度偏差の変動を吸収して回転速度偏差の平均値を安定させることができるので、トルク対応指令値補正第一係数の値、ひいては、トルク対応締結力調整指令値の値を安定させて後輪7,7に伝達される駆動力の急激な変動を防止し、クラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題を未然に防止することができる。
【0091】
図5および図6で示した実施形態ではn個の回転速度偏差データを記憶する必要上、RAMには或る程度の記憶容量を準備する必要があるが、経済性を別にすれば、前述した図3および図4の実施形態と略同等の作用効果を達成することができる。
【0092】
ここでは、一実施形態として、スロットル開度とエンジン回転速度とに基いてエンジン出力トルクを推定する例を示したが、エンジン1の吸入空気量や燃料噴射量を用いてエンジン出力トルクを推定するようにしてもよい。
【0093】
また、前述の各実施形態では、エンジン回転速度と駆動輪である前車輪回転速度とに基いてトランスミッション2の減速比を算出するようにしているが、オートマチック車の場合にはエンジン・コントロールユニットの内部処理で減速比を算出してトランスミッション2に設定するようになっているので、ステップS3の演算処理に代え、エンジン・コントロールユニットの内部処理で求められた減速比の値を駆動力配分制御装置8に取り込んで利用することも可能である。また、トランスミッション2となるトルクコンバータのトルク比をコンバータの特性から算出して減速比を求めるようにしてもよい。
【0094】
【発明の効果】
本発明による四輪駆動車の駆動力配分制御装置は、駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差を所定周期毎に検出し、回転速度偏差検出のサンプリング期間内に検出された回転速度偏差の平均値に対応する大きさの補正係数を駆動トルクに乗じてトルク対応締結力調整指令値を調整するようにしているので、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が連続的に発生し易い低μ路の走行に際しては、比較的短時間の内に補正係数の値を変化させてトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値を増大させて副駆動輪に十分な駆動力を伝達することができ、また、駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が連続的に発生し難い高μ路の走行に際しては、瞬間的に発生する回転速度偏差の変動を回転速度偏差の平均値により軽減してトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値を安定化して、副駆動輪に与えられる駆動力の過剰な変動を防止し、クラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題を未然に防止することができる。
【0095】
しかも、回転速度偏差の平均値の算出に用いる一次遅れのなまし係数を駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応して値を減少させるかたちで調整するか、あるいは、平均値の算出に用いる回転速度偏差のサンプリング期間を駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させて増長するように調整しているので、駆動トルクを制限して圧雪路のような低μ路を走行するような状況下で駆動輪と副駆動輪との間に回転速度偏差が生じた場合には短時間で回転速度偏差の平均値を変化させて一層素早く補正係数の値を増大させることができ、アスファルト路のような高μ路から圧雪路のような低μ路に移行した場合であっても、素早くトルク対応締結力調整指令値の値、更には、トルク対応締結力調整指令値と回転速度偏差対応締結力調整指令値との加算値である締結力調整指令値の値を増大させて副駆動輪に十分な駆動力を伝達することができる。また、高い駆動トルクでアスファルト路のような高μ路を走行している場合には、回転速度偏差の瞬間的な変動が回転速度偏差の平均値に与える影響を一層確実に軽減することができ、駆動トルクが大きい状態で生じる瞬間的なスリップ等に起因する副駆動輪への過剰な駆動力の伝達によるクラッチおよび歯車の発熱や燃費の悪化といった問題を効果的に解消することが可能となる。
【0096】
更に、駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合と駆動輪の回転速度が高速走行判定値よりも値の小さな低速走行判定値に不足した場合には回転速度の超過量および不足量の大きさに対応させてトルク対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正するようにしているので、低速走行時におけるタイトコーナーブレーキ現象を軽減することができ、特に、前輪を駆動輪として後輪を副駆動輪とした構成において、高速走行時のハンドリング特性をアンダーステア傾向として走行安定性を高めることができる。
【0097】
また、駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合に回転速度の超過量の大きさに対応させて回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正するようにしているので、高速走行時における副駆動輪への駆動力の配分を大幅に減少させて燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した一実施形態の四輪駆動車の主要部を概略で示したシステムブロック図である。
【図2】同実施形態の駆動力配分制御装置の演算機能の概略を示した機能ブロック図である。
【図3】同実施形態の駆動力配分制御装置のCPUによって所定周期毎に繰り返し実行される締結力調整処理の概略を示したフローチャートである。
【図4】締結力調整処理の概略を示したフローチャートの続きである。
【図5】別の実施形態の締結力調整処理の概略を示したフローチャートである。
【図6】別の実施形態の締結力調整処理の概略を示したフローチャートの続きである。
【図7】駆動力配分制御装置のROMに格納されたエンジントルクマップについて示した概念図である。
【図8】駆動力配分制御装置のROMに格納されたトルク対応締結力調整基本指令値のマップについて示した概念図である。
【図9】駆動力配分制御装置のROMに格納されたトルク対応指令値補正マップ(前車輪回転速度に応じてトルク対応締結力調整指令値の値を補正するための補正係数を記憶したマップ)について示した概念図である。
【図10】駆動力配分制御装置のROMに格納されたなまし係数選択マップおよび定数選択マップについて示した概念図である。
【図11】駆動力配分制御装置のROMに格納されたトルク対応指令値補正マップ(回転速度偏差の平均値に略比例する補正係数を記憶したマップ)について示した概念図である。
【図12】駆動力配分制御装置のROMに格納された回転速度偏差対応締結力調整基本指令値のマップについて示した概念図である。
【図13】駆動力配分制御装置のROMに格納された回転速度偏差対応指令値補正マップについて示した概念図である。
【図14】駆動力配分制御装置のRAMに生成された回転速度偏差記憶テーブルについて示した概念図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 トランスミッション
3 前輪(駆動輪)
4 トランスファ
5 トルク配分用クラッチ
6 デファレンシャルギア
7 後輪(副駆動輪)
8 駆動力配分制御装置
9 右前車輪回転速度検出センサ
10 左前車輪回転速度検出センサ
11 右後車輪回転速度検出センサ
12 左後車輪回転速度検出センサ
13 エンジントルク算出手段
14 減速比算出手段
15 駆動トルク推定手段
16 回転速度偏差算出手段
17 平均値算出手段
18 トルク対応指令値算出手段
19 回転速度偏差対応指令値算出手段
20 締結力調整手段

Claims (6)

  1. エンジンによって直接的に駆動される駆動輪とトルク配分用クラッチを介して前記エンジンに接続された副駆動輪とを備えた四輪駆動車に配備され、車両の走行状態に応じて前記トルク配分用クラッチの締結力を調整する四輪駆動車の駆動力配分制御装置であって、
    駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の大きさを所定周期毎に検出し、回転速度偏差検出のサンプリング期間内に検出された回転速度偏差の平均値を算出する平均値算出手段と、
    前記平均値算出手段で求められた回転速度偏差の平均値に対応する大きさの補正係数を設定し、前記駆動輪に与えられる駆動トルクの大きさに略比例した値と前記補正係数とを乗じてトルク対応締結力調整指令値の値を設定するトルク対応指令値算出手段と、
    駆動輪と副駆動輪との間の回転速度偏差の現在値の増大に対応させて値を増加させるかたちで回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を設定する回転速度偏差対応指令値算出手段と、
    前記トルク対応指令値算出手段で設定されたトルク対応締結力調整指令値と前記回転速度偏差対応指令値算出手段で設定された回転速度偏差対応締結力調整指令値とを加算して最終的な締結力調整指令値を求め、この締結力調整指令値の大きさに対応させて前記トルク配分用クラッチの締結力を調整する締結力調整手段とを備えたことを特徴とする四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  2. 前記平均値算出手段は、設定されたなまし係数に基いて前記所定周期毎に前記回転速度偏差の一次遅れ平均値を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  3. 前記平均値算出手段は、前記駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させてなましの度合いが大きくなるように前記なまし係数を設定するなまし係数調整機能を備えていることを特徴とする請求項2記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  4. 前記平均値算出手段は、前記駆動輪に与えられる駆動トルクの増大に対応させて前記回転速度偏差検出のサンプリング期間を増長するサンプリング期間調整機能を備えていることを特徴とする請求項1記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  5. 前記トルク対応指令値算出手段は、前記駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合と前記駆動輪の回転速度が前記高速走行判定値よりも値の小さな低速走行判定値に不足した場合に回転速度の超過量および不足量の大きさに対応させて前記トルク対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正する走行速度・トルク対応指令値補正機能を備えていることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3または請求項4記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
  6. 前記回転速度偏差対応指令値算出手段は、前記駆動輪の回転速度が高速走行判定値を超過した場合に回転速度の超過量の大きさに対応させて前記回転速度偏差対応締結力調整指令値の値を減少方向に補正する走行速度・回転速度偏差対応指令値補正機能を備えていることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5記載の四輪駆動車の駆動力配分制御装置。
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