JP4141697B2 - 多結晶シートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主に多結晶シートの製造方法、特に安価で生産性に優れた、太陽電池用多結晶シートの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、太陽電池に用いられている多結晶シリコンウエハの製造方法は、特開平6―64913号公報に開示されているように、不活性雰囲気中でリンあるいはボロン等のドーパントを添加した高純度シリコン材料をるつぼ中で加熱溶融させ、シリコン融液を鋳型に流し込み、それを徐冷することで多結晶インゴットを得る。このインゴットをワイヤーソーや内周刃法などを用いてスライシングすることで太陽電池などに使用可能なウエハが得られることになる。これは、スライス工程が必要となるため、ワイヤーや内周刃の厚み分だけスライス損失が生じてくる。そのため、シリコン原料の利用効率が悪くなり、結果として低価格なウエハを提供することが困難となる。
【0003】
また、スライス工程のない多結晶シートを作製する特開平7―256624号公報では、水平加熱鋳型に溶融シリコンを供給し、水平方向に黒鉛プレートをシリコン融液に直接接触させ固着したところで、ローラーを用いて横に引き出す機構となっている。また、冷却装置のガス吹き出し部からの冷却により、多結晶シートを連続的に得ることができるような構造になっている。この場合、厚み制御板によって多結晶シートの厚みを制御していることから、太陽電池に使用されているような400μm以下の厚みの制御は、困難と予想される。
【0004】
また、新しい多結晶シートの製造方法として、特開2001−151505号公報にあるように、るつぼ内でシリコン塊をヒーターにて溶融させたシリコンの加熱溶融部と、該融液面に対して平行な回転軸を2つ持つ製造装置が提案されている。これは、回転軸に耐熱材で構成された基体をキャタピラ状に配置し、該回転軸を窒素ガス等にて冷却しながら、シリコン融液に接触させることで、その基体表面に結晶を成長させようとする製造方法である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
特開2001−151505号公報には、シリコンの加熱融解部と、耐熱材で構成された基体とで構成され、該基体をシリコン融液に接触させることで、多結晶シリコンシートを形成させる、多結晶シリコンシートの製造方法が開示されている。この場合、製造された多結晶シリコンシートは、基体表面での結晶の成長により形成されるが、多結晶シリコンシートの端部は基体外周にも回り込みが生じる。その多結晶シリコンシートを用いて太陽電池を作製しようとした場合、作製された多結晶シリコンシートの外周を全てダイサーまたはレーザによって切り落とす必要が生じ、生産性の低下という課題があった。
【0006】
また、作製された多結晶シリコンシートは基体への回り込みがあるため、シリコン融液から基体を引き上げた際、多結晶シリコンシート自体の熱収縮のため破損が生じ、歩留りが低下するといった課題があった。歩留まり低下により、太陽電池の製造価格が高価になってしまい、安価太陽電池を提供するのが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った結果、基体形状を創意工夫することにより、上述の問題を解決することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の製造方法は、半導体材料の融液に浸漬し、基体表面に多結晶シートを形成させる多結晶シートの製造方法において、前記基体表面は基体第一表面と基体第二表面が、相互に段差をつけて形成されていることを特徴とする。基体の中央部(基体第一表面)と外周部(基体第二表面)に高低差をつけることにより、製品に使用される基体第一表面から成長した多結晶シートと、その他の基体第二表面から成長した多結晶シートとに分離できることを可能とする多結晶シートの製造方法を提供する。これにより、ダイサー又はレーザ等で切断しなければならない部分や、熱収縮破損による歩留り低下の原因となるような、余分な回り込み部を解消することが可能となる。
【0009】
本発明の製造方法は、基体は基体第一表面と基体第二表面を部分的に連結する支持部を備えていることを特徴とする。これにより、作製された多結晶シートおよび基体とが材料融液から離れる時、製品となる多結晶シートの落下が減少する。
【0010】
本発明の製造方法は、基体の基体第一表面は、基体表面で凸形状に形成されていることを特徴とする。これにより、基体より多結晶シートを剥離しようとした場合、真空吸着等を用いることが可能となり、作業性が非常に高くなる。
【0011】
本発明の製造方法は、基体の基体第一表面は、基体表面で凹形状に形成されていることを特徴とする。これにより、回り込み部が全く発生せず、ダイサー、もしくはレーザ等で支持部を切断する場合の作業性が非常に高くなる。
【0012】
本発明の製造方法において、半導体材料にシリコンを用いることにより、低価格な太陽電池用多結晶ウェハの提供を可能とする。
【0013】
本発明の製造方法は、基体第一表面は凸形状であり、基体第一表面と基体第二表面との段差は2mmから10mmに形成されていることを特徴とする。基体第一表面と基体第二表面の高低差を2mm以上にすることにより、太陽電池に使用される基体第一表面から成長した多結晶シートと、基体第二表面から成長した多結晶シートを確実に分離することが可能となる。また、10mm以下とすることで、基体第一表面周囲への回り込みが防止でき、シリコンの熱収縮によるクラックの発生を防止することが可能となる。
【0014】
本発明の他の製造方法は、基体第一表面は凹形状であり、基体第一表面と基体第二表面との段差は2mmから20mmに形成されていることを特徴とする。基体第一表面と基体第二表面の高低差を2mm以上にすることにより、太陽電池に使用される基体第一表面から成長した多結晶シートと、基体第二表面から成長した多結晶シートを確実に分離することが可能となる。また、20mm以下とすることで、基体第二表面へのシリコンの固着を抑制することが可能になる。これにより、材料融液の温度分布の影響によって生じる固着現象を抑制できるため、基体の再利用が可能となる。
【0015】
本発明の太陽電池は、上記多結晶シートの製造方法で得られた、多結晶シートを用いたことを特徴とする。これにより安価な太陽電池を提供することを可能としたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
半導体材料融液に浸漬して、その表面に多結晶シートを作製する基体は、図1の概略斜視図に示すように主として製品に用いる多結晶シートを形成する基体第一表面が凸形状(基体周辺部の基体第二表面に比べて高い構造)、または図5に示すように凹形状(基体周辺部の基体第二表面に比べて低い構造)であることを特徴としている。図1および図5は、基体105あるいは、基体505の上面部分に多結晶シートが形成したときの図である。基体第一表面が凸形状をした基体105を用いて作製された多結晶シート101(ハッチング部)を主として製品として用い、基体105の基体第二表面の凹面に形成された多結晶シート102(ハッチング)は、製品として用いずに再度、溶解して利用し、材料利用効率を向上させることが可能になる。しかしながら、この図において、得られた多結晶シートの厚みに関しては示していない。
【0018】
作製された多結晶シートがこのような形状になる理由を、基体の基体第一表面と基体第二表面の境界部の断面拡大図である図2〜図4を用いて説明する。ただし、図2〜図4においては、多結晶シートを成長させるための基体の面内で製品となる多結晶シートが得られる部分が下面になっている。すなわち、図1にある基体105の上下をひっくり返し、融液に浸漬した時の断面図になっている。
【0019】
融液が液体から固体に変わる、すなわち、結晶に成長するためには、融液が融点以下になる必要がある。このとき融液の温度を下げるためには、融液の比熱から算出される熱量の他、液体から固体に変化するときに放出される凝固潜熱を吸収する必要がある。通常、融液と基体が接することにより、この熱交換は行なわれることになる。これにより図2に示すように基体205の表面(図では下面)に接触した半導体材料の融液206は、基体第一表面および基体第二表面それぞれで、基体205との熱交換のため多結晶シート201a、202a、202bが成長することを示す。この図において、aは図において水平方向に成長した多結晶シートを示し、bは垂直方向に成長した多結晶シートを示す。また、図2から図4では、連結する支持部は省略してある。
【0020】
シリコン融液206には表面張力があるため、融液面206aは基体205の表面と接することができない。言い換えれば、基体第一表面と基体第二表面の境界では、熱交換ができないため、融液から結晶へ変化することができない。このような理由から図1に示すような基体第一表面と基体第二表面の境界で結晶が分離された多結晶シートを作製することが可能となる。
【0021】
また、基体第一表面と基体第二表面の高低差が大きいと図3に示すように、基体第一表面の側部へ融液の回り込み部301bが発生することになり、そこでも結晶が成長することになる。このように高低差が大きいことにより、主として製品に用いられる多結晶シート301aの他にも、その回り込み部301bが生じることになる。この図3においても、基体305と融液面306aは接することはできなくなるために、製品となる部分301aと、302aは分離した形状となる。
【0022】
成長直後の多結晶シートの温度は高温であるが、基体温度の低下や多結晶シート表面からの抜熱により、時間と共に低温になる。これにより、多結晶シート301aや回り込み部301bの多結晶シートは、温度低下により生じる熱収縮により破損することになる。特に、多結晶シート301b部分が大きくなると、熱収縮により破損することが多くなる。
【0023】
この基体の基体第一表面と基体第二表面の高低差は10mmを超えると、熱収縮による破損が生じる可能性が高くなる。逆に、この高低差が小さい場合、図4に示すように、融液406と基体405が接する部分と、そうでない部分との距離が小さくなるため、基体405と接していない部分の融液も、その周りの融液からの伝導熱により結果的に結晶化し、基体第一表面と基体第二表面の境界に多結晶シート401bが成長することになる。そのため、基体第一表面から成長した製品となる多結晶シート401aと、基体第二表面の凹部から成長した多結晶シート402aとの境界401bが繋がった形となり、製品となる部分の多結晶シート401aを取り出すためには、周辺部分を全てダイサーもしくはレーザ等によるカッティング作業が必要となる。実験により、この高低差が2mm未満になると、上記のように境界に多結晶シート401bが存在する。
【0024】
さらに、図1において、基体第二表面に成長した多結晶シート102は、基体105を融液に浸漬する場合、その深さは少なくとも、基体第二表面全体も融液に浸漬する深さで浸漬しているため、基体105の周囲の4面にも多結晶シート104が成長している。これにより、基体周辺部に成長した多結晶シート104は、熱収縮により、亀裂(クラック)が入る恐れはあるが、しっかりと基体105と密着している。また、基体第二表面に成長した多結晶シート102は製品に用いる部分でないため、クラックが入っても特に問題はない。
【0025】
また、基体第二表面の幅は、3mm以上、30mm以下が好ましい。3mm以下にすると、基体第一表面と基体第二表面に成長する多結晶シートが分離しない可能性が大きくなるためである。これは、基板の角部はシリコン融液からの熱の影響を受けやすいために、基体第一表面から成長する多結晶シートの形状に影響を与えるためである。また、30mm以上になると、基体の大きさに対して、製品となる多結晶シートの面積が少なくなるだけでなく、不要な部分が多くなり、生産性が悪くなるためである。
【0026】
基体第一表面に成長した多結晶シート101と基体第二表面に成長した多結晶シート102が分離された多結晶シートでは、単に分離しているだけでは基体第一表面に成長した多結晶シート101は基体105が融液から出てきた時点で剥離・落下してしまう。そこで上述のように基体第二表面に成長した多結晶シート102と、基体第一表面に成長した多結晶シート101が連結するように、基体第一表面と基体第二表面を部分的に結んだ支持部103を設けることにより、基体第一表面に成長した製品となるべき多結晶シート101の剥離・落下を防止することが可能となる。これは、基体第一表面と基体第二表面とを連結した支持部103上にも多結晶シート106が成長するために、基体第一表面に成長した多結晶シート101と基体第二表面に成長した多結晶シート102が部分的に連結されるためである。
【0027】
図1に示した支持部103は、辺の中央部に1箇所に設けているが、任意の辺及び、その辺の任意の場所に支持部を設けても差し支えない。より好ましくは、基体進行方向に対して平行な2辺の中央部に、少なくとも1個づつ設置するのが望ましい。また、基体第一表面と基体第二表面との支持部103は、特にコーナー部分に設けることも可能である。コーナー部分に設けることで、基体が最後に出る時には、シリコン融液を基体のコーナー部分に追いやることが可能となるためにより好ましい。これにより、シリコン融液が基体第二表面側へと移動し、製品となる部分に液だまりなどの不均一成長部分がなくなり、製品として得られる多結晶シートがより好ましい形状になる。
【0028】
このような支持部は、基体第一表面と基体第二表面に成長した多結晶シートを連結していればよい。支持部の役割は、基体第一表面に成長した多結晶シートが剥離して、落下しないようにするためであり、少なくとも基体がシリコン融液から脱出し、基体の膨張や多結晶シートの収縮などがおさまって、製品となる多結晶シートが落下しない位置まで基体が移動する間、連結されていればよい。すなわち、得られた多結晶シートを基体から取り出すまで連結している必要はない。
【0029】
支持部の幅は、最低限の幅があればよい。より好ましくは、0.5mm以上、40mm以下が好ましい。支持部の幅は、小さければ小さいほどよいが、これは、後工程で製品となる多結晶シートと、製品として用いない多結晶シートを分離・切断するための切断距離が少なくなるためである。支持部の幅が大きくなれば、それだけ切断に要する時間がかかるため、あまり好ましくない。
【0030】
しかしながら、基体第一表面から成長する多結晶シートが大きくなるに伴って、支持部の幅も大きくし、さらに、その個数を増やすことで対応するのが好ましい。複数個の支持部があることにより、最終的には少なくとも1個の支持部が多結晶シートを連結して保持していれば、特に問題はない。
【0031】
また、上記の支持部の形状以外に、図6に示すように基体第一表面の一部が基体第二表面を横切り、基体605の周辺部に達しているような構造の支持部603を採用してもよい。この場合、基体周辺部に成長した多結晶シート604と、基体第一表面に成長した多結晶シート601が繋がることになり、基体第一表面に成長した多結晶シート601の剥離・落下を防止することが可能となる。
【0032】
次に、基体第一表面が凹形状をした基体を用いて作製された多結晶シートの形状を図5を用いて説明する。基体505の基体第一表面上に多結晶シート501(ハッチング部)が成長し、基体第二表面上に多結晶シート502(ハッチング部)が成長する。作製された多結晶シートがこのような形状になる理由は、上述した基体第一表面が凸形状を有する基体を用いた時と同様な理由である。すなわち、融液の表面張力により融液と基体表面とが接触できない箇所が生じ、結果的にその部分は結晶が成長できずに、凹状の基体第一表面で成長した多結晶シート501と凸状の基体第二表面で成長した多結晶シート502は分離することが可能になる。
【0033】
また、先の基体第一表面が凸形状の基体と同様、基体第一表面と基体第二表面との高低差は、2mm未満では基体第一表面で成長した多結晶シート501と基体第二表面の凸面で成長した多結晶シート502は分離しなくなる。さらに、基体第二表面の凸面から成長した多結晶シートの熱収縮で生じたクラック等が、基体第一表面の凹面の多結晶シート601に波及する恐れが生じる。また、クラック等が生じなくても、その後基体第一表面の凹面から成長した多結晶シート601の周辺部を全てダイサーもしくはレーザ等によりカッティングを行う必要が生じる。このように、高低差が2mm未満では、クラックの波及やレーザでのカッティング等の処理などにより、歩留まり低下や高コスト化に繋がる。
【0034】
基体第一表面と基体第二表面の高低差が20mmを越えると、基体第一表面の凹面に多結晶シートを成長させようとすると、少なくとも基体第二表面は融液に20mm以上深く浸漬されることになる。シリコンの融液は、その融液表面から輻射エネルギーとして失う熱量は非常に大きく、融液表面と融液内部では大きな温度差が生じることになる。融液温度が必要以上に高い融液に基体を浸漬した場合、基体表面とその表面に成長した多結晶シートは固着現象を起こしてしまい、次にその基体を再利用することは不可能となってしまう。少なくともシリコン融液表面を融点以上に保とうとした場合、浸漬深さが20mmを超えると、この基体と多結晶シートの固着現象を生じる可能性が高くなる。これらのことより、生産性よく、多結晶シートを製造するためには、基体第一表面が凹形状の基体を用いる場合、基体第一表面と基体第二表面の高低差は20mm以下にする必要がある。
【0035】
また、先の基体第一表面が凸形状をした基体と同様、基体第一表面の凹部に成長した多結晶シート501と基体第二表面に成長した多結晶シート502が分離された多結晶シートでは、単に分離しているだけでは基体第一表面に成長した多結晶シート501は、基体505が融液から出てきた時点で剥離・落下してしまう。これを防止するために、基体の回り込み部504を持って、しっかりと密着している基体第二表面の凸部の多結晶シート部502と、基体第一表面の凹部に成長した多結晶シート501とを連結するように、基体第一表面と基体第二表面を結ぶ支持部503を設けることにより、基体第一表面に成長した多結晶シート501の剥離落下を防止することが可能となる。
【0036】
本発明による基体を用いて多結晶シートを作製する方法を、図7の製造装置の断面図を用いて説明する。本体チャンバ713の内部には、加熱ヒーター702により、昇降機構を備えたるつぼ台703上のるつぼ707内の半導体材料706を融点以上に加熱できるようになっている。また、本体チャンバ713内は真空引きを行いAr、N2、Heなどの不活性ガスでガス置換を行う。特に半導体材料としてシリコンを用いる場合は、Arが好ましい。
【0037】
るつぼや断熱材などに吸湿性の材料を用いて、半導体材料を溶解する場合には、昇温途中で真空排気を行っている方が好ましい。これは、吸湿材料から水分を除去するためである。この水分を除去することにより、水に含まれている酸素と半導体材料からできる酸化物の発生を防止することが可能となる。さらに、昇温途中では、本体内圧力が数十hPaから100hPa前後の間で、るつぼとコイルの間でグロー放電を起こす可能性もあるため、圧力制御を厳密に行う必要がある。
【0038】
半導体材料は、溶融すると体積が減るため、原料投入ポート708を設け、原料の追加投入を行い、湯面高さの調整ができる構造とする方が好ましい。これは、るつぼへの半導体材料塊の装填において、その塊の間に空間が生じるため、装填率が低くなるためである。
【0039】
半導体材料706に浸漬して、多結晶シートを作製するための基体705は回転軸704に取り付けられた脚の先端に配置されており、回転軸704が回転することにより、基体705は半導体材料融液706に浸漬する。基体705上に作製された多結晶シート701は、回転軸704が回転することにより、吸着部709と回転軸704の中心との線分上に位置した場所で停止し、同圧に調整された副室710と本体チャンバ713を仕切るゲートバルブ711が開く。その後、吸着部709が矢印S1方向に移動し、基体705上の多結晶シート701を吸着部709で吸着する。この吸着システムは吸着部にシリコンゴム等の耐熱性ゴムを用いて、内部を真空装置にて負圧にして吸着する方法、もしくは、吸着部にセラミックス素材等を用いて、フローチャックにて吸着する方法等がある。ここでは、多結晶シートのみを装置の外へ搬出する装置を図示しているが、基体上に形成した多結晶シート701と基体705を搬出する装置であっても構わない。より生産性よく、多結晶シートを得ようとした場合は、多結晶シートのみを装置外で搬出できる構造にする方が好ましい。
【0040】
基体705より多結晶シート701を剥離した後、再び本体チャンバ713と副室710を仕切るゲートバルブ711を閉める。ゲートバルブ711は、多結晶シート701を取り出すために、副室扉712を開放したときに、副室710から本体チャンバ713内への空気の流入を防止する役割を果たす。
【0041】
作製された多結晶シート701を取り出した後、再び副室扉712を閉め、真空ポンプ(図示せず)にて副室710内の空気を排気し、Arを本体チャンバ713内圧力と同圧まで供給する。その後、次の基体705が所定の位置に来るまで待機し、再び上記工程を繰り返して、作製された多結晶シート701を装置外へ取り出す。
【0042】
取り出された多結晶シート701は、不要な部分(支持部)をダイサーもしくはレーザ等にてカッティングを行う。支持部だけを切断だけで、多結晶シートが得られる基体形状にしているために、切断に要する時間も短くなり、生産性を落とすことがない。
【0043】
このようにして作製された多結晶シートは、各々の目的に応じて加工されていくわけである。特に、半導体材料にシリコンを用いた場合、通常の多結晶太陽電池プロセスを通すことで、太陽電池として製品化することが可能である。
【0044】
このような方法で作製された多結晶シートは、非常に安価で作製することができること、さらには、スライスロスがないことから、安価な太陽電池を提供することができる。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
本体チャンバ内に設置されたカーボン製のるつぼに、直径およそ50mm前後のシリコン塊を5kg装填した後、本体チャンバの内の圧力を400Paになるまでロータリーポンプを用いて排気を行った。その後、5Paになるまで、メカニカルブースターポンプを用いてさらに排気を行った。
【0046】
次に、るつぼをるつぼ加熱用のコイルに周波数5kHz、電力100kWのインバータを用いて、5℃/minの昇温レートにて200℃まで昇温する。本体チャンバ内の圧力を5Pa、るつぼ温度を200℃を維持した状態で30分間保持することにより、カーボン製るつぼに含まれている水分を除去する。このようなベーキングを経た後、一旦インバータの出力を停止し、るつぼの加熱を停止する。この状態で、本体チャンバの圧力を800hPaになるまでArガスを充填する。
【0047】
本体チャンバ内が800hPaに達した時点で、再びるつぼを昇温レート5℃/minにて加熱し、るつぼ温度が1500℃になるまで待機する。シリコンの融点は1415℃であるから、るつぼ温度1500℃一定で安定させることにより、るつぼ内のシリコンはやがて全て溶解して、シリコン融液となる。このとき、シリコン融液の高さをるつぼ上端より15mmに設定するために、追加シリコン塊が必要となる。そこで、直径10mm前後のシリコン塊を1.5kg原料投入ポートよりるつぼに追装して、シリコン融液の高さを所定の高さに設定する。追加投入したシリコン塊が全て溶融したことを確認したのち、るつぼの設定温度を1430℃まで落として、融液温度安定化のため30分間その状態を維持する。
【0048】
固定軸に固定されている脚は、120°間隔で3本用意されており、そのうちの1本は吸着部と回転軸の中心を結ぶ線分上に位置している。また、回転軸及び脚内部は水冷にて冷却されており、回転軸に固定されている脚の先端には、図1に示す基体第一表面(製品となる部分)が基体第二表面に対して凸形状をした基体がセッティングされている。
【0049】
この基体第一表面は、基体第二表面に比べて5mm高くなっており、また、基体第一表面と基体第二表面は基体4辺のそれぞれ中央に落下防止のための支持部が設けられている。
【0050】
シリコン融液温度の安定化の後、基体第一表面の中央部がシリコン融液に10mm深さで浸漬するようにるつぼ昇降台を用いて高さ調整を行い、回転速度0.75rpmで回転軸を回転させ、基体をシリコン融液に浸漬させ、120°移動した時点で回転を停止させる。同様にして、再度回転軸を回転速度0.75rpmで回転させ、120°移動した時点で回転を停止させる。
【0051】
そうすることにより、最初にシリコン融液に浸漬した基体は、吸着部と回転軸中心を結ぶ線分上に位置することになる。基体がその位置に停止した状態で、副室と本体チャンバを仕切っているゲートバルブを開け、耐熱性のあるシリコンゴムで構成された吸着部を、作製された基体上の多結晶シートに密着させ、吸着部内を負圧にした上、再び吸着部を副室内へ格納する。吸着部が副室内へ格納されたことを確認した上、本体チャンバと副室を仕切っているゲートバルブを閉め、副室内圧力を大気圧と同じ1013hPaに合わせた後、副室扉を開ける。
【0052】
吸着部直下へ作製された多結晶シートを取り出すための受け皿を配置した状態で吸着部内部を大気圧に戻すことで、吸着部に吸着されていた多結晶シートが受け皿上に取り出される。取り出された多結晶シートはダイサーにて不要な部分(支持部)における多結晶シートをカッティングする。
【0053】
このように作製された多結晶シートの歩留まりは95.6%、シート板厚は約400μmであった。
【0054】
また、得られた多結晶シートを通常の多結晶用太陽電池プロセスを通して太陽電池セルを作製したところ、開放電圧570mV、短絡電流30.4mA/cm2、変換効率13.1%の出力を確認することができた。
【0055】
(実施例2)
実施例1に示した装置にて、図5のような基体第一表面が凹形状の基体を用いた実施例を次に示す。
【0056】
実施例1同様本体チャンバ内のるつぼにシリコンをセット後、本体チャンバ内をArにて置換し、30分間のベーキング後にシリコンを溶融し、追加シリコン塊を追装することで、所定のシリコン融液量を作製する。
【0057】
回転軸脚の先端に配置された基体は、製品に用いる多結晶シートを形成する基体第一表面が凹形状であり、基体第二表面は凸形状を有している。また、基体第一表面と基体第二表面の高低差は8mmあり、支持部は浸漬方向に対して前後各辺中央の2点設けている。
【0058】
上記基体を設置した上で、るつぼ高さを基体第一表面の中央が10mmの深さで浸漬されるように、るつぼ昇降台を用いて設定した上で、回転軸の回転数1.0rpmにて基体をシリコン融液に浸漬し、多結晶シートを作製した。作製された多結晶シートは、実施例1と同様に副室を通じて装置外に取り出され、ダイサーにて不要な部分(支持部)における多結晶シートをカッティングする。
【0059】
このように作製された多結晶シートの歩留まりは98.7%、シート板厚は約350μmであった。
【0060】
また、得られた多結晶シートを通常の多結晶用太陽電池プロセスを通して太陽電池セルを作製したところ、開放電圧563mV、短絡電流29.7mA/cm2、変換効率12.4%の出力を確認することができた。
【0061】
(実施例3)
実施例1に示す装置にて、図8に示す基体第一表面が凹形状の基体805を用いた実施例を次に示す。図8は、基体の一断面図であり、基体第一表面801が基体第二表面802より低く、かつ基体第一表面801の周辺部分に溝807が存在する構造である。
【0062】
実施例1同様、本体チャンバ内のるつぼにシリコンをセット後、本体チャンバ内をArにて置換し、30分間のベーキング後にシリコンを溶融し、追加シリコン塊を追装することで、所定のシリコン融液量を作製する。
【0063】
回転軸脚の先端に配置された基体は、製品に用いる多結晶シートを形成する基体第一表面が凹形状である。また、基体第一表面と基体第二表面の高低差は2mmあり、支持部は浸漬方向に対して前後各辺中央の1点設けている。さらに、基体第一表面の周辺部分の溝の幅は2mmで、基体第一表面からの深さは2mmであった。
【0064】
上記基体を設置した上で、るつぼ高さを基体第一表面の中央が5mmの深さで浸漬されるように、るつぼ昇降台を用いて設定した上で、回転軸の回転数3.0rpmにて基体をシリコン融液に浸漬し、多結晶シートを作製した。作製された多結晶シートは、実施例1と同様に副室を通じて装置外に取り出され、ダイサーにて不要な部分(支持部)における多結晶シートをカッティングする。
【0065】
このように作製された多結晶シートの歩留まりは94.1%、シート板厚は約290μmであった。
【0066】
また、得られた多結晶シートを通常の多結晶用太陽電池プロセスを通して太陽電池セルを作製したところ、開放電圧565mV、短絡電流29.5mA/cm2、変換効率12.5%の出力を確認することができた。
【0067】
(実施例4)
実施例1に示した装置にて、図9に示す基体第一表面が凸形状の基体905を用いた実施例を次に示す。図9は、基体の一断面図であり、基体第一表面901が基体第二表面902より高く、かつ基体第一表面901の周辺部分に溝907が存在する構造である。
【0068】
実施例1同様、本体チャンバ内のるつぼにシリコンをセット後、本体チャンバ内をArにて置換し、30分間のベーキング後にシリコンを溶融し、追加シリコン塊を追装することで、所定のシリコン融液量を作製する。
【0069】
回転軸脚の先端に配置された基体は、製品に用いる多結晶シートを形成する基体第一表面が凸形状である。また、基体第一表面と基体第二表面の高低差は3mmあり、支持部は浸漬方向に対して前後各辺に3点設けている。さらに、基体第一表面の周辺部分の溝の幅は2mmで、基体第二表面からの深さは1mmであった。
【0070】
上記基体を設置した上で、るつぼ高さを基体第一表面の中央が5mmの深さで浸漬されるように、るつぼ昇降台を用いて設定した上で、回転軸の回転数4.2rpmにて基体をシリコン融液に浸漬し、多結晶シートを作製した。作製された多結晶シートは、実施例1と同様に副室を通じて装置外に取り出され、ダイサーにて不要な部分(支持部)における多結晶シートをカッティングする。
【0071】
このように作製された多結晶シートの歩留まりは93.9%、シート板厚は約260μmであった。
【0072】
また、得られた多結晶シートを通常の多結晶用太陽電池プロセスを通して太陽電池セルを作製したところ、開放電圧564mV、短絡電流29.0mA/cm2、変換効率12.0%の出力を確認することができた。
【0073】
【発明の効果】
以上、述べたように本発明によれば、高歩留まりで、スライス工程や全周カッティングが不要な生産性の高い多結晶シートを作製することが可能となる。
【0074】
また、得られた多結晶シートを太陽電池に用いることにより、低コストな太陽電池を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 基体第一表面が凸形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の概略斜視図である。
【図2】 基体第一表面が凸形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の拡大断面図である。
【図3】 基体第一表面が凸形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の拡大断面図である。
【図4】 基体第一表面が凸形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の拡大断面図である。
【図5】 基体第一表面が凹形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の概略斜視図である。
【図6】 基体第一表面が凸形状を有する基体上に多結晶シートを成長した状態の概略断面図である。
【図7】 多結晶シートの製造装置の概略断面図である。
【図8】 基体第一表面が凹形状を有する基体の一断面図である。
【図9】 基体第一表面が凸形状を有する基体の一断面図である。
【符号の説明】
101,201a,301a,401a,501,601,701 製品となる部分の多結晶シート、102,202a,302a,402a,502,602 製品とならない部分の多結晶シート、103,503,603 支持部、105,205,305,405,505,605,705 基体、206a,306a 融液表面、807,907 溝。
Claims (6)
- 半導体材料の融液に浸漬し、基体表面に多結晶シートを形成させる多結晶シートの製造方法において、前記基体表面は基体第一表面と基体第二表面が、相互に段差をつけて形成されるとともに、基体第一表面と基体第二表面を部分的に連結する支持部を備えていることを特徴とする、前記多結晶シートの製造方法。
- 基体第一表面は、基体第二表面に対して凸形状に形成されている請求項1記載の多結晶シートの製造方法。
- 基体の基体第一表面は、基体表面で凹形状に形成されている請求項1記載の多結晶シートの製造方法。
- 半導体材料はシリコンである請求項1〜3のいずれかに記載の多結晶シートの製造方法。
- 基体第一表面と基体第二表面との段差は2mmから10mmに形成されている請求項2記載の多結晶シートの製造方法。
- 基体第一表面と基体第二表面との段差は2mmから20mmに形成されている請求項3記載の多結晶シートの製造方法。
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