JP4120850B2 - ラベルを装着した樹脂製ボトル及びその再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷されたインキを除去することができるラベルを装着したボトル、それらの再生方法及びそれらの再生ペレット、に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ボトルは、ガラス、金属製等のボトルから重合体、特に熱可塑性重合体製のボトルが耐破壊性、軽量性、透明性等が優れることから年々使用量が増加してきている。特に、飲料分野での重合体ボトル化は目覚ましく、小型ボトルから大型ボトルまで大量に使用されている。その中でも、ポリエチレンテレフタレートを主成分とするボトル(以下「PETボトル」と略称する。)の使用量の伸びは著しい。
【0003】
一方、最近の地球環境問題への意識の高まりから熱可塑性重合体からなるボトルのリサイクル問題への対応が迫られている。熱可塑性重合体からなるボトル、特に、PETボトルのリサイクルへの関心は大きくリサイクルシステムの早期の確立が必要とされている。PETボトルには、一般にポリオレフィン系のストレッチラベルやポリエステル、ポリスチレン、塩化ビニル等からなる熱収縮ラベル及びポリプロピレンフィルム等からなるタックラベル等のラベルが装着されている。PETボトルのリサイクルに関しては、通常、ラベルが付いたまま一般消費者から回収され再生業者に持ち込まれ、持ち込まれたボトルは洗浄後一次粉砕によりラベルの除去作業が行われるが、粉砕物の中にはまだ多量のラベルが含まれている。そのため、二次粉砕、ラベルの液比重分離、脱水・乾燥、風力比重分離及びペレタイズ工程を経て再生ペレットを得ていた。図2に典型的な従来のラベル付ボトルから熱可塑性重合体をペレットとして回収する工程を示す。
【0004】
上記従来のラベル、そのラベルを装着したボトルの再生方法においては、ラベルは各種分離工程により分離されるが再生熱可塑性重合体の純度を向上させると原料の再生比率が低下してしまうという問題がある。さらに、これらの工程を経た再生熱可塑性重合体中の不純物としては、ラベル樹脂、インキ等があり、特にインキは少量でも再生ペレット全体が着色してしまうという問題があった。
【0005】
したがって、ボトルのリサイクルを効率的に行うためには、再生熱可塑性重合体の純度を向上させるためにラベル及びラベルのインキの混入を防ぐことが必要である。これまでに、ラベルの素材である熱可塑性重合体の改良が行われ、比重分離しやすい、PETよりも低比重の重合体例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンのラベルが提案されてきたがインキ層が乗るため低比重にならないので完全な分離は不可能である、という問題があった。
【0006】
また、PETボトルに混入しても問題にならない同種のポリエステル系のラベルも提案されたがインキ層の分離ができず、再生ペレットが着色するという問題未解決のままであった。
近年、展示会等においては、インキ層を容易に除去することのできるラベルをボトルに装着し、アルカリ温湯中でラベルのインキ層を除去した後、ラベルとボトルとを分離せず再生する方法が提案された。
【0007】
この方法により、回収ボトルの再生ペレット化は容易になり、着色の問題も無くなったが、依然として得られた再生ペレットの純度は十分ではなく、特に環状3量体オリゴマーをはじめとするオリゴマーが再生ペレット中に多く発生し、このオリゴマーが再生ペレットを用いて紡糸、押し出し成形、射出成形などを行う場合に金型やノズル等に付着したり、製品そのものに付着することが多く製品の質を落とすものであった。このため、この方法によって得られた再生ペレットも、扱いにくかったり、用途が限られるものであった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ラベル付きボトルを回収しこのボトルを用いて再生ペレットを製造する際にラベルを分離する必要が無く、かつ得られた再生ペレットはインクに由来するペレットの着色が無く、さらには再生ペレットを用いて製品を得る工程でオリゴマーによる金型やノズル等の汚れや製品の品質低下のない、ラベル付き樹脂ボトルを提供しようとするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、アルカリ性温湯中で除去されない熱可塑性重合体フィルムの少なくとも片面にアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルが装着されたポリエステル樹脂製の中空成形ボトルであって、装着前のラベルを構成する熱可塑性重合体フィルムが熱収縮率30〜80%のポリエステル系熱収縮性フィルムであり、該ボトルの樹脂の210℃における固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であることを特徴とした中空成形ボトルである。
【0010】
ここで、アルカリ性温湯中で除去できるインキ層とは、試料ラベル1gを1cm角に切断し100ccのNaOH3%溶液(90℃)中で30分攪拌した後、水洗・乾燥したときにインキ除去率が90%以上であるインキ層を意味する。インキ層がアルカリ温湯中で除去できるためには、インキ自身がアルカリで溶解または分散可能であることか、インキ層とラベルのフィルム層の間にアルカリで膨潤可能または溶解(分散も含む)可能な中間層を設けることで達成できる。
【0011】
この場合、ラベルは、熱可塑性重合体フィルムが熱収縮性フィルムであることができる。
【0012】
また、ラベルは、熱収縮性フィルムがポリエステル系熱収縮性フィルムであることができる。
【0013】
また、ラベルは、ポリエステル系熱収縮性フィルムの熱収縮率が30〜80%であることができる。ここで、熱収縮率とは、95℃の温湯中10秒間浸漬して測定した収縮率である。
【0014】
また、ラベルは、そのインキ層がアルカリ性温湯中で膨潤又は可溶な化合物を含有することができる。
【0015】
ボトルは、前記ラベルを装着したことを特徴とする。
【0016】
上記の構成からなるボトルは、ラベル上のインキ層を容易に除去することができるのでラベル付ボトルとして容易に熱可塑性重合体を再利用することができる。
【0017】
上記の構成からなる本発明のボトルは、インキ層を容易に除去したあと、ボトルとラベルを同時に回収工程に乗せて再利用することができる。
【0018】
また、ボトルは、装着ラベルのボトル周方向の熱収縮率が、0.1%以上80%未満であることができる。
【0019】
上記の構成からなるボトルは、洗浄工程でラベルを構成する熱収縮性フィルムの熱収縮によりインキ層との界面が剥離して除去しやすくなる。
【0020】
また、インキ除去方法は、前記ラベルを、アルカリ性温湯中に浸漬してラベル上のインキ層を除去することを特徴とする。
【0021】
上記の構成からなるインキ除去方法は、容易にインキ層とラベルを構成するフィルムとを分離することができる。
【0022】
また、インキ除去方法は、ラベルを装着したボトルを、アルカリ性温湯中に浸漬してラベル上のインキ層を除去することを特徴とする。
【0023】
上記の構成からなるインキ除去方法は、インキ層が除去されているラベルとボトルとをそのまま熱可塑性重合体の回収工程に移行させることができる。
【0024】
また、ラベル付ボトルの再生方法は、前記方法によりインキ層を除去したラベルを、該ラベルを装着したボトルと共に溶融し、再生することを特徴とする。
【0025】
上記の構成からなるラベル付ボトルの再生方法は、インキ層のないラベルとボトルをそのまま回収工程に移行し再生利用することができる。
【0026】
さらに、再生ペレットは、上記方法により得られたものであることを特徴とする。
【0027】
上記の構成からなる再生ペレットは、インキを実質的に含有しない状態で各種成形に再利用することができる資源の有効利用に適合した優れた再生ペレットである。
【発明の実施の形態】
以下、本発明のラベルを装着したボトル及びその再生方法の実施の形態を説明する。
【0028】
本発明のボトルは、まず、熱可塑性重合体フィルムの少なくとも片面にアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルが装着されたポリエステル樹脂製の中空成形ボトルである。
最初に、熱可塑性重合体フィルムの少なくとも片面にアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルについて説明する。
【0029】
ボトルに用いられるラベルの基材フィルムとしては、熱可塑性フィルムであれば特に制約はない。また、収縮性フィルム、非収縮性フィルム又はストレッチ性フィルムのいずれであるかについての制約もない。具体的には、収縮性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系の非発泡、発泡フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム及びポリエステル系フィルム等の一軸又は二軸延伸フィルムが挙げられる。非収縮性フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム及びその他ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の耐熱性エンジニアリングプラスチックフィルム等の未延伸、一軸又は二軸延伸フィルムが挙げられる。好ましくは、PETボトルの胴部に装着するラベルの素材としては、粉砕したものを液体中で比重分離しやすいポリオレフィン系フィルム、ポリスチレン系フィルム及び回収ペレットに混入しても問題がないポリエステル系フィルムが挙げられる。また、特に好ましくは、インキ層が洗浄除去されれば回収ペレットに混入しても良いことから比重分離及び風選を必要としないポリエステル系フィルムが挙げられる。
【0030】
さらに好ましくは、洗浄工程でフィルムが熱収縮することによりインキ層との間の界面が剥離して除去が容易になる熱収縮性ポリエステル系フィルムが好ましい。熱収縮することによりボトルに装着された熱収縮後のラベルは、まだ残留収縮性を有することが好ましく、ボトルからとりはずして95℃温湯中に10秒間浸漬した後に、ボトルの径方向に測定した熱収縮率が0.1%以上80%未満であることが好ましい。熱収縮率が0.1%未満ではインキ層と熱可塑性フィルムが縮むことにより界面に生ずる力が小さくなるためインキ脱落率が低下し、一方、熱収縮率が80%以上であるとラベルが折れ曲がりが大きくなりインキ除去率が低下するので好ましくない。
【0031】
ラベルの基材フィルムとして用いるのに特に好ましい熱収縮性ポリエステル系フィルムの製造方法及びその特性を次に示す。
【0032】
熱収縮性ポリエステル系フィルムを構成するポリエステルは、主たる酸性分はテレフタル酸又は2,6−ナフタレンジカルボン酸であり、主たるグリコール成分はエチレングリコール又はテトラメチレングリコールからなるのが通常であるが、他の酸性分、グリコール成分が主成分であるポリエステルであっても何らさしつかえない。また、共重合することができる酸性分としてはイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸などを任意に用いることができる。また、共重合することができるグリコール成分としてはテトラメチレングリコール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、シクロヘキサンジメタノールなどを任意に用いることができる。
【0033】
かかる重合体を用いて押出法やカレンダー法等任意の方法で得たフィルムは一方向に2.5倍から7.0倍、好ましくは3.0倍から6.0倍に延伸し、上記方向と直角方向に1.0倍から2.0倍以下、好ましくは1.1倍から1.8倍延伸される。最初の方向への延伸は高い熱収縮率を得るために影響を与えるのが大きい要件として行われるものであり、最初の方向と直角方向への延伸は、最初の一方向に延伸されたフィルムの耐衝撃性や引裂張抵抗性の悪さを解決するのに極めて有効である。
【0034】
しかしながら、熱収縮性フィルムの主収縮方向への熱収縮率は30〜80%程度であるが、最初の方向と直角の方向へ2.0倍を越えて延伸すると、主収縮方向と直角方向の熱収縮も大きくなり過ぎ、熱収縮後のフィルム表面の仕上がりが波打ち状となる。この、フィルムの波打ちを押さえるには、主収縮方向と直角方向の熱収縮率を15%以下、好ましくは8乃至9%以下、更に好ましくは7%以下とすることが推奨される。延伸手段についても特段の制限はなく、ロール延伸、長間隔延伸、テンター延伸等の方法が適用され、また、形状面においてもフラット状、チューブ状等の如何は問わない。
【0035】
また、延伸は逐次2軸延伸、同時2軸延伸、1軸延伸或いはこれらの組み合わせ等で行われる。また、ラベルに用いるフィルムに対しては、例えば、縦1軸、横1軸、縦横2軸等の延伸を行うが、特に2軸延伸では直角方向の延伸は、どちらか一方を先に行う逐次2軸延伸によるのが有効であり、その順序はどちらが先でもよい。なお、同時2軸延伸法を用いるときはその延伸順序が、縦横同時、縦先行、横先行のどちらでもよい。また、これら延伸後のヒートセットは目的に応じて実施されるが、夏期高温下の寸法変化を防止する為には30〜150℃の加熱ゾーンを、約1秒〜30秒間通すことが推奨される。また、かかる処理の前後どちらか一方又は両方で最高70%までの伸張をかけてもよい。特に主方向に伸張し、主収縮方向に対して直角方向には緩和させるのが良く、上記直角方向への伸張は行わない方が良い。
【0036】
本発明のラベルを装着したボトルに用いられるラベルで用いる収縮性フィルムに好適な特性を発揮させる為には、上記延伸倍率だけでなく、ポリエステルが有する平均ガラス転移点(Tg)以上の温度、例えばTg+80℃程度の下で予熱、延伸することも有効な手段として挙げられる。特に主方向延伸(主収縮方向)における上記処理温度は該方向と直角方向の熱収縮率を抑制し、且つ前記の如く80±25℃の温度範囲に、その最小値を持ってくる上で極めて重要である。更に延伸後、伸張後は緊張状態に保ってフィルムにストレスをかけながら冷却するか又は更に引き続いて冷却することにより前記収縮特性はより良好且つ安定したものとなる。
【0037】
このようにして得たフィルムの面配向係数は100×10-3以下のものが好ましい。面配向係数が100×10-3を超えると、衝撃的外力に対して破断しやすくなり、少しの外傷によっても破れ易くなるからである。一方、複屈折率は15×10-3〜160×10-3が好ましく、複屈折率が15×10-3未満では縦方向の熱収縮率や収縮応力が不足し、又160×10-3を超えると引っかき抵抗力や衝撃強度の低下を生じ、フィルムにはなっても実用上は有効性が低下する。本発明ラベルで用いる熱可塑性重合体フィルムの厚さは6〜250μmの範囲が実用的である。
【0038】
本発明のボトルに用いられるラベルはその少なくとも片面にインキ層を有しており、そのインキ層はアルカリ性温湯中で除去することができる。ここで、アルカリ性温湯中で除去できるインキ層とは、試料ラベル1gを1cm角に切断し100ccのNaOH3%溶液(90℃)中で30分攪拌した後、水洗乾燥しインキ除去率が90%であるインキ層を意味する。除去されるのは、インキ層がアルカリ性温湯中で主として膨潤又は溶解(以下溶解とは微分散も含む)されることによる。また、通常のインキを用いてもインキ層と基材フィルムとの間にアルカリ製温湯中で膨潤または溶解できるような中間層を設け、この中間層が膨潤または溶解する事によりインキ層を除去可能とする事もできる。実用的には、弱アルカリ性温水による洗浄は通常30分前後行われ、その間にインキ層が脱落するものであればよい。
【0039】
インキ層に上記特性を持たせる方法としては特に制約はないが、例えば、アルカリ性温湯中で可溶な又は膨潤性の化合物を通常使用されるインキ、例えば顔料又は染料からなる着色体、バインダー、揮発性有機溶剤を構成成分とするインキに添加する方法が挙げられる。アルカリ性温湯中で可溶な又は膨潤性の化合物としては、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の無機塩、アスコルビン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の有機酸又はその塩、ポリエチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド等の高分子ポリエーテル、ポリビニルアルコール及びポリアクリル酸又はその金属塩並びにそれらの共重合体等が挙げられる。また、上記化合物としては常温で液体のものも挙げられ、具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールのモノメチル、モノエチル、モノプロピル、モノブチルエーテルあるいはモノメチル、モノエチルエステル等、その他、ジオキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコール、ジメチルホルムアミド、テトレヒドロフラン等が挙げられる。中でもインキ層中に残存することが必要であることから高沸点のものが好ましく、具体的には、沸点が50℃以上のものが好ましく、さらにアルカリ性温湯への可溶性から多価アルコールのモノアルキルエーテルが特に好ましい。
【0040】
上記化合物のインキ層中での残存量としての含有量は0.0001重量%以上50重量%以下が好ましく、化合物によりその重量を変えてもよい。含有量が0.0001重量%未満では洗浄工程でインキが落ちず本発明の目的が達成が困難な方向になる。一方、含有量が50重量%を越えるとインキ層の耐スクラッチ性等の機械的特性が損なわれるので好ましくない。
【0041】
本発明のボトルに用いられるラベルに使用する上記化合物を含有するインキは、インキ顔料、バインダー、溶剤等からなり、上記バインダーとしては、例えば、ニトロセルロース系、塩素化ポリプロピレン系、ポリエステル系、アクリル系、ポリエステルウレタン系及びアクリルウレタン系のバインダーが用いられる。特に、ポリエステル系フィルムにはポリエステル系、アクリル系、ポリエステルウレタン系及びアクリルウレタン系バインダーを有するインキが好ましい。インキの着色を行う顔料としては特に制約はなく、一般に用いられているものでもよい。また本発明で使用されるインキは、必要により、耐候剤、蛍光増白剤、滑剤、架橋剤等の添加剤を含有しても構わない。
【0042】
本発明のボトルに用いられるラベルを製造するためのインキの印刷方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。インキ層の厚みとしては、0.1μm〜100μmが好ましい。0.1μm未満ではインキ発色が不十分であり、一方100mを越えるとインキ層が脆くなり割れやすくなる。
【0043】
本発明において、ラベルからインキ層を除去するには、アルカリ性温湯中に浸漬して行う。実用的には、ラベル1gを1cm以下に切断後、90℃のNaOH3%溶液100cc中で30分以上撹拌することにより除去することができる。しかる後洗浄し、濾過、さらに水で洗浄後乾燥することにより、インキ除去率90%以上となるような方法が挙げられる。具体的には、ラベル処理能力、処理設備の点からラベルを粉砕した形態が好ましく粉砕されたフィルムの大きさとしては0.1mm角以上10cm角以下が好ましい。0.1mm角未満ではその後の濾過工程での効率が悪く、一方10cm角を越えるとインキの除去に時間がかかることになる。またインキを除去する処理工程の温湯は、アルカリ性であることが必要でありPHとしては9.0以上が好ましい。アルカリ性付与の方法としては、NaOH、KOH、アンモニア等の温湯への添加が挙げられる。洗浄液の温度としては50〜100℃の温湯が好ましく温度が高い方が脱落効率が向上する。これらのラベルと洗浄液の使用量はラベルの大きさにより一様ではないが非常に大きいものでは5〜20倍量、粉砕した小さなものでは0.2〜5倍量必要である。また、効率向上のために循環式の洗い流しを行ってもよい。洗浄時間としては、リサイクル工程上30分以内が好ましい。インキの脱落率としては、90%以上であればよいが、好ましくは98%以上、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0044】
また、インキ層と基材層との間に存在する中間層にはアルカリ温湯中で用いられる、アルカリ性温湯中で膨潤または溶解可能な樹脂を用いることが好ましい。膨潤または溶解可能な樹脂としては、インク層を除去できる機能を持ったものであれば特に限定するものではないが、樹脂にはアルカリ性温湯中で膨潤又は溶解可能なように、親水基が導入されていることが必要である。親水基としては、ヒドロキシル基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、ホスホン酸基、ホスホン酸塩基などが挙げられる。
【0045】
これらの親水基が導入される樹脂の例としては、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン系樹脂がなど挙げられる。好ましくは、ポリエステル系樹脂、アクリル変性ポリエステル樹脂、アクリル変成ポリウレタン樹脂である。アクリル変性ポリエステル樹脂としては、片末端にのみヒドロキシル基を2個以上持ったアクリル系マクロモノマーをポリエステル合成時に用いる方法や、ポリエステルを合成後、このポリエステル樹脂存在下でアクリルモノマーを重合する方法、などによって得られるアクリルポリマーを枝部分としてグラフトさせたポリエステルが好ましい例として挙げられる。アクリル変成ポリウレタン樹脂としては、片末端にのみヒドロキシル基を2個以上持ったアクリル系マクロモノマーをポリウレタン合成時に用いる方法、ポリウレタンを合成後、このポリウレタン樹脂存在下でアクリルモノマーを重合する方法、などによって得られるアクリルポリマーを枝部分としてグラフトさせたポリウレタンが好ましい例として挙げられ、ここで用いられる、ポリオールとしてはポリエステルポリオールが好ましい。
【0046】
また、特に制約はないが、これらの樹脂の中に、例えば、アルカリ性温湯中で溶解可能な又は膨潤性の化合物を添加することもできる。これらアルカリ性温湯中で溶解可能な又は膨潤性の化合物は前記したインキ中に含まれる化合物と同様である。
【0047】
ラベルとしての実用性を考慮した場合、通常の使用中にはインキ層が剥がれないようにする必要がある。このためインキや中間層は上記の親水基やアルカリ性温湯中で溶解可能な又は膨潤性の化合物の量を調整する必要がある。
本発明のラベルを装着したボトルは、常法によりラベルを少なくとも胴部をかこむようにして装着することができる。また、熱収縮可能なラベルの場合は加熱を行い、ボトル胴部に密着させることができる。
【0048】
次に、前述したラベルが装着される本発明のボトルについて説明する。本発明のボトルはポリエチレンテレフタレートを主構成成分としたボトルである。これは、テレルタル酸またはそのエステル誘導体をエチレングリコールとを反応させることにより得られる。
このポリエチレンテレフタレートは他のジカルボン酸(エステル誘導体を含む)および/または他のグリコールがそれぞれ全ジカルボン酸または全グリコール成分に対して40モル%以下の割合で共重合されていてもよい。好ましくは、20モル%以下、さらに好ましくは5モル%以下である。もっとも好ましくはテレフタル酸とエチレングリコールのみから重合されることである。
テレフタル酸以外のジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。また、これらのエステル誘導体でもよい。
【0049】
エチレングリコール以外のグリコールとしては、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール類、ハイドロキソン、2,2 −ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール類などが挙げられる。
【0050】
本発明のラベルを装着したポリエステル樹脂製ボトルの樹脂の210℃における固相重合速度は0.0050dl/g・hr以下である。好ましい固相重合速度は0.0040dl/g・hr以下、特に好ましくは0.0035dl/g・hr以下、最も好ましくは0.0030dl/g・hrである。固相重合速度が0.0050dl/g・hrを越えていると、縮重合触媒の活性が十分失活しておらず、ボトルの再ペレット化の工程で樹脂中のオリゴマー量が多くなりすぎ、結果として得られた再生ペレット中の環状3量体オリゴマー量も多くなり、この再生ペレットを用いて紡糸、押し出し成形、射出成形などを行った場合に金型やノズル等に付着したり、製品そのものに付着することが多く製品の質を落とす。
【0051】
ボトルの樹脂の210℃における固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であるボトルを得るためには、ボトルを成形する樹脂自身の固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であることが必要である。以下ポリエステルの製造方法をポリエチレンテレフタレートの場合を例に説明しながら、固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であるポリエステル樹脂及びボトルを得る方法を例示する。
【0052】
各原料は、エステル化触媒の存在下でエステル化された後、重合用触媒の存在下で液相重合された後、必要により固相重合される。
ポリエチレンテレフタレートの製造方法としては回分方式、連続方式が挙げられるが、以下には連続方式での好ましい製造方法の一例について説明する。
【0053】
まず、テレフタル酸またはそのエステル誘導体1モルに対して1.02〜1.4 モル好ましくは1.03〜1.3 モルのエチレングリコールが含まれたスラリーを調整し、これをエステル化反応工程に連続的に供給する。
【0054】
エステル化反応は、少なくとも2個のエステル化反応器を直列に連結した多段式装置を用いてエチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水またはアルコールを精留塔で系外に除去しながら実施する。第1段目のエステル化反応の温度は 240〜270 ℃好ましくは 245〜265 ℃、圧力は 0.2〜3kg/cm2G好ましくは 0.5〜2kg/cm2 である。最終段目のエステル化反応の温度は通常 250〜280 ℃好ましくは 255〜275 ℃であり、圧力は通常0〜1.5kg/cm2G好ましくは0〜1.3kg/cm2Gである。3段階以上で実施する場合には、中間段階のエステル化反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらのエステル化反応の反応率の上昇は、それぞれの段階で滑らかに分配されることが好ましい。最終的にはエステル化反応率は90%以上、好ましくは93%以上に達することが望ましい。これらのエステル化工程により分子量 500〜5000程度の低次縮合物が得られる。
【0055】
上記エステル化反応は原料としてテレフタル酸を用いる場合は、テレフタル酸の酸としての触媒作用により無触媒でも反応させることができるが重縮合触媒の共存下に実施してもよい。とくに原料としてジメチルテレフタレートを用いる場合はZn,Cd,Mn,Co,Ca,Baなどの脂肪酸塩、炭酸塩や金属MgやPb,Zn,Sb,Ge酸化物等を用いると反応を加速することができる。
また、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミンなどの第3級アミン、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラn−ブチルアンモニウム、水酸化トリメチルベンジルアンモニウムなどの水酸化第4級アンモニウムおよび炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウムなどの塩基性化合物を少量添加して実施すると、ポリエチレンテレフタレートの主鎖中のジオキシエチレンテレフタレート成分単位の割合を比較的低水準に保持できるので好ましい。
【0056】
次いで得られた低次縮合物は多段階の液相縮重合工程に供給される。重縮合反応条件は、第1段階目の重縮合の反応温度は 250〜290 ℃、好ましくは 260〜280 ℃であり、圧力は 500〜20Torr、好ましくは 200〜30Torrで、最終段階の重縮合反応の温度は 265〜300 ℃、好ましくは 275〜295 ℃であり、圧力は10〜0.1Torr 、好ましくは5〜0.5Torr である。3段階以上で実施する場合には、中間段階の重縮合反応の反応条件は、上記第1段目の反応条件と最終段目の反応条件の間の条件である。これらの重縮合反応工程の各々において到達される固有粘度(IV)上昇の度合は滑らかに分配されることが好ましい。このようにして得られた液相重合後のポリエチレンテレフタレートの固有粘度(IV)は通常、0.35〜0.80dl/g、好ましくは0.45〜0.75dl/g、さらに好ましくは0.55〜0.75dl/gの範囲である。
【0057】
重縮合反応は、重縮合触媒を用いる。触媒として二酸化ゲルマニウム、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラn−ブトキシドなどのゲルマニウム化合物、三酸化アンチモンなどのアンチモン触媒およびチタニウムテトラブトキサイドなどのチタン触媒が好ましい。これらの触媒の中では、色相、透明性の面からは二酸化ゲルマニウム化合物が好ましく、また、結晶性が早いこと、価格面を考慮すると三酸化アンチモンが好ましい。触媒の量としては全出発原料に対して金属元素の重量として0.0005〜0.2 重量%、好ましくは 0.001〜0.1 重量%である。
【0058】
また、重縮合反応は、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリn−ブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどの燐酸エステル類、トリフェニルホスファイト、トリスドデシルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類、メチルアッシドホスフェート、イソプロピルアッシドホスフェート、ブチルアッシドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、ジオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステルおよびリン酸、ポリリン酸などのリン化合物を安定剤として添加することが好ましい。安定剤の量としては、全出発原料に対してリン元素の重量として、0.001 〜0.1 重量%、好ましくは 0.002〜0.02重量%である。触媒および安定剤はエステル化反応工程時に添加しても、重縮合反応工程時に添加してもよい。
【0059】
液相重縮合工程で得られたポリエチレンテレフタレートは、押し出されてカットされ、2〜4mmのペレットに成形される。
このようにして得られたペレットは通常、密度が1.33〜1.36g/cm3 、極限粘度が 0.4〜0.75、ジエチレングリコールの含有量は 1.0〜4.0 モル%、アセトアルデヒドの含有量が5〜100 ppm、環状3量体オリゴマーの含有量が 0.5〜4.0 重量%、ガラス転移点50〜80℃、融点 240〜280 ℃、昇温結晶化温度で 130〜180 ℃、程度である。
【0060】
固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であるポリエステル樹脂を得るためには、縮重合触媒の量を調整することによっても達成できるが、縮重合を行う際に添加する縮重合触媒量が少ないと縮重合時間が長時間となり、樹脂の分解が多くなる。従って、縮重合時には十分な触媒量を添加しておき、必要な分子量にまで縮重合した後、後述するような方法で触媒の活性を落とす(失活させる)ことが好ましい。
触媒の失活は液相重縮合後に行い、この樹脂をボトルの成形に用いても良いが、さらに分子量を上げ、効果的にオリゴマー量、アセトアルデヒド量を低下させるためには、得られたペレットを触媒失活前に固相重合することが好ましい。
なお、ポリエステルの重合に関しては、連続方式に関して詳しく述べたが、回分方式でも、エステル化反応、縮重合反応条件を連続方式におけるように反応後半にかけて変化させ、ポリエチレンテレフタレートを得ることができる。
【0061】
固相重合工程に供給されるペレットは、まず、乾燥状態で好ましくは不活性ガス雰囲気下、 120〜200 ℃、10分〜4時間処理して結晶化させる。この工程においてはチップをアセトアルデヒド量を効果的に減らすため、水蒸気または水蒸気含有不活性雰囲気下で行なってもよい。
予備結晶化されたペレットの固相重合は、温度が 190〜230 ℃、好ましくは 195〜225 ℃、圧力が1kg/cm2G〜10Torr、好ましくは常圧、100Torr の条件下で、窒素ガスなどの不活性ガスを吹き込みながら行われる。この固相重合は1段階でも多段階でも構わない。
【0062】
固相重合を行うことにより、環状3量体オリゴマー量を 1.0〜0.2wt%まで減らすことができる。また、極限粘度は、0.70dl/g以上、好ましくは0.72dl/g以上にする事が好ましい。
固相重合後の樹脂は通常、密度が1.37〜1.43g/cm3 、極限粘度が 0.7〜1.4 、ジエチレングリコールの含有量は 1.0〜4.0 モル%、アセトアルデヒドの含有量が10ppm以下、ガラス転移点50〜80℃、融点 240〜280 ℃、昇温結晶化温度で 130〜180 ℃、程度である。
【0063】
触媒の失活はポリエチレンテレフタレートのペレットを水処理や水蒸気処理することにより行なわれる。ペレットの水処理は、ペレットを40〜120 ℃、好ましくは50〜100 ℃の水に5分〜10時間、好ましくは10分〜5時間浸漬することにより行なわれる。水は蒸留水、イオン交換水等が用いられる。また、処理時間を短縮するため、塩酸やリン酸等を加えることもできる。ペレットの水蒸気処理は40〜120 ℃、好ましくは50〜110 ℃の水蒸気または水蒸気含有ガスあるいは水蒸気含有空気をペレットに20分〜20時間、好ましくは1時間から10時間吹き込むことにより行なわれる。
【0064】
ペレットを連続方式で水処理または水蒸気処理する場合は塔型の処理装置に連続でペレットを上部より投入し、並流または向流で水や水蒸気を連続供給する。また、回分方式で行うこともできる。
この後、水処理した場合は粒状ポリエチレンテレフタレートを水切りし、乾燥させる。水蒸気処理した場合はそのまま乾燥工程へ移送することもできる。
乾燥は通常用いられるポリエチレンテレフタレートの乾燥処理を用いることができる。連続的に乾燥する方法としてはホッパー上部より粒状ポリエチレンテレフタレートを供給し、下部より乾燥ガスを通気する。回転ディスク型加熱方式の連続乾燥機も好ましい。ダブルコーン型回転乾燥機等で回分方式で乾燥することもできる。
【0065】
二酸化ゲルマニウムを縮重合触媒として用いたポリエチレンテレフタレートは触媒の失活処理が容易に行えるので好ましい。
【0066】
以上、本発明のボトルに用いられる樹脂の製造方法をポリエチレンテレフタレートを例に説明したが、本発明のボトルに用いられるポリエステル樹脂としては前述したように共重合ポリエステルであってもほぼ同様の方法で製造することができる。
上記のようにして得られたポリエステルチップを押し出し成形機を用いてパリソンと呼ばれるプリフォームを成形し、さらにこのプリフォームに不活性ガスまたは乾燥空気を吹き込みブロー成形することにより本発明の中空成形ボトルとする。
【0067】
プリホームの成型条件としては、ペレットの水分率を0.05%以下、好ましくは0.02%以下さらに好ましくは0.01%以下、最も好ましくは0.005%以下にまで乾燥させ、このペレットを射出成型器に投入する。射出成型器のシリンダー温度は、ホッパー側で 260〜310 ℃、シリンダー中間部で 250〜300 ℃、ノズル側で 240〜295 ℃程度が好ましい。金型温度は5〜100 ℃が好ましい。
射出成型器の滞留時間は平均10〜200 秒、好ましくは20〜180 秒、さらに好ましくは30〜150 秒である。射出成型器の温度が高すぎたり、滞留時間が長すぎるとオリゴマー量が増えたり、樹脂の分解による、極限粘度の低下、アセトアルデヒドの増加、着色等が起こり好ましくない。
このようにして得られたプリフォームは暖かいまま続けてブロー成型を行うホットパリソン法、またはいったん冷却して、ポリフォームを保管し、ブロー成型前に再びプリフォームを70〜140 ℃程度に再加熱してブロー成型を行うコールドパリソン法、等で中空成形ボトルとして成型される。
【0068】
このときの延伸比は、円周方向で 1.5〜10、さらには2〜6倍が好ましく、軸方向で 1.3〜8、さらには 1.5〜5倍が好ましい。また面積比では3〜30、さらには5〜20倍が好ましい。
中空成形ボトルは、耐熱性を上げるためブロー成型後、 120〜170 ℃程度の金型内でヒートセットを行うこともできる。また、ブロー成型の前または後に口栓部を 130〜200 程度℃に加熱し口栓部を結晶化させることも口栓部の変形を防ぐために好ましい。
ブロー成形においても再加熱温度や金型温度が高すぎたり、再加熱時間やヒートセット時間が長すぎるとオリゴマー量が増えたり、樹脂の分解による、極限粘度の低下、アセトアルデヒドの増加、着色等が起こり好ましくない。
【0069】
本発明のボトルは上記のように成形されたポリエステル樹脂製の中空成形ボトルであり、ボトルの樹脂の固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下である。固相重合速度が0.0050dl/g・hrを越えると、ボトルを回収し、ラベルを除去せず再生ペレットとしたときに環状3量体オリゴマー量が増え、再生ペレットを用いて紡糸、押し出し成形、射出成形などを行う場合にこの環状3量体オリゴマーが金型やノズル等に付着したり、製品そのものに付着することが多く製品の質を落とす。
【0070】
固相重合速度の測定方法は以下のようにして行うことができる。ボトル胴部を約5mm角に切り、これを 3/4インチ長さ14cmのステンテスパイプ(両端は配管接続のためのねじ切りが施してある)に長さ約10cm充填し、樹脂部分の両端はグラスウールで試料がパイプ中を移動しないよう蓋をする。このパイプの両端にエルボー型配管、1/2 インチ配管20cmをつなぎ、U字型の底部に試料を詰めたパイプが配置されるようにする。このような試料がセットされた配管を6本用意する。これらのU字型の試料入り配管を210±1℃にコントロールされたシリコンバスに沈め(配管上端部口は液面からでた状態で)、配管上端部口の一方から210℃に加熱された乾燥窒素(露点−50℃以下、酸素濃度20ppm 以下)を流量5ml/分で吹き込む。シリコンバスは温度が均一で温度分布がないように十分撹拌する。
これらの配管のうち、3本は2時間後オイルバスから取り出し、すぐさま25℃の水に浸け冷却する。他3本はそのまま固相重縮合反応を行ない、さらに15時間後取り出し、同様に冷却する。
それぞれの配管中のサンプルの極限粘度を測定し、(15時間処理後のサンプルの極限粘度の平均+2時間処理後のサンプルの極限粘度の平均)/13 より固相重合速度を求める。
【0071】
また、本発明のボトルは、そのほかの樹脂の特性として、極限粘度が 0.4〜1.4dl/g 、さらには 0.7〜1.4dl/g が好ましく、ジエチレングリコールの含有量は 1.0〜4.0 モル%、さらには 1.0〜3.0 モル%が好ましく、アセトアルデヒドの含有量が40ppm以下、さらには30ppm 以下が好ましい。また、ボトルがポリエチレンテレフタレートであるときにはさらに、エチエチレンテレフタレートの環状3量体の含有量が1%以下、胴部の密度が1.33〜1.43g/cm3 、さらには1.37〜1.41g/cm3 が好ましく、、ガラス転移点50〜80℃、融点 240〜280 ℃、昇温結晶化温度で 130〜180 ℃が好ましい。
【0072】
上記のようにして得られたボトルは内容物が充填され、さらにアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルが装着され、本発明の形態のボトルとなる。
本発明のラベルを装着したボトルは、ボトルとしての用途が終了した後、回収され、典型的にはボトル洗浄を行った後に粉砕を行い、次いでアルカリ温湯中でインキ層を除去し、そのまま水洗・乾燥し、必要により風選を行い、ボトルとラベルの混合フレークを得る。これを押出機により再生ペレットに再生して利用することができる。
【0073】
押し出し再生ペレット化は、通常押し出し機を用いてホッパー部より前記混合フレークを投入し、ポリエチレンテレフタレートの場合、シリンダー温度260〜320℃程度でノズルから押し出され、カットされて再生ペレットとなる。
【0074】
本発明のボトルを用いた再生ペレットは、環状3量体オリゴマーの含有量が少なく、紡糸、押し出し成形、射出成形などを行う場合に金型やノズル等に環状3量体オリゴマーが付着したり、製品そのものに付着することが少なく高品質の繊維、フィルム、成型品が得られる。また、金型やノズル等のオリゴマーの付着が少ないため、掃除の頻度も少なく、従来のボトルから得られた再生ペレットを用いた場合に比較し、生産性の大幅な向上ができる。
【0075】
【実施例】
樹脂特性測定条件
1)環状3量体オリゴマー
ボトル胴部から切り取った試料をヘキサフルオロイソプロパノ−ル/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加え希釈する。これにメタノ−ルを加えてポリマ−を沈殿させた後、濾過する。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法により定量した。
【0076】
2)極限粘度
ボトル胴部から切り取った試料を用い、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノ−ル(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
【0077】
3)ジエチレングリコ−ル含有量
ボトル胴部から切り取った試料をメタノ−ルにより分解し、ガスクロマトグラフィ−によりDEG量を定量し、全グリコ−ル成分に対する割合(モル%)で表した。
【0078】
4)アセトアルデヒド含有量
ボトル胴部から切り取った試料/蒸留水=1g/2mlを窒素置換したガラスアンプルに入れて上部を溶封し、160℃で2時間抽出処理を行い、冷却後抽出液中のアセトアルデヒドを高感度ガスクロマトグラフィ−で測定し濃度をppmで表示した。
【0079】
5)密度
ボトルの胴部を約1cm角に切り取り、四塩化炭素/n−ヘプタン混合溶媒の密度勾配管で25℃で測定した。
【0080】
6)ガラス転移点、融点、昇温結晶化温度
示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した。まず、140 ℃、10Torr以下で5時間乾燥させ、このうち、約10mmg の薄片をアルミニウムパンに窒素雰囲気下で押さえて密封した。このサンプルをDSCにセットし、100 ℃/分以上で昇温して 290℃で10分間溶融保持した。液体窒素を吹き込み -20℃以下まで急速冷却し、その後10℃/分の昇温速度で測定した。いずれもピークの頂点温度を示した。
【0081】
アクリル変性ポリエステル樹脂の製造例
撹拌機、温度計および環流冷却管を具備したガラス製フラスコにポリエステル樹脂の製造例で示した方法により得られるポリエステル樹脂にフマル酸を酸成分中5モル%共重合したポリエステル樹脂75gとメチルエチルケトン56gとイソプロピルアルコール19gを仕込み加熱撹拌し樹脂を溶解した。溶解した樹脂にたいしてメタクリル酸17.5gとアクリル酸エチル7.5gとアゾビスジメチルバレロニトリル1.2gを10gのメチルエチルケトンに溶解した溶液とを一定の速度で滴下し、さらに3時間撹拌した。その後、水300gとトリエチルアミン25部を反応溶液に加えさらに1時間撹拌した。
次に、溶液の温度を100℃まで昇温し、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、過剰のトリエチルアミンを蒸留により溜去し、アクリル変性ポリエステル樹脂を得た。
アルカリ温湯中で除去可能なラベルの製造例A
厚さ50μmのポリエステル系フィルム(ラベル加工後に周方向となる方向の熱収縮率72%:東洋紡績社製S5630)に上記アクリル変性ポリエステル樹脂を塗布、60℃で乾燥、0.1μmの中間層を積層し、この中間層の上にインキとしてシュリンクEX(東洋インキ社製)の緑、金、白色を順にグラビア印刷でベタ印刷を行い、60℃のオーブンで乾燥を行った。インキ層の厚みは合計10μmであった。印刷フィルムを溶剤を用いて、ボトルの最大外周+20mmのチューブ状に接着加工を行い、カットして幅12cmのラベルAを作製した。
アルカリ温湯中で除去可能なラベルの製造例B
シュリンクEX(東洋インキ社製)にエチレングリコールモノブチルエーテルを1.0重量%(乾燥後)添加したインキを各色用意した。厚さ50μmのポリエステル系熱収縮フィルム(ラベル加工後に周方向となる方向の熱収縮率72%:東洋紡績社製S5630)に緑、金、白色を順にグラビア印刷でベタ印刷を行い60℃のオーブンで乾燥を行った。インキ層の厚みは合計10μmであった。印刷フィルムを溶剤を用いて、ボトルの最大外周+20mmのチューブ状に接着加工を行い、カットして幅12cmのラベルBを作製した。
【0082】
実施例1
オリゴマー量0.70重量%、極限粘度0.55、の水処理によるゲルマニウム触媒失活ポリエチレンテレフタレート(固相重合なし)を用い、ボトルを成形した。ボトル胴部のオリゴマー量は0.72重量%、極限粘度0.54、アセトアルデヒド量27ppm 、DEG 含有量 2.0モル%、固相重合速度0.0026dl/g・hr、ガラス転移点温度77℃、融点 255℃、昇温結晶化温度 145℃であった。このボトルにラベルBを装着したのち、シュレッダーでラベルごと約1cm角に切断し、フレークを作成した。これを95℃、3%水酸化ナトリウム水溶液に30分間撹拌しながら浸漬しておいた。ラベルからインキは完全に除去されていた。フレークを引き上げ、水洗を3回行った後、140 ℃、5torr で5時間窒素雰囲気下で乾燥させた。このフレークを、30φの二軸押し出し機(池貝鉄鋼株式会社製)を用いて再ペレット化した。シリンダー温度は 290℃平均滞留時間は 150秒であった。
再生ペレットのオリゴマー含有量は0.75重量%であった。
【0083】
実施例2
オリゴマー量0.36重量%、極限粘度0.82、の水処理によるゲルマニウム触媒失活ポリエチレンテレフタレート(固相重合あり)を用い、ボトルを成形した。ボトル胴部のオリゴマー量は0.38重量%、極限粘度0.79、アセトアルデヒド量2ppm、DEG 含有量 2.0モル%、固相重合速度0.0027dl/g・hr、ガラス転移点温度77℃、融点 255℃、昇温結晶化温度 145℃であった。以降ラベルBを用いた以外は実施例1と同様にして再生ペレットを得た。再生ペレットのオリゴマー含有量は0.40重量%であった。
【0084】
比較例
オリゴマー含有量 0.9重量%、極限粘度0.56、のゲルマニウム触媒ポリエチレンテレフタレート(触媒未失活)を用い成形したボトル(ボトル胴部のオリゴマー量は 1.2重量%、極限粘度0.54、アセトアルデヒド量25ppm 、DEG 含有量 2.0モル%、固相重合速度0.009dl/g ・hr、ガラス転移点温度76℃、融点 253℃、昇温結晶化温度 155℃)を用いた以外は実施例1ど同様にして再生ペレットを得た。再生ペレットのオリゴマー含有量は 1.5重量%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のラベル付ボトルから熱可塑性重合体をペレットとして回収する工程の一例を示す図である。
【図2】 従来のラベル付ボトルから熱可塑性重合体をペレットとして回収する工程の一例を示す図である。
Claims (4)
- アルカリ性温湯中で除去されない熱可塑性重合体フィルムの少なくとも片面にアルカリ性温湯中で除去できるインキ層を有するラベルが装着されたポリエステル樹脂製の中空成形ボトルであって、装着前のラベルを構成する熱可塑性重合体フィルムが熱収縮率30〜80%のポリエステル系熱収縮性フィルムであり、前記ラベルを加熱することによりボトルに装着されてなり、該ボトルの樹脂の210℃における固相重合速度が0.0050dl/g・hr以下であることを特徴とした中空成形ボトル。
- 請求項1に記載のラベルを装着したボトルを、アルカリ性温湯中に浸漬してラベル上のインキ層をラベル上から除去することを特徴とするインキ除去方法。
- 請求項2に記載の方法によりインキ層を除去したラベルを、該ラベルを装着したボトルと共に溶融し、再生することを特徴とするラベル付ボトルの再生方法。
- 請求項3記載の方法により得られた再生ペレット。
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