JP4136214B2 - 鉄道車両走行シミュレーション方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鉄道に代表される車両走行の管理や制御の計画時に用いられ、車両の走行状態を計算する鉄道車両走行シミュレーション方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両の走行状態は位置、時刻、および速度の3つの変数で表すことができる。例えば、鉄道における車両走行シミュレーションでは、次式(1)および(2)に示す運動方程式により車両の力学的な運動をモデル化している。
dx/dt=v ・・・(1)
dv/dt=(F-F-F-F)/W ・・・(2)
ここで、xは車両の走行距離、vは車両速度、tは時間を表す。また、Fは引張力あるいは制動力で、図8および図9に示すような車両性能に基づいた速度に対する特性曲線から求められる。これらの特性曲線は、速度区間ごとに速度の関数式、例えば一次式で近似できる。Fは走行抵抗でトンネルの内と外とは区別されるが、いずれの区間でも速度の2次式による近似式か従来から一般に用いられている。Fは勾配抵抗、Fは曲線抵抗で、車両の現在位置と路線条件とから求められる。最後に、Wは車内乗客数と空車重量とから算出される車両重量であるが、定数として扱う場合が多い。
【0003】
図10は、例えば「計測と制御(vol.32 No.7):列車制御総合シミュレータ(pp.582/585,93/7)」、「鉄道と電気技術(vol.7 No.6):パソコンによる運転曲線作成システム(pp.19/23,96/6)」、あるいは特開平8−337169号公報に示された従来のシミュレーション方法の構成とデータの流れを示すブロック図である。
図において、1は現在走行状態2を入力し、距離xあるいは時間tあるいは速度vを微小単位で変化させて、該微小変化後の走行状態3を計算する逐次型計算手段、4は予め定められた目標走行状態5と上記算出された微小変化後の走行状態3とを比較し、微小変化後の走行状態3が目標走行状態5と一致または越えた場合に、その時の走行状態を最終走行状態6として出力する比較手段である。
このように構成された従来の車両走行シミュレーシション方法では、逐次型計算手段1は、現在走行状態2を入力し、距離x、時間t、速度vのいずれか1つの基準を微小単位で変化させて計算し、算出された微小変化後の走行状態3が目標走行状態5と一致または越えるまで、該計算を繰り返す。
算出された微小変化後の走行状態3が目標走行状態5と一致または越えた場合は計算を終了し、その時の走行状態が最終走行状態6として出力される。そして、ただちに該目標に合った加減速制御等の制御が行われる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように構成された従来の鉄道車両走行シミュレーション方法においては、基準となる変数を微小単位で変化させて計算することにより、微小変化後走行状態は離散的に変化するため、これが目標走行状態により近づけることが困難である。例えば、距離を基準として50m単位で変化させた場合、180km/hで等速走行していると1秒しか経過しないのに対して、36km/hでは5秒、18km/hでは10秒も経過してしまう。また、1.8km/h/sで加速していると50mを走行する間に速度は約25km/hも速くなり、時間は14秒経過する。
このような問題を解決するために、より微小な単位で変化させることにより目標走行状態により近づけることが考えられるが、微小単位をより微小にするほど計算回数が増加してしまうといった問題点がある。
また、車両走行シミュレーションにおいては、ある位置で制限速度が変化する、あるいはある時刻に信号現示が変化する、あるいはある速度以上になってはならないといった条件(目標走行状態)が成立すると即座に加減速制御を開始する必要があるが、従来の鉄道車両走行シミュレーション方法においては、距離、時間、速度のいずれか1つの要素だけを基準に目標状態と一致するまで計算するので、基準以外の変数については、目標走行状態に対する最終走行状態を正確に算出することができない。例えば、距離を基準として0〜10kmの区間を50m単位で変化させて計算する場合、微小(50m)変化間は加減速度が一定であるという前提で計算を行うが、実際の加減速度は位置、速度、時刻に応じて連続的あるいは不連続的に変化するものであり、例えば525mの地点で勾配あるいは制限速度が変化するならば、525mの地点で即座に加減速制御を開始する必要がある。しかし、微小単位が50mであるので、目標位置が525mであるにもかかわらず、550mの地点まで目標状態を越えたと検出できず、550mの地点までは一定の加減速度で走行したものとして計算するので、計算に誤差が生じて正確な最終走行状態を出力できない。これにより、きめ細かな加減速制御に用いることができない。
さらに、微小変化の単位が一定であるために、等速走行中や停車中など加減速度や位置が変化しない場合でも逐次計算を行うため、非効率的である。
【0005】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、第1の目的は、目標走行状態と近似する最終走行状態を正確に算出できる鉄道車両走行シミュレーション方法を得るものである。
また、第2の目的は、計算回数が少なく、かつ計算誤差の小さい鉄道車両走行シミュレーション方法を得るものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る鉄道車両走行シミュレーション方法においては、与えられた走行状態から予め与えられた目標走行状態における位置目標値までの距離を走行した時の速度および時刻を計算する距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から上記目標走行状態における時刻目標値までの時間を走行した時の位置および速度を計算する時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から上記目標走行状態における速度目標値に到達した時の位置および時刻を計算する速度基準計算手段とを備え、それら各計算手段を所定の順序で適用し、位置、速度及び時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から目標値に到達するまで計算手段を用いて計算し、当該変数が該目標値に到達し、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を最終走行状態とするものである。
【0007】
また、各基準計算手段は、加減速度の速度近似式を積分する積分型計算を行うものである。
【0008】
また、与えられた走行状態から任意に設定した速度または時刻まで走行した時の位置を計算し、算出された位置が予め定められた目標走行状態における位置目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで速度または時刻の設定を繰り返す距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または速度まで走行した時の時刻を計算し、算出された時刻が上記目標走行状態における時刻目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで位置または速度の設定を繰り返す時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または時刻まで走行した時の速度を計算し、算出された速度が上記目標走行状態における速度目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで位置または時刻の設定を繰り返す速度基準計算手段とを備え、それら各計算手段を所定の順序で適用し、位置、速度及び時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から該変数が目標値と所定の許容誤差範囲内となるまで計算手段を用いて計算し、当該変数が該目標値に対し上記許容誤差範囲内となり、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を最終走行状態とするものである
【0009】
また、各計算手段は、与えられた走行状態から任意に設定した値まで走行した時の基準となる変数値を算出する際、加減速度の速度近似式を積分する積分型計算により行うものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の一形態例である鉄道車両走行シミュレーション方法を示すブロック図である。図において、7は与えられた走行状態としての現在走行状態2と予め定められた目標走行状態5とを入力し、該目標走行状態5にほぼ到達した時の走行状態を最終走行状態6として出力する目標走行計算手段である。ここで、目標走行状態5は、位置、速度及び時刻の各目標値によって定められる。また、目標走行計算手段7は、現在の走行状態2から位置目標値としての目標位置まで走行した時の速度および時刻を計算する距離基準計算手段8と、現在の走行状態2から時刻目標値としての目標時刻まで走行した時の位置および速度を計算する時間基準計算手段9と、現在の走行状態2から速度目標値としての目標速度に到達した時の位置および時刻を計算する速度基準計算手段10とで構成されている。
【0011】
このように構成された鉄道車両走行シミュレーション方法における処理の流れについて、図2のフローチャートを参照しながら説明する。
まず、速度基準計算手段10によって、目標速度に到達した時の位置および時刻を計算する(S1)。その計算の結果、算出された位置が予め与えられている目標走行状態5内の目標位置を越える、あるいは算出された時刻が予め与えられている目標走行状態5内の目標時刻を越えるならば(S2でYESのとき)、走行状態の変数である速度、位置および時刻のうち位置あるいは時刻が速度よりも先に目標値に達すると判断されるので、次は時間基準計算手段9を適用する(S3)。もし、上記S2で、算出された位置が目標位置に達していない、かつ算出された時刻も目標時刻に達していない場合には(S2でNOのとき)、走行状態の変数である速度、位置および時刻のうちの速度がまず最初に目標値に到達したと判断できるので、そのときの計算結果を最終走行状態6として出力し(S6)、処理を終了する。
【0012】
上記S3では、時間基準計算手段10によって、目標時刻に到達した時の位置および速度を計算し、その結果、算出された位置が予め与えられている目標位置を越えるならば(S4でYESのとき)、走行状態の変数である位置および速度のうち、位置の方が速度よりも先に目標値に達すると判断されるので、距離基準計算手段8を適用して、位置が目標位置に到達した時の時刻および速度を算出し(S5)、その結果を最終走行状態6として出力する。上記S4で、算出された位置が該目標位置に達していないならば(S4でNOのとき)、走行状態の変数である速度および位置のうち、速度の方が位置よりも先に目標値に達すると判断できるので、そのときの計算結果を最終走行状態6として出力する。
以上により、距離基準計算手段8、時間基準計算手段9および速度基準計算手段10を多くともそれぞれ1回ずつのたかだか3回適用するだけで、走行状態の変数である位置、時間および速度のうちのいずれか1つが最初に目標値に到達する時点の最終走行状態6を正確に出力することができる。
なお、上記図2の例では、まず速度基準計算手段10を適用し、そのあと時間基準計算手段9、距離基準計算手段8の順で適用するものを示したが、この3つの計算手段の適用する順序は任意に変更しても、同様の効果が得られる。
【0013】
また、走行状態の3つの変数である位置、速度および時刻をそれぞれの目標値と比較する処理手順を工夫することによって、不要な計算を省略することが可能となり、さらに計算回数の少ない効率的なシミュレーションを行うことができる。例えば、図3のフローチャートは、図2のフローチャートのS2の判断処理を2段階の判断処理S21およびS22に分割したものである。このフローチャートに従うと、まず速度基準計算手段10を適用して目標速度に到達した時の位置および時刻を算出したあと(S1)、算出された時刻が目標時刻を越えた場合は(S21でYESのとき)時間基準計算手段9を適用するが(S3)、算出された時刻が目標時刻に達していない場合には(S21でNOのとき)、その時間基準計算を省略して、算出された位置が目標位置を越える時だけ(S22でYESのとき)、距離基準計算手段8を適用する(S5)。なお、上記S3において算出された位置が目標位置を越えるならば(S4でYESのとき)、図2のフローチャートの処理と同様、距離基準計算手段8を適用して、そのときの計算結果を最終走行状態9として出力する(S6)。
これにより、時間基準計算手段9を適用する必要のない場合には時間基準計算手段9による計算を確実に省略することができる。
【0014】
また、図4のフローチャートは、図3のフローチャートの判断処理S21,S3とS22,S5の順序を入れ替えたもので、これによれば、駅での停車中など、距離基準計算手段8を適用する必要のない場合には、その計算を確実に省略することができる。さらに、定速走行中や惰行走行中など速度基準計算手段10を適用する必要がない場合についても、処理手順を工夫することにより不要な計算を省略できるので、効率のよいシミュレーションが実現できる。
なお、以上の説明では、シミュレーションの初期状態として現在走行状態2を与えたが、要求に応じたある時刻またはある位置における走行状態を初期状態として与えても何ら差し支えない。
以上により、不要な計算を省略し、各基準計算手段を多くとも1回ずつ適用するだけで、走行状態の変数である位置、時間および速度のうちのいずれか1つが最初に目標値に到達する時点の最終走行状態6を正確に出力することができる。
【0015】
実施の形態2.
なお、実施の形態1において各基準計算手段が、現在の走行状態から各目標値まで走行した時の各種変数を計算する際、加減速度の速度近似式を積分する方法を用いることにより、より計算回数を少なくすることができる。
図5は本実施の形態2の処理の流れを示すフローチャートであり、図2で示したものと処理手順は同一であるが、S1の速度基準計算、S3の時間基準計算、およびS5の距離基準計算のそれぞれを加減速度の速度近似式を積分する積分型の方法で行うことを示している(T1、T3、T5)。
次に、積分型計算方法について説明する。
従来の技術で先に述べたように、車両の加減速度は引張力あるいは制動力、走行抵抗、勾配抵抗、曲線抵抗、および車両重量から求められる。ここで、引張力あるいは制動力は、図8および図9で示したよう車両性能に基づいた速度に対する特性曲線から求められ、この特性曲線は速度区間ごとの速度の関数式、例えば1次式で近似できる。走行抵抗はトンネルの内と外とで区別されるが、いずれの区間でも速度の2次式による近似式が従来より一般的に用いられている。勾配抵抗と曲線抵抗とは車両位置に応じて変化するが、速度とは関係のない定数である。車両重量も速度とは関係のない定数である。以上のことから、加減速度は速度の関数式、例えば2次式で近似できる。積分型計算方法は、この2次式を現在の状態から基準となる変数が目標値に到達するまで積分することにより、最終走行状態を出力しようとするものである。以下の説明では、速度基準計算手段に積分型計算方法を適用した場合について述べる。
【0016】
積分型速度基準計算手段は、加減速度を速度の関数式で近似し、それを積分した式を用いて、現在速度から目標速度に到達するまでの時間と距離とを計算するものである。一例として、加減速度の近似式を次式(3)に示す速度に関する2次式とした場合について説明する。なお、以下の計算式の単位系には、速度に(km/h)、時間に(秒)、距離に(m)、加速度に(km/h/s)を用いる。
dv/dt=α(v)=av+bv+c ・・・(3)
この時、速度vから速度vまで到達するまでの時間Tと距離Lとを求める。
まず、時間Tは次式(4)で示される。
T=∫(1/α)dv=I(v)-I(v) ・・・・(4)
(v)=(2/r)・tan−1((2av+b)/r) ;(b-4ac)<0のとき
(v)=(1/r)・log|(2av+b-r)/(2av+b+r)| ;(b-4ac)>0のとき
(v)=-2/(2av+b) ;(b-4ac)=0のとき
r=(|b-4ac|)1/2
次に、距離Lは次式(5)で示される。
L=∫((v/h)/α)dv=I(v)-I(v) ・・・・(5)
(v)=(1/ah)(-(b/r)・tan−1((2av+b)/r)+(1/2)・log|av+bv+c|)
;(b-4ac)<0のとき
(v)=(1/2arh)((-b+r)・log|2av+b-r|+(b+r)・log|2av+b+r|))
;(b-4ac)>0のとき
(v)=(1/ah)(b/(2av+b)+log|2av+b|) ;(b-4ac)=0のとき
h=60×60/1000 ;単位系の変換パラメータ
【0017】
上記の式によれば、近似式の係数が変化しない限りでは、1回の計算で現在速度から目標速度に到達するまでの時間および距離を求めることができる。加減速度の近似式は勾配抵抗や曲線の変化位置、トンネル区間の開始位置と終了位置、引張力曲線と制動力曲線の速度近似式の変化位置を除けば、その係数は同じである。したがって、従来のように微小変化ごとに計算を繰り返す逐次型計算方法と比べて、計算回数が削減できる。
また、現在速度から目標速度までを積分するので、目標速度と正確に一致したときの位置と時間を誤差なく計算することができ、高精度な走行状態の算出が保証できる。
なお、上記では速度基準計算手段に積分型計算方法を適用するものについて述べたが、時間基準計算手段および距離基準計算手段についても同様に積分型計算方法を適用することができる。すなわち、加減速度を速度の関数式で近似し、それを現在時刻から目標時刻まで、あるいは現在位置から目標位置までを積分することにより、逐次型計算方法と比べて少ない計算回数で、目標時刻あるいは目標位置と正確に一致する走行状態を得ることができる。
以上のように、目標走行計算手段7の各基準計算手段に積分型計算方法を適用することにより、計算回数が少なく、計算に伴う誤差の発生がなく、現在の走行状態から位置、速度および時刻のいずれか1つが最初に目標値と一致する最終走行状態を正確に計算することができる。
【0018】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1においては、目標走行計算手段7の各基準計算手段に基準となる変数が目標値と一致するまで計算するものについて述べたが、例えばある速度を設定して積分型計算方法により求めた位置と目標位置とを比較して、両者が所定の許容誤差範囲内となるまで探索的に上記速度を設定し直して計算を繰り返すといった、探索型計算方法を適用するようにしても、計算回数が少ないままで、目標位置の許容誤差範囲内に入る走行状態を確実に計算することができる。
なお、探索型計算方法には、距離基準計算手段8として、仮にある速度を設定して積分型速度基準計算により求めた位置と目標位置とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に速度設定を繰り返す速度探索型距離基準計算方法と、仮にある時間を設定して積分型時間基準計算により求めた位置と目標位置とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に時間設定を繰り返す時間探索型距離基準計算方法とがある。また、時間基準計算手段9として、仮にある速度を設定して積分型速度基準計算により求めた時刻と目標時刻とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に速度設定を繰り返す速度探索型時間基準計算方法と、仮にある距離を設定して積分型距離基準計算により求めた時刻と目標時刻とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に距離設定を繰り返す距離探索型時間基準計算方法とがある。さらに、速度基準計算手段10として、仮にある距離を設定して積分型距離基準計算により求めた速度と目標速度とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に距離設定を繰り返す距離探索型速度基準計算方法と、仮にある時間を設定して積分型時間基準計算により求めた速度と目標速度とを比較した結果から、両者が所定の許容誤差の範囲内になるまで探索的に時間設定を繰り返す時間探索型速度基準計算方法とがある。
【0019】
図6は本実施の形態3の処理の流れを示すフローチャートであり、図5で示したものと処理手順は同様であるが、T1の積分型速度基準計算、T3の積分型時間基準計算、およびT5の積分型距離基準計算のそれぞれを時間探索型速度基準計算、距離探索型時間基準計算、および速度探索型距離基準計算で行うものである(U1、U3、U5)。U1の時間探索型速度基準計算では、速度が目標速度と許容誤差範囲内になるまで時間設定を繰り返し、U2では、その目標速度と許容誤差範囲内に入った速度に到達した時の位置が目標位置を越える、またはその時の時刻が目標時刻を越えるか否かの判断をする。U2でどちらの目標値も越えない場合は(U2でNOのとき)、位置、速度および時刻の3つの変数のうち速度が最初に目標速度と許容誤差範囲内となるので、その速度に到達した時点での位置および時刻を最終走行状態として出力する(U6)。U2でどちらかの変数がその目標値を越えた場合は(U2でYESのとき)、U3の距離探索型時間基準計算を適用する。U4では、U3で得られた、目標時刻と許容誤差範囲内となった時刻における位置が目標位置を越えているか否かの判断をし、越えていれば(U4でYESのとき)、3つの変数のうち位置が最初に目標値と許容誤差範囲内となるので、速度探索型距離基準計算を適用して、その位置とその時点での速度および時刻とを算出し(U5)、計算結果を最終走行状態として出力する(U6)。
なお、U1の時間探索型速度基準計算のかわりに距離探索型速度基準計算、U3の距離探索型時間基準計算のかわりに速度探索型時間基準計算、U5の速度探索型距離基準計算のかわりに時間探索型距離基準計算で行うものであってもよい。
【0020】
図7は、探索方法として二分探索法を用いた場合の速度探索型距離基準計算方法を例に、図7を用いて詳しく説明する。
まず、現在速度と目標速度の中間速度を設定し(V1)、積分型計算方法によって、現在速度から該中間速度に到達するまで走行した時の位置を計算する(V2)。そして、その算出された位置と(目標位置+許容誤差)とを比較し(V3)、算出された位置が(目標位置+許容誤差)を越えるならば(V3でYESのとき)、算出された位置が許容誤差範囲を越えているので、先程設定した中間速度と現在速度とのさらに中間の速度を設定して(V4)、V2の積分型速度基準計算を繰り返す。
上記V2で算出された位置が(目標位置+許容誤差)を越えず、かつ(目標位置−許容誤差)にも到達していない場合は(V3でNO、V5でYES)、逆に許容範囲に達していないので、先程設定した中間速度と目標速度との中間の速度を設定して(V6)、V2の積分型速度基準計算を繰り返す。
【0021】
上記V2で算出された位置が(目標位置−許容誤差)と(目標位置+許容誤差)との間にあれば(V3でNO、V5でNO)、許容誤差範囲内であるので、そのときの設定速度、時間および位置で表される走行状態を、位置が目標位置の許容誤差範囲内となる時点の走行状態として出力する(V7)。
なお、図示は省略するが、上記V1、V6において設定した速度が目標速度と許容誤差範囲内になった場合は、速度の方が位置よりも先に目標値と許容誤差範囲内になることを示しているので、当該速度探索型距離基準計算を終了し、他の基準計算、例えば距離探索型速度基準計算を適用することにより、必ず位置、速度、時刻のいずれか1つが最初に目標値と許容誤差範囲内となる時点の走行状態を算出することができる。
以上のように、二分探索自体は通常の処理方法であるが、積分型計算方法を適用することにより、逐次型計算方法に比べてはるかに計算回数が少ないままで、現在の走行状態から位置、速度、時刻のいずれか1つが最初に目標値の許容誤差範囲内となる最終走行状態を効率よくかつ誤差なく計算することができる。
なお、上記説明においては、各基準計算をすべて探索型計算方法で行うものとしたが、逐次型計算方法または実施の形態2で示した積分型計算方法で行うものと組み合わせてもよい。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、以上説明したように構成されているので、以下に示すような効果を奏する。
【0023】
与えられた走行状態から予め定められた位置目標置までの距離を走行した時の速度および時刻を計算する距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から予め定められた時刻目標値までの時間を走行した時の位置および速度を計算する時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から予め定められた速度目標値に到達した時の位置および時刻を計算する速度基準計算手段とを所定の順序で適用するので、距離、速度および時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から目標値に到達するまで計算し、当該変数が目標値に到達し、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を計算するので、効率よく最終走行状態を出力することができる。
【0024】
また、各基準計算手段は、加減速度の速度近似式を積分する積分型計算を行うので、計算回数を少なくでき、最終走行状態の算出が格段と容易になる。
【0025】
また、与えられた走行状態から任意に設定した速度または時刻まで走行した時の位置を計算し、算出された位置が目標走行状態における位置目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで速度または時刻の設定を繰り返す距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または速度まで走行した時の時刻を計算し、算出された時刻が上記目標走行状態における時刻目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで位置または速度の設定を繰り返す時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または時刻まで走行した時の速度を計算し、算出された速度が上記目標走行状態における速度目標値と所定の許容誤差範囲内となるまで位置または時刻の設定を繰り返す速度基準計算手段とを所定の順序で適用するので、位置、速度及び時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から該変数が目標値と所定の許容誤差範囲内となるまで計算手段を用いて計算し、当該変数が該目標値に対し上記許容誤差範囲内となり、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を計算するので、効率よく最終走行状態を出力することができる。
【0026】
また、各基準計算手段は、与えられた走行状態から任意に設定された値までを積分型計算により計算するので、計算回数が少なくでき、最終走行状態の算出が格段と容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の本発明による鉄道車両走行シミュレーション方法の機能構成を示すブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1による鉄道車両走行シミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】 図2の鉄道車両走行シミュレーション方法の他の処理手順例を示すフローチャートである。
【図4】 図2の鉄道車両走行シミュレーション方法の他の処理手順例を示すフローチャートである。
【図5】 この発明の実施の形態2による鉄道車両走行シミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】 この発明の実施の形態3による鉄道車両走行シミュレーション方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】 速度探索型距離基準計算方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】 速度−引張力曲線を示す図である。
【図9】 速度−制動力曲線を示す図である。
【図10】 従来の鉄道車両走行シミュレーション方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
2 現在走行状態、5 目標走行状態、6 最終走行状態、7 目標走行計算手段、
8 距離基準計算手段、9 時間基準計算手段、10 速度基準計算手段。

Claims (7)

  1. 鉄道車両の走行状態を位置、速度及び時刻を変数とした関数で表し、与えられた1つの走行状態と予め定められた目標走行状態とから該鉄道車両の走行状態をシミュレーションする鉄道車両走行シミュレーション方法において、
    上記与えられた走行状態から上記目標走行状態における位置目標値までの距離を走行した時の速度および時刻を計算する距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から上記目標走行状態における時刻目標値までの時間を走行した時の位置および速度を計算する時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から上記目標走行状態における速度目標値に到達した時の位置および時刻を計算する速度基準計算手段とを備え、それら各計算手段を所定の順序で適用し、位置、速度及び時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から目標値に到達するまで計算手段を用いて計算し、当該変数が該目標値に到達し、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を最終走行状態とすることを特徴とする鉄道車両走行シミュレーション方法
  2. 各基準計算手段は、加減速度の速度近似式を積分する積分型計算を行うことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両走行シミュレーション方法
  3. 鉄道車両の走行状態を位置、速度及び時刻を変数とした関数で表し、与えられた1つの走行状態と予め定められた目標走行状態とから該鉄道車両の走行状態をシミュレーションする鉄道車両走行シミュレーション方法において、
    上記与えられた走行状態から任意に設定した速度または時刻まで走行した時の位置を計算し、算出された位置が上記目標走行状態における位置目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで速度または時刻の設定を繰り返す距離基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または速度まで走行した時の時刻を計算し、算出された時刻が上記目標走行状態における時刻目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで位置または速度の設定を繰り返す時間基準計算手段と、上記与えられた走行状態から任意に設定した位置または時刻まで走行した時の速度を計算し、算出された速度が上記目標走行状態における速度目標値に対し所定の許容誤差範囲内となるまで位置または時刻の設定を繰り返す速度基準計算手段とを備え、それら各計算手段を所定の順序で適用し、位置、速度及び時刻の3つの変数のうち任意に1つの変数を基準として、与えられた走行状態から該変数が目標値と所定の許容誤差範囲内となるまで計算手段を用いて計算し、当該変数が該目標値に対し上記許容誤差範囲内となり、かつ他の2変数がそれぞれの目標値を越えない時の走行状態を最終走行状態とすることを特徴とする鉄道車両走行シミュレーション方法
  4. 各計算手段は、与えられた走行状態から任意に設定した値まで走行した時の基準となる変数値を算出する際、加減速度の速度近似式を積分する積分型計算により行うことを特徴とする請求項3記載鉄道車両走行シミュレーション方法
  5. 上記速度基準計算手段は、上記速度目標値に到達した時の位置および時刻を算出し、当該算出された位置が上記位置目標値を越える、あるいは、当該算出された時刻が上記時刻目標値を越えると、上記時間基準計算手段が、上記時刻目標値に到達した時の位置および速度を計算し、当該算出された位置が上記位置目標値に達していなければ当該算出結果を最終走行状態として出力し、
    また、上記時間基準計算手段が算出した位置が上記位置目標値を越えるならば、上記距離基準計算手段が、上記位置目標値に到達した時の時刻および速度を算出して当該算出結果を最終走行状態として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の鉄道車両走行シミュレーション方法。
  6. 上記速度基準計算手段は、上記速度目標値に到達した時の位置および時刻を算出し、当該算出された時刻が上記時刻目標値に達していなく、かつ、当該算出された位置が上記位置目標値を超えている場合には、上記距離基準計算手段が上記位置目標値に到達した時の時刻および速度を算出して当該算出結果を最終走行状態として出力し、
    また、上記速度基準計算手段が算出した時刻が上記時刻目標値を越えると、上記時間基 準計算手段が、上記時刻目標値に到達した時の位置および速度を計算し、当該算出された位置が上記位置目標値に達していなければ当該算出結果を最終走行状態として出力し、
    また、上記時間基準計算手段が算出した位置が上記位置目標値を越えると、上記距離基準計算手段が、上記位置目標値に到達した時の時刻および速度を算出して当該算出結果を最終走行状態として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の鉄道車両走行シミュレーション方法。
  7. 上記速度基準計算手段は、上記速度目標値に到達した時の位置および時刻を算出し、当該算出された位置が上記位置目標値に達していなく、かつ、当該算出された時刻が上記時刻目標値を超えている場合には、上記時間基準計算手段が上記時間目標値に到達した時の位置および速度を算出して当該算出結果を最終走行状態として出力し、
    また、上記速度基準計算手段が算出した位置が上記位置目標値を越えると、上記距離基準計算手段が、上記位置目標値に到達した時の時刻および速度を計算し、当該算出された時刻が上記時刻目標値に達していなければ当該算出結果を最終走行状態として出力し、
    また、上記距離基準計算手段が算出した時刻が上記時刻目標値を越えると、上記時間基準計算手段が、上記時刻目標値に到達した時の位置および速度を算出して当該算出結果を最終走行状態として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の鉄道車両走行シミュレーション方法。
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