JP4153293B2 - シリコン単結晶引上方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、横磁場印加引上(orizontal agnetic Field Applied Czochralski 以下、HMCZと呼ぶ)用の装置によるシリコン単結晶の引上げ方法に関し、特にHMCZシリコン単結晶の成長軸方向での低酸素濃度化が実現できるシリコン単結晶引上げ方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図1は、従来のHMCZ装置の概略を示す。
【0003】
図1において、横型磁場印加装置1が炉体2の外周に配置されている。黒鉛製ルツボ3が炉体2内に設けられていて、その中に石英ルツボ4が保持されている。黒鉛製ヒーター5が石英ルツボ4内に充填されたポリシリコンを溶融して、シリコン融液6となる。そのシリコン融液6に水平磁場を印加しながら、シリコン単結晶7を引上げる。このとき、シリコン融液6の上方には輻射シールド8が設置される。輻射シールド8は輻射シールド支持筒9により保持される。また、熱源である黒鉛製ヒーター5を囲むように黒鉛製内部保温筒10が配置され、その黒鉛製内部保温筒10の外側には高断熱性保温筒11が配置されている。さらに、高断熱性保温筒11の上面には上部保温板12が配置されている。黒鉛製ルツボ3の下方には、その黒鉛製ルツボ3を保持する黒鉛製シャフト13と黒鉛製ルツボ受皿14が配置され、最下部には下部受皿15が配置される。
【0004】
図2に示すように、左右のコイル1において発生した磁場分布では、コイル中心軸付近に比較的強い磁束密度(コイル中心軸の磁束密度と同程度のもの)の領域が、図2の斜線のところに形成される。
【0005】
このようなHMCZ装置によるHMCZシリコン単結晶の引上げにおいては、シリコン融液に水平磁場が印加され、融液の熱対流が抑制されるため、HMCZシリコン単結晶の低酸素濃度化に効果がある。さらに、炉体2の外部から印加される水平磁場の磁束密度が大きい程、融液の熱対流の抑制効果が大きくなるため、酸素濃度は、さらに低くなる。
【0006】
一方、シリコン融液に磁場を印加しない無磁界引上げ装置(CZ装置)によってCZシリコン単結晶を引上げる場合には、不活性ガス流量および炉内圧力の増減による調節でCZシリコン単結晶の酸素濃度を制御することができる。不活性ガス流量(単位[リットル/min])を炉内圧力(単位[Torr])で除した値を比流速と定義したとき、この比流速が大きいと酸素濃度は低くなり、比流速が小さいと酸素濃度は高くなる。
【0007】
ところで、HMCZ装置で引上げたHMCZシリコン単結晶は、中性子照射による不純物ドープ用原料として利用されている。中性子照射後は、照射による結晶格子配列の損傷を回復させるために熱処理を施すが、このとき、ライフタイムの低下を誘発することが知られている。
【0008】
特許第2635450号では、中性子照射を行ったHMCZシリコン単結晶において、損傷回復熱処理後のライフタイムの低下を防止するために、酸素濃度を制限している。たとえば、重水炉照射の場合、0.90×1018[atoms/cm3](JEIDA)(1.44×1018[atoms/cm3](old ASTM))以下と定めている。軽水炉照射の場合は、0.50×1018[atoms/cm3](JEIDA)(0.80×1018[atoms/cm3](old ASTM))以下と定めている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
HMCZ装置を使用して、中性子照射用のHMCZシリコン単結晶の酸素濃度を低くするために、磁束密度を水平磁場印加装置の最大値に調節し、さらに比流速を大きくしたが、所望の低酸素濃度を得ることができなかった。
【0010】
たとえば、図3に示す米国特許第4565671号公報に記載の水平磁場印加装置では、図3に示すように、磁場の中心と融液の液面を一致させる構成が示されている。この構成では、磁場中心付近に形成される強磁場領域(コイル中心軸磁束密度と同程度の領域)が下半分しか有効に活用されないことを、本発明者らは究明した。
【0011】
また、図4に示す特開平9−188590号公報に記載の水平磁場印加装置においては、図4に示すように、磁場中心がシリコン融液の最下部付近に調整されている。この構成においても、強磁場領域が上半分しか活用されず、それは、MHCZシリコン単結晶の低酸素濃度化には極めて不利であることを、本発明者らは究明した。
【0012】
本発明は、HMCZシリコン単結晶の低酸素濃度化を実現することができるシリコン単結晶引上方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願の請求項1に係る発明は、ヒーターで石英ルツボに充填されたポリシリコンを溶融して、シリコン融液を作り、そのシリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引上げる方法において、不活性ガス流量(単位[リットル/min])を炉内圧力(単位torr)で除した値を比流速(単位[リットル/min]/torr)と定義し、
この比流速を1.0以下に制御し、かつ、シリコン融液の液面の変動に合わせて、シリコン融液の深さ方向でみて、つねに水平磁場の中心シリコン融液の中心から液面までの間に維持され、シリコン単結晶の成長軸方向の酸素濃度が最も低くなるように制御されることを特徴とするシリコン単結晶引上方法である。
【0014】
シリコン融液の液面の移動(たとえば降下)に合わせて水平磁場の中心を移動(降下)させると、より正確に低酸素濃度化が実現できる。
【0015】
また、比流速を1以下と小さくすると、HMCZシリコン単結晶の酸素濃度を低くすることができる。これに対し、シリコン融液に磁場を印加しない無磁界引上げ装置(CZ装置)におけるCZシリコン単結晶引上では、比流速を大きくすると、酸素濃度が低くなる。本発明による比流速と酸素濃度の関係は、シリコン融液に磁場を印加しない無磁界引上げ装置における関係とは正反対の結果になるのである。
【0016】
本発明は、好ましくは、引き上げられつつあるシリコン単結晶の成長軸方向の酸素濃度分布に応じて、比流速1.0以下の範囲内で、結晶長変化率を調整する。
【0017】
HMCZシリコン単結晶の成長軸方向の酸素濃度分布に対して、比流速を1.0以下の範囲にして、結晶長変化率を調整すると、引上げられるHMCZシリコン単結晶のすべてにおいて、所望の低酸素濃度をより確実に実現できる。
【0018】
本発明は、シリコン融液の深さ方向でみて、水平磁場の中心が、融液の中心から液面までの間の最も酸素濃度が低い位置に調節される。
【0019】
シリコン融液の深さ方向(垂直方向)でみて、磁場中心(コイル中心軸)を融液の中心より上側半分の区間の最適位置に調節すると、融液中心より下側半分の区間に磁場中心を調整するよりも、MHCZシリコン単結晶の低酸素濃度効果が大幅に向上することを、本発明者らは新たな知見として見出した。この方法により、磁場中心付近に形成される強磁場領域の全体が有効に活用できる。その結果、融液の熱対流が効果的に抑制される。
【0020】
シリコン融液の中心とは、原則として、石英ルツボ内で溶融したシリコン融液の液面からその深さ方向に向かって石英ルツボ内の融液最下部までの距離の半分の深さの位置を示す。
【0021】
【実施例】
図5は、本発明の実施例を示す。
【0022】
図5において、横型磁場印加装置1が炉体2の外周に上下方向に移動可能に配置されており、そのための駆動手段や制御手段は図示していない。
【0023】
黒鉛製ルツボ3が炉体2内に設けられている。その黒鉛製ルツボ3の中に石英ルツボ4が保持されている。黒鉛製ヒーター5によって石英ルツボ4が加熱されて、石英ルツボ4内に充填されたポリシリコンが溶融して、シリコン融液6となる。
【0024】
横型磁場印加装置1によってシリコン融液6に水平磁場を印加しながら、シリコン単結晶7を引上げる。このとき、シリコン融液6の上方には輻射シールド8が設置される。輻射シールド8は輻射シールド支持筒9により保持される。
【0025】
また、熱源である黒鉛製ヒーター5を囲むように黒鉛製内部保温筒10が配置され、その黒鉛製内部保温筒10の外側には高断熱性保温筒11が配置されている。さらに、高断熱性保温筒11の上面には上部保温板12が配置されている。黒鉛製ルツボ3の下方には、その黒鉛製ルツボ3を保持する黒鉛製シャフト13と、その上に黒鉛製ルツボ受皿14が配置されている。最下部には下部受皿15が配置される。
【0026】
横型磁場印加装置1のコイル1において発生した磁場分布では、コイル中心軸付近に比較的強い磁束密度(コイル中心軸の磁束密度と同程度)の領域が形成される。このようにシリコン融液に水平磁場が印加されると、融液の熱対流が抑制される。その結果、低酸素濃度化がはかれる。
【0027】
図5のHMCZ装置において、5インチ(100)方位のHMCZシリコン単結晶の引上げを行い、所望の低酸素濃度が得られるか否かを確認した。
【0028】
各実施例1〜3において、実施形態は18インチホットゾーン、ポリシリコン60kgチャージ、磁場中心3000ガウス、ルツボ回転0.1rpm、シード回転13rpmであった。
【0029】
図5に示すように、融液表面から垂直方向(融液深さ方向)に融液最下部までの距離(融液深さ)をDとする。
【0030】
また、所望の酸素濃度は0.6×1018[atoms/cm3](old A STM)以下とする。
【0031】
実施例1
融液の液面が変動したとき、それに合わせて、つねに磁場中心(コイル中心軸)が融液の液面から垂直方向(融液深さ方向)にみてD/4の位置にくるように調節し、かつ、HMCZシリコン単結晶の引上当初から引上完了までの比流速を1.0として実施した。つまり、比流速は、(50リットル/min)/(50torr)=1.0であった。この場合の酸素濃度を図7に示す。
【0032】
実施例1においては、図7からもわかるように、得られたHMCZシリコン単結晶の尾部側で所望の酸素濃度を超える結果となった。
【0033】
実施例2
磁場中心を実施例1と同様に融液の液面から垂直方向(融液深さ方向)でみてD/4の位置にくるように調節し、引上当初から引上完了にかけて、比流速を1.0から0.6まで任意に変化させて実施した。たとえば、比流速は、(50リットル/min)/(80torr)=0.6であった。この場合の酸素濃度を同じく図7に示す。
【0034】
実施例2では、得られたHMCZシリコン単結晶のすべてが所望の酸素濃度となった。
【0035】
実施例3
磁場中心を実施例1〜2と同様に制御し、引上当初から引上完了にかけて、比流速を1.0から0.375まで任意に変化させて実施した。たとえば、比流速は、(30リットル/min)/(80torr)=0.375であった。この場合の酸素濃度を同じく図7に示す。
【0036】
実施例3においては、得られたHMCZシリコン単結晶のすべてが所望の酸素濃度となったばかりではなく、実施例2と比較して、さらに低い酸素濃度が得られた。
【0037】
比較例1
比較例1では、磁場中心を実施例1と同様に制御し、引上当初から引上完了にかけて、比流速を1.6として実施した。つまり、比流速は、(80リットル/min)/(50torr)=1.6であった。この場合の酸素濃度を同じく図7に示す。
【0038】
比較例1は、得られたHMCZシリコン単結晶の尾部側で所望の酸素濃度を大きく超える結果となった。この比較例1により、比流速が1.0を超えると低酸素濃度化には不利であることが検証された。
【0039】
比較例2
比較例2では、引上当初から引上完了にかけて、比流速を1.0とし、磁場中心を融液の液面と一致するように調節して実施した(図3)。この場合の酸素濃度を同じく図7に示す。
【0040】
比較例2は、実施例1と比較して、酸素濃度が高くなった。この比較例2によれば、図3で示すように、コイル中心軸付近に形成される強磁場領域(とくに上半分)が有効に活用されていなければ、低酸素濃度化には不利であることが検証された。
【0041】
比較例3
比較例3でも、引上当初から引上完了にかけて比流速を1.0とし、磁場中心を融液の最下部と一致するように調節して実施した(図4)。この場合の酸素濃度を同じく図7に示す。
【0042】
比較例3は、実施例1と比較して、酸素濃度が極めて高くなった。この比較例3によれば、図4で示すように、コイル中心軸付近に形成される強磁場領域(とくに下半分)が有効に活用されず、さらに磁場中心が融液の深さ方向の上側半分の区間に調節されていなければ、低酸素濃度化には極めて不利であることが検証された。
【0043】
前述のHMCZ装置によるシリコン単結晶の引上げにおいて、(従来は明らかになっていなかった)比流速と酸素濃度との関係を検証し、さらには、融液に対する磁場中心位置と酸素濃度との関係を明確にすることに成功した。これにより、HMCZシリコン単結晶の低酸素濃度化に極めて有効な製造条件を究明することができた。
【0044】
まず、不活性ガス流量(単位[リットル/min])を炉内圧力(単位[Torr])で除した値を比流速と定義し、この比流速を1.0以下に制御することが、極めて有効な製造条件である。
【0045】
これに加えて、垂直方向(シリコン融液深さ方向)でみて、磁場中心(コイル中心軸)を融液中心より上側半分の区間内の最適位置に調節することが重要である。これにより、HMCZシリコン単結晶の酸素濃度を低く抑えることがより効果的となる。特に、中性子照射用としては、照射後の結晶格子の損傷を回復させるために実施する熱処理後のライフタイム低下を防止する効果が顕著となる。
【0046】
図8は、本発明の変形例を示す。
【0047】
図8のHMCZ装置においては、図5のHMCZ装置に加えて、シリコン融液6の上方に設置された輻射シールド8を支える輻射シールド支持筒9の外側に高断熱性上部保温筒16を設置している。
【0048】
こうすることで、黒鉛製ヒーター5の消費電力削減を図り、その結果として、シリコン融液と石英ルツボの反応が緩和される。そのため、シリコン融液の酸素濃度が低くなる効果がより顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のHMCZ装置を示す説明図。
【図2】HMCZ装置における強磁場領域を示す説明図。
【図3】従来の強磁場領域と融液の関係の一例を示す。
【図4】従来の強磁場領域と融液の関係の他の例を示す。
【図5】本発明によるHMCZ装置の実施形態の一例を示す説明図。
【図6】従来例と本発明の実施例に関する磁場中心と酸素濃度の関係を示す説明図。
【図7】本発明の実施例および比較例の酸素濃度結果を示すグラフ。
【図8】本発明の変形例を示す。
【符号の説明】
1 横型磁場印加装置
2 炉体
3 黒鉛製ルツボ
4 石英ルツボ
5 黒鉛製ヒーター
6 シリコン融液
7 シリコン単結晶
8 輻射シールド
9 輻射シールド支持筒
10 黒鉛製内部保温筒
11 高断熱性保温筒
12 上部保温板
13 黒鉛製シャフト
14 黒鉛製ルツボ受皿
15 下部受皿
16 高断熱性上部保温筒

Claims (1)

  1. ヒーターで石英ルツボに充填されたポリシリコンを溶融して、シリコン融液を作り、そのシリコン融液に水平磁場を印加しながらシリコン単結晶を引上げる方法において、不活性ガス流量(単位[リットル/min])を炉内圧力(単位torr)で除した値を比流速(単位[リットル/min]/torr)と定義し、
    この比流速を1.0以下に制御し、かつ、シリコン融液の液面の変動に合わせて、シリコン融液の深さ方向でみて、つねに水平磁場の中心シリコン融液の中心から液面までの間に維持され、シリコン単結晶の成長軸方向の酸素濃度が最も低くなるように制御されることを特徴とするシリコン単結晶引上方法。
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