JP4118676B2 - エチレン性不飽和を含む有機化合物をヒドロシアン化する方法 - Google Patents

エチレン性不飽和を含む有機化合物をヒドロシアン化する方法 Download PDF

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Description

【0001】
技術分野
本発明は、エチレン性不飽和を含む有機化合物を、少なくとも1つのニトリル官能基を含む化合物にヒドロシアン化するプロセスに関する。
【0002】
本発明は、一層特に、ブタジエンのようなジオレフィン、又はアルケンニトリル、例えばペンテンニトリルのような置換されたオレフィンのヒドロシアン化することに関する。
【0003】
従来技術
フランス国特許第1 599 761号は、少なくとも1つのエチレン性二重結合を含む有機化合物にニッケル触媒及びトリアリールホスフィットの存在においてシアン化水素酸を付加することによってニトリルを調製するプロセスについて開示している。この反応は、溶剤の存在又は不存在において実施されることができる。
【0004】
従来技術のこのプロセスにおいて溶剤が使用される時は、溶剤は、ベンゼン又はキシレンのような炭化水素、或はアセトニトリルのようなニトリルであるのが好ましい。
【0005】
使用される触媒は、ホスフィン、アルシン、スチビン、ホスフィット、アルセナイト又はアンチモナイトのようなリガンドを含む有機ニッケル錯体である。
【0006】
触媒を活性化するための促進剤、例えばホウ素化合物又は金属塩、通常ルイス酸を存在させることもまた該特許において推奨されている。
【0007】
特許FR−A−2 338 253は、少なくとも1つのエチレン性不飽和を有する化合物の、遷移金属、特にニッケル、パラジウム又は鉄の化合物、及びスルホン化ホスフィンの水溶液の存在におけるヒドロシアン化の実施を提供した。
【0008】
この特許に開示されているスルホン化ホスフィンは、スルホン化トリアリールホスフィンであり、一層特にスルホン化トリフェニルホスフィンである。
【0009】
このプロセスは、正確なヒドロシアン化、特にブタジエンとペンテンニトリルとのヒドロシアン化、及び沈降による簡単な分離による触媒溶液の容易な分離を可能にし、よって触媒として作用する金属を含む流出物又は廃棄物の排出をできるだけ防ぐ。
【0010】
しかし、触媒活性及び安定性の両方に関して一層有効な新規な触媒システムを見出すために研究が行なわれている。
【0011】
本発明の目的の内の一つは、知られているシステムに対して改良された活性を示す触媒システムを遷移金属と共に得ることを可能にする新規なリガンド系統を提供するにある。
【0012】
発明の開示
このために、発明は、下記を提供する:少なくとも1つのエチレン性結合を含む有機化合物を、遷移金属及びオルガノリンリガンドを含む触媒システムの存在においてシアン化水素と反応させることによってヒドロシアン化するプロセスであって、リガンドが下記の一般式に一致するホスフィンであることを特徴とするプロセス:
【化7】
Figure 0004118676
式中:
Eは、O又はSを表し;
nは、0又は1を表し;
1、R4、R5及びR6は、同一であり又は異なり、水素原子;炭素原子1〜40を含む、随意に置換される、飽和されたもしくは不飽和の脂肪族炭化水素質ラジカルであって、それの炭化水素質鎖は随意にヘテロ原子によって割り込まれるもの;随意に置換される、単環式もしくは多環式の、飽和された、不飽和のもしくは芳香族の、炭素環式もしくは複素環式ラジカル;又は飽和されたもしくは不飽和の脂肪族炭化水素質ラジカルであって、それの炭化水素質鎖は随意にヘテロ原子によって割り込まれかつ上に規定した通りの炭素環式もしくは複素環式ラジカルを有し、該ラジカルは随意に置換されるものを表し;
さもなければR4及びR5は、それらを保持する炭素原子と一緒になって、随意に置換される、飽和されたもしくは不飽和の、好ましくは炭素原子5〜7を有する炭素環式単環を形成し;
2は、水素原子又はXラジカルを表し;
3は、Xラジカル又はYラジカルを表し;
2及びR3置換基の内の1つ及び1つだけがXラジカルを表すことは理解され;
Xは、炭素原子2〜20を有する単環式もしくは二環式の、芳香族の炭素環式もしくは複素環式ラジカル;随意に炭化水素質鎖において1つ以上の更なる不飽和を示しかつ炭素原子2〜12を有する1−アルケニルラジカル;随意に炭化水素質鎖において1つ以上の更なる不飽和を示しかつ炭素原子2〜12を有する1−アルキニルラジカル;或は−CN、[(C1〜C12)アルキル]カルボニル、[(C3〜C18)アリール]カルボニル、[(C1〜C12)アルコキシ]カルボニル、[(C6〜C18)アリールオキシ]カルボニル、カルバモイル、[(C1〜C12)アルキル]カルバモイル又は[ジ(C1〜C12)アルキル]カルバモイルラジカルから選び;及び
Yは、R1の意味の内の水素原子を除くいずれか一つを取り;
7は、R1、R4、R5及びR6の意味を有し或はカルボニル官能基を含む炭化水素質ラジカル又は下記式のラジカルを表し:
【化8】
Figure 0004118676
式中:
Aは、水素原子;(C1〜C10)アルキル;或は(C6〜C10)アリール又は(C6〜C10)アリール(C1〜C10)アルキル(ここで、アリール部分は、随意に(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、ハロゲン、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、カルバモイル、(C1〜C6)アルキルアミノカルボニル及びジ(C1〜C6)アルキルアミノカルボニルから選ぶ1つ以上のラジカルで置換される)を表し;
−Ar1−Ar2−は、下記のいずれかを表し:
下記式の二価のラジカル:
【化9】
Figure 0004118676
式中:フェニル核の各々は、随意に下記に規定する通りの1つ以上のZ基で置換される;
又は下記式の二価のラジカル:
【化10】
Figure 0004118676
式中:フェニル核の各々は、随意に下記に規定する通りの1つ以上のZ基で置換される;
Zは、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、トリフルオロメチル、ハロゲン、(C1〜C6)アルコキシカルボニル、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、(C1〜C6)アルキルアミノカルボニル又はジ(C1〜C6)アルキルアミノカルボニルを表し;
8及びR9は、同一であり又は異なり、置換されたもしくは未置換のアリールラジカルを表す。
【0013】
好ましい具体例の説明
この系統のホスフィン化合物は、フランス国特許出願第2 785 610号及び同第2 785 611号に開示されている。これらの化合物を製造するプロセスの例もまた上述した文献に開示されている。
【0014】
記載した化合物の中で、(I)式において、下記に対応する化合物が特に好適である:
1、R2、R4、R5及びR6が、独立に水素原子さもなければ下記:
炭素原子1〜12を有する飽和されたもしくは不飽和の脂肪族炭化水素質ラジカルであって、それの炭化水素質鎖は随意にO、N及びSから選ぶヘテロ原子によって割り込まれるもの;
炭素原子3〜8を有する、飽和された又は環中に1つ又は2つの不飽和を含む単環式炭素環式ラジカル;
互いに縮合された2つの単一の環であって、各々の単一の環は、随意に1つ又は2つの不飽和を含みかつ炭素原子3〜8を示すもので構成される飽和されたもしくは不飽和の二環式炭素環式ラジカル;
単環式もしくは二環式(C6〜C10)芳香族炭素環式ラジカル;
独立にO、N及びSから選ぶヘテロ原子1〜3を含む飽和された、不飽和のもしくは芳香族の、5−〜6−員の単環式複素環式ラジカル;
互いに縮合された2つの5−〜6−員の単一の環であって、各々の単一の環は、独立にO、N及びSから選ぶヘテロ原子1〜3を含むもので構成される飽和された、不飽和のもしくは芳香族の二環式複素環式ラジカル;
炭素原子1〜12を有する飽和されたもしくは不飽和の脂肪族炭化水素質ラジカルであって、それの炭化水素質鎖は上に規定した通りの炭素環式もしくは複素環式単環式ラジカルを保持する
から選ぶTラジカルを表し、
該Tラジカルは随意に置換される。
【0015】
Xは、(C2〜C6)アルケニル基、(C2〜C6)アルキニル基、フェニル、ナフチル、チエニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピラダジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インダゾリル、プリニル、キノリル、イソキノリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル及びプテリジニルから選ぶのが好ましい。
【0016】
上記の化合物の中で、随意に、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C2〜C6)アシル;下記:−Ra−COORb、−Ra−NO2、−Ra−CN、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキル、−Ra−CO−N(Rb2、−Ra−hal、−RaCF3及び−O−CF3(ここで、Raは、結合又は(C1〜C6)アルキレンを表し、Rbは、同一であり又は異なり、水素原子又は(C1〜C6)アルキルを表し、halは、ハロゲンを表す)から選ぶラジカル;
又は代わりに下記のラジカル:
【化11】
Figure 0004118676
式中:Rdは、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C2〜C6)アシル、−Ra−COORb、−Ra−NO2、−Ra−CN、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ、ジ(C1〜C6)アルキルアミノ(C1〜C6)アルキル、−Ra−CO−N(Rb2、−Ra−hal、−Ra−CF3及び−O−CF3(ここで、Ra、Rb及びhalは、上に規定した通りである)から選び;
mは、0〜5の整数を表し:
cは、結合、(C1〜C6)アルキレン、−O−、−CO−、−COO−、−NRb−、−CO−NRb−、−S−、−SO2−又は−NRb−CO−を表し、Rbは、上に規定した通りである
で置換されるTラジカルを含む化合物が特に好適である。
【0017】
発明の好適な化合物として、下記の(II)式又は(III)式の化合物を挙げることができる:
【化12】
Figure 0004118676
【0018】
遷移金属化合物、一層特にニッケル、パラジウム及び鉄化合物を遷移金属として用いる。
【0019】
上述した化合物の中で最も好適な化合物は、ニッケル化合物である。
【0020】
例として、下記を挙げることができ、下記に限定しない:
ニッケルがゼロ酸化状態である化合物、例えばカリウムテトラシアノニッケレートK4[Ni(CN)4]、ビス(アクリロニトリル)ニッケル(0)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル及びテトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)のようなVa族からのリガンドを含む誘導体のようなもの、
ニッケル化合物、例えば、カルボキシレート(特にアセテート)、カーボネート、バイカーボネート、ボレート、ブロミド、クロリド、シトレート、チオシアネート、シアニド、ホルメート、ヒドロキシド、ヒドロホスフィット、ホスフィット、ホスフェート及び誘導体、ヨージド、ニトレート、スルフェート、スルフィット、アリールスルホネート及びアルキルスルホネートのようなもの。
【0021】
使用するニッケル化合物が0よりも大きいニッケルの酸化状態に一致する時は、ニッケル用還元剤を反応媒体に加え、該還元剤は、好ましくは反応の条件下でニッケルと反応する。この還元剤は、有機又は無機にすることができる。例として、下記を挙げることができ、下記に限定しない:NaBH4、Zn粉末、マグネシウム、KBH4及びホウ水素化物。
【0022】
使用するニッケル化合物がニッケルの0酸化状態に一致する時は、上述した化合物のタイプの還元剤も加えることができるが、この添加は必須のものではない。
【0023】
鉄化合物を使用する時は、同じ還元剤が適している。
【0024】
パラジウムの場合、還元剤は、加えて、反応媒体の成分(ホスフィン、溶媒、オレフィン)にすることができる。
【0025】
本プロセスにおいて一層特に用いる少なくとも1つのエチレン性二重結合を含む有機化合物は、ジオレフィン、例えばブタジエン、イソプレン、1,5−ヘキサジエン又は1,5−シクロオクタジエンのようなもの、エチレン性不飽和を含む脂肪族ニトリル、特に線状ペンテンニトリル、例えば3−ペンテンニトリル又は4−ペンテンニトリルのようなもの、モノオレフィン、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、シクロヘキセン又はメチルシクロヘキセンのようなもの、及びこれらの化合物の内のいくつかの混合物である。
【0026】
ペンテンニトリルは、特に、他の化合物、例えば2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はブタジエンのようなもの、例えばブタジエンをヒドロシアン化して不飽和ニトリルにする従来の反応に由来するものをある量、通常少量含むことができる。
【0027】
これは、ブタジエンをヒドロシアン化する間に、取るに足らないと言えない量の2−メチル−3−ブテンニトリル及び2−メチル−2−ブテンニトリルが、線状ペンテンニトリルと共に形成されるからである。
【0028】
発明のプロセスに従うヒドロシアン化用に使用する触媒システムは、例えば、適した量の選定した遷移金属化合物及び随意に還元剤を、(I)式のホスフィンの単独又は溶媒に溶解したものに加えることによって調製した後に、触媒システムを反応領域に導入することができる。また、ヒドロシアン化すべき化合物を加える前に又は加えた後に、ホスフィン及び遷移金属化合物をヒドロシアン化反応媒体に単に加えることによって触媒システムを「現場で」調製することも可能である。
【0029】
使用するニッケル又は別の遷移金属の化合物の量は、ヒドロシアン化又は異性化すべき有機化合物1モル当たりの遷移金属のモルとして、使用するニッケル又はその他の遷移金属10-4〜1モル、好ましくは0.005〜0.5モルの濃度を得るために選ぶ。
【0030】
使用する(I)式のホスフィンの量は、遷移金属1モルに対するこの化合物のモル数が0.5〜500、好ましくは2〜100になるように選ぶ。
【0031】
反応は、溶媒を用いないで実施するのが普通であるが、不活性な有機溶媒を加えるのが有利になり得る。
【0032】
そのような溶媒の例として、芳香族、脂肪族又は脂環式炭化水素を挙げることができる。
【0033】
ヒドロシアン化反応は、温度10〜200℃で実施するのが普通であり、30〜120℃で実施するのが好ましい。
【0034】
発明のプロセスは、連続で又はバッチ様式で実施することができる。
【0035】
使用するシアン化水素は、金属シアン化物、特にシアン化ナトリウム、又はシアノヒドリン、例えばアセトンシアノヒドリンのようなものから調製することができる。
【0036】
シアン化水素は、ガス状形態で又は液状形態で反応装置中に導入する。シアン化水素は、また、あらかじめ有機溶媒に溶解することもできる。
【0037】
バッチ様式の実施の関係では、実施において、あらかじめ不活性ガス(窒素又はアルゴンのようなもの)を使用してパージした反応装置に、ホスフィン、遷移金属化合物、可能な還元剤及び可能な溶媒のような種々の構成成分のすべて又は一部を含む溶液か、或は該構成成分を別々にのいずれかで投入することが可能である。次いで、反応装置を選定した温度にもたらし、次いで、ヒドロシアン化すべき化合物を導入するのが普通である。次いで、シアン化水素を、それ自体で導入するが、連続にかつ一定不変に導入するのが好ましい。
【0038】
反応(それの進行は、抜き出したサンプルをアッセイすることによってモニターすることができる)が完了した時に、反応混合物を冷却した後に抜き出し、反応生成物を、例えば蒸留することによって分離することができる。
【0039】
本発明に従うエチレン性不飽和を含む化合物をヒドロシアン化するプロセスの改良は、特に、エチレン性不飽和を含む該ニトリル化合物をシアン化水素と反応させることによってヒドロシアン化することに関し、本発明に従う触媒システムを、少なくとも一種のルイス酸を含む助触媒と共に使用するに在る。
【0040】
この改良において使用することができるエチレン性不飽和を含む化合物は、基本的なプロセスについて挙げたものであるのが普通である。しかし、それを、エチレン性不飽和を含む脂肪族ニトリル化合物をヒドロシアン化してジニトリルに、特に線状ペンテンニトリル、例えば3−ペンテンニトリル、4−ペンテンニトリル及びそれらの混合物のようなものにする反応に適用するのが一層特に有利である。
【0041】
これらのペンテンニトリルは、ブタジエンをヒドロシアン化する従来の反応及び/又は2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化に由来する、他の化合物、例えば2−メチル−3−ブテンニトリル、2−メチル−2−ブテンニトリル、2−ペンテンニトリル、バレロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はブタジエンのようなものをある量、通常少量含むことができる。
【0042】
助触媒として使用するルイス酸は、特に、エチレン性不飽和を含む脂肪族ニトリル化合物をヒドロシアン化する場合に、得られるジニトリルの直線性、すなわち形成されるジニトリルすべてに対する線状ニトリルのパーセンテージを向上させる、及び/又は触媒の活性及び寿命を増大させることを可能にする。
【0043】
「ルイス酸」用語は、本明細書中、通常の定義に従って、電子対を受容する化合物を意味すると理解される。
【0044】
特に、G.A.Olah編の研究“Friedel−Crafts and Related Reactions”、I巻、191〜197頁(1963年)に挙げられているルイス酸を採用することが可能である。
【0045】
本プロセスにおいて助触媒として使用することができるルイス酸は、周期表のIb、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族からの元素の化合物から選ぶ。これらの化合物は、塩、特にハライド、例えばクロリド又はブロミドのようなもの、スルフェート、スルホネート、ハロスルホネート、ペルハロアルキルスルホネート、特にフルオロアルキルスルホネート又はペルフルオロアルキルスルホネート、カルボキシレート及びホスフェートであるのが普通である。
【0046】
そのようなルイス酸の例として、下記を挙げることができ、下記に限定しない:塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一スズ、臭化第一スズ、硫酸第一スズ、酒石酸第一スズ、インジウムトリフルオロメチルスルホネート、希土類元素、例えばランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム及びルテニウムのクロリドもしくはブロミド、塩化コバルト、塩化第一鉄又は塩化イットリウム。
【0047】
ルイス酸の混合物を使用するのが可能であるのはもちろんである。
【0048】
ルイス酸の中で、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化第一スズ、臭化第一スズ及び塩化亜鉛/塩化第一スズ混合物が極めて特に好ましい。
【0049】
使用するルイス酸助触媒は、遷移金属化合物、一層特にニッケル化合物1モル当たり0.01〜50モルに相当するのが普通であり、1モル当たり1〜10モルに相当するのが好ましい。
【0050】
発明の基本的なプロセスの実施については、ルイス酸の存在においてヒドロシアン化するために使用する触媒溶液は、例えば、適した量の選定した遷移金属化合物、ルイス酸及び随意に還元剤を、(I)式のホスフィンの反応媒体に加えることによって調製した後に、触媒溶液を反応領域に導入することができる。また、これらの種々の構成成分を単に混合することによって触媒溶液を「現場で」調製することも可能である。
【0051】
また、本発明のヒドロシアン化プロセスの条件下でかつ特に(I)式の少なくとも一種のホスフィン及び少なくとも一種の遷移金属化合物を含む上記した触媒の存在においてヒドロシアン化を実施することによって、シアン化水素の不存在において2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化、一層一般的には枝分かれした不飽和ニトリルの線状不飽和ニトリルへの異性化を実施することも可能である。
【0052】
発明に従って異性化を施す2−メチル−3−ブテンニトリルは、単独で又はその他の化合物との混合物として使用することができる。
【0053】
すなわち、2−メチル−3−ブテンニトリルは、2−メチル−2−ブテンニトリル、4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、ブタジエン、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はバレロニトリルとの混合物として使用することができる。
【0054】
ブタジエンをヒドロシアン化することに由来する反応混合物を、上に規定した通りの、(I)式の少なくとも一種のホスフィン及び遷移金属の少なくとも一種の化合物、一層好ましくは0酸化状態のニッケルの化合物の存在においてHCNによって処理することが特に有利である。
【0055】
この好適な代わりの態様の関係では、ブタジエンをヒドロシアン化する反応用の触媒システムがすでに存在するので、シアン化水素の導入を停止して異性化反応を起きさせるのに十分である。
【0056】
この代わりの態様では、適するならば、依然存在するかもしれないシアン化水素酸を駆逐するために、例えば窒素又はアルゴンのような不活性ガスを使用して反応装置のわずかなフラッシングを実施することが可能である。
【0057】
異性化反応は、温度10〜200℃で実施するのが普通であり、温度60〜120℃で実施するのが好ましい。
【0058】
ブタジエンをヒドロシアン化する反応の直ぐ後に異性化する好適な場合では、異性化を、ヒドロシアン化を実施した温度で実施するのが有利になろう。
【0059】
エチレン性不飽和を含む化合物をヒドロシアン化するプロセスに関し、異性化するために使用する触媒システムは、例えば、適した量の選定した遷移金属化合物及び随意に還元剤を、(I)式のホスフィンの反応媒体に加えることによって調製した後に、触媒システムを反応領域に導入することができる。また、これらの種々の構成成分を単に混合することによって触媒システムを「現場で」調製することも可能である。使用する遷移金属化合物、一層特にニッケル化合物の量及び(I)式のホスフィンの量は、ヒドロシアン化反応について同じである。
【0060】
異性化反応は、溶媒を用いないで実施するのが普通であるが、不活性な有機溶媒であって、その後の抽出の溶媒になることができるものを加えるのが有利になり得る。このことは、特に、そのような溶媒を、異性化反応を施す媒体を調製するのに使用していたブタジエンをヒドロシアン化する反応において採用していた時に、そうである。そのような溶媒は、ヒドロシアン化について上述したものから選ぶことができる。
【0061】
しかし、ブタジエンのようなオレフィンをヒドロシアン化することによるジニトリルの調製は、不飽和ニトリルを形成する段階及び上記の異性化の段階について発明に従う触媒システムを使用することによって実施することができ、不飽和ニトリルをジニトリルにヒドロシアン化する反応は、発明に従う触媒システム又はこの反応用にすでに知られている任意のその他の触媒システムを用いて実施することが可能である。
【0062】
同様に、オレフィンを不飽和ニトリルにヒドロシアン化する反応及び不飽和ニトリルの異性化は、発明の触媒システムと異なる触媒システムを使用することによって実施することができ、不飽和ニトリルをジニトリルにヒドロシアン化する段階は、発明に従う触媒システムによって実施することができる。
【0063】
発明を、下記に指標及び例示によって挙げる例にかんがみて一層明らかに例証することにする。
【0064】
これらの例において、使用した略語の意味を下記に挙げる:
【化13】
Figure 0004118676
cod:1,5−シクロオクタジエン
2M3BN:2−メチル−3−ブテンニトリル
2M2BN:2−メチル−2−ブテンニトリル
3PN:3−ペンテンニトリル
4PN:4−ペンテンニトリル
ADN:アジポニトリル
MGN:メチレングルタロニトリル
ESN:エチルスクシノニトリル
DN:ジニトリル=ADN+MGN+ESN
AC:アセトンシアノヒドリン
EtPh:エチルベンゼン
EG:エチレングリコール
DC(V):ヒドロシアン化又は異性化すべき化合物Vの転化度、投入する化合物Vのモル数と反応の終わりに存在するモル数との差対投入するモル数の比に等しい
TY(U):形成される化合物Uの真の収率=形成されるUのモル数/Uの最大モル数、
投入する化合物Vのモル数に対して計算する
YD(U):化合物Uについての選択率=TY(U)/DC(V)
L:直線性=YD(ADN)/[YD(ADN)+YD(MGN)+YD(ESN)]
GC:ガスクロマトグラフィー
mol:モル
mmol:ミリモル
【0065】
例1及び2:2M3BNの3PNへの異性化
【化14】
Figure 0004118676
手順:
Ni(cod)2 20mg(0.073mmol、M=275g/mol、1.0当量)及びPNP又はPNAリガンド5.0当量を攪拌機を装備した反応装置に投入し、アルゴン雰囲気下に置く。脱気した2M3BNおよそ1ml(810mg、d=0.81、M=81.12g/mol)を加える。混合物を密閉システム中で温度100℃において1時間の間攪拌しかつ保つ。反応媒体を冷却して周囲温度(およそ20℃)にする。反応媒体の種々の構成成分の濃度を、GC(ガスクロマトグラフィー)による分析によって求める。
【0066】
これらの分析から得られかつ計算された結果を下記の表Iにまとめる:
【0067】
【表1】
Figure 0004118676
【0068】
例3〜5:3PNのADNへのヒドロシアン化
【化15】
Figure 0004118676
手順:
リガンドL(5当量)、3PN(30当量)、Ni(cod)2(1当量)、ZnCl2(1当量)、脱気した共溶媒及びアセトンシアノヒドリン(30当量)を、アルゴン下に保つSchlenkチューブ中に周囲温度で逐次に導入する。混合物を2時間の間攪拌(600回転/分)しながら65℃にもたらし、次いで周囲温度に戻す。アセトン3mlを導入して残りのHCNを中和する。種々の構成成分の濃度を、種々の転化度及び選択率を計算するために、GC分析によって求める。
【0069】
これらの分析から得られかつ計算された結果を下記の表IIにまとめる:
【0070】
【表2】
Figure 0004118676
【0071】
例6:3PNのADNへのヒドロシアン化
手順:
3PN0.506g(6.25mmol、M=81g/mol)、PNP340mg(0.93mmol、M=366g/mol)、脱気したトルエン1.96g、Ni(cod)2 56.5mg(0.21mmol、M=275g/mol)及びBPh3 50.1mg(0.21mmol、M=242g/mol)を、隔膜を装備した20ml Schottチューブにアルゴン下で投入する。混合物を攪拌しながら65℃にもたらし、アセトンシアノヒドリン531mg(6.24mmol、M=85g/mol)を、シリンジドライバーを使用して流量0.19ml/時で隔膜を経て注入する。3時間の間反応させた後に、混合物を周囲温度に戻し、中和して残りのHCNを除く。種々の構成成分の濃度を、種々の転化度及び選択率を計算するために、GC分析によって求める。
【0072】
これらの分析から得られかつ計算された結果を下記の表IIIにまとめる:
【0073】
【表3】
Figure 0004118676

Claims (17)

  1. 少なくとも1つのエチレン性結合を含む有機化合物を、遷移金属及びオルガノリンリガンドを含む触媒システムの存在においてシアン化水素と反応させることによってヒドロシアン化する方法であって、リガンドが下記の式(II)又は(III)のいずれかに一致するホスフィンであることを特徴とする方法:
    Figure 0004118676
  2. 遷移金属化合物を、ニッケル、パラジウム及び鉄化合物から選ぶことを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 好適な遷移金属化合物が、ニッケルの化合物であり:
    ニッケルがゼロ酸化状態である化合物から選ぶことを特徴とする請求項1〜2の一に記載の方法。
  4. 少なくとも1つのエチレン性二重結合を含む有機化合物を、ジオレフィン、エチレン性不飽和を含む脂肪族ニトリル、モノオレフィン、及びこれらの化合物の内のいくつかの混合物から選ぶことを特徴とする請求項1〜3の一に記載の方法。
  5. 使用するニッケル化合物又は別の遷移金属の化合物の量を、ヒドロシアン化又は異性化すべき有機化合物1モル当たり使用するニッケル又はその他の遷移金属10-4〜1モル存在するように選びかつ使用する式(II)又は(III)のホスフィンの量を、遷移金属1モルに対するこの化合物のモル数が0.5〜500になるように選ぶことを特徴とする請求項1〜4の一に記載の方法。
  6. ヒドロシアン化反応を温度10〜200℃で実施することを特徴とする請求項1〜5の一に記載の方法。
  7. エチレン性不飽和を含むニトリル化合物をシアン化水素と反応させることによってジニトリルにヒドロシアン化する方法であって、反応を遷移金属の少なくとも一種の化合物、式(II)又は(III)の少なくとも一種のホスフィン及び少なくとも一種のルイス酸を含む助触媒を含む触媒システムの存在において実施することを特徴とする請求項1〜6の一に記載の方法。
  8. エチレン性不飽和を含むニトリル化合物を、線状ペンテンニトリルを含むエチレン性不飽和を含む脂肪族ニトリル及びそれらの混合物から選ぶことを特徴とする請求項7の方法。
  9. 線状ペンテンニトリルが、3−ペンテンニトリル、又は4−ペンテンニトリルである請求項8の方法。
  10. 助触媒として使用するルイス酸を周期表のIb、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb及びVIII族からの元素の化合物から選ぶことを特徴とする請求項7〜9の一に記載の方法。
  11. ルイス酸をハライド、スルフェート、スルホネート、ハロアルキルスルホネート、ペルハロアルキルスルホネート、カルボキシレート及びホスフェートの群から選ぶ塩から選ぶことを特徴とする請求項7〜10の一に記載の方法。
  12. ルイス酸を塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化マンガン、臭化マンガン、塩化カドミウム、臭化カドミウム、塩化第一スズ、臭化第一スズ、硫酸第一スズ、酒石酸第一スズ、インジウムトリフルオロメチルスルホネート、希土類元素のクロリド又はブロミド、塩化コバルト、塩化第一鉄、塩化イットリウム及びそれらの混合物から選ぶことを特徴とする請求項7〜11の一に記載の方法。
  13. 使用するルイス酸が遷移金属化合物1モル当たり0.01〜50モルに相当することを特徴とする請求項7〜12の一に記載の方法。
  14. ブタジエンのヒドロシアン化に由来する反応混合物中に存在する2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化を、シアン化水素の不存在において実施し、異性化を、式(II)又は(III)の少なくとも一種のホスフィン及び遷移金属の少なくとも一種の化合物を含む触媒の存在において実施することを特徴とする請求項1〜13の一に記載の方法。
  15. 異性化を施す2−メチル−3−ブテンニトリルを単独で又は2−メチル−2−ブテンニトリル、4−ペンテンニトリル、3−ペンテンニトリル、2−ペンテンニトリル、ブタジエン、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル、2−エチルスクシノニトリル又はバレロニトリルとの混合物として使用することを特徴とする請求項14の方法。
  16. 異性化反応を温度10〜200℃で実施することを特徴とする請求項14及び15のいずれかに記載の方法。
  17. 2−メチル−3−ブテンニトリルのペンテンニトリルへの異性化を、遷移金属の少なくとも一種の化合物、式(II)又は(III)の少なくとも一種のホスフィン及び少なくとも一種のルイス酸を含む助触媒の存在において実施することを特徴とする請求項14〜16の一に記載の方法。
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