JP4124627B2 - 液体燃料合成システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体燃料合成システムに関し、特に、各種廃棄物や固体燃料等を原料として、メタノール、ジメチルエーテル等の液体燃料の合成を行うのに適した液体燃料合成システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境問題や資源枯渇、化石燃料削減等の要請から、有機性廃棄物を原料とした液体燃料合成技術の実用化が期待されている。
従来から、廃棄物を原料とする液体燃料合成には、直接油化するプロセスと、一度廃棄物をガス化させて水素、一酸化炭素等を主体とする生成ガス(合成ガス)を得て、これを原料として液体燃料合成を行うプロセスとがある。ここで、ガス化によるプロセスの場合は、原料となる廃棄物を空気によって部分燃焼させてガス化に必要な熱量を賄う。このようなガス化によるプロセスは、一度生成ガスを経てからこれを精製して液体燃料を得るため、純度の高い、高品質の液体燃料が得られる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のような従来のガス化による液体燃料合成の場合、生成ガス中に二酸化炭素を主体とする燃焼ガスが混合し、ガスの発熱量が低下してしまい、液体燃料合成の原料として必ずしも適さないものとなるという問題があった。また部分燃焼に空気を用いるので、窒素、アルゴン等の不活性ガスの濃度が高くなり、液体燃料の収率が低くなるという問題があった。
【0004】
そこで本発明は、廃棄物や固体燃料等を原料として高効率で液体燃料を製造することを可能とする液体燃料合成システムを提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による液体燃料合成システムは、例えば図1、図2に示すように、高温の流動媒体c1を内部で流動させ、第1の界面を有するガス化室流動床を形成し、前記ガス化室流動床内で被処理物aをガス化して水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスbを発生するガス化室1と;高温の流動媒体c2を内部で流動させ、第2の界面を有するチャー燃焼室流動床を形成し、ガス化室1でのガス化に伴い発生するチャーhを前記チャー燃焼室流動床内で燃焼させ流動媒体c2を加熱するチャー燃焼室2と;ガス化室1で発生した生成ガスbを用いて液体燃料を合成する合成装置200とを備え;ガス化室1とチャー燃焼室2とは、前記それぞれの流動床の界面より鉛直方向上方においてはガスの流通がないように第1の仕切壁15により仕切られ、第1の仕切壁15の下部にはガス化室1とチャー燃焼室2とを連通する連通口25であって、該連通口25の上端の高さは前記第1の界面および第2の界面以下である連通口25が形成され、連通口25を通じて、チャー燃焼室2側からガス化室1側へチャー燃焼室2で加熱された流動媒体c2を移動させるように構成されている。
【0006】
ここで被処理物は、例えば廃棄物または固体燃料である。合成される液体燃料は、例えばメタノール、ジメチルエーテル等の含酸素燃料や、ガソリン、灯油、軽油等の炭化水素燃料である。
【0007】
このように構成すると、高温の流動媒体を内部で流動させるガス化室を備えるので、被処理物をガス化して水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスbを発生することができ、高温の流動媒体を内部で流動させチャーを燃焼させるチャー燃焼室を備えるので、流動媒体を加熱することができ、発生した生成ガスを用いる合成装置を備えるので液体燃料を合成することができ、第1の仕切壁を有するのでガス化室とチャー燃焼室とはそれぞれの流動床の界面より鉛直方向上方においてはガスの流通がないよう仕切ることができ、第1の仕切壁の下部にはガス化室とチャー燃焼室とを連通する連通口が形成されているので、連通口を通じてチャー燃焼室側からガス化室側へチャー燃焼室で加熱された流動媒体を移動させることができる。
【0008】
この構成によれば、典型的には、ガス化室で発生した生成ガスと、ガス化室でガス化に伴い発生するチャーの燃焼によってチャー燃焼室で発生した燃焼ガスとが混ざらないため、高カロリーの液体燃料合成に適した生成ガスが得られる。
【0009】
請求項1に記載の液体燃料合成システムでは、さらに、ガス化室1には前記流動床を流動化する流動化ガスg1を供給するように構成されていてもよい。
また、液体燃料合成システムでは、さらに、ガス化室1には前記流動床を流動化する流動化ガスg1を供給するように構成され、流動化ガスg1は、水蒸気、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガス及び生成ガスbからなるグループから選択された1のガス、または前記グループから選択された2以上のガスの混合物を主成分とするようにしてもよい。
このように構成すると、流動化ガスとして空気を使用しないようにすることが可能となり、流動化ガスは実質的に窒素ガス及び酸素ガスが含まれないガスとすることができる。
【0010】
請求項1に記載の液体燃料合成システムでは、さらに、流動化ガスg1として、水蒸気を主に用い、前記水蒸気に、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスのうちいずれか1種以上のガスを混合して用いるように構成され;生成ガスの組成を測定するガス成分測定装置と;前記水蒸気への前記1種以上のガスの添加量を前記ガス成分測定装置の測定結果に基づき調整する調整装置とをさらに備えるようにしてもよい。
【0011】
このように構成すると、流動化ガスとして空気を使用しないようにすることが可能となり、流動化ガスは実質的に窒素ガス及び酸素ガスが含まれないガスとすることができる。
【0012】
また、ガス成分測定装置を備えるので、生成ガスの組成を測定することができ、調整装置を備えるので、ガス化室1の流動化ガスg1の成分をガス成分測定装置の測定結果に基づき調整することができ、すなわちガス化室1の流動化ガスg1の成分を、ガスの添加量をガス成分測定装置の測定結果に基づき調整することにより調整でき、生成ガスb中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比を、所定の値に保つことが可能となる。
【0013】
また請求項2に記載のように、請求項1に記載の液体燃料合成システムでは、前記調整装置は、生成ガスb中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が2〜5となるように調整するように設定してもよい。
【0014】
このように構成すると、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が2〜5となるように調整するように設定するので、液体燃料としてメタノールを合成するのに適する。
【0015】
また請求項3に記載のように、請求項1に記載の液体燃料合成システムでは、前記調整装置は、生成ガスb中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が0.7〜2となるように調整するように設定してもよい。
【0016】
このように構成すると、水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が0.7〜2となるように調整するように設定するので、液体燃料としてジメチルエーテルを合成するのに適する。
【0017】
また請求項4に記載のように、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の液体燃料合成システムでは、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスのうち1以上のガスを余剰ガスとして発生し、前記余剰ガスをガス化室1の流動化ガスg1として用いるように構成してもよい。
【0018】
また請求項5に記載のように、(例えば図2参照)請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体燃料合成システムでは、チャー燃焼室2に接して設けられた熱回収室3を備え;チャー燃焼室2と熱回収室3との間にはチャー燃焼室流動床の流動層部を仕切る第2の仕切壁12が設けられ、第2の仕切壁12の下部には開口部22が形成され、チャー燃焼室2の流動媒体は第2の仕切壁12の上部から熱回収室3に流入し、開口部22を通じてチャー燃焼室2に戻る循環流が形成されるように構成してもよい。
【0019】
熱回収室を有するので、チャーの燃焼によって発生した熱量の一部を例えば蒸気として回収することができる。またガス化室とチャー燃焼室の熱バランスをとることができる。
【0020】
さらに、例えば図4に示すように、以上の液体燃料合成システムでは、統合型ガス化炉101のチャー燃焼室2において発生する燃焼ガスeから熱回収を行う廃熱ボイラ111を有し、廃熱ボイラ111および/または統合型ガス化炉101の熱回収室3において発生した蒸気322、325の一部または全部を、統合型ガス化炉101からの生成ガスbを原料とした液体燃料合成工程200における熱源の一部または全部として利用するように構成してもよい。
【0021】
また、統合型ガス化炉101のチャー燃焼室2からの燃焼ガスeから熱回収を行う廃熱ボイラ111を有し、廃熱ボイラ111および/または前記統合型ガス化炉101の熱回収室3において発生した蒸気の一部または全部を用いて蒸気タービン113による発電を行い、得られた電力を統合型ガス化炉101からの生成ガスbを原料とした液体燃料合成装置200に必要な電力の一部または全部として利用するようにしてもよい。
【0022】
また、統合型ガス化炉101のチャー燃焼室2からの燃焼ガスeから熱回収を行う廃熱ボイラ111を有し、廃熱ボイラ111および/または統合型ガス化炉101の熱回収室3において発生した蒸気322、325の一部または全部を用いて蒸気タービン113による発電を行い、得られた電力を統合型ガス化炉101からの生成ガスbを原料とした液体燃料合成装置200に必要な電力の一部または全部として利用するとともに、蒸気タービン113からの抽気蒸気327を、液体燃料合成装置200における熱源の一部または全部として利用するようにしてもよい。
【0023】
また請求項6に記載のように、(例えば図5参照)請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体燃料合成システムでは、ガス化室1と合成装置400との間に、生成ガスbを洗浄するガス洗浄装置103を備えてもよい。
【0024】
このように構成すると、ガス洗浄装置103を備えるので、ガス化室1を出た生成ガスbをガス洗浄装置103で洗浄し、生成ガスbから液体燃料合成反応に有害な成分(例えば塩化水素や硫化水素などの酸性ガス)、ダスト分f等を除去することができる。
【0025】
また請求項7に記載のように、(例えば図5参照)請求項6に記載の液体燃料合成システムでは、調整装置115は、生成ガスbを洗浄した後の高温洗浄液116を洗浄装置103から導入し、高温洗浄液116を熱源として用いて、前記1種以上のガスを加湿するよう構成された、液体燃料合成システムとしてもよい。
【0026】
このように構成すると、調整装置115を備えるので、生成ガスbを洗浄した後の高温洗浄液116を洗浄装置103から導入し、高温洗浄液116を熱源として用いて、水素、炭化水素、二酸化炭素のうちいずれか1種以上のガスを加湿することができる。よって、加湿した1種以上のガスを水蒸気に添加し、当該水蒸気を流動化ガスg1としてガス化室1へ供給することができ、ガス化原料の顕熱を無駄にすることなく利用することができる。
例えば、水素ガス、炭化水素ガス、二酸化炭素ガスを含む、合成装置400からのパージガス507aを、調整装置115に導入し、洗浄装置103からの高温洗浄液116と接触させることで、パージガス507aを加湿するようにしてもよい。加湿したパージガス507aを水蒸気に混合し、当該水蒸気を流動化ガスg1としてガス化室1に供給することができる。パージガス507aの加湿源として高温の生成ガスbを洗浄することで高温化した洗浄液116を用いることで、ガス化原料の顕熱を無駄にすることなく利用することができる。
調整装置115へ導入するパージガス507aの量を調整することで、水蒸気へ添加する水素ガス、炭化水素ガス、二酸化炭素ガスの添加量を調整することができ、合成装置400に適したH/COモル比に近い生成ガスbを得るのに適した流動化ガスg1とすることが可能である。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において互いに同一あるいは相当する部材には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明による第1の実施の形態である液体燃料合成システムとしてのメタノール合成システムのフローチャートである。これは本発明の基本的な実施の形態であり、廃棄物または固体燃料をガス化する流動床式の統合型ガス化炉101と、ガス化炉101において発生した生成ガスbを利用した合成装置としてのメタノール合成装置200を含んで構成されるシステムである。なお、ここでは液体燃料合成システムの一例としてメタノール合成システムについて説明するが、同様なシステムは、ガソリン、後述のジメチルエーテル等、他の液体燃料の合成に用いることもできる。
【0028】
本実施の形態のメタノール合成システムは、生成ガス(以下適宜「合成ガス」ともいう)bを発生する統合型ガス化炉101、生成ガスを洗浄するガス洗浄装置103、洗浄されたガスについてCO転化するCO転化装置104、CO転化されたガスから硫黄分を除去する脱硫装置105、脱硫されたガスから炭酸ガスを分離する脱炭酸装置106が、生成ガスbの流路に沿って、この順番で設置されている。さらに脱炭酸装置106の下流側には、脱炭酸されたガス301aを圧縮するガス圧縮機107及び圧縮されたガス301bを用いてメタノールを合成するメタノール合成装置200が設置されている。なお、後述のように、ガス洗浄装置103、脱硫装置105、CO転化装置104の順に設置してもよい。
【0029】
ガス圧縮機107としては遠心圧縮機が使用され、電動機108によって駆動される。ただし、取り扱うガス流量が比較的小さいときは、遠心圧縮機の代わりに往復動圧縮機を用いてもよい。圧縮機107の駆動機としては、電動機の代わりに他の種類の駆動機、特に蒸気タービンを用いてもよい。
【0030】
統合型ガス化炉101には、ガス化室1から抜き出された流動媒体c3と不燃物dを分級する分級装置102が設置されている。分級された後、流動媒体c3はガス化室1に戻され、不燃物dは外部に取り出される。統合型ガス化炉101については、図2を参照して、またメタノール合成装置については、図3を参照して、後で詳細に説明する。
【0031】
引き続き図1を参照して本装置の作用を説明する。メタノール合成は、天然ガスや石炭等の化石燃料を水蒸気改質または部分燃焼改質して得られる水素ガスH及び一酸化炭素ガスCOを主成分とする合成ガスを原料として行われるのが一般的である。したがって、廃棄物を原料とする場合でも、化石燃料を原料とする場合と同様な性状の合成ガスを得ることができれば、容易にメタノール合成を行うことができる。
【0032】
図中統合型ガス化炉101で発生した可燃性の生成ガス(合成ガス)には、通常は、ガス成分bの他にダスト分fが含まれる。このガスは、まずガス洗浄装置103において洗浄され、塩素分やダスト分fが除去される。天然ガスを原料とする場合と違って、特に廃棄物を原料とする場合には、塩素分やダスト分が含まれるため、この装置が必要となる。
【0033】
次いで、CO転化装置104で、触媒を用いて下式で表されるCOシフト反応を行って、合成ガス中のH/CO比の調整を行う。
CO+HO←→H+CO
メタノール合成の場合、H/CO比(モル比(以下同様))は量論的には2以上であることが望ましい。従って、最初の合成ガスの段階でH/CO比が2以上である場合には、この工程は必ずしも必要ではない。
【0034】
さらに、次の脱硫装置105においてHSガスを除去する。ここでは、硫黄分は0.1ppm以下まで除去される。次に、脱炭酸装置106において余剰なCOガス302を除去する。統合型ガス化炉101から発生した最初の合成ガスのH/CO比が2以下で、前記のCO転化装置におけるCO転化工程によりH/CO比の調整を行う場合は、反応によりCOが発生するため、これを脱炭酸装置106における脱炭酸工程において除去することが必要である。除去されたCOガス302は、大気放出してもよいが、液化炭酸ガスやドライアイスの形で固定して、再利用しても良い。
【0035】
以上の工程で余剰な成分が除去された合成ガス301aは、ガス圧縮機107による圧縮工程によりメタノール合成に必要な圧力まで圧縮されて、圧縮ガス301bとして、メタノール合成システム200に供給される。
また、ガス圧縮機107による圧縮工程は、上記のCO転化装置104におけるCO転化工程、脱硫装置105における脱硫工程および脱炭酸装置106における脱炭酸工程の前に行ってもよい。これにより、CO転化工程、脱硫工程および脱炭酸工程を加圧下で行うことができ、その反応性を向上させることができる。
【0036】
ここで図2の概念的断面図を参照して統合型ガス化炉101について説明する。本統合型ガス化炉101は、熱分解即ちガス化、チャー燃焼、熱回収の3つの機能をそれぞれ担当するガス化室1、チャー燃焼室2、熱回収室3を備え、例えば全体が円筒形又は矩形を成した炉体内に収納されている。ガス化室1、チャー燃焼室2、熱回収室3は仕切壁11、12、13、14、15で分割されており、それぞれの底部に流動媒体を含む濃厚層である流動床が形成される。各室の流動床、即ちガス化室流動床、チャー燃焼室流動床、熱回収室流動床の流動媒体を流動させるために、各室1、2、3の底である炉底には、流動媒体中に流動化ガスを吹き込む散気装置が設けられている。散気装置は炉底部に敷かれた例えば多孔板を含んで構成され、該多孔板を広さ方向に区分して複数の部屋に分割されており、各室内の各部の空塔速度を変えるために、散気装置の各部屋から多孔板を通して吹き出す流動化ガスの流速を変化させるように構成している。空塔速度が室の各部で相対的に異なるので各室内の流動媒体も室の各部で流動状態が異なり、そのため内部旋回流が形成される。また室の各部で流動状態が異なるところから、内部旋回流は、炉内の各室を循環する。図中、散気装置に示すハッチン付き矢印の大きさは、吹き出される流動化ガスの流速を示している。例えば2bで示す箇所の太い矢印は、2aで示す箇所の細い矢印よりも流速が大きい。
【0037】
ガス化室1とチャー燃焼室2の間は仕切壁11及び仕切壁15で仕切られ、チャー燃焼室2と熱回収室3の間は仕切壁12で仕切られ、ガス化室1と熱回収室3の間は仕切壁13で仕切られている(なお本図は、炉を平面的に展開して図示しているため、仕切壁11はガス化室1とチャー燃焼室2の間にはないかのように、また仕切壁13はガス化室1と熱回収室3の間にはないかのように示されている)。即ち、統合型ガス化炉101は、各室が別々の炉として構成されておらず、一つの炉として一体に構成されている。更に、チャー燃焼室2のガス化室1と接する面の近傍には、流動媒体が下降するべく沈降チャー燃焼室4を設ける。即ち、チャー燃焼室2は沈降チャー燃焼室4と沈降チャー燃焼室4以外のチャー燃焼室本体部とに分かれる。このため、沈降チャー燃焼室4をチャー燃焼室2の他の部分(チャー燃焼室本体部)と仕切るための仕切壁14が設けられている。また沈降チャー燃焼室4とガス化室1は、仕切壁15で仕切られている。
【0038】
ここで、流動床と界面について説明する。流動床は、その鉛直方向下方部にある、流動化ガスにより流動状態に置かれている流動媒体(例えば珪砂)を濃厚に含む濃厚層と、その濃厚層の鉛直方向上方部にある流動媒体と多量のガスが共存し、流動媒体が勢いよくはねあがっているスプラッシュゾーンとからなる。流動床の上方即ちスプラッシュゾーンの上方には流動媒体をほとんど含まずガスを主体とするフリーボード部がある。界面は、ある厚さをもった前記スプラッシュゾーンをいうが、またスプラッシュゾーンの上面と下面(濃厚層の上面)との中間にある仮想的な面ととらえてもよい。
【0039】
また「流動床の界面より鉛直方向上方においてはガスの流通がないように仕切壁により仕切られ」というとき、さらに界面より下方の濃厚層の上面より上方においてガスの流通がないようにするのが好ましい。
【0040】
ガス化室1とチャー燃焼室2の間の仕切壁11は、炉の天井19から炉底(散気装置の多孔板)に向かってほぼ全面的に仕切っているが、下端は炉底に接することはなく、炉底近傍に第2の開口部21がある。但しこの開口部21の上端が、ガス化室流動床界面、チャー燃焼室流動床界面のいずれの界面よりも上部にまで達することはない。さらに好ましくは、開口部21の上端が、ガス化室流動床の濃厚層の上面、チャー燃焼室流動床の濃厚層の上面のいずれよりも上部にまで達することはないようにする。言い換えれば、開口部21は、常に濃厚層に潜っているように構成するのが好ましい。即ち、ガス化室1とチャー燃焼室2とは、少なくともフリーボード部においては、さらに言えば界面より上方においては、さらに好ましくは濃厚層の上面より上方ではガスの流通がないように仕切壁により仕切られていることになる。
【0041】
またチャー燃焼室2と熱回収室3の間の仕切壁12はその上端が界面近傍、即ち濃厚層の上面よりは上方であるが、スプラッシュゾーンの上面よりは下方に位置しており、仕切壁12の下端は炉底近傍までであり、仕切壁11と同様に下端が炉底に接することはなく、炉底近傍に濃厚層の上面より上方に達することのない開口22がある。言い換えれば、チャー燃焼室2と熱回収室3の間は流動層部のみ仕切り壁12で仕切られており、その仕切り壁12の炉床面近傍には開口部22を有し、チャー燃焼室2の流動媒体は仕切り壁12の上部から熱回収室2に流入し、仕切り壁12の炉床面近傍の開口部22を通じて再びチャー燃焼室2に戻る循環流を有するように構成されている。
【0042】
ガス化室1と熱回収室3の間の仕切壁13は炉底から炉の天井にわたって完全に仕切っている。沈降チャー燃焼室4を設けるべくチャー燃焼室2内を仕切る仕切壁14の上端は流動床の界面近傍で、下端は炉底に接している。仕切壁14の上端と流動床との関係は、仕切壁12と流動床との関係と同様である。沈降チャー燃焼室4とガス化室1を仕切る仕切壁15は、仕切壁11と同様であり、炉の天井から炉底に向かってほぼ全面的に仕切っており、下端は炉底に接することはなく、炉底近傍に第1の開口部25があり、この開口の上端が濃厚層の上面より下にある。即ち、第1の開口部25と流動床の関係は、開口部21と流動床の関係と同様である。
【0043】
ガス化室1に投入された廃棄物または固体燃料aは流動媒体c1から熱を受け、熱分解、ガス化される。典型的には、廃棄物または燃料aはガス化室1では燃焼せず、いわゆる乾留される。残った乾溜チャーhは流動媒体c1と共に仕切壁11の下部にある開口部21からチャー燃焼室2に流入する。このようにしてガス化室1から導入されたチャーhはチャー燃焼室2で燃焼して流動媒体c2を加熱する。チャー燃焼室2でチャーhの燃焼熱によって加熱された流動媒体c2は仕切壁12の上端を越えて熱回収室3に流入し、熱回収室3内で界面よりも下方にあるように配設された層内伝熱管41で収熱され、冷却された後、再び仕切壁12の下部開口22を通ってチャー燃焼室2に流入する。
【0044】
ここで、熱回収室3は本発明の実施の形態であるガス供給装置において必須ではない。即ち、ガス化室1で主として揮発成分がガス化した後に残る主としてカーボンからなるチャーhの量と、チャー燃焼室2で流動媒体c2を加熱するのに必要とされるチャーの量がほぼ等しければ、流動媒体から熱を奪うことになる熱回収室3は不要である。また前記チャーの量の差が小さければ、例えば、ガス化室1でのガス化温度が高めになり、ガス化室1内でのチャー中のカーボンのガス化により、発生するCOガスの量が増えるという形で、自動的に熱バランス状態が保たれる。
【0045】
しかしながら図2に示すように熱回収室3を備える場合は、チャーの発生量の大きい石炭から、ほとんどチャーを発生させない都市ゴミまで、幅広く多種類の廃棄物または燃料に対応することができる。即ち、どのような廃棄物または燃料であっても、熱回収室3における熱回収量を加減することにより、チャー燃焼室2の燃焼温度を適切に調節し、流動媒体の温度を適切に保つことができる。
【0046】
一方チャー燃焼室2で加熱された流動媒体c2は仕切壁14の上端を越えて沈降チャー燃焼室4に流入し、次いで仕切壁15の下部にある開口部25からガス化室1に流入する。
【0047】
ここで、各室間の流動媒体の流動状態及び移動について説明する。
ガス化室1の内部で沈降チャー燃焼室4との間の仕切壁15に接する面の近傍は、沈降チャー燃焼室4の流動化と比べて強い流動化状態が維持される強流動化域1bになっている。全体としては投入された燃料と流動媒体の混合拡散が促進される様に、場所によって流動化ガスの空塔速度を変化させるのが良く、一例として図2に示したように強流動化域1bの他に弱流動化域1aを設けて旋回流を形成させるようにする。
【0048】
チャー燃焼室2は中央部に弱流動化域2a、周辺部に強流動化域2bを有し、流動媒体およびチャーが内部旋回流を形成している。ガス化室1、チャー燃焼室2内の強流動化域の流動化速度は5Umf以上、弱流動化域の流動化速度は5Umf以下とするのが好適であるが、弱流動化域と強流動化域に相対的な明確な差を設ければ、この範囲を超えても特に差し支えはない。チャー燃焼室2内の熱回収室3、および沈降チャー燃焼室4に接する部分には強流動化域2bを配するようにするのがよい。また必要に応じて炉底には弱流動化域側から強流動化域側に下るような勾配を設けるのが良い(不図示)。ここで、Umfとは最低流動化速度(流動化が開始される速度)を1Umfとした単位である。即ち、5Umfは最低流動化速度の5倍の速度である。
【0049】
このように、チャー燃焼室2と熱回収室3との仕切壁12近傍のチャー燃焼室側の流動化状態を熱回収室3側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保つことによって、流動媒体は仕切壁12の流動床の界面近傍にある上端を越えてチャー燃焼室2側から熱回収室3の側に流入し、流入した流動媒体は熱回収室3内の相対的に弱い流動化状態即ち高密度状態のために下方(炉底方向)に移動し、仕切壁12の炉底近傍にある下端(の開口22)をくぐって熱回収室3側からチャー燃焼室2の側に移動する。
【0050】
同様に、チャー燃焼室2の本体部と沈降チャー燃焼室4との仕切壁14近傍のチャー燃焼室本体部側の流動化状態を沈降チャー燃焼室4側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保つことによって、流動媒体は仕切壁14の流動床の界面近傍にある上端を越えてチャー燃焼室2本体部の側から沈降チャー燃焼室4の側に移動流入する。沈降チャー燃焼室4の側に流入した流動媒体は、沈降チャー燃焼室4内の相対的に弱い流動化状態即ち高密度状態のために下方(炉底方向)に移動し、仕切壁15の炉底近傍にある下端(の開口25)をくぐって沈降チャー燃焼室4側からガス化室1側に移動する。なおここで、ガス化室1と沈降チャー燃焼室4との仕切壁15近傍のガス化室1側の流動化状態は沈降チャー燃焼室4側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保たれている。これにより流動媒体の沈降チャー燃焼室4からガス化室1への移動を誘引作用により助ける。
【0051】
同様に、ガス化室1とチャー燃焼室2との間の仕切壁11近傍のチャー燃焼室2側の流動化状態はガス化室1側の流動化状態よりも相対的に強い流動化状態に保たれている。したがって、流動媒体は仕切壁11の流動床の界面より下方、好ましくは濃厚層の上面よりも下方にある(濃厚層に潜った)開口21を通してチャー燃焼室2の側に流入する。
【0052】
熱回収室3は全体が均等に流動化され、通常は最大でも熱回収室に接したチャー燃焼室2の流動化状態より弱い流動化状態となるように維持される。従って、熱回収室3の流動化ガスの空塔速度は0〜3Umf、または0〜3Umf程度の間で制御され、流動媒体は緩やかに流動しながら沈降流動層を形成する。なおここで0Umfとは、流動化ガスが止まった状態である。このような状態にすれば、熱回収室3での熱回収を最小にすることができる。すなわち、熱回収室3は流動媒体の流動化状態を変化させることによって回収熱量を最大から最小の範囲で任意に調節することができる。また、熱回収室3では、流動化を室全体で一様に発停あるいは強弱を調節してもよいが、その一部の領域の流動化を停止し他を流動化状態に置くこともできるし、その一部の領域の流動化状態の強弱を調節してもよい。
【0053】
廃棄物または燃料中に含まれる比較的大きな不燃物はガス化室1の炉底に設けた不燃物排出口33から排出する。また、各室の炉底面は水平でも良いが、流動媒体の流れの滞留部を作らないようにするために、炉底近傍の流動媒体の流れに従って、炉底を傾斜させても良い。なお、不燃物排出口33は、ガス化室1の炉底だけでなく、チャー燃焼室2あるいは熱回収室3の炉底に設けてもよい。
【0054】
ガス化室1の流動化ガスとして最も好ましいのは生成ガスbを昇圧してリサイクル使用することである。このようにすればガス化室1から出るガスは純粋に燃料から発生したガスのみとなり、非常に高品質のガスを得ることができる。それが不可能な場合は水蒸気、炭酸ガス(CO)あるいはチャー燃焼室2から得られる燃焼排ガス等、できるだけ酸素を含まないガス(無酸素ガス)を用いるのが良い。ガス化の際の吸熱反応によって流動媒体の層温が低下する場合は、必要に応じて高温の燃焼排ガス、例えば熱分解温度より温度の高い燃焼排ガスを供給するか、あるいは無酸素ガスに加えて、酸素もしくは酸素を含むガス、例えば空気を供給して生成ガスの一部を燃焼させ、層温を維持できるようにしても良い。チャー燃焼室2に供給する流動化ガスは、チャー燃焼に必要な酸素を含むガス、例えば空気、酸素と水蒸気の混合ガスを供給する。燃料aの発熱量(カロリー)が低い場合は、混合ガス中の酸素割合を多くする方が好ましく、純酸素をそのまま供給してもよい。また熱回収室3に供給する流動化ガスは、空気、水蒸気、燃焼排ガス等を用いる。
【0055】
ガス化室1とチャー燃焼室2の流動床の上面(スプラッシュゾーンの上面)より上方の部分すなわちフリーボード部は完全に仕切壁11、15で仕切られている。さらに言えば、流動床の濃厚層の上面より上方の部分すなわちスプラッシュゾーン及びフリーボード部は完全に仕切壁で仕切られているので、チャー燃焼室2とガス化室1のそれぞれのフリーボード部の圧力のバランスが多少乱れても、双方の流動層の界面の位置の差、あるいは濃厚層の上面の位置の差、即ち層高差が多少変化するだけで乱れを吸収することができる。即ち、ガス化室1とチャー燃焼室2とは、仕切壁11、15で仕切られているので、それぞれの室の圧力が変動しても、この圧力差は層高差で吸収でき、どちらかの層が開口21、25の上端に下降するまで吸収可能である。従って、層高差で吸収できるチャー燃焼室2とガス化室1のフリーボードの圧力差の上限値は、互いを仕切る仕切壁11、15の下部の開口21、25の上端からの、ガス化室流動床のヘッドと、チャー燃焼室流動床のヘッドとのヘッド差にほぼ等しい。
【0056】
以上説明した統合型ガス化炉101では、一つの流動床炉の内部に、ガス化室、チャー燃焼室、熱回収室の3つを、それぞれ隔壁を介して設け、更にチャー燃焼室とガス化室、チャー燃焼室と熱回収室はそれぞれ隣接して設けられている。この統合型ガス化炉101は、チャー燃焼室とガス化室間に大量の流動媒体循環を可能にしているので、流動媒体の顕熱だけでガス化のための熱量を充分に供給できる。
【0057】
さらに以上の統合型ガス化炉では、チャー燃焼ガスと生成ガスの間のシールが完全にされるので、ガス化室とチャー燃焼室の圧力バランス制御がうまくなされ、燃焼ガスと生成ガスが混ざることがなく、生成ガスの性状を低下させることもない。
【0058】
また、熱媒体としての流動媒体c1とチャーhはガス化室1側からチャー燃焼室2側に流入するようになっており、さらに同量の流動媒体c2がチャー燃焼室2側からガス化室1側に戻るように構成されているので、自然にマスバランスがとれ、流動媒体をチャー燃焼室2側からガス化室1側に戻すために、コンベヤ等を用いて機械的に搬送する必要もなく、高温粒子のハンドリングの困難さ、顕熱ロスが多いといった問題もない。
【0059】
以上説明した統合型ガス化炉101を、本発明の第1の実施の形態であるメタノール合成システムに利用する場合の具体的運転について説明する。統合型ガス化炉101のガス化室1に供給された廃棄物または燃料aは、熱分解により可燃性ガスb、チャーh、灰分fに分解される。ここで、前記の廃棄物または燃料aとしては、廃プラスチック、廃タイヤ、カーシュレッダーダスト、木質系廃棄物、一般廃棄物RDF、石炭、重質油、タール等、ある程度の高発熱量を有する有機性廃棄物または燃料であることが望ましい。
【0060】
ガス化室1における熱分解によって生成したチャーhのうち、粒子径が大きく可燃性ガスに同伴されないものは、流動媒体c1とともにチャー燃焼室2に移送される。チャー燃焼室2では、流動化ガスg2として空気や、酸素富化空気または酸素等の有酸素ガスを用い、チャーhを完全燃焼させる。チャーhの燃焼によって発生した熱量の一部は、ガス化室1へ循環して戻される流動媒体c2の顕熱としてガス化室1に供給され、ガス化室1における熱分解に必要な熱量として用いられる。
【0061】
この方法によれば、ガス化室1で廃棄物または固体燃料aの熱分解によって発生した可燃性ガスbすなわち生成ガスと、チャー燃焼室2でチャーhの燃焼によって発生した燃焼ガスeが混ざらないため、高カロリーの、液体燃料合成に適した生成ガスが得られる。
【0062】
特に、ガス化室1の流動化ガスg1に空気または酸素ガスを全く含まないようにして、熱分解に必要な熱量の全量をチャー燃焼室2でのチャーhの燃焼によって発生した熱量を流動媒体の顕熱を介して供給するように構成することにより、ガス化室1において部分燃焼を全くさせることなく、CO 、HO等の燃焼ガス濃度の非常に低い、高カロリーの生成ガスを得ることができる。
【0063】
またこのように、液体燃料合成においては、原料となるガス中の窒素、アルゴン等の不活性ガス濃度を低く保つことが、液体燃料収率の向上のために重要である。したがって、ガス化室1の流動化ガスg1に、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスを全く含まないように構成することにより、生成ガスb中の窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス濃度を、廃棄物または固体燃料aに含まれる窒素分、アルゴン分に起因する濃度まで低減することができる。
【0064】
一般の部分燃焼式ガス化炉の場合は、生成ガスに窒素を混入させないためには、酸化剤として純酸素を供給する必要があったが、本発明の実施の形態に用いる統合型ガス化炉101を用いた場合、チャー燃焼室2における酸化剤として空気を用いても、生成ガスb側に空気中の窒素が混ざらないため、酸素製造動力の削減と、生成ガスb中の窒素ガス濃度低減を両立させることができ、特に効果的である。
【0065】
以上のように、液体燃料合成においては最終製品としての液体燃料の種類に応じて、適切な生成ガス中のH/CO比が存在する。したがって、第1の実施の形態では、対象とする廃棄物または固体燃料のC/H比が、製品としての液体燃料に適した比ではないものに対処するため、後段にCO転化装置104を設けた。これにより、生成ガスのH/CO比を所定の値とすることができる。
【0066】
第1の実施の形態の変形例として、統合型ガス化炉101のガス化室1の流動化ガスg1の全部または一部として、水素ガスまたはメタン、エタン、プロパン等の炭化水素ガスまたは炭酸ガスを用いるようにすれば、生成ガスのH/CO比を、目的とする液体燃料の合成に最適な値とすることができる。このH/CO比の値は、メタノール合成の場合は2以上、ジメチルエーテル合成の場合は1以上にとることが望ましい。
【0067】
この場合、前記水素ガスまたはメタン、エタン、プロパン等の炭化水素ガスまたは炭酸ガスは、前記生成ガスbを原料とした、液体燃料合成装置200における液体燃料合成工程において発生する余剰ガスをリサイクルして使用してもよい。
【0068】
また、ガス化室1に供給する流動化ガスg1の全部又は一部として、水蒸気、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガス及び生成ガスbからなるグループから選択された1のガス、または前記グループから選択された2以上のガスの混合物を主成分とするようにすると、流動化ガスとして空気を使用しないようにすることが可能となり、流動化ガスは実質的に窒素ガス及び酸素ガスが含まれないガスとすることができる。この場合、主成分とするとは、例えば、特に酸素を実質的に含まないこと、空気を実質的に含まないことをいう。また特に、窒素、アルゴン等の不活性ガスを実質的に含まないことをいう。実質的に含まないとは、漏れ込み等により不純物程度に含む場合を除く意味である。炭化水素ガスは、例えば、メタン、エタン、プロパン等である。これらのガスを用いるときは、生成ガス中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比を、所定の値に保つことができる。
【0069】
生成ガス中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比を調整する上では、図1における精製後のガス301aの組成を不図示のガス成分測定装置によって測定し、その結果に基いて流動化ガスg1への水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガス等の添加量を調整するとよい。
なお、ガス成分測定装置による測定箇所は、ガス化炉101の後段から液体燃料装置200の前段までの間のいずれの箇所であってもよい。
【0070】
図1に示す実施の形態では、流動化ガスg1としては、主として水蒸気を用いるものとしている。その水蒸気供給ラインには、調整装置109からのラインが合流するように接続されている。前記不図示のガス成分測定装置からの信号を受信する調整装置109には、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスのラインがそれぞれ接続されており、該信号に応じて水蒸気への水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスの添加量を調整し、流動化ガスg1の成分を調整することができるようになっている。また、脱炭酸装置106からのCOガス302、もしくは、水素、一酸化炭素、炭化水素を主成分とするメタノール合成塔装置からのパージガス307aを調整装置109に供給して蒸気と混合してガス化室1の流動化ガスとして利用しても良い。このようにすることで、原料から発生した水素、一酸化炭素、炭化水素、炭酸ガスを流動化ガスに利用でき、無駄なく有効に利用できる。メタノール合成塔装置からのパージガス307aは、水素、一酸化炭素、炭化水素、二酸化炭素を主成分とするものであってもよい。
【0071】
ここで図3のフローチャートを参照して、合成装置としてのメタノール合成装置200の一例を説明する。この合成装置は、断熱クエンチ型反応装置である。ガス圧縮機107により、メタノール合成反応圧力まで昇圧されたガス301aは、メタノール合成装置200に送り込まれる。合成装置200に送られた圧縮ガス301bは未反応循環ガス307bと合流し、循環機202の吸い込み側に供給される。循環機202としては遠心ブロワが用いられる。
【0072】
断熱クエンチ型反応装置では、合成ガスを反応に必要な温度まで、熱回収器203で予熱した後、全原料合成ガス量の40〜60%のガス303をメタノール合成塔201内の第1触媒層へ供給する。残りのガス304はクエンチガスとして、第2触媒層以下の触媒層の温度を適正な温度に制御するため、各触媒層問へ供給され、上部触媒層を通過してきたガスと均一に混合される。これにより触媒層での断熱反応により上昇した反応ガスの温度を低下させ、次の触媒層の温度は適正に制御される。熱回収器203としては、熱交換器が用いられる。
【0073】
メタノール合成塔201の出口ガス305の保有熱は、熱回収器203において、合成塔201へ供給する原料合成ガス303、304の予熱や、後述の蒸留工程で使用する低圧スチームの発生等により熱回収され、冷却される。この冷却されたガス306は、高圧分離器204で、粗メタノール308と未反応ガス307に分離される。未反応ガス307中に蓄積されるメタン、窒素等の不活性成分の濃度を一定レベルに抑えるため、一定量のガスがパージガス307aとして抜き出される。残りのガス307bは循環ガスとして、前述のように圧縮工程から送られてきた合成ガス301bと一緒に循環機202で圧縮され、熱回収器203で予熱された後、メタノール合成塔201へ供給される。なお、未反応ガス307は、メタノール合成塔201に供給される水素、一酸化炭素、炭化水素を主成分とするガスである。
【0074】
分離された粗メタノール308は蒸留塔205で蒸留工程に供される。粗メタノール308は、蒸留工程を経て製品メタノール309に精製される。蒸留塔205は、不図示であるが初留塔と精留塔の2塔からなる。初留塔はほぼ常圧で運転され、粗メタノールからギ酸メチル、ジメチルエーテル、アセトン等の低沸点成分310およびパラフィン類を留去する。精留塔は、ほぼ常圧または0.1MPa程度の加圧下で運転され、水および高級アルコール等の高沸点成分311を除去し、製品メタノール309が得られる。
【0075】
メタノール合成塔201内では、一酸化炭素と水素を主成分とする合成ガスを、圧力5〜10MPa、温度200〜300℃の条件下で、銅・亜鉛を主成分とする触媒上で反応させ、メタノールを合成する。この反応は発熱反応であり、大量の熱が発生する。この反応熱は、熱回収器203で前述のように回収され利用されるが、この反応熱は効率的に除去することが反応効率を高める上で有効であるため、熱回収のために不図示の供給管により熱回収器203にボイラ水を供給し、反応熱を中圧の200℃前後の蒸気として熱回収を行ってもよい。
【0076】
また、メタノール合成反応は平衡反応であるため、合成塔201を1回通過しただけでは収率はさほど高くないため、前述のように循環機(循環ブロア)202を用いて反応ガスを循環させることが行われる。この循環系からは、生成したメタノールと、反応に関与しない窒素・アルゴン等の不活性成分を常に抜き出す必要がある。不活性ガス成分は、パージガスとして系外に排出されるが、不活性ガス成分だけを反応系から取り除くことはできないため、循環ガスを一定量抜き出し、これに含まれる不活性ガス成分の量が投入した量と等しくなるようにすることで、反応系内の不活性ガス成分濃度を一定に保つ。
【0077】
抜き出したパージガス307aは、可燃性成分を多く含んでいるため、燃料として利用することが可能であるが、その抜き出し量が多い程、本来メタノール合成に用いるべき有効成分を抜き出してしまっていることになるので、メタノール収率が低下する。したがって、最初の合成ガスには不活性ガス成分はできるだけ含まれていない方が望ましい。
【0078】
以上では、メタノールを例にとって合成ガスからの液体燃料合成プロセスについて説明したが、ガソリン、灯油、軽油、後述のジメチルエーテル等の他の種類の燃料であっても、触媒種や反応条件が一部異なるだけで、プロセスの基本的構成はほぼ同様である。
【0079】
ガソリン、灯油、軽油等の炭化水素燃料合成の場合は、鉄系触媒またはコバルト系触媒が用いられる。鉄系触媒の場合には、一般に250〜350℃、2.0〜4.0MPaで反応が行われる。またコバルト系媒の場合には、220〜250℃、0.5〜2.0MPaで反応が行われる。これは、フィッシャー・トロプシュ反応とよばれるもので、メタノール合成に比べるとやや圧力が低いが、温度条件はほぼ同等である。なおこのプロセスでは、ガソリン、灯油、軽油等の各種の炭化水素燃料が混合して得られるので、蒸留装置を多段とすることにより、ガソリン、灯油、軽油等を分離して得ることができる。
【0080】
上記いずれのプロセスにおいても、その特性から、効率よく液体燃料合成を行うためには、以下が求められる。
まず第1に、合成ガスの発熱量が高いこと、即ち有効な成分であるH、COガスの濃度が高いことが必要である。これは余剰なガス成分、特にCO、HO等の燃焼ガス成分を多く含まないことを意味し、部分燃焼ガス化の場合には部分燃焼割合をできるだけ下げることが特に重要である。
【0081】
第2に、窒素、アルゴンなどの不活性ガス濃度はできるだけ低い方が望ましい。これらは液体燃料合成工程の前で除去することが困難であるため、反応系の循環ガスに同伴させてパージガスとして除去する。そのため、不活性ガスが多いと反応に有効な成分(H、CO等)を抜き出す量も多くなり、最終的な液体燃料の収率を低下させる原因となる。
【0082】
以上の2点は、「反応に余剰なガス成分はできるだけ少ないことが良い」ことを意味している。これは、余剰なガス成分が少ないほど、生成ガスの圧縮動力を低減でき、プロセスのエネルギー効率を高めることができることからも重要である。
【0083】
第3に、合成ガスのH/CO比が適正な値である必要がある。量論的には、メタノール合成の場合はH/CO=2、ジメチルエーテル合成の場合はH/CO=1であれば、最も反応効率が高くなる。H/CO比がこれより低い場合は、CO転化工程によりH/CO比を調整する必要があるが、これより高い場合には、CO転化工程は不要であり、コストダウンが可能である。
【0084】
第4に、合成ガス中の塩素分、硫黄分、ダスト分などの不純物成分はできるだけ低いことが望ましい。これにより、洗浄工程、脱硫工程等のコストダウンを図ることができる。
【0085】
以上に加えて、液体燃料合成反応は通常発熱反応であり中圧の蒸気が回収可能であること、また最終製品の蒸留工程では熱源として低圧の蒸気を必要とすることを考慮し、ガス化工程も含めたプロセス全体で最大限に熱利用を可能とするようにプロセスを構成することが、エネルギー効率を高める上で重要となる。
【0086】
図4のフロ−チャートを参照して、システム内で熱利用を最大限に効率化することを目的とした、本発明の第2の実施の形態であるメタノール合成システムを説明する。第1の実施の形態と共通な部分については重複した説明を省略する。
【0087】
本実施の形態のシステムは、燃焼室2から排出される燃焼ガスeから熱を回収する廃熱ボイラ111と、廃熱ボイラ111で発生した水蒸気322、及び熱回収室3で発生した水蒸気325を貯留する高圧蒸気溜112を備える。この高圧蒸気の温度は、約300℃〜500℃、好ましくは400℃程度であり、圧力は約3〜10MPa、好ましくは4MPa程度である。廃熱ボイラ111には、不図示のボイラフィードポンプで加圧されたボイラ給水321が給水される。また熱回収室3の層内伝熱管41には、不図示のボイラフィードポンプで加圧されたボイラ給水324が給水される。
【0088】
本システムは、さらに高圧蒸気溜112からの高圧蒸気326を駆動源とする蒸気タービン113、蒸気タービン113により駆動されて発電する発電機114を備える。蒸気タービン113は抽気蒸気タービンであり、中間段から低圧蒸気327を抽気する。
【0089】
発電機114による発電電力331は、生成ガス圧縮機107を駆動する電動機108に送られる。このように、電力331は、電動機108用の動力を主とする本プロセス内の所要動力をまかなう。
【0090】
もちろん、蒸気タービン113の出力軸をガス圧縮機107の動力軸に直結して、蒸気タービン113によってガス圧縮を行ってもよい。しかしながら、廃棄物の投入量や液体燃料合成量は変動し得るが、これに対応するためには、発電機114と電動機108を用いる方が好ましい。即ち、発電装置114を有すれば、余剰電力を外部に送電する等の手法をとることができ、システム内の所要動力の変動に対応することが容易である。
【0091】
蒸気タービン113からは低圧の150℃前後の蒸気を抽気し、これを液体燃料の蒸留工程における低温の熱源として利用する。蒸気タービン113による発電を行う場合、通常復水器における低温廃熱が大量に存在するため、このような低圧の蒸気を大量に抽気利用しても、発電効率はさほど低下せず、プロセス全体での熱効率向上に直接的な効果がある。
【0092】
さらにメタノール合成装置(特に熱回収器203(図3参照))からは、200℃前後の蒸気が回収できる。これは、約1.2〜1.6MPa、好ましくは1.5MPa前後の中圧蒸気として回収することで、統合型ガス化炉101のガス化室1における流動化ガスg1として用いるのが特にふさわしい。または、給水圧力を約3〜10MPa、好ましくは4MPa程度に高めることで、200℃前後の圧縮水として熱量を回収し、これを統合型ガス化炉101の熱回収室3、あるいは廃熱ボイラ111の一部に導入することでさらに加熱し、約3〜10MPa、好ましくは4MPa程度の高圧蒸気として回収し、蒸気タービン113に供給することで、発電利用することもできる。
【0093】
以上のように本実施の形態によれば、液体燃料合成工程で必要となる電力源あるいは熱源として、統合型ガス化炉101に設けた熱回収室3及び、チャー燃焼室2からの燃焼ガスeから熱回収を行う廃熱ボイラ111において発生した蒸気322を利用することとしたものである。
【0094】
前記のように、液体燃料合成は高圧下で行われるため、生成ガスbの圧縮に多大な動力を必要とすることが多い。一方、燃料合成の最終工程では蒸留により不純物との分離を行うが、この蒸留工程では比較的低温、一般には150℃前後の低温の熱量を大量に必要とする。H、COを主体とする合成ガスからの液体燃料合成反応は一般に発熱反応であるため、反応装置を工夫することによりこの反応熱を蒸気として回収することが可能である。例えばメタノール合成の場合、反応は約200〜300℃で行われるため、200℃前後の中圧蒸気が回収できる。これを前記の蒸留工程の熱源として利用するのはエネルギーのカスケード利用上好ましくない。第2の実施の形態は、以上のような問題を解決し、システム内で熱利用を最大限に効率化することを可能とする。
【0095】
また、第2の実施の形態及び図4には示していないが、対象とする処理物の含水率が比較的高い場合には、低圧蒸気または中圧蒸気の一部を原料の乾燥源として用いることもできる。特に、エネルギーのカスケード利用の観点からは、乾燥熱源としては150℃程度の低圧蒸気が好ましい。前述したように、低圧蒸気の利用は復水器での低温廃熱を減らす効果があるため、発電効率はさほど低下しない。このように構成すると、原料水分の低下により冷ガス効率が向上するため、液体燃料の回収量を増大させることができる他、プロセス全体での熱効率向上にも効果がある。
【0096】
図5に、本発明による第3の実施の形態である液体燃料合成システムとしてのジメチルエーテル合成システムのフローチャートを示す。本実施の形態では、廃棄物または固体燃料をガス化する統合型ガス化炉101と、ガス化炉101において発生した生成ガスbを洗浄するガス洗浄装置103と、洗浄したガスを利用したDME(ジメチルエーテル)合成装置400と、DME合成装置400からの余剰ガスとしてのパージガス507aの少なくとも一部を、高温洗浄液116と接触させて加湿する調整装置としての加湿装置115と、を含んで構成されるシステムである。パージガス507aは、水素、一酸化炭素、炭化水素、二酸化炭素を主成分とする
このシステムにおける流動化ガスg1は、図5に示す蒸気供給ライン118から供給される水蒸気のみであってもよく、あるいはパージガス507aのみであってもよい。さらにこのシステムにおける流動化ガスg1は、蒸気供給ライン118から供給される水蒸気にパージガス507aが添加されたものであってもよく、あるいは図5に示すように蒸気供給ライン118から供給される水蒸気に、加湿装置115で加湿された水蒸気を含むパージガス507aが添加されたものであってもよい。
統合型ガス化炉101には、ガス化室1から抜き出された流動媒体c3と不燃物dを分級する分級装置102が設置されている。なお、ここでは液体燃料合成システムの一例としてジメチルエーテル合成システムについて説明するが、同様なシステムは、前述のガソリン等、他の液体燃料の合成に用いることもできる。また、本実施の形態では、統合型ガス化炉101、分級装置102は、前述の第1の実施の形態と同一である。
【0097】
本実施の形態のジメチルエーテル合成システムは、生成ガスbを発生する統合型ガス化炉101、生成ガスbを洗浄するガス洗浄装置103、洗浄されたガスから硫黄分を除去する脱硫装置105、脱硫されたガスについてCO転化するCO転化装置104が、生成ガスbの流路に沿って、設置されている。さらに、CO転化されたガス501aを圧縮するガス圧縮機107及び圧縮されたガス501bを用いてジメチルエーテルを合成するジメチルエーテル合成装置400が設置されている。
【0098】
ジメチルエーテル合成装置400から排出されるガスは、未反応の、水素、一酸化炭素、炭化水素と、反応生成物である炭酸ガスとを含んでいる。この排出ガスは、その一部が合成装置400内で循環ガス507bとして利用される一方、残りはパージガス507aとして加湿装置115に導かれる。加湿装置115においては、ガス洗浄装置103からの高温洗浄液116と接触し、パージガス507aは加湿される。加湿されたガスはガス化剤として統合型ガス化炉101のガス化室1に供給される。加湿装置115において、高温洗浄液116はパージガス507aに顕熱を奪われ冷却されて、低温洗浄液117となり、排出される。加湿装置115から排出された低温洗浄液117はガス洗浄装置103に戻される。
ここで、ガス洗浄装置103における熱収支を考える。高温の生成ガスbは、ガス洗浄装置103に流入し、低温の洗浄液117と向流接触し、熱交換が行われ、生成ガスbは冷却されて顕熱を失い、低温洗浄液117は加温されて顕熱を得る。すなわち、生成ガスbの顕熱が洗浄液に移行する。高温洗浄液116の顕熱は、加湿装置115でパージガス507aに回収され、高温化されたパージガス507aは、流動化ガスg1としてガス化室1に送られる。すなわち、ガス洗浄装置103で生成ガスbが失った顕熱は、洗浄液116、117とパージガス507aを介してガス化室1で回収され、ガスの顕熱は有効に利用される。
【0099】
統合型ガス化炉101のガス化室1に供給された原料aは、該ガス化室1内で熱分解ガス化され、熱分解ガス化ガスとチヤーとを生成する。生成した生成ガスbはガス洗浄装置103に導かれ、洗浄される。
【0100】
図6に示すように、該ガス洗浄装置103の1例として、湿式洗浄塔103Aがある。湿式洗浄塔103Aは、ガス出口部123と、ミストセパレータ122と、充填層121と、集液器124と、沈降部118とを含んで構成される。
湿式洗浄を採用することにより、生成ガスbと洗浄液117とを向流接触させ、生成ガスb中の塩化水素や硫化水素などの酸性ガスを吸収除去できる。したがって、洗浄液116には苛性ソーダなどのアルカリを混入したものを用いてもよく、洗浄液116が酸性ガスの吸収により酸性となることを防ぐことにより、機器の腐食を低減することも可能である。
【0101】
図に示した湿式洗浄塔103Aは、塔上部から洗浄液117を、塔中間部から生成ガスbを供給し、中央部の充填層121にて交流接触するものである。充填層121を通り、洗浄液117によって洗浄された生成ガスbは、塔上部に設けられたミストセパレータ122にて、同伴するミストを除去され、塔最上部に設けられたガス出口部123から排出され次工程に送られる。生成ガスb中にダストf等の固形分が含まれる場合には、ダストf等の固形分は生成ガスbが充填層121を通過する過程で洗浄液116側に移行し、生成ガスbは、清浄なガスとなる。
【0102】
ガス化炉101から供給される生成ガスbは、高温であるが、湿式洗浄塔103Aにて低温の洗浄液117と接触することでその顕熱は洗浄液117に移行し、低温の低温洗浄液117は高温化し、高温洗浄液116となる。高温化した高温洗浄液116は、集液器124から塔下部の沈降部118に送られ、沈降部118で液中に含まれる固形分を沈殿分離され、分離された固形分は濃縮して塔下部から排出される。固形分の沈降分離においては液の上昇速度が遅いほど細かい粒子の分離が可能となるため、塔下部の沈降部118の径は広い方が望ましい。固形分を分離された洗浄液は、高温洗浄液116として加湿装置115に供給される。沈降部118に堰119Aを設置し液オーバーフロー部119を設け、オーバーフローした清浄な洗浄液のみを高温洗浄液116として加湿装置115に供給することで、送液系の閉塞等のトラブルを回避することが可能である。
【0103】
図5に示すように、ガス洗浄装置103にて洗浄された生成ガスbは、脱硫装置105に送られ、脱硫装置105にてガス洗浄装置103で除去されなかった硫黄化合物が除去され、CO転化装置104に送られる。
【0104】
ジメチルエーテル合成の場合、ガス中のH/CO比は、前述のように1以上であることが望ましいが、脱硫後のガス中のH/CO比をこの適正な値とするために、CO転化を行う。CO転化装置104では、生成ガスb中のCOと水蒸気との反応により、HとCOに転化する。CO転化装置104を出たガスは、ガス圧縮機107により昇圧され、DME合成装置400に供給される。
【0105】
ジメチルエーテル合成プロセスは大きくわけて2つの方法がある。1つは合成したメタノールの脱水反応によるものであり、この方法の場合、前述のメタノール合成方法と同じシステムに脱水触媒装置を付加したシステムとなる。反応条件もメタノール合成プロセスと同じ(温度 250〜300℃、圧力 5〜10MPa)である。もう1つの方法は、直接合成法であり、250〜280℃、3〜7MPaの条件が適しており、特に260℃、5MPaで高い選択性を示す。
【0106】
図7に、ジメチルエーテル合成プロセスの1つである直接合成法の場合のDME合成装置400の一例を示す。DME合成装置400は、DME合成塔装置401、冷却装置402、気液分離器403、DME蒸留装置404、および循環機405(例えば遠心ブロア)を含んで構成される。この合成装置400はスラリー床反応装置である。ガス圧縮機107によりジメチルエーテル合成圧力にまで昇圧されたガス501bは、ジメチルエーテル合成塔装置401の塔底部に送りこまれる。ジメチルエーテル合成塔装置401で反応した後のガスはジメチルエーテル合成塔装置401の塔最上部から全量、冷却装置402に送りこまれて冷却され、製品であるジメチルエーテルと副生成物であるメタノールは液化され、冷却装置402から気液分離装置403の最上部に送りこまれる。気液分離装置403において液成分である粗ジメチルエーテル508とガス成分に分離され、液成分は気液分離装置403の底部からジメチルエーテル蒸留装置404の中間部に送られる。ジメチルエーテル蒸留装置404では、製品であるジメチルエーテル509と、副生成物であるメタノール510、水とを蒸留により分離し、ジメチルエーテル509を最上部から、メタノール510や水を底部から、回収する。
【0107】
一方、気液分離装置403で分離されたガス成分の一部は循環機405によって循環され、循環ガス507bとしてガス圧縮機107で昇圧されたガス501bとともにジメチルエーテル合成塔装置401ヘ供給される。また、残りのガスはパージガス507aとしてジメチルエーテル合成装置400外へ送り出される。
【0108】
図5に示すように、送り出されたパージガス507aの少なくとも一部は加湿装置115に導かれ、高温洗浄液116との接触により加湿される。パージガス507aの一部を加湿装置115に導いてもよい。加湿装置115に導かれないパージガス507aは系外に排出してもよい。加湿されたガスはガス化剤g1として統合型ガス化炉101のガス化室1に供給される。すなわち、本実施の形態においては、ジメチルエーテル合成装置400で未反応ガスとして液成分と分離回収されたガスのうち、統合型ガス化炉101にて原料をガス化するのに必要なガスを加湿装置115にて加湿した後に供給するものである。ジメチルエーテル合成用ガスとしてはH/CO比が1以上であることが望ましいが、生成ガスbのH/CO比が1を超える場合には、ジメチルエーテル合成工程で生成するCOを含んだ未反応ガスを加湿してガス化室1のガス化剤として用いることで生成ガスbをCOリッチなガスとし、H/CO比を1に近づけることが可能である。最適な生成ガスb中のH2とCOのモル比となるように加湿装置115に供給されるパージガス507aの量を調整することができる。ガス化炉101の後段からジメチルエーテル合成装置400の前段までのいずれかの箇所にガス成分測定装置を設け、そのガス成分測定装置での測定結果に基づいてパージガス507aの供給量を調整することができる。すなわち、加湿装置115は生成ガスのH/COモル比調整機能を有する。
【0109】
加湿装置115には、図6の洗浄装置と同様の充填層装置を用いてもよく、パージガス507aと洗浄装置103からの高温洗浄液116とを向流接触させることでガス化室1の流動化ガスg1として供給するパージガス507aを加湿することができる。高温洗浄液116と接触して加湿装置115から排出されるガスは、その排出温度での飽和蒸気圧に相当する分の水蒸気を含んだガスとなる。したがって、高温洗浄液116の温度が高いほど多くの水蒸気を含んだガスとすることができる。
【0110】
図4に示した第2の実施の形態と同様に、本実施の形態においても、統合型ガス化炉101のチャー燃焼室2から排出される燃焼ガスeから熱を回収する廃熱ボイラ111、廃熱ボイラ111で発生した蒸気を貯める高圧蒸留溜112を備えるようにしてもよい。このようにするとシステム内で熱利用を効率よく行うことができる。
【0111】
以上本実施の形態によれば、ガス化室1で発生した生成ガスbと、チャー燃焼室2で発生した燃焼ガスeとが分離されるので、ジメチルエーテル合成に適した高カロリーの生成ガスbを得ることができ、ガス洗浄装置103、脱硫装置105により生成ガスbの塩化水素、硫化化合物等を除去し、CO転化装置104および加湿装置115のH/COモル比調整機能により生成ガスb中のH/COモル比を適正な値とし、加湿装置115により加湿された少なくとも一部のパージガス507aを水蒸気に添加し、パージガス507aが添加された水蒸気を流動化ガスg1としてガス化室1に送り込むことができ、ガス洗浄装置103で生成ガスbが失った顕熱を洗浄液116、117とパージガス507aを介してガス化室1で回収できるので、効率よくジメチルエーテルを製造することが可能なジメチルエーテル合成システムを提供することができる。
【0112】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、高温の流動媒体を内部で流動させるガス化室を備えるので、被処理物をガス化して水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを発生することができ、高温の流動媒体を内部で流動させチャーを燃焼させるチャー燃焼室を備えるので、流動媒体を加熱することができ、発生した生成ガスを用いる合成装置を備えるので液体燃料を合成することができ、第1の仕切壁を有するのでガス化室とチャー燃焼室とはそれぞれの流動床の界面より鉛直方向上方においてはガスの流通がないよう仕切ることができ、第1の仕切壁の下部にはガス化室とチャー燃焼室とを連通する連通口が形成されているので、連通口を通じてチャー燃焼室側からガス化室側へチャー燃焼室で加熱された流動媒体を移動させることができる。
【0113】
この構成によれば、ガス化室で発生した生成ガスと、チャー燃焼室で発生した燃焼ガスとが分離されるので、高カロリーの液体燃料合成に適した生成ガスを得ることができ、高効率で液体燃料を製造することのできる液体燃料合成システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態であるメタノール合成システムのフロー図である。
【図2】本発明の実施の形態で用いる統合型ガス化炉の概念的断面図である。
【図3】本発明の実施の形態で用いるメタノール合成装置の一例のフロー図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態であるメタノール合成システムのフロー図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態であるジメチルエーテル合成システムのフロー図である。
【図6】図5のジメチルエーテル合成システムに用いられるガス洗浄装置103の構成を示すブロック図である。
【図7】図5のジメチルエーテル合成システムに用いられるDME合成装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 ガス化室
2 燃焼室
3 熱回収室
101 統合型ガス化炉
103 ガス洗浄装置
104 CO転化装置
105 脱硫装置
106 脱炭酸装置
107 ガス圧縮機
108 電動機
109 調整装置
111 廃熱ボイラ
112 高圧蒸気溜
113 蒸気タービン
114 発電機
115 加湿装置
116 (高温)洗浄液
117 (低温)洗浄液
118 蒸気供給ライン
200 メタノール合成装置
201 メタノール合成塔
203 熱回収装置
301b 圧縮ガス
307a パージガス
309 メタノール
400 ジメチルエーテル合成装置
401 ジメチルエーテル合成塔装置
402 冷却装置
403 気液分離器
404 ジメチルエーテル蒸留装置
405 循環機
501b 圧縮ガス
507a パージガス
509 ジメチルエーテル
510 メタノール
b 生成ガス
e 燃焼ガス
g1 流動化ガス

Claims (7)

  1. 高温の流動媒体を内部で流動させ、第1の界面を有するガス化室流動床を形成し、前記ガス化室流動床内で被処理物をガス化して水素と一酸化炭素を主成分とする生成ガスを発生するガス化室と;
    高温の流動媒体を内部で流動させ、第2の界面を有するチャー燃焼室流動床を形成し、前記ガス化室でのガス化に伴い発生するチャーを前記チャー燃焼室流動床内で燃焼させ前記流動媒体を加熱するチャー燃焼室と;
    前記ガス化室で発生した生成ガスを用いて液体燃料を合成する合成装置とを備え;
    前記ガス化室と前記チャー燃焼室とは、前記それぞれの流動床の界面より鉛直方向上方においてはガスの流通がないように第1の仕切壁により仕切られ、前記第1の仕切壁の下部には前記ガス化室と前記チャー燃焼室とを連通する連通口であって、該連通口の上端の高さは前記第1の界面および第2の界面以下である連通口が形成され、該連通口を通じて、前記チャー燃焼室側から前記ガス化室側へ前記チャー燃焼室で加熱された流動媒体を移動させるように構成され
    前記ガス化室には前記流動床を流動化する流動化ガスを供給するように構成され;
    前記流動化ガスとして、水蒸気を主に用い、前記水蒸気に、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスのうちいずれか1種以上のガスを混合して用いるように構成され;
    前記生成ガスの組成を測定するガス成分測定装置と
    前記水蒸気への前記1種以上のガスの添加量を前記ガス成分測定装置の測定結果に基づいて調整する調整装置とをさらに備える;
    液体燃料合成システム。
  2. 前記調整装置は、前記生成ガス中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が2〜5となるように調整するように設定された、請求項1に記載の液体燃料合成システム。
  3. 前記調整装置は、前記生成ガス中の水素ガスと一酸化炭素ガスのモル比が0.7〜2となるように調整するように設定された、請求項1に記載の液体燃料合成システム。
  4. 前記液体燃料合成システムは、水素ガス、炭化水素ガス、炭酸ガスのうち1以上のガスを余剰ガスとして発生し、前記余剰ガスを前記ガス化室の流動化ガスとして用いるように構成された、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の、液体燃料合成システム。
  5. 前記チャー燃焼室に接して設けられた熱回収室を備え;
    前記チャー燃焼室と前記熱回収室との間には前記チャー燃焼室流動床の流動層部を仕切る第2の仕切壁が設けられ、該第2の仕切壁の下部には開口部が形成され、チャー燃焼室の流動媒体は前記第2の仕切壁の上部から前記熱回収室に流入し、前記開口部を通じて前記チャー燃焼室に戻る循環流が形成されるように構成された;
    請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の液体燃料合成システム。
  6. 前記ガス化室と前記合成装置との間に、前記生成ガスを洗浄するガス洗浄装置を備える、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の、液体燃料合成システム。
  7. 前記調整装置は、前記生成ガスを洗浄した後の高温洗浄液を前記洗浄装置から導入し、前記高温洗浄液を熱源として用いて、前記1種以上のガスを加湿するよう構成された、請求項6に記載の液体燃料合成システム。
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