JP4130941B2 - 内視鏡の先端部 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は内視鏡の先端部に関し、特に、挿入部の先端に設けられた照明窓と観察窓とが同じ透明カバーによって被覆された内視鏡の先端部に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、内視鏡を介しての患者から患者への感染を未然に確実に防止する必要性が高まっている。
【0003】
その方策として、内視鏡の挿入部に対して被脱自在な水密性のシースを設けて、内視鏡にシースを被覆した状態で使用し、使用後にそのシースを新しいものと交換するのが一つの有力な手段である。そのようにする場合、照明窓と観察窓の表面にあたるシース部分は透明に形成しなければならない。
【0004】
しかし、両窓の表面を連続的な一枚の透明カバーで被覆すると、照明窓から出射された照明光が透明カバーの厚みの中で反射を繰り返して観察窓内に入射し、観察視野に照明光の反射像であるゴーストが発生してしまう。
【0005】
そこで従来は、透明カバーを例えば照明窓側から観察窓側へ次第に肉薄に形成して、照明窓から射出された光が透明カバーの厚みの中で観察窓側に向かう方向に反射を繰り返すと次第に反射角度が小さくなって観察窓まで達しないようにしたり(特許第2868228号)、照明窓と観察窓との間の位置で透明カバーに遮光手段や反射手段を形成して照明光が照明窓から観察窓に達しないようにしていた(特開平7−294828号等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のように透明カバーの肉厚を徐々に変化させたり、透明カバーの所定位置に遮光手段や反射手段等を設けると、使い捨てにされる透明カバーの製造コストが嵩んで内視鏡検査費用が高くなってしまうだけでなく、内視鏡の挿入部に対する透明カバーの取り付けに方向性が生じて、取り扱いが非常に面倒なものになってしまう欠点がある。
【0007】
そこで本発明は、照明窓の表面と観察窓の表面とを同じ透明カバーで被覆してもゴーストのない良好な観察像を得ることができ、しかもコスト高にならず透明カバーの取り付けが容易な使い易い内視鏡の先端部を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の先端部は、照明光を射出する照明窓と光像をとり入れる観察窓とが挿入部の先端に並んで配置され、照明窓の表面と観察窓の表面とが一定の肉厚の同じ透明カバーで被覆された内視鏡の先端部において、照明窓の表面における照明光通過領域と透明カバーの表面における観察光通過領域との間の最短距離をD、透明カバーの肉厚をt、透明カバーの屈折率をn、観察視野角(空気中)を2θとするとき、照明光通過領域と観察光通過領域との間の最短距離Dを、
D>7×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×t
の範囲にしたものである。
【0009】
なお、照明光通過領域と観察光通過領域との間の最短距離Dを、さらに
D<9×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×t
の範囲にすれば、照明窓が観察窓から離れすぎず配光ムラが大きくならない。
【0010】
【発明の実施の形態】
図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図2において、1は、内視鏡の挿入部可撓管の先端部分であり、その先端に連結された先端部本体2の先端面に、光像をとり入れる観察窓3と照明光を射出する照明窓4とが並んで配置されている。照明窓4には凹レンズが嵌め込まれている。
【0011】
観察窓3の内側には対物光学系5が配置され、その対物光学系5による被写体の投影位置にイメージガイドファイババンドル6の像入射面(又は固体撮像素子の撮像面)が配置されている。照明窓4の内側には、ライトガイドファイババンドル7の射出端が配置されている。
【0012】
10は、挿入部可撓管1に着脱自在に被覆される被覆シースであり、その先端部分には先端部本体2の先端面を被覆する例えばアクリル、ポリプロピレン又はポリエチレン等のような透明なプラスチックからなる透明カバー11が取り付けられており、観察窓3と照明窓4とが同じ透明カバー11により各々密着被覆された状態になっている。
【0013】
図3は、観察窓3と照明窓4に透明カバー11が被覆されている部分を略示しており、観察窓3と照明窓4との間の位置における透明カバー11の肉厚をt、その透明カバー11の屈折率をn、観察視野角(空気中)を2θ、照明光の配光角(空気中)を2δとする。また、透明カバー11内における観察視野角を2θ′、配光角を2δ′とすると、
sinθ=n×sinθ′
sinδ=n×sinδ′
である。
【0014】
また、照明窓4の表面における照明光通過領域のうち最も観察窓3に近い位置をA、透明カバー11の表面における観察光通過領域のうち照明窓4に最も近い位置をBとし、A点とB点との間の距離(ただし、光軸と平行方向に見た状態の距離)をDとする。
【0015】
即ち、Dは、照明窓4の表面における照明光通過領域と透明カバー11の表面における観察光通過領域との間の最短距離である。なお、この実施例においてはA点は照明窓4の縁部であるが、照明窓4が大きく形成されている場合には、A点が照明窓4の縁部より内側に入る場合もある。
【0016】
図4は、照明窓4から射出された照明光が透明カバー11の内面で反射されて発生する反射像の様子を示しており、反射回数が偶数の反射像は透明カバー11の表面より後方に生じるので観察窓3内を通して観察されることはない。
【0017】
照明光の反射像は次数が大きくなればなるほど暗くなって、透明カバー11がアクリル樹脂の場合、反射像は7次までは目視することができるが、9次になるとよほど目を凝らさないと視認されず、通常の内視鏡観察では全く問題にならないことが分かった。
【0018】
図1は、9次の反射像が観察範囲に含まれて7次の反射像は含まれないように設定した内視鏡の先端部を示しており、B点を0点として、透明カバー11の表面に平行な方向をx、それと垂直な光軸と平行方向をyとする。
【0019】
すると、B点からx方向視野幅がDになる時のy方向視野位置yは、
y=D/tanθ′
である。
【0020】
したがって、m次の反射像が観察されない条件は、
D/tanθ′>mt
であり、7次反射像が視野範囲外に位置するためには、
D>7×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×t
であればよく、これによってゴースト発生を実用上防止することができる。
【0021】
また、9次反射像が視野範囲内に位置する条件は、
D<9×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×t
であり、これによって、照明窓4が観察窓3から離れすぎて配光ムラが大きくなることを防止することができる。
【0022】
このように構成された内視鏡の先端部においては、透明カバー11に何ら特別の構造を付加する必要がなく、しかも先端部本体2に対する透明カバー11の被覆方向に制限がないので、挿入部可撓管1に対する被覆シース10の取り付けが容易である。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、照明窓の表面における照明光通過領域と透明カバーの表面における観察光通過領域との間の最短距離をD、透明カバーの肉厚をt、透明カバーの屈折率をn、観察視野角(空気中)を2θとしたとき、照明光通過領域と観察光通過領域との間の最短距離Dが、D>7×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×tの範囲にあるようにすることにより、透明カバーの内面による照明光の反射像のうち7次までの反射像が観察範囲に入らないので、照明窓の表面と観察窓の表面とを同じ透明カバーで被覆しても、ゴーストのない良好な観察像を得ることができ、しかも構造が簡単でコスト高にならず透明カバーの取り付けが容易で使い易い等の格別の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の内視鏡の先端部の光学的説明のための線図である。
【図2】本発明の実施例の内視鏡の先端部の側面断面図である。
【図3】本発明の実施例の内視鏡の先端部の光学的説明のための線図である。
【図4】本発明の実施例の内視鏡の先端部の光学的説明のための線図である。
【符号の説明】
1 挿入部可撓管
2 先端部本体
3 観察窓
4 照明窓
5 対物光学系
10 被覆シース
11 透明カバー
D 照明窓の表面における照明光通過領域と透明カバーの表面における観察光通過領域との間の最短距離
t 透明カバーの肉厚
n 透明カバーの屈折率
2θ 観察視野角(空気中)
2θ′ 観察視野角(透明カバー内)

Claims (1)

  1. 照明光を射出する照明窓と光像をとり入れる観察窓とが挿入部の先端に並んで配置され、上記照明窓の表面と上記観察窓の表面とが一定の肉厚の同じ透明カバーで被覆された内視鏡の先端部において、
    上記照明窓の表面における照明光通過領域と上記透明カバーの表面における観察光通過領域との間の最短距離をD、上記透明カバーの肉厚をt、上記透明カバーの屈折率をn、観察視野角(空気中)を2θとするとき、
    上記照明光通過領域と観察光通過領域との間の最短距離Dが、
    D>7×tan〔sin-1{(1/n)×sinθ}〕×t、且つ、
    D<9×tan〔sin -1 {(1/n)×sinθ}〕×t
    の範囲にあることを特徴とする内視鏡の先端部。
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