JP4153087B2 - スライム防止方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スライム防止剤及びスライム防止方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、工業用冷却水、紙・パルプ工業における抄紙工程水、ペイント、防汚塗料、紙用塗工液、ラテックス、糊剤などのスライムの生成を効果的に防止することができる、薬剤添加量が少なく、薬剤の濃度管理が容易なスライム防止剤及びスライム防止方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
工業用冷却水や紙・パルプ工業における抄紙工程水などには、微生物の作用により粘状物質が発生し、管壁や器壁に付着してスライムとなる。壁面に付着したスライムが脱落すると、抄紙工程においては紙切れやちりなどの原因となる。
従来より、用水のスライム発生防止は、微生物の増殖抑制ないし殺菌という観点から検討されてきた。しかし、微生物の増殖抑制又は殺菌という観点からスライム防止を検討すると、添加する薬剤の濃度は必然的に高くなり、公害の発生や環境に及ぼす悪影響が懸念され、また、薬剤費のためにスライム防止のコストが高くなるという問題が生ずる。用水にヨウ素を注入することにより、スライムを防止する試みがなされたが、スライム防止効果は不十分であった。用水にヨウ化物イオンを添加し、さらに電解して次亜ヨウ素酸イオンを生成させると、十分なスライム防止効果が得られるが、装置が大規模になってコスト高になる。
また、用水中のスライム防止剤の濃度をスライム防止剤の添加量のみで管理すると、添加量が不十分な場合を考慮して常に過剰量を添加する必要があり、処理コストが高くなって経済的に不利である。用水中のスライム防止剤の濃度を測定して、スライム防止剤を適切に添加することが望ましいが、そのためには、現場で迅速かつ簡便に行うことができ、しかも正確な値が得られる分析方法が必要である。
このために、低濃度の薬剤の添加によりスライム防止効果を発揮し、環境に及ぼす影響が小さく、コストを低く抑えることができ、しかも現場における水中の濃度の測定と管理が容易なスライム防止剤及びスライム防止方法が求められていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、殺菌効果を有しない低濃度領域での薬剤の使用により、効果的にスライムの発生を防止することができるスライム防止剤及びスライム防止方法を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、過ヨウ素酸及びその塩が殺菌効果を有しない低濃度領域においてもスライム防止効果を発揮することを見いだし、さらに水中の過ヨウ素酸及びその塩の濃度をN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いる比色法により簡便かつ正確に定量し得ることを見いだして、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)過ヨウ素酸及び/又はその塩を、水中に20mg/リットル以下の濃度に添加し、微生物に対し殺菌作用を示すことなくスライムの付着を抑制することを特徴とするスライム防止方法、
(2)N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いて、比色法により過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度を測定する第(1)項記載のスライム防止方法、及び、
(3)過ヨウ素酸の塩がアンモニア塩又はアルカリ金属塩である第 ( 1 ) 項記載のスライム防止方法。
を提供するものである。
さらに、本発明の好ましい態様として、
(4)比色法が、リン酸塩緩衝液にN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩と硫酸ナトリウムを溶解した液に、試験水及びヨウ化カリウムを添加し、510nm付近の吸収極大における吸光度を測定して、検量線から過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度を求める方法である第(2)項記載のスライム防止方法、
を挙げることができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のスライム防止剤は、過ヨウ素酸及び/又はその塩を含有する。使用する過ヨウ素酸に特に制限はなく、メタ過ヨウ素酸HIO4及びパラ過ヨウ素酸H5IO6のいずれをも用いることができる。使用する過ヨウ素酸塩に特に制限はなく、例えば、メタ過ヨウ素酸アンモニウム、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、メタ過ヨウ素酸カリウム、メタ過ヨウ素酸セシウム、パラ過ヨウ素酸三水素二アンモニウム、パラ過ヨウ素酸二水素三リチウム、パラ過ヨウ素酸三水素二リチウム、パラ過ヨウ素酸ナトリウム、パラ過ヨウ素酸二水素三ナトリウム、パラ過ヨウ素酸三水素二ナトリウム、パラ過ヨウ素酸三水素二カリウム、二メソ過ヨウ素酸水素三カリウム、過ヨウ素酸銅錯塩などを挙げることができる。
本発明のスライム防止方法においては、過ヨウ素酸及び/又はその塩を水中に20mg/リットル以下の濃度、より好ましくは0.5〜10mg/リットルの濃度に添加する。水中の過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度は20mg/リットルであればスライム防止のためには十分であり、20mg/リットルを超える過ヨウ素酸及び/又はその塩を添加しても水中の菌数は減少するが、スライム防止効果には変化はない。過ヨウ素酸及び/又はその塩の添加下限値は、スライム防止を行う系によって相違するので、適用する系において実験によって確かめることが好ましい。
【0006】
本発明方法において、過ヨウ素酸及び/又はその塩を水中に添加する方法に特に制限はなく、例えば、過ヨウ素酸及び/又はその塩をカオリン、クレー、ベントナイト、CMCなどの固体希釈剤と混合した粉剤として添加することができ、適当な溶剤に溶解した溶液として添加することもでき、水溶液として添加することもでき、あるいは、固体希釈剤、溶剤、界面活性剤などを用いることなく有効成分である過ヨウ素酸及び/又はその塩のみからなる製剤として添加することもできる。過ヨウ素酸及び/又はその塩を溶剤などを使用することなく水に溶解する場合は、処理コストを抑えることができる。
本発明方法において、水中の過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度は、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いる比色法により、迅速、簡便に測定することができる。例えば、0.2Mリン酸二水素カリウム水溶液50mlと0.2M水酸化ナトリウム水溶液15.2mlの割合で混合してpH6.5に調整した液100mlに1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸(CyDTA)0.1gを溶かしたリン酸塩緩衝液0.5mlに、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩0.1gを無水硫酸ナトリウム9.9gと混和した粉末0.2gを加えて溶解した液に、試験水10mlとヨウ化カリウム約0.1gを加えて溶解し、2分間放置したのち、510nm付近の吸収極大における吸光度を測定し、検量線から水中の過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度を求めることができる。
【0007】
本発明方法において、過ヨウ素酸及び/又はその塩の添加量はスライムを防止する対象により異なるが、工業用の冷却水系や製紙工程のプロセス水系のスライムを防止するために添加する場合、通常は過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度として0.5〜20mg/リットル程度である。過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度が0.5〜20mg/リットルであると、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いる比色法においては、呈色反応により現れる赤色を目視で確認することができ、容易に濃度を測定することができる。
本発明方法において、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いる比色法には、市販の簡易キット、例えば、Hach CompanyからHachキットとして販売されている簡易キットを用いることができる。Hachキットは、本来は水中の残留塩素の測定を目的としたものであり、リン酸緩衝液、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩と無水硫酸ナトリウムとヨウ化カリウムを混合した粉末試薬、所定量の液体を入れて粉末試薬を加える容器であるセル及び残留塩素計と表示されている吸光光度計からなる。mg/リットル単位で示されるHachキットの読みは、水中の酸化性物質の量に比例するので、絶対値としては過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度とは一致しないが、Hachキットの読みと過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度の間には良好な直線関係があり、市販のHachキットを用いて迅速、簡便かつ正確に水中の過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度を求めることができる。
本発明方法によれば、スライムの原因となる微生物の増殖抑制又は殺菌をすることがなくても、微生物により生産される粘状物質が装置の壁面などに付着することがなく、スライム障害の発生を防止することができる。
【0008】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
実施例1
PY培地(5mg−BOD/リットル)で培養した混合菌培養液に、メタ過ヨウ素酸カリウムを0mg/リットル、1mg/リットル、2mg/リットル、10mg/リットル及び20mg/リットルになるよう添加しながら、30℃において、内径3mmのシリコーンチューブに通水速度5.5cm/sで通水し、3日後のスライム付着厚さ及び生残菌数を測定した。スライム付着厚さは、シリコーンチューブ30cm当たりの内面に付着したスライムをかき取り、遠心分離して湿容量を測定し、チューブ表面積で除すことにより求めた。
スライム付着厚さは、メタ過ヨウ素酸カリウムの濃度が0mg/リットルのとき160μm、1mg/リットルのとき50μm、2mg/リットルのとき25μmであり、メタ過ヨウ素酸カリウムの濃度が10mg/リットルのとき及び20mg/リットルのときはスライムは発生していなかった。また、生残菌数は、すべて1.0×105CFU/mlであった。
実施例2
メタ過ヨウ素酸カリウムの代わりに、メタ過ヨウ素酸ナトリウムを用いて、実施例1と同じ試験を行った。
スライム付着厚さは、メタ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度が0mg/リットルのとき160μm、1mg/リットルのとき50μm、2mg/リットルのとき30μmであり、メタ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度が10mg/リットルのとき及び20mg/リットルのときはスライムは発生していなかった。また、生残菌数は、すべて1.0×105CFU/mlであった。
実施例3
メタ過ヨウ素酸カリウムの代わりに、パラ過ヨウ素酸ナトリウムを用いて、実施例1と同じ試験を行った。
スライム付着厚さは、パラ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度が0mg/リットルのとき160μm、1mg/リットルのとき60μm、2mg/リットルのとき20μmであり、パラ過ヨウ素酸ナトリウムの濃度が10mg/リットルのとき及び20mg/リットルのときはスライムは発生していなかった。また、生残菌数は、すべて1.0×105CFU/mlであった。
比較例1
メタ過ヨウ素酸カリウムの代わりに、ヨウ素を用いて、実施例1と同じ試験を行った。
スライム付着厚さは、ヨウ素の濃度が0mg/リットルのとき160μm、1mg/リットルのとき150μm、2mg/リットルのとき140μm、10mg/リットルのとき140μm、20mg/リットルのとき130μmであった。また、生残菌数は、すべて1.0×105CFU/mlであった。
実施例1〜3及び比較例1の結果を、第1表に示す。
【0009】
【表1】
【0010】
第1表の結果から、過ヨウ素酸塩の濃度が1〜20mg/リットルの範囲では、菌の増殖抑制又は殺菌効果は全く認められないにもかかわらず、スライムの発生量が減少し、過ヨウ素酸塩の濃度が10mg/リットルになると、スライムは全く発生せず、用水に過ヨウ素酸塩を添加することにより、殺菌効果のない低濃度においてもスライムの発生が効果的に防止されることが分かる。
【0011】
【発明の効果】
本発明方法によれば、殺菌効果を示さないような低濃度の過ヨウ素酸及び/又はその塩の添加により、効果的にスライムの発生を防止することができる。
Claims (3)
- 過ヨウ素酸及び/又はその塩を、水中に20mg/リットル以下の濃度に添加し、微生物に対し殺菌作用を示すことなくスライムの付着を抑制することを特徴とするスライム防止方法。
- N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン硫酸塩を用いて、比色法により過ヨウ素酸及び/又はその塩の濃度を測定する請求項1記載のスライム防止方法。
- 過ヨウ素酸の塩がアンモニア塩又はアルカリ金属塩である請求項1記載のスライム防止方法。
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