JP4126217B2 - ポリエチレン厚膜被覆鋼管の製造方法及びポリエチレン厚膜被覆鋼管 - Google Patents

ポリエチレン厚膜被覆鋼管の製造方法及びポリエチレン厚膜被覆鋼管 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、直径が15mm〜600mmで、その外面に、従来よりも厚い、4.7〜7.2mmのポリエチレンの被覆層が形成された、ポリエチレン被覆鋼管の製造方法と該ポリエチレン被覆鋼管に関する。
【0002】
【従来の技術】
直径が15mm〜600mmでその外面を厚さが0.6〜3.0mmのポリエチレンで被覆した鋼管は、例えばガス供給用配管として地下に埋設して用いられている。この際鋼管はポリエチレンの被覆により十分な耐食性を備えている。このため、通常の条件では地下に埋設しても、長期間に亘って使用を継続する事ができる。しかしながら、このガス供給用配管が埋設されている近傍に落雷が発生すると、地下に埋設されている鋼管の上記のポリエチレンの被覆は大きく損壊する。
【0003】
本発明者等は、ポリエチレンの被覆厚さを変えて一連の鋼管を作成し、雷インパルス破壊試験装置を用いてシュミレーションによりインパルス耐電圧調査を行った。その結果、本発明者等はポリエチレンの被覆厚さを4.7mm〜7.2mmにすると、通常の強さの落雷ではポリエチレンの被覆は損壊しないという新たな知見を得た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
既に述べた如く、従来のポリエチレンの被覆厚さは0.6〜3.0mmである。上記のインパルス耐電圧調査で本発明者等はポレエチレンの厚さが4.7〜7.2mmのものを格別に試作し、使用した。しかしこの試作において、ポリエチレンの厚さを4.7〜7.2mmにすると、ポリエチレンの被覆が厚過ぎるために、ポリエチレンの肉厚のバラツキが著しく大きくなり、またポリエチレンの被覆層の外面には多数の皺状欠陥が発生した。
【0005】
本発明は、これ等の問題点を解決するもので、即ち、直径が15〜600mmでその外面には4.7〜7.2mmのポリエチレンの被膜が形成され、且つポリエチレンの肉厚のバラツキが小さく、また外面には皺状欠陥がない、ポリエチレン被覆鋼管の製造方法と該ポリエチレン被覆鋼管の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
図1は直径D0が15〜600mmの鋼管1の外面にポリエチレン4を被覆する際に用いる、汎用のクロスヘッドダイの縦断面の説明図である。ポリエチレンを被覆する鋼管1はクロスヘッドダイに設けられた内孔2内をV0m/分の速度で矢印V0方向に通材する。クロスヘッドダイにはマニホールド3が設けられている。溶融ポリエチレン4をマニホールド3内に充満させ、外圧Pで加圧することにより、溶融ポリエチレン4はリング状吐出孔5からV1m/分の速度で押出され、鋼管1の外面に達し、厚さがtmmのポリエチレンの被膜を鋼管1の外面に形成する。
【0007】
既に述べた如く、従来のポリエチレンの被膜の厚さtは0.6〜3.0mmである。この際には厚さが均一なポリエチレン被膜となり、また表面に皺状欠陥がない鋼管が得られる。
【0008】
一方本発明ではポリエチレンの被膜厚さが4.7〜7.2mmの厚膜被覆鋼管を製造する。しかしながら、格別の工夫を行わないで、図1で例えば外圧Pを大きくして被膜の厚さをtを4.7〜7.2mmにすると、鋼管1の表面の溶融ポリエチレン4は、溶融物であるため上部から鋼管の表面を伝わって下部に移動し、鋼管の上部のポリエチレンは厚さtが小さくなって薄くなり、鋼管の下部のポリエチレンは厚さtが大きくなって厚くなり、ポリエチレンの厚さが不揃いな鋼管となる。また溶融ポリエチレンの厚さが不揃いな鋼管は、厚肉の部分のポリエチレンの表面に皺状欠陥が発生する。また鋼管の下部に移動した溶融ポリエチレンは鋼管の下部から更に下方に垂れ下がり、操業が困難になるという問題点が発生する。
【0009】
本発明では鋼管1をV0m/分で通過させ、出側で該鋼管1の外周を囲むリング状吐出孔5から加熱溶融したポリエチレンをV1m/分で該鋼管1の外面に吐出するクロスヘッドダイを用いる。
【0010】
本発明ではポリエチレンとして、JIS K 6760で測定して密度が0.937〜0.965g/cm3でかつMFRが0.15〜0.32、引張り破壊強さが2.16KN/cm2のものを用いる。かつJIS K 7206 でビカット軟化点温度が85℃以上であり、JIS K 7215で硬さがデュロメーターで55〜70のものを用いる。かつ分子量分布Mw/Mnが20〜30で230℃の時の溶融張力が1.5〜2.5gのものを用いる。
【0011】
本発明ではこのポリエチレンを200〜250℃に加熱溶融し、これをリング状吐出孔の内径D1を鋼管1の外径D0に対してD1/D0=1.1〜1.5にし、かつ吐出孔5のリップh(リング状吐出孔のリングの外径−D1)=10〜13mmにしたクロスヘッドダイのリング状吐出孔5から、通過する100〜180℃の外径が15〜600mmの該鋼管の外面に、ドローダウンレイシオV0/V1=2.3〜3.7にして吐出し、厚さが4.7〜7.2mmのポリエチレン被膜を形成する。以下に本発明の特定の理由を説明する。
【0012】
本発明では、密度が0.937〜0.965g/cm3のポリエチレンを用いる。従来の厚さが0.6〜3.0mmのポリエチレンの被膜皮膜を形成する場合は、密度が0.915〜0.965g/cm3のポリエチレンを使用していた。密度が0.937〜0.965g/cm3のポリエチレンは高密度ポリエチレンに属するもので、化学的に安定で機械強度も強く、更に電気絶縁性にも優れている。
【0013】
本発明では230℃の溶融張力が1.5g以上〜2.5g以下のポリエチレンを用いる。従来の厚さが0.6mm〜3.0mmのポリエチレンの被膜を形成する場合は230℃の溶融張力が0.5〜5gのポリエチレンを用いていた。本発明者は、D1/D0が異なる各サイズの鋼管に溶融張力の異なるポリエチレンを230℃に加熱し厚さが6mmのポリエチレンの被膜を形成し、ポリエチレンの被膜の成型性を調査した。結果を表1に示す。
【0014】
【表1】
Figure 0004126217
【0015】
230℃での溶融張力が1.5g未満の場合は、特にD1/D0が小さい場合は成型時に充分な張力が得られず、樹脂が下部にたれて成型性が低下する。逆に230℃での溶融張力が2.5g超の場合、特にD1/D0が大きい場合、樹脂がちぎれかげんになり成型性が低下する。230℃での溶融張力が1.5g以上〜2.5g以下の場合、D1/D0が1.1〜1.5のどの範囲でも良好な成型性を示した。
【0016】
本発明では、ドローダウンレイシオを2.30〜3.70に制御して操業する。従来の厚さが0.6〜3.0mmのポリエチレンの被膜を形成する場合はドローダウンレイシオを3〜5に制御して操業を行なってきた。本発明者等はD1/D0が1.3の場合、鋼管の通材速度V0(m/分)を変え、また溶融ポリエチレンの吐出速度V1(m/分)を変えることにより異なるドローダウンレイシオでポリエチレン被覆鋼管を作成実験した。表2はその概要である。
【0017】
表2の試験水準1,5,8,9はドローダウンレイシオが本発明の2.30〜3.70である。形成されたポリエチレン被膜の肉厚変動は少なく好ましい結果を示した。試験水準4,7はドロダウンレイシオが本発明より大きい例であるが、その場合ポリエチレン樹脂が破断しやすく成型が困難であった。また、試験水準2,3,6はドローダウンレイシオが本発明より小さい例であるが、その場合樹脂が垂れ下がり、膜厚の変動が大きかった。
【0018】
【表2】
Figure 0004126217
【0019】
本発明では、使用するポリエチレンの密度、230℃の溶融張力、及びドローダウンレイシオを上記の如く特定の範囲に制御する。尚、これ以外に本発明ではポリエチレンのMFR、引っ張り破壊強さ、ピカット軟化点温度、硬さ、分子量分布を特定して操業を行なうが、これ等の特定範囲は厚さが0.6〜3.0mmの従来のポリエチレン被膜を形成する従来の操業範囲と同じであり、地下に埋設し長期間に亘り使用を継続することのできるポリエチレン被覆鋼管としての性能を確保するため必要な操業上の特定である。
【0020】
本発明ではクロメート層、エポキシ樹脂プライマー層、変成ポリエチレン接着剤層を予め鋼管に形成し、その後本発明により厚さ4.7mm〜7.2mmの厚膜被覆を形成する事もできる。この際の被覆鋼管は落雷による電撃発生に耐えると共に、極めて強い耐食性を有する。従って、腐食性の強い落雷多発領域においても損壊し難く、長期間に亘って使用することができる。
【0021】
【発明の効果】
本発明によると、ポリエチレンの被覆厚さが4.7mm〜7.2mmの厚膜被覆鋼管を安定に製造することができる。尚本発明の方法による厚膜被覆鋼管は被覆厚さの変動が小さく、且つ被覆層の表面に皺状疵がない。本発明の厚膜被覆鋼管は落雷によっても損壊し難く、従って落雷の多い領域に埋設しても長期間に亘って使用することができる。またクロメート層とエポキシ樹脂プライマー層と変成ポリエチレン層を更に配した本発明の厚膜被覆鋼管は更に耐食性にも優れている。尚従来は被覆鋼管を落雷による被害から守るために、金網等のシールド材を被覆鋼管を覆って埋設していたが、埋設に際しての土砂の取り扱い量が多く煩瑣な作業等であったが、本発明によりシールド材の埋設が不要になったために、埋設作業は大幅に簡易化された。
【図面の簡単な説明】
【図1】は鋼管の外面にポリエチレンを被覆する際に用いるクロスヘッドダイの説明図。
【符号の説明】
1:鋼管、 2:クロスヘッドダイに設けられた内孔、 3:マニホールド、4:溶融ポリエチレン、 5:リング状吐出孔、 D0:鋼管の外径、 D1:吐出孔のリングの内径、 h:吐出孔の肉厚(リップ)、 V0:鋼管の通材速度、 V1:溶融ポリエチレンの吐出速度。

Claims (3)

  1. 鋼管をVm/分で通過させ出側で該鋼管の外周を囲むリング状吐出孔から加熱溶融したポリエチレンをVm/分で該鋼管の外面に吐出するクロスヘッドダイを用いて、密度が0.937〜0.965g/cmで、230℃での溶融張力が1.5g以上〜2.5g以下で、MFRが0.15〜0.32で、ビカット軟化点温度が85℃以上で、引張り強さが2.16KN以上で、硬さがデュロメーターで55〜70で、分子量分布Mw/Mnが20〜30であるポリエチレンを200〜250℃に加熱溶融し、これを、リング状吐出孔のリングの内径Dを該鋼管の外径Dに対してD/D=1.1〜1.5にし、かつリップh(リング状吐出孔のリングの外径−D)=10〜13mmにしたクロスヘッドダイのリング状吐出孔から、通過する100〜180℃の外径が15〜600mmの該鋼管の外面に、ドローダウンレイシオV/V=2.3〜3.7で吐出し、厚さが4.7〜7.2mmのポリエチレン被膜を形成することを特徴とするポリエチレン厚膜被覆鋼管の製造方法。
  2. クロメート層、エポキシ樹脂系プライマー、変成ポリエチレン層を順次形成させた鋼管に、請求項1の被覆方法で厚み4.7〜7.2mmのポリエチレン被膜を形成させたポリエチレン厚膜被覆鋼管。
  3. 用途が落雷による電撃発生領域に埋設して使用する請求項2に記載のポリエチレン厚膜被覆鋼管。
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