JP4137555B2 - 半導体装置の作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶質半導体膜を半導体層に用いる薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:以下、TFTという)および該TFTを駆動回路や画素部においてスイッチング用の素子に用いる半導体装置(特に、液晶表示装置)に関する。特に、本発明は、結晶化を促進する作用を有する触媒元素を用いて結晶質半導体膜を形成し、その結晶質半導体膜を用いたTFT、および半導体装置に関する。
【0002】
【従来技術】
非晶質半導体膜(代表的には、アモルファスシリコン膜)を用いたTFTに代わって、電界効果移動度が高くキャリアの移動が早いため、高速動作が行える結晶質半導体膜(代表的には、結晶質シリコン膜)を用いたTFTを画素部におけるスイッチング素子とする液晶表示装置(液晶パネルともいう)、特に駆動回路および画素部が同一基板上に形成された液晶表示装置に関する研究がさかんに行われ、実際にそのような液晶表示装置が販売されるようになってきた。
【0003】
結晶質シリコン膜の作製方法としては、レーザ光を照射する方法、加熱による熱結晶化法、触媒元素を用いる方法等があげられる。
【0004】
触媒元素を用いた結晶質半導体膜をTFTの半導体層に用いる場合、半導体装置の特性を向上させるために、半導体膜の結晶化に用いられた触媒元素をTFTの素子領域(特にチャネル形成領域)からゲッタリング領域に移動させるため、ゲッタリング作用を有する元素を添加し、ゲッタリング領域を形成した後、加熱処理を行っている。
【0005】
ゲッタリング工程としては、結晶質半導体膜を形成した後、半導体層に一導電型(n型)を付与し且つゲッタリング作用を有する不純物元素をソース領域またはドレイン領域に添加して、加熱処理することにより、不純物元素の活性化と触媒元素のゲッタリングとを同一工程で行う方法や、結晶質半導体膜を形成した後、連続的に半導体膜の素子領域以外の領域にゲッタリング作用を有する不純物元素を添加したゲッタリング領域を形成して、加熱処理することにより触媒元素をゲッタリングする方法などが考えられ、用いられている。
【0006】
前者の方法の場合、これまでnチャネル型TFTおよびpチャネル型TFTのゲッタリング領域(後のソース領域またはドレイン領域となる領域)には、一様にn型不純物元素(代表的には、リン)が高濃度に添加されていた。そのため、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域は、n型からp型に反転させるためにn型不純物元素の2〜3倍の濃度のp型不純物元素を添加しなければならず、不純物添加のための工程が長時間化し、スループットに問題があった。さらに、アクセプターとなるイオンを過剰に添加することは、製造コストの面や、半導体膜の結晶性が破壊されてしまい再結晶化しにくくなり抵抗が上がってしまいオン電流が低下するという問題も引き起こしている。
【0007】
そこで、本発明者らは、pチャネル型TFTにおけるゲッタリング領域となるソース領域またはドレイン領域に過剰な不純物元素を添加しなくても十分に触媒元素をゲッタリングする方法を探すため、以下の表1に示すようないくつかの試料について、ゲッタリング効率の評価を行った。図2〜5において、エッチピットを観察した様子を示している。なお、図2〜5は、図上部から、チャネル形成領域のサイズが、5、10、15、20、30、50μmとなっており、どのチャネル形成領域のサイズまで、ゲッタリングが十分に行えるかという評価も行っている。
【0008】
【表1】
【0009】
本発明者らは、ゲッタリングのための加熱処理の後に、ゲッタリング効率を確認するため、NiSixを選択的に除去して、除去した後に発生する孔の数でゲッタリングの効率を評価している。この孔のことをエッチピットと称しており、また、チャネル形成領域にエッチピットが観察されない場合には、チャネル形成領域に残留していた触媒元素をゲッタリング領域に移動することができたという評価をしている。
【0010】
触媒元素(Ni)は、チャネル形成領域からゲッタリング領域に移動する過程で、Siと結合してNiSix化すると考えられているためである。まずはじめに、NiSixは、酸化シリコン膜をフッ化水素アンモニウム(NH4HF2)を7.13%とフッ化アンモニウム(NH4F)を15.4%含む混合溶液(ステラケミファ社製、商品名LAL500)にて除去する。次にし、のフッ酸濃度0.5%、過酸化水素濃度0.5%を含む水溶液(以下、FPM液という)を液温15〜30℃に保ち、30〜60分間、本実施例では40分間試料基板を浸しておくことによりNiSixを選択的に除去することができ、NiSixが除去された後が孔となる。NiSixが除去された後の孔は、試料を光学顕微鏡の透過モードで黒点として観察することができる。なお、本明細書において、この黒点をエッチピットと称している。
【0011】
エッチピットは、エッチングの処理時間や処理薬液によってシリコン膜の基板側に形成された下地絶縁膜(酸化シリコン膜)まで除去されてしまい、もとのNiSixの大きさよりも若干大きくなってしまうが、析出したNiSixを除去しているため概略NiSixの大きさと考えられている。
【0012】
ここで本発明者らは、ゲッタリング効率が十分高いと判断された(チャネル形成領域のサイズが15μmでもエッチピットがみられない)試料A、B、Dにおいて、エッチング後の状態に大きな差があることに着目した。試料Bには大きな穴状になったエッチピットが確認できるのに対して、試料Aと試料Dではエッチピットが確認できない。なお、試料Dで点状に見られるのは不純物元素を添加した際に、シリコン膜表面にできたキズと思われる。本発明者らは、試料A、試料DではNiSixの偏析が起こりにくい、言い換えるとNiが単体でシリコンの格子間に存在(固溶)しているのではないかと推測した。また、試料Dに関しては、高濃度にp型不純物元素が添加され強いp型の導電型が付与されたことにより、ボロン(B)とニッケル(Ni)とが容易に結合する状態となり、NiSixが生成しにくくなったのではないか、さらに、ゲッタリング領域にリン(P)およびアルゴン(Ar)が存在すると、NiSixが偏析し易くなってしまうと考えた。
【0013】
これまで、触媒元素を用いて作製された結晶質半導体膜を用いたTFTには、オフ電流が突発的に上昇してしまうという問題があった。本発明者らは、触媒元素を用いて作製された結晶質半導体膜には、NiSixが半導体層の欠陥に偏析してしまい、特に、チャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との接合部とにNiSixが偏析してしまい、これが原因でオフ電流値が突発的に上昇してしまうのではないかと考えている。
【0014】
そこで、本発明者らは、nチャネル型TFTのゲッタリング領域にはPのみを添加し、pチャネル型TFTのゲッタリング領域にはBおよびArを添加してゲッタリングすれば、NiSixの偏析を抑えながら、触媒元素(ニッケル)をシリコンの格子中に単独で存在(固溶)した状態で、触媒元素(Ni)を素子に用いられる領域からゲッタリングすることができるのではないかと考えた。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
半導体膜の素子となる領域全域において、NiSixの析出を抑えて触媒元素のゲッタリングを行うことにより良質な結晶質半導体層を形成し、このような結晶質半導体層を用いてTFTを作製することで、特性のよいTFTを実現することを課題とする。
【0016】
さらに、このTFTを用いて作製された回路を含む特性のよい半導体装置を実現することを課題とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、後にnチャネル型TFTとなる領域の半導体層のゲッタリング領域(リン(P)が添加される領域)には、アルゴン(Ar)等の希ガス元素を添加せず、ゲッタリング作用を有するn型不純物元素、代表的にはリン(P)のみを添加し、pチャネル型TFTとなる領域のゲッタリング領域(ボロン(B)が添加される領域)には、ゲッタリング作用を有するp型不純物元素、代表的にはボロン(B)に加えて、ゲッタリング効果を高める作用を有するアルゴン(Ar)等希ガス元素を添加してゲッタリングを行うことにより、NiSixを偏析させないように、ニッケル(Ni)が、単体でシリコンの格子中に存在する(固溶した)状態になるように触媒元素(ニッケル)のゲッタリングを行っており、半導体層のソース領域またはドレイン領域において、特に、チャネル形成領域とソース領域またはドレイン領域との接合部にNiSixの偏析が少なくなるように触媒元素のゲッタリングを行って形成された半導体装置である。前記nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域における前記n型不純物元素の濃度は、5×1019〜5×1021/cm3である。また、前記pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域における前記p型不純物元素の濃度は、1×1019〜5×1021/cm3である。さらには、前記pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域における前記希ガス元素の濃度は、1×1019〜1×1022/cm3である。
【0018】
本発明により、TFTの導電性に応じてゲッタリング領域に添加する不純物元素を変えることにより、半導体層(チャネル形成領域)からゲッタリング領域へ十分に触媒元素を移動させることができ、TFTの特性に悪影響を及ぼすと考えられるNiSixの偏析を抑えられ、スループットを向上させることができ、さらに信頼性が向上した半導体装置を実現することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1を用いて説明する。基板上に下地絶縁膜を形成し、該下地絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成する。基板は、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスあるいは石英などを用いることができる。基板10の表面には、下地絶縁膜11として無機絶縁膜を10〜200nmの厚さで形成する。下地絶縁膜の例としては、プラズマCVD法で作製される酸化窒化シリコン膜を用いればよい。本実施形態では、SiH4、NH3、N2Oから形成される酸化窒化シリコン膜11aを50nmの膜厚で、SiH4、N2Oから形成される酸化窒化シリコン膜11bを10nmの膜厚で積層したものを下地絶縁膜11として用いる。なお、下地絶縁膜11は、ガラス基板中に含まれるアルカリ金属が半導体層中に拡散しないように形成するものであるため、石英を用いる場合にはこの工程を省略することもできる。続いて、下地絶縁膜11上に非晶質半導体膜12を形成する。代表的には、シリコンやシリコンゲルマニウムを用いればよく、本実施形態では、プラズマCVD法、減圧CVD法もしくはスパッタ法を用いて、10〜100nmの膜厚で形成する。良質な結晶質半導体膜を得るために、非晶質シリコン膜12に含まれる酸素、窒素、炭素などの不純物元素濃度をできるだけ低減しておく必要がある。このため、高純度の材料ガスを用いたり、超高真空対応のCVD装置を用いることが望ましい。また、下地絶縁膜11から非晶質シリコン膜12を大気解放せずに連続的に成膜することで不純物元素濃度を低減することもできる。
【0020】
続いて、非晶質シリコン膜102表面に結晶化を促進する作用を有する金属元素(以下、触媒元素という)を添加する。触媒元素の例としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pa)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)などがあり、これらから選ばれた一種または複数種を用いることができる。代表的には、ニッケル(Ni)を用いる。重量換算で1〜10ppmのニッケルを含む酢酸ニッケル塩溶液をスピナーで塗布(スピンコート法)して触媒元素含有層13を形成する。この他にも、プラズマ処理による添加や、蒸着法やスパッタ法により触媒元素含有層を形成してもよい。なお、スピンコート法でニッケルを塗布する場合、シリコン膜等半導体膜の表面は、疎水性であるため、ニッケル含有溶液との馴染みを良好にするために、非晶質シリコン膜の表面にオゾン含有水溶液を塗布して極薄い酸化膜を形成して、その酸化膜をフッ酸と過酸化水素水の混合液でエッチングして清浄な表面を形成し、再度オゾン含有水溶液で処理して極薄い酸化膜を形成する。このようにして、均一に酢酸ニッケル塩溶液を塗布することができる。
【0021】
次いで、500℃で1時間の加熱処理を行い、非晶質シリコン膜が含有する水素を放出させる。そして、580℃で4時間の加熱処理を行って結晶質半導体膜(結晶質シリコン膜)14を形成する。
【0022】
このあと、結晶質シリコン膜14にレーザ光を照射して結晶粒内に残る欠陥を補修して結晶性を高める工程を行ってもよい。なお、レーザ光には、波長400nm以下のエキシマレーザやYAGレーザの第2高調波、第3高調波の光を用いる。いずれにしても、繰り返し周波数10〜1000Hz程度のパルスレーザ光を用い、当該レーザ光を光学系にて100〜400mJ/cm2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって結晶質半導体膜に対してレーザ光照射を行えばよい。
【0023】
以上の工程により得られる結晶質シリコン膜14中には、高濃度の触媒元素が残留している。シリコン膜中に残留した触媒元素は、不規則に偏析することも確認されており、特に結晶粒界にこの偏析がみられる。このため、触媒元素がシリコン膜中に残留したままTFT素子を形成すると、この偏析が微弱な電流の逃げ道(リークパス)となり、オフ電流(TFTがオフ状態にある時の電流)の突発的な増加の原因となり、特性のバラツキが問題になる。そこで、結晶質シリコン膜、特にTFTのチャネル形成領域となる領域の触媒元素濃度を低減させる必要がある。
【0024】
そこで、触媒元素を移動する領域(以下、ゲッタリング領域という)を形成する。結晶質シリコン膜14上に酸化シリコン膜からなるマスク15を形成する。マスク15には、第1のゲッタリング領域を形成するための開口部16が形成されており、開口部16から露出した結晶質シリコン膜に不純物元素を添加して、第1のゲッタリング領域17を形成する。なお、第1のゲッタリング領域17は、n型を付与する不純物元素(代表的には、リン)が添加されている。
【0025】
第1のゲッタリング領域17には、イオンドープ法により水素で希釈されたフォスフィン(PH3)を用いて、リン(P)が添加される。添加されたリン(P)の濃度は、5×1019〜5×1021/cm3好ましくは、5×1019〜1×1021/cm3である。
【0026】
次いで、第2のゲッタリング領域を形成するために、酸化シリコン膜からなるマスク18を形成する。マスク18には、第2のゲッタリング領域を形成するための開口部19が形成されており、開口部19から露出した結晶質シリコン膜に不純物元素を添加して第2のゲッタリング領域20を形成する。なお、第2のゲッタリング領域20には、p型を付与する不純物元素(代表的にボロン)および希ガス元素(代表的にはアルゴン)が添加されている。
【0027】
なお、希ガス元素としては、アルゴンの他にヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)から選ばれた一種または複数種を用いることができる。
【0028】
第2のゲッタリング領域20は、イオンドープ法により水素または希ガスで希釈されたジボラン(B2H6)を用いて、ボロン(B)が添加される。また、イオンドープ法により、アルゴン(Ar)が添加される。添加されたボロン(B)の濃度は1×1019〜5×1021/cm3、好ましくは1×1019〜5×1020/cm3、アルゴン(Ar)の濃度は1×1019〜1×1022/cm3である。
【0029】
次いで、ゲッタリングのための加熱処理を行う。加熱処理は、炉を用いた加熱方法やごく短時間で加熱処理を行うRTA(Rapid Thermal Anneal)法等いずれかの方法を用いて、450〜800℃で1分〜24時間行えばよい。本実施形態では、610℃に加熱した気体を5分間、処理基板に噴射することにより加熱処理を行い、チャネル形成領域の触媒元素をゲッタリング領域に移動させている。なお、ゲッタリング工程の後は、エッチングによりゲッタリング領域を除去してもよい。また、ゲッタリング領域17とゲッタリング領域20とでは、添加される不純物元素が付与する導電性が異なっており、添加される濃度も高いため、後にゲッタリング領域をTFTのソース領域またはドレイン領域として用いることができる。なお、ゲッタリングのための加熱処理後は、ゲッタリング領域に触媒元素が移動するため、触媒元素の濃度は、チャネル形成領域より、ゲッタリング領域として用いたソース領域またはドレイン領域の方が高くなっていると考えられる。
【0030】
触媒元素を用いて得られた結晶質半導体膜は、棒状または針状の結晶が集合しており、得られた結晶質半導体膜を巨視的にみればある特定の方向性をもって成長している良好な結晶質半導体膜である。
【0031】
また、このような良好な結晶性を有する半導体膜に残留する触媒元素の濃度を十分に低減することにより、この半導体膜を用いて作製された半導体装置の特性を向上させることができる。
【0032】
【実施例】
(実施例1)
本発明の一実施例を、以下に図6〜9を用いて説明する。ここでは、同一基板上に画素部と、画素部の周辺に設ける駆動回路のTFT(nチャネル型TFT及びpチャネル型TFT)を同時に作製する方法について詳細に説明する。
【0033】
図6(A)において、基板100はアルミノホウケイ酸ガラスを用いる。この基板100上に下地絶縁膜101を形成する。本実施例では、SiH4、NH3及びN2Oを反応ガスとして成膜される第1酸化窒化シリコン膜101aを50nm、SiH4及びN2Oを反応ガスとして成膜される第2酸化窒化シリコン膜101bを100nmの厚さに積層形成する。
【0034】
半導体層103〜106(本実施例では、便宜上、第1の半導体層103、第2の半導体層104、第3の半導体層105および第4の半導体層106とする)は結晶構造を有する半導体膜102から形成する。下地絶縁膜101上に非晶質半導体膜を形成した後、触媒元素(本実施例では、Ni)を用いて610℃に加熱した不活性気体(ここでは窒素ガス)を処理基板に5分間吹き付けることにより加熱処理を行い、結晶質半導体膜を得る。
【0035】
加熱処理の後、さらに結晶性を高めるために、レーザ光を照射してもよい。レーザ光には波長400nm以下のエキシマレーザ光やYAGレーザの第2高調波または第3高調波の光を用いればよい。いずれにしても、繰り返し周波数10〜1000Hz程度のパルスレーザ光を用い、当該レーザ光を光学系にて100〜400mJ/cm2に集光し、90〜95%のオーバーラップ率をもって結晶質半導体膜に対してレーザ光照射を行えばよい。
【0036】
結晶化後、TFTのしきい値電圧を制御するために、アクセプタ型の不純物としてボロンをイオンドープ法により半導体膜に添加する。添加する濃度は実施者は適宣決定すれば良い。なお、非晶質半導体膜の状態でボロンを添加してもよい。
【0037】
こうして形成された多結晶シリコン膜をエッチング処理により分割して、半導体層103〜106を形成する。その上に、ゲート絶縁膜107として、SiH4、N2Oを用いプラズマCVD法により作製される酸化窒化シリコン膜を110nmの厚さに形成する(図6(B))。
【0038】
さらに、ゲート絶縁膜107上に第1の導電膜108として窒化タンタル膜をスパッタ法で30nmの厚さに形成し、さらに第2の導電膜109としてタングステンを300nmの厚さに形成する(図6(C))。
【0039】
次に、図7(A)に示すように光感光性のレジスト材料を用い、マスク110〜113を形成する。そして、第1の導電膜108及び第2の導電膜109に対する第1のエッチング処理を行う。エッチングにはICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いる。エッチング用ガスに限定はないがW膜や窒化タンタル膜のエッチングにはCF4とCl2とO2とを用いる。それぞれのガス流量を25:25:10とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してエッチングを行う。この場合、基板側(試料ステージ)にも150WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。この第1のエッチング条件により主にW膜を所定の形状にエッチングする。
【0040】
この後、エッチング用ガスをCF4とCl2に変更し、それぞれのガス流量比を30:30とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成して約30秒程度のエッチングを行う。基板側(試料ステージ)にも20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、実質的に負の自己バイアス電圧を印加する。CF4とCl2との混合ガスは窒化タンタル膜とW膜とを同程度の速度でエッチングする。こうして、端部にテーパーを有する第1の電極114a〜117aおよび第2の電極114b〜117bからなる第1の形状のゲート電極114〜117を形成する。テーパーは45〜75°で形成する。尚、第2の絶縁膜上に残渣を残すことなくエッチングするためには10〜20%程度の割合でエッチング時間を増加させると良い。なお、ゲート絶縁膜107の第1の形状のゲート電極114〜117で覆われない領域表面は20〜50nm程度エッチングされ薄くなった領域が形成される。
【0041】
次に、マスク111110〜114113を除去せずに図7(B)に示すように第2のエッチング処理を行う。エッチング用ガスにCF4とCl2とO2とを用い、それぞれのガス流量比を20:20:20とし、1Paの圧力でコイル型の電極に500WのRF(13.56MHz)電力を投入してプラズマを生成してエッチングを行う。基板側(試料ステージ)には20WのRF(13.56MHz)電力を投入し、第1のエッチング処理に比べ低い自己バイアス電圧を印加する。このエッチング条件により第2の導電膜として用いたW膜をエッチングする。こうして第3の電極118a〜121aと第4の電極118b〜121bからなる第2の形状のゲート電極118〜121を形成する。ゲート絶縁膜107の第2の形状のゲート電極118〜121で覆われない領域表面は20〜50nm程度エッチングされ薄くなる。なお、本明細書では、第3の電極、第4の電極を便宜上電極(A)、電極(B)とも称することとする。
【0042】
続いてn型を付与する不純物元素(n型不純物元素)を半導体層に添加する第2のドーピング処理を行う。第1のドーピング処理は、質量分離をしないでイオンを注入するイオンドープ法により行う。ドーピングは第1第2形状の電極118〜121をマスクとして用い、水素希釈のフォスフィン(PH3)ガスを用い、半導体膜103〜106に第1の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域122〜125を形成する。このドーピングにより形成する第1の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域のリン濃度は1×1016〜1×1017/cm3となるようにする。
【0043】
その後、第2の半導体層104、第4の半導体層106の全体を覆う第1のマスク126、128と第3の半導体層105の一部および第3の半導体層105上の第2の形状のゲート電極120を覆う第2のマスク127を形成し、第2のドーピング処理を行う。第2のドーピング処理では、第3の電極(電極(A))118aを通して第1の半導体層103に第2の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域129を形成する。このドーピングにより形成する第2の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域のリン濃度は1×1017〜1×1019/cm3となるようにする。
【0044】
続いて、マスク126〜128をそのままに第3のドーピング処理を行う。第1の半導体層103、第3の半導体層105にゲート絶縁膜107を通してn型不純物元素を添加を行い、第3の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域131、132を形成する。このドーピングにより形成する第3の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域のリン濃度は5×1019〜5×1021/cm3となるようにする。
【0045】
なお、本実施例では、以上のように複数回にわけて不純物元素を添加しているが、ゲート絶縁膜およびゲート電極を形成する第3の電極の膜厚を制御したり、ドーピングの際の加速電圧を調整したりすることにより、1回のドーピング工程で、第2の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域および第3の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域を形成することもできる。
【0046】
次いで、図8(A)で示すように第1の半導体層103および第3の半導体層105を覆うマスク133、134を形成し第4のドーピング処理を行う。ドーピングは水素希釈のジボラン(B2H6)ガスまたは希ガスで希釈したジボランガスを用い、第2の半導体層104に第1の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域136及び第2の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域135を形成する。また、画素部において保持容量を形成する第4の半導体層106には、第1の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域138及び第2の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域137が形成される。第1の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域136、138は電極(A)119a、121aと重なる領域に形成されるものであり、1×1018〜1×1020/cm3の濃度範囲でボロンが添加され、第2の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域135、137には、1×1019〜5×1021/cm3、好ましくは1×1019〜5×1020/cm3の濃度範囲でボロンが添加されるようにする。
【0047】
なお、本実施例では、高濃度(5×1019〜5×1021/cm3)のn型不純物元素(リン)の添加の後にp型不純物元素(ボロン)の添加を行っているが、先にnチャネル型TFTとなる領域をマスクで覆い、p型不純物元素の添加(本実施例における第4のドーピング工程)を行った後、高濃度n型不純物元素の添加(本実施例における第2のドーピング工程および第3のドーピング工程)をおこなってもよい。
【0048】
次いで、マスク133、134をそのままにして、希ガス元素(本実施例ではAr)を添加する。希ガス元素が添加された領域の半導体層の結晶構造が破壊されて非晶質化する。なお、希ガス元素は、シリコンとは結合せずに存在する。このように結晶構造を破壊することにより触媒元素がチャネル形成領域からゲッタリング領域に移動しやすい状態になる。
【0049】
以上までの工程でそれぞれの半導体膜にリン又はボロンおよびアルゴンが添加された領域が形成される。第2の形状のゲート電極118〜120はゲート電極となる。また、第2の形状の電極121は画素部において保持容量を形成する一方の容量電極となる。
【0050】
次いで、図8(B)に示すように、それぞれの半導体膜に添加された不純物元素を活性化処理するために、加熱した不活性気体中において加熱処理する。本実施例では、610℃に加熱された窒素ガス中において、5分間の加熱処理を行った。なお、この加熱処理と同一工程で、半導体膜の結晶化工程で用いた触媒元素をTFTのチャネル形成領域からゲッタリング領域(ここでは、高濃度にリンが添加されたnチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域と、高濃度のボロンおよびアルゴンが添加されたpチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域)に移動させる工程も行う。
【0051】
nチャネル型TFTのゲッタリング領域に添加されたゲッタリング作用を有する元素は、リン(P)のみであり、NiSixが偏析しにくいため、十分にゲッタリングを行うことができる。また、pチャネル型TFTのゲッタリング領域に添加されたゲッタリング作用を有する元素は、ボロン(B)とアルゴン(Ar)であって、アルゴン(Ar)がボロン(B)のゲッタリング効率を補っているため、やはり十分にゲッタリングを行うことができる。したがって、上記のような加熱処理により、触媒元素がゲッタリング領域に移動し、チャネル形成領域に残留する触媒元素(Ni)の濃度を1×1017/cm3以下、好ましくは1×1016/cm3以下にまで低減することができる。なお、pチャネル型TFTのゲッタリング領域には、n型不純物元素が1×1016〜1×1017/cm3の濃度で添加されているが、この濃度では、ゲッタリング作用を有さないため、n型不純物元素がpチャネル型TFTのゲッタリング領域において悪影響を及ぼすことはない。
【0052】
その後、図8(B)に示すように、プラズマCVD法で窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜から成る第1の層間絶縁膜139を50nmの厚さに形成し、クリーンオーブンを用いて410℃の加熱処理を行い、窒化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜から放出される水素で半導体層の水素化を行う。
【0053】
次いで、第1の層間絶縁膜139上に第2の層間絶縁膜140をアクリルで形成する。そしてコンタクトホールを形成する。このエッチング処理においては外部入力端子部の第1の層間絶縁膜及び第2の層間絶縁膜も除去する。そして、チタン膜とアルミニウム膜を積層して形成される配線142〜149を形成する。
【0054】
以上のようにして、同一基板上にnチャネル型TFT201、pチャネル型TFT202を有する駆動回路205と、画素TFT203と保持容量204を有する画素部206を形成することができる。保持容量204は半導体106、ゲート絶縁膜107、容量配線121で形成されている。
【0055】
駆動回路205のnチャネル型TFT201はチャネル形成領域150、ゲート電極を形成する電極(A)118aと重なる第2の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域129(Lov領域)と、ソース領域またはドレイン領域として機能する第3の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域131を有している。Lov領域のチャネル長方向の長さは0.5〜2.5μm、好ましくは1.5μmで形成する。このようなLov領域の構成は、主にホットキャリア効果によるTFTの劣化を防ぐことを目的としている。これらnチャネル型TFT及びpチャネル型TFTによりシフトレジスタ回路、バッファ回路、レベルシフタ回路、ラッチ回路などを形成することができる。特に、駆動電圧が高いバッファ回路には、ホットキャリア効果による劣化を防ぐ目的から、nチャネル型TFT201の構造が適している。
【0056】
駆動回路205のpチャネル型TFT202にはチャネル形成領域151、ゲート電極を形成する電極(A)119aの外側に第2の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域135(ソース領域またはドレイン領域として機能する領域)と、電極(A)119aと重なる第1の濃度のp型不純物元素を含むp型不純物領域136を有している。
【0057】
画素部206のTFT(画素TFT)203にはチャネル形成領域152、の外側に形成される第1の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域124と、ソース領域またはドレイン領域として機能する第3の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域132を有している。また、保持容量204の一方の電極として機能する半導体層106にはp型不純物領域137、138が形成されている。
【0058】
以上のように、本発明は駆動回路部と画素部というように動作条件の異なる回路に対応して適宣配置を決めることができる。
【0059】
図9はアクティブマトリクス基板の回路構成の一例を示す回路ブロックである。TFTを組み込まれて形成される画素部601、データ信号線駆動回路602、走査信号線駆動回路606、607が形成されている。
【0060】
データ信号線駆動回路602は、シフトレジスタ603、ラッチ604、605、その他バッファ回路などから構成される。シフトレジスタ603にはクロック信号、スタート信号が入力し、ラッチにはデジタルデータ信号やラッチ信号が入力する。また、走査信号線駆動回路606もシフトレジスタ、バッファ回路などから構成されている。画素部601の画素数は任意なものとするが、XGAならば1024×768個の画素が設けられる。
【0061】
このようなアクティブマトリクス基板を用いて、アクティブマトリクス駆動をする表示装置を形成することができる。本実施例では画素電極を光反射性の材料で形成したため、液晶表示装置に適用すれば反射型の表示装置を形成することができる。このような基板から液晶表示装置や有機発光素子で画素部を形成する発光装置を形成することができる。こうして反射型の表示装置に対応したアクティブマトリクス基板を作製することができる。
【0062】
(実施例2)
本実施例では、半導体装置の作製方法の他の実施例について図10を用いて説明する。なお、実施例1と図7(A)に示した第1のエッチング工程までは同一工程である。図7(A)に示した第1のエッチング工程まで済んだ素子が形成途中の基板の様子を図10(A)に示している。
【0063】
図10(A)において、基板100、下地絶縁膜101(酸化窒化シリコン膜からなる下地絶縁膜101a、窒化酸化シリコン膜からなる下地絶縁膜101b)、第1乃至4の半導体層103〜106、ゲート絶縁膜107、第1の形状のゲート電極114〜117である。
【0064】
ここで、第1のドーピング工程を行う。第1乃至4の半導体層103〜106にn型不純物元素を添加して、n型不純物元素を1×1015〜1×1017/cm3の低濃度に含む第1の濃度のn型不純物元素を含むn型不純物領域301〜304を形成する。
【0065】
次いで、第2のエッチング工程を行う。第1の形状のゲート電極114〜117(第1の電極114a〜117aおよび第2の電極114b〜117bからなる)をエッチングして、第2の形状のゲート電極305〜308(電極(A)305a〜308aおよび電極(B)305b〜308bからなる)を形成する。
【0066】
ここまでの工程が終了した後は、実施例1の図7(C)で示した第2のドーピング工程から同様に作製工程を進め、図8(C)に示したようなアクティブマトリクス基板を作製することができる。
【0067】
(実施例3)
本実施例では、ボトムゲート型TFTの作製工程に本発明を適応することも可能である。図16、17を用いてボトムゲート型TFTの作製工程について説明する。
【0068】
基板50上に、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の絶縁膜を形成し(図示せず)、ゲート電極を形成するために導電膜を形成し、所望の形状にパターニングしてゲート電極51を得る。導電膜には、Ta、Ti、W、Mo、CrまたはAlから選ばれた元素またはいずれかの元素を主成分とする導電膜を用いればよい。
【0069】
次いで、ゲート絶縁膜52を形成する。ゲート絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜の単層、もしくはいずれかの膜の積層構造にしてもよい。
【0070】
次いで、非晶質半導体膜としてアモルファスシリコン膜53を熱CVD法、プラズマCVD法、減圧CVD法、蒸着法またはスパッタリング法により10〜1150nm厚に形成する。なお、ゲート絶縁膜52とアモルファスシリコン膜53とは、同じ成膜法で形成することが可能であるため、両者を連続形成してもよい。連続形成することで、一旦大気に曝すことがなくなり、表面の汚染を防ぐことができ、作製するTFTの特性バラツキやしきい値電圧の変動を低減することができる。
【0071】
次いで、アモルファスシリコン膜53に結晶化を助長する触媒元素を塗布して、触媒元素含有層54を形成する。この後、加熱処理を行い、結晶性シリコン膜を形成する。
【0072】
結晶化工程が終わったら、後の不純物添加工程において結晶性シリコン膜(チャネル形成領域)を保護する絶縁膜55を100〜400nm厚で形成する。
【0073】
次いで、レジストからなるマスクを用いて、後のnチャネル型TFTの活性層となる結晶性シリコン膜にn型を付与する不純物元素を5×1019〜5×1021/cm3好ましくは、1×1020〜1×1021/cm3の濃度で、後のpチャネル型TFTの活性層となる結晶性シリコン膜にp型不純物元素を1×1019〜5×1021/cm3、好ましくは1×1020〜5×1021/cm3の濃度で、希ガス元素を1×1019〜1×1022/cm3の濃度で添加して、ソース領域、ドレイン領域、LDD領域を形成する。
【0074】
次いで、結晶性シリコン膜に添加された不純物元素を活性化する工程を行う。活性化と同時に、結晶化工程でシリコン膜に塗布した触媒元素の捕獲(ゲッタリング)も行う。この加熱処理により、高濃度にn型不純物元素が添加された領域、高濃度にp型不純物元素および希ガス元素が添加された領域をゲッタリング領域として、触媒元素がゲッタリング領域に移動する。
【0075】
次いで、結晶性シリコン膜上の絶縁膜を除去し、結晶性シリコン膜を所望の形状にパターニングした後、層間絶縁膜56を形成する。層間絶縁膜は、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜等の絶縁膜から500〜1500nm厚で形成する。
【0076】
その後、それぞれのTFTのソース領域またはドレイン領域に達するコンタクトホールを形成して、各TFTを電気的に接続するための配線57を形成する。
【0077】
以上のように本発明は、いずれの形状のTFTにも適応して用いることができる。
【0078】
(実施例4)
本実施例では、実施例1〜3を用いて作製したアクティブマトリクス基板から、アクティブマトリクス型液晶表示装置を作製する工程を説明する。
【0079】
まず、実施例1に従い、図8(C)の状態のアクティブマトリクス基板を作製した後、図15に示すようにアクティブマトリクス基板上に配向膜180を形成してラビング処理を行う。
【0080】
次いで、対向基板181を用意し、対向基板181上に着色層182、183、平坦化膜184を形成する。赤色着色層182と青色着色層183とを一部重ねることにより、遮光膜として機能させている。なお、図15では図示しないが、赤色着色層と緑色着色層とを重ねて遮光膜として機能させている領域もある。
【0081】
次いで、対向電極185を画素部に形成した後、全面に配向膜186を形成してラビング処理を行う。
【0082】
そして、画素部と駆動回路とが形成されたアクティブマトリクス基板と着色層と対向電極とが形成された対向基板とをシール材187で貼り合わせる。シール材187には、フィラーが混入されていて、このフィラーと柱状スペーサとによって均一な間隔をもって2枚の基板を貼り合わせることができる。その後、貼り合わせた基板間に液晶材料188を注入して、封止材(図示せず)によって完全に封止する。液晶材料188には、公知の液晶材料を用いればよい。このようにして図15に示すアクティブマトリクス型液晶表示装置が完成する。
【0083】
(実施例5)
本発明を用いてゲッタリングを行った試料に関して、シート抵抗を測定した結果を図11に示す。
【0084】
シート抵抗のアルゴンの添加濃度依存性を比較するために、n型不純物元素(リン)の濃度を一定にして、アルゴンの添加濃度を変化させた試料1〜4、p型不純物元素(ボロン)の濃度を一定にして、アルゴンの添加濃度を変化させた試料5〜7に関して測定した。測定した試料の詳細な不純物濃度は、表2に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
なお、図11には表2に示した試料1〜7をそれぞれ加熱処理温度が570℃、610℃、650℃、690℃のいずれかで5分間の加熱処理を行った後、シート抵抗値を測定した結果を示している。
【0087】
リン(P)が添加された試料1〜4に関して、本発明のアルゴン(Ar)を添加しない試料1が最も低いシート抵抗を得ることができた。
【0088】
また、ボロン(B)が添加された試料5〜8に関して、ボロン(B)とアルゴン(Ar)とを添加してもそれほどシート抵抗が上昇してしまうということはない。
【0089】
従って、本発明を適応することにより、触媒元素で良好な結晶性を有する半導体膜を形成することができ、さらに、半導体層中にNiSixを生成させることなく触媒元素を十分にゲッタリングすることができ、ゲッタリング領域となるソース領域またはドレイン領域に添加された不純物元素によるシート抵抗値の悪化もない、良好な半導体装置を実現することができる。
【0090】
(実施例6)
本発明を実施して形成されたCMOS回路や画素部はアクティブマトリクス型液晶ディスプレイ(液晶表示装置)に用いることができる。即ち、それら液晶表示装置を表示部に組み込んだ電気器具全てに本発明を実施できる。
【0091】
その様な電気器具としては、ビデオカメラ、デジタルカメラ、プロジェクター(リア型またはフロント型)、ヘッドマウントディスプレイ(ゴーグル型ディスプレイ)、パーソナルコンピュータ、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話または電子書籍等)などが挙げられる。それらの一例を図12、図13及び図14に示す。
【0092】
図12(A)はパーソナルコンピュータであり、本体2001、画像入力部2002、表示部2003、キーボード2004等を含む。
【0093】
図12(B)はビデオカメラであり、本体2101、表示部2102、音声入力部2103、操作スイッチ2104、バッテリー2105、受像部2106等を含む。
【0094】
図12(C)はモバイルコンピュータ(モービルコンピュータ)であり、本体2201、カメラ部2202、受像部2203、操作スイッチ2204、表示部2205等を含む。
【0095】
図12(D)はゴーグル型ディスプレイであり、本体2301、表示部2302、アーム部2303等を含む。
【0096】
図12(E)はプログラムを記録した記録媒体(以下、記録媒体と呼ぶ)を用いるプレーヤーであり、本体2401、表示部2402、スピーカ部2403、記録媒体2404、操作スイッチ2405等を含む。なお、このプレーヤーは記録媒体としてDVD(Digtial Versatile Disc)、CD等を用い、音楽鑑賞や映画鑑賞やゲームやインターネットを行うことができる。
【0097】
図12(F)はデジタルカメラであり、本体2501、表示部2502、接眼部2503、操作スイッチ2504、受像部(図示しない)等を含む。
【0098】
図13(A)はフロント型プロジェクターであり、投射装置2601、スクリーン2602等を含む。
【0099】
図13(B)はリア型プロジェクターであり、本体2701、投射装置2702、ミラー2703、スクリーン2704等を含む。
【0100】
なお、図13(C)は、図13(A)及び図13(B)中における投射装置2601、2702の構造の一例を示した図である。投射装置2601、2702は、光源光学系2801、ミラー2802、2804〜2806、ダイクロイックミラー2803、プリズム2807、液晶表示装置2808、位相差板2809、投射光学系2810で構成される。投射光学系2810は、投射レンズを含む光学系で構成される。本実施例は三板式の例を示したが、特に限定されず、例えば単板式であってもよい。また、図13(C)中において矢印で示した光路に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するためのフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0101】
また、図13(D)は、図13(C)中における光源光学系2801の構造の一例を示した図である。本実施例では、光源光学系2801は、リフレクター2811、光源2812、レンズアレイ2813、2814、偏光変換素子2815、集光レンズ2816で構成される。なお、図13(D)に示した光源光学系は一例であって特に限定されない。例えば、光源光学系に実施者が適宜、光学レンズや、偏光機能を有するフィルムや、位相差を調節するフィルム、IRフィルム等の光学系を設けてもよい。
【0102】
ただし、図13に示したプロジェクターにおいては、透過型の電気光学装置を用いた場合を示しており、反射型の液晶表示装置の適用例は図示していない。
【0103】
図14(A)は携帯電話であり、3001は表示用パネル、3002は操作用パネルである。表示用パネル3001と操作用パネル3002とは接続部3003において接続されている。接続部3003における、表示用パネル3001の表示部3004が設けられている面と操作用パネル3002の操作キー3006が設けられている面との角度θは、任意に変えることができる。
さらに、音声出力部3005、操作キー3006、電源スイッチ3007、音声入力部3008を有している。
【0104】
図14(B)は携帯書籍(電子書籍)であり、本体3101、表示部3102、3103、記憶媒体3104、操作スイッチ3105、アンテナ3106等を含む。
【0105】
図14(C)はディスプレイであり、本体3201、支持台3202、表示部3203等を含む。本発明のディスプレイは特に大画面化した場合において有利であり、対角10インチ以上(特に30インチ以上)のディスプレイには有利である。
【0106】
以上の様に、本発明の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電気器具に適用することが可能である。
【0107】
【発明の効果】
nチャネル型TFTのゲッタリング領域には、n型不純物元素を添加し、pチャネル型TFTのゲッタリング領域には、p型不純物元素および希ガス元素を添加して加熱することにより半導体層に残留する触媒元素(Ni)をNiSixに偏析させることなくゲッタリングすることができる。本発明を用いることにより、信頼性の高いTFTを作製することができる。
【0108】
また、本発明を用いると、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域に高濃度のn型不純物元素を添加することがないため、n型不純物元素を反転させるために従来過剰に添加していたp型不純物元素の添加量(濃度)を必要最低限に抑えることができ、スループットが向上する。また、過剰に不純物元素が添加されることがないため、ひどく結晶性が破壊されることがなく、良好に再結晶化される。またこれにより、ソース領域またはドレイン領域の抵抗が上がってしまうこともない。それに伴い、オン電流が低下してしまうことも改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態を示す図。
【図2】 エッチピットを観察した結果を示す図。
【図3】 エッチピットを観察した結果を示す図。
【図4】 エッチピットを観察した結果を示す図。
【図5】 エッチピットを観察した結果を示す図。
【図6】 本発明の実施の一例を示す図。
【図7】 本発明の実施の一例を示す図。
【図8】 本発明の実施の一例を示す図。
【図9】 本発明の実施の一例を示す図。
【図10】 本発明の実施の一例を示す図。
【図11】 シート抵抗値を測定した結果を示す図。
【図12】 電気器具の一例を示す図。
【図13】 電気器具の一例を示す図。
【図14】 電気器具の一例を示す図。
【図15】 本発明の実施の一例を示す図。
【図16】 本発明の実施の一例を示す図。
【図17】 本発明の実施の一例を示す図。
Claims (9)
- 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第1のマスクを形成し、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第2のマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
第2の加熱処理を行って前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第1のマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第2のマスクを形成し、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
第2の加熱処理を行って前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第1のマスクを形成し、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第2のマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第2の加熱処理を行い、前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第1のマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
前記結晶質シリコン膜上に開口部を有する第2のマスクを形成し、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第2の加熱処理を行い、前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜からなるシリコン層を形成し、
前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に第1の導電膜、前記第1の導電膜上に第2の導電膜を形成し、
前記第1の導電膜および前記第2の導電膜に第1のエッチング処理を行ってテーパーを有する第1の形状の導電層を形成し、
前記第1の形状の導電層に第2のエッチング処理を行ってテーパーを有する第2の形状の導電層を形成し、
pチャネル型TFTとなる領域上に第1のマスクを形成し、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
前記nチャネル型TFTとなる領域上に第2のマスクを形成し、前記pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第2の加熱処理を行い、前記シリコン層に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第1の加熱処理を行って結晶質シリコン膜からなるシリコン層を形成し、
前記シリコン層上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に第1の導電膜、前記第1の導電膜上に第2の導電膜を形成し、
前記第1の導電膜および前記第2の導電膜に第1のエッチング処理を行ってテーパーを有する第1の形状の導電層を形成し、
前記第1の形状の導電層に第2のエッチング処理を行ってテーパーを有する第2の形状の導電層を形成し、
nチャネル型TFTとなる領域上に第1のマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
前記pチャネル型TFTとなる領域上に第2のマスクを形成し、前記nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
加熱した不活性気体雰囲気中において第2の加熱処理を行い、前記シリコン層に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 請求項5または請求項6において、
前記第2の加熱処理を行う前に、前記第2の形状の導電層上に第1層間絶縁膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁表面上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
第1の加熱処理を行い結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に保護膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜のうち、nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に、5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
前記nチャネル型TFTとなる領域上にマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
第2の加熱処理を行って前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。 - 絶縁表面上にゲート電極を形成し、
前記ゲート電極上にゲート絶縁膜を形成し、
前記ゲート絶縁膜上に非晶質シリコン膜を形成し、
前記非晶質シリコン膜にニッケルを添加し、
第1の加熱処理を行い結晶質シリコン膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜上に保護膜を形成し、
前記結晶質シリコン膜のうち、nチャネル型TFTとなる領域上にマスクを形成し、pチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に1×1019〜5×1021/cm3の濃度のボロンおよび1×1019〜1×1022/cm3の濃度のアルゴンを添加し、
前記nチャネル型TFTのソース領域またはドレイン領域となる領域に、5×1019〜5×1021/cm3の濃度のリンのみを添加し、
第2の加熱処理を行って前記結晶質シリコン膜に含まれるリンおよびボロンの活性化および前記ニッケルのゲッタリングを行うことを特徴とする半導体装置の作製方法。
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