JP4141741B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、スパッタ法による非晶質構造を有する半導体膜の作製方法、及び、この半導体膜を用いた薄膜トランジスタ(以下、TFTという)で構成された回路を有する半導体装置およびその作製方法に関する。例えば、液晶表示パネルに代表される電気光学装置およびその様な電気光学装置を部品として搭載した電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指し、電気光学装置、半導体回路および電子機器は全て半導体装置である。
【0003】
【従来の技術】
結晶構造を有する半導体膜を用いた代表的な半導体素子として薄膜トランジスタ(以下、TFTと記す)が知られている。TFTはガラスなどの絶縁基板上に集積回路を形成する技術として注目され、駆動回路一体型液晶表示装置などが実用化されつつある。従来の技術において、結晶構造を有する半導体膜は、プラズマCVD法や減圧CVD法で堆積した非晶質半導体膜を、加熱処理やレーザーアニール法(レーザー光の照射により半導体膜を結晶化させる技術)により作製されている。
【0004】
こうして作製される結晶構造を有する半導体膜は多数の結晶粒の集合体であり、その結晶方位は任意な方向に配向して制御不能であるため、TFTの特性を制限する要因となっている。このような問題点に対し、特開平7−183540号公報で開示される技術は、ニッケルなど半導体膜の結晶化を助長する金属元素を添加し、結晶構造を有する半導体膜を作製するものであり、結晶化に必要とする加熱温度を低下させる効果ばかりでなく、結晶方位の配向性を単一方向に高めることが可能である。このような結晶構造を有する半導体膜でTFTを形成すると、電界効果移動度の向上のみでなく、サブスレッショルド係数(S値)が小さくなり、飛躍的に電気的特性を向上させることが可能となっている。
【0005】
しかし、結晶化を助長する金属元素を添加する故に、結晶構造を有する半導体膜の膜中或いは膜表面には、当該金属元素が残存し、得られる素子の特性をばらつかせるなどの問題がある。その一例は、TFTにおいてオフ電流が増加し、個々の素子間でばらつくなどの問題がある。即ち、結晶化を助長する金属元素は、一旦、結晶構造を有する半導体膜が形成されてしまえば、かえって不要な存在となってしまう。
【0006】
リンを用いたゲッタリングは、結晶構造を有する半導体膜のうち特定の領域から結晶化を助長する金属元素を除去するための手法として有効に活用されている。例えば、TFTのソース・ドレイン領域にリンを添加して450〜700℃の熱処理を行うことで、チャネル形成領域から当該金属元素を容易に除去することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
リンはイオンドープ法(PH3などをプラズマで解離して、イオンを電界で加速して半導体中に注入する方法であり、基本的にイオンの質量分離を行わない方法を指す)で結晶構造を有する半導体膜に注入するが、ゲッタリングのために必要なリン濃度は1×1020/cm3以上である。イオンドープ法によるリンの添加は、結晶構造を有する半導体膜の非晶質化をもたらすが、リン濃度の増加はその後のアニールによる再結晶化の妨げとなり問題となっている。また、高濃度のリンの添加は、ドーピングに必要な処理時間の増大をもたらし、ドーピング工程におけるスループットを低下させるので問題となっている。
【0008】
さらに、pチャネル型TFTのソース・ドレイン領域に添加したリンに対し、その導電型を反転させるために必要な硼素の濃度は1.5〜3倍が必要であり、再結晶化の困難さに伴って、ソース・ドレイン領域の高抵抗化をもたらし問題となっている。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するための手段であり、半導体膜の結晶化を助長する金属元素を用いて結晶構造を有する半導体膜を得た後、該膜中に残存する当該金属元素を効果的に除去する技術を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
ゲッタリング技術は単結晶シリコンウエハーを用いる集積回路の製造技術において主要な技術として位置付けられている。ゲッタリングは半導体中に取り込まれた金属不純物が、何らかのエネルギーでゲッタリングサイトに偏析して、素子の能動領域の不純物濃度を低減させる技術として知られている。それは、エクストリンシックゲッタリング(Extrinsic Gettering)とイントリンシックゲッタリング(Intrinsic Gettering)の二つに大別されている。エクストリンシックゲッタリングは外部から歪場や化学作用を与えてゲッタリング効果をもたらすものである。高濃度のリンを単結晶シリコンウエハーの裏面から拡散させるゲッタリングはこれに当たり、前述のリンを用いたゲッタリングもエクストリンシックゲッタリングの一種と見なすことができる。
【0011】
一方、イントリンシックゲッタリングは単結晶シリコンウエハーの内部に生成された酸素が関与する格子欠陥の歪場を利用したものとして知られている。本発明は、このような格子欠陥、或いは格子歪みを利用したイントリンシックゲッタリングに着目したものであり、厚さ10〜100nm程度の結晶構造を有する半導体膜に適用するために以下の手段を採用するものである。
【0012】
本発明は、絶縁表面上に金属元素を用いて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する工程と、エッチングストッパーとなる膜(バリア層)を形成する工程と、希ガス元素を含む第2の半導体膜(ゲッタリングサイト)を形成する工程と、ゲッタリングサイトに金属元素をゲッタリングさせる工程と、前記第2の半導体膜を除去する工程とを有している。
【0013】
本発明は、上記ゲッタリングサイトを形成する工程として、半導体からなるターゲットを用い、希ガス元素を含む雰囲気中でのグロー放電によるスパッタ法を用いて成膜し、高濃度に希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜、代表的にはアモルファスシリコン膜とするものである。また、半導体に対して一導電型を付与する不純物元素(リンや砒素、ボロン等)を含む半導体ターゲット(比抵抗値が0.01〜1000Ω・cm)を用いてもよい。また、形成する非晶質構造を有する半導体膜に対応して、シリコン、シリコンゲルマニウム、またはシリコンカーバイトからなるターゲットを用いる。勿論、シリコンの化合物を形成する場合には、シリコンのターゲットと当該元素のターゲットを併設して共スパッタリングにより形成するか、当該元素を含む反応性の気体を導入して反応性スパッタリングを行っても良い。
【0014】
また、DC方式のスパッタ装置で成膜した場合に比べ、RF方式のスパッタ装置で成膜したほうが、膜中に希ガス元素を高濃度、具体的には、1×1020/cm3以上に含ませることができる。
【0015】
本明細書で開示する半導体膜の作製方法に関する発明の構成は、成膜室に希ガスを成膜圧力0.1Pa〜5Paで導入し、交流電界を印加することによりグロー放電を発生させるスパッタ法により、希ガス元素を1×1019/cm3〜1×1022/cm3で含み、且つ非晶質構造を有する半導体膜を被表面上に成膜することを特徴とする非晶質構造を有する半導体膜の作製方法である。なお、成膜室の成膜圧力が低ければ低いほど膜中に希ガス元素を高濃度に含ませることができる。
【0016】
また、上記構成において、前記グロー放電を発生させるRF電力密度は、0.137W/cm2〜6.847W/cm2(直径30.5cmの電極を用いた場合、RF電力0.1kW〜5kW)であることを特徴としている。なお、RF電力密度が小さければ小さいほど膜中に希ガス元素を高濃度に含ませることができる。
【0017】
なお、上記構成において成膜室は、1.5Pa以下の成膜圧力で成膜を行うことが好ましい。また、グロー放電を励起するために1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHzの高周波電力を印加する。また、基板の温度は室温でも良く、300℃以下とすれば何ら問題ない。
【0018】
希ガス元素によりスパッタリングされた原子は、運動エネルギーを得て飛散し、その一部が基板上に付着して被膜として形成される。成膜圧力を低下させることで気相中でスパッタされた原子と希ガス元素とが衝突する確率が低下して、高エネルギーの原子が基板に入射し堆積する。高周波放電とすることで、電子エネルギーが高くなり、励起状態の希ガス原子、イオン化した希ガス元素が増え、被膜の成長表面での相互作用が増すと考えられる。その結果、希ガス元素が膜中に取り込まれる確率が増え、上記濃度で希ガス元素を含み非晶質構造を有する半導体膜を形成することが可能となる。
【0019】
また、上記構成において、前記希ガスは、He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種であることを特徴としている。とくに、シリコンよりも原子半径の大きい原子数の希ガス元素、代表的にはArが望ましい。
【0020】
上記作製方法によって得られる半導体膜は、膜中に1×1019/cm3〜1×1021/cm3の濃度で希ガス元素を含み、且つ、膜の内部応力が、圧縮応力であることを特徴とする非晶質構造を有する半導体膜である。なお、成膜での成膜室の成膜圧力が低ければ低いほど膜の内部応力が大きくなり、RF電力密度が小さければ小さいほど膜の内部応力が小さくなる。
【0021】
なお、非晶質半導体膜に上記濃度で希ガス元素を添加することで、当該半導体膜に歪を付与することができる。非晶質シリコン膜の密度は約5×1022/cm3であるので、0.25原子%以上のアルゴンを添加することで歪み場が形成される。アルゴンなどの希ガス元素は、シリコンと結合せず格子内に挿入されることでシリコンの原子位置を歪ませ、内部応力を発生させる。応力は互いの原子が反発する方向であるので、圧縮応力となる。
【0022】
一般的に内部応力は、引張応力と圧縮応力とがある。基板に対して薄膜が収縮しようとするときには、基板はそれを妨げる方向に引っ張るため薄膜を内側にして変形し、これを引張応力と呼んでいる。一方、薄膜が伸張しようとするときには、基板は押し縮められ薄膜を外側にして形成するので、これを圧縮応力と呼んでいる。本明細書では、圧縮応力をマイナス(−)で表記し、引張応力をプラス(+)で表記することとする。
【0023】
こうして得られる歪みを有し、且つ、非晶質構造を有する半導体膜をゲッタリングサイトとして適用すれば、高いゲッタリング能力を持たせることができる。或いは、素子の能動領域(活性層)として利用すれば、電子及びホールの移動度を向上させることができる。
【0024】
本明細書で開示する半導体装置の作製方法に関する発明の構成は、
絶縁表面上に非晶質構造を有する第1の半導体膜を形成する第1工程と、
前記非晶質構造を有する第1の半導体膜に金属元素を添加する第2工程と、
前記第1の半導体膜を結晶化させて結晶構造を有する第1の半導体膜を形成する第3工程と、
前記結晶構造を有する第1の半導体膜の表面にバリア層を形成する第4の工程と、
前記バリア層上にスパッタ法で希ガス元素を含む第2の半導体膜を形成する第5工程と、
前記第2の半導体膜に前記金属元素をゲッタリングして結晶構造を有する第1の半導体膜中の前記金属元素を除去または低減する第6工程と、
前記第2の半導体膜を除去する第7工程とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法である。
【0025】
上記構成において、前記第2の半導体膜は、成膜室に希ガスを成膜圧力0.1Pa〜5Paで導入し、0.137W/cm2〜6.847W/cm2のRF電力密度でグロー放電を発生させるスパッタ法により形成することを特徴としている。
【0026】
また、上記構成において、前記金属元素とはシリコンの結晶化を助長する金属元素であり、Fe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種である。
【0027】
また、上記各構成において、前記希ガスは、He、Ne、Ar、Kr、Xeから選ばれた一種または複数種であり、これらのイオンを半導体膜中に含有させることにより、ダングリングボンドや格子歪みを形成してゲッタリングサイトを形成することができる。
【0028】
また、スパッタ法を用い、成膜段階で希ガス元素を含む第2の半導体膜を得た後、さらに第2の半導体膜に対して希ガス元素、H、H2、O、O2、Pから選ばれた一種または複数種を添加してもよい。このように複数の元素を添加することにより相乗的にゲッタリング効果が得られる。
【0029】
こうして、上記作製方法によって得られる半導体膜は、ゲッタリングサイトとするための歪み場を有する半導体膜として適している。このような歪みを有する半導体の用途は、必ずしもゲッタリングサイトに限定されるものではない。例えば、技術的な分野は異なるが、トランジスタの新たな性能向上の技術として、応力歪みを加えた歪み結晶技術が提案されている。シリコン結晶に歪みを与えることで、バンド構造の変化に起因する電子及びホールの移動度の向上が確認され、新世代の技術として期待されている(応用物理、69〔11〕(2000−11)p.1315-1319)。このような技術は、今後さらにTFTなどの薄膜を用いた素子へも応用展開することが考えられる。
【0030】
本発明の半導体装置は、非晶質シリコン膜を有する半導体装置において、前記非晶質シリコン膜中のArの濃度は、1×1020/cm3以上、好ましくは、1×1020/cm3〜6×1020/cm3の範囲であることを特徴とする半導体装置である。なお、酸素、炭素、窒素の不純物濃度は5×1015/cm 3 以下である。本発明の半導体装置は、非晶質構造を有する半導体膜中にArの濃度が1×1020/cm3以上含まれているので、歪のある非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜を有する半導体装置を製造することができる。また、非晶質シリコン膜中にArの濃度が1×1020/cm3〜6×1020/cm3の範囲にあるので、膜剥がれが生じにくい半導体装置を製造することができる。
【0031】
また、本発明の半導体装置は、非晶質シリコン膜を有する半導体装置において、前記非晶質シリコン膜中の圧縮応力は、−10.0×1010dynes/cm2〜−5.0×109dynes/cm2の範囲にあることを特徴とする半導体装置である。本発明の半導体装置は、非晶質シリコン膜の圧縮応力は、−10.0×1010dynes/cm2〜−5.0×109dynes/cm2の範囲にあるので、歪のある非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜を有し、膜剥がれが生じにくい半導体装置を製造することができる。
【0032】
上記本発明の半導体装置の製造方法は、非晶質シリコン膜を形成する半導体装置の製造方法において、室温(22〜28℃好ましくは25℃)下、RF(1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHz)による放電によって、成膜圧力を0.2〜1.0Paの範囲に保持し、Ar雰囲気下でシリコンターゲットを用いたスパッタ法により前記非晶質シリコン膜を形成する半導体装置の製造方法である。本発明の半導体装置の製造方法では、RF(1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHz)による放電、成膜圧力を0.2〜1.0Paの範囲に保持しているので、本発明の半導体装置は、非晶質シリコン層中にArの濃度が1×1020/cm2〜6×1020/cm2の範囲にあり、かつ、前記非晶質シリコン層中の圧縮応力は、−10.0×1010dynes/cm2〜−5.0×109dynes/cm2の範囲にあるので、歪のある非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜を有し、膜剥がれが生じにくい半導体装置を製造することができる。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、以下に説明する。
【0034】
本実施形態では、スパッタ法で成膜した非晶質シリコン膜中の希ガス元素(Ar)の濃度と成膜圧力の関係を得た。以下に実験手順を示す。
【0035】
RF電源を用いるスパッタ装置でガラス基板上に希ガス元素を含む非晶質シリコン膜を成膜した。シリコンターゲットを用い、周波数を1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHzとし、成膜室にArを流し、RF電力(電極サイズ:直径30.5cm)を0.1kW〜5kW、ここでは1.2kWとし、基板温度を室温(22〜28℃、ここでは25℃)とし、0.2μmの厚さで成膜する度に成膜圧力を順次変えて積層した。なお、成膜圧力は排気側のコンダクタンスバルブによって調節する。ガラス基板上に成膜圧力を、0.2Pa、0.4Pa、0.6Pa、0.8Pa、1.0Pa、1.2Paとし、各条件毎に0.2μmの厚さで順に成膜し、成膜された膜中のArの原子濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した。
【0036】
得られた結果を図2に示す。図2において縦軸はArの原子濃度、横軸は試料表面からの深さを示している。加えて、図2には縦軸を二次イオン強度とし、横軸を試料表面からの深さとしたシリコンのイオン強度も示した。
【0037】
図2より、成膜圧力が低ければ低いほど、膜中におけるArの原子濃度が高くなりゲッタリングサイトとして好適な膜が成膜できることがわかる。成膜圧力が低ければ低いほど、膜中におけるArの原子濃度が高くなる理由としては、スパッタの成膜圧力が低い方が反応室内のArガスと反跳原子(ターゲット表面で反射されるAr原子)との衝突確率が小さくなるため、反跳原子が基板に入射しやすくなることがあげられる。
【0038】
次に、図2で使用した試料と同じものを用いて、非晶質シリコン膜における内部応力を測定した。得られた結果を図3および図4に示す。
【0039】
図3は、膜における内部応力と成膜圧力との関係を示しており、成膜圧力が小さければ小さいほど、大きい圧縮応力を示している。
【0040】
また、図4は、膜における内部応力とAr濃度との関係を示しており、膜中のArの濃度が高ければ高いほど大きい圧縮応力を示している。例えば、スパッタの成膜圧力1.0Paで成膜した非晶質シリコン膜は、原子濃度1×1020/cm3でArを含んでおり、圧縮応力(約−4.7×109(dynes/cm2))を示している。また、成膜圧力0.2Paで成膜した非晶質シリコン膜は、原子濃度6×1020/cm3でArを含んでおり、圧縮応力(約−9.47×109(dynes/cm2)))を示している。なお、発明者らは、非晶質シリコン膜の膜剥がれが生じない圧縮応力の下限を−10.0×1010(dynes/cm2)と推測している。従って、後の熱処理によって膜剥がれが生じない範囲で、かつ、歪のある非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜を製造するためには、スパッタの成膜圧力を0.2Pa〜1.0Paに設定すればよい。このスパッタの成膜圧力における非晶質シリコン膜中のArの濃度は、1×1020/cm3〜6×1020/cm3、非晶質シリコン膜の内部応力は、−10.0×1010(dynes/cm2)〜−5.0×109(dynes/cm2))になる。
【0041】
これらの実験結果より、歪みのある非晶質シリコン膜をTFTの活性層として用いる場合は、図2、図3、または図4を用いて成膜圧力および内部応力を適宜設定して形成すればよい。
【0042】
次に、スパッタ法で成膜した非晶質シリコン膜中の希ガス元素(Ar)の濃度とRF電力(またはRF電力密度)との関係を得た。以下に実験手順を示す。
【0043】
RF電源を用いるスパッタ装置でガラス基板上に希ガス元素を含む非晶質シリコン膜を成膜した。シリコンターゲット(抵抗率10Ωcm)を用い、周波数を1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHzとし、成膜室にArを50sccm流し、成膜圧力を0.1Pa〜5Paここでは0.4Paとし、基板温度を300℃以下、ここでは150℃とし、0.2μmの厚さで成膜する度にRF電力を順次変えて積層した。なお、電極サイズは、直径30.5cmである。なお、RF電力密度は、RF電力を電極面積で割った値を指している。ガラス基板上にRF電力を、0.4kW、0.5kW、1kW、3kWとし、各条件毎に0.2μmの厚さで順に成膜し、成膜された膜中のArの原子濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した。
【0044】
得られた結果を図5に示す。図5において縦軸はArの原子濃度、横軸は試料表面からの深さを示している。加えて、図5には縦軸を二次イオン強度とし、横軸を試料表面からの深さとしたシリコンのイオン強度も示した。
【0045】
図5より、RF電力(またはRF電力密度)が低ければ低いほど、膜中におけるArの原子濃度が高くなりゲッタリングサイトとして好適な膜が成膜できることがわかる。また、RF電力(またはRF電力密度)を低くすると、内部応力を小さくすることができるため、膜剥がれを生じにくくすることができる。
【0046】
これらの実験結果より、好適なゲッタリングサイト(希ガス元素を含む非晶質シリコン膜)は、図2〜図5を用いて成膜圧力、RF電力(またはRF電力密度)を適宜設定して形成すればよい。
【0047】
また、比較例として、DC方式のスパッタ法で成膜した非晶質シリコン膜中の希ガス元素(Ar)の濃度と成膜圧力の関係を得た。以下に実験手順を示す。
【0048】
DC電源を用いるスパッタ装置でガラス基板上に希ガス元素を含む非晶質シリコン膜を成膜した。シリコンターゲット(抵抗率0.2Ωcm)を用い、成膜室にArを80sccm流し、DC電力を3kW(DC電力密度2.5W/cm2)、基板温度を150℃とし、0.2μmの厚さ毎に成膜圧力を変化させた。なお、成膜圧力は排気側のコンダクタンスバルブによって調節する。ガラス基板上に成膜圧力をそれぞれ0.27Pa、0.53Pa、1.06Pa、1.6Paとし、0.2μmの厚さで順に成膜し、成膜された膜中のArの原子濃度を二次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した。得られた結果を図6に示す。図6において縦軸はArの原子濃度、横軸は試料表面からの深さを示している。加えて、図6には縦軸を二次イオン強度とし、横軸を試料表面からの深さとしたシリコンのイオン強度も示した。
【0049】
図6に示されているように、DC方式のスパッタ装置では10×10 20 /cm 3 以上のArを非晶質シリコン膜に含ませることができなかった。これについて、本発明者らは、その一因として成膜速度に関連があると推測している。なお、図6中、1.06PaにおけるAr濃度は何らかの原因による異常であり、信頼できるデータではない。
【0050】
以上のデータより、本発明は、DC方式のスパッタ装置よりも膜中に希ガス元素を高濃度に含ませることが可能なRF方式のスパッタ装置を用いたほうがよいことが示された。
【0051】
以上の構成でなる本発明について、以下に示す実施例でもってさらに詳細な説明を行うこととする。
【0052】
(実施例)
[実施例1]
以下に本発明を用いた代表的なTFTの作製手順を簡略に図1を用いて示す。
【0053】
図1(A)中、100は絶縁表面を有する基板、101はブロッキング層となる絶縁膜、102は非晶質構造を有する半導体膜である。
【0054】
図1(A)において、基板100はガラス基板、石英基板、セラミック基板などを用いることができる。また、シリコン基板、金属基板またはステンレス基板の表面に絶縁膜を形成したものを用いても良い。また、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性を有するプラスチック基板を用いてもよい。
【0055】
まず、図1(A)に示すように基板100上に酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜(SiOxNy)等の絶縁膜から成る下地絶縁膜101を形成する。代表的な一例は下地絶縁膜101として2層構造から成り、SiH 4 、NH 3 、及びN 2 Oを反応ガスとして成膜される第1酸化窒化シリコン膜を50〜100nm、SiH 4 、及びN 2 Oを反応ガスとして成膜される第2酸化窒化シリコン膜を100〜150nmの厚さに積層形成する構造が採用される。また、下地絶縁膜101の一層として膜厚10nm以下の窒化シリコン膜(SiN膜)、或いは第2酸化窒化シリコン膜(SiNxOy膜(X≫Y))を用いることが好ましい。ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、半導体膜と接する下地絶縁膜を窒化シリコン膜とすることは極めて有効である。また、第1酸化窒化シリコン膜、第2酸化窒化シリコン膜、窒化シリコン膜とを順次積層した3層構造を用いてもよい。
【0056】
次いで、下地絶縁膜上に非晶質構造を有する第1の半導体膜102を形成する。第1の半導体膜102は、シリコンを主成分とする半導体材料を用いる。代表的には、非晶質シリコン膜又は非晶質シリコンゲルマニウム膜などが適用され、プラズマCVD法や減圧CVD法、或いはスパッタ法で10〜100nmの厚さに形成する。後の結晶化で良質な結晶構造を有する半導体膜を得るためには、非晶質構造を有する第1の半導体膜102の膜中に含まれる酸素、窒素などの不純物濃度を5×10 18 /cm 3 (二次イオン質量分析法(SIMS)にて測定した原子濃度)以下に低減させておくと良い。これらの不純物は後の結晶化を妨害する要因となり、また、結晶化後においても捕獲中心や再結合中心の密度を増加させる要因となる。そのために、高純度の材料ガスを用いることはもとより、反応室内の鏡面処理(電界研磨処理)やオイルフリーの真空排気系を備えた超高真空対応のCVD装置を用いることが望ましい。
【0057】
次いで、非晶質構造を有する第1の半導体膜102を結晶化させる技術としてここでは特開平8-78329号公報記載の技術を用いて結晶化させる。同公報記載の技術は、非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜とも呼ばれる)に対して結晶化を助長する金属元素を選択的に添加し、加熱処理を行うことで添加領域を起点として広がる結晶構造を有する半導体膜を形成するものである。まず、非晶質構造を有する第1の半導体膜102の表面に、結晶化を促進する触媒作用のある金属元素(本実施例では、ニッケル)を重量換算で1〜100ppm含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布してニッケル含有層103を形成する。(図1(B))塗布によるニッケル含有層103の形成方法以外の他の手段として、スパッタ法、蒸着法、またはプラズマ処理により極薄い膜を形成する手段を用いてもよい。また、ここでは、全面に塗布する例を示したが、マスクを形成して選択的にニッケル含有層を形成してもよい。
【0058】
次いで、加熱処理を行い、結晶化を行う。この場合、結晶化は半導体の結晶化を助長する金属元素が接した半導体膜の部分でシリサイドが形成され、それを核として結晶化が進行する。こうして、図1(C)に示す結晶構造を有する第1の半導体膜104が形成される。なお、結晶化後での第1の半導体膜104に含まれる酸素濃度は、1×10 20 /cm 3 以下とすることが望ましい。ここでは、脱水素化のための熱処理(450℃、1時間)の後、結晶化のための熱処理(550℃〜650℃で4〜24時間)を行う。また、強光の照射により結晶化を行う場合は、赤外光、可視光、または紫外光のいずれか一またはそれらの組み合わせを用いることが可能であるが、代表的には、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、または高圧水銀ランプから射出された光を用いる。ランプ光源は、1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1回〜10回繰り返し、半導体膜が瞬間的に600〜1000℃程度にまで加熱すればよい。なお、必要であれば、強光を照射する前に非晶質構造を有する第1の半導体膜104に含有する水素を放出させる熱処理を行ってもよい。また、熱処理と強光の照射とを同時に行って結晶化を行ってもよい。生産性を考慮すると、結晶化は強光の照射により結晶化を行うことが望ましい。
【0059】
このようにして得られる第1の半導体膜104には、金属元素(ここではニッケル)が残存している。それは膜中において一様に分布していないにしろ、平均的な濃度とすれば、1×10 19 /cm 3 を越える濃度で残存している。勿論、このような状態でもTFTをはじめ各種半導体素子を形成することが可能であるが、以降に示す方法で当該元素を除去する。
【0060】
次いで、結晶化率(膜の全体積における結晶成分の割合)を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修するために、結晶構造を有する第1の半導体膜104に対してレーザー光を照射することが好ましい。なお、レーザー光を照射する前に、結晶構造を有するシリコン膜表面の酸化膜を希フッ酸等で除去することが望ましい。レーザー光を照射した場合、表面に薄い酸化膜(図示しない)が形成される。このレーザー光には波長400nm以下のエキシマレーザー光や、YAGレーザーの第2高調波、第3高調波を用いる。
【0061】
上記結晶化後のレーザー光の照射により形成された酸化膜では、不十分であるため、さらに、オゾン含有水溶液(代表的にはオゾン水)で酸化膜(ケミカルオキサイドと呼ばれる)を形成して合計1〜10nmの酸化膜からなるバリア層105を形成し、このバリア層105上に希ガス元素を含む第2の半導体膜106を形成する。(図1(D))なお、ここでは、結晶構造を有する第1の半導体膜104に対してレーザー光を照射した場合に形成される酸化膜もバリア層の一部と見なしている。このバリア層105は、後の工程で第2の半導体膜106のみを選択的に除去する際にエッチングストッパーとして機能する。また、オゾン含有水溶液に代えて、硫酸、塩酸、硝酸などと過酸化水素水を混合させた水溶液で処理しても同様にケミカルオキサイドを形成することができる。また、他のバリア層105の形成方法としては、酸素雰囲気下の紫外線の照射でオゾンを発生させて前記結晶構造を有する半導体膜の表面を酸化して形成してもよい。また、他のバリア層105の形成方法としては、プラズマCVD法やスパッタ法や蒸着法などで1〜10nm程度の酸化膜を堆積してバリア層としても良い。また、他のバリア層105の形成方法としては、クリーンオーブンを用い、200〜350℃程度に加熱して薄い酸化膜を形成しても良い。なお、上記方法のいずれか一の方法、またはそれらの方法を組み合わせて形成されたバリア層105は、後のゲッタリングで第1の半導体膜中のニッケルが第2の半導体膜に移動可能な膜質または膜厚とすることが必要である。
【0062】
ここでは、希ガス元素を含む第2の半導体膜106をスパッタ法にて形成し、ゲッタリングサイトを形成する。希ガス元素としてはヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用いる。中でも安価なガスであるアルゴン(Ar)が好ましい。ここでは希ガス元素を含む雰囲気でシリコンからなるターゲットを用い、成膜圧力0.1Pa〜5Pa、RF電力密度0.137W/cm2〜6.847W/cm2で第2の半導体膜を形成する。膜中に不活性気体である希ガス元素イオンを含有させる意味は二つある。一つはダングリングボンドを形成し半導体膜に歪みを与えることであり、他の一つは半導体膜の格子間に歪みを与えることである。半導体膜の格子間に歪みを与えるにはアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などシリコンより原子半径の大きな元素を用いた時に顕著に得られる。また、膜中に希ガス元素を含有させることにより、格子歪だけでなく、不対結合手も形成させてゲッタリング作用に寄与する。
【0063】
また、一導電型の不純物元素であるリンを含むターゲットを用いて第2の半導体膜を形成した場合、希ガス元素によるゲッタリングに加え、リンのクーロン力を利用してゲッタリングを行うことができる。
【0064】
また、ゲッタリングの際、ニッケルは酸素濃度の高い領域に移動しやすい傾向があるため、第2の半導体膜106に含まれる酸素濃度は、第1の半導体膜に含まれる酸素濃度より高い濃度、例えば1×1020/cm3以上とすることが望ましいので、成膜圧力1.2Pa、1.0Pa、0.8Pa、0.6Pa、0.4Pa、0.2Paはこの酸素濃度を満たしている。
【0065】
また、図1(D)のスパッタ法による成膜において、第1の半導体膜にも希ガス元素が添加された場合、添加された部分がゲッタリングサイトとして働くため、ゲッタリング効果が低減してしまうことが懸念される。従って、第1の半導体膜には希ガス元素が添加されないようにスパッタ条件を適宜調節することが望ましい。また、スパッタ法による成膜の際、バリア層は、希ガス元素が添加されるのを防ぐ働きをするため、バリア層の膜厚および膜質が重要である。本発明者らの実験により、結晶化率を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修するためにレーザー光を照射した際に形成される酸化膜を形成し、さらにオゾン含有水溶液で酸化膜を形成して得られる合計10nm以下の酸化膜がバリア層として好ましい。一方、レーザー光を照射した際に形成される酸化膜を除去した後、オゾン含有水溶液での酸化膜のみでバリア層を形成した場合は、スパッタ法による成膜において希ガス元素が第1の半導体膜にも微量に添加されてしまいバリア層としては不十分であった。
【0066】
次いで、加熱処理を行い、第1の半導体膜中における金属元素(ニッケル)の濃度を低減、あるいは除去するゲッタリングを行う。(図1(E))ゲッタリングを行う加熱処理としては、強光を照射する処理または熱処理を行えばよい。このゲッタリングにより、図1(E)中の矢印の方向(即ち、基板側から第2の半導体膜表面に向かう方向)に金属元素が移動し、バリア層105で覆われた第1の半導体膜104に含まれる金属元素の除去、または金属元素の濃度の低減が行われる。金属元素がゲッタリングの際に移動する距離は、少なくとも第1の半導体膜の厚さ程度の距離であればよく、比較的短時間でゲッタリングを完遂することができる。ここでは、ニッケルが第1の半導体膜104に偏析しないよう全て第2の半導体膜106に移動させ、第1の半導体膜104に含まれるニッケルがほとんど存在しない、即ち膜中のニッケル濃度が1×1018/cm3以下、望ましくは1×1017/cm3以下になるように十分ゲッタリングする。
【0067】
なお、このゲッタリングの加熱処理の条件、或いは第2の半導体膜の膜厚によっては、第2の半導体膜が一部結晶化される場合もある。第2の半導体膜が結晶化してしまうとダングリングボンドや格子歪みや不対結合手が減少してゲッタリング効果の低減を招くことから、好ましくは、第2の半導体膜が結晶化しない加熱処理の条件、或いは第2の半導体膜の膜厚とする。いずれにせよ、第2の半導体膜、即ち希ガス元素を含有する非晶質シリコン膜は、希ガス元素を含まない非晶質シリコン膜と比べて結晶化が生じにくいため、ゲッタリングサイトとして最適である。
【0068】
また、このゲッタリングの加熱処理の条件によっては、ゲッタリングと同時に第1の半導体膜の結晶化率を高め、結晶粒内に残される欠陥を補修する、即ち結晶性の改善を行うことができる。
【0069】
本明細書において、ゲッタリングとは、被ゲッタリング領域(ここでは第1の半導体膜)にある金属元素が熱エネルギーにより放出され、拡散によりゲッタリングサイトに移動することを指している。従って、ゲッタリングは処理温度に依存し、より高温であるほど短時間でゲッタリングが進むことになる。
【0070】
強光を照射する処理を用いる場合は、加熱用のランプ光源を1〜60秒、好ましくは30〜60秒点灯させ、それを1〜10回、好ましくは2〜6回繰り返す。ランプ光源の発光強度は任意なものとするが、瞬間的には600〜1000℃、好ましくは700〜750℃程度に半導体膜が加熱されるようにする。
【0071】
また、熱処理で行う場合は、窒素雰囲気中で450〜800℃、1〜24時間、例えば550℃にて14時間の熱処理を行えばよい。また、熱処理に加えて強光を照射してもよい。
【0072】
次いで、バリア層105をエッチングストッパーとして、106で示した第2の半導体膜のみを選択的に除去した後、バリア層105を除去し、第1の半導体膜104を公知のパターニング技術を用いて所望の形状の半導体層107を形成する。(図1(F))第2の半導体膜のみを選択的にエッチングする方法としては、ClF 3 によるプラズマを用いないドライエッチング、或いはヒドラジンや、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(化学式 (CH 3 ) 4 NOH)を含む水溶液などアルカリ溶液によるウエットエッチングで行うことができる。また、第2の半導体膜を除去した後、バリア層の表面をTXRFでニッケル濃度を測定したところ、ニッケルが高濃度で検出されるため、バリア層は除去することが望ましく、フッ酸を含むエッチャントにより除去すれば良い。また、バリア層を除去した後、レジストからなるマスクを形成する前に、オゾン水で表面に薄い酸化膜を形成することが望ましい。
【0073】
次いで、半導体層の表面をフッ酸を含むエッチャントで洗浄した後、ゲート絶縁膜108となる珪素を主成分とする絶縁膜を形成する。この表面洗浄とゲート絶縁膜の形成は、大気にふれさせずに連続的に行うことが望ましい。
【0074】
次いで、ゲート絶縁膜108の表面を洗浄した後、ゲート電極109を形成する。次いで、半導体にn型を付与する不純物元素(P、As等)、ここではリンを適宜添加して、ソース領域110及びドレイン領域111を形成する。添加した後、不純物元素を活性化するために加熱処理、強光の照射、またはレーザー光の照射を行う。また、活性化と同時にゲート絶縁膜へのプラズマダメージやゲート絶縁膜と半導体層との界面へのプラズマダメージを回復することができる。特に、室温〜300℃の雰囲気中において、表面または裏面からYAGレーザーの第2高調波を照射して不純物元素を活性化させることは非常に有効である。YAGレーザーはメンテナンスが少ないため好ましい活性化手段である。
【0075】
以降の工程は、層間絶縁膜113を形成し、水素化を行って、ソース領域、ドレイン領域に達するコンタクトホールを形成し、ソース電極114、ドレイン電極115を形成してTFT(nチャネル型TFT)を完成させる。(図1(G))
【0076】
また、本発明は図1(G)のTFT構造に限定されず、必要があればチャネル形成領域とドレイン領域(またはソース領域)との間にLDD領域を有する低濃度ドレイン(LDD:Lightly Doped Drain)構造としてもよい。この構造はチャネル形成領域と、高濃度に不純物元素を添加して形成するソース領域またはドレイン領域との間に低濃度に不純物元素を添加した領域を設けたものであり、この領域をLDD領域と呼んでいる。さらにゲート絶縁膜を介してLDD領域をゲート電極と重ねて配置させた、いわゆるGOLD(Gate-drain Overlapped LDD)構造としてもよい。
【0077】
また、ここではnチャネル型TFTを用いて説明したが、n型不純物元素に代えてp型不純物元素を用いることによってpチャネル型TFTを形成することができることは言うまでもない。
【0078】
また、ここではトップゲート型TFTを例として説明したが、TFT構造に関係なく本発明を適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTに適用することが可能である。
【0079】
[実施例2]
ここでは、本発明により得られる歪みを有する半導体膜をTFTの活性層として用いる例を示す。
【0080】
本実施例では、歪みを有する半導体膜として、室温(22〜28℃好ましくは25℃)下、RF(1kHz〜30MHz、好ましくは10〜20MHz)による放電によって、成膜圧力を0.2〜1.0Paの範囲に保持し、Ar雰囲気下でシリコンターゲットを用いたスパッタ法により非晶質シリコン膜を形成する。上記に示す成膜条件とすることによって、本発明の半導体装置は、非晶質シリコン層中にArの濃度が1×1020〜6×1020/cm3の範囲にあり、かつ、前記非晶質シリコン層中の圧縮応力は、−10.0×1010dynes/cm2〜−5.0×109dynes/cm2の範囲にあるので、歪のある非晶質シリコン(アモルファスシリコン)膜を有し、膜剥がれが生じにくい半導体装置を製造することができる。
【0081】
また、活性層以外の構造は、公知の技術を用いて作製すればよいのでここでは説明を省略する。また、本実施例は、TFT構造に関係なく適用することが可能であり、例えばボトムゲート型(逆スタガ型)TFTや順スタガ型TFTやトップゲート型TFTに適用することが可能である。
【0082】
[実施例3]
本発明を実施して形成された結晶構造を有する半導体膜、または非晶質構造を有する半導体膜をTFTの活性層に用いて形成される画素部や駆動回路は様々なモジュール(アクティブマトリクス型液晶モジュール、アクティブマトリクス型EL(Electro Luminescence)モジュール、アクティブマトリクス型ECモジュール)に用いることができる。即ち、それらを表示部に組み込んだ電子機器全てに本発明を実施できる。
【0083】
その様な電子機器としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、カーナビゲーション、プロジェクタ、カーステレオ、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図7〜図9に示す。
【0084】
図7(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。本発明を表示部2003に適用することができる。
【0085】
図7(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。本発明を表示部2102に適用することができる。
【0086】
図7(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。本発明は表示部2205に適用できる。
【0087】
図7(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。本発明は表示部2302に適用することができる。
【0088】
図7(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行うことができる。本発明は表示部2402に適用することができる。
【0089】
図7(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。本発明を表示部2502に適用することができる。
【0090】
図8(A)はフロント型プロジェクターであり、投射装置2601、スクリーン2602等を含む。本発明は投射装置2601の一部を構成する液晶モジュール2808に適用することができる。
【0091】
図8(B)はリア型プロジェクターであり、本体2701、投射装置2702、ミラー2703、スクリーン2704等を含む。本発明は投射装置2702の一部を構成する液晶モジュール2808に適用することができる。
【0092】
なお、図8(C)は、図8(A)及び図8(B)中における投射装置2601、2702の構造の一例を示した図である。投射装置2601、2702は、光源光学系2801、ミラー2802、2804〜2806、ダイクロイックミラー2803、プリズム2807、液晶モジュール2808、位相差板2809、投射光学系2810で構成される。投射光学系2810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図8(C)中において矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0093】
また、図8(D)は、図8(C)中における光源光学系2801の構造の一例を示した図である。本実施例では、光源光学系2801は、リフレクター2811、光源2812、レンズアレイ2813、2814、偏光変換素子2815、集光レンズ2816で構成される。なお、図8(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0094】
ただし、図8に示したプロジェクターにおいては、透過型の電気光学装置を用いた場合を示しており、反射型の電気光学装置及びELモジュールでの適用例は図示していない。
【0095】
図9(A)は携帯電話であり、本体2901、音声出力部2902、音声入力部2903、表示部2904、操作スイッチ2905、アンテナ2906、画像入力部(CCD、イメージセンサ等)2907等を含む。本発明を表示部2904に適用することができる。
【0096】
図9(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3001、表示部3002、3003、記憶媒体3004、操作スイッチ3005、アンテナ3006等を含む。本発明は表示部3002、3003に適用することができる。
【0097】
図9(C)はディスプレイであり、本体3101、支持台3102、表示部3103等を含む。本発明は表示部3103に適用することができる。
【0098】
ちなみに図9(C)に示すディスプレイは中小型または大型のもの、例えば5〜20インチの画面サイズのものである。また、このようなサイズの表示部を形成するためには、基板の一辺が1mのものを用い、多面取りを行って量産することが好ましい。
【0099】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器の作製方法に適用することが可能である。また、本実施例の電子機器は実施の形態や実施例1、実施例2のどのような組み合わせからなる構成を用いても実現することができる。
【0100】
【発明の効果】
本発明により、膜中に高濃度、具体的には1×1019/cm3〜1×1022/cm3の濃度でアルゴンを含ませることができ、膜剥がれの起こりにくく歪のあるアモルファスシリコン膜をスパッタ法によって形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体装置の作製工程を示す図である。
【図2】 スパッタ法(RF方式)によって成膜されたシリコン膜中のAr濃度を示すSIMSデータ(成膜圧力依存性)である。
【図3】 スパッタ法(RF方式)によって成膜されたシリコン膜における成膜圧力と内部応力との関係を示すグラフである。
【図4】 スパッタ法(RF方式)によって成膜されたシリコン膜におけるAr濃度と内部応力との関係を示すグラフである。
【図5】 スパッタ法(RF方式)によって成膜されたシリコン膜中のAr濃度を示すSIMSデータ(RF電力依存性)である。
【図6】 スパッタ法(DC方式)によって成膜されたシリコン膜中のAr濃度を示すSIMSデータである。(比較例)
【図7】 電子機器の一例を示す図。
【図8】 電子機器の一例を示す図。
【図9】 電子機器の一例を示す図。
Claims (5)
- 絶縁表面上に非晶質構造を有する第1のシリコン膜を形成し、
前記非晶質構造を有する第1のシリコン膜に金属元素を添加し、
前記第1のシリコン膜を結晶化させて結晶構造を有する第1のシリコン膜を形成し、
前記結晶構造を有する第1のシリコン膜の表面にバリア層を形成し、
前記バリア層上にスパッタ法でアルゴン元素を含む非晶質構造を有する第2のシリコン膜を形成し、
加熱処理を行うことにより、前記第2のシリコン膜に前記金属元素を移動して、結晶構造を有する前記第1のシリコン膜中の前記金属元素を除去または低減し、
前記第2のシリコン膜を除去し、
前記第2のシリコン膜は1×1019/cm3〜1×1022/cm3の濃度で前記アルゴン元素を含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 請求項1において、前記第2のシリコン膜は、成膜室にアルゴンを成膜圧力0.1Pa〜5Paで導入し、0.137W/cm2〜6.847W/cm2のRF電力密度でグロー放電を発生させるスパッタ法により形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1または2において、前記絶縁表面の温度を室温または300℃以下にして前記第2のシリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至請求項3のいずれか一において、前記金属元素はFe、Ni、Co、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Auから選ばれた一種または複数種であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
- 請求項1乃至請求項4のいずれか一において、前記第2のシリコン膜の圧縮応力は、−10.0×1010dynes/cm2〜−5.0×109dynes/cm2であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
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