JP4149218B2 - 樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金板に樹脂を被覆した樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から樹脂被覆金属板の製造方法として、予備加熱した金属板を一対のラミネートロールに樹脂フィルムと共に通過させて熱圧着させる方法が知られている。 また、上記の方法によって得た樹脂被覆後の金属板に対しては、密着性を高めたり、金属板および/または被覆樹脂を熱処理する目的で、後加熱処理と呼ばれる再加熱する方法を適用する場合がある。
上記予備加熱および後加熱処理では、加熱温度の制御を正確にできることから、ヒートロールと呼ばれる加熱ロールを用いる場合がある(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−252975号公報(第2頁、第3頁)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、予備加熱時や後加熱処理時に加熱ロールを用いると、金属板または樹脂被覆金属板の熱膨張により、金属板又は樹脂被覆金属板表面に摩擦傷が発生する問題がある。特に金属板がアルミニウム合金板の場合、鋼板と比較して熱膨張係数が高く膨張量が大きいため、摩擦傷の発生は特に顕著となり、この場合の摩擦傷は美観を損ねるだけでなく、加工時のクラックの発生、さらには被覆する樹脂層を突き破る、被覆樹脂層の破れによる金属表面の露出等の重大な欠陥をもたらす。このような摩擦傷の発生を防止する目的で、ロール表面を四弗化エチレン等でコーティングし、ロール表面の摩擦係数を低下させる方法(特許文献1参照)等が用いられる。しかし、このような低摩擦ロールを用いた場合でも、アルミニウム合金板を用いた場合には、摩擦傷の発生を有効に防止できない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、予備加熱によるアルミニウム合金板の膨張や樹脂被覆アルミニウム合金板の加熱による熱膨張によりアルミニウム合金板又は樹脂被覆金属板表面に発生する摩擦傷が少なく、また発生した傷も軽微な樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法のうち請求項1記載の発明は、加熱ロールを用いて予備加熱したアルミニウム合金板に樹脂フィルムを貼り合わせる工程を含む樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法において、前記アルミニウム合金板が前記加熱ロールに接する時の、加熱ロールの入側の温度が20〜180℃、出側の温度が30〜200℃であって、前記入側と出側の間のアルミニウム合金板の温度差が、下記式(1)の関係となることを特徴とする。
0.4≧W・α・ΔT …(1)
ただし、W:板幅(mm)、α:アルミニウム合金板の線膨張係数(1/℃)、ΔT:加熱ロールの入側と出側の間のアルミニウム合金板の温度差(℃)。
【0007】
請求項2記載の樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法の発明は、請求項1記載の発明において、前記加熱ロールは、アルミニウム合金板の移送方向に沿って複数本配置されたものであり、各加熱ロールにおいて前記(1)式を満たすことを特徴とする。
【0010】
本発明者らの研究により、樹脂被覆アルミニウム合金板の熱膨張により生じる摩擦傷は、主に板の幅方向に伸長した形状となることから、加熱ロールとの接触により板幅方向に発生するアルミニウム合金板の熱膨張により生じるものであることが分かった。このことから板幅方向の熱膨張の量に影響を及ぼす板幅W(mm)、加熱ロールの入側と出側の間の板の温度差ΔT(℃)、アルミニウム合金板の線膨張係数α(1/℃)については、熱膨張および収縮を低減するためにはいずれも小さいことが望ましい。これらの因子と摩擦傷の関係について詳細に検討した結果、アルミニウム合金板の加熱では0.4≧W・α・ΔTの関係式、樹脂被覆アルミニウム金属板の加熱では3.0≧W・α・ΔTの関係式を満たす場合に、摩擦傷が少なくかつ存在するわずかな摩擦傷も非常に軽微なものとなり、美観も良好で、かつ加工時のクラックの発生、被覆樹脂層の破れ等の発生が有効に防止されることが明らかとなった。なお、樹脂被覆アルミニウム合金板の熱膨張については、アルミニウム合金板の熱膨張と被覆樹脂層の熱膨張の複合作用により生じると考えられるが、アルミニウム合金板の厚さと比較して被覆樹脂層の厚さは小さく、このため熱膨張に及ぼす被覆樹脂層の影響は無視できる。
【0011】
すなわち本発明の製造方法によれば、樹脂被覆アルミニウム合金板は、摩擦傷が少なく、かつ存在するわずかな摩擦傷も非常に軽微なものとなり、美観も良好で、かつ加工時のクラックの発生、被覆樹脂層の破れ等の発生が有効に防止される。
【0012】
なお、本発明で用いられるアルミニウム合金板の成分は特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜の成分のアルミニウム合金を用いることができる。アルミニウム合金からアルミニウム合金板を得るまでの工程も本発明として特に限定されるものではなく、既知の工程によりアルミニウム合金板を得ることもできる。アルミニウム合金板の厚さ、幅の大きさも本発明として特に限定されるものではない。
また、本発明において上記アルミニウム合金板に被覆される樹脂フィルムの組成も本発明としては特に限定されるものではなく、その製造工程も特に限定されない。さらに樹脂フィルムの厚さも本発明として特に限定されるものではない。
【0013】
本発明の製造方法においてアルミニウム合金板を加熱ロールによって加熱する際、請求項1に従って、上記(1)式を満たすように温度制御を行うことが必要である。該温度制御は、ロールの加熱温度やアルミニウム合金板の移送速度の調整等により行うことができる。
上記(1)式における右辺の計算値が上記条件を満たさず、0.4を超えると、摩擦傷の発生防止効果が十分に得られない。なお、0.3以下とするのがより望ましい。
【0014】
なお、上記(1)式における線膨張係数αは、アルミニウム合金板の組成によっても多少の違いがあるが、概ね2.4×10−5/℃で示すことができる。また、上記線膨張係数は、対象物の温度によっても多少の違いがあり、温度が高くなるに従い数値が大きくなる傾向にある。したがって、上記式(1)では少なくとも加熱ロールの入側の温度におけるアルミニウム合金板の線膨張係数において関係を満たすことが必要であり、さらには出側の温度におけるアルミニウム合金板の線膨張係数において上記式(1)を満たすのが望ましい。なお、加熱ロールの入側、出側の温度は、加熱ロールの直前および直後のアルミニウム合金板の温度を示すものである。
また、加熱ロールを複数本で構成し、該ロール間で順次アルミニウム合金板を移動させるようにすることができる。この場合、各ロールにおいて上記(1)式を満たすことが必要である。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の一実施形態を添付図に基づいて説明する。
適宜の方法により溶製されたアルミニウム合金は、熱間圧延、冷間圧延又は連続鋳造圧延と冷間圧延を経て薄板化されてアルミニウム合金板1とされ、コイル状に巻き取られて樹脂被覆工程に供される。また、上記アルミニウム合金板1に被覆される適宜の組成の樹脂フィルム2が同じくコイル状にしてラミネータ3の近傍に設置されている。
コイル状のアルミニウム合金板1の設置箇所の近傍には、アルミニウム合金板1を予備加熱するために、複数本の加熱ロール5が配置されている。
また、上記ラミネータ3の後工程側には、樹脂被覆アルミニウム合金板10を後加熱するために、複数本の加熱ロール6が配置されている。この実施形態では加熱ロール5および加熱ロール6として各4本のロールを示すが、本発明としては加熱ロール5、加熱ロール6の本数は、1ないし適宜数とすることができ、加熱ロール5と加熱ロール6とで本数が異なるものであってもよい。
【0018】
上記装置を用いた樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法を説明すると、コイル部分から引き出されたアルミニウム合金板1は、加熱ロール5間を通り、その際に各加熱ロールにより加熱される。なお、各ロール5では、上記(1)式を満たすように加熱温度およびアルミニウム合金板1の移動速度が調整されている。予備加熱されたアルミニウム合金板1は、ラミネータ3へと移動し、コイル部から供給される樹脂フィルム2とともにラミネータ3を通り、該アルミニウム合金板1表面に樹脂フィルム2が圧着されて樹脂被覆アルミニウム合金板10が得られる。
なお、この実施形態では、アルミニウム合金板1の両面に樹脂フィルムを被覆するものとして説明したが、アルミニウム合金板1の片面に樹脂フィルムを被覆するものであってもよい。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しつつ説明する。
JIS 5182アルミニウム合金からなる厚さ0.28mmのアルミニウム合金板と、ポリエチレンテレフタレートからなる厚さ12μmの樹脂フィルムとを、複数の板幅で用意し、上記実施形態で示した工程を想定した予備加熱に際し、加熱ロールにおける入側温度と出側温度とを変えて供試材における摩擦傷の発生具合について試験した。
摩擦傷の発生具合は、供試材の幅500mm、長さ500mmの範囲における長さ200μm以上の傷の個数により評価した。すなわち、上記範囲における200μm以上の傷が、アルミニウム合金板の場合、10個以下のものを◎、10個超、20個以下のものを○、20個超、50個以下のものを△、50個を超えるものを×とし、樹脂被覆アルミニウム合金板の場合、10個以下のものを◎、10個超、20個以下のものを○、20個を超えるものを×とした。なお、各供試材におけるW(板幅)×α(線膨張係数)×ΔT(出側温度−入側温度)を算出した。算出に際しては、いずれの供試材においてもアルミニウム合金板の線膨張係数は、2.4×10−5/℃とした。
【0021】
表1は、1本の加熱ロールを通過したアルミニウム合金板の摩擦傷評価結果である。表から明らかなように、(1)式を満たす場合には、摩擦傷の発生は少なく、上記算出値が0.3以下になることにより摩擦傷の発生がより小さくなっていることが分かる。
【0022】
表2は、加熱ロールを複数本(6本)で構成し、各ロールに順次アルミニウム合金板を通して加熱した場合の評価結果である。全てのロールで上記(1)式を満たす供試材では、摩擦傷の発生は少なく、一方、一つのロールでも上記(1)式の満たさない場合には、摩擦傷の発生が多く見られた。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法によれば、加熱ロールを用いたアルミニウム合金板の予備加熱時に、0.4≧W・α・ΔT(1)式の関係になるので、アルミニウム合金板が加熱ロールを通過する際に、摩擦傷の発生が少なく、外観に優れた樹脂被覆アルミニウム合金板が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態における樹脂被覆アルミニウム合金板の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1 アルミニウム合金板
2 樹脂フィルム
3 ラミネータ
5 加熱ロール
6 加熱ロール
10 樹脂被覆アルミニウム合金板
Claims (2)
- 加熱ロールを用いて予備加熱したアルミニウム合金板に樹脂フィルムを貼り合わせる工程を含む樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法において、前記アルミニウム合金板が前記加熱ロールに接する時の、加熱ロールの入側の温度が20〜180℃、出側の温度が30〜200℃であって、前記入側の温度と出側の温度間のアルミニウム合金板の温度差が、下記式(1)の関係となることを特徴とする樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
0.4≧W・α・ΔT …(1)
ただし、W:板幅(mm)、α:アルミニウム合金板の線膨張係数(1/℃)、ΔT:加熱ロールの入側と出側の間のアルミニウム合金板の温度差(℃)。 - 前記加熱ロールは、アルミニウム合金板の移送方向に沿って複数本配置されたものであり、各加熱ロールにおいて前記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1記載の樹脂被覆アルミニウム合金板の製造方法。
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