JP4138008B2 - ディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量の削減法及び前記方法の実施のための装置 - Google Patents

ディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量の削減法及び前記方法の実施のための装置 Download PDF

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Description

本発明は、ディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量を削減させるための方法並びに前記方法の実施のための装置に関するものである。
カーボン及びNOxの放出は、従来と同様にディーゼルエンジンの最大の問題点の1つである。有害物質削減のためのこれまでの全ての計画は、カーボンとNOxの排ガス濃度の差を示している。より遅い噴射の方向での噴射開始の時間的な遅れによって、確かにカーボン形成を減少させることはできるが、しかしこれは、より高いNOx放出につながることになる。これとは異なり、排ガス返送の方法は、エンジン中でのより低い温度によって、NOx生成の減少を可能にするが、しかし、著しく高いカーボン放出を伴うものである。
燃焼室への水の付加的な噴射によって、燃焼温度の低下によってNOx形成を減少させることが可能であるが、これについては、Amin Velji他、MTZ Motorentechnische Zeitschrift 57(1996)7/8、400〜407を見よ。カーボン放出を同時に削減することは、水をディーゼル−水放出の形で燃焼室中に導入する場合によってのみ達成されるが、しかし、水が燃焼空気と一緒にか又は直接、層状にされた噴射によって燃焼室中に導入される場合には達成されない。
欧州特許第0333704号明細書の記載から、炭化水素化合物の場合に関与する、燃焼過程の排ガス中の有害物質、即ち、CO、HC及びNOxの含量を、過酸化物、例えば過酸化水素又は別の過酸化化合物及び水を含有する液状組成物の供給によって、詳細には、燃焼空気及び/又は燃料−空気混合物を用いて削減することは公知である。燃焼過程への供給は、全ての公知の方法の場合に、既に燃焼過程の開始時又は点火段階の範囲内で行われている。排ガス中のカーボン削減は、前記文献中に記載された方法の場合には達成できない。液状組成物は、過酸化水素10〜80容量%を含有していることもあるが、これは、燃焼室中で分解してOH基になり、それ自体の側で燃焼を促進してしまう。
本発明の課題は、NOx放出に同時にはマイナスの影響を及ぼさず、かつ有利に同時に低下させることになるような、ディーゼルエンジンの燃焼の際のカーボン放出量を過酸化化合物の使用下に削減することである。
燃焼室中でディーゼル燃料を周期的に噴射させかつ燃焼させるディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量の削減の意図された目的は、本発明によれば、それぞれ、燃料の噴射及び燃焼の開始後に、過酸化水素及び他の過酸化化合物、殊に有機過酸化化合物の系列の過酸化化合物を含有する液体を燃焼室に供給することによって達成される。
過酸化水素又は過酸化化合物を、好ましくは、水を含有する液体の形、通常、溶液の形で供給する。別の過酸化化合物とは、H22以外の有機過酸化化合物、例えばペルオキソカルボン酸及びヒドロペルオキシドのことである。ペルオキソ塩は、その蒸皮のために、一般にはあまり適していない。10〜75重量%、ことに30〜50重量%の含量を有するH22水溶液は、特に有利である。
本発明は、ディーゼル燃料の燃焼の際に生じるカーボン粒子を、末端に向かって、殊に燃焼段階に引き続き、前記の時点に向けて燃焼過程に供給された過酸化水素又は別の過酸化化合物を用いて、燃焼によって少なくとも十分に除去するという考えに基づいている。
ディーゼルエンジンの燃焼過程の場合、自己発火に引き続く燃焼段階でカーボンが形成されるが、しかし、このカーボンは、大部分、前記の段階の間になお存在するOH基によって再度酸化させられている。燃焼段階は、膨張の間に温度が低下して化学的な連鎖反応が中断する場合に終了する。この場合、化学的活性基、O、H及びOHが再結合してH2O及びO2になる。OH基は、主としてカーボン酸化の原因であるので、前記の時点に、カーボン酸化も停止する。燃焼室中になお存在するカーボンを酸化できるようにするためには、本発明によれば、例えば、前記の時点に、OH基のための付加的に用意された源が有効量で存在していることが保証される。
22分子は、本発明による方法の場合、第一に、カーボンの酸化過程のために必要とされるOH基の供給源として使用される。燃焼段階に引き続き存在する1200K〜2000Kの間のガス温度の場合、極めて迅速に2個のOH基に分解する。従って、十分に良好な噴霧品と関連した適当な噴射技術による十分な供給の場合、十分なカーボン酸化を達成することができる。排ガス返送との組合せの場合、カーボン放出量並びにNOx放出量は減少させられる。
本発明による方法の1つの有利な実施態様によれば、燃焼段階に引き続き、燃焼の完結、ひいては排ガス中のカーボン粒子の削減のために、それぞれ、過酸化水素水溶液の僅少な供給量が噴射され、この場合、できるだけ十分に噴霧される。「燃焼段階に引き続く」という概念とは、燃料の実質的な部分が燃焼する時点のことである。好ましくは、過酸化化合物を含有する液体の噴射は、燃焼室中へのディーゼル燃料の噴射の開始後にクランク角5〜40°の範囲で行われる。
ディーゼル燃料噴射は、通常、ディーゼルエンジン−圧縮行程の上方の死点(OT)の前10°±5°で行われるのに対して、本発明によれば、使用するH22−又は別の過酸化化合物を含有する液体は、上方の死点の後に噴射される。有利に、前記の場合、過酸化物を含有する液体の噴霧は、上方の死点の後のクランク角5°〜30°、殊に5°〜20°の範囲内で行われる。液体噴射が行われていなければならない時間は、例えばディーゼル燃料噴射の時間の範囲内、ひいては有利に0.5〜2msの範囲内である。
ディーゼル燃料並びにH22又は別の過酸化化合物を含有する液体の噴射は、別個の噴射ノズルによって行うことができる。この場合、供給すべき過酸化化合物を含有する液体のための噴霧ノズルは、ディーゼル燃料噴霧に通常使用されている同じノズルであってもよい。また、前記の液体並びにディーゼル燃料の噴霧のために、唯一の共同の噴射ノズルを、ディーゼル燃料と、過酸化化合物を含有する液体とを交互に供給するために使用することもできる。
本発明は、図1〜4に基づき詳細に記載されている。
図1は、2種の液体を交互に噴射することができる噴射ノズルを通る横断面図である。
図2は、1穴ノズル及び2穴ノズルの使用下での噴射時点に左右されるH22噴射によるディーゼルエンジンでの%で測定したカーボン減少率のグラフ図を示している。
図3は、1穴ノズルの使用下でのH22水溶液の濃度に左右される相対的なカーボン減少率を示している。
図4は、H22水溶液(含量:60重量%)の噴射量に左右される相対的なカーボン減少率を示している。
2種の液体、有利にディーゼル燃料及びH22水溶液を交互に噴射させるための1個の共通の噴射ノズルの構造及び機能は、以下に詳細に説明されている:図1中では、噴射ノズルは、変更されたいわゆるシート穴ノズル
Figure 0004138008
の形で断面図中に記載されている。
噴射ノズルは、ケーシング1とその中の軸方向で移動するように層状をなすいわゆるバルブピンの形での閉鎖部材2とからなる。閉鎖部材2として作用するバルブピンは、閉鎖位置でスプリング3によって動かされている。閉鎖部材2の先端は、円錐形に形成されており、ケーシング1中の閉鎖位置で放射状に射出する出口開口部4を閉鎖している。
図1には、1個の出口開口部4だけが示されているが、有利にケーシングは、燃焼室中に噴射すべき液体の最適な分布を達成するために、2個以上の出口開口部を有している。
出口開口部4を通して、ケーシング1の中へ加圧下に入り込む液体5又は6を、そのうち、液体5が、第一の液体であれば、液体6が第一の液体とは異なる第二の液体であるように、交互に噴射させることができる。
原理的に、前記の装置の場合には、2種の液体を同時に噴射させることが可能である。勿論、ノズルの本発明による使用には、本質的に、1つの液体又は別の液体の交互の噴射が肝要である。
閉鎖部材2は、該閉鎖部材に接してそれぞれ待機している液体の圧力によって開放させることができる。第一の液体5の圧力が存在していないか又は僅かな場合に、閉鎖部材2が、スプリング3の力により出口開口部4を閉鎖している圧力を下回る圧力を第二の液体6が有している場合には、第一の液体5の圧力の上昇によって閉鎖部材2が出口開口部4を開放位置へ移動させることができる。このためには、閉鎖部材2の移動方向で第一の液体室7に境を接している閉鎖部材2の平面が、スプリングの力に関連した、第一の液体内の十分に高い圧力で、出口開口部4の開口位置に閉鎖部材2を移動させるように設計されている。第二の液体6の供給の際に、返送流が不可能である場合には、ノズルが第一の液体5の圧力によって開放された場合に、専ら第一の液体5が出口開口部4から出てくる。
第一の液体5の圧力が低下される場合に、第二の液体6の圧力及びスプリング3によって生じる閉鎖力に関連して、出口開口部4の閉鎖が、閉鎖部材2によって行われている限り、閉鎖部材2を、第二の液体6内の圧力上昇によって同様に開放させることができる。第一の液体5の返送流が不可能である場合には、第二の液体室8中に存在する第二の液体6自体の圧力によって閉鎖部材2が開放された場合に、専ら第二の液体6が出口開放部4から出てくる。
従って、液体5及び6の交互の加圧によって、それぞれ交互に第1及び第二の液体5、6を、1つの同じノズルから噴射させることができる。
本発明による方法の実施のための前記のノズルの使用の際には、第一の液体として、ディーゼル燃料及び第二の液体として過酸化水素を含有する液体を、それぞれ交互に噴射させることができる。
詳細は実施例から明らかであるが、図2〜4から、噴射時点(EZP)の正しい選択及び燃焼室中での水性過酸化水素の良好な分布が、カーボン削減に対する極めて大きな影響を有していることが結論される。H22濃度及び噴射量は、最低濃度及び最低噴射量を上回るが、カーボン酸化にとってはEZPほどに重要ではない。2000rpm及び全負荷での有利なEZPは、ディーゼル燃料噴射が、上方の死点の前のクランク角度約10°で開始する場合には、上方の死点の後のクランク角度5°〜30°の間である。特に有利なH22溶液は、30〜60重量%の間のH22含量を有しており;実際には、H22濃度は、多くの場合40〜50重量%である。H22溶液の最適な噴射は、全負荷の場合、噴射したディーゼル量の50%超〜100%である。
気化するH22溶液と残りのガスとの噴射後の別の改善された混合は、最適にされた孔径及び噴射角度を有する2より多い穴を有するノズル、例えば4穴ノズル又は5穴ノズルの使用によって期待することができる。噴射圧の上昇によっても、燃焼室中での良好な分布を達成することができる。ディーゼル及び過酸化水素水溶液を順次噴射する図1に記載の組み合わされた噴射ノズルの使用によって、カーボン酸化のために必要なOH基が、燃焼の完結、ひいては排ガス中のカーボン含量の減少を必要とする場所に発生させられる。従って、最大のカーボン削減のために必要とされるH22の量を更に減少させることができる。
実施例
図2〜4中に記載した試験結果を、空気冷却して直接噴射するシングルシリンダ4サイクルディーゼルエンジン中で定めた:最大出力9.9kW;最大トルク2000回転で37Nm;ピストン工程容積625cm3;ストローク110mm;内径85mm;バルブ2個;圧縮比17:1。試験のためにシリンダヘッドを、第二の噴射ノズルの収容及びノズルホルダーの固定によって改良した。第二の噴射ポンプの使用によって、H22噴射の時点及び量を、エンジンのロードポイント及びディーゼル噴射から独立して変動させることができた。ディーゼル噴射ポンプは、400バールの最大噴射圧に達したが;対称に噴射する4穴ノズルを使用した。H22溶液の噴射ポンプは、最大450バールの噴射圧に達したが;1穴及び2穴を有する噴射ノズルを使用した。
22噴射時点(EZP)を試験したが、この場合、尺度として、上方の死点(OT)の後のクランクシャフトの角度を採用し;ディーゼル燃料の噴射を、上方の死点の前に、クランクシャフト約10°で開始した。EZPは、OTの領域でOT後に66°までであった(図2を見よ)。また、H22濃度を、15重量%〜60重量%の範囲内で変動させた場合であっても(図3を見よ)、噴射1回当たりの噴射量Emは、2.6〜34mm3/噴射であった(図4を見よ)。噴射量Emは、定格回転数及び全負荷の場合にディーゼル噴射量の5〜100%に相応していた。
図2中には、2つのノズル変法についてのH22の噴射時点(EZP)の変動によるカーボン削減についての測定結果を記載した。エンジンを、2000rpm及び全負荷で駆動させた。H22濃度は60%であり、噴射量Em=34mm3/噴射;H22水溶液の量は、測定した駆動点の際の噴射したディーゼル量の約100%に相応していた。ディーゼルのEZPは、選択した回転数の場合に上方の死点(OT)の前で10°であった。
図2から、1穴ノズル並びに2穴ノズルの場合に、上方のOT以降のEZPの向上と、まず、最適値までのカーボン削減の明らかな増大とが関連していることが結論づけられる。この後、カーボン削減率の曲線は、再度緩徐に下降している。このことから、他には同じ条件で、1穴ノズルによるよりも、2穴ノズルによって本質的により多くのカーボンを酸化させることができるということが判明した。OT後の11°の噴射時点の際、2穴ノズルの場合には、カーボン減少率は、54%に達している。これとは異なり、1穴ノズルの使用によっては、約34%のカーボン減少率が達成されるにすぎない。これは、燃焼室中でのH22のより良好な分布によるものであると推測される。カーボン酸化のためには、小さな時間窓領域が存在するにすぎないので、H22と残りのガスとの最適な混合は、本質的に重要になる。多くのカーボンが酸化する有利な時間窓領域は、1穴ノズルの場合で、OT後のクランク角(KW)7°〜約30°KWの間である。2穴ノズルの場合、この範囲は、若干早い時間に移動している。更なるカーボン削減は、2個より多い穴を有するノズル、例えば4穴ノズルの使用によって期待される。
図3中には、H22濃度の変動の結果を記載した。この場合、カーボン減少の軸線は、この場合に測定された最大のカーボン減少率で規格化されている。この図面の本質的な意味は、H22の一定濃度、この場合、約45重量%から、更なる濃度の上昇によって、排ガス中のカーボン量の更なる低下をもはや達成できないということである。別の選択された噴射時点及び回転数の場合、匹敵する結果を示した。
図4は、H2260重量%の含量を有するH22溶液の噴射量の変動についての測定の結果を記載してある。この場合も、カーボン減少率は、最大値で規格化させた。噴射量についての下方の軸線上には、mm3/噴射での絶対値を記載し、上方の軸線上には、噴射したディーゼル量に対する絶対値を記載してある。カーボン削減は、噴射量による僅かな依存を示した。これは、僅かな量のH22の場合にも、カーボンの低下における明らかな効果を示しているということである。より多くの噴射量、ひいてはより長い噴射時間の場合に、燃焼室中でより良好に分散すると考えられるので、これにより、より多くの噴射量の場合のより良好なカーボン酸化を説明することもできる。
本発明による方法は、固定したディーゼルエンジン並びに固定されていないディーゼルエンジンに使用できる。

Claims (7)

  1. 燃焼室中でディーゼル燃料を周期的に噴射させ、燃焼させ、それぞれ、燃料の噴射及び燃焼の開始後に、過酸化水素系の過酸化化合物及び有機過酸化化合物を含有する水溶液を燃焼室に供給するディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量を削減させるための方法において、過酸化化合物を含有する液体の噴射のために、複数の穴を有するノズルを使用することを特徴とする、ディーゼルエンジンの排ガス中のカーボン含量の削減法。
  2. 2〜5個の穴を有するノズルを使用する、請求項1に記載の方法。
  3. 過酸化化合物を含有する液体を、ディーゼル燃料の噴射の開始後に5°〜40°の範囲内のクランク角度で燃焼室に供給する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. ディーゼル燃料噴射を、上方の死点の前に10°±5°のクランク角度で開始し、かつ過酸化化合物を含有する液体を、上方の死点の後に5°〜30°の範囲内のクランク角度で燃焼室に供給する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
  5. 過酸化化合物を含有する水溶液として、10〜75重量%のH22含量を有するH22溶液を供給する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
  6. 過酸化化合物を含有する液体を、ディーゼル燃料の量に対して、50〜100%の量で供給する、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
  7. ディーゼル燃料の噴射及び過酸化化合物を含有する液体の噴射のために、2種の液体を交互に噴射させるためのノズルを使用する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
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