JP4117444B2 - ラミネート物の製造方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラミネート物の製造方法及び装置に係り、特に、ラミネート物の樹脂膜表面に生じるクレータの発生を抑制する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
写真印画紙用支持体等のラミネート物の製造には、走行する支持体に、押出ダイから押し出したポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の樹脂膜を、ニップローラと冷却ローラとの間のニップ点で被覆させると共にニップして圧着することにより、樹脂膜を支持体にラミネートする押出ラミネート方法(押出コーティング方法とも称す)が広く採用されている。
【0003】
このラミネート物の製造において、支持体にラミネートされた樹脂膜の表面に微細な細孔(以下、「クレータ」と称す)が生じることがある。そして、このクレータの数が多いと製品の外観が損なわれるだけでなく、ラミネート物を例えば写真印画紙用支持体として使用する場合には光沢感も低下するので、製品の価値が著しく低下する。クレータの発生は、冷却ローラが回転する際に発生する同伴空気の影響で樹脂膜と冷却ローラとの間のエリアに同伴空気が溜まり、樹脂膜に凹状のへこみができることが原因とされる。そして、ラミネート物を製造する際のライン速度が大きいほど、樹脂膜の厚みが薄いほど、押出ダイからの樹脂の吐出温度が低いほど、ニップ圧力が小さいほど、及び支持体表面粗さが粗いほどクレータが発生し易い。
【0004】
クレータ発生の防止対策として様々な検討がなされており、例えば特開平8−36238号公報のように樹脂の観点から検討されたもの、特開平4−81836号公報のように支持体の表面改良の観点から検討されたもの、特開平6─214342号公報のように工程条件を規定するようにしたもの、特開昭63−246227号のように、樹脂膜を透過し易いガスをニップ点の方向に吹きつける新しい設備を提案したものがある。
【0005】
【発明の解決する課題】
しかしながら、上記したクレーター発生の防止対策は、それなりに効果はあるものの、特にラミネート物を製造する際のライン速度を高速化する場合に十分な効果を得ることができないという問題があった。
【0006】
この場合、前記した特開昭63−246227号の設備の更なる改良として、遮風板を設けることが提案されているが、ライン速度が300m/分以上の高速領域に高速化した場合には効果が十分でなく、また遮風板が冷却ローラに接触すると冷却ローラを破損する虞も有る。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、クレータの発生を抑制して表面外観に優れたラミネート物を製造することができ、特にラミネート物製造のライン速度を上げた場合に有効なラミネート物の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成するために、走行する支持体の面に熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで支持体と樹脂膜とをニップしてラミネート物を製造する製造方法において、ニップ点からの前記冷却ローラの円弧距離を該冷却ローラの中心角で表した場合に90度以下になる位置に配置されたガス噴出ノズルから、前記樹脂膜に対して透過性を有するCO 2 ガス、O 2 ガス、H 2 Oガス、Heガスの何れかのガスを、冷却ローラ面に向けて垂直に吹付けることによりガスのカーテンを形成し、前記冷却ローラの回転に伴って前記ニップ点に同伴される同伴空気を遮断することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は前記目的を達成するために、走行する支持体の面に熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで支持体と樹脂膜とをニップしてラミネート物を製造する製造装置において、ニップ点からの前記冷却ローラの円弧距離を該冷却ローラの中心角で表した場合に90度以下になる位置に、前記樹脂膜に対して透過性を有するCO 2 ガス、O 2 ガス、H 2 Oガス、Heガスの何れかのガスを噴出してガスのカーテンを形成するガス噴出ノズルを設けると共に、該ガス噴出ノズルの向きは前記冷却ローラ面に対して垂直に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ガス噴出ノズルから樹脂膜に対して透過性のあるガスを冷却ローラ面に向けて吹付けてガスのカーテンを形成し、冷却ローラの回転に伴ってニップ点に向けて流れる同伴エアを遮断するようにした。これにより、クレータの発生を抑制でき、表面外観に優れたラミネート物を製造することができる。特に、ラミネート物製造のライン速度を上げてもクレータの発生を効果的に抑制でき、更にはクレータを顕著に減少できるので樹脂膜の膜厚をも薄くすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下添付図面に従って本発明に係るラミネート物の製造方法及び装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0012】
図1は、本発明におけるラミネート物の製造装置10の全体構成図である。
【0013】
図1に示すように、溶融状態の熱可塑性樹脂の樹脂膜12が押し出される押出ダイ14の下方には、冷却ローラ16とニップローラ18とが平行に隣接配置されると共に、冷却ローラ16を挟んでニップローラ18の反対側には、剥離ローラ20が冷却ローラ16に平行して隣接配置される。更に、ニップローラ18を挟んで冷却ローラ16の反対側には、バックアップローラ22が設けられる。そして、走行する帯状の支持体24は、冷却ローラ16とニップローラ18とが接するニップ点Pにおいて押出ダイ14から押し出された樹脂膜12が被覆されながらニップされる。樹脂膜12が被覆された支持体24は、樹脂膜側を冷却ローラ16面に接しながら走行して冷却され、剥離ローラ20により冷却ローラ16から剥離される。これによりラミネート物27が製造される。
【0014】
また、支持体24と樹脂膜12とのニップ点Pの近傍には、冷却ローラ16面に向けてガスを噴出するガス噴出ノズル26が設けられる。ガス噴出ノズル26から噴出するガスは、樹脂膜12に対して透過性を有するガス、例えばCO2 ガス,O2 ガス,H2 Oガス,Heガス等を使用することができる。ガス噴出ノズル26のノズル形状は、冷却ローラ16の幅方向に長いスロットル状に形成され、これにより噴出されたガスはノズル先端から冷却ローラ面に至るガスのカーテンを形成する。
【0015】
上記の如く構成されたラミネート物の製造装置10によれば、ガス噴出ノズル26から樹脂膜12に対して透過性のあるガスを冷却ローラ16面に向けて吹付けてガスのカーテンを形成し、冷却ローラ16の回転に伴ってニップ点Pに向けて流れる同伴エアを遮断し、透過性を有するガスに置換するようにした。これにより、樹脂膜12と冷却ローラ16とで囲まれたエリア28において、樹脂膜12の面にガスが同伴されても透過性を有するガスであれば、樹脂膜12にへこみを形成しにくくなるので、クレータの発生を効果的に抑制することができる。更には、同伴空気をガスのカーテンで遮断するので、従来の遮風板を使用した場合のように冷却ローラ16を破損することもない。
【0016】
このように、本発明は、クレータの発生を抑制でき、表面外観に優れたラミネート物27を製造することができる。特に、ライン速度が300m/分を超すような高速度領域でも、クレータ数の発生を効果的に抑制できるので、生産性を向上させることができる。更にはクレータを顕著に減少できることから樹脂膜12の膜厚をも薄くすることができ、これにより原材料費を削減することができる。また、本発明により、押出ダイ14の近傍もガス雰囲気になるため、ダイスジの発生も抑制される。
【0017】
このガス噴出ノズル26の設置において、図1に示すように、上記のニップ点Pの近傍の好ましい位置は、ガス噴出ノズル26から吹付けられる冷却ローラ16面の吹付け点Qからニップ点Pまでの冷却ローラ16の円弧距離(以下「ニップ点からの距離」という)を冷却ローラの中心角α(冷却ローラ16の中心Oとニップ点Pとを結ぶ線と、中心Oと吹付け点Qとを結ぶ線が成す角度)で表した場合に、90度以下であることが好ましく、80度以下が更に好ましい。ニップ点Pからの吹付け点Qまでの円弧距離が中心角において90度を超えると、吹付けたガスが拡散してしまい安定したガスのカーテンを形成できないので、効果が小さくなる。また、80度を超えると、ガスを排気する方法等により効果にバラツキが生じ易いので、80度以下が一層良い。また、ガスの冷却ローラ16面に対する吹付け角度βは、冷却ローラ16の中心方向、即ち冷却ローラ16面に垂直な方向から±20°以内、好ましくは±10°以内である。また、ガス噴出ノズル26の先端から冷却ローラ16面までの距離L(以下「冷却ローラからの距離」という)は、冷却ローラ16面に垂直方向の吹付け距離として50mm以下、更に好ましくは40mm以下である。冷却ローラ16からの距離が50mmを超えると、吹付けたガスが拡散してしまい安定したガスのカーテンを形成できないので、効果が小さくなる。更には、ガス噴出ノズル26から吹付けられるガスの流速は1m/秒以上が好ましく、2m/秒以上が一層好ましい。ガス流速が1m/秒未満では、吹付けたガスが拡散してしまい安定したガスのカーテンを形成できないので、効果が小さくなる。
【0018】
ガス噴出ノズル26のこれらの好ましい条件は、ラミネート物27を製造するライン速度が300m/分以上に高速化して冷却ローラ16の回転が速くなったときに特に有効である。これは製造ラインのライン速度が300m/分以上の極めて高速な場合には冷却ローラ16の同伴空気による影響が大きくなり、単に冷却ローラ16面に向けてガスを吹き出すだけでは同伴空気の遮断効果が十分に得られにくく、樹脂膜12と冷却ローラ16とで囲まれたエリア28において空気から一旦置換されたガスが乱流拡散により拡散してしまうからである。
【0019】
尚、本発明は、表面に凸凹のある冷却ローラで、この凸凹をラミネート物に転写する場合にも有効である。即ち、冷却ローラ16の表面に凸凹がある場合、凹部には同伴される空気が残っているが。しかし、本発明を実施することにより、この凹部の空気が透過性を有するガスに置換され、置換されたガスは樹脂膜を透過するので、冷却ローラ表面の凸凹がより明瞭に樹脂膜に転写される。従って、樹脂膜面が光沢面の場合でも、或いはマット面や絹目面等の各種の面種の品質を向上させることができる。
【0020】
【実施例】
次に、厚み175μm、幅300mmの帯状の支持体(原紙)の表面に、厚み25μmのポリエチレンをラミネートした実施例を表1により説明する。ライン速度としては、高速な300m/分と、更に高速な400m/分の2通りで行った。
【0021】
実施例1は、ライン速度300m/分において、ガス噴出ノズルからのCO2 ガスを冷却ローラ方向(表1では単に『ローラ面』と記載)吹付けたもので、CO2 ガスを風速3m/秒(風量:36リットル/分)、ニップ点からの距離を45度、冷却ローラからの距離を20mmになるようにして、本発明の条件を全て満足するように設定したものである。
【0022】
実施例2は、ライン速度を400m/分にした以外は実施例1と同様である。
【0023】
比較例1は、ガス噴出ノズルを設けずにライン速度を300m/分で行った場合である。
【0024】
比較例2は、ライン速度300m/分において、特開昭63−246227号に記載されたようにガス噴出ノズルからのガスをニップ点に向けて吹付けたものである。それ以外は実施例1と同様にして、ガスの吹付け方向のみが本発明を満足しないように設定したものである。
【0025】
比較例3は、冷却ローラからの距離を60mmになるようにした以外は実施例1と同様になるようにして、冷却ローラからの距離のみが本発明を満足しないように設定したものである。
【0026】
比較例4は、ニップ点からの距離を100度とした以外は実施例1と同様にして、ニップ点からの距離のみが本発明を満足しないように設定したものである。
【0027】
比較例5は、CO2 ガスを風速を0.5m/秒にした以外は実施例1と同様にして、ガス風速のみが本発明を満足しないように設定したものである。
【0028】
比較例6は、ライン速度を400m/分にした以外は比較例2と同様である。
【0029】
比較例7は、同伴空気の流れ方向からみて、ガス噴出ノズルの上流位置にウレタンゴム製の遮風板を設けた以外は比較例6と同様である。
【0030】
上記した実施例及び比較例の条件で製造したラミネート物について、樹脂膜1cm2 当たりのクレータ数を測定することにより評価した。評価結果は、表1に『クレータ結果』として示した。
【0031】
【表1】
【0032】
表1から分かるように、ガス噴出ノズルを設けないためにクレータ数が350個と極めて多い比較例1に対して、ニップ点方向にガスを吹付けた比較例2でのクレータ数は100まで低下した。そして、冷却ローラ面方向にガスを吹付けた実施例1のクレータ数は40まで顕著に低下した。このことは、ニップ点方向ヘのガス吹付けであってもクレータの抑制に効果はあるが、冷却ローラ面方向へのガス吹き付けにより一層効果を向上させることができる。これは、冷却ローラ面方向へガスを吹き付けることでガスのカーテンを形成し、これにより冷却ローラの回転に同伴する同伴空気を遮断することがクレータ発生の抑制に顕著な効果があることを意味している。
【0033】
実施例1のクレータ数40と、冷却ローラからの距離のみが本発明を満足しない比較例3のクレータ数200との対比から分かるように、ガスの吹付け位置を冷却ローラ面に近づけないと効果が小さくなり、具体的には冷却ローラ面から50mm以下である。
【0034】
実施例1のクレータ数40と、ニップ点からの距離のみが本発明を満足しない比較例4のクレータ数210との対比から分かるように、ニップ点からの距離を小さくとらないと効果が小さくなり、具体的には90度以下である。
【0035】
実施例1のクレータ数40と、ガス風速のみが本発明を満足しない比較例5のクレータ数190との対比から分かるように、ガス風速を大きくしないと効果が小さくなり、具体的には1m/秒以上である。この場合、比較例5のガス風速条件で実施例1と同じクレータ数まで減少させるためには、ラミネートするポリエチレンの厚みを35μmmまで厚くしなくてはならなかった。
【0036】
また、比較例2と比較例6との対比により、ライン速度が300m/分から400m/分に上昇すると、他の条件は同じでもクレータ数が100個から250個に急激に増加するが、その場合でも実施例2からわかるように、ガスの吹付け方向を冷却ローラ面に向けてガスのカーテンを形成させることで、クレータ数を50個まで減少させることができる。
【0037】
比較例6と比較例7との対比から、遮風板を設けることによりクレータ数を250個から115個まで減少させることはできるが、その場合でも実施例2のクレータ数40個までは減少できなかった。また、遮風板の場合には、遮風板と冷却ローラとの間に異物が付着すると、冷却ローラに細かい筋が発生してしまい、極端な場合には冷却ローラ面の表面加工をやり直さなくてはならなかった。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のラミネート物の製造方法及び装置によれば、クレータの発生を抑制でき、表面外観に優れたラミネート物を製造することができる。特に、ライン速度が300m/分を超すような高速度領域でも、クレータ数の発生を顕著に抑制できるので、生産性を向上させることができる。更にはクレータを顕著に減少できるので樹脂膜の膜厚をも薄くすることができこれにより原材料費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のラミネート物の製造装置の全体構成図
【符号の説明】
10…ラミネート物の製造装置、12…樹脂膜、14…押出ダイ、16…冷却ローラ、18…ニップローラ、20…剥離ローラ、22…バックアップローラ、24…支持体、26…ガス噴出ノズル、27…ラミネート物、28…エリア、P…ニップ点、Q…吹付け点、O…冷却ローラの中心
Claims (4)
- 走行する支持体の面に熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで支持体と樹脂膜とをニップしてラミネート物を製造する製造方法において、
ニップ点からの前記冷却ローラの円弧距離を該冷却ローラの中心角で表した場合に90度以下になる位置に配置されたガス噴出ノズルから、前記樹脂膜に対して透過性を有するCO 2 ガス、O 2 ガス、H 2 Oガス、Heガスの何れかのガスを、冷却ローラ面に向けて垂直に吹付けることによりガスのカーテンを形成し、前記冷却ローラの回転に伴って前記ニップ点に同伴される同伴空気を遮断することを特徴とするラミネート物の製造方法。 - 走行する支持体の面に熱可塑性樹脂の樹脂膜を被覆させながらニップローラと冷却ローラとで支持体と樹脂膜とをニップしてラミネート物を製造する製造装置において、
ニップ点からの前記冷却ローラの円弧距離を該冷却ローラの中心角で表した場合に90度以下になる位置に、前記樹脂膜に対して透過性を有するCO 2 ガス、O 2 ガス、H 2 Oガス、Heガスの何れかのガスを噴出してガスのカーテンを形成するガス噴出ノズルを設けると共に、該ガス噴出ノズルの向きは前記冷却ローラ面に対して垂直に配置されていることを特徴とするラミネート物の製造装置。 - 前記ガス噴出ノズルは、ノズル先端から前記冷却ローラ面までの距離が50mm以下になる位置に配置されることを特徴とする請求項2のラミネート物の製造装置。
- 前記ガス噴出ノズルは、該ノズルから吹き出されるガスの流速が1m/秒以上であることを特徴とする請求項2又は3のラミネート物の製造装置。
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