JP4119986B2 - 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子の安定性を向上させるためのベクターおよび方法 - Google Patents
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Omasa, T.、Gene Amplification and Its Application in Cell and Tissue Engineering、"J. BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING"、2002年、94巻、p.600-605 Noriaki Shimizu, Yuri Miura, Yu Sakamoto, and Ken Tsutsui、Plasmids with a Mammalian Replication Origin and a Matrix Attachment Region Initiate the Event Similar to Gene Amplification1.、"Cancer Research"、2001年、61巻、p.6987-6990
該ベクターの複製開始領域からの複製フォークと該ベクターに組み込まれた任意の遺伝子からの転写が正面衝突する領域に、核マトリックス結合領域を含まない構造であることを特徴とするベクターを提供する。
任意の遺伝子は、目的遺伝子または薬剤耐性遺伝子であることと、
転写は、前記目的遺伝子または前記薬剤耐性遺伝子の転写であることを特徴とするベクターを提供する。
核マトリックス結合領域が、Igκ遺伝子座、SV40初期領域、ジヒドロ葉酸リダクターゼ遺伝子座の核マトリックス結合領域からなる群から選択される結合領域のいずれか1つに由来するベクターを提供する。
上記ベクターを哺乳動物細胞にトランスフェクションすることと、および
目的遺伝子を含むベクターを哺乳動物細胞にトランスフェクションすることと、
を含む方法を提供する。
プラスミドおよびDNA。
p6XNBeta(14.2kbp)は、MARを含むヒトβ-グロブリン 複製開始領域(7.8kbp)に由来するゲノム配列を有する(Aladjem, M. I., Rodewald, L. W., Kolman, J. L., and Wahl, G. M. Genetic dissection of a mammalian replicator in the human beta-globin locus. Science, 281: 1005-1009, 1998)。さらに、このプラスミドは、形質転換体を選択するためのBsrも有する。
RFBnot1L(31mer)(5’-GGG CGG CCG CGC TGG AGG TCG ACC AGA TGT C-3’)(配列番号1);
RFBnot1R(36mer)(5’-GGG CGG CCG CAA TTT AAA AAA AAA AAA AAA AAA AAA-3’)(配列番号2)。
ヒト結腸直腸COLO 320DM腫瘍株は、非特許文献2に記載した通りに得て、維持した。全てのプラスミドは、Qiagenプラスミド精製キット(QIAGEN Inc., Valencia, CA)を使用して精製し、GenePorter 2 リポフェクションキット(Gene Therapy Systems, San Diego, CA)によって細胞にトランスフェクションした。
公開されているプロトコールに従って、分裂中期試料、プローブ調製およびFISHを行った(Shimizu, N., Ochi, T., and Itonaga, K. Replication timing of amplified genetic regions relates to intranuclear localization but not to genetic activity or G/R band. Exp. Cell Res., 268: 201-210, 2001)。また、in situ増殖細胞に対するFISHも、すでに記載した通りに行った(Tanaka, T. and Shimizu, N. Induced detachment of acentric chromatin from mitotic chromosomes leads to their cytoplasmic localization at G1 and the micronucleation by lamin reorganization at S phase. J. Cell Sci., 113: 697-707, 2000)。クロマチン繊維は、公開されたプロトコール(Parra, I. and Windle, B. High resolution visual mapping of stretched DNA by fluorescent hybridization. Nat. Genet., 5: 17-21, 1993)を改良して調製した。簡単には、細胞をPBSで二回洗浄して1〜2×106細胞/mlの密度にした。次いで、5μlの懸濁液をスライドにスポットして、スライドを完全に乾燥させた。スライドを、あらかじめ37℃に加熱しておいたSDS細胞溶解バッファ(0.5%SDS、50mM EDTA、200mM Tris-HCl、pH 7.4)に浸漬して3分間インキューベートした。次いで、スライドをゆっくり一定速度で引き上げ、45°に傾けて完全に空気乾燥した。次いで、スライドを、メタノール/酢酸(3/1)により室温で5分間固定して、再び空気乾燥した。図1FおよびGに示した実験のために、pSFVdhfrから切除したDIGラベルしたDHFR IR DNA(4.6kbp)およびビオチンラベルしたベクターDNA(pSFV-V;4.6kbp)を混合して、共にスライドにハイブリダイズさせた。図3に示した実験のために、DHFR IR DNAに加えて、c-myc IR(2.4kbp)およびγ-globin IR(7.8kbp)をpNeo.Myc-2.4およびp6XN Betaからそれぞれ切除した。ベクター配列のコンタミネーションを回避するために、バンドの切出しに続いて電気泳動を行うという連続的ラウンドを2回行った。得られたIR DNAおよび完全なラムダファージDNAには、ビオチンまたはDIGにより別々にラベルした。コンタミネーションしたベクター配列によって引き起こされるクロスハイブリダイゼーションを抑制するために、ラベルしたプローブの混合物を大過剰のラベルされていないベクターDNA(pSFV-Vの規制変異消化物すなわち)と、ハイブリダイゼーションを行う前に予めハイブリダイズさせた。ハイブリダイズしたプローブの検出は、以前に報告したプロトコールと本質的に同じものを使用し、テキサスレッド結合ストレプトアビジン(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)またはFITC結合-抗DIG抗体(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を使用して行った。ベクター配列によるクロスハイブリダイゼーションが生じないことは、pSFVdhfrでトランスフォームされた細胞に由来するスライドにおいて、c-mycおよびγ-globin IRプローブのハイブリダイゼーションによるシグナルが生じないことなどにより確かめた。
DHFRまたはc-myc遺伝子座に由来するIRを使用して以前に行った実験により、哺乳動物IRおよびMARを有するプラスミドは、遺伝子増幅と同様のプロセスを開始することが示されている(非特許文献2)。本実施例では、第三のIRを使用した結果を提供する。p6XNBetaは、IRとMAR活性を有する領域とを含むヒトγ-globin座に由来する7.8kbpゲノム領域を有する(Aladjem, M. I., Rodewald, L. W., Kolman, J. L., and Wahl, G. M. Genetic dissection of a mammalian replicator in the human beta-globin locus. Science, 281: 1005-1009, 1998)。このプラスミドをヒトCOLO 320DM細胞にトランスフェクションし、プールした安定形質転換体から分裂中期試料を調製した。プラスミドプローブを使用したFISHにより、プラスミド配列の局在を調査した。ハイブリダイゼーションシグナルは、調査した中期細胞のDMまたは染色体HSRのそれぞれにおいて、43%(17/40)または78%(31/40)で検出された。代表的なイメージを図1AおよびBに示す。対照的に、ベクタープラスミド(p6XN)をトランスフェクションした培養に由来する中期細胞では、DMにシグナルを示すものはほとんど示されず(調査した中期の3%;1/35)、HSRにシグナルを示すものはなかった(調査した中期の0%;0/40)。COLO 320DMにおけるオリジナルのアンプリコンを検出するためのプラスミドプローブとc-mycコスミドプローブとのコハイブリダイゼーションにより、増幅されたプラスミドは、既存のDM中に組み込まれるか、独立してDMを生じるか、またはオリジナルのアンプリコンから独立してHSRを生じることが示されている(非特許文献2)。これらの構造は、単一細胞中に同時に出現することもある。これらの構造に加えて、異常に大きい環状染色体も見出された(図1E)。この構造の出現頻度は少なかったが、その有意性について後の節で議論する。
pSFVdhfrで安定にトランスフォームされたCOLO 320DM細胞を独立して16クローン獲得した。FISHによる解析では、DM(10クローン)、HSR(3クローン)または両方とも(3クローン)のいずれかのプラスミド局在を示すクローンが同定された。以下の研究では、これらの中でDMに組み込まれたクローン(DMクローン)としてクローン番号12(図1C)および14を使用し、HSRを形成したクローン(HSRクローン)としてクローン22(図1D)および24を使用した。このようなクローンから分離した高分子量ゲノムDNAを制限酵素で処理し、生成物をサザンブロットハイブリダイゼーションによって分析した(図2BおよびC)。第一の所見は、各細胞におけるプラスミド配列のコピー数が驚くほど多いことであった。ハイブリダイズしたシグナルの強さから、DMクローンでは2〜4,000コピー/細胞、HSRクローンでは10,000コピー/細胞以上のコピー数であると見積もられた。第二の所見は、ゲノム消化物から得られたバンドが、特にDMクローン(12および14クローン)において、驚くほど鮮明であるということであった。星印を付けた断片を除いて、各断片は、環状pSFVdhfrを同様に消化した断片とよく一致していた。pNeo.Myc-2.4でトランスフォームしたCOLO 320DM細胞の6つの独立したクローンを使用した場合も、本質的に同様の結果が得られた(データ示さず)。PFAで固定した細胞で行ったFISHでは、大多数のプラスミド配列が、増幅された領域に存在することを示した(データ示さず)。したがって、特にDMにおいて、非常に多くのプラスミド配列が整列して増幅されていた。実際に、一箇所を消化する実験により、頭−尾に縦列の配列であることが示された。通常、トランスフェクションした遺伝子は、染色体の組込み部位に縦列配列で配置されることが知られているが、分子機序は明らかにされていない(Palmiter, R. D. and Brinster, R. L. Germ-line transformation of mice. Annu. Rev. Genet., 20: 465-499, 1986)。ここで得られた結果は、IRを有するプラスミドの増幅は、おそらく形質転換の初期の段階で上記同様の機構を媒介していることを示唆した。しかし、数千のプラスミド配列が増幅されるときに、頭−尾のダイレクトリピート配列がもとの構造のままであったことは、注目に値することである。これは、DMへの組込みは、配列を不安定化せずにコピー数を増加することができることを示唆している。
種々のIRおよび/またはラムダファージDNAを有するプラスミドの2つをコトランスフェクションして、増幅された構造がどのように出現するか調査した。コトランスフェクションされた配列は、トランスフェクション後の初期に一連の非相同的な分子間組換えを受けて、混在構造を形成することは既知である(Perucho, M., Hanahan, D., and Wigler, M. Genetic and physical linkage of exogenous sequences in transformed cells. Cell, 22: 309-317, 1980)。しかし、FISHによる構造解析では、報告されていなかった。
HSR由来プラスミドを有する細胞をFISHで検査する際に、2つの有糸分裂娘細胞間または有糸分裂後の娘細胞間で、プラスミド配列によって構成されたブリッジが観察された。このようなブリッジは、通常の染色体標本中で観察することができる(図4D)。COLO 320DM細胞は培養基板に接着しないので、ヒトHeLa細胞で調査した。pSFVdhfrをトランスフェクションすると、これらの細胞においてもHSRを生じた。このような形質転換体をチャンバースライドで培養し、PFAによりin situで固定して、プラスミドプローブを使用したFISHによって解析した。プラスミド配列で構成されるブリッジは、分裂後期(図4A)および分裂終期/細胞質分裂(図4B)で検出された。ブリッジは、G1期の初期(図4C)で破壊された。一部の細胞では、壊れたクロマチンの一部が細胞質に残ったままとなり、微小核を生じた。一方、分裂中期試料におけるHSRのプラスミド配列の大部分は、染色体アームの末端で検出された(たとえば、図1を参照)。これら2つの前提に基づくと、BFBサイクル(図4Eにおいて図解した)は、プラスミド由来のHSRの生成および増大に関与していると結論づけられる。BFBサイクルがプラスミド配列で惹起されるには、プラスミドリピートにおいて頻繁にDNA鎖の切断が生じることが必要である。
pSFVdhfrに由来する10種類のプラスミドを構築した。これらを図5に示した。pSFVdhfrは、2つの薬物選択マーカー遺伝子(ブラスチシジン耐性(Bsr)およびハイグロマイシン耐性(Hyg))を有する。これらのプラスミドをCOLO 320DM細胞にトランスフェクションし、ブラスティサイジンで細胞を選択した。プールした形質転換体のプラスミド分布をFISHによって分析した(図1)。これらのプラスミドについて、3回以上の独立したトランスフェクションおよび解析を行った。DMでシグナルを示す分裂中期細胞の割合は、種々のトランスフェクション間で変動しやすかったが、HSRでシグナルを示す分裂中期細胞の割合は、かなりの再現性があった。代表的な結果を図6に示した。この実験では、トランスフェクションしてから2、3および4週間後に解析した。pSFVdhfrをトランスフェクションした場合、20〜40%の形質転換細胞は、プラスミド配列で構成されたHSRを有していたが(図6A)、pSFV-Vの場合では、全くHSRを有していなかった(図6B)。これは、HSRの生成にDHFR IRが必須であることを示しており、IRからの複製がDNA鎖の切断を誘導しているかもしれないことを示唆した。他方、上記したように、Bsr転写ユニットは、その下流にpoly(A)付加配列を有していない。poly(A)付加は、転写終結に関連しているので(最近の総説については、Ref. Maniatis, T. and Reed, R. An extensive network of coupling among gene expression machines. Nature, 416: 499-506, 2002を参照)、複製がDHFR IRから開始された場合、転写と複製の間で正面衝突することが予想される。増幅されたプラスミド配列は、ダイレクトリピートとして配置され、それぞれの配列間の相互の配向がもとの環状構築物と同じであることは、重要である。そこで、Bsrの下流にpoly(A)配列を配置することとした(pΔBN.polyAおよびpΔB.polyA)。これらのプラスミドをトランスフェクションしてもHSRがほとんど産生されなかったが、もとのプラスミド(pΔBNおよびpΔB)では、多数のHSRを産生した(それぞれ、図6FおよびI〜DおよびGとを比較)。poly(A)シグナルを、転写と複製が衝突するような部位に配置すると、HSRの産生をほとんど完全に抑制することが示された。pΔBでは、pSFVdhfrまたはpΔBN(以下、全部は直さないが、プラスミド表記の統一に注意)よりも比較的低い頻度でHSRを産生した。HSV poly(A)の末端202bpの配列は、pΔBを構築する際に削除されてしまう。しかし、Hygは選択に使用していないにもかかわらず、Hygからの転写が何らかの効果を有しているかもしれない。
上記実験では、哺乳類IRを有するプラスミドがどのように遺伝子増幅を模倣しているかを示唆した。第一に、トランスフェクションしたプラスミドは、プラスミドタンデムダイレクトリピートからなる大きな環状分子を形成した。現在、このようなダイレクトリピートは、リピート誘導性の遺伝子サイレンシングの標的であることが知られている(McBurney, M. W., Mai, T., Yang, X., and Jardine, K. Evidence for repeatinduced gene silencing in cultured Mammalian cells: inactivation of tandem repeats of transfected genes. Exp. Cell Res., 274: 1-8, 2002)。実際に、逆転写酵素を媒介したPCRを使用した予備実験では、増幅されたプラスミド配列に由来する非常に低い発現が示されている(データ示さず)。さらに、5μg/ml以下のブラスティサイジン(この研究で形質転換体を選択するために使用した)の存在下で増殖するためには、1コピーに由来するBsrの発現のみで十分であった。したがって、IRを有するプラスミドが細胞内で莫大なコピー数に増幅されるのは、適用する選択圧力によるものではなく、プラスミド固有の性質に由来するものであった。
Claims (8)
- 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子を安定化させるためのベクターであって、哺乳動物細胞内で機能する複製開始領域および核マトリックス結合領域を含み、
該ベクターの複製開始領域からの複製フォークと該ベクターに組み込まれた任意の遺伝子からの転写が正面衝突する領域に、複製開始領域からの複製フォークを阻害する配列を、複製開始領域からの複製を遮断する配向に配置した構造であることを特徴とするベクター。 - 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子を安定化させるためのベクターであって、哺乳動物細胞内で機能する複製開始領域および核マトリックス結合領域を含み、
該ベクターの複製開始領域からの複製フォークと該ベクターに組み込まれた任意の遺伝子からの転写が正面衝突する領域に、poly(A)付加配列を含む構造であることを特徴とするベクター。 - 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子を安定化させるためのベクターであって、哺乳動物細胞内で機能する複製開始領域および核マトリックス結合領域を含み、
該ベクターの複製開始領域からの複製フォークと該ベクターに組み込まれた任意の遺伝子からの転写が正面衝突する領域に、核マトリックス結合領域を含まない構造であることを特徴とするベクター。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載のベクターであって、さらに薬剤耐性遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
- 請求項1〜4のいずれか一項に記載のベクターであって、さらに目的遺伝子を含むことを特徴とするベクター。
- 請求項4または5に記載のベクターであって、
前記任意の遺伝子は、目的遺伝子または薬剤耐性遺伝子であることと、
前記転写は、前記目的遺伝子または前記薬剤耐性遺伝子の転写であることを特徴とするベクター。 - 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子を安定化させる方法であって、請求項5に記載の組換え型ベクターを前記哺乳動物細胞にトランスフェクションすることを含む方法。
- 哺乳動物細胞内にトランスフェクションした遺伝子を安定化させる方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載のベクターを前記哺乳動物細胞にトランスフェクションすることと、および
目的遺伝子を含むベクターを前記哺乳動物細胞にトランスフェクションすることと、
を含む方法。
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WO2010110340A1 (ja) | 2009-03-27 | 2010-09-30 | 国立大学法人広島大学 | 哺乳動物細胞内で目的遺伝子を増幅し高発現させる方法、および当該方法を実施するために用いられるキット |
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