JP4118577B2 - 高周波水晶発振器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば光通信用の高周波水晶発振器(以下、高周波発振器とする)を産業上の技術分野とし、特に発振回路(水晶発振器)の基本波f1に対する任意の高調波fnのレベルを高めて、さらに高調波fnを歪ませて任意の二次高調波fmを選択した2.48832GHz用の高周波発振器に関する。
【0002】
【従来の技術】
(発明の背景)高周波発振器はデジタル情報の通信回線網等に適用され、発振周波数が高くて安定度が求められることから、源振を水晶発振器とした逓倍型が採用される。しかし、既存の逓倍型とした高周波発振器ではLC共振回路を多く用いて逓倍するので、その小型化を阻害する。このことから、例えば発振回路の基本波f1に対する高調波fn(但しnは2以上の整数)のレベルを高め、これを表面波フィルタによって選択した高周波発振器がある(参照:特願2001-035576、特願2000−244682号、特願平11-239318号)。
【0003】
(従来技術の一例)第4図は一従来例を説明する高周波発振器の回路図である。高周波発振器は、概ね、電圧制御発振器1、同調回路2、表面波フィルタ3及び増幅器(AMP)4からなる。電圧制御発振器1は、例えば水晶振動子5を誘導性としたコルピッツ型の発振回路(水晶発振器)6からなり、発振閉ループ内の水晶振動子5に電圧可変容量素子7を接続してなる。そして、電圧可変容量素子7に制御電圧Vcを印加することによって、水晶振動子5から見た直列等価容量(所謂負荷容量)を変化させ、発振周波数を制御する。
【0004】
同調回路2は、発振用トランジスタTrのコレクタ側に設けた例えばLC回路からなる。ここでは、コレクタにインダクタL2を挿入し、コレクタの接続点とアース間に分割コンデンサC5、C6を設け、同調周波数(共振周波数)を基本波f1の第4高周波成分f4に設定する。なお、同調回路2は、バイパスコンデンサC7によって高周波的に並列共振回路となる。
【0005】
図中の符号Trは発振用トランジスタ、C1、C2は水晶振動子5と共振回路を形成する発振用コンデンサ、R1、R2はベースバイアス抵抗、R3エミッタ側の負荷抵抗、R5は高周波阻止抵抗、C3は結合コンデンサである。
【0006】
あるいは、第5図に示したように同調回路2を排除し、発振用トランジスタTrのベースバイアス抵抗R1、R2及びエミッタ及びコレクタ側の負荷抵抗R3、R4の抵抗比を設定する。そして、第6図に示したように、発振出力Voの中心電圧Vooを電源電圧Vccの中心電圧Vccoよりも高くし、正弦波となる出力波形の先頭部(上端側)を平坦にして、出力波形を歪ませる。
【0007】
さらには、第7図に示したように、水晶発振器6に広帯域型としたICからなる増幅器8を接続する。そして、水晶発振器6の出力を増幅特性の飽和領域で増幅し(第8図の矢印Pで示す点線で囲む領域)、前述同様に上端側を平坦にして出力波形を歪ませる。
【0008】
これらにより、第9図の概ねの周波数スペクトラムに示したように発振周波数の基本波f1に対する高調波fnの発振レベルを高める。なお、同調回路2を設けた場合は出力波形の上下端が平坦にはならず、全体的に歪み、同調周波数領域の高調波fnが基本波f1に対して概ね同等レベル以上になる。
【0009】
そして、いずれの場合でも、通過フィルタとしての減衰傾度に優れた高周波用の表面波フィルタ3によって、基本波f1に対する例えば4倍となる高調波f4を選択し、これを増幅器4によって増幅して高周波数の発振出力を得る。例えば基本波f1を155MHzとして、第4高調波f4である620MHzを得る。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
(従来技術の問題点)しかしながら、上記構成のいずれの高周波発振器でも、水晶発振器の基本波f1を150MHz帯として2.4GHz帯の高周波を得ようとすると、基本波f1の16倍となる高調波を選択する必要がある。しかし、基本波f1の16倍となると、そのレベルも小さく、いずれの場合でも現実には抽出できない問題があった。なお、水晶発振器の基本波f1を高くすれば可能になるが、水晶振動子(水晶片)を格別な加工をしなければ、現状では150MHz帯が限界である。
【0011】
また、これらのものでは、表面波フィルタ3で選択した高調波fnは増幅器4の直線領域で増幅される。しかし、この場合には、温度や電源変動によって入力レベルが変化すると、そのまま増幅するので出力レベルが変化しやすい問題があった。したがって、例えば出力レベルの上下限が設定された厳しい仕様の場合には、これを満足することが困難であった。
【0012】
(発明の目的)本発明は、第1に高周波数特にGHz帯以上の出力を得る高周波発振器を提供することを目的とする。第2に出力レベルが安定な高周波発振器を提供することを目的とする。
【0013】
【問題を解決するための手段】
本発明は、特許請求の範囲(請求項1)に示したように、発振用増幅器の出力側に同調回路を設けて又は発振用増幅器のバイアス抵抗を制御して又は発振用増幅器の飽和領域を使用して水晶発振器を歪発振器とし、前記水晶発振器の基本波f1に対する高調波fn(但し、nは2以上の整数)のレベルを高めて第1出力とし、前記第1出力をさらに第1増幅器の飽和領域で増幅して前記高調波fnに対する二次高調波fmのレベルを高めて第2出力とし、前記第2出力から任意の二次高調波fmを通過フィルタによって選択し、前記通過フィルタに飽和領域で動作する第2増幅器を接続し、前記第2増幅器に前記第二次高調波の高調波成分を除去するローパスフィルタを接続した構成とする。
【0015】
本発明では、水晶発振器の高調波fnのレベルを高めて、さらに高調波fnを増幅するとともに歪ませるので、高調波fnの二次高調波fmのレベルが高まり、結局、水晶発振器の基本波f1に対してm×n倍となる高次の高調波を出力として得られる。
【0016】
また、通過フィルタからの高調波fmを増幅器の飽和領域で増幅する。したがって、温度や電源変動によって入力レベルが変化しても、出力レベルの変化を抑制する。以下、本発明の一実施例を説明する。
【0017】
【第1実施例】
第1図は本発明の第1実施例を説明する高周波発振器の回路図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。
高周波発振器は、歪み水晶発振器6Aからなる電圧制御発振器1と、第1増幅器9と、表面波フィルタ3と、第2増幅器10と、ローパスフィルタ11とからなる。
【0018】
歪み水晶発振器6Aは、前述したように出力側に同調回路を設け、あるいはバイアス回路(即ちバイアス抵抗R1、R2及び負荷抵抗R3、R4)を設定し、さらには飽和領域で動作させる増幅器9を接続してなる(前第4、5、7図参照)。そして、水晶発振器6の基本波f1に対する高調波fnのレベルを高くして、これを第1出力とする。ここでは、高調波fnのうち、第4高調波f4が次段となる第1増幅器9の入力レベル以上に高くする。
【0019】
第1増幅器9は広帯域型として歪み水晶発振器6Aに接続する。そして、高調波fnのレベルが高い歪み水晶発振器6Aからの第1出力を、ここでも増幅特性の飽和領域にて増幅する。これにより、高調波fnの二次高調波fn・mのレベルを高くした第2出力を得る。
【0020】
表面波フィルタ3は第1増幅器9に接続する。そして、高調波fnの二次高調波fn・mのうち、ここでは第4二次高調波fn・4を選択して通過させる。第2増幅器10は表面波フィルタ3に接続し、ここでも同様に増幅特性の飽和領域で動作する。そして、表面波フィルタ3によるレベル低下(減衰分)を含めて基準のレベルにまで増幅する。
【0021】
ローパスフィルタ11は第2増幅器10に接続し、例えばコンデンサとインダクタのπ型からなる(未図示)。そして、第2増幅器10の飽和領域で歪み増幅された第4高調波f4の第4二次高調波f4・4から、歪みの元となる高調波を除去して正弦波とする。
【0022】
このような構成であれば、歪み水晶発振器6Aからの第1出力を第1増幅器9の飽和領域でさらに歪ませる。したがって、基本波f1に対する第4高調波f4の第4二次高調波f4・4即ち基本波f1に対して第16高調波f16のレベルを高められる。これにより、基本波f1に対する第16高調波f16を表面波フィルタ3によって抽出でき、水晶発振器6の発振周波数(基本波f1)を150MHzとして、2.4GHz帯の高周波を得られる。
【0023】
また、第1増幅器9及び第2増幅器10は飽和領域での動作とする。したがって、入力レベルの変動があっても出力レベルを一定にし、温度や電源変動による出力レベルの変化を抑止する。そして、表面波フィルタ3に接続した第2増幅器10には、ローパスフィルタ11を接続して高調波成分を除去するので、出力波形を正弦波に維持できる。
【0024】
【他の事項】
なお、上記実施例では基本的な一構成例を示したが、例えば第1増幅器9は飽和領域での動作として出力を歪ませたが、例えば第1増幅器9のバイアス抵抗を小さく設定して出力波形の下端側を平坦にして歪ませる(第2図)。これにより、二次高調波fmのレベルを高めてもよい。さらには、飽和領域での動作とともにバイアス回路を設定して上下端を平坦にして歪ませ、二次高調波fmのレベルをさらに高めてもよい。なお、第1増幅器が市販の場合、外付けの外部抵抗(未図示)で設定する。
【0025】
また、歪み水晶発振器6Aには歪み増幅する第1増幅器9を直接接続したが、歪み水晶発振器6Aの第4高調波f4のレベルが第1増幅器9の入力レベルに達しない場合には両者間にレベルアップの増幅器(未図示)を挿入してもよい。この場合でも、飽和領域で動作させて出力レベルの変化を抑止する。
【0026】
また、歪み水晶発振器6Aは同調回路2、バイアス回路、飽和領域で動作する増幅器8によって形成したが、例えば第3図に示したようにしてもよい。すなわち、バイアス抵抗R1、R2及び負荷抵抗R3、R4のバイアス回路にて出力を歪ませるとともに、負荷抵抗R3との間に前述の同調回路2を設ける。そして、負荷抵抗R3とインダクタL2の接続点とアースとの間にバイパスコンデンサC8を接続する。
【0027】
これにより、出力波形の上端を歪ませた上で同調回路2を設けたので、基本波f1に対する高調波fnのレベルをさらに高くする。なお、インダクタL2は高調波での同調回路2を形成するので抵抗成分が小さく負荷抵抗として機能しないことによる。
【0028】
また、第1増幅器9が市販品である場合、出力インピーダンスは外付けのインダクタ等によって、第16高調波f16の周波数で次段と整合する値例えば50Ωに設定する。これにより、第16高調波f16のレベル低下を防止する。但し、第1増幅器9自体の出力インピーダンスが第16高調波f16の周波数で整合されていればその必要はない。
【0029】
また、歪み水晶発振器6Aは電圧制御型として説明したが、単なる水晶発振器でもよいことは勿論である。また、表面波フィルタ3の減衰分を補い基準レベルにすべく第2増幅器10を設けたが、第1増幅器9の歪み出力が充分に大きければなくてもよい。この場合、表面波フィルタ3によって第4二次高調波f4・4に含まれる高調波はカットされているので、ローパスフィルタ11は不要となる。また、第1及び第2増幅器9、10は飽和領域で動作させたが、レベル変動が無視できる場合は直線領域で動作させてもよい。
【0030】
また、第1増幅器9によって高調波f4を増幅して歪みを持たせたが、例えば歪み水晶発振器6Aの出力レベルが大きければ第1増幅器9に代えてスライサ等のように歪みのみを加える歪み回路でよい。また、歪み水晶発振器6Aの出力から第4高調波f4を、第1増幅器9からは第4二次高調波f4・4を選択して基本波f1に対する第16高調波f16を抽出したが、例えば前者は第8高調波f8を後者は第2二次高調波f8・2を選択してもよい。
【0031】
また、出力周波数として2.4GHz帯を得たが、これに限らずMHz帯も含めて適宜に選択できる。そして、水晶振発振器の基本周波数f1が例えば水晶振動子の加工等によって高くなれば、2.4GHz帯以上の高周波発振器を得ることができる。
【0032】
また、第4高調波f4の第4二次高調波f4・4を表面波フィルタ3によって選択したが、基本的には通過型とした高周波フィルタであればよい。但し、現時点では減衰特性等から表面波フィルタが最適である。また、基本的には歪み増幅回数を増やすことによって増幅器の達成する周波数領域までの発振を可能にする。
【0033】
また、第1及び第2増幅器9、10を飽和領域等で動作させて出力レベルの変化を抑止してローパスフィルタ11によって歪みを解消したが、これは歪み水晶発振器6Aのみならず従来例の場合にも適用できる。この場合も、正弦波の歪みが問題でなければローパスフィルタ11は不要とする。
【0034】
【発明の効果】
本発明は、発振用増幅器の出力側に同調回路を設けて又は発振用増幅器のバイアス抵抗を制御して又は発振用増幅器の飽和領域を使用して水晶発振器を歪発振器とし、前記水晶発振器の基本波f1に対する高調波fn(但し、nは2以上の整数)のレベルを高めて第1出力とし、前記第1出力をさらに第1増幅器の飽和領域で増幅して前記高調波fnに対する二次高調波fmのレベルを高めて第2出力とし、前記第2出力から任意の二次高調波fmを通過フィルタによって選択し、前記通過フィルタに飽和領域で動作する第2増幅器を接続し、前記第2増幅器に前記第二次高調波の高調波成分を除去するローパスフィルタを接続した構成とするので、高調波数特にGHz帯以上の出力を得る高調波発振器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例を説明する高周波発振器の回路図である。
【図2】本発明の第1実施例を説明する第2増幅器の歪み波形図である。
【図3】本発明の他の実施例を説明する高周波発振器の一部回路図である。
【図4】従来例を説明する高周波発振器の回路図である。
【図5】従来例を説明する高周波発振器の回路図である。
【図6】従来例を説明する水晶発振器の歪み出力波形図である。
【図7】従来例を説明する高周波発振器の回路図である。
【図8】従来例を説明する増幅器の増幅特性図である。
【図9】従来例を説明する出力波形のスペクトラム特性図である。
【符号の説明】
1 電圧制御発振器、2 同調回路、3 表面波フィルタ、4、8、9、10増幅器、5 水晶振動子、6 水晶発振器 7 電圧可変容量素子、11 ローパスフィルタ.

Claims (6)

  1. 発振用増幅器の出力側に同調回路を設けて又は発振用増幅器のバイアス抵抗を制御して又は発振用増幅器の飽和領域を使用して水晶発振器を歪発振器とし、前記水晶発振器の基本波f1に対する高調波fn(但し、nは2以上の整数)のレベルを高めて第1出力とし、前記第1出力をさらに第1増幅器の飽和領域で増幅して前記高調波fnに対する二次高調波fmのレベルを高めて第2出力とし、前記第2出力から任意の二次高調波fmを通過フィルタによって選択し、前記通過フィルタに飽和領域で動作する第2増幅器を接続し、前記第2増幅器に前記第二次高調波の高調波成分を除去するローパスフィルタを接続したことを特徴とする高周波水晶発振器。
  2. 前記任意の高調波fnのレベルは、前記水晶発振器の出力側に設けた同調回路によって高めた請求項1の高周波水晶発振器。
  3. 前記任意の高調波fnのレベルは、前記水晶発振器のバイアス回路によって高めた請求項1の高周波水晶発振器。
  4. 前記任意の高調波fnのレベルは、前記水晶発振器に接続した増幅器の飽和領域で増幅することによって高めた請求項1の高周波水晶発振器。
  5. 前記通過フィルタは表面波フィルタである請求項1の高周波水晶発振器。
  6. 前記通過フィルタに飽和領域で動作する増幅器を接続し、前記増幅器にローパスフィルタを接続してなる請求項1の高周波水晶発振器。
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