JP4988996B2 - インプラントと生体組織との間の結合用詰め物 - Google Patents

インプラントと生体組織との間の結合用詰め物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インプラントと生体組織との間に介装される、生体活性かつ生体内分解吸収性の結合用詰め物に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体硬組織用の金属製のインプラント(人工股関節、膝関節、肩関節、各種プレート、シートなど)を骨や軟骨に固定する方法には、ボーンセメントによる固定法と、金属スクリューやピンや他のインスツルメントによる固定法がある。
【0003】
前者のボーンセメントによる固定法は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とハイドロキシアパタイト(HA)粉のコンパウンドからなるボーンセメントを、金属製のインプラントと生体硬組織との間に介装して両者を結合固定する方法であり、例えば、人工股関節の金属製ステムや金属製アウターカップをそれぞれ大腿骨の髄腔や骨盤の臼蓋骨に固定する場合などに採用されている。けれども、上記のボーンセメントは非吸収性であるがために、再手術の際に骨中から剥がし取るやっかいな作業が必要であり、また、メチルメタクリレートモノマー重合時の発熱による周囲細胞の壊死や、血流障害から起こる低血圧による死亡を誘発することが近年大きな問題となっている。
【0004】
一方、後者の金属スクリュー等による固定法は、金属製のインプラントを生体硬組織に対して物理的に固定する方法であり、例えば、金属製の骨接合プレート等を骨折部に固定する場合や、人工股関節のアウターカップを骨盤の臼蓋骨に直接固定する場合や、人工膝関節の大腿コンポーネントや脛骨コンポーネントを大腿骨や脛骨に直接固定する場合などに採用されている。
【0005】
しかしながら、上記の固定法では、生体不活性な金属製のインプラントと生体硬組織とを両者の界面で直接結合させることが困難である。そこで、近年、両者を直接結合させるために、金属製インプラントの表面に生体活性をもたせる方法として、例えば、▲1▼インプラントの金属表面に生体活性なセラミックス粉体(HA等)を溶射する方法、▲2▼インプラントのチタン表面にアルカリ処理を施す方法、▲3▼インプラントの金属表面に形状上の細かい凹凸をもたせる方法、▲4▼インプラントの金属表面又は本体を多孔質とする方法などが考案されている。
【0006】
ところが、これらの方法で金属製インプラントの表面に生理的、物理的な生体活性をもたせたとしても、金属製インプラントが生体硬組織と充分に密着する機会をもたなければ、両者の結合は不完全となる。しかし、金属製インプラントと生体硬組織間の完全な密着は、インプラントの形状に沿うように生体硬組織を如何に丁寧にリーミングしても得られるものではない。
【0007】
フィブリン糊やシアノアクリレートなどの生体用の接着剤は、液状やペースト状物質として取り扱えるので、インプラントと生体硬組織との隙間を埋めるのには好都合なものであるが、それ自体の生体への抗原抗体反応や毒性が危惧され、生体硬組織に置換されて組織が再生されることがなく、また、リーミングにより整復された生体硬組織の表面に満遍なく塗りこむ作業が術中の操作としては煩雑である。
【0008】
インプラントと生体硬組織との間に介装される詰め物は、理想的には、▲1▼詰め物の両面が圧縮力によってインプラントと生体硬組織の表面(凹凸)形状の通りに変形し、インプラントと生体硬組織の表面に充分に密着して、両者の隙間を完全に埋めつくすことができること、▲2▼生体内で適度な速度で分解、吸収されると共に、周囲の生体硬組織が詰め物内部に侵入(伝導又は誘導)して遂には生体硬組織で置換されること等が要求される。しかしながら、これらの要求を満たす詰め物は、未だ開発されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたもので、上記の要求を充分満たすことができるインプラントと生体組織との間の結合用詰め物を提供することを解決すべき課題としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の結合用詰め物は、インプラントと生体組織との間に介装される結合用詰め物であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーの繊維が互いに絡み合って溶着した不織布からなるものであり、後述するように、バイオセラミックス粉体を混合したポリマー溶液を噴射ガスで被噴射体に繊維化しつつスプレーする方法により製造されるものである。
【0011】
インプラントとしては、前述の金属製インプラントの他に、セラミックス製や生体内分解吸収性インプラントやバイオセラミックスを含有した生体内分解吸収性インプラント等が使用される。これらのインプラントを固定する生体組織には硬組織と軟組織があり、硬組織としては例えば臼蓋骨や大腿骨や脛骨などの硬骨が挙げられ、軟組織としては例えば半月板や椎間板や関節軟骨などの軟骨が挙げられる。
【0012】
本発明の不織布よりなる結合用詰め物は、連続する繊維間空隙が不織布全体積の20〜90容量%を占める比較的空隙率の大きい詰め物であり、密度が0.1〜0.8g/cm3 、硬度(アスカーC硬度)が15度〜70度の範囲にあるものである。このような物性を有する結合用詰め物は、インプラントと生体組織との間に介装されたとき、詰め物の両面が圧縮力によってインプラントと生体組織の双方の表面形状(細かい凹凸形状)の通りに生体の温度で圧縮変形され、双方の表面に密着して隙間を完全に埋めつくすことができる。そのため、インプラントに荷重が繰り返し作用してもガタツキや沈み(シンキング)が生じ難く、後述するように結合用詰め物が分解吸収されつつ生体組織と置換してインプラントと生体組織を隙間なく結合させることができる。
【0013】
結合用詰め物の繊維間空隙が20容量%より少なく、密度が0.8g/cm3 より大きく、アスカーC硬度が70度より高い場合は、インプラントと生体組織との間に介装されたときに結合用詰め物の両面が圧縮変形され難く、インプラントや生体組織に対する密着性が良くないため、インプラントのガタツキ等が生じやすくなり、また、分解吸収に要する期間も長くなる。一方、結合用詰め物の繊維間空隙が90容量%より多く、密度が0.1/cm3 より小さく、アスカーC硬度が15度より低い場合は、分解吸収に要する期間は短くなるけれども、結合用詰め物の強度が低下して破損しやすくなり、しかも、圧縮されやすく圧縮による体積(厚み)減少の程度が大きいため、インプラントのシンキング等が生じやすくなる。結合用詰め物のより好ましい繊維間空隙率は40〜80容量%、より好ましい密度は0.2〜0.6g/cm3 、より好ましいアスカーC硬度は20度〜60度である。
【0014】
なお、上記アスカーC硬度は、高分子計器(株)製のゴム硬度計、型式C型を用い、20mm×50mm×12mm(厚さ)の大きさの試料を、室温にてガラス基板上に載置し、上方より11.8N(1.2kgf)の力で押さえて測定したときの値である。
【0015】
この結合用詰め物の厚みは、インプラント表面の凹凸寸法と生体組織表面の凹凸寸法との合計寸法よりも大きくする必要があり、このように厚みを大きくすると、インプラントと生体組織の双方の凹凸表面が結合用詰め物の両面に確実に食い込んで密着するため、両者の隙間を確実に埋めつくしてインプラントをガタツキなく固定できるようになり、また、結合用詰め物によって緩衝作用も発揮されるようになる。しかし、結合用詰め物の厚みをあまり大きくすると、圧縮による体積(厚み)減少が著しくなるため、インプラントのシンキング等が生じやすくなり、また、分解吸収に要する期間も長くなるので、介装する部位に応じて0.5〜5mm程度の厚みとすることが望ましい。
【0016】
不織布よりなる結合用詰め物の繊維を構成する生体内分解吸収ポリマーとしては、既に実用され、安全性が確認されているポリ乳酸、乳酸−グリコール酸共重合体、乳酸−カプロラクトン共重合体などが適しており、特に、5万〜100万の粘度平均分子量を有するポリ−L−乳酸、ポリ−D−乳酸、ポリ−D,L−乳酸の単独又は共重合体あるいはこれらの混合体が、分解速度や生体適合性との関係で好ましく使用される。
【0017】
ポリ−D,L−乳酸は非晶性であるため、このポリ−D,L−乳酸の不織布からなる結合用詰め物は比較的柔軟性のあるものとなり、生体内での加水分解性は結晶性のポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸の不織布からなる詰め物よりも速い。また、結晶性のポリ−L−乳酸やポリ−D−乳酸は繊維化しやすく、比較的硬質の紙のような風合いの不織布からなる結合用詰め物が得られる。ポリ−L−乳酸等の結晶化度は、加水分解速度、繊維化の度合、不織布の硬さ等に影響し、結晶化度が高くなるほど、加水分解速度が低下し、硬さが増す傾向にある。従って、これらの点を考慮すれば、ポリ−L−乳酸等の結晶化度は高くても70%迄であり、好ましくは10〜60%、更に好ましくは20〜50%である。
【0018】
生体内分解吸収性ポリマーの分子量は、加水分解速度や繊維化の可否に影響を及ぼすので、前記のように5万〜100万の粘度平均分子量を有するポリマーが適宜使用される。5万より小さい粘度平均分子量を有するポリマーは、加水分解に要する時間は短いけれども、揮発性溶剤に溶解したポリマー溶液の粘性が低く、曳糸性に乏しいため、不織布の製造が困難である。一方、100万より大きい粘度平均分子量を有するポリマーは、加水分解に相当の長期間を要するため、インプラントと生体組織の早期結合が困難になる。ポリマーの好ましい粘度平均分子量は10万〜30万である。
【0019】
不織布よりなる結合用詰め物の繊維は、その直径(繊維径)が0.5〜50μmで、その長さ(繊維長)が3〜100mmであることが好ましい。繊維径が50μmよりも太くなると、結合用詰め物の剛性が高くなりすぎて、圧縮変形によるインプラントや生体組織への密着性が低下する。また、繊維長が3mmよりも短くなると、繊維が重積、溶着して部分的にアメーバ状となるため、粗密のバラツキが生じて均質な不織布よりなる結合用詰め物を得ることが困難になる。尚、繊維径が0.5μmよりも細くなったり、繊維長が100mmよりも長くなることは、スプレーによる繊維化の方法で不織布を製造する限り、殆ど有り得ない。繊維径の更に好ましい範囲は0.7〜2.0μmであり、繊維長の更に好ましい範囲は5〜50mmである。
【0020】
スプレーによる繊維化の方法で不織布よりなる結合用詰め物を製造すると、繊維長は主としてポリマーの分子量やポリマー溶液の粘度に依存し、分子量が大きくなるほど、溶液粘度(濃度)が高くなるほど、繊維長は長くなる。また、分子量が同程度の場合は、結晶性のポリ−L−乳酸の繊維の方が無定形のポリ−D,L−乳酸の繊維よりも長くなる。一方、繊維径はどちらかと言えばポリマー溶液の濃度に依存し、濃度が低くなるほど繊維が細くなる。また、スプレー器の噴射孔の大きさや噴射ガスの圧力などによっても変化する。そこで、前述した5万〜100万の粘度平均分子量を有するポリマーを使用し、ポリマー溶液の粘度(濃度)、スプレー器の種類や噴射孔の大きさ、ガス圧等を調節することによって、上記の繊維径及び繊維長の範囲となるように調節することが望ましい。
【0021】
結合用詰め物を構成する不織布の繊維には、生体活性なバイオセラミックス粉体を含ませる必要があり、このようにバイオセラミックス粉体を含ませると、結合用詰め物をインプラントと生体組織(骨組織)との間に介装したとき、バイオセラミックス粉体の骨伝導能によって骨組織が詰め物に伝導形成され、詰め物の加水分解の進行に伴って骨組織と置換するため、インプラントと骨組織を隙間なく直接結合させることが可能となる。
【0022】
バイオセラミックス粉体は、繊維の表面に部分的に露出していることが好ましく、このように露出していると、結合用詰め物を体内の骨組織とインプラントの間に介装した直後から骨伝導能が発揮される。バイオセラミックス粉体を繊維の表面に露出させるためには、その長径が繊維径より大きいバイオセラミックス粉体を使用すればよい。バイオセラミックス粉体としては粒径が0.2〜30μm程度のものを使用でき、不織布の繊維径が0.7〜2μm程度である場合は、粒径が0.2〜10μm程度のもの、好ましくは、長径が1.5〜3.0μm程度で短径が0.2〜0.5μm程度の長円形ものが選択使用される。
【0023】
バイオセラミックス粉体の含有量は10〜80重量%とするのが適当であり、10重量%未満では上記の骨伝導能が充分発揮されない。一方、80重量%より多量に含有させると、スプレーにより繊維化するときに短く切れて満足な繊維にならないため、不織布よりなる結合用詰め物を得ることが難しくなる。より好ましい含有量は30〜70重量%である。
【0024】
バイオセラミックス粉体としては、生体活性があり、良好な骨伝導能と生体親和性を有するものが適しており、例えば、表面生体活性な焼成ハイドロキシアパタイト、アパタイトウォラストナイトガラスセラミックス、生体内吸収性の未焼成ハイドロキシアパタイト、ジカルシウムホスフェート、トリジカルシウムホスフェート、テトラカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート、カルサイト、セラバイタル、ジオプサイト等の粉体や、これらの粉体の表面にアルカリ性の無機化合物や塩基性の有機物等を付着させたものが使用される。この中でも、生体内吸収性のセラミックス粉体が好ましく使用され、特に、最も活性で骨伝導能に優れ為害性も低い未焼成ハイドロキシアパタイト粉末は最適である。
【0025】
なお、インプラントと生体軟組織との間に介装する詰め物の場合は、軟組織再建用のサイトカインなどの増殖因子を繊維に含有させ、軟組織を再生してインプラントと結合させるようにするのが良い。勿論、硬組織の積極的誘導には、硬組織用の増殖因子やサイトカインを含有させればよい。
【0026】
また、結合用詰め物の不織布を構成する繊維は、中実の無孔質の繊維であっても、多孔質の繊維であってもよい。無孔質の繊維は多孔質の繊維より強度が大きいという利点があり、一方、多孔質の繊維は無孔質の繊維に比べて見掛けの加水分解が速いという利点がある。従って、強度よりも速い加水分解速度が要求される結合用詰め物は多孔質の繊維で構成し、強度が要求される結合用詰め物は無孔質の繊維で構成するのがよい。なお、多孔質の繊維の形成方法については後述する。
【0027】
以上のような本発明の結合用詰め物は、揮発性溶剤に生体内分解吸収性ポリマーを溶解すると共にバイオセラミックス粉体を混合してポリマー溶液を調製し、このポリマー溶液を噴射ガスで被噴射体に繊維化しつつスプレーする方法によって比較的容易に製造することができる。
【0028】
ポリマー溶液調製用の揮発性溶剤としては、常温よりやや高い温度で揮発しやすい低沸点のジクロロメタン、ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム等が使用される。そして、調製されたバイオセラミックス粉体配合のポリマー溶液はスプレー器に填装され、窒素ガスなどの不活性な高圧噴射ガスでスプレー器の噴射孔から被噴射体に繊維化されつつスプレーされる。このようにスプレーすると、溶剤が揮散しながらポリマー溶液が繊維化されて互いに絡み合い、繊維が相互の接点で溶着し、繊維が溶剤の揮散により固化して、バイオセラミックス粉体を含んだ不織布からなる結合用詰め物が被噴射体の表面で製造される。そして、製造された結合用詰め物は被噴射体から剥離される。
【0029】
その場合、被噴射体として非通気性の板体などを使用すると、スプレーによりポリマー溶液が繊維化されて該板体に付着した後、溶剤の揮散が該板体によって妨げられるため、該板体に付着した繊維が崩れて互いに融合し、スキン層が形成される。従って、この場合は片面にスキン層を備えた不織布からなる結合用詰め物が製造される。
【0030】
これに対し、非噴射体として通気性の網体などを使用すると、スプレーによりポリマー溶液が繊維化されて該網体に付着した後、溶剤が網目を通じて揮散するため、該網体に付着した繊維が崩れて融合することはない。従って、この場合はスキン層のない不織布からなる結合用詰め物が製造される。
【0031】
片面にスキン層を備えた不織布からなる結合用詰め物は、スキン層によって強度等が向上するけれども、体内に埋入した初期の段階ではスキン層により繊維間空隙への体液の侵入が妨げられて加水分解や骨伝導の進行が遅れるため、通気性の被噴射体にスプレーして、スキン層のない体液の侵入が容易な不織布よりなる結合用詰め物を製造するのが好ましい。
【0032】
また、上記のスプレーによる製造方法では、凸曲及び/又は凹曲した立体的表面を有する被噴射体を用いると、その立体的表面の通りの立体形状を有する不織布よりなる結合用詰め物を容易に製造することができる。
【0033】
更に、多孔質繊維の不織布からなる結合用詰め物を製造する場合は、生体内分解吸収性ポリマーを溶解できる前記の揮発性溶剤と、この溶剤より沸点が高い揮発性の非溶剤との混合溶媒に、生体内分解吸収性ポリマーを溶解してポリマー溶液を調製し、このポリマー溶液を前記と同様に噴射ガスで被噴射体に繊維化しつつスプレーすればよい。このようにスプレーして繊維化すると、沸点の低い溶剤が優先的に揮散し、繊維中の非溶剤の比率が上昇して溶解できなくなったポリマーが混合溶媒を内包した状態で繊維状に固化し、その内包された混合溶媒が周囲のポリマーの壁を一部破壊して揮散した跡が気孔として繊維中に残るため、多孔質繊維の不織布からなる結合用詰め物が製造される。上記の非溶剤としては、溶剤との相溶性に優れ、沸点が60〜110℃の範囲にあるアルコール、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノール、ter−ブタノール、ter−ペンタノールなどが使用される。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0035】
図1は本発明の一実施形態に係る人工股関節結合用詰め物の断面図、図2はその使用状態を示す断面図である。
【0036】
この人工股関節結合用詰め物1は、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーの繊維が互いに絡み合って溶着した不織布よりなる詰め物であって、図1に示すように略半球殻状に成形されたものである。
【0037】
即ち、この人工股関節結合用詰め物1は、図2に示す人工股関節の略半球殻状のアウターカップ2と同一形状の被噴射体の略半球面に、バイオセラミックス粉体を混合したポリマー溶液をスプレー器から噴射ガスで繊維化しつつスプレーして不織布を形成し、乾燥固化後に被噴射体を除去したものであって、図2に示すように、人工股関節のアウターカップ2にすっぽりと被着できる寸法の略半球殻状に成形されている。そして、人工股関節結合用詰め物1の繊維間空隙率、密度、硬度、厚み、繊維径、繊維長、バイオセラミックス粉体の含有率などは、前述した範囲に調節されている。
【0038】
このような略半球殻状の人工股関節結合用詰め物1は、図2に示すように人工股関節のアウターカップ2に被着され、リーミングした骨盤の臼蓋骨3との間に介装される。そして、アウターカップ2がスクリュー4で臼蓋骨3に固定される。このように固定すると、人工関節結合用詰め物1はアウターカップ2と臼蓋骨3によって内外から圧縮され、詰め物1の内面がアウターカップ2外面の多数の細かい凹穴(不図示)に食い込んで密着すると共に、詰め物1の外面が臼蓋骨3のリーミングされた内面(凹凸)形状の通りに圧縮変形されて密着するため、アウターカップ2と臼蓋骨3との間が詰め物1によって隙間なく埋め尽くされる。そのため、人工股関節のアウターカップ2にガタツキが生じることはなく、種々の方向から荷重が加わっても詰め物1によって適度な緩衝作用が発揮される。
【0039】
上記のように人工股関節のアウターカップ2と骨盤の臼蓋骨3との間に結合用詰め物1を介装して体内に埋め込むと、体液が結合用詰め物1の連続した繊維間空隙に侵入し、生体内分解吸収性ポリマーの繊維が体液と接触して加水分解が進行する。そして、繊維に一部露出した状態で含まれるバイオセラミックス粉体によって骨組織が詰め物1の内部に伝導形成され、繊維の加水分解、吸収の進行に伴って骨組織が成長し、最終的には成長した骨組織により詰め物1が置換されて、アウターカップ2と臼蓋骨3が隙間なく直接結合する。
【0040】
この人工股関節結合用詰め物1は、前述した粘度平均分子量を有する生体内分解吸収性ポリマーを使用し、繊維間空隙率、密度、硬度、厚み、繊維径、繊維長、バイオセラミックス粉体の含有率等を前述した範囲に調節してあるため、上記のように圧縮変形性が適度でアウターカップ2や臼蓋骨3に対する密着性に優れており、アウターカップ2の臼蓋骨3へのシンキングが生じることも殆どない。そして、加水分解速度が適度で骨伝導能が良好であるため、比較的短期間で成長した骨組織と置換し、アウターカップ2と臼蓋骨3との直接結合が実現される。
【0041】
尚、上記の人工関節結合用詰め物1は、バイオセラミックス粉体を混合した生体内分解吸収性のポリマー溶液を、人工股関節のアウターカップ2の外面に直接スプレーして形成してもよい。その場合は、詰め物1を剥離したり被着する作業が不要になるといった利点がある。
【0042】
図3は本発明の他の実施形態に係る人工膝関節結合用詰め物の斜視図、図4はその使用状態を示す側面図である。
【0043】
図3に示す人工膝関節結合用詰め物10A、10Bは、前述の人工股関節結合用詰め物1と同様、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーの繊維が互いに絡み合って溶着した不織布よりなる詰め物であって、詰め物10Aは、図4に示す人工膝関節の大腿コンポーネント11の上面(大腿骨12下端の切除面12aと対向する面)にほぼ沿うように湾曲したシート状に成形されており、詰め物10Bは、脛骨コンポーネント13の下面(脛骨14上端の切除面14aと対向する面)に沿う平坦なシート状に成形されている。そして、これらの人工膝関節結合用詰め物10A,10Bの繊維間空隙率、密度、硬度、厚み、繊維径、繊維長、バイオセラミックス粉体の含有率などは、前述した範囲に調節されている。
【0044】
上記の詰め物10Aは、図4に示すように、人工膝関節の大腿コンポーネント11と大腿骨12の切除面12aとの間に介装され、上記の詰め物10Bは、人工膝関節の脛骨コンポーネント13と脛骨14の切除面14aとの間に介装される。そして、大腿コンポーネント11と脛骨コンポーネント13は、それぞれの固定用ステム11a,13aが大腿骨12と脛骨14の髄腔に挿入されてボーンセメント等で固定される。
【0045】
このように固定すると、詰め物10Aは大腿コンポーネント11と大腿骨切除面12aに密着し、詰め物10Bは脛骨コンポーネント13と脛骨切除面14aに密着して、それぞれ隙間が埋め尽くされるため、いずれのコンポーネント11,13にもガタツキを生じることがなく、適度緩衝作用が発揮される。そして、体液がそれぞれの詰め物10A,10Bの連続した繊維間空隙に侵入して加水分解が進行すると共に、繊維に含まれるバイオセラミックス粉体によって骨組織が詰め物10A,10Bの内部に伝導形成され、最終的には成長した骨組織により詰め物10A,10Bが置換されて、大腿コンポーネント11と大腿骨12、及び、脛骨コンポーネント13と脛骨14が隙間なく直接結合する。
【0046】
図5は本発明の更に他の実施形態に係る骨接合プレート結合用詰め物の斜視図、図6はその使用状態を示す断面図である。
【0047】
この骨接合プレート結合用詰め物100は、前述の詰め物1,10A,10Bと同様、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーの繊維が互いに絡み合って溶着した不織布よりなる詰め物であって、図5に示すように厚肉のシート状に成形されている。この詰め物100も、前述した粘度平均分子量を有する生体内分解吸収性ポリマーを使用し、繊維間空隙率、密度、硬度、厚み、繊維径、繊維長、バイオセラミックス粉体の含有率等を前述した範囲に調節してある。
【0048】
このようなシート状の骨接合プレート結合用詰め物100は、図6に示すように骨接合プレート5と生体骨6の骨折部分との間に挟まれ、骨接合プレート5がスクリュー4で固定される。このように固定すると、結合用詰め物100が圧縮変形されて骨接合プレート5と生体骨6に密着し、両者の隙間が結合用詰め物100で埋め尽くされて、骨接合プレート5にガタツキが生じることはなくなる。そして、体液が結合用詰め物100の連続した繊維間空隙に侵入して加水分解が進行すると共に、バイオセラミックス粉体によって骨組織が詰め物100の内部に伝導形成され、最終的には詰め物100がすべて骨組織に置換されて、生体骨6と骨接合プレート5が隙間なく直接結合する。
【0049】
以上、本発明の結合用詰め物の代表的な実施形態を例示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、各種のインプラントと生体組織との間に介装できるようにインプラントの形状等に対応して詰め物の形状等を種々変更し得るものである。
【0050】
【発明の効果】
本発明に係るインプラントと生体組織との間の結合用詰め物は、圧縮変形性が適度でインプラントと生体組織の表面(凹凸)形状の通りに圧縮変形して密着し、インプラントと生体組織の間が完全に埋め尽くされるため、インプラントをガタツキなく固定することができ、インプラントのシンキングが生じることも殆どなく、適度な緩衝作用が発揮され、しかも、生体内での分解、吸収性が適度でバイオセラミックス粉体の組織(骨)伝導能が良好であるため、最終的に生体組織(骨)と全て置換してインプラントと生体組織を隙間なく直接結合させることができるといった顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る人工股関節結合用詰め物の断面図である。
【図2】同人工股関節結合用詰め物の使用状態を示す断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る人工膝関節結合用詰め物の斜視図である。
【図4】同人工膝関節結合用詰め物の使用状態を示す側面図である。
【図5】本発明の更に他の実施形態に係る骨接合プレート結合用詰め物の斜視図である。
【図6】同骨接合プレート結合用詰め物の使用状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 人工股関節結合用詰め物
10A,10B 人工膝関節結合用詰め物
100 骨接合プレート結合用詰め物
2 人工股関節のアウターカップ
3 臼蓋骨
4 スクリュー
5 骨接合プレート
6 生体骨
11 大腿コンポーネント
12 大腿骨
12a 大腿骨切除面
13 脛骨コンポーネント
14 脛骨
14a 脛骨切除面

Claims (7)

  1. インプラントと生体組織との間に介装される結合用詰め物であって、生体活性なバイオセラミックス粉体を含んだ生体内分解吸収性ポリマーの繊維が互いに絡み合って溶着した不織布よりなる結合用詰め物。
  2. 不織布の繊維間空隙が不織布全体積の20〜90容量%を占めている請求項1に記載の結合用詰め物。
  3. 不織布の密度が0.1〜0.8g/cm3 である請求項1又は請求項2に記載の結合用詰め物。
  4. 不織布の硬度(アスカーC硬度)が15度〜70度の範囲である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の結合用詰め物。
  5. 骨接合プレートと生体骨との間に介装されるシート状に成形された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の骨接合プレート結合用詰め物。
  6. 人工股関節のアウターカップと骨盤の臼蓋との間に介装される半球殻状に成形された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の人工股関節結合用詰め物。
  7. 人工膝関節の大腿コンポーネントと大腿骨切除面との間、及び、脛骨コンポーネントと脛骨切除面との間にそれぞれ介装されるシート状に成形された請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の人工膝関節結合用詰め物。
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