JP4133006B2 - 回転部材の固着方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、外周面に相手部材との摺動面を有する回転部材をシャフトへ固着する回転部材の固着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、カム管やジャーナル管等外周面を相手側部材との摺動面とする回転部材をシャフトに対して固着する回転部材の固着構造として次のようなものがあった。まず、軸状のシャフトと回転軸にシャフトを貫通させるための軸孔が穿設されたカム管と軸状のシャフトとに関して、カム管の軸孔の内径をシャフトの外径よりも若干小さくなるように形成する。そして、カム管を加熱して体積膨張をさせて軸孔を拡開させてシャフトの外径より大径とした状態でシャフトを挿通させて所定位置に配する。その後カム管を冷却して体積収縮させて軸孔を縮径させることで、カム管の軸孔がシャフトを締め付けることにより固着する、いわゆる焼き嵌めによる固着構造であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようにカム管を焼き嵌めで固着する場合、カム管全体を加熱・冷却して体積を膨張・収縮させるので、固着の際にカム管の外周面に形成された摺動面に変形が残り、カム管の固着後、摺動面に対する研磨加工が必要となっていた。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、組付け時の摺動面の変形を防いで、回転部材の固着後の研磨加工を省略可能な回転部材の固着構造を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、外周面には相手部材に対する摺動面が形成された回転部材を、シャフトに対して固着するための方法であって、前記回転部材は、前記摺動面を有する本体部とこの本体部に一体に突設され前記本体部を同軸で貫通するシャフト挿通孔が形成された固着部とからなるとともに、前記回転部材が前記シャフトに取り付けられた状態では、前記本体部は前記シャフトを遊挿するが、前記固着部は前記シャフトへの挿通後に径方向内方へ変形させられることによって前記シャフトに固着されるものであり、前記シャフトと前記回転部材とのいずれか一方には他方側へ突出させた凸部が形成されると共に他方には挿入方向の前端から軸方向に沿って形成された溝状をなし、前記凸部と嵌り合うことによって前記シャフトと前記回転部材との相対的な周方向に関する位置決めを可能にする凹部が形成されており、前記シャフトに対して前記回転部材を組み付ける時には、前記固着部の開口縁に近い方を加熱して膨張変形させるとともに、前記凹部と前記凸部とを嵌め合わせながら、前記回転部材を前記シャフトに対して嵌め入れるところに特徴を有する。
【0010】
【発明の作用及び効果】
<請求項1の発明>
シャフトに対して回転部材を固着する場合には、回転部材の挿通孔へシャフトを挿通させる。この状態で、固着部を径方向内方へ変形させることによって回転部材全体がシャフトに固定される。この場合、本体部はシャフトを遊挿しており、固着部のみによってシャフトに対する取付けを行うようにしているため、固着部の変形による影響が本体部には及ばないため、従来のような摺動面に対する後処理が不要となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を図1ないし図3によって説明する。
本実施形態のカムシャフト10は自動車等の内燃機関に係る動弁機構に用いられるものであり、棒状のシャフト12にカム管(本発明に係る「回転部材」に相当する)11が固着されてなる構造である。カム管11のカム本体(本発明に係る「本体部」に相当する)13の外周面は、相手部材である図示しないロッカーアームとの摺動面13Fとなっており、カムシャフト10が回転されると、カム管11の摺動面13Fがロッカーアームを押圧して弁(図示なし)の開閉動作を行うようになっている。
【0017】
さて、カム管11はカム本体13とその両側に設けられた一対の固着部14,14とからなり、その軸心にはシャフト12を挿通可能なシャフト挿通孔11Aが貫通している(図3参照)。
【0018】
シャフト12には、図2に示すように、固着部14,14を固着させる1対の被固着部16,16が設けられていると共に両被固着部16,16の間には小径部17が形成されている。
被固着部16は固着部14の軸方向の長さにほぼ対応した長さ寸法を有すると共に、その径はシャフト12の他の箇所よりも大径をなすように形成されている。
また、小径部17はカム本体13の厚み寸法にほぼ対応した長さ寸法を有し、かつカム管11の固着部14の内周径よりも僅かに小径をなすように形成されている。 さらに、シャフト12には、軸方向に沿って延びる凸部18が周方向に90度間隔でかつ小径部17を除く全長に亘って設けられている。
【0019】
一方、カム管11に係るカム本体13は、外周に滑らかな曲面形状の摺動面13Fが形成され、また、シャフト挿通孔11Aのうち、カム本体13に対応する長さ範囲の本体孔13Aはシャフト12の最大径(固着部14の凸部18を備える箇所の外径)よりも大径をなしており、シャフト12を遊挿可能とする。
【0020】
また、固着部14は、カム本体13の両側に円筒状に突出形成されている。また、シャフト挿通孔11Aのうち、固着部14に対応する長さ範囲の固着孔14Aの内周壁にはそれぞれ軸方向に沿って設けられた凹溝15が90度間隔で4箇所配設されている(図1参照)。
凹溝15は、上述のシャフト12の凸部18を嵌挿可能に設けられており、カム管11をシャフト12に対して組付けると凹溝15と凸部18とが嵌り合うことで、固着部14が被固着部16に対して回り止めを行う。さらに、組付け時におけるカム管11の周方向に関する位置決めとして利用することもできる。
【0021】
ここで、固着孔14Aの内径は熱収縮率を考慮して設定されており、シャフト12の挿通前においてはシャフト12の被固着部16の外径と同等か或いは僅かに小径となるように形成されている。そして、固着部14が加熱された場合には固着部14に膨張変形が生じて、固着孔14Aの内径が被固着部16の外径よりも大径となるようになっており、この状態でシャフト12に対する組付けが行われる。そして、シャフト12への組付け後に固着部14が冷却されるとその内径は元の内径寸法となるように設定されている。
【0022】
続いて本実施形態に係るカムシャフト10の組付けについて説明する。
まず、カム管11の固着部14の開口縁に近い方を加熱して膨張変形させる。これにより、固着孔14Aの内径がシャフト12の被固着部16の外径よりも大となるので、固着部14と被固着部16との間に間隙を生じさせつつカム管11をシャフト12に対して嵌め入れることができる。尚、本実施形態ではカム管11をシャフト12の右方向(図2の右方)から嵌め入れる構造であるが、このとき、カム管の凹溝15とシャフト12の凸部18とを嵌め合わせながら挿通させるのでカム管の位置合わせが容易にできるようになっている。
【0023】
そして、カム管11の固着部14を対応する被固着部16に位置合わせしてから固着部14を冷却する。すると、固着部14は冷却に伴なって収縮しその内径が縮径する。これにより、固着部14は被固着部16を絞りつけるように固着される。
ここで、カム管11の組付け時には固着部14の開口端縁側を加熱するので、加熱・冷却に伴なってカム本体13の摺動面の変形が規制されるとともに、カム本体13の本体孔13Aの内径は被固着部16の外径よりも大きいので、被固着部16がカム本体13に接触したり押圧したりすることがない遊挿状態としながら組付けができる。
【0024】
このように、本実施形態によれば、従来のように、カム管11をシャフト12に固着した後にカム管11の摺動面を改めて研磨加工する必要がないので、生産効率に優れる。
さらに本実施形態では固着部14の凹溝15とシャフト12の凸部18とが嵌り合うことで固着力の増強も可能となる。
また、凹溝15と凸部18とを嵌め合わせながら組付けることにより、カム管11を所望の位置に組付けることが容易になり、組付け精度の向上が可能となる。
ところで、固着部14は加熱・冷却によって変形するので固着後に外周面が不均一になってしまうことがありうるが、固着部14の外周面は内燃機関の動弁機構として機能するところではないので、何の支障も生じない。しかし、高い表面精度が要求されない場合には、固着部の外周面を他の用途に使用する事も可能である。
【0025】
<第2実施形態>
上述の実施形態において本実施形態に係るカムシャフト10のように、固着部14を所定の長さに設定して組付け時にカム管11やジャーナル管11Aのような軸方向に隣接する回転部材との間隔を所定のものにするいわゆるスペーサーとして用いるものであってもよい。
図5に示すように、本実施形態によれば、隣接するカム管11,11同士の固着部14,14の先端を当接させて嵌挿させることで、シャフト12の軸方向に関する位置決めが容易にできる。
また、当接し合う固着部14,14の間に所定の間隙を設定したい場合には、一のカム管11の固着部14と他のカム管11(或いはジャーナル管11A)の固着部14同士の突き合せ箇所に弾性素材で所定の厚みを備えた弾性スペーサ(図示なし)を挟んで固着して、その後弾性スペーサーを取り外すようにしても良い。
【0026】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1) 上記実施形態では固着部14を加熱してから固着する焼き嵌めを行うものであったが、固着部14の固着孔14Aの内径を被固着部16の外径よりも僅かに大径となるように形成し、カム管11をシャフト12へ嵌挿後、固着部14を外周から絞りこむようにしてかしめ付けるものであってもよい。
このようにして形成されたカムシャフト10によれば、カム管11の固着部14をかしめ付けることによりシャフト12の被固着部16に固着されるのであるが、カム管11の固着部14のみが変形されるので、カム管11のカム本体13へは変形が及ぶことがなく、従来必要であった摺動面の研磨加工を省略できる。
【0027】
(2)上記実施形態では、被固着部16の外周面に形成した凸部18を固着部14の内周面に形成した凹溝15部に食い込ませていたが、例えば、固着部14の内周の断面形状を多角形状にして部分的に被固着部16の外径よりも小径に形成し、そのように形成した固着部14を被固着部16に対して固着させるものでもよい。
(3)上記実施形態では被固着部16の外周面に形成された凸部18は断面四角形状をなしていたが、例えば断面略三角形状等他の形状のものでもよい。
(4)上記実施形態においてカム管11の固着部14の外周面をジャーナル面として用いるものであっても良い。
(5)上記実施形態において、被固着部16の外周面をローレット面として固着部14との摩擦力を大きくして固着部14と被固着部16との間の固着力を増強させたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】カム管の平面図
【図2】組付け前のカムシャフトの側断面図
【図3】組付け後のカムシャフトの側断面図
【図4】そのときの平断面図
【図5】第2実施形態に係るカムシャフトの側面図
【符号の説明】
10…カムシャフト
11…カム管(回転部材)
11A…シャフト挿通孔
12…シャフト
13…カム本体(本体部)
13F…摺動面
14…固着部
15…凹溝(凹部)
16…被固着部
18…凸部
Claims (1)
- 外周面には相手部材に対する摺動面が形成された回転部材を、シャフトに対して固着するための方法であって、
前記回転部材は、前記摺動面を有する本体部とこの本体部に一体に突設され前記本体部を同軸で貫通するシャフト挿通孔が形成された固着部とからなるとともに、
前記回転部材が前記シャフトに取り付けられた状態では、前記本体部は前記シャフトを遊挿するが、前記固着部は前記シャフトへの挿通後に径方向内方へ変形させられることによって前記シャフトに固着されるものであり、
前記シャフトと前記回転部材とのいずれか一方には他方側へ突出させた凸部が形成されると共に他方には挿入方向の前端から軸方向に沿って形成された溝状をなし、前記凸部と嵌り合うことによって前記シャフトと前記回転部材との相対的な周方向に関する位置決めを可能にする凹部が形成されており、
前記シャフトに対して前記回転部材を組み付ける時には、前記固着部の開口縁に近い方を加熱して膨張変形させるとともに、前記凹部と前記凸部とを嵌め合わせながら、前記回転部材を前記シャフトに対して嵌め入れることを特徴とする回転部材の固着方法。
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