上述したようなターボファン方式とターボシャフト方式において、推進装置として用いられるファン(若しくはプロペラ)の駆動は、ガスタービン機関の軸出力を利用する方式であるため、基本的にガスタービン機関の回転軸とファンを機械的に接続する必要がある。そのため、ファン(若しくはプロペラ)の配置について自由度が少ないという欠点がある。
これに対して、ガスタービン機関のコンプレッサあるいはガスタービン機関の回転軸により駆動されるコンプレッサにて圧縮された空気を利用して推力を発生するファン(若しくはプロペラ)を推進装置として用いると、ガスタービン機関と当該ファン(若しくはプロペラ)とは圧縮空気配管等で接続するのみであるので、ファン(若しくはプロペラ)の配置の自由度を増すことが可能になる。
但し、吸入した空気を圧縮して排出するコンプレッサにおいては、コンプレッサの出口の圧力が入口の圧力に対して過剰に高くなると、コンプレッサのブレード部における空気の剥離、逆流現象である、いわゆるサージングに至るおそれがある。ガスタービン機関とファン(若しくはプロペラ)とを機械的に接続する構成においては、機関出力を軸出力として取り出すため、サージングに至ることはないが、上述したようにコンプレッサから排出される圧縮空気を利用して推力を発生させる構成においては、使用される圧縮空気流量が減少するとコンプレッサの出口圧力が高くなり、サージングに至る可能性がある。そして、コンプレッサの損傷に至るおそれがある。
本発明は、上記した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、推
力発生機の推力発生用にコンプレッサにて圧縮された空気を利用する場合においても、コンプレッサがサージングに至るのを防止することができるとともに、最適流量の圧縮空気を推力発生機へ供給できるガスタービン機関の制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係るガスタービン機関の制御装置にあっては、ガスタービン機関の回転軸により駆動され吸入した空気を圧縮するコンプレッサと、当該コンプレッサから排出される圧縮空気が流通する抽気流路と、当該抽気流路を流通する圧縮空気を利用して推力を発生する推力発生手段と、前記抽気流路を流通する圧縮空気を前記推力発生手段に流入させる推力用空気流路と、前記抽気流路を流通する圧縮空気を前記推力発生手段に流入させずに大気に排出させる排出用空気流路と、前記抽気流路を流通する圧縮空気を、前記推力用空気流路を流通する推力用空気と前記排出用空気流路を流通する排出用空気とに分配する分配手段と、前記推力発生手段が所望の推力を発生するのに必要となる圧縮空気の量に基づいて、前記推力用空気の量と前記排出用空気の量が所定の割合となるように前記分配手段を制御する分配制御手段と、を備えることを特徴とする。
推力発生手段はガスタービン機関の回転軸により駆動されるコンプレッサにて圧縮された空気を利用して推力を発生するため、ガスタービン機関と推力発生手段とを抽気流路等の空気流路で接続することができる。それゆえ、ガスタービン機関と推力発生手段とを機械的に接続する場合と比較すると、推力発生手段の配置を自由に設定することができる。また、推力発生手段の数、大きさ等をも、ガスタービン機関が搭載される飛行体等の大きさ等に応じて自由に設定することができるので、このことも推力発生手段の配置の自由度を大きくさせる要因となる。
但し、吸入した空気を圧縮して排出するコンプレッサにおいては、排出した空気の使用量が減少すること等により、コンプレッサの出口の圧力が入口の圧力に対して過剰に高くなると、コンプレッサのブレード部における空気の剥離、逆流現象である、いわゆるサージングに至るおそれがある。そのため、コンプレッサにて圧縮した空気を推力発生手段に利用するシステムにおいては、推力発生手段の使用空気流量が減少した場合にサージングに至らないようにすることが重要である。
そこで、本発明に係るガスタービン機関の制御装置においては、推力用空気流路と、排出用空気流路と、抽気流路を流通する圧縮空気を推力用空気と排出用空気とに分配する分配手段と、推力発生手段が所望の推力を発生するのに必要となる圧縮空気の量に基づいて推力用空気の量と前記排出用空気の量が所定の割合となるように分配手段を制御する分配制御手段とを備えるようにした。
そして、例えば、推力発生手段にて発生させるべき推力が小さいことにより推力発生手段に多くの圧縮空気を供給する必要のない場合は、分配制御手段が、推力用空気の量を減らして排出用空気の量を増やすように分配手段を制御する。こうすることにより、推力発生手段における圧縮空気の使用量が減少した場合においても減少した分を大気に排出させるようにするので、一定量の圧縮空気をコンプレッサから取り出すことができ、サージングに至ることを防止することができる。
また、例えば、推力発生手段にて発生させるべき推力が大きいことにより推力発生手段に多くの圧縮空気を供給する必要のある場合は、分配制御手段が、推力用空気の量を増やして排出用空気の量を減らすように分配手段を制御する。こうすることにより、推力発生手段に、最適流量の圧縮空気を供給することができる。
ここで、ガスタービン機関の始動からフライト時の機関回転数に到達するまでの所要時
間が短いほど、緊急を要するフライトに適するものとなるが、ガスタービン機関の機関回転数を早期に上昇させるには、ガスタービン機関の負荷を小さくすることが重要となる。そのためには、コンプレッサからの圧縮空気を可能な限り多く取り出し、コンプレッサの仕事量を少なくすると良い。
そこで、本発明に係るガスタービン機関の制御装置にあっては、前記抽気流路を流通する圧縮空気を前記分配手段の上流で大気に排出させる上流側排出流路と、当該上流側排出流路を開閉する排出流路開閉手段と、前記ガスタービン機関の運転状態に基づいて前記排出流路開閉手段の開閉を制御する排出流路開閉制御手段と、を更に備えることが好適である。
そして、ガスタービン機関が機関回転数を上昇させている運転状態である場合には、排出流路開閉制御手段が、上流側排出流路を開けるように排出流路開閉手段を制御することで、コンプレッサにて圧縮された空気が、排出用空気流路のみならず上流側排出流路からも大気に排出されるので、コンプレッサの仕事量が少なくなることによりガスタービン機関の負荷が小さくなり、早期に目標回転数まで上昇させることができる。
一方、ガスタービン機関が、フライトに必要な圧縮空気を推力発生手段に供給可能な機関回転数での運転状態である場合には、排出流路開閉制御手段が、上流側排出流路を閉じるように排出流路開閉手段を制御することで、コンプレッサにて圧縮された空気を全て分配手段の方へ供給することができるので、最適流量の圧縮空気を推力発生手段に供給できる。
また、ガスタービン機関がアイドリング運転状態である場合には、排出流路開閉制御手段が、上流側排出流路を開けるように排出流路開閉手段を制御することで、上述したようにガスタービン機関の負荷が小さくなるので、燃費が向上する。
上述したように、ガスタービン機関の機関回転数を早期に上昇させるには、コンプレッサの仕事量を少なくしてガスタービン機関の負荷を小さくすることが重要となる。そのためには、コンプレッサに流入する空気流量を少なくしてコンプレッサの仕事量を少なくする方が良い。
そこで、本発明に係るガスタービン機関の制御装置にあっては、前記コンプレッサに吸入される空気が流通する吸気流路を開閉する吸気流路開閉手段と、前記ガスタービン機関の運転状態に基づいて前記吸気流路開閉手段の開閉を制御する吸気流路開閉制御手段と、を更に備えることが好適である。
そして、ガスタービン機関が機関回転数を上昇させている運転状態である場合には、吸気流路開閉制御手段が、吸気流路を閉じるように吸気流路開閉手段を制御することで、コンプレッサに流入する空気が減少するので、コンプレッサの仕事量が少なくなる。その結果、ガスタービン機関の負荷が小さくなり、早期に目標回転数まで上昇させることができる。
一方、ガスタービン機関が、フライトに必要な圧縮空気を推力発生手段に供給可能な機関回転数での運転状態である場合には、吸気流路開閉制御手段が、吸気流路を開けるように吸気流路開閉手段を制御することで、コンプレッサに十分な空気を流入させて圧縮させることで、最適流量の圧縮空気を推力発生手段に供給できる。
また、ガスタービン機関がアイドリング運転状態である場合には、吸気流路開閉制御手段が、吸気流路を閉じるように吸気流路開閉手段を制御することで、上述したようにガス
タービン機関の負荷が小さくなるので、燃費を向上させることができる。
以上説明したように、本発明に係るガスタービン機関の制御装置によれば、推力発生手段の推力発生用にコンプレッサにて圧縮された空気を利用する場合においても、コンプレッサがサージングに至るのを防止することができるとともに、最適流量の圧縮空気を推力発生手段へ供給することができる。
それゆえ、ガスタービン機関と、コンプレッサにて圧縮された空気を利用して駆動する推力発生手段とを抽気流路のみで接続させることができるので、例えば飛行体において、推力発生手段の配置に自由度をもたせることができる。
さらに、ガスタービン機関が機関回転数を上昇させている運転状態時に、コンプレッサの仕事量を少なくしてガスタービン機関の負荷を小さくすることができるので、早期に機関回転数を上昇させることができる。また、ガスタービン機関のアイドリング運転状態時にも、コンプレッサの仕事量を少なくしてガスタービン機関の負荷を小さくすることができるので、アイドリング運転状態時における燃費を向上させることができる。
図1は、実施例1に係るガスタービン機関の制御装置を適用する飛行体の概略構成を示す図である。
ガスタービン機関1は、第1コンプレッサ2、燃焼器3、タービン4を備えている。そして、第1コンプレッサ2に吸入された空気(吸気)は第1コンプレッサ2にて圧縮され、燃焼器3において、燃料供給アクチュエータ(図示省略)により供給される燃料と混合されて燃焼し、その燃焼ガスは第1コンプレッサ2と回転軸5で直結されたタービン4を回転させた後に、排気ガスとなって大気に排出される。
このガスタービン機関1には第2コンプレッサ6が回転軸5で直結されており、タービン4の回転数と同じ回転数で第2コンプレッサ6が回転する。そして、第2コンプレッサ6が回転することにより吸入した空気を圧縮し、第2コンプレッサ6出口部に接続された抽気流路7へ排出する。抽気流路7には、分配手段たる流量制御弁8を介して、n本の推力用空気流路9と、1本の排出用空気流路10が接続されている。そして、n本の推力用空気流路9各々には、推力発生手段としての推力発生用ファン11が連結されている。一方、排出用空気流路10は、その下流において大気に開放されている。
推力発生用ファン11の構成の概略を示したのが図2であり、推力発生用ファン11は、主にタービン21、減速機22、ファン23とから構成されている。そして、推力用空気流路9から流入した圧縮空気が膨張する際のエネルギーによりタービン21が回転駆動され、減速機22により減速させられてファン23が回転し、ファン23の回転により推力が発生する。
次に、流量制御弁8について説明する。図3に流量制御弁8の概略構成を示している。図3に示すように、流量制御弁8は、流路Port1〜Port3を有しており、Por
t1は抽気流路7と、Port2は推力用空気流路9と、Port3は排出用空気流路10と接続されている。そして、弁体31が取り付けられた駆動シャフト32が、後述するECUからの指令に基づき制御されるアクチュエータ33により駆動されることにより、弁体31がリフトするようになっている。
図3(a)に示したのが、弁体31のリフトが最大の状態である。かかる状態においては、Port1部からPort3部へ向かう流路は全て閉ざされ、Port1部からPort2部へ向かう流路は全開となっているので、抽気流路7と接続されたPort1から流入する第2コンプレッサ6からの圧縮空気は、全てPort2部へ向かい、推力用空気流路9を介して推力発生用ファン11へ流入する。
図3(b)に示したのが、弁体31が約半分リフトした状態である。かかる状態においては、Port1部からPort3部へ向かう流路は約半分開き、Port1部からPort2部へ向かう流路も約半分開いているので、Port1部から流入する第2コンプレッサ6からの圧縮空気は、Port2部及びPort3部両方へ向かう。そして、Port2部から流出する圧縮空気は推力用空気流路9を介して推力発生用ファン11へ流入し、Port3部から流出する圧縮空気は排出用空気流路10を介して大気に排出される。
図3(c)に示したのが、弁体31のリフトが最小の状態である。かかる状態においては、Port1部からPort2部へ向かう流路は全閉となっており、Port1部からPort3部へ向かう流路は全開となっているので、Port1部から流入する第2コンプレッサ6からの圧縮空気は、全てPort3部へ向かい、排出用空気流路10を介して大気に排出される。
このように、流量制御弁8は、抽気流路7を流通する第2コンプレッサ6からの圧縮空気を、推力用空気流路9を介して推力発生用ファン11に流入する推力用空気と排出用空気流路10を介して大気に排出される排出用空気とに分配する分配手段として機能する。
また、図1に示すように、ガスタービン機関1には回転軸5の回転速度を検出する回転角センサ12が設けられている。この回転角センサ12は、回転軸5近傍に配置され所定回転角度毎(例えば60度毎)にパルス信号を発生するものであり、このパルスは後述するECU13に入力され、ECU13は、一定時間毎にパルス信号の周波数から回転軸5の回転数(以下、「機関回転数」という。)Nを算出する。
以上述べたように構成されたガスタービン機関1を搭載した飛行体には、当該飛行体及びガスタービン機関1を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control
Unit)13が併設されている。このECU13は、CPU、ROM、RAM、バックア
ップRAMなどからなる算術論理演算回路である。
ECU13には、上述した回転角センサ12やスロットル開度センサ(図示省略)等の各種センサが電気配線を介して接続され、上記した各種センサの出力信号やフライト信号がECU13に入力されるようになっている。なお、フライト信号は、第2コンプレッサ6を、機体の飛行に必要な圧縮空気が得られる回転数で作動させることを目的として使用されるものである。
一方、ECU13には、流量制御弁8等が電気配線を介して接続され、ECU13が流量制御弁8等を制御することが可能になっている。例えば、ECU13は、スロットル開度信号で指示された空気流量を、推力発生用ファン11へ供給するように流量制御弁8の弁体31のリフト量を制御する。
また、ECU13は、スロットル開度センサからの出力値に基づいて予め設定されたマップにしたがってガスタービン機関1の運転状態を制御する。本実施例では、基本的にスロットル開度信号レベルが大きいほどガスタービン機関1は高負荷状態で運転される。
上述したように、本実施例に係る飛行体は、推進装置として推力発生用ファン11を用いており、ガスタービン機関1の回転軸5に直結された第2コンプレッサ6にて発生する圧縮空気を駆動源として使用している。かかる構成とすることにより、ガスタービン機関1と推進装置たる推力発生用ファン11との接続は、圧縮空気が流通する抽気流路7と推力用空気流路9だけであるので、従来技術に係る飛行体のようにガスタービン機関と推進装置とを機械的に接続する必要がない。
そのため、飛行体におけるガスタービン機関の搭載状態に対して、推進装置たる推力発生用ファン11の配置の自由度を増すことが可能となり、飛行体への搭載性が向上する。推力発生用ファン11の数や大きさも飛行体毎に任意に設定することができ、飛行体に応じて所望の推力を得るようにすることができると共に、このことも推力発生用ファン11の配置の自由度を増している。例えば、飛行体の底部等に、推力発生用ファン11の軸が地面に対して垂直となるように配置することで地面に対して垂直な推力を発生でき、飛行体の後部等に、推力発生用ファン11の軸が地面に対して水平となるように配置することで地面に対して水平な推力を発生できる。
しかしながら、このようにガスタービン機関の運転により発生する圧縮空気を推進装置に利用する場合には次のような問題が発生する。
図4に示したのが、コンプレッサの一般的な特性であり、本図に示すようにコンプレッサの特性は機関回転数N毎に実線で示すような特性として表すことができる。これは、コンプレッサの回転数Nを一定とした場合に、コンプレッサから取り出す空気流量Gaが多いと、コンプレッサの出口圧力P3は下がり、コンプレッサから取り出す空気流量Gaが少なくなると、出口圧力P3は上昇するような特性を持っていることを示している。なお、図3中、θは大気温度/標準大気温度であり、δは大気圧力P0/標準大気圧力を示す値である。
かかるコンプレッサの特性により、圧縮空気はガスタービン機関1の回転軸5に直結された第2コンプレッサ6により容易に作り出せるが、飛行準備段階あるいは飛行体を着陸させる場合等において推力発生用ファン11の圧縮空気使用量が減少した場合、第2コンプレッサ6の出口圧力P3が上昇してしまう。これは、従来技術のターボファンやターボシャフト方式では、機関出力を軸出力として取り出すのに対して、本実施例の構成では、第2コンプレッサ6にて圧縮した空気が使用されない場合、当該空気の行き場所がなくなるためである。
そして、第2コンプレッサ6の出口圧力P3が過剰に高くなると、第2コンプレッサ6のブレード(翼)部における空気の剥離、逆流現象であるサージングという現象に至り、第2コンプレッサ6の破損に至ってしまう。
なお、コンプレッサから取り出す空気流量Ga等毎にいかなる範囲にてサージングが発生するかを表す領域であるサージ領域を図4に示した。本図において、例えばN/√(θ)=80%は、定格回転数(N/√(θ)=100%)の80%の回転数であることを示す。
上述したように、コンプレッサによる圧縮空気を推進装置に利用するシステムにおいては、推進装置の使用空気流量が減少した場合にサージングに至らないようにすることが重
要である。
そのために、本実施例においては、上述した流量制御弁8を備えており、推力発生用ファン11の圧縮空気使用量が減少した場合には、つまり、推力発生用ファン11へ圧縮空気を供給する必要がない場合には、後述すように流量制御弁8の弁体31のリフト量を小さくするが、その際、一義的にPort3、排出用空気流路10を介して大気に排出される圧縮空気流量が増加するので、サージングに至ることを防止することができる。
具体的に、流量制御弁8をどのように制御するかについて以下に説明する。
上述のように構成された飛行体において、機体がフライトを行う場合には、推力発生用ファン11が十分な推力を発生するのに必要な圧縮空気を、推力発生用ファン11に流入させることが必要となる。そのため、飛行する前に行われる飛行準備段階においては、飛行に先立ち十分な圧縮空気を、推力発生用ファン11に供給できるような回転数でガスタービン機関1を運転する必要がある。
それゆえ、フライト信号が入力されると、ECU13は、第2コンプレッサ6から予め設定された圧縮空気流量(圧力)を得ることができるように、ガスタービン機関1の回転数を所定回転数まで上昇させる。
また、このような飛行準備段階においては、推力発生用ファン11にて推力を発生させる必要がないので、ECU13は、流量制御弁8の弁体31の位置を図3(c)の状態となるように制御する。その結果、第2コンプレッサ6からの圧縮空気は流量制御弁8のPort1部から流入し、Port3部を介して大気へ排出されることになる。一方、Port2部から推力発生用ファン11への空気の流出は無いため機体浮上のための推力は発生しなくなる。
また、このように、ECU13が、推力発生用ファン11にて推力を発生させる必要がない場合に流量制御弁8の弁体31の位置を図3(c)の状態となるように制御し、第2コンプレッサ6からの圧縮空気を全て大気に排出させることで、回転数に対して規定空気流量以上の圧縮空気を第2コンプレッサ6から取り出すことができるので、第2コンプレッサ6がサージングに至ることを防止することができる。なお、第2コンプレッサ6の回転数が定格回転数でもサージングに至らない空気流量を取り出すことができるように抽気通路7、流量制御弁8、排出用空気流路10の流路面積は形成されている。
一方、機体の飛行段階においては、機体を浮上させるために、流量制御弁8のPort1部からPort2部へ向かう流路を開放し、推力発生用ファン11の夕一ビン入口部へ圧縮空気を導く必要がある。
そのため、ECU13は、入力されるスロットル開度信号に基づき、流量制御弁8の弁体31のリフト量を制御し、所望の圧縮空気流量を推力発生用ファン11へ流入させるようにする。本実施例では、スロットル開度信号が大きくなるに連れ、流量制御弁8の弁体31のリフト量を大きくし、Port1部からPort2部へ流れる圧縮空気流量を増加させるようにする。これにより、スロットル開度信号が大きくなるに連れ、推力発生用ファン11のタービン21に供給される圧縮空気流量が増加し、ファン23の作用による推力の増加により機体が浮上することになる。
なお、ECU13は、入力されるスロットル開度信号と予め設定される制御マップに基づき、流量制御弁8の弁体31のリフト量を決定し、決定された弁体31のリフト量の信号をドライバー回路に出力する。そして、ドライバー回路ではリフト量の信号に応じたリ
フト量となるようにアクチュエータ33を介して弁体31のリフト量をフィードバック制御するようにする。
一般的には、弁体31のリフト量に対する流量制御弁8の流量特性は非線形の特性となるため、本実施例においては、ECU13において、予め設定された制御マップに基づき弁体31のリフト量が制御され、図5に示すような線形の流量特性が得られるようになっている。従って、基本的にスロットル開度信号が大きくなるほど推力発生用ファン11に流れる圧縮空気流量を増加させるように作動するために、機体を浮上させるための推力も大きくなる。
一方、機体の着陸の際には、推力発生用ファン11にて発生する推力を減少させる必要が生ずるので、かかる場合は、流量制御弁8の弁体31のリフト量を小さくし、推力発生用ファン11へ供給する圧縮空気流量を減少させるようにする。
そして、流量制御弁8の弁体31のリフト量が小さくなると、Port1部からPort2部へ向かう流路の面積が小さくなるので、推力発生用ファン11へ供給される圧縮空気流量が減少するのと同時に、排出用空気流路10を介して大気へ排出される圧縮空気流量が増大する。これにより、推力発生用ファン11における圧縮空気流量の使用量が減少することに起因してサージングに至ることを防止することができる。
図4に示したように、機関回転数が一定であるとすると第2コンプレッサ6から取り出す空気流量Gaが少ないほど、第2コンプレッサ6の出口圧力P3、つまりガスタービン機関1の負荷が大きくなる。それゆえ、ガスタービン機関1の始動からフライト時の機関回転数(例えば、N/√(θ)=100%)まで、回転数を上昇させるにあたっては、可能な限り第2コンプレッサ6から取り出す空気流量を増やしてガスタービン機関1の負荷を小さくする方が、所要時間が短くなる。そしてこのように、ガスタービン機関1の始動からフライト時の機関回転数までの所要時間が短いほど、緊急を要するようなフライトに適するものとなる。
しかし、実施例1の構成では、第2コンプレッサ6から最大限取り出すことができる圧縮空気流量は、流量制御弁8の容量により決定される。また、流量制御弁8の容量は、推力発生用ファン11へ供給する最大空気流量から決定されるものである。これは、実施例1では、図5に示したように、推力発生用ファン11へ供給する空気流量と大気へ排出する空気流量の和を常に一定として、第2コンプレッサ6からの圧縮空気の分配制御を行なうことから明らかである。
そのため、実施例1の構成では、第2コンプレッサ6から取り出す空気流量を増やしてガスタービン機関1の負荷を小さくし、ガスタービン機関1の始動からフライト時の機関回転数までの所要時間を短くするには限界がある。
そこで、本実施例は、図6に示すように、実施例1に対して更に、流量制御弁8の上流の抽気流路7に上流側排出流路としての第2排出用空気流路14を接続し、当該排出用空気流路14の途中に、ECU13からの指令に基づき駆動され、当該第2排出用空気流路14を開閉可能な制御器である電磁弁等の排出流路開閉弁(排出流路開閉手段)15を備えるようにした。この流路開閉弁15は、ONの状態である場合は第2排出用空気流路14を開放し、第2コンプレッサ6からの圧縮空気を大気に排出させる。一方、OFFの状態である場合は第2排出用空気流路14を閉じ、第2コンプレッサ6からの圧縮空気を大気に排出させないようにするものである。その他の構成は実施例1と同一であり、同一の構成部品については、図1と同一の符号を付し、その説明は省略する。
そして、ガスタービン機関1の始動からフライト時の機関回転数まで回転数を上昇させる加速時において、第2排出用空気流路14を開放すべく流路開閉弁15をONにし、第2コンプレッサ6からの圧縮空気をより多く取り出して大気に排出させるようにする。なお、その過程をコンプレッサの特性上に示したのが図7である。
そして、流路開閉弁15の開度を制御するにあたっては、図8のフローチャートに示した制御ルーチンにしたがって実行する。この制御ルーチンを、予めECU13のROMに記憶しておき、一定時間の経過毎に割り込み処理としてECU13が実行するようにするものである。
ECU13は、まず、ステップ100において、機関回転数N、フライト信号を入力する。その後、ステップ101において、ステップ100にて入力したフライト信号がONであるか否かを判別する。そして、フライト信号がONである場合はステップ102へ進み、ONではない、つまりOFFである場合はステップ105へ進む。
ステップ102においては、機関回転数Nと予め定数として設定された目標回転数Nsとを比較する。ここで、Nsとは、第2コンプレッサ6が、推力発生用ファン11へ機体がフライト可能な空気流量を供給できる回転数相当の値である。したがって、本ステップではNsと実機関回転数Nとを比較することによりガスタービン機関が運転されているか否かの判断と流路開閉弁15を閉じるべき領域にあるか否かの判断を行うものである。そして、機関回転数Nが目標回転数Nsより低い場合はステップ103へ進み、機関回転数Nが目標回転数Ns以上の場合はステップ104へ進む。
ステップ103においては、実機関回転数Nが目標回転数Nsより低い場合はガスタービン機関1が加速運転状態であるので、第2排出用空気流路14を開放するために、流路開閉弁15をONにして本ルーチンの実行を終了する。このように、ガスタービン機関1が加速運転状態にある場合において流路開閉弁15をONにして、第2コンプレッサ6からの圧縮空気を、第2排出用空気流路14を介して大気に排出することにより、第2コンプレッサ6の出口圧力P3は下がり、第2コンプレッサ6の仕事量は少なくなる。その結果、ガスタービン機関1の負荷が小さくなり加速特性が向上することとなる。図9に示したのが、本実施例のように、加速時に、第2排出用空気流路14を介して圧縮空気を大気に排出する場合と、実施例1のように、第2排出用空気流路14を介して圧縮空気を大気に排出させない場合の加速特性の比較である。本図に示すように、本実施例のように、加速時に、第2排出用空気流路14を介して圧縮空気を大気に排出することで、良好な加速特性を得ることができ、早期に目標回転数に到達させることができる。
一方、ステップ104においては、実機関回転数Nが目標回転数Ns以上である場合はガスタービン機関1が目標回転数に到達したことになるため、流路開閉弁15をOFFにして、つまり第2排出用空気流路14から圧縮空気を大気に排出させないようにして本ルーチンの実行を終了する。ガスタービン機関1が目標回転数に達した場合には、機体のフライトに必要な圧縮空気流量を得ることができることから、第2排出用空気流路14から圧縮空気を大気に排出させないようにし、実施例1と同様なフライトのための推力制御に移行するものである。
ステップ105においては、第2排出用空気流路14を開けるべく流路開閉弁15をONにして本ルーチンの実行を終了する。本ステップに進むのは、フライト信号がONではない場合、つまりガスタービン機関1がアイドル運転の状態の場合であるが、かかる運転状態で第2排出用空気流路14からも圧縮空気を大気に排出することにより、上述したようにガスタービン機関1の負荷が小さくなるので、ガスタービン機関1の燃費を向上させ
ることができる。
このように、本実施例においては、実施例1に対して第2排出用空気流路14と流路開閉弁15を備え、ガスタービン機関1の運転状態に応じて流路開閉弁15の開閉を制御することで、フライトに必要な圧縮空気流量を得ることができる機関回転数に達するまでの所要時間を短縮することができるとともに、アイドル運転時における燃費を向上させることができる。
実施例3に係るガスタービン機関の制御装置を適用する飛行体の概略構成を示したのが図10である。本図に示すように、本実施例においては、実施例1に対して更に、第2コンプレッサ6の吸気流路16を開閉可能な制御器である電磁弁等の吸気流路開閉弁(吸気流路開閉手段)17を備えたものである。その他の構成は実施例1と同一であり、同一の構成部品については、図1と同一の符号を付し、その説明は省略する。
この流路開閉弁17は、ONの状態である場合は吸気流路16を開放し、第2コンプレッサ6に空気を流入させて第2コンプレッサ6にて当該空気を圧縮させるようにする。一方、OFFの状態である場合は吸気流路16を閉じ、第2コンプレッサ6に空気を流入させずに第2コンプレッサ6に本来の仕事をさせないようにするものである。
そして、本実施例においては、ガスタービン機関1の始動からフライト時の機関回転数まで回転数を上昇させる加速時において、上述した理由からガスタービン機関1の負荷を小さくすべく、吸気流路開閉弁17を閉じて第2コンプレッサ6に仕事をさせないようにして、早期に目標の機関回転数まで上昇させるようにするものである。その過程をコンプレッサの特性上に示すと、図7における実施例2と同様な曲線となる。
そして、流路開閉弁17の開度を制御するにあたっては、図11のフローチャートに示した制御ルーチンにしたがって実行する。この制御ルーチンを、予めECU13のROMに記憶しておき、一定時間の経過毎に割り込み処理としてECU13が実行するようにするものである。
ステップ200から202の処理は、実施例2における制御ルーチンのステップ100から102の処理と同じであるので、その説明は省略する。
ステップ203においては、実機関回転数Nが目標回転数Nsより低い場合はガスタービン機関1が加速運転状態であるので、流路開閉弁17をOFFにして本ルーチンの実行を終了する。このように、ガスタービン機関1が加速運転状態にある場合において流路開閉弁17をOFFにして、第2コンプレッサ6に空気を流入させないことにより、第2コンプレッサ6の仕事量は少なくなる。その結果、ガスタービン機関1の負荷が小さくなり加速特性が向上することとなる。そして、本実施例のように、加速時に、吸気流路開閉弁17をOFFにして第2コンプレッサ6の吸気流路を閉じた場合と、実施例1のように、吸気流路開閉弁17を備えずに、加速時に第2コンプレッサ6の吸気流路を閉じない場合の加速特性を比較すると、図9における実施例2の曲線と同様な曲線となる。図9に示すように、本実施例のように、加速時に、流路開閉弁17をOFFにして、第2コンプレッサ6に空気を流入させないことで、良好な加速特性を得ることができ、早期に目標回転数に到達させることができる。
ステップ204においては、実機関回転数Nが目標回転数Ns以上である場合はガスタービン機関1が目標回転数に到達したことになるため、流路開閉弁17をONにして、つまり第2コンプレッサに空気を流入させるようにして本ルーチンの実行を終了する。ガス
タービン機関1が目標回転数に達した場合には、機体のフライトに必要な圧縮空気を得ることができることから、フライトに備えるために第2コンプレッサ6に空気を流入させるようにし、実施例1と同様なフライトのための推力制御に移行するものである。
ステップ205においては、第2コンプレッサ6に空気を流入させないようにすべく流路開閉弁17をOFFにして本ルーチンの実行を終了する。本ステップに進むのは、フライト信号がONではない場合、つまりガスタービン機関1がアイドル運転の状態の場合であるが、かかる運転状態で第2コンプレッサ6に空気を流入させないことにより、上述したようにガスタービン機関1の負荷が小さくなるので、ガスタービン機関1の燃費を向上させることができる。
このように、本実施例においては、実施例1に対して第2コンプレッサ6の吸気流路16に吸気流路開閉弁17を備え、ガスタービン機関1の運転状態に応じて流路開閉弁17の開閉を制御することで、フライトに必要な圧縮空気を得ることができる機関回転数に到達するまでの所要時間を短縮することができるとともに、アイドル運転時における燃費を向上させることができる。
なお、本実施例においては、実施例1に対して更に、吸気流路開閉弁17を備えた場合について述べたが、実施例2に対して更に、吸気流路開閉弁17を備えることができることはいうまでもない。そして、かかる構成とすることにより、フライトに必要な圧縮空気を得ることができる機関回転数に到達するまでの所要時間をより短縮することができるとともに、アイドル運転時の燃費をより向上させることができる。