JP4121330B2 - 水難溶性ポリフェノールを含む機能性素材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリフェノールを含有する植物抽出物に対してポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる反応液の水不溶性画分を含む機能性素材、すなわち水難溶性ポリフェノールを含む機能性素材に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまでに、ポリフェノールを含有する植物抽出物が、抗菌性、消臭性、抗酸化活性などの機能を有していることが知られている。また、ポリフェノールを含有する植物抽出物は、植物素材として製造が容易であり、かつ安全性が高いことから、繊維、プラスチック、塗料、ゴム、木材、紙などの多くの製品に添加され、その機能性を活かした商品開発がなされている。
【0003】
しかし、植物抽出物に含まれるポリフェノールのほとんどが水溶性であることから、その加工法や耐久性などに問題があった。例えば、度重なる洗浄により有効成分であるポリフェノールが溶出し、結果として製品の機能性が経時的に低下するという難点があった。また、製造工程において、ポリフェノールを含む混合物が吸湿性であることから、合成樹脂などの有機反応を主体とする工程に用いるには不都合があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記問題点を解決すべく、本発明は、水に対して難溶な機能性ポリフェノール含有素材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下に記載の手段を採用する。
(1) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む抗菌剤。
(2) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む消臭剤。
(3) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む抗ウイルス剤。
(4) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む抗菌剤を製造する方法。
(5) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む消臭剤を製造する方法。
(6) ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む抗ウイルス剤を製造する方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の機能性素材は、ポリフェノールを含有する植物抽出物に対してポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる反応液の水不溶性画分を含むものである。
【0007】
本発明で使用されるポリフェノールを含有する植物抽出物は、ポリフェノールを含有する植物からポリフェノールを含むように抽出された物であれば特に限定されないが、ポリフェノールのなかでもとりわけカテキン類を多く含有する植物からの抽出物が好ましい。ここで、カテキン類とは、3−オキシフラバン誘導体もしくはこれらの混合物をいう。カテキン類として、例えば、(−)−エピカテキン(EC)、(−)−エピガロカテキン(EGC)、(−)−エピカテキンガレート(ECG)、(−)−エピガロカテキンガレート(EGCG)、さらにその異性体である(±)−カテキン(C)、(−)−ガロカテキン(GC)、(−)−カテキンガレート(CG)、(−)−ガロカテキンガレート(GCG)、これらカテキン類の酸化2量体であるテアフラビン類、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0008】
カテキン類を多量に含有する植物としては、アカネ科(例えば、アセンヤク(阿仙薬;Uncaria gambir Roxburch))、ツバキ科(例えば、茶(Camellia sinensis))、マメ科(例えば、Acacia catechin Willdenow)の植物等が挙げられるが、なかでも入手しやすさ、加工しやすさ、安価であることから茶植物が好ましい。抽出に使用する植物の部位としては、任意の部位でよいが、例えば、葉、茎、木部、樹皮、実、種子、根を用いることができる。好ましくは、茶植物の葉(茎、芽を含む)を用いる。また、茶の種類としては、緑茶、釜炒り緑茶、ほうじ茶などの不発酵茶、ウーロン茶、包種茶などの半発酵茶、紅茶などの発酵茶、これらの混合物が挙げられる。
【0009】
抽出の仕方は、ポリフェノールが抽出される手法であれば特に限定されない。例えば、日本国特許第2703241号、特開平2-311474号、日本国特許第3052172号、日本国特許第3052174号に記載される方法を使用することができる。好ましくは、水(冷水および熱水を含む)、メタノール、エタノールなどの抽出溶媒を用いて、植物に対して抽出操作を行うことにより、ポリフェノールを含有する植物抽出物を得ることができる。
【0010】
より簡便には、ポリフェノール含量が90重量%以上の茶抽出物、商品名テアフラン90S(株式会社伊藤園製)、またはポリフェノール含量が30重量%以上の茶抽出物、商品名テアフラン30A(株式会社伊藤園製)を使用することができる。好ましくは、ポリフェノール含量が少なくとも30重量%以上の茶抽出物を用いる。このように、ポリフェノール成分の含量が高い抽出物は、粗抽出物を使用したときより重合反応にかかる時間が短いという利点を有する。
【0011】
本発明においてポリフェノールを重合させる反応は、フェノール樹脂を作成する際の反応と同様にして行うことができる。すなわち、ポリフェノール分子が縮合重合反応により高分子となり、水に難溶なポリフェノールが形成される反応である。より具体的に、縮合重合反応は、ポリフェノールのもつフェノール核に、酸触媒下でアルデヒドが付加し、別のポリフェノールと縮合反応を起こす。この反応において、フェノール性水酸基は反応に関与せず保持されている。この反応で形成される水に難溶なポリフェノールは、以下、重合化ポリフェノール、水難溶性ポリフェノールともいう。
【0012】
縮合重合反応に使用するアルデヒドの種類は限定されないが、好ましくは鎖式アルデヒド、例として、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、1−プロパナールを用いることができる。なかでも反応性や簡便性の観点からホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、短鎖アルデヒドが好ましい。ここでアルデヒドの使用量は、特に限定されないが、その添加量や濃度の違いによって、有機溶媒への溶解度が異なる不溶化物(重合化ポリフェノールを含む)を得ることができるため、適宜設定することが好ましい。
【0013】
例えば、原料として用いる植物抽出物に含有されるポリフェノールの量に対して、モル比で0.5〜過剰量に相当する量のホルムアルデヒドを使用することができる。ここで「植物抽出物に含有されるポリフェノールの量(モル)」は、主成分の没食子酸エピガロカテキンの分子量を用いて換算した値をいう。以下ポリフェノールの量とは、このようにして求めた値をいう。
【0014】
後述の調製例1のように、ホルムアルデヒドを、原料のポリフェノールの量(約3ミリモル)に対して過剰量(調製例1では約40倍以上)使用した場合、あらゆる有機溶媒および水に対して難溶な重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を得ることができる。また、後述の調製例2のように、ホルムアルデヒドを、原料のポリフェノールの量(約3ミリモル)に対してモル比で0.5倍程度使用した場合、極性の高い有機溶媒(アセトンやメタノールなど)には溶解するが、水に難溶な重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を得ることができる。このように、アルデヒドの添加量を変えることで、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分の溶解度を任意に調整することができる。
【0015】
あるいは、水不溶性画分の溶解度は、重合反応溶媒中のポリフェノールの濃度によっても調整することができる。重合反応溶媒中のポリフェノール濃度は、特に限定されないが、反応効率や後処理の簡便さから、1〜40重量%が望ましい。
【0016】
例えば、ホルムアルデヒドを、原料のポリフェノール量(約1.5ミリモル)に対してモル比で1倍程度使用する場合、ポリフェノール濃度が5重量%のとき、全ての溶媒に対して不溶な重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分が得ることができる。一方、ポリフェノール濃度が2重量%のとき、極性の高い有機溶媒(アセトンやメタノールなど)には溶解するが、水に難溶な重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を得ることができる。
【0017】
このように、ホルムアルデヒドの使用量および/またはポリフェノールの濃度を調整することにより、所望の溶解度を有する重合化ポリフェノールをつくることが可能である。このことを、本発明者らは本発明において新たに見出した。
【0018】
また、ポリフェノール分子の縮合重合反応に使用される酸触媒については、その種類は特に限定されないが、例えば、塩酸や蓚酸を使用することができる。本反応では触媒としての使用であるため濃酸を使用する必要はない。例えば酸触媒として、1%希塩酸溶液を使用することができる。
【0019】
ポリフェノールを重合し高分子化させる反応は、例えば下記のように行うことができる。まず、ポリフェノールを含有する植物抽出物(例えばテアフラン90S)を溶媒(例えば水)に常温にて溶解し、溶液中のポリフェノール濃度を所定の濃度(例えば1〜60重量%)にする。その後、この溶液に、酸(例えば塩酸)を最終濃度1%程度になるように添加するか、もしくはこの溶液を、酸1%程度の希釈溶液に溶解する。その後、適量(例えばポリフェノールの量に対してモル比で0.5〜過剰量)のアルデヒド化合物(好ましくはホルムアルデヒド)を添加し、常温もしくは加温しながら攪拌し、不溶物を分取する。得られた不溶物を蒸留水で洗浄し、水不溶性画分を得る。
【0020】
ここで、ポリフェノールを含有する植物抽出物、酸、およびアルデヒド化合物を添加する順序やこれら添加物の濃度、加熱の有無は、特に限定されず、植物抽出物に含まれるポリフェノールの反応性に応じて適宜設定する。
【0021】
得られた水不溶性画分には、重合し高分子化した水難溶性のポリフェノールが含有される。このように本発明において、水不溶性画分に含まれるポリフェノールは、該条件下では水に不溶であるが、条件が変われば水に溶解する可能性があるという意味において水難溶性という。
【0022】
本発明の好ましい機能性素材の一例として、ポリフェノールを含有する茶植物の葉抽出物(テアフラン90S)に対して、下記のとおりポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる反応液の水不溶性画分が挙げられる。すなわち、ポリフェノールを重合させる反応は、茶植物の葉抽出物(テアフラン90S)を溶媒(水)に常温にて溶解し、溶液中のポリフェノール濃度を40重量%にし、次いで、この溶液に酸(塩酸)を最終濃度1%になるように添加し、その後、茶抽出物に含まれるポリフェノールの量に対してモル比で0.5倍のホルムアルデヒドを添加し、常温もしくは加温しながら攪拌する反応をいう。
【0023】
このようにして得られた好ましい機能性素材は、メタノール、エタノール、アセトンには溶解するが、水、ヘキサンに難溶な性質を有する。この好ましい機能性素材を、レーヨンなどの繊維に練り込ませ、その機能性を付与することができる。より詳細には、例えば、得られた機能性素材を、マイクロカプセルなどの担体に担持させ、ビスコースに練り込み紡糸することで、機能性素材を保持した抗菌性のレーヨン繊維をつくることができる。
【0024】
本発明の水難溶性ポリフェノールを含有する水不溶性画分は、原料のポリフェノールを含有する植物抽出物と同等もしくはそれ以上に、抗菌性、消臭性、抗酸化活性、抗ウイルス活性を維持していた。そのため、得られた水不溶性画分は、当該性質を利用した機能性素材として、繊維(天然、合成、半合成も含む)、プラスチック、金属、セラミックス、塗料、油脂、ゴム、木材、紙などの製品に添加することができる。
【0025】
本発明の水難溶性ポリフェノールを含有する水不溶性画分の抗菌性は、任意の細菌、真菌に対して効果を有し、下記の実施例では、代表的なグラム陽性菌、グラム陰性菌に対して効果を有することが実証されている。また、本発明の水難溶性ポリフェノールを含有する水不溶性画分の抗ウイルス活性は、任意のウイルスに対して効果を有し、下記の実施例では、インフルエンザウイルスに対して効果を有することが実証されている。
【0026】
【実施例】
(調製例1)
ポリフェノール含量90重量%以上の茶抽出物(テアフラン90S(TF90S)株式会社伊藤園製)2gを、ホルマリン(37%ホルムアルデヒド)10mLに溶解させた。次に1%塩酸40mLを添加し、約30分加熱した。その溶液を室温まで冷却し、ポリエチレン製の遠沈管に移し、700×gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、沈渣に蒸留水を加えて攪拌し、さらに遠心分離を行った。この操作を3回繰り返して、沈渣を洗浄した。得られた沈渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分(PPi−A)を1.95g得た。得られた水不溶性画分は、クロロホルム、メタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、二硫化炭素、エーテル、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどあらゆる有機溶媒に不溶であった。
【0027】
(調製例2)
ポリフェノール含量90重量%以上の茶抽出物(テアフラン90S(TF90S)株式会社伊藤園製)1gを、水50mLに溶解させ、85℃以上に加熱した。この溶液にホルマリン(37%ホルムアルデヒド)200μLを添加し、攪拌した後、濃塩酸1滴を加え、更に加熱した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、吸引濾過により残渣を分取した。残渣を蒸留水で洗浄した後、濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分(PPi−B)を0.58g得た。得られた水不溶性画分は、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。また、水では酸性条件では不溶であるが、アルカリ性条件では、化合物の一部が分解し、色調に変化を来たした。
【0028】
(調製例3)
ポリフェノール含量30重量%以上の茶抽出物(テアフラン30A(TF30A)株式会社伊藤園製)450gを、1%塩酸1125mLに溶解させた。加熱し、次にホルマリン(37%ホルムアルデヒド)298mLを添加した。その溶液を室温まで冷却し、ポリエチレン製の遠沈管に移し、700×gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、沈渣に蒸留水を加えて攪拌し、さらに遠心分離を行った。この操作を3回繰り返して、沈渣を洗浄した。得られた沈渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分(PPi−C)を389.44g得た。得られた水不溶性画分は、クロロホルム、メタノール、ヘキサン、酢酸エチル、アセトン、二硫化炭素、エーテル、ベンゼン、トルエン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどあらゆる有機溶媒に不溶であった。
【0029】
(調製例4)
ポリフェノール含量30重量%以上の茶抽出物(テアフラン30A(TF30A)株式会社伊藤園製)2gを、1%塩酸40mLに溶解させ、ホルマリン(37%ホルムアルデヒド)400μLを加え85℃以上に加熱し攪拌した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、遠心分離(700×g、10分間)により残渣を分取した。残渣を蒸留水で洗浄した後、濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分(PPi−D)を0.8g得た。得られた水不溶性画分は、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。また、水では酸性条件では不溶であるが、アルカリ性条件では、化合物の一部が分解し、色調に変化を来たした。
【0030】
(調製例5)
ポリフェノール含量60重量%以上の茶抽出物(テアフランW(TFW)株式会社伊藤園製)50gを、1%塩酸135mLに溶解させ、85℃以上に加熱した。この溶液にホルマリン(37%ホルムアルデヒド)5mLを添加し、攪拌した後、更に加熱した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、吸引濾過により残渣を分取した。残渣を蒸留水で洗浄した後、残渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分(PPi−E)を43.87g得た。得られた水不溶性画分は、メタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。
【0031】
(実施例1:抗菌活性測定1)
測定試料として、茶抽出物TF90S、茶抽出物TF30A、水不溶性画分(PPi−B)、水不溶性画分(PPi−D)、茶抽出物TFW、水不溶性画分(PPi−E)を用いた。各試料を1mg秤量し、DMSO(ジメチルスルホキシド)1mLに溶解させた。これら試験液を濾過滅菌した後、滅菌したペーパーディスク(φ8mm)上に70μL(濃度1mg/mL)吸着させた。
【0032】
一方、直径9cmのペトリ皿に感性ディスク平板培地(10mL)を作成し、これに共試菌(Staphylococcus aureus、またはEscherichia coli)を懸濁した半流動性寒天培地(感性ディスク培地)4mLを重層した。
【0033】
この培地に、上述のペーパーディスクを置き、35±1℃で24時間培養し、その後5℃で2日間保存した。結果は、阻止帯の有無によって判定した(n=3)。ペーパーディスクの直径8mmを含む阻止帯の直径(mm)を、下記表1に示す。3サンプルの結果をI〜IIIとして示す。
【0034】
【表1】
【0035】
その結果、阻止帯の直径平均は、S.aureusに対しては、茶抽出物TF90Sが11.3mm、水不溶性画分PPi−Bが12.3mmであった。E.coliに対しては、茶抽出物TF90Sが13.0mm、水不溶性画分PPi−Bが13.7mmであった。
【0036】
また、阻止帯の直径平均は、S.aureusに対しては、茶抽出物TF30Aが10.5mm、水不溶性画分PPi−Dが11.3mmであった。E.coliに対しては、茶抽出物TF30Aが13.2mm、水不溶性画分PPi−Dが13.2mmであった。
【0037】
また、阻止帯の直径平均は、S.aureusに対しては、茶抽出物TFWが11.2mm、水不溶性画分PPi−Eが11.8mmであった。E.coliに対しては、茶抽出物TFWが13.7mm、水不溶性画分PPi−Eが12.5mmであった。
【0038】
以上の結果より、水不溶性画分PPi−B、PPi−D、PPi−Eは、それぞれの原料である茶抽出物と同等かそれ以上の抗菌活性を示した。
【0039】
(実施例2:抗菌活性測定2)
調製例1で作成した水不溶性画分(PPi−A)をポリスチレンへ練り込み加工し、その抗菌活性を測定した。
【0040】
まず、ポリスチレン1kgに対し、水不溶性画分(PPi−A)を55g添加混合し、200℃にて加温溶解させた。その後、ペレット状から板状に再加工し、フィルム密着法により抗菌活性を測定した。
【0041】
ここで使用したフィルム密着法は、抗菌製品技術協議会により発行されている試験法(1998年改訂版)に基づくものである。なお、ここで使用したフィルム密着法は、現在制定されている日本工業規格(JIS)に基づくフィルム密着法と、接種用菌液の調製に使用するNB培地(普通ブイヨン培地)の希釈率が「1/100NB」であった点においてのみ異なる。
【0042】
コントロールとして、水不溶性画分(PPi−A)を添加せずポリスチレンのみのものを使用した。
【0043】
その結果を以下に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
以上の結果より、水不溶性画分(PPi−A)は、コントロールのポリスチレンのみに対して抗菌活性を有していることが示された。
【0046】
(実施例3:消臭性測定)
テアフラン90S(TF90S)、テアフラン30A(TF30A)、調製例2で作成した水不溶性画分(PPi−B)、および調製例4で作成した水不溶性画分(PPi−D)を測定試料として用いて、その消臭性を測定した。
【0047】
各試料を10mg秤量し、3リットルのアンモニアガスとともにテドラーバッグに入れ、2時間後のヘッドスペースの残存アンモニアガス濃度をガス検知管で測定した。
【0048】
消臭率(%)=(C0−C1)/C0×100
C0:0時間のアンモニアガス濃度、C1:2時間後のアンモニアガス濃度
【0049】
その結果を図1に示す。水不溶性画分(PPi−D)および(PPi−B)は、それぞれの原料であるテアフラン30A、同90Sに対して消臭力は上昇していた。これは、反応により重合が進み、高分子化したことによりNH3を捕捉し易くなったためと考えられる。
【0050】
(実施例4:NMR測定)
(1)測定試料の調製
測定試料として、▲1▼(+)−カテキン、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分、▲3▼(+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分、▲4▼茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)、▲5▼茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分を用いた。
【0051】
各測定試料は以下に記載のとおり調製した。
【0052】
▲1▼(+)−カテキンは、EXTRASYNTHESE製のものを使用した。
【0053】
▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分は、以下に記載のとおり調製した。(+)−カテキン(EXTRASYNTHESE製)1gを水80mLに溶解させ、85℃以上に加熱した。この溶液にホルマリン(37%ホルムアルデヒド)140μLを添加し、攪拌した後、濃塩酸1滴を加え更に加熱した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、ポリエチレン製の遠沈管に移し、700×gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、沈渣に蒸留水を加え攪拌し、さらに遠心分離を行った。この操作を3回繰り返して、沈渣を洗浄した。得られた残渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を0.45g得た。得られた水不溶性画分はメタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。
【0054】
▲3▼(+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分は、以下に記載のとおり調製した。(+)−カテキン(EXTRASYNTHESE製)1gを1%塩酸20mLに溶解させ、85℃以上に加熱した。この溶液に20% 13Cラベル化ホルムアルデヒド(Aldrich Chem. Co.製)267μLを添加し、攪拌した後、更に加熱した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、ポリエチレン製の遠沈管に移し、700×gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、沈渣に蒸留水を加え攪拌し、さらに遠心分離を行った。この操作を2回繰り返して、沈渣を洗浄した。得られた残渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を0.75g得た。得られた水不溶性画分はメタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。
【0055】
▲4▼茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)は、上記調製例2に従って調製した。
【0056】
▲5▼茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分は、以下に記載のとおり調製した。ポリフェノール含量90重量%以上の茶抽出物(テアフラン90S(TF90S)株式会社伊藤園製)1gを1%塩酸20mLに溶解させ、85℃以上に加熱した。この溶液に20% 13Cラベル化ホルムアルデヒド(Aldrich Chem. Co.製)194μLを添加し、攪拌した後、更に加熱した。沈殿物の生成を確認した後、その溶液を室温まで冷却し、ポリエチレン製の遠沈管に移し、700×gで10分間遠心分離した。上澄みを除去した後、沈渣に蒸留水を加え攪拌し、さらに遠心分離を行った。この操作を2回繰り返して、沈渣を洗浄した。得られた残渣を濾紙上に移し、温風(約50℃)で乾燥させた。これにより、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を0.78g得た。得られた水不溶性画分はメタノール、アセトン、ジメチルスルホキシドに対して可溶であった。
【0057】
(2)測定方法および測定結果
▲1▼(+)−カテキン、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分の1H−NMRは、Jeol JNM-EX270(270MHz)、溶媒:重アセトンを使用し測定した。▲1▼(+)−カテキン、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分の1H−NMRの測定結果を、それぞれ図2および図3に示す。
【0058】
▲1▼(+)−カテキン、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分の13C−NMRは、Jeol JNM-EX270(270MHz)、溶媒:重アセトンを使用し測定した。▲3▼(+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRは、Jeol JNM-LA500(500MHz)、溶媒:重アセトンを使用し測定した。▲1▼(+)−カテキン、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分、▲3▼(+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRの測定結果を、それぞれ図4、図5および図6に示す。
【0059】
▲4▼茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)、▲5▼茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRは、Jeol JNM-LA500(500MHz)、溶媒:重メタノールを使用し測定した。▲4▼茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)、▲5▼茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRの測定結果を、それぞれ図7および図8に示す。
【0060】
化学シフトは、測定溶媒を内部標準物質とし、ppmであらわした。
【0061】
▲1▼(+)−カテキン(図2)と、▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分(図3)の1H−NMRを比較すると、3.5−3.9ppmに新たなブロードピークが検出された。また、これら試料▲1▼および▲2▼の13C−NMR(図4と図5)より、18ppm付近に新たにピークが検出された。これらのピークは、何れも不溶化反応によりできたピークである。
【0062】
▲2▼(+)−カテキンの水不溶性画分(図5)と▲3▼(+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分(図6)の13C−NMRを比較すると、18ppm付近のピークが大きく検出された。このピークはホルムアルデヒドに由来する。
【0063】
以上の結果より、本反応では、ポリフェノールの持つフェノール核にホルムアルデヒドが付加してメチレン架橋を形成し、別のポリフェノールと縮合重合を起こしていると考えられる。
【0064】
▲4▼茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B、図7)と▲5▼茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分(図8)の13C−NMRを比較すると、(+)−カテキンの場合と同様に、18ppm付近のピークが大きく検出された。
【0065】
以上の結果より、茶抽出物TF90Sは、(+)カテキンと同様に、ホルムアルデヒド由来のメチレン架橋を形成し、ポリフェノールが縮合重合していると推察される。
【0066】
(実施例5:質量分析)
茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の質量を、ESI−ITMS(LCQ、ThermoQuest社製)、ESI FT−ICRMS(ApexII 70e、Bruker Daltonics社製)、MALDI−TOFMS(ReflexII、Bruker Daltonics社製)を使用して測定した。
【0067】
ESI−ITMSは、加熱キャピラリー温度:210℃、溶媒:50%メタノール、キャピラリー電圧:14V、シースガス流量:10L/分、導入法:シリンジポンプ(流速:5μL/分)で測定した。
【0068】
ESI FT−ICRMSは、ドライガス温度:130℃、溶媒:50%メタノール(0.1%酢酸含有)、導入法:シリンジポンプ(流速2μL/分)で測定した。
【0069】
MALDI−TOFMSは、リニアモード、加速電圧:20kV、マトリクス:インドールアクリル酸で測定した。
【0070】
ESI−ITMS(図9)、ESI FT−ICRMS(図10)より、エピカテキンガレート(ECg)とエピカテキンガレート(ECg)との重合体(m/z;897[M+H]+)、エピカテキンガレート(ECg)とエピガロカテキンガレート(EGCg)との重合体(m/z;913[M+H]+)、及びエピガロカテキンガレート(EGCg)とエピガロカテキンガレート(EGCg)との重合体(m/z;929[M+H]+)と予測される分子量を得た。
【0071】
MALDI−TOFMS(図11および図12)より、最大7重合度までの分子種が検出された。
【0072】
(実施例6:細胞毒性試験)
テアフラン90S(TF90S)、テアフランW(TFW)、TF90Sの水不溶性画分(PPi−B、調製例2参照)、およびTFWの水不溶性画分(PPi−E、調製例5参照)を被験材料として用いて、その細胞毒性について試験した。
【0073】
(1)使用細胞
川崎市衛生研究所においてインフルエンザウイルスの分離・培養に使用しているMDCK細胞(イヌ腎由来)を用いた。
【0074】
(2)試験用培養液
細胞増殖用に10%牛胎児血清(FCS)を加えたEagle’s MEMを用い、細胞維持用に1%FCSを加えたEagle’s MEMを用いた。
【0075】
(3)被験材料の調製
水難溶性カテキン(テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)とテアフランWの水不溶性画分(PPi−E))、コントロール(テアフラン90SとテアフランW)を、それぞれ100mg秤量し、DMSO 1.0mLに溶解した。この検体液(100mg/mL)を用いて、10mg/mL、5mg/mL、1mg/mL、0.5mg/mL、0.1mg/mLおよび0.05mg/mLの各濃度に、細胞維持用培養液で希釈し、被験材料液とした。
【0076】
(4)細胞毒性試験法
96穴培養プレートにMDCK細胞を100μL播種し、細胞がコンフルエントになった状態(3〜4日後)で、細胞維持用培養液を用いて1回洗浄後、被験材料液を100μLずつ接種し、1週間培養した。被験材料液は各濃度別に4ウェル接種し、48時間後、72時間後に観察した。細胞毒性は細胞の変性を目視で確認し、判定した。
【0077】
(5)結果
48時間後および72時間後の結果について表3に示す。この結果から細胞毒性については、同程度といえる。
【0078】
【表3】
【0079】
48時間後に観察したところ、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)、テアフランWの水不溶性画分(PPi−E)、テアフラン90S、テアフランWのすべてにおいて、10mg/mLから0.5mg/mLまでのウェルで、細胞の変性が認められた。72時間後の観察でも同様に0.5mg/mL以上の濃度で細胞毒性が認められた。0.1mg/mLと0.05mg/mLの濃度では細胞の変化は全くみられなかった。なお、細胞については7日間観察を継続したが、0.1mg/mLと0.05mg/mLの濃度のウェルはすべて細胞の変性は認められなかった。
【0080】
(実施例7:インフルエンザウイルス抑制試験1)
インフルエンザウイルス抑制試験1においては、インフルエンザウイルスと被験材料とを混合した後に細胞に接種する。
【0081】
(1)使用細胞
実施例6の細胞毒性試験と同じMDCK細胞を使用した。試験開始時に細胞がコンフルエントになるよう96穴プレートで培養した。
【0082】
(2)試験用培養液
細胞増殖用に10%牛胎児血清(FCS)を加えたEagle’s MEMを用い、インフルエンザウイルス培養用培地は、Eagle’s MEMにアセチルトリプシンを3μg/mLになるように加えた。
【0083】
(3)被験材料の調製
水難溶性カテキン(テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)とテアフランWの水不溶性画分(PPi−E))、コントロール(テアフラン90SとテアフランW)を、それぞれ100mg秤量し、DMSO 1.0mLに溶解した。この検体液(100mg/mL)をPBSにて、10mg/mL、5mg/mL、1mg/mL、500μg/mL、100μg/mL、50μg/mL、10μg/mL、5μg/mLおよび1μg/mLに希釈し、被験材料液とした。また、インフルエンザウイルスは増殖後TCID50を測定し、−80℃凍結保存したものを試験直前に溶解した。800TCID50/mLに調節したものをインフルエンザウイルス溶液として使用した。
【0084】
(4)インフルエンザウイルス抑制試験法
10mg/mLから1μg/mLに調整した被験材料液を、各濃度につき4ウェル使用し、滅菌V底プレートに25μL入れたものを2プレート作成した。直後に800TCID50/mL(200TCID50/25μL)のインフルエンザウイルス溶液を等量(25μL)加え、プレートミキサーで30秒間攪拌した。37℃で30分と60分反応させた後、MDCK細胞に接種した。30分吸着後、カテキン・インフルエンザウイルス反応液を吸引し、維持培地(1%FCSを加えたEagle’s MEM)を加え、34℃のCO2インキュベーターで4日間培養し、判定を行った。
【0085】
(5)結果
結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
30分反応させたプレートでは、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)が50μg/mL以上の場合、テアフランWの水不溶性画分(PPi−E)が50μg/mL以上の場合、テアフラン90Sが100μg/mL以上の場合、およびテアフランWが100μg/mL以上の場合、CPE(細胞変性効果:Cytopathogenic Effect)は認められず、100%インフルエンザウイルスの増殖が抑制された。
【0088】
また、60分反応させたプレートでは、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)が50μg/mL以上の場合、テアフラン90Sが50μg/mL以上の場合、テアフランWの水不溶性画分(PPi−E)が10μg/mL以上の場合、およびテアフランWが100μg/mL以上の場合、100%の増殖抑制が認められた。
【0089】
(実施例8:インフルエンザウイルス抑制試験2)
インフルエンザウイルス抑制試験2においては、インフルエンザウイルス感染細胞に被験材料を添加する。
【0090】
(1)使用細胞
実施例6の細胞毒性試験と同じMDCK細胞を使用した。試験開始時に細胞がコンフルエントになるよう96穴プレートで培養した。
【0091】
(2)試験用培養液
細胞増殖用に10%牛胎児血清(FCS)を加えたEagle’s MEMを用い、インフルエンザウイルス培養用培地は、Eagle’s MEMにアセチルトリプシンを3μg/mLになるように加えた。
【0092】
(3)被験材料の調製
水難溶性カテキン(テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)とテアフランWの水不溶性画分(PPi−E))、コントロール(テアフラン90SとテアフランW)を、それぞれ100mg秤量し、DMSO 1.0mLに溶解した。この検体液(100mg/mL)をPBSにて、10mg/mL、5mg/mL、1mg/mL、500μg/mL、100μg/mL、50μg/mL、10μg/mL、5μg/mLおよび1μg/mLに希釈し、被験材料液とした。また、インフルエンザウイルスは増殖後TCID50を測定し、−80℃凍結保存したものを試験直前に溶解した。400TCID50/mLに調節したものをインフルエンザウイルス溶液として使用した。
【0093】
(4)インフルエンザウイルス抑制試験法
MDCK細胞を培養した96穴プレート2枚をPBS100μLで1回洗浄後、すべてのウェルに上記インフルエンザウイルス溶液を50μL接種し、30分34℃で吸着させた。インフルエンザウイルス溶液吸引後、PBSで1回洗浄後、10mg/mLから1μg/mLに調整した被験材料液を、各濃度につき4ウェル添加し、37℃で30分と60分反応させた。反応後、維持培地(1%FCSを加えたEagle’s MEM)を加え、34℃のCO2インキュベーターで4日間培養し、判定を行った。
【0094】
(5)結果
結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
30分および60分反応させたプレートのすべてのウェルでCPEが認められ、インフルエンザウイルスの増殖抑制はみられなかった。
【0097】
(6)考察
以上、実施例7および8において、水難溶性カテキン(テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)およびテアフランWの水不溶性画分(PPi−E))について、インフルエンザウイルス抑制効果を検討した。インフルエンザウイルス感染細胞に水難溶性カテキンを添加した実験(実施例8)では、抑制効果はみられなかったが、インフルエンザウイルスと水難溶性カテキンを混合した後に細胞に接種した実験(実施例7)では、インフルエンザウイルス抑制効果がみられた。
【0098】
今回の実験における条件での100%増殖抑制濃度は、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)で50μg/mL、テアフランWの水不溶性画分(PPi−E)で10μg/mL(60分)、50μg/mL(30分)であった。このように長時間反応させた方がCPEの抑制が強く認められた。また、コントロールに用いたテアフラン90SおよびテアフランWと比較すると、インフルエンザウイルス増殖抑制効果は、やや強い結果が得られた。
【0099】
実施例6において、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)およびテアフランWの水不溶性画分(PPi−E)の細胞毒性は、0.5mg/mLまでみられ、コントロールに使用したテアフラン90SおよびテアフランWと同様の値であり、インフルエンザウイルス抑制濃度の10〜50倍であった。また、25μLの使用量で換算すると、40〜200倍となり、100%増殖抑制濃度での使用においても、細胞毒性の影響はないものと考えられる。
【0100】
以上のことから、テアフラン90Sの水不溶性画分(PPi−B)およびテアフランWの水不溶性画分(PPi−E)は、インフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果があり、その性質上様々な用途の商品に応用可能であると考えられる。
【0101】
【発明の効果】
以上説明したように、水難溶性ポリフェノールを含む本発明の機能性素材は、該素材が維持している有用な性質(抗菌性、消臭性、抗酸化活性、抗ウイルス活性など)により、繊維、プラスチック、紙などの製品に有用な性質を付与することができる。しかも、本発明の機能性素材は、製法が容易で、安価に製造することができる。また、本発明の機能性素材は、該素材が含む水難溶性ポリフェノールが、洗浄などの操作により溶出しにくいという性質を獲得し、長期使用に耐え得るという効果を有する。更に、本発明の機能性素材は、該素材が含む水難溶性ポリフェノールのおかげで、合成樹脂等への加工が容易であるという利点を有する。その上、本発明の機能性素材は、植物由来であるため天然素材としてのイメージの良さを有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 消臭性測定の結果を示す図。
【図2】 (+)−カテキンの1H−NMRの測定結果を示す図。
【図3】 (+)−カテキンの水不溶性画分の1H−NMRの測定結果を示す図。
【図4】 (+)−カテキンの13C−NMRの測定結果を示す図。
【図5】 (+)−カテキンの水不溶性画分の13C−NMRの測定結果を示す図。
【図6】 (+)−カテキンの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRの測定結果を示す図。
【図7】 茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の13C−NMRの測定結果を示す図。
【図8】 茶抽出物TF90Sの13Cラベル化水不溶性画分の13C−NMRの測定結果を示す図。
【図9】 茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の質量を、ESI−ITMS(LCQ、ThermoQuest社製)で測定した結果を示す図。
【図10】 茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の質量を、ESI FT−ICRMS(ApexII 70e、Bruker Daltonics社製)で測定した結果を示す図。
【図11】 茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の質量を、MALDI−TOFMS(ReflexII、Bruker Daltonics社製)で測定した結果を示す図。
【図12】 茶抽出物TF90Sの水不溶性画分(PPi−B)の質量を、MALDI−TOFMS(ReflexII、Bruker Daltonics社製)で測定した結果を示す図。
Claims (6)
- ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む抗菌剤。
- ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む消臭剤。
- ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行うことにより得られる、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を含む抗ウイルス剤。
- ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む抗菌剤を製造する方法。 - ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む消臭剤を製造する方法。 - ポリフェノールを含有する茶植物の抽出物を得る工程と、
前記植物抽出物に対して、アルデヒド類を用いてポリフェノールを重合させる反応を行う工程と、
前記反応により得られた、重合化ポリフェノールを含む水不溶性画分を回収する工程と
を具備する、水難溶性ポリフェノールを含む抗ウイルス剤を製造する方法。
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