JP4145709B2 - 緑化シミュレーションシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、実際の植生現場における植生工の成果を予測し、また個々の現場に適当な植生条件を予測するための緑化シミュレーションシステムに関する。
【0002】
【発明の背景】
植物は、その生育過程で様々な環境条件に置かれる。特に、亜寒帯から亜熱帯までの複数の気候区を持つ日本において、植物の受ける環境ストレスは地域によって大きく異なる。したがって、実際の植生計画を策定する段階で、対象地域及び対象地盤の性格を十分考慮し、それらの条件に適合した植物やその播種量等を決定しなければならない。
【0003】
緑化計画から維持管理までの一連の植生プロセスについて検討してみると、この植生プロセスは施工前段階の(1)調査と(2)計画、さらに施工段階の(3)緑化基礎工、(4)植生工、(5)植生管理工に大別され、特に計画段階の調査と計画はその良否がそのまま結果の良否を左右するために非常に重要である。そして、調査には、施工地における気温・降水量・日照・積雪量などの気象調査や、使用植物の選定計画に利用される土壌特性調査(例えば、土壌硬度、土性、土壌酸度などの調査)が含まれる。計画では、調査で取得した情報をもとに、施工面(施工地盤)の地形や地質・施工地の気象条件を考慮し、さらに斜面の安定性・植物の永続性・周辺環境との調和・施工の経済性を考慮したうえで、使用植物や緑化工法を検討する。また、流水による斜面浸食及び植生材料の流亡を防止するために必要な植物成立密度から植物種子の播種量を決定する。
【0004】
播種量の決定には以下の算定式が利用されている。
【0005】
この算定式に含まれる立地条件に対する補正率についてみると、以下の表のように決められている。
【0006】
しかし、植生工事は植物種子のような生き物を材料としたものであることから、植物種子が受ける環境ストレスは複合的な要因に基づくものであり、上述の表に示された大雑把な数値によって評価し得るものでないことは明らかである。そのため、実際の植生工において発芽不良や生育不良を発生することがあり、当初計画していた成立本数を確保できず、そのために工事の手直し(例えば、植物の播種適応外時期の追播種)を行わざるを得ないという状況も発生していた。
【0007】
そこで、本発明は、実際の現場をシミュレートした植生環境を人工的に作り出し、これにより植生工の成果を事前に予測でき、また最適な植生計画を策定することができるシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【発明の概要】
この目的を達成するために、本発明の緑化シミュレーションシステムは、上部開口部と緑化資材を収容できる資材収容室を備えた容器と、容器の傾斜角度を調整する角度調整装置と、傾斜角度が調整された容器に収容されている緑化資材に対して擬似太陽光を照射する人工太陽装置と、容器に収容されている緑化資材に対して水を供給する給水装置とを備えている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、複数の図面において同一の符号は同一又は類似の部品又は部分を示す。また、理解を容易にするために、例えば「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語を適宜使用するが、本発明の技術的範囲はそれらの用語の固有の意味によって限定されるべきものでない。
【0010】
図1は、本発明に係る緑化シミュレーションシステム10を示す。このシステム10は、複数の部材を組み合わせて構成されたフレーム(角度調整装置)12を有する。フレーム12は、図1の表裏方向に所定の間隔をあけて対称に配置された2つのサイドフレーム部14を有する。各サイドフレーム部14は、水平方向に配置された水平ビーム16と、その水平ビーム16の一端から上方に伸びる垂直ビーム18と、1/4円を描くように水平ビーム16の他端と垂直ビーム18の上端を結ぶアーチビーム20で構成されている。両サイドフレーム部14は、複数の連結ビーム22,24,26によって連結されている。これらの連結ビームのうち、特に水平ビーム16と垂直ビーム18との連結部又はその近傍に配置された連結ビーム(以下、この連結ビームを「軸26」という。)は、アーチビーム20の中心に一致している。アーチビーム20は、2つの径方向の内側と外側にそれぞれ異なるスケール28,30を備えている。本実施の形態において、内側のスケール28は角度スケールであり、軸26を中心として水平ビーム16から複数の角度(例えば、10度間隔及び/又は15度間隔)に対応する位置に角度孔32が形成されている。一方、外側のスケール30は勾配スケールであり、軸26を中心として水平ビームからの複数の勾配(例えば、勾配1.0、1.2、・・・)に対応する位置に勾配孔34が形成されている。垂直ビーム18の上端部を連結している連結ビーム22の中央部には、擬似太陽光を放出する照明装置を備えた人工太陽装置36が固定されている。照明装置には、植物の光合成に有効と考えられている400〜700nmの波長域の光を含み、太陽光の持つ波長分布特性に近い波長分布を有する光を放射するランプを用いることが好ましい。また、太陽装置36の傾きは自由に調整できるようになっている。
【0011】
図1に示すように、フレーム12は、緑化資材を収容するためのステンレス製の植生容器又は植生箱38を支持している。この植生箱38は、図2に示すように、長方形の底板40と、底板40の長辺方向両縁に沿って固定された2つの側板42と、底板40の短辺方向に沿って固定され、2つの側板42を相互に連結する2つの端板44,46を備えており、これら底板40、側板42、端板44,46によって、上部開口部48を備えた長方形の緑化資材収容室50が形成されている。緑化資材収容室50の内法は、例えば長辺方向長さ400mm×短辺方向長さ250mm×深さ100mmである。
【0012】
底板40の長手方向の一端側(下端側)には、短辺方向の軸貫通孔52が形成されている。また、底板40の長手方向他端側(上端側)には、上述した2つのスケール28,30の孔32,34に対応して位置決め用窪み54,56が形成されている。上端側の端板44は、その内側中央に上下方向に伸びる仕切板ガイド溝58が形成され、またこのガイド溝58を挟んでその両側上部の領域にそれぞれ給水孔60が形成されている。一方、下端側の端板46は、その内側中央に上下方向に伸びる仕切板ガイド溝62が形成され、またこのガイド溝62を挟んでその両側底部の領域に排水孔64が形成されている。緑化資材収容室50の内側にある底板部分の上面には、所定のパターンで複数の突起66が固定されている。突起66の形状、数、配置は、緑化資材収容室50に収容される緑化資材(特に、土壌)の性質によって決定すればよい。また、突起66と底板40は、底板40に対して突起66が着脱できるように構成するのが好ましい。下端側の端板46を挟み、緑化資材収容室50の反対側にある底板表面には、排水孔64から流出した水を集めるための集水ガイド68が設けてある。
【0013】
このような構成を備えたシステム10を用いて植生をシミュレートする場合、植生箱38をフレーム12に対して組み付ける。このとき、植生箱38は、フレーム12の軸26を底板下端側の軸貫通孔52に通し、軸26を中心に揺動可能に連結される。また、左右のアーチビーム20の対応する角度孔32又は勾配孔34に挿通された支持棒70(図1参照)を底板40の位置決め用窪み54又は56に係合する。これにより、植生箱38はその両端が支持される。支持棒70が挿入される孔は、このシステム10でシミュレートする植生地盤の勾配に合わせて選択される。さらに、上端側端壁44に形成した給水孔60は、給水管72を介して給水ポンプ(給水装置)74に接続される。
【0014】
図1に示すように、植生箱38の緑化資材収容室50には緑化資材76が収容される。緑化資材76は、シミュレートする現場の土壌78を含む。緑化資材収容室50に収容された土壌78は、突起66と係合する。したがって、植生箱38の勾配を大きくしても、緑化資材収容室50に充填された土壌78が滑って崩落することはない。
【0015】
土壌78の表面には植物種子を含む植生基板80を配置する。植生基板80には種々の公知の植生基板又は植生体が利用できる。例えば、本実施の形態では、図1に示すように、2枚の水分解性シート82,84の間に一定の密度で植物種子86を挟持したものが利用できる。また、水分解性シートの間には、肥料、土壌改良材、保水材などを収容してもよい。さらに、上層の水分解性シート84の上には、被覆材87としてわらやネットを配置してもよい。この被覆材87を使用する場合、被覆材87はその一部又はそれに連結された紐を側板42や端板44,46に取り付けたフック88(図1参照)に係合して固定するのが好ましい。
【0016】
緑化用植物種子を種子吹付工法で播種する植生工事をシミュレートする場合、土壌に種子・肥料・高分子バインダを混合し、その混合物を緑化資材収容室50に充填されている土壌78の上に配置する。厚層基材吹付工を想定した場合、吹付資材として有機質資材(例えば、バーク堆肥)や、それに無機質資材(例えば、バーミキュライト)を混合したものを緑化資材として利用できる。
【0017】
同時に2種類の土壌又は植生基板を用いて植物の生育を対比予測する場合、図4に示すように、端板44,46に形成したガイド溝58,62に沿って、端板44.46の間に仕切板90を挿入し、この仕切板90の両側に形成された別々の収容空間に別々の土壌又は植生基板を配置する。
【0018】
以上の準備が完了すると、施工現場の気象環境(降水量、日照、温度等)に基づいて、所定時間ごとに給水ポンプ74を駆動して給水孔60から緑化資材76及び植物種子86等に水を供給するとともに、人工太陽装置36を所定時間ごとに作動して緑化資材を照明し、これにより実際に起こり得る施工現場の環境を人工的に作り出す。緑化資材に含まれる余分な水は、下端側端板46の排水孔64から流出し、集水ガイド68によって集められ、図示しない排水タンク等に排水される。なお、排水孔64から土壌が流出するのを防止するために、排水孔64はネットで覆ってもよいし、排水孔64に綿やスポンジなどの透水性材料を充填してもよい。
【0019】
例えば、降水量は、給水ポンプ74の給水量を調整することにより調整される。日照条件(日照量、日照時間)は人工太陽装置36のランプに供給する電圧調整等により行われる。また、人工太陽装置36の取り付け位置や方向を変えることにより、日照方向を変えることができる。温度は、システム10の設置されている場所(例えば、恒温槽)の温度を調整することにより調整される。
【0020】
日照条件(傾斜土壌面に対する日照量、日照時間等)は、例えば、日本建築学会から発行されている「拡張アメダス気象データ」(CD−ROM版)のデータを利用するのが好ましい。また、降水条件(降水量)や気温は、例えば、日本気象協会製作、丸善から発行されている「気象データひまわり」(CD−ROM版)のデータを利用するのが好ましい。
【0021】
このように、降水量、気温、日照、勾配などの環境条件が調整された状態で種子の発芽及び植物の生育を観察する。例えば、試験の開始から30日目に、図3に示すように、発芽の本数を計算する。また、土壌表面の浸食状態を観察する。そして、それらの観察結果より、実際の現場における植物成立期待本数が予測される。
【0022】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係るシステムによれば、実際に植生が行われる現場の自然環境をシミュレートし、その現場での植物生育状態を予測できる。また、適正な植物種子播種量に予測できるとともに、追播種が不要になり、植生工事を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る緑化シミュレーションシステムの側面図。
【図2】 図1に示すシステムに利用する植生箱の斜視図。
【図3】 植生箱に充填された緑化資材から発芽した植物の状態を示す斜視図。
【図4】 仕切板を設けた植生箱の斜視図。
【符号の説明】
10:緑化シミュレーションシステム
12:フレーム
14:サイドフレーム部
16:水平ビーム
18:垂直ビーム
20:アーチビーム
22,24:連結ビーム
26:軸(連結ビーム)
28:角度スケール
30:勾配スケール
32:角度孔
34:勾配孔
36:人工太陽装置
38:植生箱
40:底板
42:側板
44,46:端板
48:上部開口部
50:緑化資材収容室
52:軸貫通孔
54,56:位置決め用窪み
58:仕切板ガイド溝
60:給水孔
62:仕切板ガイド溝
64:排水孔
66:突起
68:集水ガイド
70:支持棒
72:給水管
74:給水ポンプ(給水装置)
76:緑化資材
78:土壌
80:植生基板
82,84:水分解性シート
86:植物種子
87:被覆材
88:フック
90:仕切板
Claims (1)
- 上部開口部と緑化資材を収容できる資材収容室を備えた容器と、
容器の傾斜角度を調整する角度調整装置と、
傾斜角度が調整された容器に収容されている緑化資材に対して擬似太陽光を照射する人工太陽装置と、
容器に収容されている緑化資材に対して水を供給する給水装置とを備えたことを特徴とする緑化シミュレーションシステム。
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