JP4123948B2 - ミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法およびその製造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関し、特に表面の平滑度や塗装後の表面外観に優れたミニマムスパングルを簡便に形成することができる製造方法、およびその製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、鋼板表面に付着した溶融亜鉛が凝固する際、結晶が凝固核を中心にして樹枝状に成長し、その表面に花模様のスパングルが発生する。このスパングル模様は、建材などの用途の場合、その表面の美しさから好まれる存在である。しかし、スパングル模様は、自動車用鋼板のように塗装して使用されるものの場合、スパングルによる表面の凹凸によって塗装後の表面平滑度を損ねたり、結晶方位の差に起因して化成処理した時にむらを生じたりするため好ましくない。そのため、このような用途には、スパングルを微細化したゼロスパングル材あるいはミニマムスパングル材が必要となる。ゼロスパングルとミニマムスパングルの区別は明確ではないが、一般に、スパングルが1mm以下に均一に微細化されたものをゼロスパングル、2〜7mm程度のものをミニマムスパングルと称している。
【0003】
さて、上記のミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板を得るには、一般に、めっき浴槽から引き上げられた鋼板表面の亜鉛めっき層が凝固する前に、水や蒸気を噴霧して急速冷却し、結晶が成長する時間的余裕を与えないようにしてスパングルの大きさ調整する方法、あるいは、PbはZnと融点の低いZn−Pb固溶体を形成することから、溶融亜鉛浴中のPb量を低減することによりミニマムスパングルを得る方法等が行われている。また、最近では、めっき浴上で亜鉛が凝固する直前にりん酸系の薬液を吹き付けるMS処理やZnなどの金属粉末を吹き付けて急速凝固させるハーティ法等が採用されている。
【0004】
しかし、急速冷却は凝固前に行う必要があり、また、薬液やZn粉末の噴霧は、亜鉛が凝固するタイミングで噴霧することが重要で、凝固前に噴霧してもまた凝固後に噴霧しても効果がない。そのタイミングは、Zn付着量や操業条件(板厚、ラインスピード等)によって変化する。そこで、放射温度計やZn付着量計あるいは赤外線映像装置(サーモビュアー)を設置し、鋼板の温度分布や凝固位置、付着量を検出し、冷却装置や噴霧装置等の位置を変更する方法等が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、非特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平2-298248号公報
【特許文献2】
特開平7-070727号公報
【非特許文献1】
坪田ら:「材料とプロセス」(社)日本鉄鋼協会,3(1990)p658.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の従来技術では、冷却用の水、蒸気、空気、N2ガス等の冷媒配管やポンプ等の設置が必要であり、また、水や薬液、Zn粉末等の噴霧装置を操業条件の変化による凝固点の変動に応じて上下させるためには、計装機器や可動装置等が必要であり、設備費用やメンテナンス費用がかかるという問題点があった。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術のような特別の設備と特別の操作を必要とすることなく、ミニマムスパングル鋼板を簡便に形成することができる製造方法とその製造装置を提案することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、亜鉛めっき浴槽から引き上げられた未凝固のめっき鋼板の周囲に、筒状の冷却ボックスを設置し、該冷却ボックスの煙突作用によって上昇気流を発生させ、溶融亜鉛を急速凝固させることによりスパングルの微細化が図れることを見出した。また、上記煙突作用を発現させるための冷却ボックスとしては、既設の合金化炉を用いることが有効であることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、溶融亜鉛を付着させためっき鋼板を、めっき浴槽から引き上げ、付着量制御装置を経て冷却して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、上記めっき後の鋼板の冷却に当たり、上記付着量制御装置の下流側に設置された加熱、保持せず、かつ30m以上の長さに亘って鋼板周囲をカバーする合金化炉からなる煙突作用のある冷却ボックス中を通過させることによって、未凝固の亜鉛を急速冷却することを特徴とするミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
【0011】
また、本発明は、溶融亜鉛を付着させためっき鋼板を、めっき浴槽から引き上げ、付着量制御装置を経て冷却して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する設備において、上記めっき浴槽上の通板経路に沿って配設された付着量制御装置の下流側に、煙突作用によって未凝固の亜鉛を急速冷却して、スパングルの微細化を図るための、加熱、保持せず、かつ30m以上の長さに亘って鋼板周囲をカバーする合金化炉からなる筒状の冷却ボックスを配設したことを特徴とするミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて溶融亜鉛めっき鋼板を製造するに際し、めっき浴槽上の引き上げ部に配設されたZn付着量制御装置の下流に、鋼板パスラインを覆って筒状の冷却ボックスを設置し、この中に未凝固の溶融Znが付着した鋼板を通過させ、該冷却ボックスの煙突作用によって上昇気流を発生させて鋼板表面の空気流速を速くすることにより、未凝固Znの冷却速度を速めてミニマムスパングル鋼板を製造する技術である。
【0014】
ここで、上記煙突作用とは、垂直通路内の空気(気体)が熱せられたとき、その密度が周囲の空気(気体)よりちいさくなるために上昇する現象を言い、その通風力は、内外空気(気体)の密度差と流入・流出口の高さの積に比例する。したがって、本発明において、煙突作用を有効に発現させるためには、引き上げ部に設置する筒状の冷却ボックスの長さは長いほど有効である。
【0015】
この煙突作用の効果について、実験結果に基づきさらに説明する。
図1は、溶融亜鉛めっきラインにおいて、めっき後鋼板1がめっき浴槽2から垂直に引き上げられ、ガスワイピング3でZnの付着量を調整されたのち、冷却される工程を示したものである。この図で、ガス加熱帯4、保持帯5および冷却帯6は、溶融亜鉛めっきした鋼板を加熱して合金化し合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造するための合金化炉7を構成するものである。通常、この合金化炉7は、めっき層の合金化処理を行わないめっき鋼板を製造する場合には、後退・除去されているものである。しかし、本発明では、この合金化炉7は、上記煙突作用を発現させるための最も重要な要素であり、設置しておく必要がある。ただし、ガス加熱帯4および保持帯5による加熱、保持は行わない。
【0016】
さて、加熱焼鈍後、溶融亜鉛めっき浴槽に浸漬された鋼板は、未凝固のZnを表面に付着した状態で引き上げられる。この時の鋼板温度はめっき浴槽の温度である450℃以上に加熱されている。そのため、めっき浴槽から引き上げられる鋼板周囲の空気は温められて密度が低下し、周囲の空気との間に密度差を生じる。しかし、ここで、上記合金化炉7が設置されていない場合には、鋼板の走行にともなう空気の流れによって冷却されるのみであり、図1右側に示した破線のような冷却速度で冷却される。一方、図1のように、鋼板の周囲に合金化炉7を設置した場合には、上記合金化炉内の空気は温められて、合金化炉外の空気との間に密度差が発生する。その結果、この合金化炉は煙突として機能し、この中を高温で通過するめっき後鋼板の周囲には上昇気流が発生し、鋼板表面は急速に冷却され、図1右側に示した実線のような冷却速度で冷却されることになる。
【0017】
図2は、連続溶融亜鉛めっきのラインで、めっき層の合金化処理を行わない亜鉛めっき鋼板を製造する際に、合金化炉を設置した場合としない場合の冷却速度の変化を実測した結果を示したものである。ここで、縦軸の冷却速度(℃/sec)は、合金化炉7を構成するガス加熱帯4の入側と出側で放射温度計を用いて鋼板温度を測定し求めた値である。一方、横軸は、ラインスピード(LS:m/min)と鋼板の板厚(D:mm)との積で、いわゆる熱容量に相当するものである。なお、合金化炉は、当然のことながら、加熱は行っていない。この図から、合金化炉を設置したことによって、煙突作用が発現し、冷却速度が約3〜4℃/sec上昇していることがわかる。
【0018】
図3は、上記図2で示したLSDが70〜90mm・m/minにおける冷却速度とスパングルの平均径との関係を示したものである。ここで、スパングルの平均径は、25mmφの面積中にあるスパングル数nを計測し、スパングルを真円と仮定し、下記式;
D=25×√(1/n)
から求めた値である。
この図から、合金化炉を設置した場合には、スパングルの平均径が7mm以下となっており、ミニマムスパングルが得られていることがわかる。
【0019】
上記本発明の説明においては、冷却ボックスとして合金化炉を用いる場合について説明した。合金化炉は、めっき浴槽の直上にあるガスワイパーのようなZn付着量制御装置の下流に、約45m以上の長さに亘って鋼板周囲をカバーしているため、本発明の煙突効果を得るためには最適な設備である。なお、Zn付着量制御装置とガス加熱帯との間が大きく開いている場合には、煙突効果を高めるためにガス過熱帯の下側にスカート状に筒状を追加して設置してもよい。さらに、合金化炉に上向きのノズルを取り付けて空気あるいはN2ガス等を噴出したり、また、合金化炉の上部にファンを取り付けて炉内の空気を吸引したりして、上昇気流をさらに強めることを行ってもよい。
【0020】
また、合金化炉を有していない設備の場合には、簡単な筒状の冷却ボックスを着脱可能に設置してもよい。ただし、合金化炉を有しない設備では、一般に、めっき浴槽からの引き上げ部の長さが短いため、十分な煙突効果が得られない可能性がある。その場合には、他のミニマムスパングル手段と併用することが望ましい。
【0021】
【実施例】
図1に示したのと同じように亜鉛めっき後の引き上げ部に合金化炉を設置した連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、板厚:0.4〜1.2mm、板幅:780〜1830mmの冷延鋼板を焼鈍後、ライン速度:70〜150m/minで付着量:35〜120g/m2の溶融亜鉛めっき処理を施した後、上記合金化炉を冷却ボックスとして用いて、ミニマムスパングル材を製造した。また、合金化炉は、めっき槽の上約7.6mから38mまでの間の約30mに亘って設置されている。なお、比較材として、上記と同じ冷延鋼板を、同じ条件で溶融亜鉛めっき後、合金化炉を取り外して冷却し、溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。得られた製品について、それぞれのスパングル径を前述の方法で測定し、結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
【0023】
表1から明らかなように、合金化炉による煙突効果を有効に利用した本発明の方法では、スパングル径が7mm以下のミニマムスパングルの亜鉛めっき鋼板が得られている。一方、合金化炉を設置しなかった比較例の場合には、スパングル径は平均9.4mmで、いわゆるレギュラースパングル品となっている。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特別の設備を必要とすることなく、また操業条件の変化に対して特別の操作をすることなくミニマムスパングル鋼板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 連続溶融亜鉛めっきラインのめっき後の引き上げ部を模式的に示した図である。
【図2】 合金化炉の設置の有無によるめっき後鋼板の冷却速度の差を示すグラフである。
【図3】 合金化炉の設置の有無によるめっき後鋼板の冷却速度の差がスパングル径に及ぼす効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1.めっき後鋼板
2.めっき浴槽
3.ガスワイピング装置
4.加熱帯
5.保持帯
6.冷却帯
7.合金化炉
8.トップロール
Claims (2)
- 溶融亜鉛を付着させためっき鋼板を、めっき浴槽から引き上げ、付着量制御装置を経て冷却して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する方法において、上記めっき後の鋼板の冷却に当たり、上記付着量制御装置の下流側に設置された加熱、保持せず、かつ30m以上の長さに亘って鋼板周囲をカバーする合金化炉からなる煙突作用のある冷却ボックス中を通過させることによって、未凝固の亜鉛を急速冷却することを特徴とするミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 溶融亜鉛を付着させためっき鋼板を、めっき浴槽から引き上げ、付着量制御装置を経て冷却して溶融亜鉛めっき鋼板を製造する設備において、上記めっき浴槽上の通板経路に沿って配設された付着量制御装置の下流側に、煙突作用によって未凝固の亜鉛を急速冷却して、スパングルの微細化を図るための、加熱、保持せず、かつ30m以上の長さに亘って鋼板周囲をカバーする合金化炉からなる筒状の冷却ボックスを配設したことを特徴とするミニマムスパングル溶融亜鉛めっき鋼板の製造装置。
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