JP4143481B2 - 移動発音体の運動分析方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、移動発音体の運動分析方法に係り、特に、船舶等の何らかの音を発しながら移動する運動体からの音波を聴音器を用いて検出し、その運動パラメータ及び固有周波数の分析を行う移動発音体の運動分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
船舶等の移動発音体の運動分析方法に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、実際に聴音器で観測された音波の方位と、仮定した運動パターンで移動発音体が移動した場合に聴音器で観測されると思われる音波の方位との差から運動パターンの近似解を求めることにより、移動発音体の運動パラメータを解析するというものである。
【0003】
【特許文献1】
特開平4−370779号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術による移動発音体の運動分析方法は、周波数情報が使用されておらず、移動発音体の固有周波数を求めることができず、また、方位情報だけを使用しているため、最適な運動パラメータを一意的に求めることができない場合があるという問題点を有している。また、従来技術による運動分析方法は、運動パラメータをオペレータが推定しているが、推定すべきパラメータが、距離と速力、または、距離と針路の2つであり、これらをオペレータが推定し、パラメータを少しづつ変更しながら、最適解を得るには多くの時間を要するという問題点を有している。さらに、前述の従来技術は、各パラメータの全てのパターンに対する評価を行うことがオペレータでは実質的に不可能なため、方位残差量が十分小であるとオペレータが主観的に判断したパラメータの組み合わせを最適解としていたが、方位残差量がより小なパラメータの組み合わせが存在する可能性が残されており、求めた最適解が真の最適解とは言えないという問題点を有している。
【0005】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、移動発音体の運動パラメータを自動的に変更し、各パラメータの取り得る全てのパターンにおける方位残差量及び周波数残差量を数値的に比較することにより、運動パラメータ及び固有周波数の最適解を高速かつ正確に求めることができるようにした移動発音体の運動分析方法及び運動分析装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば前記目的は、聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動パラメータと固有周波数とを分析する移動発音体の運動分析方法において、前記観測された移動発音体の前記観測方位情報と前記観測周波数情報とを入力された時間間隔で平滑化するステップと、前記平滑後の方位情報に基づく分析の基準データとなる方位情報の指定を受け付けるステップと、入力された仮定速力を入力された仮定速力の変更幅で順次変更するステップと、前記順次変更された仮定速力と基準データとから距離の変更範囲を計算するステップと、前回の仮定速力の分析結果から最適距離を予測し、距離変更範囲を修正するステップと、入力された仮定距離を入力された仮定距離の変更幅で順次変更するステップと、前記変更された仮定速力、前記変更された仮定距離、前記基準データから順次仮定運動パターンを計算するステップと、算出した前記仮定運動パターンから前記移動発音体の所定の時刻の方位情報を順次算出し、算出されたそれぞれの方位情報と同時刻の平滑後の前記方位情報との方位差分及び方位差分の二乗和である方位残差量を求めるステップと、前記各仮定速力における周波数残差量を最小とする最適固有周波数を計算するステップと、前記計算された固有周波数及び前記仮定運動パターンから前記移動発音体の所定の時刻の周波数情報を順次算出し、算出されたそれぞれの周波数情報と同時刻の平滑後の前記周波数情報との周波数差分及び周波数差分の二乗和である周波数残差量を求めるステップと、前記方位残差量と前記周波数残差量との和から最適運動パラメータを求めるステップとを有することにより達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による移動発音体の運動分析方法及び運動分析支援装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0009】
図1は本発明の一実施形態による移動発音体の運動分析支援装置の構成例を示すブロック図である。ここで説明する装置において、運動分析及び固有周波数分析の対象となる移動発音体を移動発音体600とする。
【0010】
本発明の実施形態による運動分析支援装置は、仮定運動パターン及び仮定固有周波数を評価し最適解を求める最適解計算装置100と、求めた最適解及び方位と周波数との履歴情報を表示する表示装置200と、オペレータからの入力を受け付けるオペレータ入力装置300とを備えて構成される。そして、図1に示す実施形態は、前述の運動分析支援装置と、移動発音体600の方位情報と周波数情報とを音圧として取り込む聴音器500と、聴音器500で取り込んだ、方位及び周波数に関する音圧を電気信号に変換する信号処理装置400とを備えている。聴音器500で収集され、信号処理装置400を介して受け取った移動発音体600に関する方位データ及び周波数データは、最適解計算装置100内のデータベースに格納される。
【0011】
最適解計算装置100は、装置全体の制御を行い、本発明の実施形態における各種処理を実現するためのプログラムを実行する中央処理装置と、各種データ及びプログラムを格納する記憶部と、入出力のインターフェイスとを備えた一般的な構成を有する情報処理装置上に構築することが可能である。
【0012】
表示装置200は、分析結果表示部210と履歴情報表示部220とを備えたCRT、液晶ディスプレイ等の表示装置であり、後述する最適解計算装置100の表示制御部195の制御に基づき、各表示部に最適解計算装置100での処理の結果を表示する。また、履歴情報表示部220は、方位の履歴情報を表示する方位履歴情報表示部220aと周波数の履歴情報を表示する周波数履歴情報表示部220bとを備えている。
【0013】
オペレータ入力装置300は、数値の入力を受け付けるテンキー310と、分析にあたって必要な各種設定を受け付けるスイッチ320と、表示装置200に表示されたものに対する選択を受け付けるマウス等のポインティングディバイス330とを備える。ポインティングディバイス330は、ボールタブ等であってもよい。
【0014】
最適解計算装置100は、聴音器500で収集され、信号処理装置400を介して入手した観測データを、オペレータ入力装置300で受け付けたオペレータによる設定値を用いて処理を行い、処理結果を表示装置200に表示させるものである。
【0015】
最適解計算装置100の記憶部には、観測方位データベース710と、観測周波数データベース720と、分析用方位データベース730と、分析用周波数データベース740と、分析結果データベース750とが格納される。
【0016】
観測用方位データベース710及び観測周波数データベース720は、聴音器500より得られ、信号処理装置400で信号化された、移動発音体600の方位に関する離散時間的な観測データ及び周波数に関する離散時間的な観測データが格納されるデータベースである。
【0017】
具体的には、観測方位データベース710には、観測時刻ti 毎の移動発音体600の方位Byi及び聴音器500(聴音器500が設置されている観測船)の位置、速力、進行方向が格納され、観測周波数データベース720には、観測時刻ti 毎の移動発音体600からの周波数及び聴音器(聴音器500が設置されている観測船)の位置、速力、進行方向が格納される。
【0018】
また、分析用方位データベース730及び分析用周波数データベース740は、それぞれ、後述する平滑方位計算処理部110a及び平滑周波数計算処理部110bにおける処理結果が格納されるデータベースである。分析結果データベース750は、各的速における最適距離、及びそれに対応する的針、固有周波数、方位残差量、周波数残差量が格納される。
【0019】
最適解計算装置100は、これらのデータベースに格納されているデータに基づき、移動発音体の運動パラメータ及び固有周波数の分析を行う以下に説明する機能をプログラムの実行によって実現する。プログラムの実行によって実現される機能は、平滑処理部110と、基準データ指定部120と、速力変更幅指定部125と、仮定速力変更部130と、距離変更幅指定部135と、距離範囲計算部140と、仮定距離変更部145と、仮定運動パターン計算部150と、方位残差分析部160と、仮定固有周波数計算部170と、周波数残差分析部180と、最適解判定部190と、表示制御部195とである。
【0020】
以下、前述の各機能構成部のそれそれが実行する処理について説明する。
【0021】
1. 平滑処理部110
平滑処理部110は、ばらつきのある観測データから誤差を除去するため、観測データに平滑処理を施すもので、観測方位データベース710及び観測周波数データベース720に2Th 秒内に蓄積されたデータから、オペレータが指定した一次平滑時隔Th 秒毎の分析用データを算出する。算出された分析用データは、分析用方位データベース730及び分析用周波数データベース740に格納される。
【0022】
一次平滑時隔Th は、オペレータがテンキー310を用いて入力した指定データを受け付けることによって取得する。方位情報に対する平滑処理は平滑方位計算処理部110aで、周波数情報に対する平滑処理は平滑周波数計算処理部110bで、それぞれ独立して実行される。以下に各部の処理を説明する。
【0023】
1−a. 平滑方位計算処理部110a
ここでの処理は、観測方位データベース710に2Th 秒内に蓄積されたデータから以下に説明する線形回帰により平滑方位、平滑方位変化率及び平滑方位分散を求めるものである。
【0024】
図2は平滑処理部で実施する一次平滑の原理を説明する図である。図2において、y軸方向は時刻、x軸方向は方位を示す。Th は、前述のように、オペレータによって指定された一次平滑時隔であり、y軸のt−3Th 、t−2Th 、t−Th 、tは一次平滑時刻を示す。また、djk(j:平滑区間番号、k:平滑区間内データ番号)は観測データByiをプロットしたものである。
【0025】
平滑は、Th 秒間を1平滑区間とし、連続した2つの平滑区間のデータを用いて、1平滑区間ずつ行う。例えば、図2において、t−3Th からt−2Th の区間を平滑区間1、t−2Th からt−Th からの区間を平滑区間2、t−2Th からtの区間を平滑区間3とすると、平滑区間1の平滑処理は、平滑区間1及び平滑区間2のデータを用いて行われ、平滑区間2の平滑処理は、平滑区間2及び平滑区間3のデータを用いて行われる。
【0026】
ここで、平滑区間1における平滑処理について説明する。はじめに、平滑区間1及び平滑区間2の2つの平滑区間の観測データ(2Th 秒内に蓄積された観測データ)を用いて平滑直線112を求める。この直線上における平滑区間1内の最新観測データd16の観測時刻に対する平滑直線112上の方位を平滑方位Dk1とする。同様に、平滑区間2及び平滑区間3の観測データを用いて、平滑直線123を求め、平滑方位Dk2を計算する。
【0027】
以下に平滑方位を計算する式を示す。
【0028】
まず、一次平滑係数を以下に数1として示す式(1)〜式(5)により算出する。
【0029】
【数1】
【0030】
式(1)〜式(5)において、ti は観測時刻、byiは時刻ti における聴音器観測方位、tb は平滑基準時刻、Bb は平滑基準方位、Ab は方位差成分の総和、At は時間差成分の総和、Abtは方位差成分と時間差成分との積の総和、At2は時間差成分の2乗総和、Ab2は方位差成分の2乗総和、Nは被平滑区間及び次の平滑区間内の全観測データ数である。但し、観測方位は真北を0°とする絶対方位とする。また、byiは、観測方位データベース710内に格納されているデータであり、tb 及びBb は、観測方位データベース710内の最古のデータの時刻及び方位である。
【0031】
前述の式(1)〜式(5)により算出された一次平滑係数を用い、平滑方位変化率BDB、平滑基準時刻tb における平滑方位SBY、平滑方位By 及び平滑方位分散σBy を、数2として示す式(6)〜式(9)により算出する。
【0032】
【数2】
【0033】
前述により求められた、平滑方位By 及び平滑方位分散σBy は、平滑区間内最新観測時刻と共に、分析用方位データベース730に格納される。このとき、観測方位データベース710から取得した、その平滑区間内最新観測時刻における聴音器情報(位置、速力、進行方向)に関するデータも、同時に分析用方位データベース730に格納される。以後、ここで算出された平滑方位By を平滑方位と呼び、それに対応する平滑区間内最新観測時刻を方位平滑時刻と呼ぶ。
【0034】
1−b. 平滑周波数計算処理部110b
次に、観測周波数データベースに格納されているデータから、分析用周波数データベースに格納するデータを算出する平滑周波数計算処理部110bについて説明する。平滑周波数計算処理部110bは、観測周波数データベース720に2Th 秒内に蓄積されたデータから、前述の線形回帰により平滑周波数、平滑周波数変化率及び平滑周波数分散を求めるものである。平滑処理の原理は、図2を参照して説明した方位の平滑の場合と同様である。
【0035】
以下に平滑周波数を計算する式を示す。
【0036】
まず、一次平滑係数を、数3として示す式(10)〜式(14)により算出する。
【0037】
【数3】
【0038】
式(10)〜式(14)において、tj は観測時刻、fj は時刻tj における聴音器観測周波数、tb は平滑基準時刻、Fb は平滑基準周波数、Af は周波数差成分の総和、At は時間差成分の総和、Aftは周波数差成分と時間差成分との積の総和、At2は時間差成分の2乗総和、Af2は周波数差成分の2乗総和、Nは被平滑区間及び次の平滑区間内の全観測データ数である。また、fj は観測周波数データベース920に格納されているデータであり、tb 及びFb は、観測周波数データベース920の最古のデータの時刻及び周波数である。
【0039】
前述の式(10)〜式(14)で算出された一次平滑係数を用い、平滑周波数変化率SDF、平滑基準時刻における平滑周波数F及び平滑周波数分散σFを、以下に数4として示す式(15)〜式(18)により算出する。
【0040】
【数4】
【0041】
前述により求められた平滑周波数F及び平滑周波数分散σFは、平滑区間内最新観測時刻と共に、分析用周波数データベース740に格納される。このとき、観測周波数データベースから取得した、その平滑区間内最新観測時刻における聴音器情報(位置、速力、進行方向)に関するデータも、同時に分析用周波数データベース740に格納される。以後、ここで算出された平滑周波数Fを、平滑周波数と呼び、それに対応する平滑区間内最新観測時刻を周波数平滑時刻と呼ぶ。
【0042】
2. 基準データ指定部120
基準データ指定部120は、オペレータがポインティングディバイス330を用いて選択した基準データ1及び基準データ2を受け付け、これらのデータを後述する距離範囲計算部140、仮定運動パターン計算部150、履歴情報表示部220に受け渡す。前述の基準データ1、2は、先に述べた方位履歴表示部220aに表示されているデータの中からオペレータが分析の基準となるデータとして選択するものである。但し、基準データ1は、基準データ2より過去のデータとする。また、初期値として、最古の平滑方位データを基準データ1、最新の平滑方位データを基準データ2と設定する。後述するように、方位履歴表示部220aに表示されているデータのうち、基準データとして指定を受け付けたデータには、破線円を重畳表示させる。
【0043】
3. 速力変更幅指定部125
速力変更幅指定部125は、オペレータがテンキー310を用いて入力した速力変更幅ΔMt 及び移動発音体の予想最高速力Mtmaxを受け付け、これらを後述する仮定速力変更部130に受け渡す。
【0044】
4. 仮定速力変更部130
仮定速力変更部130は、運動パラメータの1つである速力を速力変更幅指定部125より受け付けた速力変更幅ΔMt の間隔で増加させ、それを仮定速力Mt として、距離範囲計算部140及び仮定運動パターン計算部150に受け渡すものである。仮定速力Mt の変更範囲は、0ktから移動発音体の予想最高速力Mtmaxまでとする。
【0045】
5. 距離変更幅指定部135
距離変更幅指定部135は、オペレータがテンキー310を用いて入力した距離変更幅ΔRを受け付け、これを後述する仮定距離変更部145に受け渡す。
【0046】
6. 距離範囲計算部140
距離範囲計算部140は、仮定速力Mt と基準データ1、2における平滑方位と方位平滑時刻とから、仮定速力Mt に対する距離の変更可能範囲を幾何学的条件により計算する。計算により求めた距離の変更可能範囲は、距離最小値Rmin 及び距離最大値Rmax として仮定距離変更部145に受け渡される。幾何学的条件による計算の方法は、仮定運動パターン計算部150の説明の部分で行うこととする。
【0047】
7. 仮定距離変更部145
仮定距離変更部145は、運動パラメータの1つである距離を距離変更幅指定部135より受け付けた速力変更幅ΔRの間隔で増加させ、それを仮定距離Rとして仮定運動パターン計算部150に受け渡すものである。仮定距離Rの変更範囲は距離最小値Rmin から距離最大値Rmax までとする。
【0048】
8. 仮定運動パターン計算部150
仮定運動パターン計算部150は、運動パラメータと方位に関する基準データとを用い、仮定運動パターンを計算するものである。
【0049】
仮定運動パターンの計算に用いる運動パラメータは、仮定速力変更部130から受け渡された仮定速力Mt 、仮定距離変更部145から受け渡された仮定距離Rであり、基準データは、基準データ指定部120においてオペレータが指定したものを受け付けた基準データ1及び基準データ2である。これらを用いて、仮定運動パターン計算部150は、基準データ1における平滑方位方向に移動発音体600があると仮定し、移動発音体の針路Ct を算出する。
【0050】
図3は仮定運動パターンを求める方法の原理を説明する図である。図3において、基準データ1における聴音器500の位置を原点とし、基準データ2における聴音器500の位置を(Xo ,Yo )とする。基準データ1における平滑方位をy軸方向とし、原点からy軸上の距離Rの点に移動発音体600を仮定する。その点を中心とし半径をMt・Tとする円をCとする。ここで、Rは仮定距離、Mt は仮定速力であり、Tは基準データ1から基準データ2までの時間間隔である。(Xo ,Yo )点からy軸とEb なる角度をなす直線をLとし、円Cとの2つの交点をLa (Xa ,Ya )及びLb (Xb ,Yb )とする。ここで、図3に示すEb は、基準データ1と基準データ2との平滑方位の差であり、直線Lの方向は、基準データ2の平滑方位の方向である。仮定運動パターン計算のアルゴリズムは、(Xo ,Yo ),R,Mt ,T及びEb が与えられたとき、これらから円Cと直線Lとの交点La (Xa ,Ya )またはLb (Xb ,Yb )を求め、さらに、それらの交点La またはLb と円Cの中心とを結ぶ直線と、基準データ1における平滑方位とがなす角度Ua またはUb を求めるものである。
【0051】
前述において、基準データ1における聴音器500の位置を原点とした基準データ2における聴音器の相対位置(Xo ,Yo )は、分析用方位データベース730から取得した、基準データ1における平滑方位とそれぞれの基準データの聴音器位置から算出する。また、基準データ1から基準データ2までの時間間隔Tは、それぞれの基準データの方位平滑時刻から算出する。仮定距離R及び仮定速力Mt は、それぞれ基準データ1の時刻における移動発音体600と聴音器500とからの距離及び移動発音体600の速力の仮定値であり、前述したように仮定速力変更部130及び仮定距離変更部145より与えられたものを受け付ける。これらを用いて求めた角度Ua またはUb と基準データ1における平滑方位とから、以下のようにして移動発音体の針路を求めることができる。
【0052】
図3において、円の方程式(19)と直線の方程式(20)とは、数5として示す通りであり、式(20)を式(19)に代入してについて整理すると、数5として示す式(21)に示すようになる。
【0053】
【数5】
【0054】
前述の式(21)をxについて解くと、円Cと直線Lとの2つの交点(Xa ,Ya )及び(Xb ,Yb )は、数6として示す式(22)〜式(25)のように表される。
【0055】
【数6】
【0056】
また、基準データ2における聴音器とそれぞれの解との距離をRa 及びRb とすると、Ra 及びRb は、数7として示す式(26)、式(27)のように表される。
【0057】
【数7】
【0058】
ここで、Ra >Rb ならば(Xa ,Ya )が遠パターンの解、(Xb ,Yb )が近パターンの解となる。逆に、Ra <Rb ならば、(Xa ,Ya )が近パターンの解、(Xb ,Yb )が遠パターンの解となる。(Xa ,Ya )及び(Xb ,Yb )をそれぞれ遠パターンまたは近パターンの場合の基準データ2における移動発音体600の位置とする。円Cの中心と(Xa ,Ya )及び(Xb ,Yb )とを結ぶ直線と基準データ1における平滑方位とのなす角度をそれぞれUa 及びUb とすると、Ua 及びUb は、数8に示す式(28)、式(29)のように表すことができる。また、基準データ1における平滑方位Bysを用い、移動発音体の針路Cta及びCtbを求めると、移動発音体の針路Cta及びCtbは、数8に示す式(30)、式(31)のように求められる。
【0059】
【数8】
【0060】
前述の2つの仮定運動パラメータの組合せ(R,Mt ,Cta)及び(R,Mt ,Ctb)に関して、それぞれ方位残差分析処理を行う。方位残差分析処理については、次の方位残差分析部160の説明の部分で説明する。
【0061】
前述をふまえた上で、以下に距離範囲計算の説明を行う。前述の説明は、直線Lと円Cとが交点を持つ場合であったが、受け渡された仮定速力Mt 及び仮定距離Rによっては直線Lと円Cとが交わらない場合もある。図3において、Mt・T及びEb を一定に保ったまま、距離Rを増加させていくと、いずれ直線Lと円Cとは交わらなくなる。
【0062】
図4は速力における距離変更範囲の最大値について説明する図であり、前述した直線Lと円Cとが交わらなくなる臨界点、すなわち、図4に示すような直線Lと円Cとが接する点では式(21)の解が重根となる。重根の場合、式(21)に関する判別式は0となるので、判別式及びその判別式をRに関して解いたものは、数9として示す式(32)、式(33)のようになる。
【0063】
【数9】
【0064】
式(33)に示すRが仮定速力Mt に対する距離の変更可能範囲の最大値、すなわち、距離最大値Rmax である。但し、算出したRmax が聴音器の最大感知距離を越える場合には、聴音器の最大感知距離をRmax とする。
【0065】
図5は速力における距離変更範囲の最小値について説明する図である。この図5に示すように、基準データ1と基準データ2との平滑方位線が交差する場合、直線Lと円Cとが接する点での判別式をRに関して解いたものは、数10として示す式(34)のようになる
【数10】
【0066】
式(34)に示すRが仮定速力Mt に対する距離の変更可能範囲の最小値、すなわち、距離最小値Rmin である。ただし、Rmin が負となる場合には0をRmin とする。
【0067】
9. 方位残差分析部160
方位残差分析部160は、各方位平滑時刻において、前述の仮定運動パターン計算部150で求めた運動パターンで移動発音体600が移動した場合に、聴音器500で観測されると思われる方位(分析方位)と、実際に聴音器500で観測された方位(平滑方位)との差を方位残差として求める。
【0068】
基準データ1における聴音器500に対する移動発音体600の相対位置を(xs ,ys )とし、基準データ1と各方位平滑時刻との時間間隔をTi 、仮定運動パターン計算部150で求められた針路をCt とすると、各方位平滑時刻における移動発音体600の基準データ1に対する相対位置Pi (xi ,yi )は、数11として示す式(35)、式(36)のようになる。
【0069】
【数11】
【0070】
図6は方位残差算出の原理を説明する図である。各観測時刻における聴音器500からみた移動発音体600の分析方位は、数12に示す式(37)の通りとなる。
【0071】
【数12】
【0072】
式(37)においてXoi及びYoiは、各観測時刻における聴音器500の相対位置、すなわち、基準データ1における聴音器500の位置を基準とした場合の東西(経度)成分及び南北(緯度)成分である。
【0073】
各方位平滑時刻における実際の平滑方位をByiとすると、方位残差jBiは、数13に示す式(38)のようになる。
【0074】
【数13】
【0075】
前述のようにして求められた各方位平滑時刻における方位残差と各方位平滑時刻とにおける平滑方位分散σByiより、方位残差量δb を求める。この方位残差量δb は、数14に示す式(39)のようになる。
【0076】
【数14】
【0077】
この方位残差量δb は、仮定した運動パターンが移動発音体600の実際の運動に近いものかどうかの評価指標とされる。すなわち、方位残差量δb が微小値であるほど、仮定した運動パターンは移動発音体600の実際の運動に近いものであると評価することができる。
【0078】
方位残差分析は、遠パターンと近パターンとのそれぞれの針路Ct に対して行い、方位残差量δb の小さい方が仮定速力Mt における仮定距離の解析値として選択される。選択した方位残差量δb と仮定速力Mt における前回仮定距離までの最小方位残差量δb〜とを比較し、今回の方位残差量δb が最小方位残差量δb〜より小であるなら、仮定距離R、針路Ct 、今回の方位残差量δb を仮定速力Mt における最適解として、分析結果データベースに格納する。すなわち、今回の方位残差量δb が仮定速力Mt における最小方位残差量δb〜となり、仮定距離R及び針路Ct が、それぞれ最適距離R〜 及び最適針路Ct〜となる。
【0079】
なお、前述において、「〜 」の記述は、〜 の直前の文字の上に〜 が付与されたものであることを示しており、以後も同様である。また、「^ 」の記述についても同様である。
【0080】
前述した処理をRmin からRmax からまで仮定距離RをΔRだけ増加しながら繰り返し行うことにより、仮定速力Mt における最適解(最小方位残差量δb´、最適距離R´、最適針路Ct´)を求めることができる。
【0081】
また、前述の処理を、0ktからMtmaxまで仮定速力Mt をΔMt だけ増加しながら繰り返し行うことにより、各仮定速力Mtkにおける最適解(最小方位残差量δb〜、最適距離R〜 k、最適針路Ct〜 k )を求めることができる。ここで、(k=1,2,3,‥‥‥,m)であり、mは、MtmaxをΔMt で割った商の整数部である。
【0082】
10. 最適距離予測部165
移動発音体600の仮定速力Mtkが聴音器500の移動速力より大きい場合、仮定速力Mtk,Mtk+1と最適距離R〜 k,R〜 k+1との間に、数15に示す式(40)のような比例関係が成り立つ場合がある。
【0083】
【数15】
【0084】
そこで、最適距離予測部165は、速力変更幅ΔMt が1kt以上で、異なる3つの仮定速力MtkとMtk+1、Mtk+1とMtk+2の間で式(40)に示す比例関係が±5%以内で成り立つ場合に、Mtk+3にも比例関係が成り立つと仮定し、Mtk+3における予測最適距離R^k+3を、数16に示す式(41)により求める。
【0085】
【数16】
【0086】
最適距離R〜 k+3は、予測最適距離R^k+3の付近に存在すると考えられるので、距離最大値Rmaxk+3、距離最小値Rmink+3を、数17に示す式(42)、式(43)により求める。
【0087】
【数17】
【0088】
式(42)、式(43)におけるΔR^k+3は、式(44)に示すような予測変更幅であり、この予測変更幅ΔR^k+3が距離変更幅ΔRの5倍未満の場合、予測変更幅ΔR^k+3を距離変更幅ΔRの5倍とする。このようにして計算された距離最大値Rmaxk+3及び距離最小値Rmink+3は、前述した仮定距離変更部145に受け渡される。
【0089】
これにより距離Rの変更範囲が狭められることになり、よって各仮定速力において距離Rに対する反復計算回数を減少させることができ、最適解を得るまでの処理時間を短縮することができる。
【0090】
11. 仮定固有周波数計算部170
仮定速力Mtkにおける最適距離R〜 k、最適針路Ct〜 k が与えられた場合、周波数残差量δf を最小とする最適固有周波数F〜 kを計算する。最適固有周波数の計算の方法については、周波数残差分析部180で説明する。
【0091】
12. 周波数残差分析部180
周波数残差分析部180は、各周波数平滑時刻において、前述した仮定固有周波数計算部170で求めた最適固有周波数を発っしつつ、仮定運動パターン計算部150で求めた運動パターンで移動発音体600が移動した場合に、聴音器500で観測されると思われる周波数(分析周波数)と、実際に聴音器500で観測された周波数(平滑周波数)との差を周波数残差として求める。
【0092】
図7は仮定運動パターンにおける聴音器と移動発音体との相対運動を説明する図である。
【0093】
図7に示すように、移動発音体600と聴音器500とは相対運動をしているので、観測される周波数は、移動発音体の固有周波数からドップラー効果の分だけずれて観測される。
【0094】
仮定固有周波数計算部170から与えられた最適固有周波数をF〜 とすると各周波数平滑時刻における分析周波数F´jは、ドップラー効果の公式による数18に示す式(46)により求めることができる。
【0095】
【数18】
【0096】
数18に示す式(46)において、Vは水中音速、Mojは聴音器500の速力、Cojは聴音器500の針路方向、By´jは分析方位、Mt は移動発音体600の仮定速力、Ct〜は仮定速力Mt における移動発音体600の最適針路である。
【0097】
各周波数平滑時刻における実際の平滑周波数をFj とすると、分析周波数F´jを用い、周波数残差jFjは、数19に示す式(47)により求められる。
【0098】
【数19】
【0099】
前述のようにして求められた各周波数平滑時刻における周波数残差jFjと各周波数平滑時刻における平滑周波数分散σFj より、周波数残差量δf は、数20に示す式(48)により求められる。
【0100】
【数20】
【0101】
前述までで説明したようにして求められた各仮定的速Mtk における周波数残差量δfkは、最適固有周波数F〜 kと共に分析結果データベースに格納される。
【0102】
ここで、最適固有周波数F〜 の計算の方法を説明しておく。仮定速力Mt における最適距離R〜 、最適針路Ct〜が与えられた場合、周波数残差量δf を最小とする仮定固有周波数F〜 は、前述の式(48)より、数21に示す式(49)の方程式を満たすF〜 である。
【0103】
【数21】
【0104】
この式(49)を解くと、F〜 は、数22に示す式(50)となる。
【0105】
【数22】
【0106】
このようにして求められた最適固有周波数F〜 を用いることにより、仮定速力Mt 、最適距離R〜 、最適針路Ct〜における最小周波数残差量δf〜を求めることができる。
【0107】
13. 最適解判定部190
最適解判定部190は、以下に説明するように演算を行う。まず、仮定速力Mtjにおける最小方位残差量δbjと最小周波数残差量δf〜 j の和を総残差量δs〜 j として、数23に示す式(51)により総残差量δs〜 j を求める。
【0108】
【数23】
【0109】
求められた総残差量δs〜 j は、各仮定速力Mtjにおける最適解の評価指標とされる。各仮定速力における総残差量を比較し、総残差量が最も小さい仮定速力における、最適距離、最適針路、最適固有周波数及びこの仮定速力を移動発音体の仮定運動パラメータの最適解とする。以後、この最適解を総最適解と呼び、総最適解における仮定速力を最適速力と呼ぶ。但し、周波数情報が聴音器で得られなかった場合には、各仮定速力における最小方位残差量を総残差量とし、総最適解を得るものとする。
【0110】
14. 表示制御部195
表示制御部195は、最適解計算装置100の各部で行われた処理の結果を表示装置200に表示させる。その際、以下に、12−1として説明する分析結果表示制御、12−2として説明する履歴情報表示制御の2種類の制御を行う。以下、それぞれの制御について説明する。
【0111】
12−1.分析結果表示制御
前述の最適解判定部190で求めた総最適解の仮定速力Mt 、最適距離R〜 、最適針路Ct〜、最適固有周波数F〜 、最小方位残差量δb〜、最小周波数残差量δf〜、総残差量δs〜を数値情報として分析結果表示部210に表示する。また、総最適解の最適距離R〜 を用いて計算される基準データ1における移動発音体600の相対位置を(xs ,ys )とし、基準データ1と現在時刻の時間間隔をΔTnとして、総最適解の最適速力Mt〜と最適針路Ct〜とを用いて、現在時刻における移動発音体600の相対位置Pn(xn ,yn )は、数24に示す式(52)、式(53)により求められる。
【0112】
【数24】
【0113】
現在時刻における聴音器500の相対位置をOn(xon,yon)とし、On からみたPn の方位を現在方位BYn 、On とPn との距離を現在距離RRn とすると、現在方位BYn 及び現在距離RRn は、数25に示す式(54)、式(55)により求められる。
【0114】
【数25】
【0115】
前述のようにして求められた移動発音体600の現在方位BYn 及び現在距離RRn も分析結果表示部210に併せて表示される。
【0116】
12−2.履歴情報表示制御
履歴情報表示制御は、平滑処理部110により求められて、分析用方位データベース730および分析用周波数データベース740に格納されたデータを、表示装置200の履歴情報表示部220に、時刻に対するプロットとして表示する制御を行う。
【0117】
12−2−a.方位履歴情報表示処理220a
方位履歴情報表示処理220aは、分析用方位データベース730に格納されている平滑方位By 及び平滑方位分散σBy を、履歴情報表示部220の方位履歴情報表示部220aに表示する処理を行う。
【0118】
図8は平滑方位By 及び聴音器針路方向を時間に対してプロットすることにより表示させた様子を示す図である。
【0119】
図8に示す表示例は、一方の軸を方位、もう一方の軸を時刻として各方位平滑時刻における平滑方位By をプロットして表示した場合の例である。各平滑方位By に対する平滑方位分散σBy は、その平滑方位By を中心とし、幅2σBy の誤差棒を付けて表示される。同時に、各方位平滑時刻における聴音器500の針路方向も合わせて表示される。基準データ指定部120で受け付けた基準データ1及び基準データ2にあたる平滑方位By のプロットには破線円が重畳表示される。以下、このプロットを時刻方位履歴表示と呼ぶ。この時刻方位履歴表示の表示中心方位Bc 及び表示方位スケールBs 、時間表示スケールTs は、任意に設定可能である。この設定は、オペレータがオペレータ入力装置300のテンキー310及びスイッチ320を用いて入力することにより行われる。なお、時間表示スケールTs は、後に説明する時刻周波数履歴情報表示と連動して切り替えられる。
【0120】
12−2−b.周波数履歴情報表示処理220b
周波数履歴情報表示処理220bは、分析用周波数データベース740に格納されている平滑周波数F及び平滑周波数分散σFを、履歴情報表示部220の周波数履歴情報表示部220bに表示する処理を行う。
【0121】
図9は平滑周波数Fを時刻に対してプロットして表示させた様子を示す図である。
【0122】
図9に示す表示例は、一方の軸を周波数、もう一方の軸を時刻として各周波数平滑時刻における平滑周波数Fをプロットして表示した例である。各平滑周波数Fに対する平滑周波数分散σFは、平滑周波数Fを中心とし、幅2σFの誤差棒を付けて表示される。以下、このプロットを時刻周波数履歴表示と呼ぶ。この時刻周波数履歴表示の表示中心周波数Fc 及び表示周波数スケールFs 、時間表示スケールTs は任意に設定可能である。Fc 、Fs 、Ts の設定は、オペレータがオペレータ入力装置300のテンキー310及びスイッチ320を用いて入力することにより行われる。また、総最適解が得られている場合には、最適固有周波数F〜 も併せて表示される。
【0123】
図10は最適解計算装置100の処理動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。
【0124】
(1)まず、平滑処理部110は、オペレータによる平滑時隔の入力を受け付け、観測方位データベース710及び観測周波数データベース720に蓄積されているデータに対して、その平滑時隔を用いた平滑処理を行い、その処理結果を分析用方位データベース730及び分析用周波数データベース740に格納する(ステップS001)。
【0125】
(2)次に、表示制御部195は、分析用方位データベース730及び分析用周波数データベース740に格納されたデータを時刻方位履歴表示及び時刻周波数履歴表示として、表示装置200の履歴情報表示部220に表示する(ステップS002)。
【0126】
(3)ここで、オペレータは、ステップS002の処理で表示される時刻方位履歴表示を見て、基準データを選択することができる。基準データ指定部120は、オペレータ入力装置300を介して、オペレータからの基準データに関する指定を受け付け、そのデータを表示制御部195、距離範囲計算部140、仮定運動パターン計算部150に受け渡す(ステップS003)。
【0127】
(4)次に、オペレータは、仮定速力の速力変更幅と移動発音体の予想最高速力とを指定する。速力変更幅指定部125は、オペレータ入力装置300を介して前述のオペレータの速力変更幅と移動発音体の予想最高速力とに関する指定を受け付け、それらの情報を仮定速力変更部130に受け渡す(ステップS004)。
【0128】
(5)仮定速力の場合と同様に、オペレータは、仮定距離の距離変更幅を指定する。距離変更幅指定部135は、オペレータ入力装置300を介して前述のオペレータの距離変更幅に関する指定を受け付け、その情報を仮定距離変更部145に受け渡す(ステップS005)。
【0129】
(6)仮定速力変更部130は、仮定速力に速力変更幅指定部125より受け付けた速力変更幅を順次加算し、距離範囲計算部140及び仮定運動パターン計算部150に加算した結果の変更後の仮定速力順次を受け渡す。なお、この処理は、仮定速力0ktから始め、仮定速力が移動発音体の予想最高速力を上回るまで繰り返し、上回った時点で当処理を終了する(ステップS006)。
【0130】
(7)距離範囲計算部140は、ステップS006の処理で変更された仮定速力を順次受け取り、仮定速力が予想最高速力Mtmaxより小さいか否かを判定し、仮定速力が予想最高速力を越えた場合、後述するステップS014の処理に移行する(ステップS006’)。
【0131】
(8)ステップS006’の判定で、仮定速力が予想最高速力Mtmaxより小さかった場合、距離範囲計算部140は、基準データ指定部120から受け渡された基準データ情報と仮定速力変更部130から受け渡された仮定速力とから、その仮定速力に対する距離最小値及び距離最大値を計算し、計算結果を仮定距離変更部145に受け渡す(ステップS007)。
【0132】
(9)ここで、最適距離予測部165は、分析結果データベース750を参照し、前回3回分の仮定速力と最適距離との間に比例関係が成り立っていた場合に、今回の仮定速力における最適距離を予測し、距離最小値及び距離最大値を予測した最適距離の近辺とし、これらを仮定距離変更部145に受け渡す(ステップS008)。
【0133】
(10)仮定距離変更部145は、仮定距離に距離変更幅指定部135より受け付けた距離変更幅を順次加算し、加算結果を順次仮定運動パターン計算部150に受け渡す。なお、この処理は、距離最小値から始め、仮定距離が距離最大値を上回るまで繰り返し、上回った時点で当処理を終了する(ステップS009)。
【0134】
(11)仮定運動パターン計算部150は、ステップS009の処理で変更された仮定距離を順次受け取り、仮定距離が予想最高距離Rmax より小さいか否かを判定し、仮定速力が予想最高速力を越えた場合、後述するステップS012の処理に移行する(ステップS009’)。
【0135】
(12)ステップS009’の判定で、仮定距離が予想最高距離Rmax より小さかった場合、仮定運動パターン計算部150は、前述したステップS003、S006、S009の処理で受け付けた、基準データ、仮定速力、仮定距離を用い、仮定運動パターンを計算し、その結果を方位残差分析部160に受け渡す(ステップS010)。
【0136】
(13)方位残差分析部160は、ステップS010の処理で計算された仮定運動パターンを基に、方位残差及び方位残差量を求める。この処理は、ステップS0009からの処理を繰り返して行い、その仮定速力における前回までの最小方位残差量と比較することにより、最適解及び最適解での方位残差量を求める処理であり、求められた方位残差量を分析結果として、分析結果データベース750に受け渡す(ステップS011)。
【0137】
(14)仮定固有周波数計算部170は、ステップS006で順次変更された各仮定的速における最適解から周波数残差量を最小とする最適固有周波数を計算し、周波数残差分析部180に受け渡す(ステップS012)。
【0138】
(15)周波数残差分析部180は、各仮定的速における最適解及びステップS012の処理で計算された最適固有周波数を基に、周波数残差及び周波数残差量を求める。このようにして求められた周波数残差量及び最適固有周波数は、分析結果データベース750に受け渡される(ステップS013)。
【0139】
(16)前述までの処理で全ての仮定速力における最適解及び最適解における方位残差量、周波数残差量を求められるので、その後、最適解判定部190は、各仮定速力における方位残差量と周波数残差量との和である総残差量を評価指標として、総最適解を求める。このようにして求められた総最適解(最適速力、最適距離、最適針路、最適固有周波数)及び総最適解における方位残差量、周波数残差量、総残差量は、表示制御部195を介して分析結果表示部210に受け渡される(ステップS014)。
【0140】
(17)分析結果表示部210は、ステップS014の処理で受け付けた総最適解の分析結果を数値情報として表示し、最適解計算装置100での処理を終了する(ステップS015)。
【0141】
前述した本発明の実施形態における処理は、処理プログラムとして構成することができ、この処理プログラムは、HD、DAT、FD、MO、DVD−ROM、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することができる。
【0142】
前述した本発明の実施形態によれば、運動パラメータの一部を自動的に変更し、幾何学条件とドップラー効果とから他の運動パラメータ、固有周波数、方位残差量、周波数残差量を電子計算機を用いて計算することにより、無限に存在する仮定運動パラメータの組み合わせから最適解を高速に、かつ、一意的に求めることができる。
【0143】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、移動発音体の運動パラメータ及び固有周波数の最適解を高速かつ正確に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による移動発音体の運動分析支援装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】平滑処理部で実施する一次平滑の原理を説明する図である。
【図3】仮定運動パターンを求める方法の原理を説明する図である。
【図4】速力における距離変更範囲の最大値について説明する図である。
【図5】速力における距離変更範囲の最小値について説明する図である。
【図6】方位残差算出の原理を説明する図である。
【図7】仮定運動パターンにおける聴音器と移動発音体との相対運動を説明する図である。
【図8】平滑方位By 及び聴音器針路方向を時間に対してプロットすることにより表示させた様子を示す図である。
【図9】平滑周波数Fを時刻に対してプロットして表示させた様子を示す図である。
【図10】最適解計算装置100の処理動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
100 最適解計算装置
110 平滑処理部
120 基準データ指定部
125 速力変更幅指定部
130 仮定速力変更部
140 距離範囲計算部
145 仮定距離変更部
150 仮定運動パターン計算部
160 方位残差分析部
170 仮定固有周波数計算部
180 周波数残差分析部
190 最適解判定部
195 表示制御部
200 表示装置
210 分析結果表示部
220 履歴情報表示部
300 オペレータ入力装置
310 テンキー
320 スイッチ
330 ポインティングディバイス
400 信号処理装置
500 聴音器
600 移動発音体
710 観測方位データベース
720 観測周波数データベース
730 分析用方位データベース
740 分析用周波数データベース
750 分析結果データベース
Claims (3)
- 聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動パラメータと固有周波数とを分析する移動発音体の運動分析方法において、前記観測された移動発音体の前記観測方位情報と前記観測周波数情報とを入力された時間間隔で平滑化するステップと、前記平滑後の方位情報に基づく分析の基準データとなる方位情報の指定を受け付けるステップと、入力された仮定速力を入力された仮定速力の変更幅で順次変更するステップと、前記順次変更された仮定速力と基準データとから距離の変更範囲を計算するステップと、前回の仮定速力の分析結果から最適距離を予測し、距離変更範囲を修正するステップと、入力された仮定距離を入力された仮定距離の変更幅で順次変更するステップと、前記変更された仮定速力、前記変更された仮定距離、前記基準データから順次仮定運動パターンを計算するステップと、算出した前記仮定運動パターンから前記移動発音体の所定の時刻の方位情報を順次算出し、算出されたそれぞれの方位情報と同時刻の平滑後の前記方位情報との方位差分及び方位差分の二乗和である方位残差量を求めるステップと、前記各仮定速力における周波数残差量を最小とする最適固有周波数を計算するステップと、前記計算された固有周波数及び前記仮定運動パターンから前記移動発音体の所定の時刻の周波数情報を順次算出し、算出されたそれぞれの周波数情報と同時刻の平滑後の前記周波数情報との周波数差分及び周波数差分の二乗和である周波数残差量を求めるステップと、前記方位残差量と前記周波数残差量との和から最適運動パラメータを求めるステップと、を有することを特徴とする移動発音体の運動分析方法。
- 聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動パラメータと固有周波数とを分析する移動発音体の運動分析装置において、オペレータの入力を受け付ける入力受付手段と、前記離散的に観測された複数の観測方位情報及び観測周波数情報を記録する第1の記憶手段と、前記入力受付手段において受け付けた変更幅で前記運動パラメータを自動的に変更する手段と、前記運動パラメータを用い、前記移動発音体の運動分析を行う運動分析手段と、前記運動分析手段において分析した結果を表示する表示手段とを備え、前記運動分析手段は、前記複数の観測方位情報及び前記複数の観測周波数情報を平滑化する平滑処理手段と、前記平滑処理手段で平滑化した情報と自動的に変更される前記運動パラメータとを用いて、前記移動発音体の運動パターンを計算する運動パターン計算手段と、前記運動パターン計算手段で計算された運動パターンから算出した前記移動体の方位情報と、前記平滑手段により平滑化された前記方位情報との各々の差分及び差分の二乗和である方位残差量を求める方位残差計算手段と、方位残差量を最小とする運動パターンにおいて周波数の残差量を最小とする固有周波数を計算する手段と、その固有周波数と前記運動パターンとから算出した前記移動体の周波数情報と、前記平滑手段により平滑化された前記周波数情報とのそれぞれの差分及び差分の二乗和である周波数残差量を求める周波数残差計算手段と、前記方位残差量と前記周波数残差量との和を評価指標として最適な運動パラメータ及び固有周波数を求める最適パラメータ判定手段とを備えて構成されることを特徴とする移動発音体の運動分析装置。
- 前記最適パラメータ判定手段により求められた最適な運動パラメータ及び固有周波数を分析結果として前記表示手段に表示させる手段をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の移動発音体の運動分析装置。
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