以下図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態の構成図である。4は対物レンズ、107はホログラムレンズである。さらにホログラムレンズ107を図1の光軸方向から見た図を図2に示す。ホログラムレンズ107は、光ビーム3に対して透明な基板9に形成されていて、格子パターン107aが同心円状であり、その中心すなわち光軸は対物レンズ4と組立誤差内で一致している。ホログラムレンズ107の+1次回折光の回折効率は100%未満であり、光ビーム3aの透過光(0次回折光)61aも充分な強度を有するように設計する。このためには、例えばホログラムレンズ107を図1に示したように凹凸形状によって作製する場合には(レリーフ型)凹凸の高さhをh<λ/(n−1)というように、より小さくする、すなわち格子部107aで光ビームに与える位相変化の振幅量を2πよりも小さくすることによって容易に実現できる。ここでλは光ビーム3の波長、nは透明基板9の屈折率である。このようにホログラムレンズ107のどの位置においても透過光が充分な強度を持つようにすることによって、透過光の形成する集光ビームのサイドローブを低く抑えることができるという効果を有する。ここでサイドローブについて、図3を用いて説明する。図3は情報媒体上での集光スポットの光強度分布を示したものである。図3においてメインローブ380が記録再生に必要な光量であり、サイドローブ381は記録ピット形状や再生信号を劣化させる原因となる不要な光量である。
なお、さきに「集光」という言葉を用いたが、本願中では「集光」とは「発散光または平行光を回折限界の微小スポットにまで収束すること」と定義する。
さらにホログラムレンズ107は例えば図4に示したようにブレーズ化することによって後述のように2焦点の光ビームを形成する透過光と+1次回折光の光量和を大きくすることができ、光の利用効率を高くできるという効果がある。
本実施の形態では対物レンズ4は、開口数NAが0.6以上で、図1(a)に示すように、ホログラムレンズ107を回折されずに透過した光ビーム61が入射したときに、基板37の厚み(t2)の薄い光ディスク上に回折限界の集光スポットを形成できるよう設計されている。また、本実施の形態ではホログラムレンズ107の格子パターン107は対物レンズ4によって決まる開口よりも小さな径の中にだけ形成されている。従ってホログラムレンズ107の格子パターンの形成されていない部分107bでは回折が全く起こらず、高NAの集光スポット38aの光量が多くなるという効果がある。
なお、図2の格子パターン107aの0次回折光(透過光)の位相は格子パターン107aによって与えられる位相変調量の平均値となる。これに対して、格子パターンのない領域107bの透過光の位相を同じぐらいに合わせることによって集光性能を向上させることが望ましい。そこで、例えば、図1のようにホログラムレンズ107aの格子パターンをレリーフ型にする場合は、図4に示すように、格子パターン部の凹凸の平均ぐらいのレベルに格子パターンのない領域107bの表面の高さを合わせる。特に、図5の様な断面形状を2回のエッチング(エッチング深さh1とh2)によって作製し、ブレーズ化を実現する場合には、周辺部を1回だけ(深さh1またはh2のいずれか一方だけ)エッチングする事により、格子パターン107aと格子パターンのない領域107bの透過光の位相をほぼ同じぐらいに合わせることによって集光性能を向上させることができるという効果を得ることができる。
なお、図5に示したような階段状の断面形状は、図5(F)に波線で示した断面形状を近似した形状であると考えることができる。従って、透過光の光量が十分であるようにするためには、波線の形状の高さhをh<λ/(n−1)というように、より小さくする、すなわち格子部で光ビームに与える位相変化の振幅量を2πよりも小さくすることによって容易に実現できる。ここでλは光ビームの波長、nは透明基板の屈折率である。特にN段の等段差の階段状の断面形状の場合は1段当たりの段差をλ/((n−1)・N)とするなど、位相変調量を1段当たり2π/Nラジアン未満とする。
次に、図1の(b)は、本発明によって低NAで基板37の厚い(厚さt1)情報媒体5上に回折限界に集光スポット38bを集光できることを示す。ホログラムレンズ107で回折された+1次回折光64は対物レンズ4によって情報媒体5上に集光される。ここで+1次回折光64は厚さt1の基板37を通して回折限界まで絞れるように収差補正を施されている。このような収差補正作用を有するホログラムレンズ107の設計方法は、例えば、集光スポット38bから発散する球面波が厚さt1の基板37を透過後、対物レンズ4を透過し、ホログラムレンズ107を形成している透明基板9を透過した光ビームと、図1(b)の光ビーム3の位相の正負を反転した光ビームの干渉パターン(ホログラムレンズの格子パターン107a)を計算すればよい。そしてコンピューター・ジェネレイティッド・ホログラム(CGH)の手法などによって容易にホログラムレンズ107を作製できる。
このように入射光の一部を回折するホログラム107と対物レンズ4を組み合わせることによって異なる基板厚(t1とt2)の光ディスク上にそれぞれ回折限界にまで集光される集光スポットを形成する事のできる2焦点レンズを実現できるという効果を有することが本発明の特徴である。
ここで、ホログラムレンズ107はレンズ作用を有するので2つの焦点の光軸方向の位置は異なり、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときは他方の焦点を集光点とする光ビームは大きく広がっており光強度が小さく記録再生には影響を与えない。例えば、図1(a)のように情報媒体51に対して集光スポット38aが合焦点位置にあるときは+1次回折光64は情報媒体51の情報記録面上では大きく広がっており記録再生には影響を与えない。図1(b)の場合もまた同様である。この2つの焦点位置の差は、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときに他方の焦点を集光点とする光ビームが大きく広がって光強度が小さく記録再生に影響を与えない様にするためには、50μm以上でなるべく大きくすることが望ましい。また、コンパクトディスク(CD)やレーザディスク(LD)などの基板厚t1が1.2mm程度で、高密度光ディスクの基板厚t2は0.4mm〜0.8mmが適当と考えられることから、対物レンズのフォーカスサーボ動作を担うアクチュエータの可動範囲を考えて、2焦点位置の差はt1とt2の差0.8mm程度を大きく越えないことが望ましい。従って、図1の様に高NAで薄い基板に対応した集光スポット38aの焦点距離を短くる場合、2焦点位置の差は50μm以上1mm以下にする。ここで、図1の様に低NAで厚い基板に対応した集光スポット38bの焦点距離を長くする、すなわちホログラムレンズ107を凹レンズとして用いると、2焦点間距離の差を1mm程度まで大きくすることができ、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときに他方の焦点を集光点とする光ビームを大きく広げて光強度を小さくでき、記録再生に影響を全く与えない様にできるという効果を有する。
なお本実施の形態において、ホログラムレンズ107を凸レンズ型に設計することも可能である。この場合は2焦点位置の差は対物レンズのフォーカスサーボ動作を担うアクチュエータの可動範囲を考えて、0.5mm以下にする必要がある。しかし、次に説明するように色収差が発生しなくなるという効果がある。
波長がλ0の時のホログラムレンズ107の焦点距離をfhoe0とすると、波長がλ1の時の焦点距離fhoe1は、
fhoe1=fhoe0×λ0/λ1...(1)
となる。また屈折型の対物レンズ4の屈折率をn(λ)、焦点距離をf(λ)とすると、
f(λ1)=f(λ0)×(n(λ0)−1)/(n(λ1)−1)...(2)
となる。
式(1)と式(2)より
λ1/(fhoe1×λ0)+(n(λ1)−2)/(f(λ0)×(n(λ0)−1))=1/fhoe0+1/f(λ0)...(3)
とすることによって色収差の補正いわゆる色収差補正を行うことができる。ここで波長が長くなると式(1)では焦点距離が短くなり、また、式(2)では焦点距離が長くなるため、fhoe1とf(λ0)の正負を同じにして式(3)を満たすように選べば色消しができるのである。また、式(3)が厳密に成り立たなくとも、色収差は大幅に軽減されるという効果がある。
このようにホログラムは回折素子であるため、ホログラムを用いて構成したホログラムレンズの焦点距離の波長依存性は屈折率型のレンズとは逆になり、正のパワーを持ったホログラムレンズと屈折率レンズどうしまたは、負のパワーを持ったホログラムレンズと屈折率レンズどうしを組み合わせることによって色消しを実現できるため、レンズの曲率が比較的小さくてすむ上に、ホログラムレンズは平面型の素子のため、軽量で量産性にも優れているというように、非常に多くの利点がある。上記の色消しの原理については、例えば、文献1−D.Faklis and M.Morris(1991)Photonics Spectra Novenver 205 & December 131(ディー、ファクリスとエム、モリス(1991)フォトニクス スペクトラ11月号205ページ及び12月号131ページ)、文献2−M.A.Gan et al.(1991)SPIE Vol.1507 p116(エム、エイ、ガン他(1991)エス、ピー、アイ、イー 1507巻116ページ)、文献3−P.Twardowski and P.Meirueis(1991)SPIE Vol.1507 p55(ピー、トワードウスキとピー、メイルエイス(1991)エス、ピー、アイ、イー 1507巻55ページ)などにおいて発表されている。
ホログラムレンズ107の回折効率については前記の通り、+1次回折光の回折効率は100%未満であり、透過光(0次回折光)も充分な強度を有するように設計する。例えば、再生専用の光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%〜70%程度にする、こうすることによってCDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクも、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクも同じ程度の光量を用いて情報再生を行うことができるという効果がある。逆にいえば光源の出力を節約することができるという効果がある。
また、CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%以下にする、こうすることによって、ホログラムレンズの透過率(0次回折光の回折効率)が大きいため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の情報媒体(光ディスク)上への光の利用効率を高くすることができるという効果がある。逆にいえば記録時の光源出力を節約することができるという効果がある。
(実施の形態2)
図6は本発明の第2の実施の形態を示す。108はホログラムレンズである。本実施の形態は以下の点が第1の実施の形態とは異なる特徴である。本実施の形態ではホログラムレンズの格子パターン108aを対物レンズ4によって決まる開口と同じぐらいか、または、より大きな径で形成し、内周部では回折効率を高く、また、外周部では+1次の回折効率を漸次低くする。このためには、例えばホログラムレンズ108を図6に示したように凹凸形状によって作製する(レリーフ型の)場合には凹凸の高さhを外周部ではだんだんと低くしたり、または、ホログラムレンズ108の断面形状を図5に示すように階段上の断面形状にして、内周部では(A)のようにa>bとすることによって大きな傾斜角を近似し、外周部では(B)のようにa<bとすることによって小さな傾斜角を近似する。このように内周部では回折効率を高く、また、外周部では+1次の回折効率を漸次低くすることによってホログラムレンズ108の外周部では回折があまり起こらず、高NAの集光スポット38aの光量が多くなるという効果がある。さらに、入射光ビーム3のファーフィールドパターン(FFP)が図7の(a)のようなガウス分布をしているときに外周部から中心部に向かって少しずつ多くの光量を回折することにより、透過光61のFFPが図7の(b)の様になめらかなものになる。従って、図3を用いて先に説明したサイドローブ381はより一層少なく抑えることができ、本実施の形態のレンズを用いて構成した光ヘッド装置では記録再生を劣化なく行うことができるという効果がある。
また、ホログラムレンズ108の断面形状を内周部では図5の(C)の様にa=bとして、必要な回折光(0次回折光と+1次回折光)の光量を大きくできるという効果を得て、かつ、外周部では図5の(B)の様にa<bとして、上記と同様の効果を得ることもできる。
外周部については、a<bとしてaを外周部ほどだんだんと小さくし、aが作製困難な程細く(1μm程度)なったところで図5の(D)の様に2段の階段状断面形状にし、さらに外周部については、(E)の様にb1<b2として、b2をだんだんと小さくしてゆくことによっても、同様の効果を得ることができる。
もちろん、本実施の形態においても入射光の一部を回折するホログラムレンズ108と対物レンズ4を組み合わせることによって異なる基板厚(t1とt2)の光ディスク上にそれぞれ回折限界にまで集光される集光スポットを形成する事のできる2焦点レンズを実現できるという効果を有する。
ホログラムレンズ108の回折効率については前記の通り、+1次回折光の回折効率は100%未満であり、透過光(0次回折光)も充分な強度を有するように設計する。例えば、再生専用の光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%〜70%程度にする、こうすることによってCDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクも、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクも同じ程度の光量を用いて情報再生を行うことができるという効果がある。逆にいえば光源の出力を節約することができるという効果がある。
また、CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%以下にする、こうすることによって、ホログラムレンズの透過率(0次回折光の回折効率)が大きいため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の情報媒体(光ディスク)上への光の利用効率を高くすることができるという効果がある。逆にいえば記録時の光源出力を節約することができるという効果がある。
なお、本実施の形態のように基板厚t1に対応してホログラムレンズから発生する+1次回折光が回折限界まで集光できるように設計する場合、開口数NAが小さい分、+1次回折光の光量が少なくなる。しかしながら+1次回折光の回折効率をあまり高くすると、基板厚t2に対応した光ビームである透過光の内周部の光量が大きく減少するために、基板厚t2に対応した光ビームの集光スポットのサイドローブがやや大きくなる可能性がある。そこで、光源として半導体レーザを用いる場合などは、光ビームが外周部ほど光強度の減る、いわゆるガウシアン分布をしていることを利用する。図8(a)の様に、より強度の低い外周部まで対物レンズ開口内に取り込む、すなわち、光源側の開口数NAを大きくする。そして、+1次回折光の回折効率を図8(b)の様に高くする。このような構成にすることにより、対物レンズ内へ取り込んで利用できる光量が多くなる上に、基板厚t1に対応して集光できる光スポットの光量を大きくできるという効果を得ることができる。しかも、元々周辺部の光量が弱いため、+1次回折光の回折効率を高くすると透過光の光量は図8(C)の様に均一な分布に近くなり集光スポットのサイドローブは低く抑えることができるという効果もある。
さらに、図9に示すように、ホログラムレンズ111の内周部にはホログラムレンズの格子パターン107a(または108a)を設けて、外周部には111a〜d等のように透過率をコントロールするための回折領域を設けても良い。このようにすることにより、透過光の外周部が必要以上に大きくなることを防止することができ、集光スポットのサイドローブはより低く抑えることができるという効果を得ることができる。ここで、透過率修正領域111a〜dの格子の方向をすべて異なる方向にして、例えば回折領域111aで回折した光が対物レンズ4で集光されて情報媒体によって反射され、回折領域111cに入射したときに光軸と平行な方向に回折されないようにする事ができる。これによって、透過率修正領域の回折光が光軸上に迷光として混入する事を防ぐことができるという効果を得ることができる。
(実施の形態3)
第3の実施の形態を図10を用いて説明する。本実施の形態では図10(a)の様にホログラムレンズ109によって回折した+1次回折光66が基板37の厚みt2の薄い情報媒体51に対して回折限界まで集光できるように設計されている。そして対物レンズ4は、図10(b)のように透過光61が入射したときに、基板37の厚み(t1)の厚い光ディスク上に回折限界の集光スポットを形成できるよう設計されている。このような収差補正作用を持つホログラムレンズ109の設計方法は、例えば、集光スポット38aから発散する球面波が厚さt1の基板37を透過後、対物レンズ4を透過し、ホログラムレンズ109を形成している透明基板9を透過した光ビームと、図10(a)の光ビーム3の位相の正負を反転した光ビームの干渉パターンを計算すればよい。そしてCGHの手法などによって容易にホログラムレンズ109を作製できる。さらに、集光スポット38aが集光スポット38bよりも対物レンズ側に十分近いときには、ホログラムレンズ109は図10(a)に示したように、凸レンズ作用を持つように設計する。本実施の形態ではホログラムレンズ109が凸レンズ作用を持ちその+1次回折光66を対物レンズ4により集光して高NAの集光スポット38aを得る構成であるため対物レンズの曲率を余り大きくしなくて良い、または、高屈折率の硝材を用いなくても良いという効果を有する。また、2焦点間距離の差を1mm程度まで大きくすることができ、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときに他方の焦点を集光点とする光ビームを大きく広げて光強度を小さくでき、記録再生に影響を全く与えない様にできるという効果を有する。さらにホログラムレンズ109を凸レンズとして用いるので、前述した通り、色収差が発生しなくなるという効果がある。
すなわち、ホログラムは回折素子であるため、ホログラムを用いて構成したホログラムレンズの焦点距離の波長依存性は屈折率型のレンズとは逆になり、正のパワーを持ったホログラムレンズと屈折率レンズどうしを組み合わせることによって色消しを実現できるため、レンズの曲率が比較的小さくてすむ上に、ホログラムレンズは平面型の素子のため、軽量で量産性にも優れているというように、非常に多くの効果がある。
ホログラムレンズ109の回折効率についてはホログラムレンズ107やホログラムレンズ108と同様に、+1次回折光の回折効率は100%未満であり、透過光(0次回折光)も充分な強度を有するように設計する。例えば、再生専用の光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%〜70%程度にする、こうすることによってCDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクも、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクも同じ程度の光量を用いて情報再生を行うことができるという効果がある。逆にいえば光源の出力を節約することができるという効果がある。
また、CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に本発明の光学レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を70%以上にする、こうすることによって、ホログラムレンズ109の+1次回折光の回折効率が大きいため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の情報媒体(光ディスク)上への光の利用効率を高くすることができるという効果がある。逆にいえば光源の出力を節約することができるという効果がある。
さらに、外周部では回折効率を高く、また、内周部では+1次の回折効率を漸次低くすることにより高密度光ディスクに対して記録再生を行うための光量をより多くすることができる。このためには、例えばホログラムレンズ109を図10に示したように凹凸形状によって作製する(レリーフ型の)場合には凹凸の高さhを内周部ではだんだんと低くしたり、または、ホログラムレンズ109の断面形状を図5に示すように階段上の断面形状にして、外周部では(A)のようにa>bとすることによって大きな傾斜角を近似し、内周部では(B)のようにa<bとすることによって小さな傾斜角を近似する。このように外周部では回折効率を高く、また、内周部では+1次の回折効率を漸次低くすることによってホログラムレンズ109の内周部では回折があまり起こらず、高NAの集光スポット38aの光量が多くなるという効果がある。さらに、入射光ビーム3のファーフィールドパターン(FFP)がガウス分布をしているときに外周部から中心部に向かって少しずつ多くの光量を回折することにより、回折光66のFFPがなめらかなものになる。従って、図3を用いて先に説明したサイドローブ381はより一層少なく抑えることができ、本実施の形態のレンズを用いて構成した光ヘッド装置では記録再生を劣化なく行うことができるという効果がある。
また、ホログラムレンズ109の断面形状を外周部では図5の(C)の様にa=bとして、必要な回折光(0次回折光と+1次回折光)の光量を大きくできるという効果を得て、かつ、内周部では図5の(B)の様にa<bとして、上記と同様の効果を得ることもできる。
内周部については、a<bとしてaを内周部ほどだんだんと小さくし、aが作製困難な程細く(1μm程度)なったところで図5の(D)の様に2段の階段状断面形状にし、さらに内周部については、(E)の様にb1<b2として、b2をだんだんと小さくしてゆくことによっても、同様の効果を得ることができる。
なお、本実施の形態のように基板厚t1に対応してホログラムレンズを透過する0次回折光が回折限界まで集光できるように設計する場合、開口数NAが小さい分、透過光量が少なくなる。しかしながら0次回折光の回折効率(透過率)をあまり高くすると、基板厚t2に対応した光ビームである+1次回折光の内周部の光量が大きく減少するために、基板厚t2に対応した光ビームの集光スポットのサイドローブがやや大きくなる可能性がある。そこで、光源として半導体レーザを用いる場合などは、光ビームが外周部ほど光強度の減る、いわゆるガウシアン分布をしていることを利用する。図11(a)の様に、より強度の低い外周部まで対物レンズ開口内に取り込む、すなわち、光源側の開口数NAを大きくする。そして、透過率を図11(b)の様に高くする。このような構成にすることにより、対物レンズ内へ取り込んで利用できる光量が多くなる上に、基板厚t1に対応して集光できる光スポットの光量が大きくできるという効果を得ることができる。しかも、元々周辺部の光量が弱いため、透過率を高くすると+1次回折光の光量は図11(C)の様に均一な分布に近くなり集光スポットのサイドローブは低く抑えることができるという効果もある。
もちろん、本実施の形態においても入射光の一部を回折するホログラム109と対物レンズ4を組み合わせることによって異なる基板厚(t1とt2)の光ディスク上にそれぞれ回折限界にまで集光される集光スポットを形成する事のできる2焦点レンズを実現できるという効果を有する。
なお、以上の実施の形態ではホログラムレンズはレリーフ型として説明してきたが、特開昭61−189504や、特開昭63−241735にも開示されているように、ニオブ酸リチウム基板の一部をプロトン交換したり、液晶セルを利用しても同様に位相変調型のホログラムレンズを作製することができる。
また、以上の実施の形態ではホログラムレンズの格子パターンを対物レンズの反対側に形成する事例を例示した。ホログラムレンズの格子パターンを対物レンズの反対側に形成することにより、ホログラムレンズ表面の反射光が迷光として、帰還する事を避けることができるという効果がある。即ち、ホログラムレンズの形成された側に入射した光はこの面で反射される際には同時に回折を受けるので光が散乱される。そして透過光も回折を受けているので他の面で反射される光量は少ない上に、再びホログラムレンズ表面を透過される際に回折を受けて散乱されるのである。
但し、反射防止膜を施したり、ホログラムレンズに平面波を入射させないようにすることによって、ホログラムレンズの格子パターンを対物レンズに近い側に形成することも可能である。例えば図1ではホログラムレンズ107の格子パターン107aを対物レンズ4に近い側に形成する。このような構成にすることにより、格子パターンを設計する際に、透明基板9による屈折の効果を考慮する必要がないため、設計が簡単になるという効果を得ることができる。勿論ホログラムレンズは108または111や109でも同様である。
(実施の形態4)
これまで示した第1から第3の実施の形態までの2焦点レンズはすべて、対物レンズとホログラムレンズの組み合わせより構成されている。そこで、図50でホログラム105と対物レンズ4を一体化したのと同様に、第4の実施の形態として、本発明においてもホログラムレンズ107〜109または111のいずれかと対物レンズ4を、図12(a)に示すようにパッケージ化手段210を用いて連結したり、対物レンズ4上にホログラムレンズの格子パターンを直接作製したりすることにより一体化しても良い。こうすることによって、ホログラムレンズと対物レンズの光軸ずれを小さくすることができ、ホログラムレンズの+1次回折光の軸外収差をより小さくできるという効果がある。
(実施の形態5)
さらにまた、第5の実施の形態として、図12(b)に示したように、ホログラムレンズ107〜109または111のいずれかの格子パターンを対物レンズ4の情報媒体(光ディスク)側に形成しても良い。このような構成にすると、対物レンズは情報媒体(光ディスク)側の方が曲率が小さく平面にすることも可能であるためホログラムレンズ107〜109または111のいずれかを容易に低コストで形成できるという効果がある。
但し、逆に、設計上ホログラムレンズが光軸に対して傾くと収差が発生するような場合は、ホログラムレンズと放射光源2とを同一基台上に固定するなどの方法で位置関係を固定することにより、ホログラムレンズの光軸に対する収差を抑圧することができるという効果を得ることもまた可能である。
(実施の形態6)
第6の実施の形態として第1から第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置を図13〜図20を用いて説明する。なお、図13〜図18までの図面に挿入されているxyz軸はすべて共通である。
図13において、2は半導体レーザなどの放射光源である。この放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過してホログラムレンズ107と対物レンズ4に入射し、情報媒体5上または情報媒体51上に集光される。情報媒体5または51で反射した光ビームはもとの光路を逆にたどって、透過光61は実線で示したようにホログラムレンズ107を再び透過し、また、+1次回折光64が点線のようにホログラムレンズ107で再び+1次回折光として回折し、どちらも初めにビームスプリッター36を通ったときと同じ光路を通ってビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ホログラム103などの波面変換手段によってフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができるように波面を変換された後に光検出器7に入射する。光検出器7の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得ることができる。ここで対物レンズ4は駆動手段110によって高速で動かす必要があるが、第4の実施の形態や第5の実施の形態のようにホログラムレンズを対物レンズに一体化してもホログラムレンズ107は平面型の光学素子であるため軽量(数10ミリグラム以下)であるので、ホログラムレンズ107と対物レンズ4を組み合わせて用いて駆動手段110によって一体駆動することができる。また、図12に示したように対物レンズ4に直接ホログラムレンズ107を一体成形することにより、一層の軽量化と低コスト化を図ることもできる。本実施の形態では、初めにホログラムレンズ107を光ビーム3が通過する際に透過した透過光61がホログラムレンズ107を再び透過した光ビームと、初めにホログラムレンズ107を光ビーム3が通過する際に回折した+1次回折光64がホログラムレンズ107で再び回折した+1次回折光が、初めにビームスプリッター36を通ったときと同じ光路を通ってビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光された光ビームを用いてサーボ信号の検出を行う。従って、2焦点から反射してきた光ビームの光検出器側での集光点39は放射光源2の出射点と鏡像関係にある点で一致する。このため、ホログラム103などのサーボ信号検出手段も光検出器7も単一のものを共通に用いることができ、少ない部品点数で小型、軽量、低コストの光ヘッド装置でありながら、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。
次に、サーボ信号の検出方法について説明する。まず、ホログラム103の実施の形態を図14に模式的に示す。ここではフォーカスサーボ信号の検出方式の一例として、スポットサイズディテクション法(SSD法)を用いる場合について説明する。SSD法は特開平2−185722号公報にも開示されているように光ヘッド装置の組み立て許容誤差を著しく緩和できる上に波長変動に対しても安定にサーボ信号を得ることのできる検出方法である。
SSD法を実現するためには、ホログラム103から発生する回折光が曲率の異なる2種類の球面波となるように設計する。図15は図13の一部分であり、コリメートレンズ(122)から光検出器7までを拡大して示したものである。ホログラム103の格子パターンは例えば図15において光検出器7の平面の前側bに焦点を持つ球面波と、集光点39から発散する球面波の干渉縞として、実際に2光束干渉法を用いて干渉縞を記録したり、計算機ホログラム(CGH)の手法を用いて干渉縞を構成する。そして、図16に示すように共役な回折光である+1次と−1次の回折光の回折光64と65を光検出器7上に形成した6分割光検出器S1からS6によって受光する。ここで(b)がジャストフォーカス状態であり、(a)、(c)がデフォーカス状態を表す。従って、フォーカスエラー信号FEは、
FE=(S1+S3−S2)−(S4+S6−S5)...(4)
という演算によって得られる。
なお、前に、ホログラム103から発生する回折光が曲率の異なる2種類の球面波となるように設計する、と述べたが、図16からもわかるようにSSD法は回折光のY方向の形状変化を利用しているので、2つの光ビームは所定の方向の1次元の焦点位置がそれぞれ光検出器の前側と後ろ側であればよく、球面波には限らない。例えば非点収差を含むものであっても構わない。
また、情報媒体51の上の集光スポットとトラック溝の相対位置変化によるホログラム上での光量分布変化をトラッキングエラー信号TEとして取り出すために、図14に示すようにさらに別の回折領域153や154をホログラムパターン150上に設けてもよい。そして図17のように、フォーカスエラー信号検出用の光検出領域の両側にトラッキングエラー信号検出用の光検出領域72を設けて、図18に示すように、この回折領域153や154からのトラッキングエラー信号検出用回折光163をトラッキングエラー信号検出用光検出領域72によって受光し式(5)に示す演算によってトラッキングエラー信号TEを得ることができる。
TE=S7−S8−S9+S10...(5)
このように、ホログラム103に波面変換及び分割作用を付加することによりサーボ信号発生用光学素子(波面変換手段)として用いることによって、光ヘッド装置の部品点数を削減できるので、軽量化、製造工程数の削減、信頼性の向上、低コスト化などの効果を得ることができる。
また、フォーカスサーボ信号の検出方法としていわゆる非点収差法を用いる例を図19を用いて説明する。図19において130は平行平板などの非点収差発生手段である。本実施の形態はフォーカスサーボ信号の検出方法としていわゆる非点収差法を用いることを除いてはおおよそ図13の構成と同じである。図19において光ビーム41はほぼ球面波であり、かつ、平行平板130を透過するので非点収差を持つ。そして、図20に示すような4分割光検出器S1からS4によって光ビーム41を受光する。ここで(b)がジャストフォーカス状態であり、(a)、(c)がデフォーカス状態を表す。従って、フォーカスエラー信号FEは、
FE=(S1+S4)−(S2+S3)...(6)
という演算によって得られる。
なお、式(6)のS1〜S4は式(4)のS1〜S4とは無関係である。
また、情報媒体5のタンジェンシャル(溝の伸延方向)とラジアル方向に対応する方向が図20に示した方向であるとき、情報媒体5の上の集光スポットとトラック溝の相対位置変化によるホログラム上での光量分布変化を利用して、式(7)に示す演算によってトラッキングエラー信号TEを得ることができる。
TE=S1+S3−(S2+S4) ...(7)
なお、式(7)のS1〜S4も式(4)のS1〜S4とは無関係である。
また、式(6)の結果を基にいわゆる位相差法を行ってトラッキングエラー信号を得ることもできる。
なお、本実施の形態は、FE信号検出をSSD法で行う場合と非点収差法で行う場合について、ホログラムレンズを107として説明を行ったが、これをホログラムレンズ108または111、ホログラムレンズ109に代えても同様の構成で光ヘッドを構成できることは自明であり、やはり少ない部品点数で小型、軽量、低コストの光ヘッド装置でありながら、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。
また、ホログラムレンズを本実施の形態のように平行光束中に設ける場合はホログラムレンズからの反射光が迷光になる恐れもあるが、無反射コーティングをしたり、図21に示すように、ホログラムレンズ107を少し(1゜程度)傾けることによりこの迷光が光検出器71に入射することを避けることができるという効果がある。なお、図21に示したように、非点収差発生手段としてはシリンドリカルレンズ131を用いてもよい。シリンドリカルレンズ131は収束レンズ121と一体成型することにより、コストダウンを図るという効果を得ることも可能である。
また、光の利用効率を向上させ、信号のS/N比を向上させるためには図22に示すように、偏光ビームスプリッター42と1/4波長板15を用い、放射光源2の偏光方向が偏光ビームスプリッター42を全透過する方向に設定すれば良い。よく知られているようにこのような構成によって、放射光源2から出射した光ビーム3は偏光ビームスプリッター42をすべて透過して情報媒体5(または51)に達し、反射して、再び偏光ビームスプリッター42に入射して、今度は全反射される。
さらに、図23の様にホログラムレンズ107と対物レンズ4の間に1/4波長板15を設ける構成にすることにより、ホログラムレンズ107からの反射光が光検出器71に入射しないようにすることもできる。図23の構成ではホログラムレンズ107の反射光は偏光ビームスプリッター42を全透過するため、光検出器71に入射せず、迷光にならないという効果がある。
さらに、図24の様にくさび型プリズム35等のビーム整形手段を用いて、光の利用効率を向上させることもできる。
本発明では、情報記録面上に集光されて情報を読みとった光の一部は光検出器上で大きく広がる。例えば、ホログラムレンズ107を用いた本発明の光ヘッド装置で情報媒体51(基板の厚みがt2の時)の再生を行うとき、情報記録面上に集光されて情報を読みとった光がホログラムレンズ107を透過した光を用いてサーボ信号や情報信号を読み出す。ここで、情報記録面上に集光されて情報を読みとった光がホログラムレンズ107で回折された光は図25に示した1次回折光430の様に大きく広がる。そこで、光検出器75の周囲に大きな(1mm角以上)光検出器75cを設けて、これらの光を受光し、光検出器75の出力と、光検出器75cの出力の和を情報信号とすることにより、S/Nを向上し、また、周波数特性の向上を図ることもできるという効果を得ることができる。
さらに、本発明の光ヘッド装置で、焦点合わせ(focusing)を行う実施の形態を示す。本発明の光ヘッド装置のうちホログラムレンズ107または108または111を用いた実施の形態では、フォーカスエラー(FE)信号は図26に示したようになる。即ち、基板の厚みt2に対して集光する光はNAが大きいため光量も多く、他の光によってできる不要なFE信号より十分大きい。そこで、焦点合わせを行うためには、まず、対物レンズ4を情報媒体51の遠いところから近づけてゆき、FE信号があるしきい値をこえたら、フォーカスサーボループをONにして、FE=0になるように焦点合わせを行う。また、基板の厚みt1に対して集光する光はNAが小さいため光量も少なく、他の光によってできる不要なFE信号が大きいが、対物レンズ4が情報媒体5の近いところに発生する。そこで、焦点合わせを行うためには、やはり、対物レンズ4を情報媒体5の遠いところから近づけてゆき、FE信号があるしきい値をこえたら、フォーカスサーボループをONにして、FE=0になるように焦点合わせを行う。このように、対物レンズ4を情報媒体の遠いところから近づけてゆき、FE信号があるしきい値をこえたら、フォーカスサーボループをONにして、FE=0になるように焦点合わせを行うことにより、情報媒体の基板厚がt1であろうとt2であろうと、しきい値を変えるかオートゲインコントロール(AGC:光検出器上の全光量でFE信号を規格化する)を行うことにより共通の手順で焦点合わせを行うことができ、回路系のコストを低くすることができるという効果を得ることができる。
なお、ホログラムレンズとして109を用いる場合は、FE信号が、対物レンズ4と情報媒体の「遠い」と「近い」が逆の特性になるので、対物レンズ4を情報媒体の近いところから遠ざけてゆき、FE信号があるしきい値をこえたら、フォーカスサーボループをONにして、FE=0になるように焦点合わせを行うことにより、情報媒体の基板厚がt1であろうとt2であろうと、しきい値を変えるかオートゲインコントロール(AGC:光検出器上の全光量でFE信号を規格化する)を行いさえすれば、共通の手順で焦点合わせを行うことができ、回路系のコストを低くすることができるという効果を得ることができる。
(実施の形態7)
第7の実施の形態として第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置を図20と図27を用いて説明する。
図27において、2は半導体レーザなどの放射光源である。この放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。さらに、ホログラムレンズ107を透過した透過光61は対物レンズ4に入射し、情報媒体51上に集光される。情報媒体51で反射した透過光61は実線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を再び透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター361で反射されて、第6の実施の形態と同様にホログラム103などの波面変換手段によってフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができるように波面を変換された後に光検出器7に入射する。光検出器7の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得ることができることも第6の実施の形態と同様である。
また、ホログラムレンズ107で回折した+1次回折光64は点線で示したように対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した+1次回折光64はもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター361を透過する。この光ビーム40は情報媒体5で反射した後にホログラムレンズ107で回折されずに透過しているため、放射光源2の出射点とは鏡像関係にない。従って光ビーム40の集光点39aは集光点39とは光軸方向でずれている。そこで本実施の形態ではビームスプリッター361によって光路を分離して別に設けた光検出器71の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得ることができる。図20と図27を用いてこのサーボ信号の検出方法の一例を説明する。図27において光ビーム40はほぼ球面波であり、かつ、平行平板の表面にコーティングを施したビームスプリッター361を透過するため非点収差を持つ。そこで集光点39a付近においた、図20に示すような4分割光検出器S1からS4によって光ビーム40を受光する。ここで(b)がジャストフォーカス状態であり、(a)、(c)がデフォーカス状態を表す。従って、フォーカスエラー信号FEは、
FE=(S1+S4)−(S2+S3)...(6)
という演算によって得られる。
なお、式(6)のS1〜S4は式(4)のS1〜S4とは無関係である。
また、情報媒体5のタンジェンシャル(溝の伸延方向)とラジアル方向に対応する方向が図20に示した方向であるとき、情報媒体5の上の集光スポットとトラック溝の相対位置変化によるホログラム上での光量分布変化を利用して、式(7)に示す演算によってトラッキングエラー信号TEを得ることができる。
TE=S1+S3−(S2+S4)...(7)
なお、式(7)のS1〜S4も式(4)のS1〜S4とは無関係である。
また、式(6)の結果を基にいわゆる位相差法を行ってトラッキングエラー信号を得ることもできる。
本実施の形態も、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。さらにまた、次のような効果も有する。CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%以下にする、こうすることによって、ホログラムレンズの透過率が高いため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の光ディスク(情報媒体)上への光の利用効率を高くすることができるという効果があるが、この時はホログラムレンズの透過率が高いのであるから光ディスク(情報媒体)から反射してきた光の内透過光を、本実施の形態のようにサーボ検出や情報信号の検出に用いることによって、S/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果がある。
なお、本実施の形態はホログラムレンズを107として説明を行ったが、これをホログラムレンズ108または111に代えても同様の構成で光ヘッドを構成できることは自明であり、やはり同様の効果を有する。
(実施の形態8)
第8の実施の形態として第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置を図28と図29を用いて説明する。なお、図28と図29に挿入したx1、y1軸は共通である。
図28において、放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。さらに、ホログラムレンズ107を透過した透過光61は、対物レンズ4に入射し、情報媒体51上に集光される。情報媒体51で反射した透過光61は実線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を再び透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362を透過して第7の実施の形態において説明したように非点収差を持ち、光検出器71でこれを受光してフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができる。さらに、情報信号を得ることができることも第7の実施の形態と同様である。
また、ホログラムレンズ107で回折した+1次回折光64は対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した+1次回折光64は、点線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362に設けられた反射型ホログラム104で反射・回折される。この光ビーム40は情報媒体5で反射した後にホログラムレンズ107で回折されずに透過しているため、放射光源2の出射点とは鏡像関係にない。そこで本実施の形態ではビームスプリッター362によって光路を分離して別々に設けた光検出器7と光検出器71の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得る点は第7の実施の形態と同じである。本実施の形態ではビームスプリッター362の表面に図28に示したように反射型ホログラム104を形成して光ビーム40を反射・回折し光検出器7によってこの回折光を受光してサーボ信号や情報信号を得ることが特徴である。図29にこの反射型ホログラムのパターンの一例を示す。フォーカスエラー信号検出用回折光発生領域とトラッキングエラー信号発生領域を形成し、回折光を発生してこの回折光を光検出器で受光して、第6の実施の形態と同様にサーボ信号や情報信号を得る。
本実施の形態も、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。さらにまた、次のような効果も有する。CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%以下にする、こうすることによって、ホログラムレンズの透過率が高いため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の光ディスク(情報媒体)上への光の利用効率を高くすることができるという効果があるが、この時はホログラムレンズの透過率が高いのであるから光ディスク(情報媒体)から反射してきた光の内、透過光を本実施の形態のようにサーボ検出や情報信号の検出に用いることによって光の利用効率を高くすることができるので、S/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果がある。特に、反射型ホログラム104によって光ビーム40の全光量を回折して信号検出に用いるためS/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果が顕著である。
なお、本実施の形態はホログラムレンズを107として説明を行ったが、これをホログラムレンズ108または111に代えても同様の構成で光ヘッドを構成できることは自明であり、やはり同様の効果を有する。
(実施の形態9)
第9の実施の形態として第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置を主に図30〜図32を用いて説明する。なお、図30と図31に挿入したx1、y1軸と、図30と図32に挿入したx、y、z軸はそれぞれ共通である。
本実施の形態でも第8の実施の形態と同様に図30において、放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。さらに、ホログラムレンズ107を透過した透過光61は、対物レンズ4に入射し、図30には図示していないが図28と同様に、情報媒体51上に集光される。以下、図30には図示していないが基板厚t2の情報媒体51に対する記録再生を行う場合については図28を用いて説明する。情報媒体51で反射した透過光61は実線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を再び透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362を透過して第7の実施の形態において説明したように非点収差を持ち、光検出器76(図28では光検出器71と表示)でこれを受光してフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができる。さらに、情報信号を得ることができることも第7の実施の形態と同様である。
次に、本実施の形態で基板厚t1の情報媒体5の情報記録再生を行う場合について説明する。図30において、ホログラムレンズ107で回折した+1次回折光64は対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した+1次回折光64は、点線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ107を透過し、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362に設けられた透過型ホログラム1041で回折される。この光ビーム40は情報媒体5で反射した後にホログラムレンズ107で回折されずに透過しているため、放射光源2の出射点とは鏡像関係にない。そこで本実施の形態では例えば、光検出器76の光軸方向の位置を適当に調節し、例えば情報媒体5上でホログラムレンズ107の透過光61が合焦点状態にあるときに光ビーム40が最小錯乱円になる位置に光検出器76を配置する。そして光検出器76の出力を演算することによって、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号及び、情報信号を得る点は第7の実施の形態と同じである。特にトラッキングエラー信号を位相差法によって検出すると比較的高い周波数(数KHz以上)だけを扱えば良いのでヘッドアンプ出力のオフセットの温度ドリフトなどのDC変動の影響を避けることができ安定にサーボ信号を得ることができるという効果がある。
本実施の形態で基板厚t1の情報媒体5の情報記録再生を行う場合、フォーカスエラー信号については、ホログラムレンズ107の透過光61から得ることによって、より多くの光量を使うことも可能である。図30において、放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。さらに、ホログラムレンズ107を透過した透過光61は、対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に照射されるが記録面上ではデフォーカスしている。情報媒体5で反射した透過光61は図30に実線で示したようにホログラムレンズ107を再び透過し、ビームスプリッター36で反射される(光ビーム43)。この光ビーム43は、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362を透過し、ビームスプリッター362の表面に図30に示したように形成されたホログラム1041で回折される。光検出器76によってこの回折光を受光してサーボ信号や情報信号を得る。図31にこの透過型ホログラムのパターンの一例を示す。フォーカスエラー信号検出用回折光発生領域151、152を形成し、回折光を発生してこの回折光を光検出器76上に形成された6分割光検出器76aで受光して、フォーカスエラー信号を得る。図31において例えば、領域151は光検出器の前側に焦点を持つ球面波141(図32)を発生させ、領域152は光検出器の後ろ側に焦点を持つ球面波142(図32)を発生させる。図31のようなホログラムパターンから回折する波面のファーフィールドパターンはホログラムパターンが分割されていることを反映してやはり図32に示すように一部分が欠けるが、フォーカスサーボ信号には影響はない。図32に示すように回折光141と142を6分割光検出器76aによって受光する。ここで(b)がジャストフォーカス状態であり、(a)、(c)がデフォーカス状態を表す。従って、フォーカスエラー信号FEは、
FE=(S10+S30−S20)−(S40+S60−S50)...(8)
という演算によって、SSD法に基づいて得られる。
本実施の形態ではビームスプリッター362の表面に形成されたホログラム1041で光ビーム43を回折し、光検出器76によってこの回折光を受光してフォーカスエラー信号を得ることが特徴である。本実施の形態も、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。さらにまた、次のような効果も有する。CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に第1または第2または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を30%以下にする、こうすることによって、ホログラムレンズの透過率が高いため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の光ディスク(情報媒体)上への光の利用効率を高くすることができるという効果があるが、この時はホログラムレンズの透過率が高いのであるから光ディスク(情報媒体)から反射してきた光の内、透過光を本実施の形態のようにサーボ検出や情報信号の検出に用いることによって光の利用効率を高くすることができるので、S/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果がある。特に、ホログラム1041によって光量の多い光ビーム43を回折して信号検出に用いるためS/N比の高いフォーカスサーボ信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果が顕著である。しかもサーボ信号や情報信号を、ただ1個の光検出器76だけから得ることができるので、部品点数が少なく、小型軽量で低コストの光ヘッド装置を構成することができるという顕著な効果もある。
なお、本実施の形態はホログラムレンズを107として説明を行ったが、これをホログラムレンズ108または111に代えても同様の構成で光ヘッドを構成できることは自明であり、やはり同様の効果を有する。
(実施の形態10)
次に第10の実施の形態を図33を用いて説明する。本実施の形態は第3または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置である。
図33において、2は半導体レーザなどの放射光源である。この放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。さらに、ホログラムレンズ109を透過した透過光61は対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した透過光61は、点線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ109によって回折され、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター361で反射されて、第6の実施の形態と同様にホログラム103などの波面変換手段によってフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができるように波面を変換された後に光検出器7に入射する。光検出器7の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得ることができることも第6の実施の形態と同様である。
また、放射光源2より出射後、ホログラムレンズ109で回折した+1次回折光66は対物レンズ4に入射し、情報媒体51上に集光される。情報媒体51で反射した+1次回折光66は、実線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ109によって回折され、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター361を透過する。そして、別に設けた光検出器71の出力を演算することによって、第7の実施の形態と同様にしてサーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得ることができる。
本実施の形態も、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。さらにまた、次のような効果も有する。CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に、ホログラムレンズ109を用いて構成される第3または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いる場合は+1次回折光の回折効率を70%以上にする、こうすることによって、ホログラムレンズの回折効率が高いため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の光ディスク(情報媒体)上への光の利用効率を高くすることができるという効果があるが、この時はホログラムレンズの回折効率が高いのであるから光ディスクから反射してきた光の内、回折光を本実施の形態のようにサーボ検出や情報信号の検出に用いることによって光の利用効率を高くすることができるので、S/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果がある。また、ホログラムレンズは109を用いているので、2焦点間の距離の差を1mm程度まで大きくすることができ、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときに他方の焦点を集光点とする光ビームを大きく広げて光強度を小さくでき、記録再生に影響を全く与えない様にできるという効果を有する。さらにホログラムレンズ109を凸レンズとして用いるので、前述した通り、色収差が発生しなくなるという効果がある。
(実施の形態11)
第11の実施の形態として第3または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いて構成した光ヘッド装置を、図34を用いて説明する。
図34において、放射光源2から出射した光ビーム3はコリメートレンズ(122)によって略平行光になり、ビームスプリッター36を透過する。そして、ホログラムレンズ109を透過した透過光61は、対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した透過光61は点線で示したようにもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ109によって回折され、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362を透過して第7の実施の形態において説明したように非点収差を持ち、光検出器71でこれを受光してフォーカスサーボ信号やトラッキングエラー信号を得ることができる。さらに、情報信号を得ることができることも第7の実施の形態と同様である。
また実線で示したようにホログラムレンズ109で回折した+1次回折光66は対物レンズ4に入射し、情報媒体51上に集光される。情報媒体51で反射した+1次回折光66はもとの光路を逆にたどって、ホログラムレンズ109によって再び回折され、ビームスプリッター36で反射され、収束レンズ(121)によって集光され、ビームスプリッター362の一部に形成した反射型ホログラム104で反射・回折される。そして別々に設けた光検出器7と光検出器71の出力を演算することによって、サーボ信号(フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号)及び、情報信号を得る点は第7の実施の形態と同じである。本実施の形態ではビームスプリッター362の表面に図34に示したように反射型ホログラム104を形成して光ビーム40を反射・回折し光検出器7によってこの回折光を受光してサーボ信号や情報信号を得る。図29にこの反射型ホログラムのパターンの一例を示す。フォーカスエラー信号検出用回折光発生領域とトラッキングエラー信号発生領域を形成し、回折光を発生してこの回折光を光検出器で受光して、第6の実施の形態と同様にサーボ信号や情報信号を得る。
本実施の形態も、異なる基板の厚みの光ディスクの記録再生を一つの光ヘッド装置で、行うことができるという効果を有する。さらにまた、次のような効果も有する。CDなど基板厚の厚い(t1)光ディスクは再生のみ行い、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクでは記録再生を行う光ディスク装置用に、ホログラムレンズ109を用いて構成される第3または第4または第5の実施の形態で示した2焦点レンズを用いる場合は、+1次回折光の回折効率を70%以上にする、こうすることによって、ホログラムレンズ回折効率のが高いため、基板厚の薄い(t2)高密度光ディスクに情報記録を行う際の光ディスク(情報媒体)上への光の利用効率を高くすることができるという効果があるが、この時はホログラムレンズの回折効率が高いのであるから光ディスクから反射してきた光の内、回折光を、本実施の形態のようにサーボ検出や情報信号の検出に用いることによって光の利用効率を高くすることができるので、S/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果がある。特に、反射型ホログラム104によって光ビーム40の全光量を回折して信号検出に用いるため、光の利用効率が高くS/N比の高い信号を得られ安定な光ヘッド装置を得られるという効果が顕著である。また、ホログラムレンズは109を用いているので、2焦点間の距離の差を1mm程度まで大きくすることができ、一方の焦点スポットで情報の記録再生をしているときに他方の焦点を集光点とする光ビームを大きく広げて光強度を小さくでき、記録再生に影響を全く与えない様にできるという効果を有する。さらにホログラムレンズ109を凸レンズとして用いるので、前述した通り、色収差が発生しなくなるという効果がある。
(実施の形態12)
第12の実施の形態を図35〜図39を用いて説明する。図35と図36において182はノイズキャンセル用回折光発生領域、75はノイズキャンセル用信号検出用光検出器である。図35において、2は半導体レーザ等の放射光源である。この光源から出射した光はビームスプリッター363で反射して対物レンズ4に入射し、情報媒体5または51上に集光される。情報媒体51(または5)で反射した光ビームはもとの光路を逆にたどって(復路)、ビームスプリッター363に入射する。このビームスプリッター363を透過した光ビームは光検出器77に入射する。光検出器77の出力を演算することによって、サーボ信号及び、情報信号を得ることができる。ノイズキャンセル用回折光発生領域182は図36に示したように、ホログラムレンズの格子パターン107aよりも外周部に設ける。
本実施の形態では特開昭60−138748及び特開昭61−131245に開示されている原理に基づき、信号に対するノイズを低減することができる。本実施の形態では、ノイズキャンセル用回折光発生領域182から発生するノイズキャンセル用回折光164をノイズキャンセル用信号検出用光検出器75で受光し、ノイズキャンセル用信号検出用光検出器75の出力信号S90を得る。そして、次の演算によって情報信号RFを検出し、ノイズの低減化を図る。
RF=(S1+S2+S3+S4)+R×S90...(9)
ここで、Rはノイズキャンセル用信号S90に重み付けをするための係数である。本実施の形態では、特開昭60−138748及び特開昭61−131245とは異なり、ホログラムレンズ上で光ビームの光量を分割するため光検出器の設定許容精度を100倍程度大きくできるという効果がある。なお、ノイズキャンセル用信号検出用光検出器75にレンズ作用を持つホログラムパターンを用いることによって、往路に発生する不要な回折光を情報媒体5上でデフォーカスさせ、大きく広がるようにして情報媒体5の情報を平均化し、情報信号に対する雑音を含まないという効果を得ることもできる。さらにまた、ノイズキャンセル用回折光発生領域182を設けることにより、ホログラムレンズの外周部の透過率が内周部と同程度になるため、情報媒体上で光ビーム(集光スポット)のサイドローブがより低くなり、優良な特性の再生信号を得ることができるという効果を得ることもできる。
また、図37においては、ノイズキャンセル用回折光発生領域183を複数(図では2個)に分割する。そして、各々の分割領域から回折するノイズキャンセル用回折光164をノイズキャンセル用信号検出用光検出器75aと75bで受光し、出力信号S91とS92を得る。そして、(10)式の演算によって情報信号RFを検出し、ノイズの低減化を図る。
RF=(S1+S2+S3+S4)+R×(S91+S92)...(10)
ここで、Rはノイズキャンセル用信号S90に重み付けをするための係数である。本実施の形態では、特開昭60−138748及び特開昭61−131245とは異なり、ホログラム上で光ビームの光量を分割するため光検出器の設定許容精度を100倍程度大きくできるという効果がある。本実施の形態では、図38のようにノイズキャンセル用回折光発生領域183を複数に分割することによって往路の不要な回折光も多分割される上に1つ1つの分割領域はNA(開口数)が小さくなってその回折光が大きく広がるので、これらの和を取ったときに情報媒体5上で得る情報信号(雑音)は平均化されて、振幅が小さくなるという効果がある。また、複数のノイズキャンセル用回折光(164aと164b)をそれぞれ分割した光検出器(75aと75b)で受光することにより、それぞれのノイズキャンセル用信号の重み付けを変えてよりいっそうノイズの低減をする事も可であるという効果を得ることができる。すなわち、(11)式の演算によって情報信号RFを検出し、ノイズの低減化を図る。
RF=(S1+S2+S3+S4)+(R1×S91+R2×S92)...(11)
ここで、R1、R2はノイズキャンセル用信号S91、S92に重み付けをするための係数である。また、このようにノイズキャンセル用回折光発生領域183を複数に分割することによって往路の不要な回折光が、光検出器の信号検出領域に入射することを避けることもできるという効果を得られる。これについて図39を用いて以下に説明する。図39においてP1とP2はそれぞれノイズキャンセル用回折光164aと164bが光検出器上に入射する場所を示す。ノイズキャンセル用回折光164aと164bを復路の+1次回折光と呼ぶと、ノイズキャンセル用回折光発生領域183bから発生する往路の+1次回折光がノイズキャンセル用回折光発生領域183aに入射して発生する復路の+1次回折光がP3に入射する。ここで、P3と光検出器71の中心との距離C2は、P1とP2の距離と等しくなる。したがって、光検出器71の一辺の長さの半分をC1としたときにC2>C1とすることにより、P3が光検出器71内に入らないようにすることができ不要な迷光の影響を避けることができるという効果がある。点P4についても点P3と同様である。なお、ノイズキャンセル用回折光発生領域183から発生する往路の+1次回折光のうち復路の透過光(0次回折光)はP5やP6の位置に入射し、光検出器71内に入らない。さらに、光源2として半導体レーザーを用いる場合には、ノイズキャンセル用回折光発生領域183a、bを設ける方向(図38のX2方向)を半導体レーザーの出射角の広い方向と一致させることにより、透過光の光強度分布がより一定になるため、情報媒体上で光ビーム(集光スポット)のサイドローブがより低くなり、優良な特性の再生信号を得ることができるという効果を得ることもできる。
(実施の形態13)
さらに、第13の実施の形態を図40と図41を用いて説明する。図40において107はホログラムレンズである。ホログラムレンズとしてはここでは第1の実施の形態として説明したホログラムレンズ107を用いて説明するが、第2〜第5の実施の形態のいずれかにおいて説明したホログラムレンズ108または111または109などでも良い。また第12の実施の形態において示したようにホログラムレンズの外周部にノイズキャンセル用回折光発生領域を設けることもできる。また、ホログラム173は偏光異方性ホログラムである。偏光異方性ホログラムは、昭61−189504や、特開昭63−241735にも開示されているように、ニオブ酸リチウム基板の一部をプロトン交換したり、液晶セルを利用することにより作製可能であり、ある偏光方向(XP方向とする)の直線偏光に対しては回折させるホログラムとして働き、これと直角な方向(YP方向とする)の直線偏光光に対しては回折を起こさないという性質を持つ。放射光源2は本実施の形態においては直線偏光の光源を用い、偏光方向はXP方向に設定する。放射光源2から出射した光ビームはホログラム173を透過し(往路)、λ/4板15によって円偏光の光ビームになり、ホログラムレンズ107で2つの焦点の光ビームに分けられて、さらに、情報媒体5または51によって反射される際に円偏光の回転方向が逆転し、再びλ/4板15に入射して初めとは直角方向(YP方向)の直線偏光になるため、復路においてはホログラム173によって回折され(復路)、光検出器274に入射する。光検出器の出力を演算することによって、前述の実施の形態と同様にサーボ信号や情報信号を得ることができる。本実施の形態は以下のような効果を有している。1.ホログラムレンズを用いているため、ただ1つの光ヘッド装置を用いて2種類の基板厚の情報媒体に対し情報の記録再生を行うことができる。2.往路では回折を受けず、復路では回折するため、光の利用効率が高く、放射光源の出射パワーが低くてもS/N比の高いサーボ信号や情報信号を得ることができる。3.ビームスプリッターを用いなくても良い構成であり、光ヘッド装置の小型化軽量化、低コスト化を実現できる。4.ビームスプリッターを用なくても良い構成であり、光学部品がほとんど1本の光軸上に並んでいる(立ち上げミラーを用いて光軸を曲げる場合も分岐はせず、光軸はやはりほぼ1本である)ため、温度変化、経時変化に対して安定に動作する光ヘッド装置を得ることができる。5.復路ではホログラム173の透過光は不要であるため回折効率を高くし、透過率をほとんど0に設計しても構わない。透過率をほぼ0に設計する事により、ホログラム173と1/4波長板15は光源2への戻り光をなくするアイソレーターの働きをするため、光源2として半導体レーザーを用いるときに、戻り光がほとんど活性層内に入らない。従って、戻り光による半導体レーザーの雑音の問題を回避できる。
なお、本実施の形態における光検出器274は放射光源2と近接して配置することが可能であるため図41に示すような構成にすることにより相対位置精度を容易に高精度にでき、製造工程の組立コストを低くすることができるという効果がある。また、より一層、光ヘッド装置の小型化軽量化、低コスト化を実現できるという効果がある。図41において2は放射光源、3は光ビーム、274は光検出器である。光検出器274aと光検出器274bを1個の光検出器基板上に形成する。そして光検出器274aと光検出器274bの間に凹部(切り欠き部)を設け、図41に示したようにミラー7aを設け、放射光源2をハイブリッドに設置する。本実施の形態では、光検出器274aと光検出器274bを1個の光検出器基板上に形成するので光検出器274aと光検出器274bの相対位置を、集積回路の作製工程によって容易にμmオーダーの高精度に設定できるという効果がある。さらに、図41のハイブリッド素子と外部との電気的な接続のために結線が必要であるが、この結線を接続する面が、本実施の形態ではすべて図41のX3・Y3平面になるので、結線用のワイヤを近づけてくる方向が共通になり自動組立が容易になるという効果がある。さらに組立時の基準線もX3・Y3平面上に設けるだけでよいので、光検出器274aと光検出器274bと放射光源2の相対位置を容易に高精度に設定できるという効果がある。
本実施の形態は偏光異方性ホログラムを用いる構成を例示して説明したが、放射光源2の光量が十分である場合などは、偏光異方性ホログラム173に代えて格子ピッチの小さなホログラムや、ブレーズ化ホログラムを用いても、やはり、以下のような効果を得ることができる。1.ホログラムレンズを用いているため、ただ1つの光ヘッド装置を用いて2種類の基板厚の情報媒体に対し情報の記録再生を行うことができる。2.ビームスプリッターを用いなくても良い構成であり、光ヘッド装置の小型化軽量化、低コスト化を実現できる。3.ビームスプリッターを用いなくても良い構成であり、光学部品がほとんど1本の光軸上に並んでいるため、温度変化、経時変化に対して安定に動作する光ヘッド装置を得ることができる。
(実施の形態14)
第14の実施の形態を図42を用いて説明する。図42において2aは直線偏光した光ビームを出射する放射光源、190は放射光源2aから出射する直線偏光した光ビーム3bを全反射しこれと直角方向の直線偏光した光ビームは全透過する偏光分離膜、15はλ/4板である。本実施の形態ではホログラムレンズ107を具備する点と、偏光分離膜190と1/4波長板15を用いる点と、反射型ホログラム220を透明基板9の裏側に形成する点が特徴である。なお、ホログラムレンズとしてはここでは第1の実施の形態として説明したホログラムレンズ107を用いて説明するが、第2〜第5の実施の形態のいずれかにおいて説明したホログラムレンズ108または111または109などでも良い。また第12の実施の形態において示したようにホログラムレンズの外周部にノイズキャンセル用回折光発生領域を設けることもできる。放射光源2aから出射した光ビーム3b(直線偏光したレーザ光)は、透明基板9の放射光源2aに近い側(以後表側と呼ぶ)に形成された偏光分離膜190で全反射されてλ/4板の第1回目の透過を行う。そして対物レンズ4に入射し、情報媒体5上に集光される。情報媒体5で反射した光ビームはもとの光路を逆にたどって、λ/4板の第2回目の透過を行いこれによって光ビームの偏光方向は90゜回転する。光ビームは偏光分離膜190を全透過して、反射型ホログラム220に入射する。この反射型ホログラム220から生じる復路の回折光68は偏光分離膜190を全透過して、光検出器78に入射する。光検出器78の出力を演算することによって、サーボ信号及び、情報信号を得ることができる。ここで例示したようにコリメートレンズを用いると、反射膜190へ入射する光ビームが平行光であるので反射率及び透過率が均一になって、往路の反射光をより容易に情報媒体5上で回折限界まで集光できる。また、復路の+1次回折光も均一になるためサーボ信号にオフセットがより生じにくくなるという効果がある。また、以下のような効果もある、1.ホログラムレンズを用いているため、ただ1つの光ヘッド装置を用いて2種類の基板厚の情報媒体に対し情報の記録再生を行うことができる。2.往路では回折を受けず、復路では回折するため、光の利用効率が高く、放射光源の出射パワーが低くてもS/N比の高いサーボ信号や情報信号を得ることができる。3.ビームスプリッターと立ち上げミラーを兼用しているので、光ヘッド装置の小型化軽量化、低コスト化を実現できる。4.光学部品がほとんど1本の光軸上に並んでいるため、温度変化、経時変化に対して安定に動作する光ヘッド装置を得ることができる。5.偏光分離膜190と1/4波長板15は光源2aへの戻り光をなくするアイソレーターの働きをするため、光源2aとして半導体レーザーを用いるときに、戻り光がほとんど活性層内に入らない。従って、戻り光による半導体レーザーの雑音の問題を回避できる。
なお、反射型ホログラム220をブレーズ化する事により、+1次回折光の回折効率を1に近づけて、光量の損失なしに+1次回折光のみを用いて信号検出を行うことができる。+1次回折光を用いて信号検出を行うと、信号検出用の回折光の収差をホログラム220で補償できるので安定なサーボ信号検出を行うことができるという効果を得ることも可能である。また、コリメートレンズを放射光源と透明基板の間に挿入する構成を例示して説明したが、コリメートレンズを省いた構成も可能であり、この場合においても上記と同様の効果が得られる。
さらにまた、光源2aの光量が十分である場合には、偏光分離膜190の代わりに反射率が1/3程度の反射膜を用い、1/4波長板15を省くことも可能である。この場合も、以下のような効果がある、1.ホログラムレンズを用いているため、ただ1つの光ヘッド装置を用いて2種類の基板厚の情報媒体に対し情報の記録再生を行うことができる。2.ビームスプリッターと立ち上げミラーを兼用しているので、光ヘッド装置の小型化軽量化、低コスト化を実現できる。3.光学部品がほとんど1本の光軸上に並んでいるため、温度変化、経時変化に対して安定に動作する光ヘッド装置を得ることができる。
次に、第5〜第11の実施の形態までのいずれかの光ヘッド装置の様に2種の厚みの基板の記録再生を可能な光ヘッド装置を有し、実際に記録再生を行う際に、記録再生を行おうとしている光ディスクの基板の厚みがt1なのかt2なのかを自動的に判断する機能を持つ光ディスク装置の発明を図45(第15の実施の形態)と図46(第16の実施の形態)を用いて説明する。
(実施の形態15)
図45は第15の実施の形態である光ディスク装置の説明を行うためのチャート図である。本実施の形態の光ディスク装置は第5〜第11の実施の形態までのいずれかの光ヘッド装置の様に2種の厚みの基板の記録再生を可能な光ヘッド装置と、前記光ヘッドの送り機構などの移動手段と、情報媒体を回転させるスピンドルモーターなどの回転手段、を有する。そして、本発明の光ディスク装置に光ディスク(情報媒体)をセットし、光ディスクが前記回転手段によって回転を始めると、まず基板の厚みを判別する情報を記録した位置、例えば最内周などに前記移動手段によって光ヘッド装置を動かし、次に、基板の厚みt1に対応した焦点(フォーカス)制御を行う。そしてトラッキング制御を行って情報信号を検出し、基板の厚みがt2であるという情報を認識したら、自動的に基板の厚みt2に対応した焦点制御を行う。また、基板の厚みがt2であるという情報がなければ、そのまま基板の厚みt1に対応した焦点制御を行って再生し続ける。本実施の形態により、迅速に且つ極めて正確に基板の厚みを判断することができ、2種の厚みの基板の記録再生を安定に行うことができるという効果を有する。
(実施の形態16)
図46は第16の実施の形態である光ディスク装置の説明を行うためのチャート図である。本実施の形態の光ディスク装置は第5〜第11の実施の形態までのいずれかの光ヘッド装置の様に2種の厚みの基板の記録再生を可能な光ヘッド装置と、前記光ヘッドの送り機構などの移動手段と、情報媒体を回転させるスピンドルモーターなどの回転手段、を有する。そして、本発明の光ディスク装置に光ディスク(情報媒体)をセットし、光ディスクが前記回転手段によって回転を始めると、まず情報信号が確実に存在する位置、例えば最内周などに前記移動手段によって光ヘッドを動かし、次に、基板の厚みt1に対応した焦点(フォーカス)制御を行う。そしてトラッキング制御を行って情報信号を検出し、情報信号の振幅が一定値以上得られなかった場合には、自動的に基板の厚みt2に対応した焦点制御を行う。また、情報信号の振幅が一定値以上得られた場合には、そのまま基板の厚みt1に対応した焦点制御を行って再生し続ける。本実施の形態により、基板の厚みを判断することができ、2種の厚みの基板の記録再生を安定に行うことができるという効果を有する。