JP4116474B2 - 格闘技用保護具 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、格闘技用保護具に関し、特に、空手、少林寺拳法などの格闘技に使用され、主に顔面や頭部を保護する格闘技用保護具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の格闘技用保護具の一例が、たとえば実用新案登録第2579979号公報に記載されている。該公報には、頭部に装着される保護具本体と、該保護具本体の前面に設けられる顔面を保護するための面部とを備え、保護具本体と面部との間に、面部から保護具本体に伝達される衝撃力を吸収する衝撃力吸収手段を設けた格闘技用顔面保護具が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
実用新案登録第2579979号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実用新案登録第2579979号公報に記載された格闘技用顔面保護具では、保護具本体と後部間に衝撃を緩衝可能な部材が設置されていない。そのため、頭頂部近傍の保護を充分に行えないという問題があった。特に、投げ技が可能となり、上段蹴りが多くなされ得る状況下では、頭頂部近傍の保護は重要となる。
【0005】
そこで、本発明は、顔面や後頭部のみならず頭頂部をも保護することが可能となる格闘技用保護具を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る格闘技用保護具は、競技者などの装着者の顔面側に配置されるフェースマスク部と、フェースマスク部と接続され、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部にまで至る領域に宛がう頭部保護パッドとを備える。
【0007】
このように装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部にまで至る領域に宛がう頭部保護パッドを設けることにより、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部のみならず頭頂部から後頭部までを保護することができる。また、フェースマスク部により、装着者の顔面を保護することもできる。
【0008】
上記フェースマスク部は、装着者の額あるいはその近傍を保護する第1部分と、装着者の耳あるいはその近傍を保護する1対の第2部分と、装着者の顎あるいはその近傍を保護する第3部分とを有す。この場合、頭部保護パッドの一端は、第1部分と接続される。そして、格闘技用保護具は、フェースマスク部の第2部分同士を接続する第1接続具と、頭部保護パッドとフェースマスク部の第3部分とを接続する1対の第2接続具とをさらに備える。
【0009】
上記第3部分は、装着者の顎を保護する顎パッドを含み、該顎パッドと頭部保護パッドにおける後頭部保護部とを、該後頭部保護部の表面に間隔をあけて設置された1対の止め具にそれぞれ接続された1対の第2接続具で接続し、頭部保護パッドを、装着者の後頭部に宛がうように上下方向に延在させ、第1接続具を、装着者の首あるいは後頭部に宛がうように左右方向に延在させ、第2接続具を、第1接続具と交差するように装着者の耳の後方側から顎に向かうように斜め方向に延在させる。
【0010】
頭部保護パッドは、装着者の後頭部を保護可能な後頭部保護部と、該後頭部保護部とフェースマスク部の第1部分との間に配置され装着者の頭頂部上あるいはその近傍上に配置されるセンター部と、該センター部の両側に配置されセンター部との間に開口部を形成するように装着者の頭頂部と側頭部との間に位置する領域上を延在する第1と第2サイド部とを有する。
【0011】
上記センター部、第1および第2サイド部において装着者の頭部側に配置される表面に、センター部、第1および第2サイド部を装着者の頭部に沿って湾曲可能とする凹部を設けることが好ましい。
【0012】
上記フェースマスク部は、装着者の額を保護する額パッドと、装着者の側頭部および耳を保護する側頭部パッドと、装着者の顎を保護する顎パッドとを含むものであってもよい。この場合、額パッド、側頭部パッド、顎パッド、額パッドと側頭部パッドとの間、および側頭部パッドと顎パッドとの間の少なくとも一箇所に、フェースマスク部内のエアを外部に導くエア通路を設ける。つまり、額パッド、側頭部パッドおよび顎パッドの中の少なくとも1つのパッド自体にエア通路を設けてもよく、これらのパッド間の少なくとも一箇所にエア通路を設けてもよい。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態における格闘技用保護具について説明する。本実施の形態の格闘技用保護具は、たとえば空手や少林寺拳法のように顔面や頭部を保護する必要がある格闘技に使用可能である。
【0014】
本実施の形態における格闘技用保護具は、競技者などの装着者の顔面側に位置するフェースマスク部と、該フェースマスク部と接続される頭部保護パッドと、接続具とを備える。
【0015】
フェースマスク部は、装着者の顔面を覆うことが可能な大きさを有し、装着者の顔面を受け入れることが可能な凹状の形状を有する。また、フェースマスク部は、比較的硬質のマスク本体と、衝撃吸収材とを備え、装着者の額あるいはその近傍を保護する第1部分と、装着者の耳あるいはその近傍を保護する1対の第2部分と、装着者の顎あるいはその近傍を保護する第3部分とを含む。該フェースマスク部により、装着者の顔面を保護することができる。
【0016】
マスク本体は、装着者の顔面を実質的に覆い、前方が視認可能となるように、たとえばポリカーボネートなどの透明なプラスチックで形成される。マスク本体は、複数の開口部を有している。たとえば装着者の目の前方、口の前方、耳の側方に、単数あるいは複数の開口部を設けることが考えられる。目の前方の開口部は、主として視界を確保する機能を有する。それ以外の開口部は、主として通気孔として機能し、マスク本体が曇るのを抑制することができる。
【0017】
フェースマスク部の衝撃吸収材としては、たとえば装着者の顎を保護する顎パッド、装着者の額を保護する額パッド、装着者の側頭部および耳を保護する側頭部パッドなどを設けることが考えられる。各パッドは、たとえば衝撃を吸収可能な高分子材料で構成することができ、単層構造であってもよいが、複数の層を積層した積層構造であることが好ましい。顎パッドと額パッドは、複数の高分子材料の層を積層した積層構造で構成することが好ましく、側頭部パッドは、比較的軟質の高分子材料の単層構造で構成すればよい。
【0018】
複数の高分子材料を積層して各パッドを形成する場合、マスク本体側(外側)に相対的に硬質の高分子材料の層を配置し、装着者側(内側)に相対的に軟質の高分子材料の層を配置することが好ましい。
【0019】
たとえば、顎パッドを、マスク本体側に位置する顎パッド本体と、装着者側に位置する第1スペーサとで構成した場合に、顎パッド本体の硬度を第1スペーサの硬度よりも高くし、額パッドを、マスク本体側に位置する額パッド本体と、装着者側に位置する第2スペーサとで構成した場合に、額パッド本体の硬度を第2スペーサの硬度よりも高くすることが考えられる。このような構造を採用することにより、打撃などによる衝撃を吸収可能としながらフィット感をも向上することができる。
【0020】
なお、パッド本体とスペーサとを、ともに複数の高分子材料を積層した材質(多層材)で構成してもよい。たとえば、パッド本体とスペーサとに同じベース素材を使用し、パッド本体を、該ベース素材と、衝撃吸収性に優れた素材とを積層した多層材で構成し、スペーサを、上記ベース素材と、やわらかくフィット性に優れた素材とを積層した多層材で構成することが考えられる。具体的には、ベース素材としてHard EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)を使用し、パッド本体を、該Hard EVAと、VS-1(ポリスチレンとビニル−ポリイソプレンとのトリブロック共重合体)との積層材で構成し、スペーサを、Hard EVAと、Soft EVAとの積層材で構成することが考えられる。
【0021】
また、2種類の高分子材料を用いてパッド本体やスペーサを作製する場合、相対的に硬質の高分子材料の厚みt1と、相対的に軟質の高分子材料の厚みt2との比率を、t1:t2=2:1〜3:1程度とすることが考えられる。このように硬質材の割合を相対的に高くすることにより、衝撃吸収性を高く維持しながらフィット感を向上することができる。なお、硬質材の厚みt1を軟質材の厚みt2の4倍以上とすることも当然に可能である。この場合には、衝撃吸収性をさらに向上することができる。
【0022】
他方、パッド本体をHard EVAとVS-1とで構成した場合に、Hard EVAとVS-1の割合を0:1〜1:1とし、スペーサをHard EVAとSoft EVAとで構成した場合に、Hard EVAととSoft EVAの割合を1:1〜6:1とすることも可能である。
【0023】
ここで、EVA、Hard EVA、Soft EVAおよびVS-1の物性を下記の表1および表2に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0004116474
【0025】
【表2】
Figure 0004116474
【0026】
表2のデータは、厚さ20mmの試験片に10kgの重錘を60mmの高さから10回落下させた場合の平均値である。また、表2において、「衝撃吸収率」とは、運動エネルギーを音や熱エネルギーに変換することにより素材が吸収する割合のことである。また「最大衝撃加速度」とは、緩衝材用落下衝撃試験機:型式CST−180C(吉田精機(株)製)を用いて、重錘が素材に接触した際に発生する、重錘を減速させる方向の加速度を1/20000秒単位で測定した時の最大の加速度のことであり、打撃によるダメージの指標として用いる。「硬度」とは、SRIS0101(日本ゴム協会標準規格)にある膨張ゴム用スプリング式硬さ試験機(=アスカーC型)で測定した硬度のことである。「最大沈下量」とは、衝撃を受けた時に凹む量のことである。
【0027】
なお、表2において、Soft EVAは主にフィット性向上のために使用しているので、硬度以外の各種値は省略している。また、VS−1は、クラレ社製ハイブラーの銘柄の1つであるが、表1,2に示すVS−1は、発泡倍率や架橋材を変化させることで物性値を制御したものである。
【0028】
上記のフェースマスク部における額パッド、側頭部パッド、顎パッド、額パッドと側頭部パッドとの間、および側頭部パッドと顎パッドとの間の少なくとも一箇所に、フェースマスク部内のエアを外部に導くエア通路を設けることが好ましい。額パッド、側頭部パッドおよび顎パッドの中の少なくとも1つのパッド自体にエア通路を設けてもよく、これらのパッド間の少なくとも一箇所にエア通路を設けてもよい。エア通路の数は任意に選択可能であるが、複数のエア通路を設けることが好ましい。たとえば、フェースマスク部の外周に沿ってほぼ均等に複数のエア通路を設けることが考えられる。
【0029】
パッドにエア通路を設ける場合には、パッドの表面を選択的に凹ませ、一端から他端に達する凹部(溝部)を設ければよい。また、パッド間にエア通路を設ける場合、パッド間にフェースマスク部の周囲の空間(外部空間)に連通する隙間を設け、該隙間をエア通路として機能させればよい。なお、上記のエア通路と、フェースマスク部の周囲の空間とを連通させるように、エア通路上に位置するマスク本体に開口部を設けてもよい。
【0030】
上記のようなエア通路を設けることにより、装着者が吐く息や、装着者の皮膚から放散される汗を含んだ熱気などをフェースマスク部内から外部に放出することができ、マスク本体が曇るのを抑制することができる。
【0031】
頭部保護パッドは、上述のようにフェースマスク部と接続されるが、接続具を用いてフェースマスク部と接続してもよく、フェースマスク部の一部と一体的に形成されてもよい。たとえば、フェースマスク部のマスク本体と頭部保護パッドとを、接続具を用いて接続したり、フェースマスク部の額パッドから連続して頭頂部側に延びるように頭部保護パッドを設けることが考えられる。
【0032】
頭部保護パッドは、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部にまで延在し、装着者の前頭部あるいはその近傍から後頭部にまで至る領域に宛がわれる。つまり、該頭部保護パッドは、装着者の前頭部あるいはその近傍上から連続して頭頂部上あるいはその近傍上に達する部分と、頭頂部上あるいはその近傍上に位置する部分と、頭頂部から連続して後頭部にまで達する部分とを備える。これらの部分は、一体の部材で形成してもよく、別部材を連結して形成してもよい。このような頭部保護パッドを採用することにより、装着者の額上部から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部までを保護することができる。
【0033】
頭部保護パッドの一端は、たとえばベルトなどの接続具を介して、装着者の額あるいはその近傍を保護するフェースマスク部の第1部分と接続される。より詳しくは、頭部保護パッドの一端は、フェースマスク部のマスク本体と接続される。
【0034】
頭部保護パッドは、装着者の頭頂部上あるいはその近傍上に間隔をあけて配置される1対の帯状部材を有するものであってもよいが、好ましくは、装着者の頭頂部上あるいはその近傍上に配置されるセンター部と、装着者の頭頂部と側頭部との間の部分上に配置される複数のサイド部と、装着者の後頭部を保護する後頭部保護部を有する。サイド部は、好ましくは、センター部の両側に均等に配置され、センター部との間に開口部を形成するように装着者の頭頂部と側頭部との間に位置する領域上を延在する。サイド部の数は任意に選択可能であるが、格闘技用保護具の装着容易性などに鑑み、センター部の両側に1対のサイド部を設けることが好ましい。
【0035】
このように頭部保護パッドがセンター部とサイド部とを有するので、本実施の形態の格闘技用保護具を装着した際に、装着者の頭頂部およびその近傍の複数箇所を頭部保護パッドによって締め付けることができる。したがって、格闘技用保護具を安定して装着者の頭部に固定することができ、格闘技用保護具の装着後のずれを抑制することができる。また、該頭部保護パッドによって、頭頂部のみならず、頭頂部と側頭部との間の部分も保護することができる。
【0036】
センター部とサイド部との間に形成される開口部の形状は、センター部とサイド部がともに装着者の頭部に沿うものであれば任意に選択可能である。たとえば略長円形状や略三日月状に類似した細長い形状であってセンター部とサイド部の長手方向に開口部の長手方向が向くような形状とすることが考えられる。
【0037】
上記センター部およびサイド部において装着者の頭部側に配置される表面に、センター部およびサイド部を装着者の頭部に沿って湾曲可能とする凹部を設けることが好ましい。それにより、センター部およびサイド部が変形し易くなり、センター部およびサイド部を装着者の頭部に沿わせ易くなり、センター部やサイド部の浮き上がりを抑制して所望の接触面積を確保することができる。
【0038】
上記の凹部としては、たとえばセンター部およびサイド部の長手方向と直交する方向である幅方向あるいは長手方向に対して傾斜した方向である斜め方向に延在し、センター部およびサイド部の幅方向両端に達する溝部を挙げることができる。
【0039】
センター部に設ける溝部は、典型的には、センター部が装着者の頭頂部に沿って湾曲可能となるように上記幅方向と実質的に平行な方向に延在し、サイド部に設ける溝部は、サイド部が頭頂部と側頭部との間の部分に沿って湾曲可能となるように上記斜め方向に延在することが好ましい。
【0040】
また、サイド部に設ける溝部は、サイド部の外側(センター部から離れた側)の変形量が内側(センター部側)の変形量よりも多くなるように、外側の側面における開口幅を内側の側面における開口幅よりも大きくすることが好ましい。
【0041】
センター部およびサイド部に設ける溝部の数は任意に設定可能であるが、複数の溝部を設けることが好ましい。それにより、センター部およびサイド部を、より装着者の頭部に沿って湾曲させ易くすることができる。また、該溝部を設けることにより、装着者の頭部とセンター部やサイド部との間に隙間を設けることができ、センター部やサイド部下において生じ得る熱気や汗を外部に導くこともできる。
【0042】
上述のように頭部保護パッドは後頭部保護部を有しており、頭部保護パッドのセンター部とサイド部は、典型的には、該後頭部保護部から互いに異なる方向に延びる複数の帯状部材により構成される。この後頭部保護部を有することで、装着者の後頭部をも保護することができる。また、該後頭部保護部を介してフェースマスク部と頭部保護パッドとを接続することで、装着者の前頭部あるいはその近傍から頭頂部およびその近傍を経由して後頭部に至るまでの部分を頭部保護パッドで包み込むような状態となり、あらゆる方向からの頭部への衝撃に対応することができ、かつしっかりと格闘技用保護具を装着することができる。
【0043】
センター部の長手方向の端部とサイド部の長手方向の端部とは、互いに接続される。このとき、センター部とサイド部の分岐部からのセンター部とサイド部の長さを同程度あるいはサイド部をセンター部よりも短くすることにより、センター部とサイド部の端部同士を接続した際に、サイド部を湾曲させることができる。つまり、2次元パーツで3次元形状が得られることとなる。このようにサイド部を湾曲させることにより、サイド部を装着者の頭部における頭頂部と側頭部との間の部分に沿って延在させることができる。このことも、装着者の顔面および頭部への格闘技用保護具の安定した装着に効果的に寄与し得る。
【0044】
また、頭部保護パッドの後頭部保護部に開口部を設けることも考えられる。それにより、後頭部保護部を、装着者の後頭部に沿うように湾曲させ易くなる。このことも、格闘技用保護具の安定した装着に貢献し得る。さらに、後頭部保護部の浮き上がりを抑制して装着者の後頭部との所望の接触面積を確保することもできる。
【0045】
以上のようにパッドの適切な位置に開口部を設けることで、パッド形状を適切に湾曲させて装着者の頭部に沿わせることができるばかりでなく、該開口部を通して汗や熱気を大気中に放散することもできる。したがって、パッドの内側に熱気がこもるのを回避することもできる。
【0046】
本実施の形態の格闘技用保護具は、上述のように接続具を有している。該接続具としては、たとえばフェースマスク部の端部同士を接続する第1接続具と、頭部保護パッドとフェースマスク部とを接続する第2接続具とを挙げることができる。
【0047】
接続具としては、たとえば天然繊維製、化学繊維製、革製(人工皮革や合成皮革)あるいはゴムなどの弾性部材で構成されるベルト(帯状部材)を使用可能である。該接続具は、長さ調整具を有することが好ましい。長さ調整具としては、面ファスナやバックルなどを使用可能である。このように長さ調整具を有することにより、ベルトの長さを調整することができ、ベルトによる締付力を調整して所望の締付力で格闘技用保護具を装着することができる。
【0048】
第1接続具は、たとえばフェースマスク部において装着者の耳あるいはその近傍を保護する1対の第2部分同士を接続する。第1接続具をフェースマスク部に取り付けるには、フェースマスク部の1対の第2部分にそれぞれ貫通孔を設け、該貫通孔に第1接続具を直接あるいは間接的に固定すればよい。第1接続具を間接的にフェースマスク部に固定するには、フェースマスク部に止め具を設け、該止め具を介して第1接続具をフェースマスク部に取り付けることが考えられる。該第1接続具は、好ましくは、装着者の首の後方側あるいは後頭部に沿って左右方向に延在する。
【0049】
第2接続具は、たとえばフェースマスク部において装着者の顎あるいはその近傍を保護する第3部分と頭部保護パッドとを接続する。該フェースマスク部の第3部分は装着者の顎を保護する顎パッドを含み、該顎パッドと頭部保護パッドとを第2接続具で接続することが好ましい。それにより、装着者の顎と頭部とを一体的に締付けることができ、安定した格闘技用保護具の装着および格闘技用保護具のフィット感向上に寄与し得る。
【0050】
第2接続具をフェースマスク部に取り付けるには、たとえば頭部保護パッドと顎パッドに止め具を設け、該止め具を介して第2接続具を頭部保護パッドと顎パッドに取付ければよい。また、顎パッドに直接貫通孔を設け、該貫通孔に第2接続具を挿通するようにしてもよい。この第2接続具は、好ましくは、装着者の耳の後方側から顎に向かう斜め方向に延在する。
【0051】
上述の構造を有する本実施の形態の格闘技用保護具を装着するには、フェースマスク部を顔面に装着し、頭部保護パッドを頭部に装着した後、第1と第2接続具でフェースマスク部の第2部分同士と、頭部保護パッドと顎パッドとを接続するとともに該第1と第2接続具の長さを調節して締付力を調節するだけでよい。
【0052】
このようにフェースマスク部と頭部保護パッドとを装着した後に、第1と第2接続具の締付動作を行なうだけで格闘技用保護具を装着することができるので、容易に格闘技用保護具を装着することができる。また、頭部保護パッドは装着者の後頭部に沿って上下方向に延在し、第1接続具は左右方向に延在し、第2接続具は斜め方向に延在するので、5方向の締付けを行なうことができ、格闘技用保護具を強固に装着者に固定することができ、装着後の位置ずれを抑制することもできる。
【0053】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図1〜図7を用いて説明する。
【0054】
図1および図2に示すように、本実施例における格闘技用保護具1は、フェースマスク部2と、頭部保護パッド3と、接続具10a〜10cとを備える。
【0055】
フェースマスク部2は、図1〜図3に示すように、ポリカーボネート製の透明なマスク本体と、側頭部パッド5と、顎パッド6と、額パッド7とを備える。マスク本体は、凹状の形状を有し、装着者の目の前方に開口部9、装着者の耳の近傍に開口部11、装着者の口の近傍に開口部12を備える。
【0056】
マスク本体に、紐などを介して側頭部パッド5、顎パッド6および額パッド7を取り付ける。側頭部パッド5は、図1の例では装着者の顎の近傍にまで達しており、Soft EVAで構成される。それにより、格闘技用保護具1を装着した際に耳が痛くなるのを回避することができる。
【0057】
側頭部パッド5には、図1および図2に示すように、エア通路8b,8cを設ける。該エア通路8b,8cは、側頭部パッド5の幅方向全体にわたって延在し、フェースマスク部2の内部空間と外部空間とを連通させる。
【0058】
顎パッド6は、顎パッド本体6aと、第1スペーサ6bとを含む。顎パッド本体6aは、Hard EVAとVS-1との積層材で構成され、第1スペーサ6bは、Hard EVAとSoft EVAとの積層材で構成される。そして、たとえば前方から顎パッド本体6aのHard EVA、VS-1、第1スペーサ6bのHard EVA、Soft EVAの順で配置される。顎パッド本体6aにおけるHard EVAの厚みは3mm〜5mm程度であり、VS-1の厚みは10mm〜12mm程度である。該顎パッド本体6aにおけるHard EVAとVS-1との厚みの比率は、1:3である。第1スペーサ6bにおけるHard EVAの厚みは7mm〜15mm程度であり、Soft EVAの厚みは3mm〜5mm程度である。該第1スペーサ6bにおけるHard EVAとSoft EVAとの厚みの比率は、3:1である。
【0059】
顎パッド本体6aは、衝撃吸収性に優れているので、打撃を受けた際の衝撃を効率的に吸収することができる。また、第1スペーサ6bは、比較的軟質の材料で構成され、第1スペーサ6bを設けることで顎パッド本体6aと装着者の顎間の隙間を低減することができ、フェースマスク部2のフィット感を向上させることができる。
【0060】
額パッド7は、額パッド本体7aと、第2スペーサ7bとを含む。額パッド本体7aは、Hard EVAとVS-1との積層材で構成され、第2スペーサ7bは、Hard EVAとSoft EVAとの積層材で構成される。Hard EVAとVS-1との厚みおよびその比率ならびにHard EVAとSoft EVAとの厚みおよびその比率は、顎パッド6の場合と同様である。したがって、顎パッド6の場合と同様の効果が得られる。
【0061】
図1および図6に示すように、額パッド7と側頭部パッド5との間に間隙を設け、該間隙をエア通路8dとして機能させる。また、顎パッド本体6aと側頭部パッド5間にも間隙を設け、該間隙をエア通路8aとして機能させる。なお、図1、図2および図6における矢印は、エアの流れる方向を示している。
【0062】
頭部保護パッド3は、図1,図2および図6に示すように、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部にまで延在する。該頭部保護パッド3は、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部までを保護する機能を有する。
【0063】
図7(a),(b)に、頭部保護パッド3の平面図および裏面図を示す。図7(a),(b)に示すように、頭部保護パッド3は、装着者の頭頂部上あるいはその近傍上に配置されるセンター部3aと、装着者の頭頂部と側頭部との間の部分上に配置される第1と第2サイド部3b,3cと、装着者の後頭部を保護する後頭部保護部3dとを有する。該頭部保護パッド3は、Hard EVAとVS-1との積層材あるいはHard EVAとSoft EVAとの積層材で構成される。
【0064】
センター部3a、第1および第2サイド部3b,3cは、後頭部保護部3dから種々の延びるように設けられる。第1と第2サイド部3b,3cは、センター部3aの両側に配置され、センター部3aよりも短くする。また、第1と第2サイド部3b,3cは、センター部3aと間隔をあけて設けられ、センター部3aと所定角度をなすように斜め方向に延在する。
【0065】
図7(a)に示すように、頭部保護パッド3の表面(外側に向けられる表面)に、複数の凹部14aを設ける。他方、図7(b)に示すように、頭部保護パッド3の裏面(装着者の頭部側に配置される表面)にも、複数の凹部14bを設ける。該凹部14a,14bを設けることで、センター部3a、第1および第2サイド部3b,3cを湾曲させ易くすることができる。
【0066】
図2に示すように、後頭部保護部3dの表面には、1対の止め具13を取り付ける。該止め具13は環状部材を含み、該止め具13内に後述する接続具を挿通することにより、接続具が頭部保護パッド3に固定される。
【0067】
なお、図7(a),(b)の例では、後頭部保護部3dの中央部近傍に略三角形状の開口部15cを形成している。また、第1と第2サイド部3b,3cの先端部は、センター部3aの先端部と接続される。
【0068】
第1と第2サイド部3b,3cの先端部と、センター部3aの先端部とを接続した状態を、図1〜図6に示している。図1〜図6に示すように、頭部保護パッド3のセンター部3aと第1および第2サイド部3b,3cとは、全体として湾曲した形状となる。
【0069】
また、図5に示すように、格闘技用保護具1の装着状態においては、センター部3aと第1および第2サイド部3b,3cとの間に開口部15a,15bが形成される。第1および第2サイド部3b,3cは、開口部15a,15bが形成される部分においてはセンター部3aと離隔しており、センター部3aに対し若干斜めに傾斜しながらさらに湾曲している。その結果、センター部3aと第1および第2サイド部3b,3cとは、ともに装着者の頭部に沿うこととなり、これらの外表面によって規定される仮想の曲面は、装着者の頭頂部およびその近傍の表面形状と近似した形状となる。なお、開口部15cは、装着者の後頭部の一部を露出させる。
【0070】
図1,図3,図5,図6に示すように、頭部保護パッド3の一端は、接続具10aを介してフェースマスク部2と接続される。接続具10aとしては、人工皮革や合成皮革製のベルトを使用している。より詳しくは、フェースマスク部2のマスク本体および頭部保護パッド3に貫通孔を設け、各貫通孔に接続具10aを挿通してループ状とし、面ファスナなどの固定部材兼長さ調整具を用いて接続具10aの端部を接続具10a自体に固定する。
【0071】
図2および図4に示すように、頭部保護パッド3の他端側に位置する後頭部保護部3dは、接続具10cを介して顎パッド6と接続される。本例では、顎パッド6に貫通孔を設け、該貫通孔および止め具13に接続具10cを挿通してループ状とし、面ファスナなどの固定部材兼長さ調整具を用いて接続具10cの端部を接続具10c自体に固定する。
【0072】
図2に示すように、接続具10bは、フェースマスク部2のマスク本体において装着者の耳およびその近傍を覆う後方側端部にそれぞれ貫通孔を設け、各貫通孔に人工皮革や合成皮革製の部材をそれぞれ挿通してループ状とし、該ループ状部材をそれぞれ環状部材に挿通し、図4に示すようにフェースマスク部2のマスク本体に止め具を取り付ける。そして、この止め具間を接続するように双方の環状部材に接続具10bを挿通してループ状とし、面ファスナなどの固定部材兼長さ調整具を用いて接続具10bの端部を接続具10b自体に固定する。
【0073】
図4に示すように、接続具10bは装着者の首の後方側あるいは後頭部に沿って左右方向に延在し、接続具10cは装着者の耳の後方側から顎に向かう斜め方向に延在する。また、頭部保護パッド3は装着者の後頭部に沿って上下方向に延在する。したがって、全ての接続具10a〜10cを用いて各部を接続することにより、結果的に5方向の締付状態を実現することができる。
【0074】
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施例の特徴的構成を適宜組合せることも可能である。また、今回開示した実施の形態および実施例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の格闘技用保護具は、フェースマスク部と、頭頂部上あるいはその近傍上に延在する頭部保護パッドとを備えているので、装着者の顔面および後頭部のみならず頭頂部をも保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1における格闘技用保護具を前方から見た斜視図である。
【図2】 本発明の実施例1における格闘技用保護具を後方から見た斜視図である。
【図3】 本発明の実施例1における格闘技用保護具の正面図である。
【図4】 本発明の実施例1における格闘技用保護具の背面図である。
【図5】 本発明の実施例1における格闘技用保護具の平面図である。
【図6】 本発明の実施例1における格闘技用保護具の側面図である。
【図7】 (a)は、本発明の実施例1における格闘技用保護具の頭部保護パッドの平面図であり、(b)は、(a)に示す頭部保護パッドの裏面図である。
【符号の説明】
1 格闘技用保護具、2 フェースマスク部、3 頭部保護パッド、3a センター部、3b 第1サイド部、3c 第2サイド部、3d 後頭部保護部、5側頭部パッド、6 顎パッド、6a 顎パッド本体、6b 第1スペーサ、7額パッド、7a 額パッド本体、7b 第2スペーサ、8a〜8d エア通路、9,11,12,15a〜15c 開口部、10a〜10c 接続具、13 止め具、14a,14b 凹部。

Claims (3)

  1. 装着者の顔面側に配置され、装着者の額あるいはその近傍を保護する第1部分と、装着者の耳あるいはその近傍を保護する1対の第2部分と、装着者の顎あるいはその近傍を保護する第3部分とを有するフェースマスク部(2)と、
    一端が前記フェースマスク部(2)の前記第1部分と接続され、装着者の後頭部を保護可能な後頭部保護部(3d)と、該後頭部保護部(3d)と前記フェースマスク部(2)の前記第1部分との間に配置され装着者の頭頂部上あるいはその近傍上に配置されるセンター部(3a)と、該センター部(3a)の両側に配置され前記センター部(3a)との間に開口部(15a,15b)を形成するように装着者の頭頂部と側頭部との間に位置する領域上を延在する第1と第2サイド部(3b,3c)とを有し、装着者の前頭部あるいはその近傍上から頭頂部上あるいはその近傍上を経由して後頭部にまで至る領域に宛がう頭部保護パッド(3)と、
    前記第2部分同士を接続する第1接続具(10b)と、
    前記頭部保護パッド(3)と前記第3部分と接続する1対の第2接続具(10c)とを備え、
    前記第3部分は、装着者の顎を保護する顎パッド(6)を含み、
    前記顎パッド(6)と前記頭部保護パッド(3)における前記後頭部保護部(3d)とを、該後頭部保護部(3d)の表面に間隔をあけて設置された1対の止め具(13)にそれぞれ接続された前記1対の第2接続具(10c)で接続し、
    前記第1接続具(10b)を、装着者の首あるいは後頭部に宛がうように左右方向に延在させ、
    前記第2接続具(10c)を、前記第1接続具(10b)と交差するように装着者の耳の後方側から顎に向かうように斜め方向に延在させた、格闘技用保護具。
  2. 前記センター部(3a)、前記第1および第2サイド部(3b,3c)において装着者の頭部側に配置される表面に、前記センター部(3a)、前記第1および第2サイド部(3b,3c)を装着者の頭部に沿って湾曲可能とする凹部(14b)を設けた、請求項に記載の格闘技用保護具。
  3. 前記フェースマスク部(2)の前記第1〜第3部分は、装着者の額を保護する額パッド(7)と、装着者の側頭部および耳を保護する側頭部パッド(5)と、装着者の顎を保護する前記顎パッド(6)とを含み、
    前記額パッド(7)、前記側頭部パッド(5)、前記顎パッド(6)、前記額パッド(7)と前記側頭部パッド(5)との間、および前記側頭部パッド(5)と前記顎パッド(6)との間の少なくとも一箇所に、前記フェースマスク部(2)内のエアを外部に導くエア通路(8a〜8d)を設けた、請求項1または請求項2に記載の格闘技用保護具。
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