JP4150623B2 - 回転体制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転体を制御する技術に関し、とくに、回転体の回転状態を検出するためのエンコーダを較正する技術、およびエンコーダの異常を検出する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転体の回転変位を検出するために、回転体の回転軸に、外周部に複数のスリットを有する円盤状のスケールを設け、そのスケールを挟んで、90度位相の異なるA相及びB相並びに1回転する毎に1回出力される原点信号としてのZ相に対応する発光素子と受光素子とを配置してなる光学式ロータリエンコーダが提案されている。このエンコーダのA、BおよびZ相信号を利用して、回転体の回転角および回転方向を取得することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献1には、エンコーダを同一方向に連続して回転させているにもかかわらず、A相およびB相信号に基づいて判断される回転体の回転方向が切り替わった場合に、エンコーダに異常があることを検出する技術が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−64040号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載されているエンコーダは、回転体の絶対角を検出することができないので、何らかの方法で出力信号と回転体の回転角との間の相関を知る必要がある。原点信号であるZ相信号を用いて較正を行う場合は、Z相信号に異常が発生した時には較正ができず、回転体を制御することができない。
【0006】
特許文献1で提案されている方法では、A相信号およびB相信号の位相関係の異常を検出することができるが、その他の異常を検出することができない。
【0007】
回転体を適切に制御するためには、エンコーダの状態をより正確に把握し、エンコーダから出力される信号に基づいて回転体の状態を的確に把握する技術が求められる。
【0008】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転体を適切に制御する技術の提供にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は、複数の相に通電して励磁することにより駆動される回転体の各相に順次通電して前記回転体を回転させ、前記回転体の回転角を検知するエンコーダのZ相出力がオンになった時点で、前記エンコーダから出力される信号から算出されるカウント値と通電相の対応関係を取得するZ相検出型の第1の位相合わせ手段を備える回転体制御装置において、前記第1の位相合わせ手段による制御時のエンコーダ出力に異常が検出されたときには、前記回転体が通電相の変化に追従可能な時間で各相に順次通電し、最後に通電した時点で前記エンコーダから出力される信号から算出されるカウント値と通電相の対応関係を取得するZ相非検出型の第2の位相合わせ手段をさらに備えることを特徴とする回転体制御装置を提供する。
【0010】
この態様の回転体制御装置によると、Z相検出型の位相合わせ手段による位相合わせを実施することが不可能な異常を検出したときに、Z相非検出型の位相合わせ手段により別の方法で再試行することができるので、別にエンコーダを備えることなく位相合わせを行うことができる。
【0011】
前記第1の位相合わせ手段および前記第2の位相合わせ手段は、前記回転体を回転させたときの前記カウント値の変化量が所定のしきい値未満であった場合に、前記回転体または前記エンコーダに前記異常が発生したと判断してもよい。
【0012】
回転体制御装置は、回転体を回転させたとき、前記回転体の回転角を検知するエンコーダから出力される信号から算出されるカウント値の変化量が所定のしきい値未満であった場合に、前記回転体または前記エンコーダに前記異常が発生したと判断する異常検出手段を更に備えてもよい。
【0013】
この態様の回転制御体によると、エンコーダの出力信号の異常、またはエンコーダの回転不良を的確に検出することができる。
【0014】
前記変化量は、前記回転体の回転の開始時のカウント値と終了時のカウント値の差であってもよい。これにより、回転開始時から終了時までの回転量を示すカウント値が所定のしきい値に達しているか否かを適切に判定することができる。前記変化量は、前記回転体の回転時のカウント値の最大値と最小値の差であってもよい。これにより、回転中の最大変位量を示すカウント値が所定のしきい値に達しているか否かを適切に判定することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、実施の形態に係るシフト制御システム10の構成を示す。本実施の形態のシフト制御システム10は、車両のシフトレンジを切り替えるために用いられる。シフト制御システム10は、Pスイッチ20、シフトスイッチ26、車両電源スイッチ28、車両制御装置(以下、「V−ECU」と表記する)30、パーキング制御装置(以下、「P−ECU」と表記する)40、アクチュエータ42、エンコーダ46、シフト制御機構48、表示部50、メータ52および駆動機構60を含む。シフト制御システム10は、電気制御によりシフトレンジを切り替えるシフトバイワイヤシステムとして機能する。具体的には、シフト制御機構48がアクチュエータ42により駆動されてシフトレンジの切り替えを行う。
【0016】
車両電源スイッチ28は、車両電源のオンオフを切り替えるためのスイッチである。車両電源スイッチ28がドライバなどのユーザから受け付けた指示はV−ECU30に伝達される。例えば、車両電源スイッチ28がオンされることにより、図示しないバッテリから電力が供給されて、シフト制御システム10が起動される。
【0017】
Pスイッチ20は、シフトレンジをパーキングレンジ(以下、「Pレンジ」と呼ぶ)とパーキング以外のレンジ(以下、「非Pレンジ」と呼ぶ)との間で切り替えるためのスイッチであり、スイッチの状態をドライバに示すためのインジケータ22、およびドライバからの指示を受け付ける入力部24を含む。ドライバは、入力部24を通じて、シフトレンジをPレンジに入れる指示を入力する。入力部24はモーメンタリスイッチなどであってもよい。入力部24が受け付けたドライバからの指示は、V−ECU30、およびV−ECU30を通じてP−ECU40に伝達される。
【0018】
回転体制御装置の一例であるP−ECU40は、シフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替えるために、シフト制御機構48を駆動するアクチュエータ42の動作を制御し、現在のシフトレンジの状態をインジケータ22に提示する。シフトレンジが非Pレンジであるときにドライバが入力部24を押下すると、P−ECU40はシフトレンジをPレンジに切り替えて、インジケータ22に現在のシフトレンジがPレンジである旨を提示する。
【0019】
アクチュエータ42は、スイッチトリラクタンスモータ(以下、「SRモータ」と表記する)により構成され、P−ECU40からの指示を受けてシフト制御機構48を駆動する。エンコーダ46は、アクチュエータ42と一体的に回転し、SRモータの回転状況を検知する。本実施の形態のエンコーダ46は、A相、B相およびZ相の信号を出力するロータリエンコーダである。P−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得してSRモータの回転状況を把握し、SRモータを駆動するための通電の制御を行う。
【0020】
シフトスイッチ26は、シフトレンジをドライブレンジ(D)、リバースレンジ(R)、ニュートラルレンジ(N)、ブレーキレンジ(B)などのレンジに切り替えたり、また、Pレンジに入れられているときには、Pレンジを解除したりするためのスイッチである。シフトスイッチ26が受け付けたドライバからの指示はV−ECU30に伝達される。V−ECU30は、ドライバからの指示に基づき、駆動機構60におけるシフトレンジを切り替える制御を行うとともに、現在のシフトレンジの状態をメータ52に提示する。駆動機構60は、無段変速機から構成されているが、有段変速機から構成されてもよい。
【0021】
V−ECU30は、シフト制御システム10の動作を統括的に管理する。表示部50は、V−ECU30またはP−ECU40が発したドライバに対する指示や警告などを表示する。メータ52は、車両の機器の状態やシフトレンジの状態などを提示する。
【0022】
図2は、シフト制御機構48の構成を示す。シフト制御機構48は、アクチュエータ42により回転されるシャフト102、シャフト102の回転に伴って回転するディテントプレート100、ディテントプレート100の回転に伴って摺動するロッド104、図示しない変速機の出力軸に固定されたパーキングギヤ108、パーキングギヤ108をロックするためのパーキングロックポール106、ディテントプレート100の回転を制限してシフトレンジを固定するディテントスプリング110およびころ112を含む。
【0023】
図2は、シフトレンジが非Pレンジであるときの状態を示している。この状態では、パーキングロックポール106がパーキングギヤ108をロックしていないので、車両の駆動軸の回転は妨げられない。この状態から、アクチュエータ42によりシャフト102を同図において時計回りに回転させると、ディテントプレート100を介してロッド104が図2に示す矢印Aの方向に押され、ロッド104の先端に設けられたテーパー部によりパーキングロックポール106が図2に示す矢印Bの方向に押し上げられる。ディテントプレート100の回転に伴って、ディテントプレート100の頂部に設けられた2つの谷のうち一方、すなわち非Pレンジ位置120にあったディテントスプリング110のころ112は、山122を乗り越えて他方の谷、すなわちPレンジ位置124へ移る。ころ112がPレンジ位置124に来るまでディテントプレート100が回転したとき、パーキングロックポール106は、パーキングギヤ108と嵌合する位置まで押し上げられる。これにより、車両の駆動軸が機械的に固定されてPレンジに切り替わる。
【0024】
図3は、アクチュエータ42の断面を示す。アクチュエータ42を構成するSRモータは、ともに突極構造を有するステータ43およびロータ44を備える。SRモータは、固定的に設けられた外側のステータ43の突極に巻かれた巻線に通電して励磁することにより内側のロータ44を回転させる。図3に示したSRモータは、12個の突極を有する3相式のステータ43と、8個の突極を有するロータ44を備える。図3の状態でステータ43のU相に通電すると、ロータ44の突極A、C、EおよびGがステータ43の突極Uに吸引されるが、このとき、磁気抵抗は最小になり吸引力は径方向のみとなるからトルクは生じない。すなわち、ロータ44はステータ43により停止された状態になる。
【0025】
ここで、ステータ43のU相およびV相に通電を切り替えると、ロータ44の突極A、C、EおよびGはステータ43の突極Vの方向に吸引され、ロータ44は時計回りに回転する。さらに、ロータ44の突極A、C、EおよびGがステータ43の突極UおよびVの中間に来るまで回転した時に、ステータ43のV相に通電を切り替えると、ロータ44の突極A、C、EおよびGはステータ43の突極Vに吸引されて時計回りに回転していく。このように、SRモータは、ロータ44の突極が近づいてきたステータ43の突極のコイルに順次切り替えて通電することにより、ロータ44を回転させる。例えば、図3に示した状態を基準位置とすると、基準位置から時計回りにロータ44を回転させる場合は、U相およびV相、V相、V相およびW相、W相、W相およびU相、U相、の順に通電相を切り替えればよく、基準位置から反時計回りにロータ44を回転させる場合は、U相およびW相、W相、W相およびV相、V相、V相およびU相、U相、の順に通電相を切り替えればよい。
【0026】
アクチュエータ42の各通電相への通電の制御は、図1に示したP−ECU40により行われる。P−ECU40がアクチュエータ42を適切に制御するには、ロータ44の回転角を把握する必要があるが、絶対角を検知可能なセンサは高価であるため、本実施の形態では、製造コストを考慮して、ロータ44と一体的に回転するように設けられたインクリメント型ロータリエンコーダ46を用いてロータ44の回転角を取得する。P−ECU40は、エンコーダ46から出力される信号を取得し、その信号に基づいてロータ44の回転角を把握する。この場合、シフト制御システム10の起動時におけるエンコーダ46の回転角が不明であるため、P−ECU40は、エンコーダ46の出力信号から算出されるカウント値と、アクチュエータ42を駆動する通電相との間の対応関係を予め把握する必要がある。従って、シフト制御システム10の起動直後に、P−ECU40は、エンコーダ46の出力信号から算出されるカウント値と、アクチュエータ42を駆動する通電相との間の対応関係を取得し、ロータ44の回転と通電相の位相を合わせるための初期駆動制御を行う。
【0027】
シフト制御システム10の起動時に、前回の制御時における対応関係がメモリなどに保持されている場合であっても、電源オフの間にディテントプレート100が安定位置まで回転したり、アクチュエータ42内部やアクチュエータ42とシフト制御機構48との嵌合部におけるずれなどによりロータ44が回転したりして、エンコーダ46およびロータ44の回転角が前回制御終了時の回転角から変わっている可能性がある。従って、本実施の形態では、シフト制御システム10が起動される毎に初期駆動制御を行う。
【0028】
図4は、P−ECU40の内部構成を示す。P−ECU40は、エンコーダ信号取得部200、カウンタ202、初期駆動制御部204、通電制御部206および記憶部208を含む。初期駆動制御部204は、Z相検出型の位相合わせ手段の一例である第1の位相合わせ手段210およびZ相非検出型の位相合わせ手段の一例である第2の位相合わせ手段212を含む。これらの構成は、CPU、メモリ、LSIなどのハードウェアにより実現されてもよいし、メモリにロードされたプログラムなどのソフトウェアにより実現されてもよい。
【0029】
エンコーダ信号取得部200は、エンコーダ46から出力されるA相、B相およびZ相信号を取得する。カウンタ202は、エンコーダ信号取得部200が取得したエンコーダ46のA相およびB相信号のパルス数をカウントする。カウンタ202は、A相およびB相信号の位相からエンコーダ46の回転方向を判断し、A相およびB相信号の立ち上がりおよび立ち下がりを検知すると、エンコーダ46が正方向に回転している場合はカウント値をインクリメントし、エンコーダ46が逆方向に回転している場合はカウント値をデクリメントする。
【0030】
初期駆動制御部204は、カウンタ202が算出したカウント値と、アクチュエータ42を駆動する通電相との間の対応関係を取得するための初期駆動制御を行う。第1の位相合わせ手段210は、エンコーダ46から出力されるZ相信号を基準に位相合わせを行う第1の初期駆動制御を実施し、第2の位相合わせ手段212は、エンコーダ46のZ相信号を用いずに位相合わせを行う第2の初期駆動制御を実施する。それぞれの初期駆動制御の方法については後述する。第1の位相合わせ手段210および第2の位相合わせ手段212は、初期駆動制御時にエンコーダ46の異常検出を行う。すなわち、第1の位相合わせ手段210および第2の位相合わせ手段212は、異常検出手段の機能を有する。初期駆動制御部204は、シフト制御システム10の起動時に、第1の初期駆動を行うか第2の初期駆動を行うかを判断し、第1の位相合わせ手段210または第2の位相合わせ手段212に初期駆動制御の実施を指示する。通電制御部206は、アクチュエータ42の各通電相への通電を制御する。記憶部208は、P−ECU40における制御に必要な情報を保持する。
【0031】
図5は、第1の位相合わせ手段210による第1の初期駆動制御の方法を説明するための図である。初期駆動制御開始時には、P−ECU40は、ロータ44の回転角を把握できていないため、どの通電相に通電すればロータ44を回転させることができるのかを判断することができない。従って、第1の位相合わせ手段210は、所定の時間毎に順次通電相を切り替えて通電するよう通電制御部206に指示する。例えば、図5の例では、U相およびV相、V相、V相およびW相、W相、W相およびU相、の順に通電を行う。ロータ44が固着していなければ、ある時点からロータ44が通電相の変化に追従して回転し始める。第1の位相合わせ手段210は、エンコーダ信号取得部200がエンコーダ46の原点信号であるZ相信号を取得すると、その時点におけるカウンタ202によるカウント値と通電相との対応関係を記憶部208に記憶する。以降、P−ECU40は、この対応関係を用いることにより、ロータ44を回転させるための最適な通電制御を行うことができる。
【0032】
第1の初期駆動制御において、第1の位相合わせ手段210は、エンコーダ46からZ相信号が1回出力される角度の分だけエンコーダ46を回転させるべく通電制御を行う。例えば、Z相信号が1回転につき1回出力されるエンコーダ46であれば、エンコーダ46を1回転させれば十分であり、Z相信号が1回転につき8回、すなわち45度につき1回出力されるエンコーダ46であれば、エンコーダ46を45度回転させれば十分である。この間にエンコーダ信号取得部200がZ相信号を取得できなかった場合、初期駆動制御部204は、エンコーダ46のZ相信号出力に異常があると仮に判定して、記憶部208にZ相仮フェールフラグをたて、後述する第2の初期駆動制御に移る。
【0033】
第1の初期駆動制御におけるカウント値の変化量が所定のしきい値未満であった場合、エンコーダ46のA相またはB相信号出力に何らかの異常があるか、若しくは、エンコーダ46が回転不良を起こしている可能性がある。この時、初期駆動制御部204は、記憶部208にAB相仮フェールフラグをたて、後述する第2の初期駆動制御に移る。ここで、AB相仮フェールとは、エンコーダ46の回転不良の場合も含むものとする。カウント値の変化量として、第1の初期駆動制御中におけるカウント値の最大値と最小値の差を採用してもよいし、第1の初期駆動制御の開始時のカウント値と終了時のカウント値の差を採用してもよい。第1の初期駆動制御の開始時に、第1の位相合わせ手段210が駆動しようとする回転方向と逆方向にエンコーダ46が回転してしまうことがあるので、前者の方が実際の回転量をより正しく反映していると考えられる。他方、処理の簡便さの観点からは、後者の方がより有利である。しきい値は、第1の初期駆動制御におけるエンコーダ46の回転に伴って観測されると期待される変化量に基づいて設定される。しきい値は、第1の初期駆動制御開始直後にエンコーダ46が通電相に追従できない、または逆方向に回転する可能性があることを考慮して、期待される変化量よりも低く設定されてもよい。
【0034】
本実施の形態では、アクチュエータ42はシフト制御機構48におけるシフトレンジの変更を行うために設けられているので、回転不良または回転不能な状態を的確に検出することがより重要である。そのため、上述のように、カウント値の変化量が所定のしきい値を超えない状態を異常と判定する。また、カウント値の変化量を所定時間監視し続けるのではなく、初期駆動制御における定められた時間内でのカウント値の変化量を、カウント値の変化量の期待値に基づいて設定されるしきい値と比較することにより異常を検出するので、迅速かつ的確に異常を検出することができる。
【0035】
図6は、第2の位相合わせ手段212による第2の初期駆動制御の方法を説明するための図である。第2の初期駆動制御では、確実にロータ44を追従させるべく、第1の初期駆動制御よりも長い時間通電を行う。通電時間は、例えば、第1の初期駆動制御においては、1ステップにつき24ミリ秒程度、第2の初期駆動制御においては、1相通電時が1ステップにつき20ミリ秒程度、2相通電時が1ステップにつき100ミリ秒程度とする。通電相を順次切り替えて一巡する間に、いずれかのタイミングでロータ44が通電相の変化に追従すると考えられるので、一巡した時点におけるカウンタ202によるカウント値と通電相との対応関係を記憶部208に記憶する。これにより、エンコーダ46のZ相信号を利用せずに位相合わせを行うことができる。
【0036】
第2の初期駆動制御においても、第1の初期駆動制御と同様に、初期駆動制御中のカウント値の変化量に基づいて異常検出を行う。第2の初期駆動制御においてはエンコーダ46のZ相信号を利用しないが、第2の初期駆動制御においてもZ相信号の異常検出を行ってもよい。記憶部208に、Z相仮フェールフラグまたはAB相仮フェールフラグがたっていて、さらに第2の初期駆動制御においても同じ異常が検出されたときは、異常があるとの判断を確定して、表示部50などを介してドライバに警告を与える。
【0037】
図7は、本実施の形態に係るシフト制御方法の手順を示すフローチャートである。まず、シフト制御システム10の電源がオンになると、初期駆動制御部204は、現在のシフトレンジに基づいて、初期駆動制御時のエンコーダ46およびロータ44の回転方向を決定する(S10)。シフトレンジがPレンジであるときに、シフトレンジを非Pレンジに入れる方向と逆の方向に回転させると、ディテントプレート100の回転が制限されて、初期駆動制御を正常に実施できない恐れがある。そのため、現在のシフトレンジがPレンジであるときは、Pレンジから非Pレンジに入れる方向に、現在のシフトレンジが非Pレンジであるときは、非PレンジからPレンジに入れる方向に回転させる。
【0038】
現在のシフトレンジは、記憶部208に保持されてもよいし、V−ECU30から通知されてもよい。現在のシフトレンジが記憶されていない場合は、V−ECU30が車速に基づいて現在のシフトレンジを定める。例えば、車速が3km/h以下の低車速にある場合には、V−ECU30は現在のシフトレンジをPレンジと定め、また3km/hよりも速い中高車速にある場合には、現在のシフトレンジを非Pレンジと定める。なお、現在のシフトレンジを記憶していない状態で車速が中高車速である場合とは、例えば車両の走行中に電源が瞬断されて、現在のシフトレンジのデータを消失したような状況に相当する。そのため、殆どの場合は、シフト制御システム10の起動時、車速が低車速であることが判定され、現在のシフトレンジがPレンジと定められることになる。
【0039】
つづいて、記憶部208にZ相信号のフェールを示す記憶があるか否かを判定する(S12)。Z相信号の異常を示す記録がなければ(S12のN)、第1の位相合わせ手段210に第1の初期駆動制御を実施させ(S14)、Z相信号の異常を示す記録があれば(S12のY)、第2の位相合わせ手段212に第2の初期駆動制御を実施させる(S18)。第2の初期駆動制御よりも第1の初期駆動制御の方が実施に要する時間が短いので、Z相信号の異常がない限り、第1の初期駆動制御を優先的に実施する。これにより、シフト制御システム10が起動してから車両走行可能な状態になるまでの時間を短縮することができる。
【0040】
第1の位相合わせ手段210が第1の初期駆動制御を実施したとき(S14)、エンコーダ46のA相、B相またはZ相信号の異常、若しくは回転不良が検出されなければ(S16のN)、初期駆動制御を終了し(S26)、次の制御に移る。第1の初期駆動制御において異常が検出された場合は(S16のY)、続いて第2の初期駆動制御を実施する(S18)。
【0041】
第2の位相合わせ手段が第2の初期駆動制御を実施したとき(S18)、異常が検出されなければ(S20のN)、初期駆動制御を終了し(S26)、次の制御に移る。第2の初期駆動制御において異常が検出された場合は(S20のY)、エンコーダ46に異常があるとの判断を確定し(S22)、必要であれば表示部50などを介してドライバに注意を促す。ここで、検出された異常が、エンコーダ46のZ相信号の異常であれば(S24のY)、以降の制御はエンコーダ46のA相およびB相信号を用いて正常に行うことができるので、初期駆動制御を終了し(S26)、次の制御に移る。検出された異常が、エンコーダ46のZ相信号の異常でなければ(S24のN)、エンコーダ46のA相およびB相信号に異常があるか、エンコーダ46が回転不良を起こしているため、以降の制御を正常に行うことができない。従って、フェール時制御に移行する。
【0042】
本実施の形態のシフト制御方法によれば、1回異常が検出された場合であっても、別の方法で再度初期駆動制御を実施するので、誤って異常が検出されて処理を終了してしまう可能性を抑えることができる。また、異常を検出した記録が残っているときに、第1の初期駆動制御を行わず、第2の初期駆動制御を行うことで、無駄な処理を省き、時間を短縮することができる。
【0043】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、ロータリエンコーダとして、磁気式、光学式等、種々の方式のものに適用できるように、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0044】
本実施の形態では、シフト制御機構はシフトレンジをPレンジと非Pレンジとの間で切り替えたが、変形例において、シフト制御機構はシフトレンジをP、R、N、D、Bなどのレンジに切り替えてもよい。このとき、切り替え可能なレンジの数に応じてディテントプレート100の頂部に谷を設ければよい。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、回転体を適切に制御する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るシフト制御システムの構成を示す図である。
【図2】シフト制御機構の構成を示す図である。
【図3】アクチュエータの断面を示す。
【図4】P−ECUの内部構成を示す図である。
【図5】第1の位相合わせ手段による第1の初期駆動制御の方法を説明するための図である。
【図6】第2の位相合わせ手段による第2の初期駆動制御の方法を説明するための図である。
【図7】実施の形態に係るシフト制御方法の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
10・・・シフト制御システム、
20・・・Pスイッチ、
26・・・シフトスイッチ、
28・・・車両電源スイッチ、
40・・・P−ECU、
42・・・アクチュエータ、
46・・・エンコーダ、
48・・・シフト制御機構、
50・・・表示部、
52・・・メータ、
60・・・駆動機構、
200・・・エンコーダ信号取得部、
202・・・カウンタ、
204・・・初期駆動制御部、
206・・・通電制御部、
208・・・記憶部、
210・・・第1の位相合わせ手段、
212・・・第2の位相合わせ手段。
Claims (5)
- 複数の相に通電して励磁することにより駆動される回転体の各相に順次通電して前記回転体を回転させ、前記回転体の回転角を検知するエンコーダのZ相出力がオンになった時点で、前記エンコーダから出力される信号から算出されるカウント値と通電相の対応関係を取得するZ相検出型の第1の位相合わせ手段を備える回転体制御装置において、
前記第1の位相合わせ手段による制御時のエンコーダ出力に異常が検出されたときには、前記回転体が通電相の変化に追従可能な時間で各相に順次通電し、最後に通電した時点で前記エンコーダから出力される信号から算出されるカウント値と通電相の対応関係を取得するZ相非検出型の第2の位相合わせ手段をさらに備えることを特徴とする回転体制御装置。 - 回転体を回転させたとき、前記回転体の回転角を検知するエンコーダから出力される信号から算出されるカウント値の変化量が所定のしきい値未満であった場合に、前記回転体または前記エンコーダに前記異常が発生したと判断する異常検出手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の回転体制御装置。
- 前記第1の位相合わせ手段および前記第2の位相合わせ手段は、前記回転体を回転させたときの前記カウント値の変化量が所定のしきい値未満であった場合に、前記回転体または前記エンコーダに前記異常が発生したと判断することを特徴とする請求項1に記載の回転体制御装置。
- 前記変化量は、前記回転体の回転の開始時のカウント値と終了時のカウント値の差であることを特徴とする請求項2または3に記載の回転体制御装置。
- 前記変化量は、前記回転体の回転時のカウント値の最大値と最小値の差であることを特徴とする請求項2または3に記載の回転体制御装置。
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