本発明の光学用積層ポリエステルフィルムは、最外層A/中間層B/最外層Cを含む3層以上の積層構造からなり、中間層Bに紫外線吸収剤を含有する二軸配向積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の最外層に、易接着層aを有する。本発明の光学用積層ポリエステルフィルムを構成する二軸配向積層ポリエステルフィルム及び易接着層aについて、その用途も含め、以下に詳しく説明する。
(光学用積層ポリエステルフィルム)
<二軸配向積層ポリエステルフィルム>
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの基材として二軸配向積層ポリエステルフィルムが用いられる。かかるポリエステルフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、もしくはこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体よりなるフィルムが挙げられる。これらのなかでもでも、2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムが、力学的性質、耐熱性、透明性、価格等の点から特に好適である。
フィルム原料として共重合ポリエステルを用いる場合、ジカルボン酸成分としてはアジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;トリメリト酸やピロメリト酸等の多官能カルボン酸等が用いられる。また、グリコール成分としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコール、あるいはネオペンチルグリコール等の脂肪酸グリコール;p−キシレングリコール等の芳香族グリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;数平均分子量が150〜20000のポリエチレングリコール等が用いられる。好ましい共重合ポリエステルの共重合成分のモル比の上限は、20モル%未満とすることが好ましい。共重合成分のモル比が20質量%以上では、フィルム強度、透明性、耐熱性が低下する傾向がある。
前記の二軸配向積層ポリエステルフィルムの厚みは、優れた強度、寸法安定性、取り扱い性の点から、厚さ50μm以上が好ましい。前記フィルムの厚みの上限は特に限定されないが、取り扱い性や光学用部材としての規格の面から、300μm以下であることが好ましい。
また、本発明で用いる二軸配向積層ポリエステルフィルムの原料に使用されるポリエステル樹脂の固有粘度は、0.45〜0.70dl/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.45dl/gよりも低いと、耐引き裂き性向上効果が悪化する傾向がある。一方、固有粘度が0.70dl/gよりも大きいと、濾圧上昇が大きくなり高精度濾過が困難となる傾向がある。
本発明では、二軸配向積層ポリエステルフィルム中に、易滑性を付与するために、透明性を阻害しない範囲で、粒子を含有させてもよい。この場合、二軸配向積層ポリエステルフィルムの中間層、及び最外層のいずれかの層に粒子を含有させてもよい、なお、透明性の観点から、最外層にのみ、粒子を含有させることが好ましい。前記の粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アンモニウム、リン酸カルシウム、シリカ、酸化亜鉛、炭化珪素、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子が挙げられる。なかでも、シリカはポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く、高い透明性が得やすいため最も好適である。シリカの平均粒径(電子顕微鏡法)は0.1〜3μmであることが好ましく、また、含有量は、透明性と滑り性の観点から、0.003〜0.1質量%が好ましい。
また、さらに高い透明性を確保するためには、二軸配向積層ポリエステルフィルム中に易滑性を付与するための粒子を実質的に含有させないことが好ましい。二軸配向積層ポリエステルフィルムに粒子を含有させなくても、厚みの薄い易接着層中にのみ微粒子を含有させることにより、滑り性、巻取り性、耐擦り傷性を付与することができる。
なお、「粒子が実質的に存在しない」とは、粒子の含有量を蛍光X線分析法で分析した際に、検出限界以下となるような量を意味する。これは積極的に粒子をフィルム中に含有させなくても、ポリエステル樹脂やフィルムの製造時に外部から混入する異物や、装置内部に付着した異物の剥離により、結果としてポリエステルフィルム中に混入する場合があるためである。
前記の易接着層中に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子が挙げられる。なかでも、シリカはポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適な粒子である。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの基材として用いられる二軸配向積層ポリエステルフィルムは、最外層A/中間層B/最外層Cを含む3層以上の積層構造からなり、中間層Bに紫外線吸収剤を含有する。
二軸配向積層ポリエステルフィルム中への紫外線吸収剤の含有量は、具体的には、波長380nmにおける透過率が3%以下となるように調整することが重要である。これは、紫外線吸収剤の構造によって、最大吸収波長や吸収幅が異なるためである。波長380nmにおける透過率は、耐光性の点から、2%以下であることが好ましく、特に好ましくは1%以下である。本発明の光学用積層ポリエステルフィルムをディスプレイ用光学機能性フィルムの基材として用いる場合、ディスプレイに表示される画像の色再現性、鮮明性などが大きく変化しないように、透明性のみならず、色調変化も考慮して、紫外線吸収剤の構造や含有量を設定することが重要である。
前記の紫外線吸収剤としては、有機系あるいは無機系の紫外線吸収剤が挙げられる。これらのなかでも、透明性の観点から有機系の紫外線吸収剤が好ましい。有機系紫外線吸収剤としては、公知のものがいずれも使用できるが、なかでもベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、環状イミノエステルが好適であり、特に、耐熱性の点から環状イミノエステルが好ましい。また、紫外線の吸収幅を広くするために、最大吸収波長の異なる紫外線吸収剤を2種以上併用してもよい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,2′,4,4′−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシエトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシ−5,5′−ジスルホベンゾフェノン・2ナトリウム塩などが挙げられる。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2′−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(4,4′−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン等が挙げられる。
また、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)なども、環状イミノエステル系紫外線吸収剤として使用可能である。
前記の紫外線吸収剤は、熱分解開始温度が290℃以上であることが、二軸配向積層ポリエステルフィルムの製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。熱分解開始温度が290℃未満の紫外線吸収剤を用いた場合には、紫外線吸収剤を含有するポリエステルを溶融し、シート状に回転冷却ロールに押出した際に、紫外線吸収剤の分解物が前記ロールに付着し、次いでフィルムに再付着して、フィルムにキズがつき、光学欠点の原因となりやすい。
前記の低分子タイプの紫外線吸収剤を用いる場合、紫外線吸収剤を含有する二軸配向ポリエステルフィルムに対し、0.1〜4質量%含有させることが好ましく、特に好ましくは0.3〜2質量%である。紫外線吸収剤の含有量が少なすぎると、紫外線吸収能が小さくなり、耐光性が悪化しやすくなる。一方、紫外線吸収剤の含有量が多すぎると、フィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合がある。
また、高分子タイプの紫外線吸収剤は、フィルム表面へのブリードアウトを抑制することができる点から、推奨される。また、フィルム表面へのブリードアウトが低減されることで、各種機能層を積層する場合、機能層との密着性も高まる。高分子タイプの紫外線吸収剤とは、紫外線吸収剤として有用な骨格を側鎖に有するポリマーであり、波長380nmにおける光線透過率が3%以下となるものであれば特に限定はされない
ポリエステルとの相溶性を考慮すると、ポリエステル系紫外線吸収剤やアクリル系ポリマー紫外線吸収剤が好ましい。例えば、ポリエステルが、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールおよび/または1、4−ブタンジオールを主成分とし、さらに共重合成分として一般式(I)で示されるナフタレンテトラカルボン酸ジイミドと一般式(II)で示されるナフタレンジカルボン酸から合成されたポリエステル系紫外線吸収剤(三菱化学製、ノバペックス U−110)や、2−(2−ヒドロキシルフェニル)ベンゾトリアゾール骨格を側鎖に有するアクリル系ポリマー(BASF製、UVA−1635)などが、目的とする紫外線吸収特性に加えて、透明性などの特性も維持できる点から好ましい。
上記一般式(I)において、Rは有機残基(アルキレン基など)、Xはヒドロキシル基などを表す。
高分子タイプの紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収層の構成樹脂に対し、0.1〜20質量%とすることが好ましく、0.5〜15質量%とすることがさらに好ましい。紫外線吸収剤量が少なすぎると紫外線吸収能が小さくなり、多すぎるとフィルムが黄変する場合や、フィルムの製膜性が低下する場合がある。
特に、低分子タイプの紫外線吸収剤を用いる場合には、少なくとも3層以上の積層構成を有する二軸配向積層ポリエステルフィルムの中間層に、前記の低分子タイプの紫外線吸収剤を含有させ、その両最外層には紫外線吸収剤を実質的に含有させない構成にすると、フィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを飛躍的に低減することができる。そのため、ダイスの吐出口や冷却ロール、テンターなどの汚染が軽減され、該汚染に起因するフィルムの欠点の発生が抑制される。また、紫外線吸収剤のブリードアウトによる、各層間の密着性の低下も抑制される。
なお、両最外層における「紫外線吸収剤を実質的に含有していない」の「実質的に」とは、紫外線吸収剤を含有する層からブリードしたものが、両最外層に拡散する場合など、不可避的に紫外線吸収剤が混入する場合があるためである。
基材フィルムに用いる二軸配向ポリエステルフィルムが3層構造の場合には、中間層のみが紫外線吸収剤を含有する。4層以上の場合には、両最外層を除くいずれか1以上の層が紫外線吸収剤を含有していればよく、両最外層を除く全ての層が紫外線吸収剤を含有していても構わない。基材フィルムに用いる二軸配向ポリエステルフィルムの最も好ましい積層構成は、3層構造で、中間層が紫外線吸収層の構成である。
基材フィルムに、3層構成の二軸配向積層ポリエステルフィルムを用いる場合、各層の厚み比率は限定なく任意であるが、両最外層の厚みは、下限がそれぞれ全厚みの3%であることが好ましく、5%であることが特に好ましい。一方、両最外層の厚みの上限は、全厚みの15%であることが好ましく、特に好ましくは10%である。両最外層のうち、いずれか一方でも、その厚みが薄すぎる場合には、紫外線吸収剤の昇華およびブリードアウトを十分に防止することができないことがある。また、いずれか一方でも、その厚みが厚すぎる場合には、紫外線吸収剤の昇華・ブリードアウトの防止効果が飽和するばかりか、紫外線吸収剤の含有量とのバランスによっては、フィルムの平面視における紫外線吸収剤濃度(単位面積当たりの存在量)が低下し、紫外線吸収効果が不十分となることがあるため、好ましくない。
この両最外層には、必ずしも紫外線吸収剤は含まれなくてもよい。しかしながら、この場合、紫外線吸収剤が含まれていない最外層が、紫外線により劣化し、時間の経過とともに、ハードコート層やその反対面に設ける近赤外線吸収層に対して十分な密着性が得られない場合がある。
これらの問題を解決するため、最外層へのブリードの問題がない、前記の高分子タイプの紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。高分子タイプの紫外線吸収剤は公知の物質である。
前記の二軸配向積層ポリエステルフィルムは、各層がポリエステルで構成されていることが望ましい。これらのポリエステルは、全て同種であっても、全て異種であっても、一部の層のみが同種であっても構わないが、生産管理の容易さや屑樹脂の回収などの点より、同種で、且つ全ての層にPETを用いることが好ましい実施態様である。
二軸配向積層ポリエステルフィルムの中間層に紫外線吸収剤を含有させる方法としては、例えば、予め混練押出機を用い、乾燥させた紫外線吸収剤とポリエステル原料とをブレンドし、紫外線吸収剤の含有量の多いマスターバッチを作製し、次いで二軸配向積層ポリエステルフィルムの溶融押し出し時に、所定の該マスターバッチとポリエステル原料を混合したものを中間層のフィルム原料として使用する方法、あるいはポリエステルの重合時に紫外線吸収剤を含有させたものを中間層用フィルム原料として使用する方法が挙げられる。これらのなかで、前者の紫外線吸収剤を含有するマスターバッチペレットをポリエステルと混合して中間層用フィルム原料として使用する方法が好適である。
具体的には、好ましい製造方法として以下の方法が例示できる。
まず、ポリエステルと紫外線吸収剤とをブレンドし、マスターバッチペレットを製造する。マスターバッチ中の紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤を均一に分散させ、且つ経済的に配合するために、5〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
マスターバッチを作製する方法として、例えば、一軸または二軸の混練押出機を用い、押出温度をポリエステル原料の融点以上290℃未満とし、滞留時間を1〜15分間とすることが好ましい。押出温度が290℃以上では、紫外線吸収剤の熱分解にともなう減量が大きくなり、マスターバッチの粘度低下が大きくなる傾向がある。滞留時間が1分未満では、ポリエステル中に紫外線吸収剤を均一に混合することが困難となりやすい。また、マスターバッチ中には、必要に応じて、熱安定剤、色調調整剤、帯電防止剤を添加してもよい。また、マスターバッチペレットは、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないポリエステルペレットであることが好ましい。
また、本発明の光学用二軸配向積層ポリエステルフィルムの基材となる、最外層A/中間層B/最外層Cを含む3層以上の積層構造からなり、中間層Bに紫外線吸収剤を含有する二軸配向積層ポリエステルフィルムは、加工時の平面性、平坦性の改善の点から、長手方向に対し45°と135°をなす直角2方向の100〜160℃における最大熱収縮応力(a)が0.05〜1.0MPaであり、該直角2方向の熱収縮応力の差の絶対値(b)が上記温度域で0.5MPa以下であることが好ましい。
長手方向に対し45°と135°をなす直角2方向の熱収縮応力に差が小さい場合、加工時にフィルムを左右で均一化して部分的な歪を発生させず、加工に適したものとなる。、長手方向に対し45°と135°をなす直角2方向の100〜160℃における最大熱収縮応力(a)が0.05〜1.0MPaであり、該直角2方向の熱収縮応力の差の絶対値(b)が上記温度域で0.5MPa以下とするためには、例えば、以下の方法が挙げられ、これらの方法を組合せ、調整すればよい。また、生産性には劣るが、工業レベルで生産した製品の中央部を使用することもできる。
(1)縦方向の延伸を高温で、もしくは低倍率で行う方法。
(2)縦方向の延伸を多段で行う方法。
(3)幅方向の延伸を高温、もしくは低倍率で行う方法。
(4)幅方向の延伸を多段で行う、もしくは熱セット後再延伸を行う方法。
(5)幅方向の延伸を行う際、中央部と端部での延伸倍率を実質的に異なるようにして延伸する方法。
(6)二軸延伸後のフィルムを幅方向及び縦方向に弛緩する方法。
(7)二軸延伸後、一旦フィルムを冷却した後、続いて熱固定処理を行う方法。
<易接着層a>
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムにおいて、易接着層a(塗布層a)は、ハードコート層などの光学機能層を積層する際の蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、各種光学機能層との初期密着性、高温高湿下での密着性(耐湿熱密着性)を改善する機能を有する。
前記の易接着層aは、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)とを主たる構成成分とし、(A)/(B)の混合比(質量比)が10/90〜95/5である水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一方向に延伸されて形成される。
前記の水性ポリエステル樹脂(A)と特定の金属キレート化合物または金属アシレート化合物(B)は、二軸配向積層ポリエステルフィルムを製造する際の延伸工程あるいは熱固定処理工程において、加熱することにより、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)が、ポリエステル樹脂(A)と架橋反応を行い、均一な塗膜を形成する。その結果、前記の金属キレート化合物または金属アシレート化合物は、加熱処理することにより分解するため、塗布層a中には塗布液に添加した化学構造では存在しない。
そこで、熱処理後の塗布層a中の金属元素(TiまたはZr)の含有量から、塗布液中の金属キレート化合物または金属アシレート化合物の含有量は、以下のように算出する。
(1)まず、塗布層a中のキレートまたはアシレートの残渣から塗布液中に含有させたキレートまたはアシレートの種類を同定する。
(2)次いで、塗布層a中の金属元素(TiまたはZr)の含有量から、塗布液中の前記の金属キレート化合物または金属アシレート化合物の含有量を算出する。
塗布層aの屈折率は、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)の組成比を大きくすることにより、ポリエステル樹脂(A)単独の場合よりも高くすることができる。塗布層aの屈折率を高くするためには、塗布層aに金属微粒子を含有させることでも達成することができる。しかしながら、金属微粒子を含有させることにより、塗布層aの延伸性、およびハードコート層などの機能層と基材フィルム間の密着性は低下しやすくなる。
本発明で使用するポリエステル樹脂(A)は、その分子鎖に水酸基やカルボキシル基等の活性部位を導入してもよいが、特に導入しなくとも高温でエステル結合部位が可逆反応を起こすため、任意の場所で架橋反応が起こり、結果として緻密な膜が得られる。
また、アクリル樹脂で同様な架橋性を持たせるためには、架橋性官能基を導入する必要がある。しかしながら、アクリル樹脂自体の屈折率が低いために、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、ジルコニウムキレート化合物、またはジルコニウムアシレート化合物を併用しても、本発明の塗布層aと同様な屈折率に制御することは困難である。
さらに、塗布層aの構成成分であるポリエステル樹脂(A)は、ポリエステルフィルムとの密着性に関与するため、水性ポリエステル樹脂(A)と前記化合物(B)との組成比(A/B)が10/90未満の場合、基材フィルムとの密着性が低下し、かつ塗布層aとしての延伸性が低下し、延伸時に均一にならない。そのため、光学用として必要な透明性が低下し、塗布層aの上に形成させるハードコート層との密着性が問題となる。一方、水性ポリエステル樹脂(A)と前記化合物(B)との組成比(A/B)が95/5を越える場合、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物(B)による架橋が乏しくなるとともに、屈折率も低下する。そのため、高温高湿下での密着性(耐湿熱密着性)が低下し、かつ蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となる。
本発明の水性ポリエステル樹脂(A)とは、水、または水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセロソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)、に対して溶解または分散することが可能なポリエステル樹脂を意味する。ポリエステル樹脂に水性を付与するためには、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エーテル基等の親水性基をポリエステル樹脂の分子鎖に導入することが重要である。前記の親水性基のなかでも、塗膜物性及び密着性の点からスルホン酸基が好ましい。
スルホン酸基をポリエステルに導入する場合、スルホン酸化合物は、ポリエステルの全酸成分中のうち、1〜10モル%とすることがより好ましい。スルホン酸基量が1モル%未満の場合、ポリエステル樹脂が水性を示さなくなり、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)との相溶性も低下するため、均一かつ透明な塗布層aが得られにくくなる。また、スルホン酸基量が10モル%を超える場合には、高温高湿下での密着性(耐湿熱密着性)に劣りやすくなる。
さらに、前記の水性ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移温度が40℃以上であることが好ましい。そのため、ポリエステル樹脂(A)の酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族系を主成分とすることが好ましい。また、グリコール成分としては、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等の比較的炭素数の少ないグリコール、またはビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の芳香族系が好ましい。また、ポリエステル樹脂(A)の原料として、ビフェニル等の剛直な成分、または臭素、イオウ等の屈折率の高い原子を有するジカルボン酸成分またはジオール成分をフィルムの物性が低下しない範囲で使用してもよい。ポリエステル樹脂(A)のガラス転移温度が40℃未満であると、高温高湿下での密着性(耐湿熱密着性)が不十分となりやすくなる。さらに、ポリエステル樹脂(A)の屈折率も低下するために塗布層aの屈折率も低下する。その結果、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制が不十分となりやすくなる。
塗布層aの他の主成分は、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)である。前記の水溶性とは、水、または水溶性の有機溶剤を50質量%未満含む水溶液、に対して溶解することを意味する。
水溶性のチタンキレート化合物としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、イソプロポキシ(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタン、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンのアンモニウム塩、チタンベロキソクエン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
また、水溶性のチタンアシレート化合物としては、オキソチタンビス(モノアンモニウムオキサレート)等が、また水溶性のジルコニウム化合物としては、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムアセテート等が挙げられる。
前記の塗布層aには、前記の主成分以外の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコールなどのビニル樹脂、を本発明の効果に影響を与えない範囲で併用してもかまわない。また、架橋剤の併用も本発明の効果に影響を与えない範囲で特に限定されない。使用できる架橋剤としては、尿素、メラミン、ベンゾグアナミンなどとホルムアルデヒドとの付加物、これらの付加物と炭素原子数が1〜6のアルコールからなるアルキルエーテル化合物などのアミノ樹脂、多官能性エポキシ化合物、多官能性イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多官能性アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、などが挙げられる。
本発明において、塗布層a形成のために使用する塗布液は、水性ポリエステル樹脂(A)と、水溶性のチタンキレート化合物、水溶性のチタンアシレート化合物、水溶性のジルコニウムキレート化合物、または水溶性のジルコニウムアシレート化合物の少なくとも1種(B)と、水系溶剤から主としてなる水系塗布液である。上記水系塗布液をポリエステルフィルム表面に塗布する際には、フィルムへの濡れ性を向上させ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性界面活性剤やノニオン系界面活性剤を適量添加することが好ましい。
また、水系塗布液中には、ハンドリング性、帯電防止性、抗菌性など、他の機能性をフィルムに付与するために、無機及び/または耐熱性高分子粒子、帯電防止剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤、抗菌剤、光酸化触媒などの添加剤を含有させることができる。
塗布液に用いる溶剤は、水以外にエタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール類を、全塗布液に対し50質量%未満の範囲で混合してもよい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。但し、塗布液中のアルコール類とその他の有機溶剤との合計量は、50質量%未満とすることが好ましい。
<易接着層b>
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムにおいて、前記の塗布層aが片面のみ形成する場合には、反対面には易接着層aとは樹脂組成の異なる易接着層b(塗布層bと記載する場合がある)を積層することができる。前記の易接着層aを構成する樹脂としては、例えば、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げられ、これらの樹脂を少なくとも1種以上を使用することが好ましい。なかでも、共重合ポリエステル系樹脂及びポリウレタン系樹脂からなる樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂が、密着性の点から、特に好ましい。
易接着層bを形成させる樹脂や塗布液に関して、共重合ポリエステル系樹脂とポリウレタン系樹脂を代表例について、以下に詳しく説明する。
前記の共重合ポリエステル系樹脂を構成するグリコール成分は、分岐したグリコール成分を共重合成分とすることが好ましい。分岐したグリコール成分とは、例えば、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2、2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、及び2、2−ジ−
n−ヘキシル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
上記の分岐したグリコール成分は、全グリコール成分に対し、好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上の割合で含有される。上記の分岐したグリコール成分以外のグリコール成分としては、エチレングリコールが最も好ましい。少量であれば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールまたは1,4シクロヘキサンジメタノールなどを併用してもよい。
一方、共重合ポリエステル系樹脂を構成するジカルボン酸成分は、テレフタル酸のほかに、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸を共重合成分として用いることが好ましい。また、他のジカルボン酸、例えば、ジフェニルカルボン酸や2,6−ナルタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸を共重合成分としてもよい。
また、上記のジカルボン酸成分のほかに、共重合ポリエステル系樹脂に水分散性を付与するために、5−スルホイソフタル酸残基を1〜10モル%の範囲で共重合させることが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸、5−(4−スルフォフェノキシ)イソフタル酸、またはそれらのアルカリ金属塩を挙げることができる。
一方、前記のポリウレタン樹脂としては、例えばmブロック型イソシアネート基を含有する樹脂であって、末端イソシアネート基を親水性基で封鎖(以下、ブロックと記載する)した、熱反応型の水溶性ウレタンなどが挙げられる。上記イソシアネート基のブロック化剤としては、重亜硫酸塩類及びスルホン酸基を含有したフェノール類、アルコール類、ラクタム類オキシム類及び活性メチレン化合物類等が挙げられる。ブロック化されたイソシアネート基はウレタンプレポリマーを親水化あるいは水溶化する。フィルム製造時の乾燥あるいは熱セット過程で、上記樹脂に熱エネルギーが与えられると、ブロック化剤がイソシアネート基からはずれるため、上記樹脂は自己架橋した編み目に混合した水分散性共重合ポリエステル樹脂を固定化するとともに上記樹脂の末端基等とも反応する。塗布液調整中の樹脂は親水性であるため耐水性が悪いが、塗布、乾燥、熱セットして熱反応が完了すると、ウレタン樹脂の親水基すなわちブロック化剤がはずれるため、耐水性が良好な塗膜が得られる。上記のブロック化剤のなかで、熱処理温度、熱処理時間が適当で、工業的に広く用いられるものとしては重亜硫酸塩類が最も好ましい。
前記のポリウレタン樹脂において使用される、ウレタンプレポリマーの化学組成としては、(1)分子内に2個以上の活性水素原子を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは分子内に少なくとも2個の活性水素原子を有する数平均分子量が200〜20,000の化合物、(2)分子内に2個以上のイソシアネート基を有する、有機ポリイソシアネート、あるいは、(3)分子内に少なくとも2個活性水素原子を有する鎖伸長剤を反応せしめて得られる、末端イソシアネート基を有する化合物が挙げられる。
上記(1)の化合物として一般に知られているのは、末端又は分子中に2個以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基あるいはメルカプト基を含むものである。特に好ましい化合物としては、ポリエーテルポリオールおよびポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド及び、プロピレンオキシド等アルキレンオキシド類、あるいはスチレンオキシドおよびエピクロルヒドリン等を重合した化合物、あるいはそれらのランダム重合、ブロック重合あるいは多価アルコールへの付加重合を行って得られた化合物がある。ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールとしては、主として直鎖状あるいは分岐状の化合物が挙げられる。コハク酸、アジピン酸、フタル酸及び無水マレイン酸等の多価の飽和あるいは不飽和カルボン酸、あるいは該カルボン酸無水物等と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール及びトリメチロールプロパン等の多価の飽和及び不飽和のアルコール類、比較的低分子量のポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコール類、あるいはそれらアルコール類の混合物とを縮合することにより得ることができる。
さらに、ポリエステルポリオールとしては、ラクトン及びヒドロキシ酸から得られるポリエステル類、またポリエーテルエステルポリオールとしては、あらかじめ製造されたポリエステル類にエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド等を付加せしめたポリエーテルエステル類も使用することができる。
上記(2)の有機ポリイソシアネートとしては、トルイレンジイソシアネートの異性体類、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、キシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート及び4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、および2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、あるいはこれらの化合物を単一あるいは複数でトリメチロールプロパン等とあらかじめ付加させたポリイソシアネート類が挙げられる。
上記(3)の少なくとも2個の活性水素を有する鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオール等のグリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびピペラジン等のジアミン類、モノエタノールアミンおよびジエタノールアミン等のアミノアルコール類、チオジエチレングルコール等のチオジグリコール類、あるいは水が挙げられる。上記(3)のウレタンポリマーを合成するには、通常、上記鎖伸長剤を用いた一段式あるいは多段式イソシアネート重付加方法により、150℃以下、好ましくは70〜120℃の温度において、5分ないし数時間反応させる。活性水素原子に対するイソシアネート基の比は、1以上であれば自由に選べるが、得られるウレタンプレポリマー中に遊離のイソシアネート基が残存することが必要である。さらに、遊離のイソシアネート基の含有量は10質量%以下であればよいが、ブロック化された後のウレタンポリマー水溶液の安定性を考慮すると、7質量%以下とすることが好ましい。
得られた上記のウレタンプレポリマーは、好ましくは重亜硫酸塩を用いてブロック化を行う。重亜硫酸塩水溶液と混合し、約5分〜1時間、よく攪拌しながら反応を進行させる。反応温度は60℃以下とするのが好ましい。その後、水で希釈して適当な濃度にして、熱反応型水溶性ウレタン組成物とする。該組成物は使用する際、適当な濃度および粘度に調製するが、通常80〜200℃前後に加熱すると、ブロック剤の重亜硫酸塩が解離し、活性なイソシアネート基が再生するために、プレポリマーの分子内あるいは分子間で起こる重付加反応によってポリウレタン重合体が生成したり、また他の官能基への付加を起こす性質を有したりする。
上記に説明したブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)としては、第一工業製薬(株)製の商品名「エラストロン」が例示される。エラストロンは、重亜硫酸ソーダによってイソシアネート基をブロックしたものであり、分子末端に強力な親水性を有する、カルバモイルスルホネート基が存在するため、水溶性となっている。
前記の分岐したグリコール成分を構成成分とする共重合ポリエステル系樹脂(A)およびブロック型イソシアネート基を含有する樹脂(B)を混合して、塗布液を調製する場合、樹脂(A)と樹脂(B)の質量比を(A):(B)=90:10〜10:90とすることが好ましく、さらに好ましくは(A):(B)=80:20〜20:80の範囲である。塗布層bの固形分質量に対する上記樹脂(A)の割合が10質量%未満では、二軸配向積層ポリエステルフィルムへの塗布性や密着性が不十分となり、特に紫外線硬化タイプのハードコート層に対して、実用性のある密着性を得ることが困難となる。
塗布層bを形成させるために用いられる水性塗布液には、熱架橋反応を促進させるため、触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、無機物質、塩類、有機物質、アルカリ性物質、酸性物質および含金属有機化合物などの種々の化学物質が用いられる。また、水溶液のpHを調節するために、アルカリ性物質あるいは酸性物質を添加してもよい。
上記の水性塗布液bを二軸配向積層ポリエステルフィルムの表面に塗布する際には、該フィルムへの濡れ性を上げ、塗布液を均一にコートするために、公知のアニオン性活性剤およびノニオン性の界面活性剤を必要量添加して用いることができる。塗布液に用いる溶剤は、水の他にエタノール、イソプロピルアルコールおよびベンジルアルコール等のアルコール類を、全塗布液に占める割合が50質量%未満となるまで混合してもよい。さらに、10質量%未満であれば、アルコール類以外の有機溶剤を溶解可能な範囲で混合してもよい。ただし、塗布液中、アルコール類とその他の有機溶剤との合計は、50質量%未満とする。
有機溶剤の添加量が50質量%未満であれば、塗布乾燥時に乾燥性が向上するとともに、水のみの場合と比較して塗布膜の外観向上の効果がある。50質量%を越えると、溶剤の蒸発速度が速く塗工中に塗布液の濃度変化が起こり、粘度が上昇して塗工性が低下するために、塗布膜の外観不良を起こす恐れがあり、さらには火災などの危険性も考えられる。塗布液の溶液粘度は、1.0PaS(パスカルセック)以下が好ましい。1.0PaS(パスカルセック)以上では、スジ状の塗布厚み斑が発生しやすい。
本発明では、透明性の点から、二軸配向積層ポリエステルフィルム中には粒子を含有させないことが好ましいため、上記水性塗布液bに粒子を添加し、フィルム表面に適度な突起を形成させることが好ましい。かかる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。これらの中でも、シリカがポリエステル樹脂と屈折率が比較的近く高い透明性が得やすいため最も好適である。
上記の水性塗布液bに添加する粒子の平均粒径(電子顕微鏡法)は、通常1.0μm以下、好ましくは0.5μm以下、さらに好ましくは0.01μm以上0.1μm以下である。平均粒径が1.0μmを超えるとフィルム表面が粗面化し、フィルムの透明性が低下する傾向がある。また、上記の塗布液b中に含まれる粒子の含有量は、通常、塗布、乾燥後の塗布層bに対して粒子の含有量が25質量%以下、好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上15質量%以下になるよう添加する。塗布膜の粒子含有量が25質量%を超えると、透明性が低下するだけでなく、密着性が損なわれることがある。
上記の水性塗布液bに、粒子を2種類以上配合してもよく、同種の粒子で粒径の異なるものを配合してもよい。いずれにしても、粒子全体の平均粒径、および合計の含有量が上記した範囲を満足することが好ましい。上記の塗布液を塗布する際には、塗布液中の粒子の粗大凝集物を除去するために、塗布直前に塗布液を精密濾過する濾材を配置することが重要である。
前記の塗布液を精密濾過するための濾材は、濾過粒子サイズが25μm以下(初期濾過効率95%)であることが重要である。濾過粒子サイズが25μmを超える場合には、粗大凝集物が十分除去できない。そのため、除去できなかった多くの粗大凝集物は、塗布、乾燥後に一軸延伸、あるいは二軸延伸した際に、塗布層中に粒子の粗大凝集物が広がって100μm以上の凝集物として認識される。その結果、多くの光学欠点が発生する。
塗布液を精密濾過するための濾材のタイプは、上記性能を有していれば特に限定されないが、例えば、フィラメント型、フェルト型、メッシュ型が挙げられる。また、濾材の材質としては、例えば、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が挙げられる。
上記水性塗布液の組成物には、その効果を消失しない限りにおいて帯電防止剤、顔料、有機フィラーおよび潤滑剤等の種々の添加剤を混合してもよい。さらに、塗布液が水性であるため、その寄与効果を消失しない限りにおいて、性能向上のために、他の水溶性樹脂、水分散性樹脂およびエマルジョン等を塗布液に添加してもよい。
次に、本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの製造方法について、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)のペレットを基材フィルムの原料とした例について詳しく説明するが、当然これに限定されるものではない。
該ペレットを移送するには通常、所定の配管を用いて空送で行うがこの際の空気は埃混入防止のため、HEPAフィルターを用い、清浄化された空気を用いることが好ましい。
この際に用いるHEPAフィルターは公称濾過精度0.5μm以上の埃を95%以上カットの性能を有するフィルターを用いるのが好ましい。
二軸配向積層ポリエステルフィルムの構成素材であるポリエステル樹脂には、必要に応じて、本発明の作用を阻害しない範囲で各種の添加剤が含有されていてもよい。上記添加剤としては、例えば、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤などが挙げられる。
まず、PETのペレットと紫外線吸収剤とポリエステル原料とをブレンドしマスターバッチを所定の割合で混合する。上記PETのペレット、及び、紫外線吸収剤とポリエステル原料とをブレンドしマスターバッチは、易滑性付与を目的とした粒子を実質的に含有していないペレットである。
混合した原料ペレットを十分に真空乾燥した後、押出機に供給し、シート状に溶融押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸PETシートを製膜する。この際、押出機溶融部、混練り部、ポリマー管、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280〜290℃、その後のポリマー管、フラットダイまでの樹脂温度は270〜280℃とすることがUV吸収剤のダイス出口での昇華、引取ロールの汚染を防止するために好ましい。また、溶融樹脂が約280℃に保たれた任意の場所で、樹脂中に含まれる異物を除去するために高精度濾過を行う。溶融樹脂の高精度濾過に用いられる濾材は、特に限定はされないが、ステンレス焼結体の濾材の場合、Si、Ti、Sb、Ge、Cuを主成分とする凝集物及び高融点有機物の除去性能に優れ好適である。
高精度濾過を行う上で、溶融樹脂の温度が280℃より低い場合、濾圧が上昇するため、押出量を下げるなどの対応が必要となり、生産性が低下する。
さらに、濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)は、20μm以下、特に15μm以下が好ましい。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μmを超えると、20μm以上の大きさの異物が十分除去できない。濾材の濾過粒子サイズ(初期濾過効率95%)が20μm以下の濾材を用いて溶融樹脂の高精度濾過を行うことにより、生産性が低下する場合があるが、粗大粒子による突起の少ないフィルムを得る上で重要な工程である。
原料ポリマー中に存在する異物、及びUV吸収剤が昇華しロールを汚染し、それらがフィルムに付着したものが存在すると製膜時の延伸工程でこの異物の周囲でポリエステル分子の配向が乱れ、光学的歪みが発生する。この光学的歪みのため、実際の異物の大きさよりもかなり大きな欠点として認識されるため、著しく品位を損なう。例えば、大きさ20μmの異物でも、光学的には50μm以上の大きさとして認識され、さらに100μm以上の大きさの光学欠点として認識される場合もある。高透明なフィルムを得るためには、基材フィルム中に易滑性を付与するための粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないことが望ましいが、粒子含有量が少なくフィルムの透明性が高くなるほど、微小な異物による光学欠点はより鮮明となる傾向にある。また、フィルムが厚手になるほど、フィルム単位面積あたりの異物の含有量が薄手のフィルムより多くなる傾向にあり、いっそうこの問題は大きくなる。
一方、フィルムの透明性を高くするために、基材フィルム中に粒子を含有させないか、透明性を阻害しない程度に少量しか含有させないと、フィルムの易滑性が不十分となりハンドリング性が悪化する。そのため、易接着層に易滑性付与を目的とした粒子を添加する必要があり、これらの粒子は透明性を確保するために可視光線の波長以下の極めて平均粒径が小さい粒子を用いる必要がある。しかし、これらの微細粒子は粗大凝集物となりやすく、この粗大凝集物を含有する易接着層を基材フィルムに積層すると光学欠点の原因となる。
前記基材フィルム表面に凸部の高さが1μm以上で最大径が20μm以上の形状を有し、凸部に隣接している所から100μm以内の凹部の深さが0.5μm以上の異物が、10個/m2以下であることが好ましく、さらに5個/m2であることが好ましい。
次に最外層用としてPETのペレット単独、中間層用として紫外線吸収剤を含有したマスターバッチとPETのペレットを所定の割合で混合し、乾燥したのち、公知の溶融積層用押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、キャスティングロール上で冷却固化せしめて未延伸フィルムを作る。すなわち、2台以上の押出機、3層のマニホールド又は合流ブロック(例えば角型合流部を有する合流ブロック)を用いて、両外層を構成するフィルム層、中間層を構成するフィルム層を積層し、口金から3層のシートを押出し、キャスティングロールで冷却して未延伸フィルムを作る。この場合の積層比率について、全厚みに対する両最外層の厚み合計の比率は6〜30%が好ましく、さらに8〜25%がより好ましい。両最外層の厚み合計の比率が6%より低い場合、中間層に含まれる有機系紫外線吸収剤のブリードアウトを十分に防止することができない。また、30%より高い場合は、中間層の紫外線吸収効果が不足する場合があり好ましくない。また、最外層の紫外線劣化防止を目的として、最外層にブリードの問題がない公知の高分子タイプの紫外線吸収剤を添加するのが好ましい。
得られた未延伸フィルムを80〜120℃に加熱したロールで長手方向(縦方向:積層フィルム製造時の走行方向)に2.5〜5.0倍延伸し、一軸配向フィルムを得る。長手方向の延伸は2段以上の多段延伸で行うことが好ましく、長手方向の1段目の延伸を、(ポリエステル のガラス転移温度Tg+15)〜(Tg+40)℃の範囲の温度で、1.3〜2.0倍延伸し、次いで(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲の温度で長手方向の2段目以降の延伸を、2.2〜3.2倍の範囲に延伸することが好ましい。なお、この一軸延伸を行う工程を「縦延伸工程」という場合がある。
この工程中又は工程後の任意の段階でポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ハードコート層に対する十分な密着性を得るために易接着層aを、赤外線吸収層に対する十分な密着性を得るために易接着層bを塗布する。
このフィルム製造工程の任意の段階で、PETフィルムの少なくとも片面に、前記の水系塗布液を塗布する。塗布層はPETフィルムの両面に形成させてもよい。水系塗布液中の樹脂組成物の固形分濃度は、2〜35質量%であることが好ましく、特に好ましくは4〜15質量%である。
この水系塗布液をPETフィルムに塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、などが挙げられ、これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて塗工する。
上記塗布液を塗布する工程は、通常の塗布工程、すなわち二軸延伸し熱固定した基材フィルムに塗布する工程でもよいが、該フィルムの製造工程中に塗布するのが好ましい。さらに好ましくは結晶配向が完了する前の基材フィルムに塗布する。水溶液中の固形分濃度は通常30質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。該水性塗布液は、走行しているフィルム1m2あたり0.01〜5g、好ましくは0.2〜4gが付着されるように塗工される。該水性塗布液が塗布されたフィルムは、延伸及び熱固定のためにテンタに導かれ、そこで加熱されて、熱架橋反応により安定な被膜を形成し、ポリエステル系績層フィルムとなる。十分な赤外線吸収層やハードコート層との密着性を得るためには、このときのコート量がフィルム1m2あたり0.01g/m2以上であって、100℃、1分以上の熱処理が必要である。また、上記、塗布液を塗布する際のクリーン度は埃の付着を少なくするためクラス1000以下が好ましい。
本発明においては、塗布層は、未延伸あるいは一軸延伸後のPETフィルムに前記水系塗布液を塗布、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って形成させることが重要である。前記塗布液が塗布されたフィルムは、横延伸及び熱処理のためにテンターに導かれ、加熱される。その際、キレート化合物またはアシレート化合物は、熱架橋反応により安定な架橋塗布層を形成することができる。それに対して、二軸配向PETフィルムに前記塗布液を塗布、乾燥させて得た塗布層の場合には、熱処理による二軸配向積層ポリエステルフィルムの透明性の悪化、物性の変動を小さくするため、熱量を抑制せざるを得ない。そのため、熱架橋反応を行うのに熱量が不足し、均一な架橋塗布層を形成することができない。
その後、易接着層a用塗布液、必要に応じて易接着層b用塗布液を、前記フィルムに塗布・乾燥を行い、次いで、得られたフィルムをテンターに導き、一段目の延伸方向と直交する幅方向に延伸を行う。
幅方向の延伸温度は90〜210℃、好ましくは130〜190℃である。幅方向の延伸温度が90℃未満では、フィルムが破断しやすく好ましくない。また、200℃を超えると得られたフィルムの平面性が悪くなり好ましくない。幅方向の延伸倍率は2.5〜5.0倍、好ましくは3.3〜4.6である。幅方向の延伸倍率が2.5倍未満では得られたフィルムの厚み斑が悪くなるため好ましくない。また、5.0倍を超えると延伸において破断の頻度が多くなり好ましくない。該発明のフィルムを得るには、幅方向の延伸温度を150〜180℃とすることが好ましい。該発明のフィルムを得るには、延伸時にフィルム幅方向に温度差をつけ、フィルムの中央部と端部での延伸倍率が実質的に異なるようにして延伸する方法が好ましい。具体的には、延伸工程において、幅方向端部(全幅の20%程度)となる位置のテンター内に各種ヒーターを設置し、フィルム中央と端部とで10〜50℃の温度差をつけ延伸する方法が挙げられる。
引き続き、熱固定処理ゾーンに導き、150℃以上250℃以下で1〜120秒間の熱固定処理を行い、結晶配向を完了させる。好ましくは200℃以上240、10〜100秒である。熱固定処理温度が150℃未満では、ハードコート層や近赤外線吸収層との密着性が悪くなったり、また近赤外線吸収層の塗工工程での乾燥工程で熱がかかった場合、応力の発生が幅方向で差異が大きくシワなどが発生し、平面性が悪化し好ましくない。熱固定処理温度が250℃を超えるとフィルムの透明性が悪化したり、破断の頻度が多くなるので好ましくない。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムを得るには、延伸後の熱固定処理時にフィルム幅方向に温度差をつけ、フィルムの中央部と端部での延伸倍率を実質的に異なるようにして延伸する方法が好ましい。具体的には、熱固定領域中に冷却領域と加熱領域とを隣接して設ける、または熱処理工程において、幅方向端部となる位置のテンター内に各種ヒーターを設置し、フィルム中央と端部とで30〜80℃の温度差をつけ熱固定し、実質的に0.3〜1.0倍の延伸倍率差をつけることが重要である。
また、この熱固定処理工程中で、幅方向及び/又は長手方向に3〜10%の弛緩処理を施す。特に長手方向の弛緩処理を行うことが、本発明のフィルムを得るために、有効な手段である。
本発明において、最終的に得られる塗布層a、または必要に応じて塗布層bの塗布量は、0.02〜0.5g/m2 であることが好ましい。塗布層の塗布量が0.02g/m2 未満であると、密着性に対する効果がほとんどなくなるばかりでなく、塗布層aにハードコート層を積層した際に、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。一方、塗布層aの塗布量が0.5g/m2 を越える場合も、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。
(光学機能性フィルム)
本発明で得られた光学用積層ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムの塗布層に、ハードコート層、光拡散層、プリズムレンズ層、近赤外線吸収層などの光学機能層を積層して、光学機能性フィルムが得られる。
<ハードコートフィルム>
前記の光学機能性フィルムの代表例として、本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの塗布層aに、ハードコート層を積層したハードコートフィルムについて説明する。
ハードコート層を構成する樹脂としては、電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂が好ましく、特に好ましくは電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂である。
電子線または紫外線により硬化するアクリル樹脂として、アクリレート系の官能基を有する樹脂が挙げられる。例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー、および反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を含有するものが使用できる。
但し、紫外線硬化型樹脂の場合には、前記の樹脂中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチラウムモノサルファイド、チオキサントン類、また、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
ハードコート層の厚みは、1〜15μmであることが好ましい。ハードコート層の厚みが1μm未満であると、ハードコート層としての耐薬品性、耐擦傷性、防汚性等に対する効果がほとんどなくなる。一方、厚みが15μmを越えるとハードコート層のフレキシブル性が低下し、亀裂等が発生する可能性が増加する。
前記のハードコートフィルムは、(a)耐擦傷性改善のために単独で使用する構成、(b)ハードコート層の直上に他の機能膜を積層する構成、(c)ハードコート層の反対面に他の機能膜を積層する構成、など広範囲の光学機能性フィルムに使用することができる。
例えば、前記の(b)の用途としては、ハードコート層の上に反射防止層を積層してなる反射防止フィルムが代表例として挙げられる。このような反射防止層は、高屈折率のZnO、TiO2 、CeO2 、SnO2 、ZrO2 等または低屈折率のMgF2 、SiO2 等の無機質材料や、金属材料から構成される。これらの機能層は、蒸着、スパッタリング、プラズマCVD等か、高屈折率または低屈折率の無機質材料や金属材料等を含有する樹脂組成物からなる塗布層のいずれかの方法により、単層構成または多層構成として設けることにより形成される。
また、前記の(c)の用途としては、ハードコートフィルムの反対面に、透明導電膜を設けた透明導電性フィルムが挙げられる。該透明導電性フィルムは、例えば、タッチパネルの可動電極として用いることができる。また、前記(b)と(c)を併用した構成としては、透明基材の片面に近赤外線吸収層を積層し、他面にハードコート層を介して反射防止層を積層してなる、複合タイプの近赤外線吸収フィルターが例示される。該複合タイプの近赤外線吸収フィルターは、反射防止層側を視認側とし、近赤外線吸収層側をディスプレイ側に配置して、プラズマディスプレイの前面板として使用することができる。
本発明のハードコートフィルムは、前記の光学用積層ポリエステルフィルムの少なくとも片面の塗布層aに、前記の電子線または紫外線硬化型アクリル樹脂またはシロキサン系熱硬化性樹脂を含むハードコート層形成用塗布液を塗布し、必要に応じて乾燥させた後、硬化型樹脂の硬化条件に合わせて電子線または紫外線を照射し、必要に応じて加熱して塗布層を硬化させることにより得られる。塗布液は特に希釈する必要はないが、塗布液の粘度、濡れ性、塗布層の厚み等に応じて、有機溶剤により希釈してもよい。
<プラズマディスプレイパネル用フィルター>
プラズマディスプレイパネル用フィルターは、近赤外線吸収層、電磁波吸収層、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止(ノングレア)層などの機能層を組み合わせて構成される。現在、市場に流通しているプラズマディスプレイパネル用フィルターは、視認側から、反射防止フィルム(反射防止層/ハードコート層/透明基材フィルム)、近赤外線吸収(+色補正)フィルム(近赤外線吸収層/透明基材フィルム)、電磁波吸収フィルム(電磁波吸収層/透明基材フィルム)の順に、各フィルムを粘着剤で貼り合わせて構成されている。
また、一般的な近赤外線吸収フィルムは、透明基材フィルムに近赤外線吸収色素と透明樹脂からなる近赤外線吸収層が積層されて、構成されている。前記でも述べたように、近赤外線吸収色素として、一般的に、下記一般式(III)で示される芳香族ジインモニウム塩化合物が使用されている。その理由は、前記の芳香族ジインモニウム塩系化合物は、近赤外線領域の吸収が大きく、且つ吸収し得る波長域も広く、さらに可視光線領域の透過率も高いという特徴を有しているためである。一方、前記の芳香族ジインモニウム塩化合物のなかには、太陽光線に含まれる紫外線によって変質しやすく、近赤外線領域の吸収が小さくなったり、可視光線領域の一部の透過率が低下したり、色調が変化する化合物も多い。
(式中、R1〜R8は、夫々同一または異なっていてもよく、水素原子、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルキル基、アルキニル基を表す。R9〜R12は、夫々同一または異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルコキシル基を表す。R1〜R12で、置換基を結合できるものは置換基を有してもよい。X-は陰イオンを表す。)。
上記一般式(III)のR1〜R8が(a)アルキル基、(b)アリール基、(c)アルケニル基、(d)アラルキル基の場合、夫々、以下の基が例示できる。
(a)アルキル基:メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、t−ブチル基、n−アミル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−シアノエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−シアノプロピル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基など。
(b)アリール基:フェニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、トリル基、ジエチルアミノフェニル基、ナフチル基など。
(c)アルケニル基:ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基など。
(d)アラルキル基:ベンジル基、p−フルオロベンジル基、p−クロロフェニル基、フェニルプロピル基、ナフチルエチル基など。
また、上記一般式(III)のR9〜R12の(e)ハロゲン原子、(f)アミノ基、(g)アルキル基、(e)アルコキシル基としては、夫々、以下の基が例示できる。
(e)ハロゲン原子:フッ素、塩素、臭素など。
(f)アミノ基:ジエチルアミノ基、ジメチルアミノ基など。
(g)アルキル基:メチル基、エチル基、プロピル基、トリフルオロメチル基など。
(h)アルコキシル基:メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基など。
また、上記一般式(III)におけるX-としては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸塩イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸イオンなどの陰イオンが挙げられる。
上記一般式(III)で示されるジインモニウム塩系化合物は、市販品を用いることができる。例えば、Kayasorb IRG−022、IRG−023、IRG−024(以上、日本化薬社製)、CIR−1080、CIR−1081、CIR−1083、CIR−1085(以上、日本カーリット社製)などが好適である。
しかしながら、本発明の光学用積層ポリエステルフィルムの基材となる、最外層A/中間層B/最外層Cを含む3層以上の積層構造からなり、中間層Bに紫外線吸収剤を含有する二軸配向積層ポリエステルフィルムを、前記近赤外線吸収フィルムの透明基材フィルムとして用い、その片面に近赤外線吸収層を積層し、該近赤外線吸収層をディスプレイ側に配置したプラズマディスプレイパネル用フィルターを、プラズマディスプレイパネルの前面板として用いることにより、近赤外線吸収色素の紫外線による変質を防止することができる。
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターは、コストダウンの点から、透明基材フィルムを1枚に減らし、機能層を多数積層した複合タイプのプラズマディスプレイパネル用フィルターとしても好適である。この複合フィルターの層構成としては、例えば、視認側から、反射防止層/ハードコート層/易接着層a/二軸配向積層ポリエステルフィルム/易接着層b/近赤外線吸収層/電磁波吸収層、が代表例として挙げられる。
前記の近赤外線吸収フィルムの製造において、本発明の二軸配向積層ポリエステルフィルムへの近赤外線吸収層の積層方法としては特に限定されないが、コーティング法が厚み均一性やコストの点で好ましい。
コーティング法の場合、近赤外線吸収色素と高分子樹脂を有機溶剤に溶解させた塗布液を、前記の二軸配向積層ポリエステルフィルムに塗布する。前記の有機溶剤としては、例えば、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン、酢酸エチル、酢酸プロピル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、塩化メチレン、クロロホルム、N,N−ジメチルホルムアミド、水などが挙げられ、1つまたは2つ以上併用してもよく、またこれらに限定されるものではない。
前記の近赤外線吸収色素とは、波長800〜1200nmの近赤外線領域に極大吸収を有する有機系色素であり、例えば、ジインモニウム塩系、フタロシアニン系、ジチオ−ル金属錯体系、ナフタロシアニン系、アゾ系、ポリメチン系、アントラキノン系、ナフトキノン系、ピリリウム系、チオピリリウム系、スクアリリウム系、クロコニウム系、テトラデヒドオコリン系、トリフェニルメタン系、シアニン系、アゾ系、アミニウム系等の化合物が挙げられる。これらの化合物は単独で又は2種以上を混合して使用されるが、近赤外線領域の吸収が大きく、吸収域も広く、可視光領域の透過率も高い、前記一般式(III)で示される芳香族ジイモニウム塩系化合物を含むことが好ましい。
また、近赤外線吸収層を構成する高分子樹脂としては、近赤外線吸収色素を均一に溶解あるいは分散できるものであれば特に限定されないが、ポリエステル系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。これらの樹脂のなかでも、基材との密着性に優れる点から、ポリエステル系樹脂あるいはアクリル系樹脂が好ましい。樹脂が硬い場合には、後加工の工程で塗膜に微小なひび割れが発生する場合があるので、柔軟成分を樹脂の分子骨格に導入することが好ましい。さらに、前記の樹脂のガラス転移温度は、85℃以上160℃以下が好ましい。なお、前記のガラス転移温度は、JIS−K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって10℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度を意味する。
コーティング法を具体的に説明すると、上記有機溶剤に、高分子樹脂および少なくとも1つの近赤外線吸収色素を添加して溶解させた塗布液を、例えば、本発明の光学用積層フィルムの易接着層aとは反対面に、必要により易接着層bを介して、高速でコーティングできるグラビアコート法、リバースコート法、キスロールコート法、ロールコート法などを用いて塗布することによって行うことができる。
また、近赤外線吸収層には、さらに各種の添加剤が含有されていてもよい。当該添加剤として、例えば、界面活性剤、帯電防止剤、安定剤等が挙げられるが、透明性の点から、易滑性付与を目的とした不活性粒子を実質上含有させないことが好ましい。
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターは、プラズマディスプレイから放射される不要な近赤外線を吸収し、かつ可視光領域の透過率が高いだけでなく、太陽光からの紫外線を視認側に配置した基材フィルム(二軸配向積層ポリエステルフィルム)で吸収することができ、優れた耐久性を有する。また、視認側に設けた易接着層aにハードコート層を積層した際の蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉縞)が低減することができる。
<光学用途以外の応用>
本発明の光学用積層ポリエステルフィルムにおいて、塗布層aはハードコート層に対して良好な接着性を有するだけでなく、光学用途以外でも良好な密着強度が得られる。具体的には、写真感光層、ジアゾ感光層、マット層、磁性層、インクジェットインキ受容層、ハードコート層、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、印刷インキやUVインキ、ドライラミネートや押し出しラミネート等の接着剤、金属あるいは無機物またはそれらの酸化物の真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD、プラズマ重合等で得られる薄膜層、有機バリアー層等が挙げられる。
本発明の光学用積層ポリエステルフィルム、及びこれを用いたハードコートフィルム、並びにこれらを用いたプラズマディスプレイパネル用フィルターについて、基材としてポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)を使用した場合を例にとって説明する。まず、本発明で使用した原料やフィルムの特性は、下記の評価方法にしたがって求めた。似用いた特性が、本発明は当然これらに限定されるものではない。本明細書に記載の分光特性は、自記分光光度計(日立U−3500型)を用いて測定したものであり、測定したである。
(1)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ株式会社製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/minで昇温させ、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
(2)全光線透過率
JIS K7105に準拠し、濁度計(日本電色工業株式会社製、NDH2000)を使用して、フィルムの全光線透過率を求めた。
(3)波長380nm以下における最大光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500)を使用し、波長は200〜1500nmの範囲所定の波長の吸光度を測定した。
(3)波長380nmにおける光線透過率
分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用い、空気層を標準として、波長300〜500nm領域の光線透過率を測定して、波長380nmにおける光線透過率を求めた。
(4)二軸配向積層ポリエステルフィルムの最外層の表面の吸光度比(X)
本評価は、中間層に含有する紫外線吸収剤が、フィルム表面にどの程度ブリードアウトしているかを評価するための特性値である。前記二軸配向積層ポリエステルフィルムの最外層の吸光度比(X)が0.3以下であれば、全く問題が発生しない合格レベル(○)であり、0.5以上では、密着性が不良となる不合格レベル(×)である。また、その中間の値は、実用上問題がない場合が多いが、時々問題が発生するレベル(△)である。
次に、二軸配向積層ポリエステルフィルムの最外層の吸光度比(X)は、FT−IRを用い、下記の手順及び条件で測定した。
(手順)
(a)まず、ブランク試料として、紫外線吸収剤を含有しないPETフィルムの最外層のIRスペクトル(I)を測定する。
(b)次いで、紫外線吸収剤を含有する二軸配向積層PETフィルムの最外層のIRスペクトル(II)を測定する。
(c)さらに、IRスペクトル(I)と(II)の差スペクトルから、紫外線吸収剤の特徴的な吸収である1700〜1800cm-1 における吸光度Aと、PETの特徴的な吸収である1505cm-1 での吸光度Bを測定し、これらの吸光度の比(A/B)を、二軸配向積層ポリエステルフィルムの最外層の吸光度比(X)と定義した。
(測定条件)
1回反射ATR装置 : Thermo Spectra−Tech社製
「Thunderdome」
IRE : Ge
入射角 : 45°
分解能 : 8cm-1
積算回数 : 128回
(5)二軸配向積層フィルムの最外層の厚さ(μm)
予め、粒子(例えば、シリカ等)の含有量が既知のポリエステル組成物を数水準作成し、このポリエステル組成物を最外層の原料に用い、中間層には粒子を含有しないポリエステルを原料として用いた、3層構成の二軸配向積層ポリエステルフィルムを作製する。 次に、SIMS(二次イオン質量分析装置)を用いて、粒子に起因する元素(X)とポリエステルの炭素元素(Y)との濃度比(X/Y)を求める。さらに、最外層側の表面からフィルムの深さ方向にX/Yを測定することにより、粒子の濃度を知ることができる。
このようにして測定した値は、フィルムの最外層の表面では高い値を示すが、主層である中間層に近づくにしたがって急激に低下し(変極点A)、その後一定の値で安定化する(変極点B)。AとBを直線で結び、その1/2の値から最層外層までの距離を積層厚さとする。
(6)フィルムの熱収縮応力値
まず、測定用試料として、フィルムを幅方向に5分割し、各々の中央位置で長手方向、に対し45°と135°における直角2方向の試料を準備した。
次いで、TMA(セイコー電子工業製、TMA/SS100)を用い、サンプル幅4mm、サンプル長15mm、初期荷重40mNの条件下で、30℃から230℃までの範囲を5℃/分で昇温していき、熱収縮応力を測定した。なお、100℃から160℃までの範囲における熱収縮応力の最大値を熱収縮応力値(MPa)とした。
なお、長手方向に対し45°と135°の位置における直角2方向の100〜160℃における熱収縮応力の最大値を(a)、その2方向の熱収縮応力値の差の絶対値を(b)とした。
得られた熱収縮応力値(a)は、下記の2つの基準にしたがって評価した。
〇:0.05MPa以上1.0MPa以下
×:0.05MPa未満、または1.0MPaを超える
また、熱収縮応力値の差(b)は、下記の2つの基準にしたがって評価した。
〇:0.5MPa以下
×:0.5MPaを超える
(7)初期密着性
ハードコートフィルムをJIS−K5400の8.5.1記載に準拠し、ハードコート層と二軸配向積層ポリエステルフィルムとの初期密着性を求める。
具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して二軸配向積層ポリエステルフィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次いで、セロハン粘着テープ(ニチバン製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に付着させる。その後、垂直にセロハン粘着テープをハードコートフィルムのハードコート層面から引き剥がして、ハードコートフィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と二軸配向積層ポリエステルフィルムとの初期密着性を求める。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数える。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
(8)耐湿熱密着性
ハードコートフィルムを、高温高湿槽中で60℃、95RH%の環境下500時間放置し、次いで、ハードコートフィルムを取りだし、室温で12時間放置した。
その後、前記(8)と同様の方法でハードコート層と二軸配向積層ポリエステルフィルムとの密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%
○:96%以上100%未満
△:80%以上96%未満
×:80%未満
(9)干渉縞改善性(虹彩状色彩)
ハードコートフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層面とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工株式会社製、ビニルテープ No21;黒)を貼り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして、3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX-N 15W)を光源として、斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、15〜45°の角度)で観察した。
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
(4)耐光性
近赤外線吸収フィルターの近赤外線吸収層とは反対面から、UVカーボンアークを用い、下記条件で紫外線を照射し、照射前後での波長1000nmでの光線透過率の差を測定した。なお、光線透過率は、自記分光光度計(日立製作所製、U−3500型)を用いた。
(照射条件)
・ブラックパネル温度:63度(雰囲気温度:40〜41℃)
・相対湿度:50%
・照射時間:24Hr
(評価)
◎:変化量が3%以下
○:変化量が3〜5%
△:変化量が5〜10%
×:変化量が10%
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、実施例は代表例であり、本発明は下記の実施例によって制限を受けるものではない。本発明は、明細書に記載された範囲で実施することが可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
(原料の製造)
(1)塗布層a形成用ポリエステル水分散液の調整
撹拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、ジメチルテレフタレート186質量部、ジメチルイソフタレート186質量部、ジメチル 5−ナトリウムスルホイソフタレート23.7部、ネオペンチルグリコール137質量部、エチレングリコール191質量部、およびテトラ−n−ブチルチタネート0.5質量部を仕込み、160℃から220℃まで、4時間かけてエステル交換反応を行った。次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、29Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
同様の方法で、他の組成の共重合ポリエステル樹脂(A−2、A−3、A−4)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、NMRで測定した組成および重量平均分子量の結果を表1に示す。
次いで、撹拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A−1)[20質量部]、エチレングリコールモノブチルエーテル[15質量部]を入れ、100℃で加熱、撹拌し、樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水[65質量部]をポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%の乳白色のポリエステルの水分散液(B−1)を作成した。同様にポリエステル樹脂(A−1)の代わりにポリエステル樹脂(A−2)〜(A−4)を使用して、水分散液を作成し、それぞれ水分散液(B−2)〜(B−4)とした。
(2)積層二軸配向ポリエステルフィルムの中間層B層用マスターバッチ(A)の製造
乾燥させた紫外線吸収剤(サイテック製、CYASORB UV−3638;2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)10質量部、粒子を含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)90質量部を混合し、混練押出機を用い、マスターバッチを作製した。この時の押し出し温度は285℃であり、押し出し時間は7分であった。
実施例1
(1)塗布層a(易接着層a)形成用塗布液(I)の調製
前記のポリエステル水分散液(B−1)[40質量部]、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)[18質量部]、水[150質量部]、およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−1)と略記する)。
(2)塗布層b形成用塗布液(II)の調製
ジメチルテレフタレート[95質量部]、ジメチルイソフタレート[95質量部]、エチレングリコール[35質量部]、ネオペンチルグリコール[145質量部]、酢酸亜鉛(0.1質量部]、および三酸化アンチモン[0.1質量部]を反応容器に仕込み、180℃で3時間かけてエステル交換反応を行った。次に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸[6.0質量部]を添加し、240℃で1時間かけてエステル化反応を行った後、重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂を得た。
得られたポリエステル樹脂の30質量%水分散液[6.7質量部]、重亜硫酸ソーダでブロックしたイソシアネート基を含有する自己架橋型ポリウレタン樹脂の20質量%水溶液(第一工業製薬製、エラストロンH−3)[40質量部]、エラストロン用触媒(Ca
t64)[0.5質量部、水[47.8質量部]、およびイソプロパノール[5質量部]を混合し、さらにアニオン性界面活性剤を1質量%、球状コロイダルシリカ粒子(日産化学工業製、スノーテックスOL)を5質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(D−1)と略記する)。
(3)片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルムの製造
中間層B層用原料として、固有粘度が0.62dl/gで、かつ粒子を含有しないPET樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)[90質量部]と、前記のマスターバッチ(A)のペレット[10質量部]を用い、それらを十分に混合した。次いで、混合したペレットを135℃で6時間減圧乾燥(133Pa)した後、押出機2(中間層B層用)に供給した。
一方、粒子を含有しないPET樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)を135℃で6時間減圧乾燥(133Pa)した後、押出機1(外層A層用及び外層C層用)にそれぞれ供給した。
なお、押出機の溶融部、混練り部、メルトライン、ギアポンプ、フィルターまでの樹脂温度は280℃とし、その後のメルトラインでは275℃とし、3層合流ブロックにて、A層/B層/C層の構成となるように積層し、口金よりシート状にして押し出した。溶融したポリマーは、前記のフィルター工程で、それぞれステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:大きさ10μm以上の粒子を95%カット)を用いて濾過した。また、フラットダイは樹脂温度が275℃になるようにした。溶融押出した樹脂を、静電印加キャスト法を用いて、表面温度30℃のキャスティングドラム(ロール径400φ、Ra0.1μm以下)に巻きつけて冷却固化し、未延伸シートを作った。この時の吐出量は48kg/hrであった。なお、最外層(A層及びC層)の厚さの比率は、全厚みに対してそれぞれ10%となるように、各押し出し機の吐出量を調整した。
次に、上記の未延伸シートを、加熱されたロール群および赤外線ヒーターを用いて100℃に加熱し、その後周速差のあるロール群で長手方向(走行方向)に3.5倍延伸して一軸配向フィルムを得た。
なお、フィルム製造時に用いる全ロールに関し、ロールの表面粗度をRaで0.1μm以下に管理し、縦延伸工程の予熱入口と冷却ロールにロールクリーナーを設置した。縦延伸工程のロール径は150mmであり、サクションロール、静電密着、パートニップの密着装置を採用してフィルムをロールへ密着させた。
次に、濾過粒子サイズ(初期濾過効率:95%)が25μmのフェルト型ポリプロピレン製濾材で精密濾過を行った前記塗布液(C−1)および(D−1)を、夫々リバースロール法で。上記一軸配向フィルムのそれぞれの片面に塗布した。引き続き、フィルムの端部をクリップで把持して130℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後フィルム幅方向に4.0倍に延伸し、230℃で5秒間熱処理し、この熱処理工程中に幅方向に3%の弛緩処理し、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。該フィルムの厚さは100μmであり、各塗布層の塗布量は0.01g/m2であった。前記の光学用積層ポリエステルフィルムの熱収縮応力値は、製品中央部のみを測定した。
(4)ハードコート層の形成
前記の光学用積層ポリエステルフィルムの中央部から採取したフィルムの塗布層aの表面(C−1側)に、ハードコート剤(大日精化製、セイカビームEXF01(B);固形分100質量%)5質量部にメチルエチルケトン5質量部を加えた溶液を、#8ワイヤバーを用いて塗布し、70℃で1分間乾燥し溶剤を除去した。次いで、ハードコート層を塗布したフィルムを送り速度5m/分で走行させながら、高圧水銀灯を用いて照射エネルギー200mJ/cm2 、照射距離15cmの条件下で、ハードコート層面に紫外線を照射し、厚み3μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
実施例2
前記のポリエステル水分散液(B−2)[48質量部]、ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)[15質量部]、水[150質量部]、およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−2)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−2)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
実施例3
前記のポリエステル水分散液(B−3)[12質量部]、ジイソプロポキシビス(トリエタノールアミナト)チタンの80質量%溶液(松本製薬(株)製、TC400)[17質量部、水[150質量部]、およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−3)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−3)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
実施例4
前記のポリエステル水分散液(B−4)[24質量部]、ジイソプロポキシビス(アセチルアセナト)チタンの[11質量部]、水[150質量部]およびイソプロピルアルコール100[質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−4)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−4)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
実施例5
前記のポリエステル水分散液(B−4)[32質量部]、ジルコニウムアセテート[10質量部]、水[150質量部]およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−5)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−5)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
実施例6
実施例1において、最外層には、粒子を含有しないPET樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)に、高分子系紫外線吸収剤(三菱化学製、NOVAPEX U−110)を20質量部となるよう含有させた樹脂組成物を、押出機1(外層A層用及び外層C層用)にそれぞれ供給した以外は実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
実施例7
実施例1において、縦一軸配向光学用積層ポリエステルフィルムの片面に、塗布層a形成用塗布液(C−1)を塗布し、他面に塗布層b形成用塗布液(D−1)を塗布した後、フィルムの端部をクリップで把持して160℃に加熱された熱風ゾーンに導き、乾燥後、幅方向に3.6倍に延伸し、二軸配向積層ポリエステルフィルムを得た。
引き続き、熱固定工程では、延伸終了点から熱固定領域中に、図1のような三角形の冷却領域を設け、その冷却領域においては、熱風吹き出し口の間隔を幅方向に調整し、熱風吹き出し量を調整した。図1に示す延伸終了点から熱固定領域に設けた冷却ゾーンでのフィルム温度を120〜150℃、aと示した距離の通過時間を2.5秒とした。熱固定領域における前記の冷却領域以外の加熱領域においては、230℃の熱風でフィルムを5秒間熱処理した。さらに、この熱処理工程中で幅方向(TD方向)に3%の弛緩処理し、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。
なお、前記の光学用積層ポリエステルフィルムは、全幅が2400mmで、厚さが125μm、各塗布層の塗布量は0.01g/m2であった。
前記フィルムの全幅に対して中央位置1000mm(中心から±500mm)をロール状に巻取った後、1000mmを5当分して、それぞれの中央位置で、長手方向(縦方向)と幅方向における収縮応力値を測定した。実施例1と異なり、製品全幅からフィルムを採取し評価を実施したが、各サンプリング位置におけるフィルムの収縮応力は良好な範囲であった。
実施例8
実施例1で得た、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルムの中央部から採取したフィルムに対し、該フィルムの塗布層b(D−1側)に、下記に示す方法で近赤外線吸収層用塗布液(E−1)を塗布した。
<近赤外線吸収層の形成>
溶剤、樹脂、近赤外線吸収色素、および界面活性剤を、表2に示す組成で混合し、加温下(40℃)で、近赤外線吸収色素および樹脂を溶解した後、公称濾過精度が1μmのフィルターで未溶解物を除去して、塗布液(E−1)を調製した。得られた塗布液(E−1)は、固形分濃度が17質量%で、粘度が40cpsであった。
前記の塗布液(E−1)を、前記の光学用積層ポリエステルフィルムの塗布層bの表面に、乾燥後の塗布量が8.5g/m2 になるように塗布、乾燥し、近赤外線吸収層を有する近赤外線吸収フィルターを作製した。
なお、塗布は、直径60cmの斜線グラビアロールを、リバース回転させることで行った。また、乾燥は、温度40℃、風速5m/秒の熱風で20秒間乾燥させる工程(第1乾燥工程)、次いで、温度150℃、風速20m/秒の熱風で20秒間乾燥させる工程(第2乾燥工程)、さらに、温度90℃、風速20m/秒の熱風で10秒間冷却させる工程(冷却工程)を通過させて行った。
比較例1
前記のポリエステル水分散液(B−1)[80質量部]、水[150質量部]およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−6)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−6)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例2
ポリエステル水分散液(B−1)[64質量部]、ブロックイソシアネート基を有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、エラストロンH−3)[10質量部]、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)[1質量部]、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−7)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−7)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例3
ヒドロキシビス(ラクタト)チタンの44質量%溶液(松本製薬(株)製、TC310)[40質量部]、水[150質量部]、およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−8)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−8)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例4
ポリエステル水分散液(B−2)[32質量部]、ブロックイソシアネート基を有する自己架橋型ポリウレタン樹脂(第一工業製薬製、エラストロンH−3)[5質量部]、エラストロン用触媒(第一工業製薬製、Cat64)[0.5質量部]、酸化ニオブゾル[10質量%水溶液(多木化学(株)製、SAM−0)[64質量部]、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−9)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−9)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例5
固形分濃度20質量%のアクリル樹脂エマルジョン(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=60/40/2/4;質量比)80質量部]、ジ−n−ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン[3.2質量部]、水[150質量部]およびイソプロピルアルコール[100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−10)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−10)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例6
固形分濃度20質量%のアクリル樹脂エマルジョン(メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸/N−メチロールアクリルアミド=25/75/4/2:質量比)[48質量部]、チタン変性水性樹脂(松本製薬(株)製、オルガチックスWS680)[6.4質量部]、水[150質量部]およびイソプロピルアルコール100質量部]をそれぞれ混合し、さらにアニオン性界面活性剤(花王株式会社製、ネオペレックス No6Fパウダー;ドデシルベンゼンスルホン酸塩)をそれぞれ塗布液に対し1質量%、球状コロイダルシリカ微粒子(触媒化成工業製、カタロイドSI80P;平均粒径80nm)水分散液を樹脂固形分に対しシリカとして2質量%添加し、塗布液を調製した(以下、塗布液(C−11)と略記する)。
実施例1において、塗布層a形成用塗布液のみを塗布液(C−11)に変更すること以外は、実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例7
実施例1の溶融押出工程において、外層A及び外層CからのPETの供給を止め、中間層B用押出機のみから、紫外線吸収剤を含むPET組成物を供給して、紫外線吸収剤を含むPET組成物からなる単層の未延伸シートを得た。この単層の未延伸シートを用いること以外は実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルの塗布層aに、実施例1と同様の方法で、ハードコート層を積層し、ハードコートフィルムを得た。
比較例8
実施例1において、製品フィルムの幅方向の端部からフィルムを採取した以外は実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
比較例9
実施例1において、積層ポリエステルフィルムの中間層Bの原料として、紫外線吸収剤含有マスターバッチ(A)を用いず、固有粘度が0.62dl/gで、粒子を実質上含有しないポリエチレンテレフタレート樹脂のペレット(東洋紡績製、ME553)のみを使用し、かつ、溶融押出工程において、外層A及び外層CからのPETの供給を止め、中間層B用押出機のみから前記の中間層B用原料を供給したこと、すなわち単層の二軸配向PETフィルムとしたこと以外は実施例1と同様の方法で、片面に塗布層a、他面に塗布層bを有する光学用積層ポリエステルフィルム、およびそれを用いたハードコートフィルムを得た。
光学用積層ポリエステルフィルムの塗布層aの組成を表3に、光学用積層ポリエステルフィルム、ハードコートフィルム、及び近赤外線吸収フィルターの評価結果を表4に示す。