JP4117599B2 - 骨固定材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は骨固定材に関するもので、特に骨粗鬆症により骨の量が減少し又は骨格組織が萎縮して骨梁が粗く細くなった部位の骨の切開、骨切り、あるいは骨折した部位を手術により閉鎖、接合するときに埋め込まれる生体内活性吸収性の骨固定材に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨の切開閉鎖術の代表例である胸骨正中切介閉鎖の手術は、真ん中で切開した胸骨をスチールワイヤーやマーシリングテープ等で縫合、閉鎖する手術である。この手術においては、閉鎖した胸骨の固定安定性を高めるために、生体内分解吸収性の固定ピンを切開した胸骨中に切開部を橋渡しにして埋め込むことがある。
【0003】
また、胸骨以外の骨切り部位や骨折部位の接合等には、セラミックスの多孔体、例えばハイドロキシアパタイト(HA)等の多孔体と、生体内分解吸収性のピン又はネジとを組み合わせて使用する場合もある。
【0004】
上記の固定ピンは胸骨内で徐々に分解して吸収されるため、非吸収性のセラミックスや金属製のピンのように再手術をして体外に取出す必要がないという利点を有するが、以下のような解決すべき課題があった。また、上記のセラミックス多孔体とピン等を組み合わせたものも、以下のような解決すべき課題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
即ち、上記の吸収性ポリマーのみからなる胸骨用固定ピンは骨伝導性がなく、骨組織と直接結合しないものであるため、切開した胸骨に埋め込んで閉鎖すると、単なる「楔」としての作用を発揮して、閉鎖した胸骨を仮固定するに過ぎない。そのため、老人の胸骨によく見られるように、海綿骨が薄い皮質骨のみを残してウエハス状になって脆くなっている場合には、胸骨用固定ピンを埋め込んでも、「楔」としての作用が充分に発揮されず、固定安定性を高めることが難しいという問題があった。このような問題は胸骨のみならず、粗鬆化した骨に対して一般に言えることである。
【0006】
また、上記のHA等のセラミックス多孔体とピン等を組み合わせたものは、セラミックス多孔体が割れやすく、しかも、生体内で吸収されるのに極めて長期間を要するという問題がある。
【0007】
本発明は斯かる問題に対処すべくなされたもので、切開骨等に埋め込まれた初期には「楔」として骨を固定し、その後周囲に骨組織を伝導形成して骨と直接結合することができ、また、必要に応じて骨誘導能をもつ成長因子等を担持させることにより自らの分解と併行して早期に骨を形成させ、最終的には生体内に吸収されて完全に消失して骨と置き換わることのできる骨固定材を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る骨固定材は、骨の切開、骨切り、あるいは骨折した部位を閉鎖、接合するときに骨内に埋め込まれる骨固定材であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる多孔質体と、該多孔質体を貫通し両端部が該多孔質体から突出した生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる緻密質のピンとを具備したものであり、好ましくは、多孔質体から突出したピンの両端部に抜け止め用の凹凸が形成され、成長因子等が多孔質体中に含有される。
そして、本発明の請求項2に係る胸骨用の骨固定材は、胸骨正中切開閉鎖のときに胸骨内に埋め込まれる骨固定材であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる多孔質体と、該多孔質体を貫通し両端部が該多孔質体から突出した生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる緻密質のピンとを具備したものである。
【0009】
先述の胸骨正中切介閉鎖の手術において、切開した胸骨(半胸骨)をスチールワイヤーやマーシリングテープで縫合、閉鎖する際に、双方の半胸骨の骨髄(海綿骨)に形成した孔に本発明の骨固定材を半分ずつ突き刺して埋め込むと、埋入初期には骨固定材のピンが「楔」として双方の半胸骨を固定して補強作用を発揮するため、閉鎖された胸骨の固定安定性が向上する。このように埋め込まれた骨固定材は、体液との接触によってピンも多孔質体も加水分解が進行するが、ピンの中央部を覆う多孔質体は内部まで体液が浸入するため加水分解が速く、しかも該多孔質体は生体活性を有するため内部まで骨組織が伝導形成されて比較的短期間のうちに骨細胞が浸入し、いずれは骨組織と完全に置換して消失する。特に、多孔質体に成長因子が含浸されている場合は骨組織の侵入と成長が速く、かなり短期間で骨組織が多孔質体と置換する。従って、閉鎖した胸骨(半胸骨)は、多孔質体と置換した骨組織によって直接結合されるため、粗鬆症の胸骨の海綿骨が極端に空洞化し多孔質化してウエハス状になって脆くなったところに新生骨が形成されて固定が安定化される。一方、ピンもまた徐々に加水分解が進行し、多孔質体が骨組織と置換される頃には加水分解がかなり進んでやがては細片となり、最終的には全部が体内に吸収されて消失する。尚、このピンは、生体内分解吸収性のポリマーのみからなるものでもよいが、それと生体活性なバイオセラミックス粉体との複合体からなるものがより好ましく、その場合はピンも骨伝導性があるので、加水分解とバイオセラミックス粉粒に係る骨芽細胞と破骨細胞の置換の繰り返し(remodeling)によって骨が伝導形成され、分解細片の貧食反応が併行して骨と置き換わる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0013】
図1は本発明の一実施形態に係る胸骨用の骨固定材の斜視図、図2(a)は同骨固定材の縦断面図、図2(b)は同骨固定材の横断面図、図3(a)(b)(c)は同骨固定材の使用方法の説明図、図4は同骨固定材を埋め込んだ胸骨の断面図である。
【0014】
この骨固定材10は、胸骨正中切介閉鎖の手術において正中切介した胸骨中に埋め込まれるものであって、図1に示すように、生体活性を有する生体内吸収性の多孔質体2と、該多孔質体2を貫通し両端部が該多孔質体2から突出した生体内分解吸収性のピン1よりなる。
【0015】
この骨固定材10は、胸骨中に埋め込まれたとき回転しないように、ピン1が角柱状に形成されると共に、多孔質体2が直方体に形成されている。そして、ピン1の両先端は、胸骨の骨髄(海綿骨)に形成された孔への挿入が容易となるように角錐状に形成されており、また、ピン1の両端部の表面には、上記の孔からピン1が抜け出すのを阻止する断面が鋸歯状の凹凸1aが形成されている。尚、ピン1を円柱状に形成すると共に、多孔質体2を円筒状に形成してもよく、またピン両端部の凹凸1aを省略してもよい。
【0016】
上記のピン1は、安全性が確認されている結晶性のポリ乳酸やポリグリコール酸などの生体内分解吸収性ポリマーからなるもので、特に、粘度平均分子量が15万以上、好ましくは20万〜60万程度の生体内分解吸収性ポリマーからなる高強度のピン1が好適に使用される。また、これらの生体内分解吸収性ポリマーに後述する生体活性なバイオセラミックス粉体を10〜60重量%程度混合した複合体からなるピンや、圧縮成形、鍛造成形、延伸等の方法により上記ポリマーの分子や結晶を配向させて強度を更に向上させたピンなども好適に使用される。
【0017】
この胸骨用の骨固定材の場合、ピン1の長さL1 は20〜40mm程度であることが好ましく、20mm未満では胸骨固定用のピンとして短かすぎ、一方、40mmよりも長くなると胸骨の骨髄(海綿骨)中に納まり難くなるといった不都合が生じる。また、ピン1の幅W1 は2〜4mm程度であることが好ましく、高さH1 は2〜3mm程度であることが好ましい。ピン1の幅が2mmよりも狭く高さが2mmよりも小さい場合は、細くなりすぎてピン1が折れる心配があり、一方、ピン1の幅が4mmよりも広く高さが2mmよりも大きい場合は、多孔質体2との組み合わせで胸骨の厚みを上回るので不可である。尚、上記のピンの寸法は、あくまでも胸骨用の骨固定材の場合の好ましい寸法であり、埋入する骨に応じてピンの好ましい寸法が変化することは言うまでもない。
【0018】
上記のピン1が貫通する多孔質体2は、内部に連続気孔を有し且つ生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなるものであって、バイオセラミックス粉体が多孔質体2の表面や内部の連続気孔の内面に一部露出している。
【0019】
このような多孔質体2は、例えば次の方法によって造られる。まず、揮発性溶媒に生体内分解吸収性ポリマーを溶解すると共にバイオセラミックス粉体を混合して懸濁液を調製し、この懸濁液をスプレー器等に填装して窒素ガス等の不活性な高圧ガスで繊維化しながらスプレーすることにより、不織布状の繊維集合体を形成する。次いで、この不織布状の繊維集合体を更に加熱下に直方体形状に加圧成形して多孔質の繊維集合成形体となし、これを揮発性溶剤に浸漬することによって、繊維を収縮、融合させて実質的に繊維状の形態を消失させ、繊維間空隙が丸みを有するセル構造をもった連続気孔体に形態変化させると、上記の多孔質体2が得られる。そして、この多孔質体2には、前述のピン1を挿通するための角孔(ピン1より僅かに小さい寸法の角孔)が穿孔される。
【0020】
多孔質体2の寸法は症例に見合って選べばよく、大きさに特に限定はないが、過大(多)にならないように注意を要する。例えば胸骨用の骨固定材の場合は、多孔質体2の長さL2 を10〜15mm程度、幅W2 を6〜20mm程度、高さH2 を6〜15mm程度に設定することが好ましい。この範囲内の選定は、患者の胸骨の構造に依存することは言うまでもない。多孔質体2の各寸法が上記範囲の下限を下回ると、多孔質体2に伝導形成される骨組織が少なくなる。尚、この多孔質体2の好ましい寸法も、埋入する骨に応じて変化することは言うまでもない。
【0021】
多孔質体2の材料となる生体内分解吸収性ポリマーとしては、安全で、分解が比較的速く、あまり脆くない、非晶質あるいは結晶と非晶の混在したポリ−D,L−乳酸、L−乳酸とD,L−乳酸の共重合体、乳酸とグリコール酸の共重合体、乳酸とカプロラクトンの共重合体、乳酸とエチレングリコールの共重合体、乳酸とパラ−ジオキサノンの共重合体のいずれか単独、又は、これらの混合体が使用される。その粘度平均分子量は、繊維化による不織布状繊維集合体の形成し易さや、生体内での分解吸収の期間などを考慮すると、5万〜100万程度のポリマーが好ましく使用される。
【0022】
また、バイオセラミックス粉体としては、生体活性があり、良好な骨伝導能と良好な生体親和性を有する、未仮焼、未焼成のハイドロキシアパタイト、ジカルシウムホスフェート、トリカルシウムホスフェート、テトラカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート、カルサイト、セラバイタル、ジオプサイト、天然珊瑚等の粉体が使用される。そして、これらの粉体表面にアルカリ性の無機化合物や塩基性の有機物を付着させたものも使用可能である。これらのなかでも、生体内で全吸収され骨組織と完全に置換される生体内全吸収性のバイオセラミックス粉体が好ましく、特に、未仮焼、未焼成のハイドロキシアパタイト、トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェートは、活性が極めて大きく、骨伝導能に優れ、為害性が低く、短期間で生体に吸収されるので最適である。これらのバイオセラミックス粉体は10μm以下の粒径を有するものが使用され、特に0.2〜5μm程度の粒径を有するものは、スプレーにより繊維化しつつ不織布状繊維集合体を形成する際に繊維を短く切断することがないので好適である。
【0023】
多孔質体2におけるバイオセラミックス粉体の含有量は、50〜90重量%とすることが好ましい。90重量%を越えると、前述のスプレー法で繊維化しつつ不織布状繊維集合体を形成する際に繊維が短く切れるという不都合を生じ、一方、50重量%(約30容積%)を下回ると、骨中での骨組織の伝導形成が遅くなって多孔質体2が骨組織と置換するのに時間がかかるようになる。バイオセラミックスの更に好ましい含有量は60〜80重量%である。
【0024】
上記の多孔質体2は、その物理的な強度、骨芽細胞の侵入及び安定化などを考慮すると、その気孔率が50〜90%(好ましくは60〜80%)で、連続気孔が気孔全体の50〜100%(好ましくは70〜100%)を占め、連続気孔の孔径が略100〜略400μm(好ましくは150〜350μm)であることが望ましい。気孔率が90%を上回り、孔径が400μmよりも大きくなると、多孔質体2の物理的な強度が低下して脆くなる。一方、気孔率が50%を下回ると共に、連続気孔が気孔全体の50%を下回り、孔径が100μmよりも小さくなると、体液や骨芽細胞の浸入が低下し、多孔質体2の加水分解や骨組織の成長が遅くなって、多孔質体2が骨細胞と置換するのに要する時間が長くなる。
【0025】
この多孔質体2には、各種の成長因子及び/又は薬剤を適量含有させることが好ましい。主な成長因子としては、IL−1,TNF−α,TNF−β,IFN−γ等のモノカインやリンフォカイン、或は、コロニー刺激因子、或は、TGF−α,TGF−β,IGF−1,PDGF,FGF等のいわゆる生長分化因子が挙げられる。また、薬剤としては、骨の成長に係る薬物(ビタミンD,プロスタグランジン類、あるいは抗(制)癌剤など)、抗菌剤等が任意に選択できる。上記のような生長因子を多孔質体2に含有させると、多孔質体2の内部で骨形成が著しく促進され、早期に多孔質体2が骨組織と置換されて、双方の半胸骨が直接結合されるようになる。そして、上記のような薬剤を含浸させると、薬剤が双方の半胸骨に直接吸収されて充分な薬効が発揮される。
【0026】
また、この多孔質体2の表面にはコロナ放電、プラズマ処理、過酸化水素処理などの酸化処理を施すことが一方法であり、かかる処理を施すと表面に露出したバイオセラミックス粉体の濡れ特性が改善され、骨芽細胞が一層効果的に浸入、成長する利点がある。
【0027】
次に、図3を参照して上記の胸骨用の骨固定材10の使用例を説明する。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、正中切介した左右の半胸骨B,Bに2本のスチールワイヤー3,3を突き錐を使用して挿通すると共に、マーシリングテープ4を半胸骨B,Bに肋間を通して巻きかける。このマーシリングテープ4は図3(a)では1本だけ巻きかけているが、上下に間隔をあけて複数本(通常は4本)巻きかけるようにする。そして、双方の半胸骨B,Bの不要な海綿骨をコッフェル等で掻き出し、骨固定材10の片側半分を挿入できる複数の孔5(骨固定材10より若干小さい寸法の孔)を形成する。
【0029】
次いで、図3(b)に示すように、片方の半胸骨Bの各孔5に骨固定材10の片側半分を強く押し込んで抜けないように挿入する。そして、図3(c)に示すようにスチールワイヤー3,3を引き寄せ、それぞれの骨固定材10の半体側半分を他方の半胸骨Bの各孔5に押し込みながら双方の半胸骨B,Bを閉鎖し、ワイヤー3,3の端部を数回の結節を加えてしっかりと結紮すると共に、各マーシリングテープ4を数回の結節を加えてしっかりと結紮する。なお、この実施形態では半胸骨B,Bを固定するのにスチールワイヤー3及びマーシリングテープ4を使用しているが、前記ポリ乳酸のような生体内分解吸収性ポリマー又はこのポリマーにバイオセラミックス粉体を含有させて成形したバンドを使用することもできる。
【0030】
上記のように胸骨用の骨固定材10を切開、閉鎖された胸骨の骨髄に埋め込むと、埋入初期には図4に示すように骨固定材10のピン1が「楔」として双方の半胸骨B,Bの骨髄(海綿骨)b,bに突き刺さり、双方の半胸骨B,Bを固定するため、双方の半胸骨の固定安定性が向上する。また、この骨固定材10の多孔質体2の表面に露出するバイオセラミックス粉体の骨伝導能によって骨組織が多孔質体2の表面に伝導形成され、短期間のうちに多孔質体2と双方の半胸骨B,Bの骨髄b,bとが結合するため、この結合によっても双方の半胸骨B,Bの固定安定性や強度が向上する。
【0031】
この骨固定材10は、骨髄中の体液との接触によってピン1も多孔質体2も加水分解が進行するが、多孔質体2は連続気孔を通じて体液が内部まで浸入するため加水分解が速く、しかも、この多孔質体2は気孔内面に露出するバイオセラミックス粉体の骨伝導能によって骨組織が内部まで伝導形成され、比較的短期間のうちに骨組織と置換して消失する。特に、多孔質体2に前述の成長因子が含浸されている場合は骨組織の成長が速く、短期間で骨組織が多孔質体2と置換する。従って、閉鎖された胸骨(半胸骨B,B)は、多孔質体2と置換した骨組織によって直接結合されるため、粗鬆症の胸骨の海綿骨が極端に空洞化し多孔質化してウエハス状になって脆くなっていても、形成された新生骨によって胸骨の固定が安定化される。
【0032】
一方、骨固定材10のピン1は、体液との接触によって徐々に加水分解が進行し、多孔質体2が骨組織と置換される頃には加水分解がかなり進んでやがては細片となり、最終的には全部が体内に吸収されて消失する。その場合、ピン1が既述した生体内分解吸収性ポリマーとバイオセラミックス粉体との複合体からなるものであると、ピン1にも骨伝導性があるため、ピン1が骨組織と置き換わり、ピン1の突き刺さっていた孔が最終的に新生骨で埋まって消失する。
【0033】
図5は本発明の他の実施形態に係る骨固定材の分解断面図、図6は同骨固定材の一使用例を示す断面図である。
【0034】
この骨固定材20は、生体活性を有する生体内吸収性の多孔質体2と生体内分解吸収性のネジ6とからなるものであって、多孔質体2にはネジ挿通孔2a(ネジ6のネジ山の径より少し大きい孔径を有するネジ挿通孔)が形成されている。
【0035】
このネジ6は、前述したピン1と同様の生体内分解吸収性ポリマーや、該ポリマーとバイオセラミックスとの複合体からなるもので、該ポリマーの分子や結晶を配向させたものも好ましく使用される。このネジ6の太さや長さは、使用する骨に対応して広範囲で種々設定可能であり、例えば太さは1.5〜7.0mm、長さは10〜700mmの範囲で設定される。尚、このネジ6は、少なくとも多孔質体2のネジ挿通孔2aの長さより長いものが必要であることは言うまでもない。また、多孔質体2は前述した多孔質体2と同じもので、好ましくは前述の生長因子や薬剤が含有されるが、この多孔質体2の寸法は使用する骨に対応して種々設定される。
【0036】
このような骨固定材20は、例えば図6に示すように、多孔質体2を骨接合箇所の骨欠損部に埋め込み、接合すべき一方の骨bの皮質骨からネジ6を多孔質体2のネジ挿通孔2aを通して他方の骨bの皮質骨にねじ込んで使用される。このようにネジ6を骨接合箇所にねじ込むと、双方の骨b,bはネジによって強個に固定される。そして、骨接合箇所に埋め込まれた多孔質体2は、加水分解と併行して骨組織が内部に伝導形成され、やがては完全に置換されて新生骨が形成されるので、骨接合箇所の固定安定性や強度が向上する。また、ネジ6も前述のピン1と同様に加水分解されて体内に吸収され、前述の複合体からなるネジの場合は最終的に骨と置き換わる。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、多孔質体とピンとからなる本発明の骨固定材は、切開した胸骨等に埋め込まれた初期には、ピンが「楔」として作用して胸骨等を固定することができ、その後、多孔質体の加水分解と併行して伝導形成された骨組織によって胸骨等と直接結合するため、粗鬆症により胸骨等の海綿骨が極端に空洞化し多孔質化してウエハス状になって脆くなっていても、多孔質体と置換された新生骨によって固定安定性や強度を高めることができ、最終的にはピンも生体内に吸収されて完全に消失するといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る胸骨用の骨固定材の斜視図である。
【図2】 (a)は同骨固定材の縦断面図、(b)は同骨固定材の横断面図である。
【図3】 (a)(b)(c)は同骨固定材の一使用例の説明図である。
【図4】同骨固定材を埋め込んだ胸骨の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る骨固定材の分解断面図である。
【図6】同骨固定材の一使用例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 ピン
2 多孔質体
6 ネジ
10 胸骨用の骨固定材
20 骨固定材
B 半胸骨(正中切介された胸骨)
b 骨接合箇所の骨
Claims (8)
- 骨の切開、骨切り、あるいは骨折した部位を閉鎖、接合するときに骨内に埋め込まれる骨固定材であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる多孔質体と、該多孔質体を貫通し両端部が該多孔質体から突出した生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる緻密質のピンとを具備した骨固定材。
- 胸骨正中切開閉鎖のときに胸骨内に埋め込まれる骨固定材であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる多孔質体と、該多孔質体を貫通し両端部が該多孔質体から突出した生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなる緻密質のピンとを具備した胸骨用の骨固定材。
- 多孔質体から突出した生体内分解吸収性のピンの両端部に抜け止め用の凹凸が形成されている請求項1又は請求項2に記載の骨固定材。
- 多孔質体に成長因子及び/又は薬剤が含有されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の骨固定材。
- 多孔質体が、内部に連続気孔を有し且つ生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーからなるものであり、バイオセラミックス粉体の含有率が50〜90重量%である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の骨固定材。
- 多孔質体の気孔率が50〜90%であって、連続気孔が気孔全体の50〜100%を占め、連続気孔の孔径が100〜400μmである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の骨固定材。
- 多孔質体の生体内分解吸収性ポリマーがポリ−D,L−乳酸、L−乳酸とD,L−乳酸の共重合体、乳酸とグリコール酸の共重合体、乳酸とカプロラクトンの共重合体、乳酸とエチレングリコールの共重合体、乳酸とパラ−ジオキサノンの共重合体、のいずれかである請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の骨固定材。
- ピンが、生体内分解吸収性のポリ乳酸、ポリグリコール酸、あるいはポリ乳酸と生体活性なバイオセラミックス粉体との複合体、のいずれかよりなるものである請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の骨固定材。
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