JP4139761B2 - ロータリーキルン炉 - Google Patents

Description

本発明はロータリーキルン炉に関し、詳しくは、燃焼用空気供給口を有する前面部と、これに続く回転する胴部とを備えるロータリーキルン炉に関する。

ロータリーキルン式焼却炉は、主燃焼部を構成するロータリーキルンが炉材を内張りした鋼板製外皮を外周に設けた回転円筒炉であるため、ストーカ式焼却炉や流動層式焼却炉に比べて、流動性の高いゴミや流動層の流動化を阻害する低融点物質を含むゴミ等、性状の異なる多様な被燃焼物に対しても、安定に焼却処理できるという優れた利点があり、長時間の連続運転にも耐えるため、その用途は広い。

ロータリーキルン式焼却炉への燃焼用空気の供給は、被燃焼物を供給する側であるロータリーキルン前面側より行われるが、その空気供給口は複数のノズルが通常上下２段に分けて夫々水平に並べられて配置されている。その内、上段側に配置されたノズルは、投入された被燃焼物の表面に向けて空気を供給するようにやや下方に向けられている（例えば、特許文献１〜３）。

しかし、ロータリーキルンは回転しながら被燃焼物を燃焼させて後方に移送させるようになっているため、内部の被燃焼物は回転方向に向けて持ち上げられて、幾分傾斜しながら移送され、被燃焼物から生じる火炎も回転方向に向けて炉壁に沿って立ちのぼるにも関わらず、上記従来技術はこのような炉内現象を全く考慮することなく燃焼用空気を送給しており、送給した空気が燃焼に十分寄与しているとはいえず、燃焼効率は決して高いものではない。つまり、送給された空気の内、被燃焼物の燃焼に寄与しない空気が少なからず存在するため、必要以上の空気を送給せざるを得ないのが現状であり、それに要する空気供給設備、排ガス処理設備の容量も大きいものを設置せざるを得ず、設備コストの高騰をもたらしていた。
特開平５−２２３２２８号公報。 特開２００１−２４１８５０号公報。 特開昭５０−６３７７５号公報。

そこで、本発明の解決しようとする問題点は、空気供給設備、排ガス処理設備などに大型のものを使用することなく、燃焼用空気の供給を効果的なものとし、燃焼効率の高いロータリーキルン炉を提供することにある。

上記課題は請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る焼却炉の特徴構成は、被燃焼物投入口、バーナ口、および複数の燃焼用空気供給口を有する前面部と、これに続く回転する胴部とを備えていて、前記前記燃焼用空気供給口が、前記被燃焼物投入口とバーナ口よりも上方に位置し、水平方向に並列して複数箇所配置されて構成される上段空気供給口と、前記胴部の底部から回転方向に向け上方に順次高くなるように、かつ直線状あるいは前記胴部の内周面に沿った円弧状に複数箇所配置されて構成される下段空気供給口からなるとともに、
前記胴部の回転に伴う被燃焼物の移動方向（以下「移動方向Ｒａ」という）に位置する各上段空気供給口の断面が、胴部中心軸線の水平方向に対して、順次下方の傾斜角度を小さく、かつ回転に伴う移動をした前記被燃焼物に近くなるにつれて、順次水平方向の傾斜角度を小さくし、
方向Ｒａに位置する各下段空気供給口の断面が、前記移動方向に向けて、順次胴部中心軸線の水平方向の傾斜角度を小さくし、
各燃焼用空気供給口が、前記胴部の回転に伴い、投入された被燃焼物の移動位置に対向するように設けられていることにある。

この構成によれば、投入された被燃焼物が胴部の回転により、胴部の底部から回転方向に持ち上げられたとしても、被燃焼物の移動した位置に対向するように複数の燃焼用空気供給口が配置されているので、被燃焼物の燃焼表面に対して効率よく燃焼空気を供給することができ、被燃焼物と燃焼空気との接触時間を長くすることができて、燃焼効率を高くすることができる。しかも、燃焼効率の向上により、供給する空気量を少なくできると共に、これに伴い排ガス発生量も少なくでき、空気供給系統および排ガス系統に関連する設備コストを低減できる。また上段の燃焼用空気供給口は下方に位置する被燃焼物に向けて燃焼用空気を供給できると共に、下段の燃焼用空気供給口からは回転に伴って、炉内を回転方向に移動する被燃焼物の移動位置に向けて、燃焼用空気を供給できるようになり、燃焼用空気の供給を一層効率的なものにできる。さらに、複数の上段空気供給口の配置および各断面の傾斜角度の設定によって、底部から胴部の回転方向に持ち上げられることに対処し、被燃焼物に対して有効に燃焼用空気を吹き付けることができ、複数の下段空気供給口の配置および各断面傾斜角度の設定によって、被燃焼物に向けてより有効に燃焼用空気を吹き付け、燃焼に寄与しない空気量を一層少なくできる。

その結果、空気供給設備、排ガス処理設備などに大型のものを使用することなく、燃焼用空気の供給を効果的なものとし、燃焼効率の高いロータリーキルン炉を提供できることになる。

また、本発明に係るロータリーキルン炉において、前記燃焼用空気供給口の数量が、ロータリーキルン炉の径、長さ、投入する被燃焼物の種類、性状、投入量により選択されることが好ましい。

この構成によれば、ロータリーキルン炉あるいは被燃焼物などの使用態様によって適宜変更可能で、燃焼用空気の供給を効果的なものとし、燃焼効率の高いロータリーキルン炉を提供することができる。

また、本発明に係るロータリーキルン炉において、前記下段空気供給口が前記方向Ｒａに対して傾斜配列された場合、その傾斜角度が、ロータリーキルン炉の径、被燃焼物の種類、性状、投入量により選択されることが好ましい。

この構成によれば、被燃焼物が、その回転方向に向けて傾斜するように持ち上げられて存在することに対し、未燃ガスを効果的に撹拌すると共に、被燃焼物に向けて有効に燃焼用空気を吹き付け、燃焼に寄与しない空気量をできるだけ少なくすることができる。

下流側に二次燃焼炉を接続してもよい。この構成によれば、被燃焼物の完全燃焼を促進して、灰化を一層促進できる。

本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図１は、本実施形態に係るロータリーキルン式焼却炉の概略全体断面構造を示し、（ａ）は前面部側からみた左側面構造を示しており、（ｂ）は正面断面構造を示す。この焼却炉は、下流側に向けて幾分傾斜したロータリーキルン炉１と、その下流側に接続されている二次燃焼炉２とからなる。

ロータリーキルン炉１は、上流側（図１（ｂ）の左側）の前面部３に被燃焼物投入口４、バーナ口５を備えると共に、押込送風機１０から空気ダクト６を通して炉内に燃焼用空気を供給する空気供給口７を有しており、更に、その胴部１ａは電動機を備えて下部に配置された回転駆動装置８によってゆっくりと回転されながら、被燃焼物を撹拌しつつ燃焼させて下流側へ移送させる。

空気供給口７は、上段空気供給口７ａと下段空気供給口７ｂとに分けて複数個が設けられて構成されている。この内、上段空気供給口７ａは、被燃焼物投入口４、バーナ口５より上方に位置して、図１（ａ）に示すように、略水平方向に並列して３箇所（７ａ１〜７ａ３）配置されて構成されているのに対して、下段空気供給口７ｂは、被燃焼物投入口４、バーナ口５より下方に位置すると共に、ロータリーキルンの回転方向Ｒに向け底部から上方に順次高くなるように傾斜配列されて４箇所（７ｂ１〜７ｂ４）設けられて構成されている。

下段空気供給口７ｂの傾斜角度θ１は、ロータリーキルン炉１の径、被燃焼物Ｗの種類、性状、投入量などにより、１５〜６０°程度の範囲で選択することができる。もっとも、４箇所の下段空気供給口７ｂ１〜７ｂ４は、必ずしも図１（ａ）に示すように、直線上に傾斜配列されている必要はなく、ロータリーキルン炉の胴部１ａの内周面に沿うように円弧状に配列されていてもよい。これは、燃焼時に被燃焼物Ｗが図２に破線で示すように、その回転方向Ｒに向けて最大約６０°程度傾斜するように持ち上げられて存在することに対し、未燃ガスを効果的に撹拌すると共に、被燃焼物Ｗに向けて有効に燃焼用空気を吹き付け、燃焼に寄与しない空気量をできるだけ少なくするためである。

さらに、４箇所に設けられた下段空気供給口７ｂ１〜７ｂ４は、図３に示すように、被燃焼物Ｗに近い側に位置する下段空気供給口７ｂ４から７ｂ１に向けて、順次胴部中心軸線Ｌに対し略水平方向にθ３＝０〜７０°の範囲で角度を異ならせて傾斜している。これにより、被燃焼物Ｗに向けてより有効に燃焼用空気を吹き付け、燃焼に寄与しない空気量を一層少なくできる。

３箇所の上段空気供給口７ａ１〜７ａ３は、図１（ｂ）に示すように、前面部３内において水平方向に対して下向きにθ２＝約２０〜７０°程度傾斜して空気を供給するようになっていると共に、胴部１ａの回転に伴う被燃焼物Ｗの移動位置に対向するように、図３に示す下段空気供給口７ｂと同様に、被燃焼物Ｗに近い側に位置する上段空気供給口７ａ３から７ａ１に向けて順次、中心軸線Ｌに対し略水平方向にθ３＝０〜７０°の範囲で角度を異ならせて傾斜している。この場合も、炉内の被燃焼物Ｗが、図２に示すように、底部から胴部１ａの回転方向Ｒに持ち上げられることに対処し、被燃焼物Ｗに対して有効に燃焼用空気を吹き付けるようにするためである。

このようにすることにより、被燃焼物Ｗに対してその表面に均等に燃焼用空気が供給され、被燃焼物Ｗより生じる火炎もロータリーキルン炉の胴部１ａの内周面を回転方向に沿って十分な長さに形成される。もっとも、上記した、上段空気供給口７ａと下段空気供給口７ｂの夫々の数は、図１に表された数に限定されるものではなく、ロータリーキルン炉１の径、長さ、投入する被燃焼物Ｗの種類、性状、投入量などにより適宜変更可能である。

更に、ロータリーキルン炉１の出口側では、ロータリーキルン炉１で被燃焼物から発生した未燃ガスが二次燃焼炉２にて燃焼される。更に、排気ガスは、二次燃焼炉２の下流側から排出され、排ガス処理設備（図示略）を通して無害化され大気に放出される。

図１に示すように、３箇所の上段空気供給口７ａと４箇所の下段空気供給口７ｂとの上下２段の空気供給口７を備えるロータリーキルン炉（実施例）と、同様な箇所に同数の上下２段の空気供給口を備え、上段空気供給口と下段空気供給口とを図１のように傾斜させることなく、いずれも水平方向に並置したロータリーキルン炉（比較例）とに対して、炉内に燃焼用空気を送給すると共に、廃プラスチック約１０００ｋｇを炉内に投入して、ロータリーキルン出口において燃焼に必要とした空気量（比）と、燃焼に寄与する燃焼寄与率を測定した。その結果を表１に示す。ロータリーキルン炉としては、回転速度０．１５ｒｐｍ、内径３ｍ、長さ５ｍのものを使用し、燃焼寄与率は、複数ポイントの残存Ｏ₂ 測定、および未燃ガス測定にて行った。

表１より、本実施例の場合、燃焼に寄与し得る空気が、比較例の場合に比べて約１４％高く、燃焼に必要な空気が、比較例に比べ空気比にして約３０％低減できることが分かる。

〔別実施の形態〕
（１）上記実施形態では、ロータリーキルン炉に二次燃焼炉を接続した炉について例示したが、二次燃焼炉として後燃焼ストーカ炉のようなストーカ炉を接続してもよいし、ロータリーキルン炉とストーカ炉の夫々において被燃焼物の燃焼が可能で、ロータリーキルン炉からの燃焼残渣をストーカ炉からの燃焼残渣と同時に灰化させる形式の炉に対しても適用することができ、もとより下流側に燃焼炉を接続することなく、ロータリーキルン炉単独としても本発明を適用できる。
（２）ロータリーキルン炉１の胴部外周には、冷却用空気を通流させるジャケットを設けてもよい。

本発明は、都市ゴミ、雑芥、廃プラスチック、油泥、汚泥、各種固液混合廃棄物を焼却する焼却炉に利用できる他、セメント焼成炉、その他各種用途のロータリーキルン炉に適用できる。

本発明に係るロータリーキルン炉を用いた焼却炉の概略半断面構成図 図１のＡ−Ａ矢視図 図１のＢ−Ｂ矢視図

符号の説明

１ａ 胴部
２ 二次燃焼炉
３ 前面部
７ 燃焼用空気供給口
７ａ 上段空気供給口
７ｂ 下段空気供給口
Ｌ 中心軸線
Ｗ 被燃焼物

Claims (4)

1. 被燃焼物投入口、バーナ口、および複数の燃焼用空気供給口を有する前面部と、これに続く回転する胴部とを備えるロータリーキルン炉において、
   前記燃焼用空気供給口が、前記被燃焼物投入口とバーナ口よりも上方に位置し、水平方向に並列して複数箇所配置されて構成される上段空気供給口と、前記胴部の底部から回転方向に向け上方に順次高くなるように、かつ直線状あるいは前記胴部の内周面に沿った円弧状に複数箇所配置されて構成される下段空気供給口からなるとともに、
   前記胴部の回転に伴う被燃焼物の移動方向（以下「移動方向Ｒａ」という）に位置する各上段空気供給口の断面が、胴部中心軸線の水平方向に対して、順次下方の傾斜角度を小さく、かつ回転に伴う移動をした前記被燃焼物に近くなるにつれて、順次水平方向の傾斜角度を小さくし、
   方向Ｒａに位置する各下段空気供給口の断面が、前記移動方向Ｒａに向けて、順次胴部中心軸線の水平方向の傾斜角度を小さくし、
   各燃焼用空気供給口が、前記胴部の回転に伴い、投入された被燃焼物の移動位置に対向するように設けられていることを特徴とするロータリーキルン炉。
2. 前記燃焼用空気供給口の数量が、ロータリーキルン炉の径、長さ、投入する被燃焼物の種類、性状、投入量により選択されることを特徴とする請求項１記載のロータリーキルン炉。
3. 前記下段空気供給口が前記方向Ｒａに対して傾斜配列された場合、その傾斜角度が、ロータリーキルン炉の径、被燃焼物の種類、性状、投入量により選択されることを特徴とする請求項１または２記載のロータリーキルン炉。
4. 下流側に二次燃焼炉を接続する請求項１〜３のいずれか１記載のロータリーキルン炉。

Images