JP4128415B2 - 直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝送方式として互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式( Orthogonal Frequency Division Multiplexing:以下OFDM方式と記す)の伝送信号であるOFDM信号を受信するOFDM方式伝送信号の受信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、無線装置の分野では、マルチパスフェージングに強い変調方式としてOFDM方式が脚光を集め、欧州や日本を初めとする各国の次世代のテレビ放送、FPU、無線LAN等の分野で多くの応用研究が進められている。またUHF帯の地上ディジタル放送も開発されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
OFDM方式は、図2に模式的に示す様に、一定の伝送帯幅W内に互いに直交する複数本、例えば約1400本の搬送波(キャリア)を設け、情報符号によって、指定キャリアを64QAM等の変調方式で変調して伝送する方式である。また、その時間波形は、図3に模式的に示す様に、有効シンボル期間Tuの信号の後部bを先頭部分b’にコピーして構成するガードインターバルTgを有している。この信号構造により、OFDM方式ではマルチパスに強い特性が得られる。
【0004】
しかし、OFDM方式といえども万能ではなく、更なる改善が要望されている。一方、携帯電話や自動車電話等における多重電波伝播環境や移動受信環境下での受信特性の改善には、ダイバーシティ受信方式が用いられている。そこで、このダイバーシティ受信方式のOFDM方式への適用の検討が進められている。
【0005】
ところで、ダイバーシティ方式は、1本の搬送波を変調して伝送するシングルキャリア方式に関しては詳しく検討され、既に選択合成、等利得合成、最大比合成などの合成方法が提案されている。この内、最大比合成は回路規模が大きくなるものの大きな改善効果が得られることが予想され、この合成方法をOFDM方式に適用する方法をシミュレーションにより検討した結果が、すでに報告されている(例えば、非特許文献2参照。)。
【0006】
図4は、この従来のダイバーシティ受信装置の回路構成図である。ただし、スペースの都合上、同一回路構成を有する複数のブランチ回路71,・・は太い破線枠で示し、その内、第hブランチ回路7hのみ、その内部回路構成を示した。
【0007】
第hブランチ回路7hにおいて、アンテナ1hで受信されたアンテナ信号zrfhは高周波数のRF回路部2hと中間周波数のIF回路部3hでベースバンドの信号にダウンコンバートされ、A/D変換回路4hでディジタル信号に変換される。変換して得られたディジタルのOFDM信号zhはFFT回路5hに入力され、DFT(離散フーリエ変換)を実施してキャリア信号列Zhに復調されて出力される。
【0008】
なお、以下、頭文字がz等の小文字の信号は時間系の信号を表し、頭文字がZ等の大文字の信号はDFT後の周波数系の信号を表すものとする。
【0009】
FFT回路5hから出力された第hブランチのキャリア信号列Zhは2つに分岐される。そして、第1の分岐は伝送路周波数応答算出回路6hに入力され、第2の分岐は合成重み乗算回路80に入力される。
【0010】
この内、伝送路周波数応答算出回路6hでは、内蔵されている参照周波数スペクトルと、入力されたキャリア信号列Zhの間に一定のピッチで挿入されているパイロット信号CPを比較する。そして、伝送路周波数応答特性(以下伝送路特性と記す)を算出し、得られた伝送路特性信号列Hh(k)を出力する。ここでkはキャリア番号を表すが、以下の説明では、特に必要でない場合は省略する。他のブランチのアンテナ11,・・で受信された信号に対しても、太い破線で囲む第hブランチ回路7hと同じ構成のブランチ回路で同様の信号処理を実施する。
【0011】
各ブランチ回路71,・・の伝送路周波数応答算出回路61,・・,6h,・・で算出された伝送路特性信号列H1,・・,Hh,・・は1つの合成重み算出回路90に集められて入力され、次式
Wh(k)=Hh(k)*/{Σh=1 m |Hh(k)|2 } (式1)
(ただし、mは全ブランチ回路の数)
により、第hブランチの第kキャリアのキャリア信号に対する合成重み値Wh(k)が算出される。なお、A*は複素信号Aの共役複素信号を表す。
【0012】
(式1)で算出される合成重み値Whが最大比合成法で説明される最大比になるためには、キャリア信号列Z1,・・,Zh,・・に混入している雑音レベルが等しいことが条件である(例えば、非特許文献3参照。)。
【0013】
合成重み算出回路90で算出された各合成重み値W1,・・,Wh,・・は、各ブランチのFFT回路51,・・,5h,・・から出力されるキャリア信号列Z1,・・,Zh,・・と共に合成重み乗算回路80に入力される。そして、次式により重み合成された新たなキャリア信号Zcom(k)が算出される。
Zcom(k)=Σh=1 m Zh(k)×Wh(k) (式2)
(ただし、mは全ブランチ回路の数)
この式で算出されたキャリア信号Zcomは、ダイバーシティの最大比合成のための合成重みの乗加算だけでなく、伝送路応答特性補正も実施されたキャリア信号になっている。
【0014】
この重み合成されたキャリア信号Zcomは復号回路100に入力され、情報符号を復号されて出力される。
【0015】
以上の信号処理により、複数のアンテナで受信された複数のアンテナ信号から、キャリア信号毎に最大比合成された高S/Nのキャリア信号が得られるようになる。この信号処理で得られるキャリア信号のS/Nはどのアンテナ信号から復調したキャリア信号より高いS/Nになるため、符号誤りの少ない良好な情報符号を復調することができる。
【0016】
【非特許文献1】
「映像情報メディア学会誌」1998年、Vol.52,No.11
【非特許文献2】
「情報映像メディア学会技術報告」Vol.25,No.50,PP13〜18(2001.7.30)
【非特許文献3】
奥村他「移動通信の基礎」コロナ社,p166
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このシミュレーション結果を実際のダイバーシティ受信装置、例えばマイクロ波帯のFPUに適用しようとすると、以下の問題が発生する。
すなわち、(式1)で算出される合成重み値Whが最大比合成法で説明される最大比になるためには、キャリア信号列Z1,・・,Zh,・・に混入している雑音レベルが等しいことが条件である。しかし、マイクロ波帯のFPUの場合、各ブランチのFFT回路51,・・5h,・・から出力されるキャリア信号列Z1,・・,Zh,・・に混入している雑音レベルは必ずしも等しくならないため、従来例で算出された合成重み値W1,・・,Wh,・・は最大比にならず、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される効果が必ずしも得られない問題が生じる。
【0018】
この問題が発生する原因は2つある。
【0019】
初めに、第1の原因を詳しく説明する。通常のFPUでは、アンテナで受信した高周波数のRF信号を増幅して中間周波数のIF信号にダウンコンバートする回路部にAGC回路が組み込まれており、変換されたIF信号レベルがほぼ一定になるように制御される。言い換えると、受信されたOFDM信号とRF回路部で発生する熱雑音等の雑音成分を加算した加算信号のレベルが一定になるように制御される。なお、以下、この雑音成分を「RF雑音成分」と記す。
【0020】
例えば、アンテナで受信するOFDM信号zrfの受信レベルが充分高いとする。この場合、IF信号に含まれる純粋のOFDM信号sifとRF雑音成分のレベルの関係は図5(a)の模式図の上段と下段の様な関係になる。そして、このIF信号から得られるキャリア信号列Zhに含まれる純粋のOFDM信号成分のレベルとRF雑音成分のレベルの関係は図5(b)の模式図の様な関係になる。
【0021】
これに対し、アンテナで受信した純粋のOFDM信号srfのレベルが、RF回路部で発生するRF雑音レベルを無視できない受信レベルに低下すると、IF信号レベルを一定に保つための不足分はRF雑音成分のレベルの増加で補われ、IF信号に含まれる純粋のOFDM信号sifとRF雑音成分のレベルの関係は、図6(a)の上段と下段の様な関係になる。そして、このIF信号から得られるキャリア信号列Zhに含まれる純粋のOFDM信号成分のレベルとRF雑音成分のレベルの関係は図6(b)の模式図の様な関係になる。
【0022】
一方、各ブランチのアンテナで受信されるOFDM信号のレベルは当然ブランチ毎に異なるので、各ブランチのIF信号に混入するRF雑音成分のレベル、従ってこのIF信号から復調されたキャリア信号列Zhに混入しているRF雑音成分のレベルもブランチ毎に変化する。そのため、(式1)で算出される合成重み値Whは最大比からずれ、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される効果が得られなくなる。
【0023】
次に、この問題が発生する第2の原因を詳しく説明する。一般に移動体通信では、以下に説明する多重反射によるフェージングが発生する。すなわち、移動体からあらゆる方向に射出されたOFDM信号の搬送波周波数は、その射出方向と移動体速度で決まる色々な大きさのドップラー周波数の影響を受けて偏移する。フェージングは、これらあらゆる方向に射出され、互いに異なる周波数偏移を受けたOFDM信号が同時に受信されるために発生する現象である。フェージングが発生すると、受信レベルが時々刻々と激しく変動する。1本の搬送波を変調して伝送するシングルキャリア方式の伝送装置のダイバーシティ受信装置では、この受信レベル低下に因るRF雑音に対するC/Nの低下を最小限に抑えることを主眼にしている。フェージングで発生する搬送波周波数の偏移の影響はランダムFM雑音として知られているが、重視する必要が無いとされている(例えば、非特許文献3参照。)。
【0024】
しかし、OFDM方式ではこの搬送波周波数の偏移を無視することができない。この原因は以下の理由による。すなわち、良く知られているように、OFDM方式でのキャリア信号間の分離は、各キャリア信号のキャリア周波数(搬送波周波数)が図7(a)の様に正しい周波数を有する場合に得られる直交性によって補償されている。この直交性は、図7(a)の第0キャリアを変調した時に得られる周波数分布を表すsinc関数が、第0キャリア以外のキャリア位置で0に成ることで表される。しかし、キャリア周波数がずれると、sinc関数の分布は図7(b)の様にずれて他のキャリア位置で0に成らなくなり、キャリア間の直交性がくずれる。そのため、キャリア間干渉雑音が発生する。
【0025】
OFDM方式では1400本等の多数本の搬送波(キャリア)を変調して伝送するため、1本1本からのキャリア間干渉雑音レベルが低くても、全てのキャリアからの干渉成分を合わせると大きな雑音レベルになる。しかも、反射の条件とドップラー周波数が同一であれば、キャリア間干渉雑音レベルは純粋のOFDM信号shのレベルに比例したレベルになり、受信レベルに無関係な一定のC/Nで発生する。
【0026】
逆に、受信されたOFDM信号の最大ドップラー周波数が例え同じでも、多重反射の状況が異なればキャリア間の干渉の様子が変わるため、キャリア間干渉雑音レベルが変わる。
【0027】
例えば、ある程度見通しがある方向を向いたアンテナから受信されたOFDM信号は、ほぼ同じ方向に射出された信号の加算信号になるため、一定のドップラー周波数の周りに集中した偏移を受けた信号になる。そのため、Lo周波数の同期制御によりこの周波数偏移が打ち消され、キャリア間干渉雑音レベルが低いOFDM信号が得られる。
【0028】
これに対し、見通しが無い方向を向いたアンテナで受信されたOFDM信号は、あらゆる方向に射出され反射された信号の加算信号になるため、広く広がった周波数偏移を受けた信号になる。そのため、Lo周波数の同期制御により打ち消すこともできず、キャリア間干渉雑音レベルが高いOFDM信号になる。
【0029】
そのため、キャリア間干渉雑音レベルはブランチ毎に異なり、(式1)で算出される合成重み値Whは最大比からずれ、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される効果が得られなくなる。
【0030】
本発明の目的は、OFDM方式伝送信号の受信装置においても、最大比合成法で期待される性能を有するダイバーシティ受信が可能になる直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置を提供することにある。
【0031】
また本発明のダイバーシティ受信装置のうち、雑音レベル検出回路は、ダイバーシティ受信でない通常のOFDM方式伝送信号の受信装置に適用でき、適用すると、伝送路状態を視覚的に監視することができる。
【0032】
したがって本発明の他の目的は、雑音レベルを視覚的に見ることが可能な直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置を提供することにある。
【0033】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記ディジタルOFDM信号あるいは前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に混入している雑音レベルあるいは前記キャリア信号列に混入している雑音レベルを検出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路とを、一つのブランチ回路に有する複数のブランチ回路と、該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0034】
本発明は、上記に記載の直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置において、前記雑音レベル検出回路が、前記A/D変換回路で変換された前記ディジタルOFDM信号を入力し、前記ディジタルOFDM信号が有する時間的に同一の波形の信号部分同士の相関値を算出して相関信号として出力するG相関算出回路と、該G相関算出回路から出力される相関信号を入力し、前もって定める一定期間の相関信号の積分値を、前記ディジタルOFDM信号から雑音成分を除いた純粋のディジタルOFDM信号の電力値として出力するOFDM信号電力算出回路と、該OFDM信号電力算出回路から出力される前記電力値Pを入力し、前記受信装置のAGC回路の目標信号電力値との差の平方根あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル算出回路からなることを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0035】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号を有しないキャリア(NULLキャリア)を2本以上有するキャリア構造のOFDM信号であり、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内の複数本のNULLキャリア、あるいは複数のシンボルに跨る複数本のNULLキャリアで検出されるキャリア信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路とを、一つのブランチ回路に有する複数のブランチ回路と、該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0036】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号空間上の1方向にのみ変調される一方向変調キャリア、例えばパイロット信号等を有するキャリア構造のOFDM信号であり、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内に挿入されている一方向変調キャリアの変調方向に垂直な方向の成分の信号、あるいは複数のシンボルに跨る複数本の一方向変調キャリアの変調方向に垂直な方向の成分の信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路とを、一つのブランチ回路に有する複数のブランチ回路と、該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0037】
本発明は、上記いずれか一つに記載の受信装置において、前記合成重み算出回路から出力される各ブランチ回路の合成重み値で構成される合成重み信号、あるいは各ブランチ回路の各キャリア毎に複数シンボルの合成重み値を平均して得られた値で構成される合成重み信号を装置の外部に出力する外部出力端子を設ける、あるいはアンテナ重み信号を表示する表示部を備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0038】
本発明は、上記いずれか一つに記載の受信装置において、前記合成重み算出回路から出力される各ブランチの合成重み値の加算値を算出し、この加算値あるいはその時間平均値を各ブランチのアンテナ重み信号として装置の外部に出力する外部出力端子、あるいはアンテナ重み信号を表示する表示部を備えたことを特徴と直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0039】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記ディジタルOFDM信号あるいは前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に混入している雑音レベルあるいは前記キャリア信号列に混入している雑音レベルを検出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路の出力に接続された外部出力端子あるいは表示部とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0040】
本発明は、上記記載の直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置において、前記雑音レベル検出回路が、前記A/D変換回路で変換された前記ディジタルOFDM信号を入力し、前記ディジタルOFDM信号が有する時間的に同一の波形の信号部分同士の相関値を算出して相関信号として出力するG相関算出回路と、該G相関算出回路から出力される相関信号を入力し、前もって定める一定期間の相関信号の積分値を、前記ディジタルOFDM信号から雑音成分を除いた純粋のディジタルOFDM信号の電力値として出力するOFDM信号電力算出回路と、該OFDM信号電力算出回路から出力される前記電力値Pを入力し、前記受信装置のAGC回路の目標信号電力値との差の平方根あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル算出回路からなることを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0041】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号を有しないキャリア(NULLキャリア)を2本以上有するキャリア構造のOFDM信号であり、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内の複数本のNULLキャリア、あるいは複数のシンボルに跨る複数本のNULLキャリアで検出されるキャリア信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路の出力に接続された外部出力端子あるいは表示部とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0042】
本発明は、互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号空間上の1方向にのみ変調される一方向変調キャリア、例えばパイロット信号等を有するキャリア構造のOFDM信号であり、アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内の複数本のNULLキャリア、あるいは複数のシンボルに跨る複数本のNULLキャリアで検出されるキャリア信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、該雑音レベル検出回路の出力に接続された外部出力端子あるいは表示部とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置である。
【0043】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施の形態によるダイバーシティ受信装置の構成を図1に示す。ただし、図4の従来例同様に、同一回路構成を有する複数のブランチ回路111,・・は太い破線枠で示し、その内、第hブランチ回路11hのみ、その内部回路構成を示した。なお、アンテナの本数は任意で良い。
【0044】
図1の回路構成とその動作は、点模様を施した雑音レベル検出回路12hと雑音レベル比算出回路13hと雑音レベル同一化回路14hの3つの回路を新たに設けた点を除けば、図4の従来の回路と同一である。そこで以下、この新設した回路の動作とその効果を中心に説明する。
【0045】
従来の回路と同様にしてA/D変換回路4hでディジタル信号に変換して得られたOFDM信号zhは2つに分岐され、その一方は従来同様にFFT回路5hに入力され、他方は新たに設けた雑音レベル検出回路12hに入力される。雑音レベル検出回路12hは、OFDM信号zhに混入しているRF雑音成分のレベルnhを検出する回路である。
【0046】
図8は、雑音レベル検出回路12hの内部回路構成を示したものである。
雑音レベル検出回路12hに入力されたOFDM信号zhはG相関算出回路200に入力される。この回路は、有効シンボル期間Tuだけ遅延するTu遅延回路200aと複素乗算回路200b、及びガードインターバル期間長Tgの乗算結果を加算する加算回路200cで構成され、図3のOFDM信号のbの部分とb’の部分の波形が同一であることを利用し、その相関を算出する回路である。
【0047】
更に詳しく説明すると、雑音レベル検出回路12hに入力された図9(a)のOFDM信号と1有効シンボル期間遅延された図9(b)の信号の、同一タイミングの信号同士の複素乗算s(t)×s(t−Ts)*を実行して得た図9(c)の信号を、ガードインターバルと同じ期間幅である図9(d)に模式的に示す範囲で加算した値Σ{s(t)×s(t−Ts)*}を順次算出する。ここで、s*は複素信号sの共役複素信号を表す。この様にして算出された相関信号の波形を図9(e)に示す。
【0048】
このように、G相関算出回路200で算出される相関信号の波形は、シンボルの境界位置にピークを持つ三角波形になるため、このシンボルの境界位置を検出するために、OFDM方式の受信装置で頻繁に用いる回路である。
【0049】
受信されたOFDM信号が主波のみの場合、図10に示す相関信号の波形は、底辺がガードインターバル長Tgの2倍の幅を持つ三角波形になる。また、そのピーク値は、OFDM信号zhから雑音を除いた純粋のOFDM信号shのパワーPsに比例した値になる。従って、この相関信号の斜線部分の値を積分すると、やはり純粋のOFDM信号shのパワーPsに比例した値が得られる。
【0050】
図11(a)の様に主波と遅延波の2波が受信された場合の相関信号波形は、図11(c)の様に、図11(b)に示す主波と遅延波に対する2つの三角波形を加算した波形になる。図11(c)は、遅延波が、復調可能な最大の遅延時間Tg遅延している場合の相関波形を示したものであり、この底辺3×Tgの四角形の斜線部の値を積分すると、やはり主波と遅延波からなる純粋のOFDM信号shのパワーに比例した値が得られる。なお、詳細な説明は省略するが、一般に、この3×Tg期間の相関信号の積分値は、DQPSK等の差動検波を用いるOFDM方式で復調可能な信号成分のパワーに比例した値になる。また、更に多くの遅延波が含まれる場合においても、得られる相関信号の積分値は、純粋のOFDM信号shのパワーに比例した値になる。
【0051】
図8のOFDM信号電力算出回路201はこの期間3×Tgの相関信号の積分演算を実施する回路であり、積分値を、入力されたOFDM信号zhに含まれる純粋のOFDM信号shのパワー値Psとして出力する。
このパワー値Psは雑音レベル算出回路202に入力される。そして、雑音が無い時に予想されるパワー値P0との差の平方根√(P0−Ps)、あるいはその近似値が算出され、第hブランチの雑音レベルnhとして出力される。
【0052】
図1の雑音レベル検出回路12hから出力された雑音レベルnhは雑音レベル比算出回路13hに入力され、前もって定める基準となる雑音レベルn0との比である雑音レベル比Rnh=n0/nhを算出して出力する。ただし、受信レベルが充分高いとnh≒0となり、比n0/nhの値は無限大に発散してしまうため、この比n0/nhが一定の上限値、例えば値1を越える時は、比n0/nhの値をこの上限値1に置き換え、雑音レベル比Rnhの値として出力する。
【0053】
雑音レベル比算出回路13hから出力された雑音レベル比Rnhは、FFT回路5hから出力されたキャリア信号列Zhと共に雑音レベル同一化回路14hに入力される。雑音レベル同一化回路14hは乗算回路であり、キャリア信号列Zhを雑音レベル比Rnh倍されたキャリア信号Zh’=Zh×Rnhが出力される。
【0054】
ところで、雑音レベルnhは、元々第hブランチのOFDM信号zhに含まれているRF雑音レベルを算出したものであり、キャリア信号Zhにはこの雑音レベルnhに比例したレベルNh=α・nhのRF雑音成分が混入している。従って、このキャリア信号ZhをRnh=n0/nh倍したキャリア信号Zh’に含まれる雑音のレベルはα・nh×n0/nh=α・n0となり、前もって設定した基準となる雑音レベルn0に比例した一定値になる。ただし、各ブランチのAGC回路は、その目標とする信号レベルが全て同一になるように設定しておくものとする。
【0055】
図1の回路では、この様にして雑音レベルを同一化したキャリア信号Zh’を、図4の従来の回路と同様にして合成する。
【0056】
この時、合成される全てのブランチのキャリア信号Z1h’,・・,Zh’,・・に含まれる雑音のレベルは一定値α・n0になるので、合成重み乗算回路80で合成されたキャリア信号Zcomは最大比で合成された信号になり、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能を得ることができる。
【0057】
この様に、本実施の形態によるダイバーシティ受信装置では、合成される各ブランチの信号に含まれる雑音レベルが同一になるため、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能が得られるOFDM方式伝送信号のダイバーシティ受信装置を得ることができる。
【0058】
本発明の第2の実施の形態によるダイバーシティ受信装置の構成を図12に示す。本実施の形態では、OFDM信号zhに混入しているRF雑音成分のレベルだけでなく、キャリア間干渉雑音も考慮された各ブランチの雑音レベルが同一レベルになるように調整した後、最大比で合成する。
【0059】
そのため、図1の回路と異なり、FFT回路5hの出力信号を雑音レベル検出回路16hに入力し、送信装置で図13の様にOFDM信号のキャリア構造の間に挿入された信号の無いNULLキャリアを用いて、キャリア信号のRF雑音成分とキャリア間干渉雑音からなる全雑音成分のレベルを検出するように構成している。
【0060】
送信装置におけるNULLキャリアの挿入は、伝送する情報符号で64QAM変調されたデータキャリアと制御信号で変調されたキャリアTMCCと補助符号で変調されたキャリアACを分配回路でOFDM信号の指定キャリア位置に分配する際、この間に信号のないNULLキャリアを挿入することで実施する。あるいはACを無信号にすることにより、信号のないNULLキャリアを作成するようにしても良い。分配回路から出力された信号は、その後IDFT(逆フーリエ変換)され、ガードインターバルを挿入された後、D/A変換される。そしてIF回路とRF回路で高周波の伝送信号に変換され、アンテナから送信される。
【0061】
新たな雑音レベル検出回路16hの内部回路構成を図14に示す。図12のFFT回路5hから出力され雑音レベル検出回路16hに入力されたキャリア信号Zhは、図14のNULLキャリア選択回路203に入力され、図13のNULLキャリアが選択される。
【0062】
図13から明らかなように、このNULLキャリアの信号は、波線で示すRF雑音とキャリア間干渉雑音のみからなり、信号成分が含まれていない。そのため、このNULLキャリアの信号のパワーサムを算出することにより、受信された信号のキャリア信号Zhに混入している全ての種類の雑音が加算された平均レベルを検出することができる。
【0063】
図14のNULLパワー算出回路204はこのパワーサムを算出する回路で、選択された一定本数のNULLキャリア信号Zh(knull)の絶対値の加算平均値の平方根√{(Σknull |Zh(knull)|2)/(加算するキャリア本数)}が算出される。ここで、knullはNULLキャリアのキャリア番号を表す。算出された値は、キャリア間干渉雑音も含めた全雑音レベルNhとして出力される。
【0064】
精度の高い雑音レベル値を算出するには、用いるNULLキャリアが帯域の広い範囲に分布していることが望ましい。また、加算する本数は少なくとも2本以上で多いほど算出する値の精度を上げることができる。1シンボルに挿入されるNULLキャリアの本数が少ないときは、複数シンボルのNULLキャリアの信号を加算して算出するようにしてもよい。
【0065】
図12の雑音レベル検出回路16hから出力された雑音レベルNhは雑音レベル比算出回路17hに入力され、図1の回路と同様にして雑音レベル比RNh=N0/Nhが算出される。ただし、雑音レベルN0は雑音レベルNhに対する基準となる雑音レベルであり、基準となる雑音レベルをn0からN0に変更する点を除けば、図1の雑音レベル比算出回路13hと同じ回路構成でよい。
【0066】
雑音レベル比算出回路17hから出力された雑音レベル比RNhは、FFT回路5hから出力されたキャリア信号列Zhと共に雑音レベル同一化回路14hに入力され、キャリア信号列Zhを雑音レベル比RNh倍されたキャリア信号Zh’=Zh×RNhが出力される。
【0067】
ところで、第hブランチのキャリア信号ZhにはレベルNhの雑音が混入している。そのため、このキャリア信号ZhをRNh=N0/Nh倍したキャリア信号Zh’に含まれる雑音のレベルはNh×N0/Nh=N0となり、前もって設定した基準となる雑音レベルN0の一定値になる。
【0068】
図12の回路では、この様にして、雑音レベルを同一化したキャリア信号Zh’を図4の従来の回路と同様にして合成する。
【0069】
この時、合成される各ブランチのキャリア信号Z1’,・・,Zh’,・・ではキャリア間干渉雑音も含めた全雑音レベルが一定値N0となるので、ダイバーシティ合成回路80で合成されたキャリア信号Zcomは最大比で合成された信号になり、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能を得ることができる。
【0070】
この様に、本実施の形態によるダイバーシティ受信装置では、合成される各ブランチの信号に含まれる雑音レベルがキャリア間干渉雑音も含めて同一になるため、移動体通信時においても最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能が得られるOFDM方式伝送信号のダイバーシティ受信装置を得ることができる。
【0071】
本発明の第3の実施の形態によるダイバーシティ受信装置の構成を図15に示す。このダイバーシティ受信装置は、第2の実施の形態の図12の回路における雑音レベルの同一化をフィードバック回路で実現するものである。
【0072】
第2の実施の形態と異なり、本実施の形態では、FFT回路5hの出力信号Zhを雑音レベル同一化回路14hで一定倍して得た信号Zh’を、雑音レベル検出回路16hに入力する。そして、第2の実施の形態と同様にしてNULLキャリアを用いて雑音レベルNhを検出し、雑音レベル比算出回路17hで雑音レベル比RNh=N0/Nhを算出する。
【0073】
算出した雑音レベル比RNhは新たに設けたレベル誤差算出回路18hに入力され、基準に設定した雑音レベルN0と算出した雑音レベルNhが等しいことを表す値「1」からのずれ量ΔRNh=1−RNhが算出され出力される。
【0074】
レベル誤差算出回路18hから出力されたずれ量ΔRNhは積分回路19hに入力され、1より小さな係数β倍された後、内部に記憶されている増幅率Mh’に加算され、新たな増幅率Mh=Mh’+β×ΔRNhを算出し出力する。
【0075】
積分回路19hから出力された増幅率Mhは、FFT回路5hから出力されたキャリア信号列Zhと共に雑音レベル同一化回路14hに入力される。そして、キャリア信号列Zhを増幅率Mh倍されたキャリア信号Zh’=Zh×Mhが算出され出力される。
【0076】
この回路では、雑音レベル同一化回路14hから出力されたキャリア信号Zh’に混入している雑音レベルを検出し、そのレベルが基準に設定した雑音レベルN0より大きい時は増幅率Mhが下がるように制御され、逆にN0より小さい時は増幅率が大きくなるように制御される。そのため、雑音レベル同一化回路14hから出力されたキャリア信号Zh’の大きさは、最終的に、それに混入している雑音レベルが基準に設定した雑音レベルN0になる大きさに収束する。
【0077】
その結果、合成される全てのブランチのキャリア信号Z1’,・・,Zh’,・・に含まれる雑音のレベルは一定値N0となるので、ダイバーシティ合成回路80で合成されたキャリア信号Zcomは最大比で合成された信号になり、最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能を得ることができる。
【0078】
この様に、本実施の形態によるダイバーシティ受信装置では、合成される各ブランチの信号に含まれる雑音レベルがキャリア間干渉雑音も含めて同一になるため、移動体通信時においても最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能が得られるOFDM方式伝送信号のダイバーシティ受信装置を得ることができる。
【0079】
本発明の第4の実施の形態によるダイバーシティ受信装置を説明する。このダイバーシティ受信装置の回路構成は、基本的には第2の実施の形態の図12の回路構成と同一である。
【0080】
異なる点は、第2の実施の形態では、雑音レベルを、OFDM信号のキャリア構造の間に挿入されたNULLキャリアを用いて検出しているのに対し、本実施の形態では、OFDM信号のキャリア構造の間に挿入された信号空間上の1方向にのみ変調される一方向変調キャリア、例えば図16の様に信号空間のI軸(実数軸)方向にのみ変調されるパイロット信号CPを利用して検出する点にある。
【0081】
この方法では、雑音は信号空間上で等方的に混入されるのに対し、信号はI軸方向等、一方向にのみ変調され、垂直方向には信号成分が無いことを利用する。すなわち、信号の変調方向に垂直な方向の成分の信号Qh(kp)の絶対値の平均値の平方根値√{(Σkp|Q(kp)|2/(加算キャリア本数))あるいはその近似値(ただし、kpは一方向変調キャリアのキャリア番号)を算出することにより、雑音レベルを検出する。
【0082】
この検出方法から分かるように、一方向変調キャリアの変調方向はI軸方向に限らず、虚数軸(Q軸)方向あるいはその他の任意の方向であっても良い。また、その変調方法はBPSK,DBPSK等、一方向にのみ変調される方式であれば如何なる変調方式でも良い。
【0083】
したがって、本実施の形態では、図12の雑音レベル検出回路16hの内部回路構成が、図14の回路構成から図17の回路構成に変わる。図17の回路構成は、選択されるキャリアがNULLキャリアから一方向変調キャリアに変わった一方向変調キャリア選択回路205と、新たに設けられた垂直方向成分算出回路206と、NULLパワーから垂直成分パワーに変わった垂直成分パワー算出回路207とからなる。
【0084】
本実施の形態における図12の回路の動作方法は同一なので説明を省略する。
【0085】
この様に、本実施の形態によるダイバーシティ受信装置においても、第2の実施の形態と同様に、合成される各ブランチの信号に含まれる雑音レベルはキャリア間干渉雑音も含めて同一になるため、移動体通信時においても最大比合成法のダイバーシティ受信装置で期待される性能が得られるOFDM方式伝送信号のダイバーシティ受信装置を得ることができる。
【0086】
本実施の形態で用いた雑音レベル検出回路は、第3の実施の形態の図14の回路にも適用できることは明らかである。
【0087】
なお、以上の実施の形態では何れの場合も1つのシンボル内で信号のレベルが変わらないように、雑音レベル同一化回路14hで乗算する値の変更は、連続する2シンボルのキャリア信号の境界領域内で実施するのが好ましいのは言うまでもない。
【0088】
また、図1と図14の回路では、雑音レベル同一化回路14hをFFT回路5hより前段に挿入しても、同様の効果が得られるのは言うまでもない。
【0089】
また、以上の実施の形態では何れの場合も、1つのシンボル内の信号から算出された各ブランチの合成重み値Wh(k)を用いて重み合成するものとして説明したが、各ブランチの各キャリア毎に、複数シンボルの合成重み値Wh(k)の平均値を算出して雑音を低減した後、算出した平均値をWh(k)の代わりに用いて重み合成された新たなキャリア信号Zcom(k)を算出するようにしても良い。
【0090】
また、図1の雑音レベル検出回路12hとして相関信号を用いて評価する場合のみ説明したが、OFDM信号zhの遅延波成分の分布とレベルが検出できる信号を用いて算出すればよいのは明らかである。例えば、OFDM信号に挿入されているパイロット信号を周波数分析する等の方法で算出した遅延プロファイル信号を用いて算出するようにしても良い。この場合、遅延プロファイルの振幅値が各遅延波のOFDM信号成分の電力値に比例するときは、相関信号の波形の総和(面積)の代わりに遅延プロファイル信号の波形の総和(面積)を用いて同様の演算を実施するようにすれば良い。
【0091】
また、図1の右下隅に例示する様に、合成重み算出回路90に合成重み信号算出回路91を接続し、その出力を外部出力端子92に接続し、外部出力端子92に表示装置93を接続する。
【0092】
ここで、合成重み算出回路90を、各ブランチの合成重み値Wh(k)自身を合成重み信号として出力するあるいは各ブランチの各キャリア毎に複数シンボルの合成重み値Wh(k)の平均値を算出し、合成重み信号として出力する回路にすれば、表示装置93で、例えば図18の様に視覚的に観測しながら各ブランチの各キャリア信号の重要度を把握できるようにすることにより、ダイバーシティの効果を確認しながら実運用ができる、使い勝手が良好なダイバーシティ受信装置を得ることができる。この場合、ダイバーシティ受信装置自身に表示装置を内蔵し、容易に観測できるようにするのが望ましい。
【0093】
また、合成重み算出回路90を、各ブランチの合成重み値Wh(k)の加算値ΣkWh(k)を算出すると共に、この加算値あるいはその時間平均値を出力する回路にすれば、シンクロスコープ等の表示装置93で、例えば図19の左図あるいは右図の様に視覚的に観測できるようにすることにより、使用頻度の低いアンテナを把握してその方向を調整し直す等の実運用ができる、使い勝手が良好なダイバーシティ受信装置を得ることができる。この場合、ダイバーシティ受信装置自身に表示装置を内蔵し、容易に観測できるようにするのが望ましい。
【0094】
次に、本発明の第5の実施の形態による受信装置の構成を図20に示す。図1の複数のブランチ回路のうち単一のブランチ回路11hのみと復号回路100を有する。また、単一のブランチ回路11hは、単一のアンテナ1hに対するRF回路からFFT回路5hで構成されるOFDM復調回路部と、雑音レベル検出回路12hあるいは16hのみで構成され、雑音レベル検出回路12hあるいは16hの出力は出力端子92と表示装置93に接続されている。
【0095】
ここで、雑音レベル検出回路12hは、図1および図8と同じ構成である。また雑音レベル検出回路16hは図12及び図14と同じ構成でも良い。また、図12および図17と同じ構成でも良い。
【0096】
本実施の形態による受信装置においては、雑音レベル検出回路を備えたので、伝送路の状態を視覚的に見ることが可能なOFDM方式伝送信号の受信装置を得ることができる。
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、OFDM方式伝送信号の受信装置においても、最大比合成法で期待される性能を有するダイバーシティ受信が可能になる直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置を得ることができる。また本発明によれば、雑音レベルを視覚的に見ることが可能な直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態のOFDM方式伝送信号の受信装置の回路構成図である。
【図2】OFDM方式伝送信号のキャリア構造を説明する図である。
【図3】OFDM信号の構造を説明する図である。
【図4】従来のOFDM方式伝送信号のダイバーシティ受信装置の回路構成図である。
【図5】従来のダイバーシティ受信装置の問題に関する第1の説明をするための図である。
【図6】従来のダイバーシティ受信装置の問題に関する第2の説明をするための図である。
【図7】従来のダイバーシティ受信装置の問題に関する第3の説明をするための図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態のOFDM方式伝送信号の受信装置の雑音レベル検出回路の回路構成図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態における雑音レベル検出回路の動作の第1の説明をするための図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態における雑音レベル検出回路の動作の第2の説明をするための図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態における雑音レベル検出回路の動作の第3の説明をするための図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態のOFDM方式伝送信号の受信装置の回路構成図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態で用いるOFDM信号の構造を示す図である。
【図14】本発明の第2の実施の形態における雑音レベル検出回路の回路構成図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態のOFDM方式伝送信号の受信装置の回路構成図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態の雑音レベル検出方法を説明する図である。
【図17】本発明の第4の実施の形態の雑音レベル検出回路の回路構成図である。
【図18】各キャリアにおける各ブランチの重み値の表示例を示す図である。
【図19】各ブランチの重み値の表示例を示す図である。
【図20】本発明の第5の実施の形態のOFDM方式伝送信号の受信装置の回路構成図である。
【符号の説明】
11,1h:アンテナ、2h:RF回路部、3h:IF回路部、4h:A/D変換回路、5h:FFT回路、6h:伝送路周波数特性算出回路、71,7h,111,11h,151,15h:ブランチ回路、80:合成重み乗算回路、90:合成重み算出回路、91:合成重み信号算出回路、92:外部出力端子、93:表示装置、100:復号回路、12h,16h:雑音レベル検出回路、13h,17h:雑音レベル比算出回路、14h:雑音レベル同一化回路、18h:レベル誤差算出回路、19h:積分回路、200:G相関算出回路、200a:Tu遅延岐路、200b:複素乗算回路、200c:加算回路、201:OFDM信号電力算出回路、202:雑音レベル算出回路、203:NULLキャリア選択回路、204:NULLパワー算出回路、205:一方向変調キャリア選択回路、206:垂直方向成分算出回路、207:垂直方向成分パワー算出回路。
Claims (4)
- 互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、
一つのブランチ回路それぞれが、
アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、
前記ディジタルOFDM信号あるいは前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に混入している雑音レベルあるいは前記キャリア信号列に混入している雑音レベルを検出して出力する雑音レベル検出回路と、
該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、
該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、
該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路と、を有する複数のブランチ回路と、
該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置。 - 請求項1に記載の直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置において、前記雑音レベル検出回路が、
前記A/D変換回路で変換された前記ディジタルOFDM信号を入力し、前記ディジタルOFDM信号が有する時間的に同一の波形の信号部分同士の相関値を算出して相関信号として出力するG相関算出回路と、
該G相関算出回路から出力される相関信号を入力し、前もって定める一定期間の相関信号の積分値を、前記ディジタルOFDM信号から雑音成分を除いた純粋のディジタルOFDM信号の電力値として出力するOFDM信号電力算出回路と、
該OFDM信号電力算出回路から出力される前記電力値を入力し、前記受信装置のAGC回路の目標信号電力値との差の平方根あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル算出回路からなることを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置。 - 互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、
前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号を有しないキャリア(NULLキャリア)を2本以上有するキャリア構造のOFDM信号であり、
一つのブランチ回路それぞれが、
アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、
前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内の複数本のNULLキャリア、あるいは複数のシンボルに跨る複数本のNULLキャリアで検出されるキャリア信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、
該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、
該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、
該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路と、を有する複数のブランチ回路と、
該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置。 - 互いに直交する複数本の搬送波(キャリア)で情報符号を伝送する直交周波数分割多重変調方式(OFDM方式)の伝送信号であるOFDM信号を受信する受信装置であって、
前記OFDM信号が、その帯域内の互いに離れたキャリア位置に、信号空間上の1方向にのみ変調される一方向変調キャリア、例えばパイロット信号等を有するキャリア構造のOFDM信号であり、
一つのブランチ回路それぞれが、
アンテナで受信しA/D変換回路でディジタル信号に変換して得られたディジタルOFDM信号をDFT(離散フーリエ変換)し、キャリア信号列に復調して出力するFFT回路と、
前記キャリア信号列を入力し、同じシンボル内に挿入されている一方向変調キャリアの変調方向に垂直な方向の成分の信号、あるいは複数のシンボルに跨る複数本の一方向変調キャリアの変調方向に垂直な方向の成分の信号の絶対値の2乗の平均値の平方根値あるいはその近似値を算出して出力する雑音レベル検出回路と、
該雑音レベル検出回路から出力される前記雑音レベルを入力し、基準となる雑音レベルに対する雑音レベル比を算出して出力する雑音レベル比算出回路と、
該雑音レベル比算出回路から出力される前記雑音レベル比を入力し、前記キャリア信号列を前記雑音レベル比倍したキャリア信号を出力する雑音レベル同一化回路と、
該雑音レベル同一化回路から出力される前記キャリア信号列を入力し、前記ディジタルOFDM信号に対する伝送路周波数応答特性を算出して出力する伝送路応答特性算出回路と、を有する複数のブランチ回路と、
該複数のブランチ回路の各ブランチ雑音レベル同一化回路から出力される複数の前記キャリア信号列と、各伝送路応答特性算出回路から出力される伝送路周波数応答特性を入力し、各キャリア信号列に一定の重み信号を乗算してダイバーシティ合成と伝送路周波数応答特性補正を実施して出力するダイバーシティ合成回路とを備えたことを特徴とする直交周波数分割多重変調方式伝送信号の受信装置。
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