JP4115425B2 - 再構成ヒト抗hm1.24抗体 - Google Patents
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Description
骨髄腫は、モノクローナルな形質細胞(骨髄腫細胞)の骨髄内集積を特徴とする腫瘍性疾患である。骨髄腫は免疫グロブリンを産生分泌する終末分化B 細胞、すなわち形質細胞がモノクローナルに主として骨髄に増加する疾患で、血清中にモノクローナルな免疫グロブリンもしくはその構成成分であるL 鎖、H 鎖などが検出される(小阪昌明ら、日本臨床 (1995) 53, 91-99 )。
骨髄腫の治療としては、これまで化学療法剤等が使用されているが、骨髄腫を寛解に導き、骨髄腫患者の生存期間を延長するような有効な治療剤は見いだされておらず、骨髄腫の治療効果を有する薬剤の登場が待たれていた。
得られるキメラ抗体はもとのマウス抗体の可変領域を完全な形で含有するので、もとのマウス抗体と同一の特異性をもって抗原に結合することが期待できる。さらに、キメラ抗体ではヒト以外に由来するアミノ酸配列の比率が実質的に滅少しており、それ故にもとのマウス抗体に比べて免疫原性が低いと予想される。キメラ抗体はもとのマウスモノクローナル抗体と同等に抗原に結合しそして免疫原性が低いが、それでもなおマウス可変領域に対する免疫応答が生ずる可能性がある(LoBuglio,A.F.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,4220−4224,l989)。
Queen et al., Proc.Natl.Acad.Sci. USA (1989) 86, 10029-10033にはWO90-07861と同じ内容が記載されている。この文献にはWO90-07861の方法にしたがってもヒト型化抗体の元のマウス抗体の約1/3 の活性しか得られなかったことが記載されている。すなわち、WO90-07861の方法自体が元のマウス抗体と同程度の活性を有する完全なヒト型化抗体を作製することができないことを示している。
Kettleborough et al., Protein Eng. (1991) 4, 773-783には、アミノ酸残基を置換することによりマウス抗体からいくつかのヒト型化抗体を作製したことを記載している。しかしながら、WO90-07861に記載のAnti-Tac抗体のヒト型化方法で示唆された以上のアミノ酸残基の置換が必要だった。
これらの文献が示すのは、WO90-07861に記載されたヒト型化抗体の作製方法はその中に記載されたAnti-Tac抗体のヒト型化にのみ適用可能な技術であること、及びその技術を使用しても元のマウス抗体と同程度の活性を得ることはできないことである。
前記のごとく、ヒト型化抗体は療法目的のために有用であると予想されるが、ヒト型化抗HM1.24抗体は知られておらず、示唆もなされていない。また、ヒト型化抗体の製造方法において任意の抗体に普遍的に適用し得る画一的な方法は存在せず、特定の抗原に対して十分な結合活性、結合阻害活性および中和活性を示すヒト型化抗体を作製するためには種々の工夫が必要である(例えば、Sato,K.ら、Cancer Res.,53,85l−856,l993)。
すなわち、本発明はまた、
ヒト軽(L)鎖定常領域(C領域)、及び抗HM1.24抗体のL鎖可変(V)領域を含んでなるキメラL鎖、並びにヒト重(H)鎖C領域、及び抗HM1.24抗体のH鎖V領域を含んでなるキメラH鎖を提供する。
本発明はまた、
(1)ヒトL鎖C領域、及び抗HM1.24抗体のL鎖V領域を含んでなるL鎖;並びに
(2)ヒトH鎖C領域、及び抗HM1.24抗体のH鎖V領域を含んでなるH鎖;
を含んでなるキメラ抗体を提供する。
(1)ヒトL鎖V領域のフレームワーク領域 (FR) 、及び
(2)抗HM1.24抗体のL鎖V領域のCDR、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成(reshaped)ヒトL鎖V領域;並びに、
(1)ヒトH鎖V領域のFR、及び
(2)抗HM1.24抗体のH鎖V領域のCDR、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトH鎖V領域;
を提供する。
(1)ヒトL鎖C領域、並びに
(2)ヒトL鎖FR、及び抗HM1.24抗体のL鎖CDRを含んでなるL鎖V領域、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトL鎖;並びに
(1)ヒトH鎖C領域、並びに
(2)ヒトH鎖FR、及び抗HM1.24抗体のH鎖CDRを含んでなるH鎖V領域、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトH鎖;
を提供する。
(A)(1)ヒトL鎖C領域、及び
(2)ヒトL鎖FR、及び抗HM1.24抗体のL鎖CDRを含んでなるL鎖V領域、を含んでなるL鎖;並びに
(B)(1)ヒトH鎖C領域、及び
(2)ヒトH鎖FR、及び抗HM1.24抗体のH鎖CDRを含んでなるH鎖V領域、を含んでなるH鎖;
を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒト抗体、
を提供する。
本発明はさらに、
(1)ヒトL鎖C領域;及び
(2)抗HM1.24抗体のL鎖V領域;を含んでなる、キメラL鎖をコードするDNA;並びに
(1)ヒトH鎖C領域;及び
(2)抗HM1.24抗体のH鎖V領域を含んでなる、キメラH鎖をコードするDNA;
を提供する。
(2)抗HM1.24抗体のL鎖V領域のCDR、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトL鎖V領域をコードするDNA;並びに
(1)ヒトH鎖V領域のFR、及び
(2)抗HM1.24抗体のH鎖V領域のCDR、を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトH鎖V領域をコードするDNA;
を提供する。
(1)ヒトL鎖C領域;並びに
(2)ヒトL鎖FR、及び抗HM1.24抗体のL鎖CDRを含んでなるL鎖V領域;を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトL鎖をコードするDNA;並びに
(1)ヒトH鎖C領域;並びに
(2)ヒトH鎖FR、及び抗HM1.24抗体のH鎖CDRを含んでなるH鎖V領域;を含んでなる抗HM1.24抗体の再構成ヒトH鎖をコードするDNA;
を提供する。
本発明はさらに、上記種々のDNAのいずれかを含んで成るベクターを提供する。
本発明はさらに、上記のベクターにより形質転換された宿主細胞を提供する。
本発明はさらに、抗HM1.24抗体の再構成ヒト抗体の製造方法であって、前記再構成ヒトL鎖をコードするDNAを含んでなる発現ベクター及び前記構成ヒトH鎖をコードするDNAを含んでなる発現ベクターにより同時形質転換された宿主細胞を培養し、そして目的とする抗体を回収する、ことを含んでなる方法を提供する。
本発明はさらに、配列番号:103 に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを特異的に認識するキメラ抗体を有効成分として含有する医薬組成物、及び配列番号:103 に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドを特異的に認識する再構成ヒト抗体を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。医薬組成物としては、特に骨髄腫治療剤を提供する。
(1)マウス抗HM1.24モノクローナル抗体のV領域をコードするDNA のクローニング
mRNAの調製
マウス抗HM1.24モノクローナル抗体のV領域をコードするDNAのクローニングを行うため、回収されたハイブリドーマから公知の方法、例えばグアニジン−超遠心法(Chirgwin,J.M.ら、Biochemistry、(1979)、18、5294−5299)、AGPC法(Chomczynski,Pら(1987)、162、156−159)等により全RNAを調製し、mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)添付のOligo(dT)−cellulose spun column等によりmRNAを調製する。また、QuickPrep mRNA Purification Kit(Pharmacia社製)を用いることにより、全RNAの抽出操作を経ずに、mRNAの調製を行うこともできる。
上記mRNAの調製で得たmRNAから、逆転写酵素を用いてL鎖及びH鎖のV領域におけるcDNAをそれぞれ合成する。L鎖V領域のcDNAの合成は、AMV Reverse Transcriptase First−Strand
cDNA Synthesis Kitを用いて行う。合成したcDNAの増幅は抗体遺伝子のリーダー配列及びC領域とハイブリダイズする適当なプライマー(例えば配列番号29−39で表される塩基配列を有するMKVプライマー及び配列番号40で表わされる塩基配列を有するMKCプライマー)を用いることが出来る。
PCR産物について、公知手法に従ってアガロースゲル電気泳動を行い、目的とするDNA断片を切り出した後、DNAの回収及び精製を行い、ベクターDNAに連結する。
DNAの精製は、市販のキット(例えばGENECLEAN II; BIO101) を用いて行われる。DNA断片を保持するためのベクターDNAには公知のもの(例えばpUC19 、Bluescript等) を用いることができる。
H鎖V領域およびL鎖V領域は、抗原結合部位を形成し、その全般の構造は互いに類似性を有している。すなわち、それぞれ4つのフレームワーク領域(FR)が3つの超可変領域、すなわち相補性決定領域(CDR)により連結されている。FRのアミノ酸配列は、比較的よく保存されているが、一方、CDR領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat,E.A.ら、「Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept. Health and Human Services,1983)。
このような事実に基づき、マウス抗HM1.24モノクローナル抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベース(「Sequence of Proteins of Immunological Interest」 US Dept. Health and Human Services,1983)にあてはめて、相同性を調べることによりCDR領域を見いだすことが出来る。
マウスモノクローナル抗体のマウスL鎖及びH鎖V領域をコードするDNA断片がクローニングされれば、これらのマウスV領域をヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結して発現させることによってキメラ抗HM1.24抗体が得られる。
キメラ抗体を作製するための基本的な方法は、クローニングされたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列を、哺乳類細胞発現ベクター中にすでに存在するヒト抗体C領域をコードする配列に連結することを含んで成る。あるいは、クローニングされたcDNAに存在するマウスリーダー配列及びV領域配列をヒト抗体C領域をコードする配列に連結した後、哺乳類細胞発現ベクターに連結することを含んで成る。
キメラ抗体の製造のためには2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製する。次に、これらの発現ベクターにより哺乳類細胞のごとき宿主細胞を同時形質転換し、そして形質転換された細胞をインビトロ又はインビボで培養してキメラ抗体を製造する(例えばWO91−16928)。
キメラ抗体のH鎖発現ベクターは、マウスH鎖V領域をコードするcDNAを、ヒト抗体のH鎖C領域をコードするゲノムDNAまたはcDNAを含む適当な発現ベクターに導入することにより得ることが出来る。H鎖C領域としては例えばCγ1、Cγ2、Cγ3あるいはCγ4が挙げられる。
H鎖C領域としてCγ1のゲノムDNAを有している発現ベクターとしては、例えばHEF−PMh−gγ1(国際特許出願公開番号WO92/19759参照)あるいはDHFR−△E−RVh−PM1f(国際特許出願公開番号WO92/19759参照)を用いることが出来る。
こうして構築したマウスH鎖V領域をコードするcDNAを適当な制限酵素で処理して、上記発現ベクターに挿入して、Cγ1ゲノムDNAを含むキメラH鎖発現ベクターを構築する。
H鎖C領域としてCγ1のcDNAを有している発現ベクターは、以下のようにして構築することができる。すなわち、ヒト型化PM1抗体H鎖V領域およびヒト抗体H鎖C領域Cγ1のゲノムDNA(N. Takahashi, et al., Cell 29, 671-679 1982 )をコードする発現ベクターDHFR−△E−RVh−PM1f(国際特許出願公開番号WO92/19759参照)とヒト型化PM1抗体L鎖V領域およびヒト抗体L鎖κ鎖C領域のゲノムDNAをコードする発現ベクターRVl−PM1a(国際特許出願公開番号WO92/19759参照)を導入したCHO細胞からmRNAを調製し、RT−PCR法でヒト型化PM1抗体H鎖V領域及びヒト抗体H鎖C領域Cγ1を含むcDNAをクローニングし、適当な動物細胞発現用ベクターに適当な制限酵素部位を利用することで連結し構築できる。
2)キメラ抗体L鎖の構築
キメラ抗体のL鎖発現ベクターは、マウスL鎖V領域をコードするcDNAと、ヒト抗体のL鎖C領域をコードするゲノムDNAまたはcDNAとを連結し、適当な発現ベクターに導入することにより得ることが出来る。L鎖C領域としては例えばκ鎖あるいはλ鎖が挙げられる。
マウスL鎖V領域をコードするcDNAを含む発現ベクターを構築するためには、PCR法により適当な塩基配列を導入することが出来る。例えば、5’−末端に適当な制限酵素の認識配列と、翻訳効率をよくするためのKozakコンセンサス配列を有するように設計したPCRプライマー、及び、3’−末端に適当な制限酵素の認識配列を有するように設計したPCRプライマーを用いてPCRを行うことで、これら適当な塩基配列を導入する。
(1)再構成ヒト抗HM1.24抗体V領域の設計
マウスモノクローナル抗体のCDRがヒト抗体に移植されている再構成ヒト抗体を作製するためには、マウスモノクローナル抗体のFRとヒト抗体のFRとの間に高い相同性が存在することが望ましい。従って、マウス抗HM1.24抗体のL鎖及びH鎖のV領域を、Protein Data Bankを用いて構造が解明されているすべての既知抗体のV領域と比較する。
マウス抗HM1.24抗体のL鎖V領域は既知ヒト抗体L鎖V領域との比較において、ヒト抗体L鎖V領域のサブグループIの一つであるヒト抗体REIのL鎖V領域に67.0%の相同性を示す。従って、再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖V領域の作製のための出発材料としてREIのFRを使用した。
しかしながら、ヒト抗体HG3のFR4のアミノ酸配列は記述されていないために、FR4に関してはマウス抗HM1.24抗体のH鎖のFR4と最も高い相同性を示すヒト抗体JH6(Ravetch,J.V.ら、Cell,27,583−591)のFR4のアミノ酸配列を用いた。JH6のFR4は一つのアミノ酸を除いてマウス抗HM1.24抗体のH鎖のFR4と同一のアミノ酸配列を有する。
再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖を、PCR法によるCDRグラフティングにより作製する。この方法を図4に模式的に示す。ヒト抗体REI由来のFRを有する再構成ヒト抗HM1.24抗体(バージョンa)作製のために8個のPCRプライマーを使用する。外部プライマーA(配列番号:47)及びH(配列番号:48)は、HEF発現ベクターHEF−VL−gκのDNA配列とハイブリダイズするように設計する。
PCR生成物A−L1A(215bp)、L1S−L2A(98bp)、L2S−L3A(140bp)及びL3S−H(151bp)を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、第二PCRでアッセンブリする。第二PCRにおいては、各第一PCRの生成物及び各外部プライマー(A及びH)を用いる。
第二PCRにより生じた516bpのDNA断片を1.5%低融点アガロースゲルで精製し、BamHI及びHindIII で消化し、得られたDNA断片をHEF発現ベクターHEF−VL−gκにクローニングする。DNA配列決定の後、再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖V領域の正しいアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをHEF−RVLa−AHM−gκと命名した。本プラスミドHEF−RVLa−AHM−gκに含まれるL鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:9に示す。
プラスミドHEF−RVLa−AHM−gκを鋳型とし、上記プライマーを用いて増幅した後、最終生成物を精製し、BamHIおよびHindIII で消化し、得られたDNA断片をHEF発現ベクターHEF−VL−gκにクローニングし、プラスミドHEF−RVLb−AHM−gκを得る。本プラスミドHEF−RVLb−AHM−gκに含まれるL鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:10に示す。
3-1. 再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域バージョンa−eの作製
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域をコードするDNAを次の様にして設計することができる。ヒト抗体HG3のFR1〜3およびヒト抗体JH6のFR4をコードするDNA配列を、マウス抗HM1.24抗体H鎖V領域のCDRをコードするDNA配列とつなげることにより、再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域をコードする全長DNAを設計する。
次に、このDNA配列のそれぞれ5′−側及び3′−側にHindIII 認識部位/KOZAKコンセンサス配列及びBamHI認識部位/スプライスドナー配列を付加して、HEF発現ベクターに挿入できるようにする。
4個のオリゴヌクレオチド配列RVH1〜RVH4を配列番号:57〜60に示す。これらのオリゴヌクレオチドは119〜144塩基の長さを有し、25〜26bpのオーバラップ領域を有する。オリゴヌクレオチドの内のRVH2(配列番号:58)、RVH4(配列番号:60)はセンスDNA配列を有し、そして他のRVH1(配列番号:57)、RVH3(配列番号:59)はアンチセンスDNA配列を有する。これら4個のオリゴヌクレオチドのPCR法によるアセンブリーの方法を図に示す(図5参照)。
増幅した438bpのDNA断片を精製し、HindIII 及びBamHIにより消化し、そして次にHEF発現ベクターHEF−VH−gγ1にクローニングする。DNA配列決定の後、正しいH鎖V領域のアミノ酸配列をコードするDNA断片を含むプラスミドをHEF−RVHa−AHM−gγ1と命名した。本プラスミドHEF−RVHa−AHM−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:11に示す。
バージョンbは、変異原プライマーとして66位のアルギニンがリジンに変異するように設計したBS(配列番号:63)およびBA(配列番号:64)を用い、プラスミドHEF−RVHa−AHM−gγ1を鋳型DNAとして、PCR法により増幅し、プラスミドHEF−RVHb−AHM−gγ1を得る。本プラスミドHEF−RVHb−AHM−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:12に示す。
バージョンdは、変異原プライマーとして66位のアルギニンがリジンに、73位のトレオニンがリジンに変異するように設計したDS(配列番号:67)およびDA(配列番号:68)を用い、プラスミドHEF−RVHa−AHM−gγ1を鋳型DNAとしてプラスミドHEF−RVHd−AHM−gγ1を得る。本プラスミドHEF−RVHd−AHM−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:14に示す。
H鎖ハイブリッドV領域を構築することにより、ヒト型化抗体V領域のどのFRが、ヒト型化抗体の結合活性および結合阻害活性に寄与するかを調べることができる。構築した2種類のうち、1つはFR1とFR2のアミノ酸配列がマウス抗HM1.24抗体由来であり、FR3とFR4のアミノ酸配列が再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖V領域のバージョンa由来となるもの(マウス・ヒトハイブリッド抗HM1.24抗体)、もう1つはFR1とFR2のアミノ酸配列が再構成ヒト抗HM1.24のH鎖V領域のバージョンa由来であり、FR3とFR4のアミノ酸配列がマウス抗HM1.24抗体由来となるもの(ヒト・マウスハイブリッド抗HM1.24抗体)である。CDR領域のアミノ酸配列はすべてマウス抗HM1.24抗体由来である。
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域の各バージョンf、g、h、i、j、k、l、m、n、o、p、q、r及びsを以下のようにして作製する。なお、再構成するヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域のバージョンf以降の各バージョンを作製する際、置換するアミノ酸残基の抗体分子中での位置を推察するために、前記の通りマウス抗HM1.24抗体V領域の立体構造モデルを構築することができる。
バージョンiは、変異原プライマーとして83位のアルギニンがアラニンに、84位のセリンがフェニルアラニンに変異するように設計したIS(配列番号:82)およびIA(配列番号:83)を用い、プラスミドHEF−RVHh−AHM−gγ1を鋳型DNAとして増幅し、プラスミドHEF−RVHi−AHM−gγ1を得る。本プラスミドHEF−RVHi−AHM−gγ1に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:19に示す。
なお、作製したL鎖V領域のアミノ酸配列を表1に示し、H鎖V領域のアミノ酸配列を表2〜4に示す。
キメラ抗体あるいは再構成ヒト抗体の製造のためには、前記のようなそれぞれ2種類の発現ベクター、すなわちエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでマウスH鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでマウスL鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、またはエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域による制御のもとでヒト型化H鎖V領域及びヒトH鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクター、並びにエンハンサー/プロモーター系のごとき発現制御領域のもとでヒト型化L鎖V領域及びヒトL鎖C領域をコードするDNAを含んで成る発現ベクターを作製する。
以上のようにして目的とするキメラ抗体あるいは再構成ヒト抗体をコードする遺伝子で形質転換した形質転換体を培養し、産生したキメラ抗体あるいは再構成ヒト抗体は、細胞内または細胞外から分離し均一にまで精製することができる。
(1)抗体の濃度測定
精製抗体の濃度の測定は、ELISA または吸光度の測定により行う。
抗体濃度測定のためのELISAプレートを次のようにして調製する。ELISA用96穴プレート(例えばMaxisorp, NUNC )の各穴を例えば1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgG抗体100μlを固相化する。
抗原結合活性の測定は、ヒト羊膜細胞株WISH(ATCCCCL25)を用いたCell−ELISAで行うことができる。Cell−ELISAプレートは次のようにして調製する。96穴プレートに10%ウシ胎児血清を含有するPRMI1640培地により適切な濃度に調製したWISH細胞を加え、一晩培養した後、PBS(−)で2回洗浄後0.1%グルタルアルデヒド(ナカライテスク社製)にて固定する。
室温にて1時間インキュベーションおよび洗浄の後、基質溶液を加えインキュベーションする。次いで、6N硫酸50μlで反応を停止させ、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad社製)を用いて490nmでの吸光度を測定する。
ビオチン標識マウス抗HM1.24抗体による結合阻害活性は、ヒト羊膜細胞株WISH(ATCCCCL25)を用いたCell−ELISAで行うことができる。Cell−ELISAプレートは上記(2)に従い調製できる。96穴プレートに10%ウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地により適切な濃度に調製したWISH細胞を加え、一晩培養した後、PBS(−)で2回洗浄後0.1%グルタルアルデヒド(ナカライテスク社製)にて固定する。
室温にて1時間インキュベーションした後洗浄し、基質溶液を加えインキュベーションした後6N硫酸50μlで反応を停止させ、MICROPLATE READER Model 3550(Bio−Rad社製)用いて490nmでの吸光度を測定する。
本発明のキメラ抗体あるいは再構成ヒト抗体のADCC活性は、次のようにして測定することができる。まず、ヒトの抹消血や骨髄より比重遠心法で単核球を分離し、エフェクター細胞として調製する。また、ヒト骨髄腫細胞、例えば、RPMI 8226細胞(ATCC CCL 155)を51Crにより標識して、標的細胞として調製する。次いで、標識した標的細胞にADCC活性を測定するキメラ抗体あるいは再構成ヒト抗体を加えインキュベートし、その後、標的細胞に対し適切な比のエフェクター細胞を加えインキュベートする。
また、抗体C領域にADCC活性あるいはCDC活性を期待する場合、抗体C領域としてヒトCγ1、ヒトCγ3を用いることができる。さらに、抗体C領域のアミノ酸を一部付加、改変、修飾することにより、より強力なADCC活性あるいはCDC活性を誘導することができる。
本発明のキメラ抗HM1.24抗体あるいは再構成ヒト抗HM1.24抗体は、ラジオアイソトープ等の標識化合物と結合させることにより、骨髄腫体内診断薬として用いることができる。
さらには、キメラ抗HM1.24抗体あるいは再構成ヒト抗HM1.24抗体の断片、例えばFab、F(ab′)2 、FvまたはH鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)とラジオアイソトープ等の標識化合物を結合させたものも、同様に骨髄腫体内診断薬として用いることができる。
上記の骨髄腫体内診断薬は、非経口的に全身に投与することができる。
医薬組成物および骨髄腫治療剤
本発明のキメラ抗体HM1.24抗体あるいはヒト型化抗HM1.24抗体の治療効果を確認するには、前記抗体を骨髄腫細胞を移植された動物に投与し、抗腫瘍効果を評価することにより行われる。
また、評価する抗腫瘍効果の確認は、血清中のヒトイムノグロブリン量の変化、腫瘍体積・重量の測定、尿中のヒトベンズジョーンズタンパク質量の変化あるいは動物の生存期間等に従い行うことができる。
有効投与量は、一回につき体重1kg あたり0.01mgから1000mgの範囲で選ばれる。あるいは、患者あたり5mg/body、好ましくは50-100mg/body の投与量を選ぶことができる。
本発明のキメラ抗HM1.24抗体あるいは再構成ヒト抗HM1.24抗体を有効成分として含む医薬組成物および骨髄腫治療剤は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
実施例1. マウス抗HM1.24抗体可変領域をコードするcDNAのクローニング
1. メッセンジャーRNA (mRNA)の単離
マウス抗HM1.24抗体を産生する2 x 108 個のハイブリドーマ細胞(FERM BP−5233)からFast Track mRNA Isolation Kit Version 3.2 (Invitrogen社製)を用いてキット添付の指示書に従い、mRNAの単離を行った。
Thermal Cycler(Perkin Elmer Cetus社製)を用いてPCR を行った。
2-1. マウスL 鎖V 領域をコードする遺伝子の増幅および断片化
単離したmRNAよりAMV Reverse Transcriptase First-strand cDNA Synthesis Kit (Life Science社製)を用いて一本鎖cDNAを合成し、PCR に用いた。また、PCR 法に使用するプライマーは、マウスカッパ型L 鎖リーダー配列とハイブリダイズする配列番号:29〜39に示すMKV (Mouse Kappa Variable)プライマー(Jones, S. T. ら、Bio/Technology, 9, 88-89, (1991))を用いた。
マウスH 鎖V 領域をコードする遺伝子は5'-RACE 法(Rapid Amplification of cDNA ends; Frohman, M.A. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 8998-9002, (1988) 、Edwards, J.B.D.M.,ら、Nucleic Acids Res., 19, 5227-5232, (1991) )により増幅した。マウスIgG2a 定常領域に特異的にハイブリダイズするプライマーP1(配列番号;41)を用いてcDNAを合成した後、5'-AmpliFINDER RACE KIT (CLONETECH 社製)を用いてマウスH 鎖V 領域をコードするcDNAの増幅をマウスIgG2a 定常領域に特異的にハイブリダイズするプライマーMHC2a (配列番号:42)およびキット添付のアンカープライマー(配列番号:77)を用いて行った。増幅したDNA 断片を低融点アガロース(Sigma 社製)にて精製し、そしてEcoRI (宝酒造社製)およびXmaI(New England Biolabs 社製)により37℃にて消化した。
上記のようにして調製したマウスカッパ型L 鎖V 領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA 断片を、SalIおよびXmaIで消化することにより調製したpUC19 ベクターと、50 mM Tris-HCl (pH7.6)、10 mM MgCl2 、10 mM ジチオスレイトール、1 mM ATP、50 mg/mlのポリエチレングリコール(8000)および1ユニットT4 DNAリガーゼ(GIBCO-BRL 社製)を含有する反応混合物中で、16℃にて2.5 時間反応させ連結した。同様にマウスH 鎖V 領域をコードする遺伝子を含んで成るDNA 断片を、EcoRI およびXmaIで消化することにより調製したpUC19 ベクターと16℃にて3 時間反応させ連結した。
こうして得られた、抗HM1.24抗体を産生するハイブリドーマに由来するマウスカッパ型L 鎖V 領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをpUCHMVL9と命名した。上記の方法に従って得られた、抗HM1.24抗体を産生するハイブリドーマに由来するマウスH 鎖V 領域をコードする遺伝子を含有するプラスミドをpUCHMVHR16と命名した。
前記のプラスミド中のcDNAコード領域の塩基配列を、自動DNA シークエンサー(Applied Biosystem Inc.製)およびTaq Dye Deoxy Terminator Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystem Inc. 製)を用いて、メーカー指定のプロトコールに従って塩基配列を決定した。
プラスミドpUCHMVL9に含まれるマウス抗HM1.24抗体のL 鎖V 領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:1に示す。また、プラスミドpUCHMVHR16に含まれるマウス抗HM1.24抗体H 鎖V 領域をコードする遺伝子の塩基配列を配列番号:2に示す。
L 鎖およびH 鎖のV 領域の全般的構造は、互いに類似性を有しており、それぞれ4つのフレームワーク部分が3つの超可変領域、すなわち相補性決定領域(CDR )により連結されている。フレームワークのアミノ酸配列は、比較的良く保存されているが、一方CDR 領域のアミノ酸配列の変異性は極めて高い(Kabat, E.A., ら、「Sequences of Proteins of Immunological Interest 」US Dept. Health and Human Services, 1983)。
このような事実に基づき、抗HM1.24抗体の可変領域のアミノ酸配列をKabat らにより作製された抗体のアミノ酸配列のデータベースに当てはめて、相同性を調べることによりCDR 領域を表5に示すごとく決定した。
1.発現ベクターの作製
キメラ抗HM1.24抗体を発現するベクターを作製するため、それぞれのマウス抗HM1.24抗体L 鎖およびH 鎖V 領域をコードするcDNAクローンpUCHMVL9およびpUCHMVHR16をPCR 法により修飾した。そしてHEF 発現ベクター(国際特許出願公開番号WO92-19759参照)に導入した。
PCR 生成物を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製し、HindIII およびBamHI で消化し、そしてL 鎖V 領域についてはHEF-VL-gκに、H 鎖V 領域についてはHEF-VH-gγ1 にそれぞれクローニングした。DNA 配列決定の後、正しいDNA 配列を有するDNA 断片を含むプラスミドをそれぞれHEF-1.24L-gκ及びHEF-1.24H-gγ1 と命名した。
なお、それぞれのプラスミドpUC19-1.24L-gκ又はpUC19-1.24H-gγ1 を含有する大腸菌は、それぞれ、Escherichia coli DH5α(pUC19-1.24L-gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19-1.24H-gγ1 )と称し、それぞれFERM BP-5646及びFERM BP-5644として、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成8年8月29日にブダペスト条約に基づき国際寄託された。
キメラ抗HM1.24抗体の一過性発現を観察するため、前記発現ベクターをCOS-7(ATCC CRL-1651 )細胞において試験した。HEF-1.24L-gκ及びHEF-1.24H-gγ1 をGene Pulser 装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS-7細胞に同時形質転換した。各DNA (10μg )を、PBS 中1 x 107 細胞/ml の0.8ml のアリコートに加え、1500V、25μFの容量にてパルスを与えた。
室温にて10分間の回復期間の後、エレクトロポレーション処理された細胞を、10%のγ−グロブリンフリーウシ胎児血清を含有するDMEM培養液(GIBCO 社製)30 ml に加えた。CO2 インキュベーターBNA120D (TABAI 社製)中で72時間のインキュベーションの後、培養上清を集め、遠心分離により細胞破片を除去し、これを以下の実験に用いた。
キメラ抗HM1.24抗体の抗原結合活性は、KPMM2細胞を用いたFCM (フローサイトメトリー)解析で行った。4.7 x 105 個のKPMM2細胞(特許出願公開番号 特開平7-236475)をPBS(−) で洗浄した後、上記キメラ抗HM1.24抗体産生COS-7細胞培養液50μlおよびFACS緩衝液(2 %ウシ胎児血清、0.1 %アジ化ナトリウム含有PBS(-))50μl 、または500 μg/mlの精製マウス抗HM1.24抗体 5μl およびFACS緩衝液95μl を加え、氷温下1時間インキュベートした。
1. キメラH 鎖発現ベクターの作製
前記プラスミドHEF-1.24H-gγ1 を制限酵素PvuIおよびBamHI にて消化し、EF1 プロモーターおよびマウス抗HM1.24抗体H 鎖V 領域をコードするDNA を含む約2.8kbpの断片を1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製した。次に、DHFR遺伝子およびヒトH 鎖定常領域をコードする遺伝子を含むヒトH 鎖発現ベクターDHFR- △E-RVh-PM1f(国際特許出願公開番号WO92/19759参照)に使用されている発現ベクターをPvuIおよびBamHI にて消化することにより調製した約6kbpの断片内に上記DNA 断片を挿入し、キメラ抗HM1.24抗体H 鎖発現ベクター DHFR-△E-HEF-1.24H-gγ1 を構築した。
キメラ抗HM1.24抗体安定産生系を樹立するために、PvuIで消化して直鎖状にした前記発現ベクターHEF-1.24L-gκおよび DHFR-△E-HEF-1.24H-gγ1 をエレクトロポレーション法により前述と同様(前記COS-7 細胞へのトランスフェクション)の条件下で同時にCHO 細胞DXB11 (Medical Research Council Collaboration Center より供与)に遺伝子導入した。
遺伝子導入したCHO 細胞は500 μg/mlのG418(GIBCO-BRL 社製)および10% のウシ胎児血清を添加したヌクレオシド不含α-MEM培養液(GIBCO-BRL 社製)中ではL 鎖およびH 鎖発現ベクターが共に導入されたCHO 細胞のみが生存でき、それらを選別した。次に、上記培養液中に10 nM のMTX (Sigma 社製)を加え、増殖したクローンの内、キメラ抗HM1.24抗体の産生量が高いものを選択した結果、約20μg/mlのキメラ抗体産生効率を示すクローン#8-13 を得、キメラ抗HM1.24抗体産生細胞株とした。
キメラ抗HM1.24抗体の作製は以下の方法で行った。上記キメラ抗HM1.24抗体産生CHO 細胞を、培地として5%γ−グロブリンフリー新生仔ウシ血清(GIBCO-BRL 社製)含有 Iscove's Modified Dulbecco's Medium(GIBCO-BRL 社製)を用い、高密度細胞培養装置Verax system 20 (CELLEX BIOSCIENCE Inc.社製)で30日間連続培養した。
キメラ抗HM1.24抗体は下記の結合阻害活性にて評価を行った。
1. 結合阻害活性の測定
1-1. ビオチン標識抗HM1.24抗体の作製
マウス抗HM1.24 抗体を0.1 M 重炭酸緩衝液で4 mg/ml に希釈した後、50 mg/mlのBiotin-N- hydroxy succinimide(EY LABS Inc.社製)4 μl を添加し、室温で3 時間反応させた。その後、0.2 M グリシン溶液1.5 mlを加え室温で30分間インキュベートし反応を停止させ、PD-10 カラム(Pharmacia Biotech 社製)を用いてビオチン化IgG 画分を分取した。
ビオチン標識マウス抗HM1.24抗体による結合阻害活性は、ヒト羊膜細胞株WISH細胞(ATCC CCL 25 )を用いたCell-ELISAで行った。Cell-ELISA プレートは次のようにして調製した。96穴プレートに10%ウシ胎児血清を含有するRPMI1640培地により4 x 105 細胞/ml に調製したWISH細胞懸濁液100 μl を加え、一晩培養した後、PBS(-)で2回洗浄後0.1 %グルタルアルデヒド(ナカライテスク社製)にて固定した。
その結果、図2に示す通り、ビオチン標識マウス抗HM1.24抗体に対してキメラ抗HM1.24抗体はマウス抗HM1.24抗体と同等の結合阻害活性を示した。このことより、キメラ抗体はマウス抗HM1.24抗体と同じV 領域を有することが示された。
ADCC(Antibody-dependent Cellular Cytotoxicity)活性の測定はCurrent protocols in Immunology, Chapter 7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons, Inc., 1993の方法に従った。
1. エフェクター細胞の調製
健常人および多発性骨髄腫患者の末梢血および骨髄より比重遠心法で単核球を分離した。すなわち健常人および多発性骨髄腫患者の末梢血および骨髄に等量のPBS(-)を加え、Ficoll(Pharmacia 社製)- Conrey(第一製薬社製)(比重1.077 )に積層し、400 g で30分間遠心した。単核球層を分取し、10% ウシ胎児血清(Witaker 社製)を含むRPMI1640(Sigma 社製)で2回洗浄後、同培養液で細胞数が5 x 106/mlになるように調製した。
ヒト骨髄腫細胞株RPMI 8226 (ATCC CCL 155)を0.1mCiの51Cr-sodium chromateとともに10% ウシ胎児血清(Witaker 社製)を含むRPMI1640(Sigma 社製)中で37℃にて60分インキュベートすることにより放射性標識した。放射性標識の後、細胞をHanks balanced salt solution (HBSS) で3回洗浄し、2 x 105/mlに調製した。
96ウエルU 底プレート(Corning 社製)に放射性標識した2 x 105/mlの標的細胞を50μl と、アフィニティー精製によって得られた1 μg/mlのキメラ抗HM1.24抗体、マウス抗HM1.24抗体、あるいはコントロールヒトIgG1(Serotec 社製)50μl 加え、4 ℃で15分間反応させた。
その後、5 x 106/mlのエフェクター細胞を100 μl を加え、炭酸ガス培養器内で4 時間培養した。その際、エフェクター細胞(E )と標的細胞(T )の比(E:T )を 0:1、:5:1、20:1又は50:1とした。
図3に示す通り、ヒトコントロールIgG1と比較してキメラ抗HM1.24抗体を添加した場合、E:T 比の上昇に従い細胞障害活性が上昇したことから、このキメラ抗HM1.24抗体がADCC活性を有することが示された。さらに、マウス抗HM1.24抗体を添加しても細胞障害活性は全く見られないことから、エフェクター細胞がヒト由来の細胞の場合、ADCC活性を得るためにはヒト抗体のFc部分が必要であることが示された。
1. 再構成ヒト抗HM1.24抗体V領域の設計
マウスモノクローナル抗体のCDR がヒト抗体に移植されている再構成ヒト抗体を作製するためには、マウスモノクローナル抗体のFRとヒト抗体のFRとの間に高い相同性が存在することが望ましい。従って、マウス抗HM1.24抗体のL鎖及びH鎖のV領域を、Protein Data Bank を用いて構造が解明されているすべての既知抗体のV領域と比較した。
マウス抗HM1.24抗体のL鎖V領域は既知ヒト抗体L鎖V領域との比較において、ヒトL鎖V領域のサブグループIの一つであるヒトL鎖V領域REI に67.0%の相同性を示した。従って、再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖V領域の作製のための出発材料としてREI のFRを使用した。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖V領域の第一のバージョンaにおいて、ヒトFR1 中の30位およびヒトFR3 中の71位のアミノ酸をマウス抗HM1.24抗体のアミノ酸と同一とした以外、FR1 からFR3 まではヒトHG3 のFR1 からFR3 と同一であり、そしてCDR はマウス抗HM1.24抗体のH鎖V領域中のCDR と同一とした。
再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖を、PCR 法によるCDR グラフティングにより作製した。この方法を図4に模式的に示す。ヒト抗体REI 由来のFRを有する再構成ヒト抗HM1.24抗体(バージョンa)の作製のために8個のPCR プライマーを使用した。外部プライマーA(配列番号:47)及びH(配列番号:48)は、HEF 発現ベクターHEF-VL-gκのDNA 配列とハイブリダイズするように設計された。
CDR −グラフティングプライマーL1S (配列番号:49)、L2S (配列番号:50)及びL3S (配列番号:51)はセンスDNA 配列を有し、そしてCDR −グラフティングプライマーL1A (配列番号:52)、L2A (配列番号:53)及びL3A (配列番号:54)はアンチ−センスDNA 配列を有しそしてそれぞれプライマーL1S 、L2S 及びL3S の5′−末端のDNA 配列に対する相補的DNA 配列(20〜23bp)を有する。
PCR 生成物A-L1A (215bp )、L1S-L2A (98bp)、L2S-L3A (140bp )及びL3S-H (151bp )を1.5 %低融点アガロースゲルを用いて精製し、第二PCR でアッセンブリした。第二PCR においては、1μg の各第一PCR の生成物、及び5uのAmpli Taq を含有する98μl のPCR 混合物を、94℃にて2分間、55℃にて2分間及び72℃にて2分間で2サイクルインキュベートし、そして次に100 pmole の各外部プライマー(A及びH)を加えた。PCR チューブを50μl の鉱油で覆い、そして前記と同一の条件で30サイクルのPCR を行った。
再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖V領域のバージョンbを、PCR を用いる変異誘発法によって作製した。変異原プライマーFTY-1 (配列番号:55)およびFTY-2 (配列番号:56)は、71位のフェニルアラニンがチロシンに変異するように設計した。
3-1. 再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域バージョンa- eの作製
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域をコードするDNA を次の様にして設計した。ヒト抗体HG3 のFR1 〜3 およびヒト抗体JH6 のFR4 をコードするDNA 配列を、マウス抗HM1.24抗体H鎖V領域のCDR をコードするDNA 配列とつなげることにより、再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域をコードする全長DNA を設計した。
次に、このDNA 配列のそれぞれ5′−側及び3′−側にHindIII 認識部位/Kozak コンセンサス配列及びBamHI 認識部位/スプライスドナー配列を付加して、HEF 発現ベクターに挿入できるようにした。
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域の各バージョンb、c、d及びeを以下のようにして作製した。
バージョンcは、変異原プライマーとして73位のトレオニンがリジンに変異するように設計したCS(配列番号:65)およびCA(配列番号:66)を用い、プラスミドHEF-RVHa-AHM-gγ1 を鋳型DNA として、PCR 法により増幅し、プラスミドHEF-RVHc-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHc-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:13に示す。
バージョンeは、変異原プライマーとして67位のバリンがアラニンに、69位のメチオニンがロイシンに変異するように設計したES(配列番号:69)およびEA(配列番号:70)を用い、プラスミドHEF-RVHa-AHM-gγ1 を鋳型DNA として増幅し、プラスミドHEF-RVHe-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHe-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域に含まれるアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:15に示す。
H鎖ハイブリッドV領域を2種構築した。1つはFR1 とFR2 のアミノ酸配列がマウス抗HM1.24 抗体由来であり、FR3 とFR4 のアミノ酸配列が再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖V領域のバージョンa由来となるマウス・ヒトハイブリッド抗HM1.24抗体、もう1つはFR1 とFR2 のアミノ酸配列が再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖V領域のバージョンa由来であり、FR3 とFR4 のアミノ酸配列がマウス抗HM1.24抗体由来となるヒト・マウスハイブリッド抗HM1.24抗体である。CDR 領域のアミノ酸配列はすべてマウス抗HM1.24抗体由来である。
FR1 とFR2 のアミノ酸配列が再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖V領域のバージョンa由来であり、FR3 とFR4 のアミノ酸配列がマウス抗HM1.24抗体由来となるH鎖ハイブリッドV領域の作製のために、第一PCR 段階においてプラスミドHEF-RVHa-AHM-gγ1 を鋳型とし外部プライマーaとH鎖ハイブリッドプライマーHYA を用いたPCR と、プラスミド HEF-1.24H-gγ1 を鋳型としH鎖ハイブリッドプライマーHYS と外部プライマーhを用いたPCR を行い、そして各PCR 産物を精製した。第一PCR からの2つのPCR 生成物をそれら自体の相補性によりアッセンブリさせた(国際特許出願公開番号WO92-19759参照)。
第一PCR 、PCR 産物の精製、アッセンブリ、第二PCR 、及びHEF 発現ベクターHEF-VH-gγ1 へのクローニングの方法は実施例 9. 再構成ヒトHM1.24抗体L鎖V領域の作製に示す方法に準じた。
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域の各バージョンf、g、h、i、j、k、l、m、n、o、p、q、r及びsを以下のようにして作製した。
バージョンfは、変異原プライマーとして75位のトレオニンがセリンに、78位のバリンがアラニンに変異するように設計したFS(配列番号:78)およびFA(配列番号:79)を用い、プラスミドHEF-RVHe-AHM-gγ1 を鋳型DNA として、PCR 法により増幅し、プラスミドHEF-RVHf-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHf-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:16に示す。
バージョンhは、変異原プライマーとしてFS(配列番号:78)およびFA(配列番号:79)を用い、プラスミドHEF-RVHb-AHM-gγ1 を鋳型DNA として増幅し、プラスミドHEF-RVHh-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHh-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:18に示す。
バージョンjは、変異原プライマーとして66位のアルギニンがリジンに変異するように設計したJS(配列番号:84)とJA(配列番号:85)を用い、プラスミドHEF-RVHf-AHM-gγ1 を鋳型DNA として増幅し、プラスミドHEF-RVHj-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHj-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:20に示す。
バージョンlは、変異原プライマーとして81位のグルタミン酸がグルタミンに、82B 位のセリンがイソロイシンに変異するように設計したLS(配列番号:88)およびLA(配列番号:89)を用い、プラスミドHEF-RVHh-AHM-gγ1 を鋳型DNA として増幅し、プラスミドHEF-RVHl-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHl-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:22に示す。
バージョンnは、変異原プライマーとして82B 位のセリンがイソロイシンに変異するように設計したNS(配列番号:92)およびNA(配列番号:93)を用い、プラスミドHEF-RVHh-AHM-gγ1 を鋳型DNA としてプラスミドHEF-RVHn-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHn-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:24に示す。
バージョンpは、変異原プライマーとして78位のバリンがアラニンに変異するように設計したPS(配列番号:96)およびPA(配列番号:97)を用い、プラスミドHEF-RVHa-AHM-gγ1 を鋳型DNA として、PCR 法により増幅し、プラスミドHEF-RVHp-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHp-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:26に示す。
バージョンrは、変異原プライマーとしてCS(配列番号:65)およびCA(配列番号:66)を用い、プラスミドHEF-RVHp-AHM-gγ1 を鋳型DNA として、PCR 法により増幅し、プラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:28に示す。
プラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1 を鋳型とし、上記プライマーを用いて増幅した後、最終生成物を精製し、BamHI およびHindIII で消化し、得られたDNA 断片をHEF 発現ベクターHEF-VH-gγ1 にクローニングし、プラスミドHEF-RVHs-AHM-gγ1 を得た。本プラスミドHEF-RVHs-AHM-gγ1 に含まれるH鎖V領域のアミノ酸配列および塩基配列を配列番号:102 に示す。
なお、それぞれのプラスミドpUC19-RVLa-AHM-gκおよびpUC19-RVHr-AHM-gγ1 を含有する大腸菌は、それぞれ、Escherichia coli DH5α(pUC19-RVLa-AHM-gκ)およびEscherichia coli DH5α(pUC19-RVHr-AHM-gγ1 )と称し、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成8年8月29日に、各々FERM BP-5645およびFERM BP-5643としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
プラスミドpUC19-RVHs-AHM-gγ1 を含有する大腸菌は、Escherichia coli DH5α(pUC19-RVHs-AHM-gγ1 )と称し、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に平成9年(1997年)9月29日にFERM BP-6127としてブダペスト条約に基づき国際寄託された。
再構成ヒト抗HM1.24抗体の各鎖を評価するために再構成ヒト抗HM1.24抗体とポジティブコントロール抗体としてキメラ抗HM1.24抗体を発現させた。そして再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域のバージョンb以降の各バージョンを作製する際、どのFR内のアミノ酸残基を置換すべきかを検討するためにH鎖ハイブリッド抗体を発現させた。また、再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖バージョンaの評価のためにキメラH鎖との組合せで発現させた。
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖のための発現ベクター(HEF-RVHa-AHM-gγ1 〜HEF-RVHr-AHM-gγ1 )と再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖のための発現ベクター(HEF-RVLa-AHM-gκあるいはHEF-RVLb-AHM-gκ)各10μg をGene Pulser 装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS-7細胞に同時形質転換した。各DNA (10μg )を、PBS 中1 x 107 細胞/ml の0.8ml のアリコートに加え、1500V、25μFの容量にてパルスを与えた。
再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖バージョンsのための発現ベクター(HEF-RVHs-AHM-gγ1)と再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖のための発現ベクター(HEF-RVLa-AHM-gκ) 各10μg をGene Pulser 装置(BioRad社製)を用いてエレクトロポレーションによりCOS 細胞に同時形質転換した。各DNA(10μg)を、PBS 中1 x 107 細胞/ml の0.8ml のアリコートに加え、1,500V、25μF の容量にてパルスを与えた。
キメラ抗HM1.24抗体H鎖のための発現ベクター HEF-1.24H-gγ1 とキメラ抗HM1.24抗体L鎖のための発現ベクター HEF-1.24L-gκ各10μg を用い、上記再構成ヒト抗HM1.24抗体の発現の方法にしたがってCell-ELISAに用いるためのキメラ抗HM1.24抗体を調製した。
キメラ抗HM1.24抗体H鎖のための発現ベクターHEF-1.24H-g γ1 と再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖バージョンaのための発現ベクターHEF-RVLa-AHM-Gκ各10μgを用い、上記再構成ヒト抗HM1.24抗体の発現の方法に従って、Cell-ELISAに用いるためのヒト型化L鎖バージョンaとキメラH鎖からなる抗HM1.24抗体を調製した。
H鎖ハイブリッドV領域のための発現ベクター(HEF-MH-RVH-AHM-gγ1 或いはHEF-HM-RVH-AHM-gγ1 )と再構成ヒト抗HM1.24抗体L鎖のための発現ベクターHEF-RVLa-AHM-gκ各10μg を用い、上記再構成ヒト抗HM1.24抗体の発現の方法にしたがってCell-ELISAに用いるためのH鎖ハイブリッド抗体を調製した。
得られた抗体の濃度測定はELISA により行った。ELISA 用96穴プレート(Maxisorp, NUNC社製)の各穴にコーティングバッファー(0.1M NaHCO3, 0.02% NaN3,pH9.6 )により1μg/mlの濃度に調製したヤギ抗ヒトIgG 抗体(BIO SOURCE社製)100μlを加え、室温で1時間のインキュベーションを行い固相化した。100 μlの希釈バッファー(50mM Tris-HCl, 1mM MgCl2, 0.15M NaCl,0.05%Tween20, 0.02%NaN3, 1%牛血清アルブミン(BSA),pH8.1)でブロッキングした後、限外濾過濃縮を行った再構成ヒト抗HM1.24抗体、キメラ抗HM1.24抗体、及びH鎖ハイブリッド抗体を順次段階希釈して各穴に100 μlずつ加え室温で1時間のインキュベーションおよび洗浄の後、アルカリフォスファターゼ標識ヤギ抗ヒトIgG 抗体(DAKO社製)100 μlを加えた。
5-1. 再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖発現ベクターの作製
プラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1 を制限酵素PvuI及びBamHI にて消化し、EF1 プロモーター及び再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖V領域をコードするDNA を含む約 2.8 kbpの断片を 1.5%低融点アガロースゲルを用いて精製した。次に、DHFR遺伝子およびヒトH鎖定常領域をコードする遺伝子を含むヒトH鎖発現ベクターDHFR- ΔE-RVh- PM1f(国際特許出願公開番号WO92−19759)に使用されている発現ベクターをPvuI及びBamHI にて消化することにより調製した約6kbp の断片内に上記DNA 断片を挿入し、再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖発現ベクターDHFR- ΔE-HEF-RVHr-AHM-gγ1 を構築した。
再構成ヒト抗HM1.24抗体安定産生系を樹立するために、PvuIで消化して直鎖状にした前記発現ベクターDHFR- ΔE-HEF-RVHr-AHM-gγ1 及びHEF-RVLa-AHM-gκをエレクトロポレーション法により前述と同様(前記COS-7 細胞へのトランスフェクション)の条件下で同時にCHO 細胞DXB-11に遺伝子導入した。
遺伝子導入した CHO細胞は500 μg/mlのG418(GIBCO-BRL 社製)及び10%のウシ胎児血清を添加したヌクレオシド不含α−MEM培養液中(GIBCO-BRL 社製)ではL鎖及びH鎖発現ベクターが共に導入されたCHO 細胞のみが増殖でき、それらを選別した。次に、上記培養液中に10 nM のMTX(Sigma 社製)を加え、増殖したクローンのうち再構成ヒト抗HM1.24抗体の産生量が高いものを選択した結果、約3μg/mlの再構成ヒト抗HM1.24抗体産生率を示すクローン#1を得、再構成ヒト抗HM1.24抗体産生細胞株とした。
再構成ヒト抗HM1.24抗体の作製は以下の方法で行った。上記再構成ヒト抗HM1.24抗体産生CHO 細胞を、培地として10%のγ−グロブリンフリーウシ胎児血清(GIBCO-BRL 社製)を含有する500 μg/mlのG418(GIBCO-BRL 社製)を添加したヌクレオシド不含α−MEM培養液(GIBCO-BRL 社製)を用い、37℃、5%CO2 の条件下で10日の培養をCO2 インキュベーターBNA120D (TABAI 社製)を用いて行った。培養開始後8、10日目に培養液を回収し、TS-9ローターを装着した遠心機RL-500SP(トミー精工社製)を用いて2000rpm 、10分間の遠心分離を行い培養液中の細胞破片を除去した後、0.45μm 径のメンブレンをもつボトルトップフィルター(FALCON社製)により濾過滅菌した。
再構成ヒト抗HM1.24抗体は下記の抗原結合活性および結合阻害活性にて評価を行った。
1.抗原結合活性および結合阻害活性の測定法
1-1. 抗原結合活性の測定
抗原結合活性の測定は、WISH細胞を用いたCell-ELISAで行った。Cell-ELISA プレートは前記実施例7.1-2で記載の通り作製した。
ビオチン標識マウス抗HM1.24抗体による結合阻害活性は、WISH細胞を用いたCell-ELISAで行った。Cell-ELISA プレートは前述の通り作製した。ブロッキングの後、COS-7 細胞の培養上清を濃縮して得られた、またはCHO 細胞の培養上清より精製された再構成ヒト抗HM1.24抗体を段階希釈して各穴に50μl 加え、同時に2 μg/mlのビオチン標識マウス抗HM1.24抗体50μl を添加し、室温にて2時間インキュベーションおよび洗浄の後、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン(DAKO社製)を加えた。室温にて1時間インキュベーションした後洗浄し、基質溶液を加えインキュベーションの後、6N 硫酸50μl で反応を停止させ、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 社製)を用いて490nm での吸光度を測定した。
2-1. L鎖
再構成ヒト抗HM1.24抗体のL鎖バージョンaの評価は、前記の抗原結合活性の測定により行った。図8に示す通り、L鎖バージョンaはキメラH鎖と組合わせて発現させると、キメラ抗HM1.24抗体と同程度の抗原結合活性を示した。しかし、さらなる活性の上昇またはH 鎖との相性を考慮し、新たにL鎖バージョンbを作製した。そして、H 鎖のバージョンa、b、f又はhと組み合わせたときの抗原結合活性および結合阻害活性の測定を行いL 鎖バージョンa、bを共に評価した。図9、10、11及び12に示すとおり、H 鎖a、b、f及びhの全てのバージョンで、L鎖バージョンaがバージョンbに比べて両活性とも強かった。従って、再構成ヒト抗HM1.24抗体のL鎖バージョンaを以下の実験に用いた。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンa- eの評価はL鎖バージョンaとの組合せで、前記の抗原結合活性および結合阻害活性の測定により行った。その結果、図11、13、14及び15に示す通り、全てのバージョンにおいてキメラ抗HM1.24抗体と比較して両活性とも弱く、さらなるアミノ酸の変換が必要であると考えられた。
H鎖ハイブリッド抗体の評価は前記の抗原結合活性の測定により行った。その結果、図16に示す通り、抗原結合活性はヒト- マウスハイブリッド抗HM1.24抗体ではキメラ抗HM1.24抗体と同等の活性を有している一方、マウス・ヒトハイブリッド抗HM1.24抗体はキメラ抗HM1.24抗体と比較してその活性が弱かった。従って、マウス抗HM1.24抗体、あるいはキメラ抗HM1.24抗体と同等の抗原結合活性を有する再構成ヒトHM1.24抗体を作成するためには、H 鎖V 領域のうち、FR3 あるいはFR4 に含まれるアミノ酸を変換する必要があることが示された。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンfの評価は前記の抗原結合活性測定により行った。その結果、図17に示す通り、抗原結合活性はキメラ抗HM1.24抗体と比較すると劣るが、上記バージョンa- cと比較して活性が向上したことから、本バージョンで新たに変換した67、69、75及び78番目の4つのアミノ酸のうちいずれかが再構成ヒト抗体の活性に関与していることが示唆された。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンgの評価は前記の抗原結合活性、および結合阻害活性の測定により行った。その結果、図18及び19に示す通り、本バージョンは上記バージョンaと同程度の活性しか示さなかったことから、上記H鎖ヒト・マウスハイブリッド抗体の評価で示した通り、本バージョンで変換した40番目のアミノ酸は再構成ヒト抗体の活性の向上には寄与していないことが示された。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンk- pの評価は前記の抗原結合活性、および結合阻害活性の測定により行った。その結果、図24、25、26及び27に示す通り、全てのバージョンで両活性ともキメラ抗HM1.24抗体と比較すると弱く、上記バージョンhと同程度であることから、これら6つのバージョンで新たに変換した80番目以降のアミノ酸は再構成ヒト抗体の活性の向上に寄与していないことが示唆された。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンrの評価は前記の測定により行った。その結果、図15及び28に示す通り、バージョンrはキメラ抗HM1.24抗体と同程度の抗原結合活性および結合阻害活性を有することが示された。
なお、再構成ヒト抗HM1.24抗体H鎖バージョンa- rについて、その抗原結合活性、および結合阻害活性を表6にまとめた。
再構成ヒト抗HM1.24抗体のH鎖バージョンsの評価は、L鎖バージョンaとの組合せで前記の抗原結合活性、および結合阻害活性の測定により行った。その結果、図29、30に示すようにバージョンsはバージョンrと同程度の抗原結合活性および結合阻害活性を有することが示された。
また、上記のごとく、本発明の再構成ヒト抗HM1.24抗体はFR中の1個又は複数個のアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換してもなお、抗原に結合する能力を維持している。したがって、本発明は、その本来の性質を維持している限り、H鎖又はL鎖のV領域において、1個又は複数個のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基に置換されている再構成ヒト抗HM1.24抗体をも包含する。
前記精製再構成ヒト抗HM1.24抗体は前記の抗原結合活性および結合阻害活性にて評価を行った。その結果、図31及び32に示す通り再構成ヒト抗HM1.24抗体は、キメラ抗HM1.24抗体と同程度の抗原結合活性および結合阻害活性を有することが示された。このことより、再構成ヒト抗HM1.24抗体はマウス抗HM1.24抗体と同じ抗原結合能を持つことが示された。
1. 投与抗体の調製
1-1. キメラ抗HM1.24抗体の調製
前記実施例6で得られた精製キメラ抗HM1.24抗体を、遠心限外濃縮器Centriprep 10 (MILLIPORE 社製)で濃縮およびPBS(-)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μmのメンブレンフィルターMILLEX-GV (MILLIPORE 社製)を用いて濾過滅菌した。これを濾過滅菌したPBS(-)を用いて200 μg/mlに調製し、以下の実験に用いた。抗体濃度は、280nm の吸光度を測定し、1mg/ml を1.350Dとして算出した。
キメラ抗HM1.24抗体のコントロールとして用いるヒトIgG1は以下のように精製した。Hu IgG1 Kappa Purified(BINDING SITE社製)に等量のPBS(-)を加えた後、高速抗体精製装置ConSep LC100(MILLIPORE 社製)およびHyper D Protein A カラム(日本ガイシ社製)を用い、付属の説明書に基づき吸着緩衝液としてPBS(-)、溶出緩衝液として0.1M クエン酸ナトリウム緩衝液(pH3 )を用いてアフィニティー精製した。溶出画分は直ちに1M Tris-HCl(pH8.0 )を添加してpH7.4 付近に調整した後、遠心限外濃縮器Centriprep 10 (MILLIPORE 社製)を用いて濃縮およびPBS(-)への緩衝液置換を行い、孔径0.22μmのメンブレンフィルターMILLEX-GV (MILLIPORE 社製)を用いて濾過滅菌した。これを濾過滅菌したPBS(-)を用いて200 μg/mlに調製し、以下の実験に用いた。抗体の濃度は、280nm の吸光度を測定し、1mg/ml を1.350Dとして算出した。
マウスの血清中に含まれるヒトIgG の定量は以下のELISA で行った。0.1M重炭酸緩衝液(pH9.6 )で1 μg/mlに希釈したヤギ抗ヒトIgG (TAGO社製)100 μl を96穴プレート(Nunc社製)に加え、4℃で一晩インキュベーションし、抗体を固相化した。ブロッキングの後、段階希釈したマウス血清あるいは標品としてヒトIgG (CAPPEL社製)100 μl を添加し、室温にて1時間インキュベーションした。洗浄後、2000倍希釈したアルカリフォスファターゼ標識抗ヒトIgG (CAPPEL社製)100 μl を加え、室温にて1時間インキュベートした。洗浄後、基質溶液を加えインキュベーションの後、MICROPLATE READER Model 3550(Bio-Rad 社製)を用いて405nm での吸光度を測定した。
3-1. ヒト骨髄腫移植マウスの作製
ヒト骨髄腫移植マウスは以下のように作製した。SCIDマウス(日本クレア)を用いてin vivo 継代したKPMM2 細胞を、10%ウシ胎児血清(GIBCO-BRL 社製)を含むRPMI1640培地(GIBCO-BRL 社製)で3 x 107 個 / ml になるように調製した。あらかじめ前日抗アシアロGM1 (和光純薬社製)100 μl を腹腔内投与したSCIDマウス(オス、8週令)(日本クレア)に上記KPMM2 細胞懸濁液 200μl を尾静脈より注入した。
上記ヒト骨髄腫移植マウスよりKPMM2 細胞移植後12日目に血清を採取し、上記2 のELISA を用いて、血清中のヒトIgG を定量した。血清中のヒトIgG の上昇によりKPMM2 細胞の骨髄生着を確認した。これらマウスに対し、KPMM2 細胞移植後14、21、28日目に上記1で調製した抗体をそれぞれ100 μl 腹腔内投与した。
3-3. キメラ抗HM1.24抗体のヒト骨髄腫移植マウスに対する抗腫瘍効果の評価
キメラ抗HM1.24抗体の抗腫瘍効果については、マウスの生存期間で評価した。図33に示す通り、キメラ抗HM1.24抗体を投与したマウスではコントロールヒトIgG1を投与したマウスと比較して、生存期間の延長が認められた。従って、キメラ抗HM1.24抗体がヒト骨髄腫移植マウスに対して抗腫瘍効果を有することが示された。
ADCC (Antibody-dependent Cellular Cytotoxicity) 活性の測定はCurrent protocols in Immunology, Chapter 7. Immunologic studies in humans, Editor, John E, Coligan et al., John Wiley & Sons, Inc., 1993の方法に従った。
1. エフェクター細胞の調製
健常人の末梢血より比重遠心法で単核球を分離した。すなわち健常人の末梢血に等量のPBS(-)を加え、Ficoll-Paque PLUS (Pharmacia社製)に積層し、 400gで40分間遠心した。単核球層を分取し、10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社製)を含むRPMI 1640 (GIBCO BRL社製)で4回洗浄後、同培養液で細胞数が5 x 106/mlになるように調製した。
ヒト骨髄腫細胞株KPMM2(特開平7−236475)あるいは形質細胞腫由来ARH-77 (ATCC CRL-1621)を0.1mCiの51Cr-sodium chromate(ICN社製)とともに10%ウシ胎児血清(GIBCO BRL社製)を含むRPMI 1640 (GIBCO BRL社製)中で37℃にて60分インキュベートすることにより放射性標識した。放射性標識の後、細胞を同培養液で3回洗浄し、2 x 105/mlに調製した。
96ウエルU底プレート(ベクトンディッキンソン社製)に放射性標識した2 x 105/mlの標的細胞を50μl と、再構成ヒト抗HM1.24抗体、マウス抗HM1.24抗体、コントロールヒトIgG1(The Binding Site Limited社製)、あるいはコントロールマウスIgG2a(UPC10 、CAPPEL社製)50μl を加え、4℃で15分間反応させた。
その後、エフェクター細胞100 μl を、炭酸ガス培養器内で4時間培養した。その際、エフェクター細胞(E)と標的細胞(T)の比(E:T)を 0:1、3.2:1 、8:1 、20:1又は50:1とした。
これらの結果から再構成ヒト抗HM1.24抗体は、エフェクター細胞としてヒト由来、あるいはマウス由来の細胞を用いた場合でもADCC活性を有することが示された。
1. 投与抗体の調製
プラスミドHEF-RVLa-AHM-gκとプラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1を細胞に導入して得られた再構成ヒト抗HM1.24抗体については、濾過滅菌したPBS(-)を用いて40、200 、1000μ/ml に、また、実施例12.1-2で得たコントロールヒトIgG1については、濾過滅菌したPBS(-)を用いて 200μg/mlに調製し、投与抗体とした。
2. 再構成ヒト抗HM1.24抗体のヒト骨髄腫移植マウスに対する抗腫瘍効果
2-1. ヒト骨髄腫移植マウスの作製
ヒト骨髄腫移植マウスは、実施例12.3-1に従い作製した。マウスは、SCIDマウス(5週令)(日本クレア)を用いた。
上記2-1 で作製したヒト骨髄腫移植マウスよりKPMM2 細胞移植9日目に血清を採取し、実施例12.2のELISA を用いて、血清中のヒトIgG を定量した。血清中のヒトIgG の上昇によりKPMM2 細胞の骨髄生着を確認した。これらマウスに対し、KPMM2 細胞移植後10日目に上記1で調製した抗体をそれぞれ 100μl 静脈内投与した。
再構成ヒト抗HM1.24抗体の抗腫瘍効果については、マウスの血清ヒトIgG 量の変化、および生存期間で評価した。
マウスの血清ヒトIgG 量の変化については、KPMM2 細胞移植35日目に血清を採取し、実施例12.2のELISA を用いてヒトIgG を定量した。その結果、図37に示すようにコントロールヒトIgG1投与群では、KPMM2 細胞移植35日目の血清ヒトIgG 量は移植9日目(抗体投与前日)と比較して約1000倍程度まで増加しているのに対し、再構成ヒト抗HM1.24抗体投与群ではいずれの投与量でも、移植9日目とほぼ同じかあるいはそれ以下であり、再構成ヒト抗HM1.24抗体がKPMM2 細胞の増殖を抑制していることが示された。
1. 投与薬剤の調製
1-1. 投与抗体の調製
プラスミドHEF-RVLa-AHM-gκとプラスミドHEF-RVHr-AHM-gγ1を細胞に導入して得られた再構成ヒト抗HM1.24抗体については、濾過滅菌したPBS(-)を用いて40、200 μg/mlに、また、実施例12.1-2で得たコントロールヒトIgG1については、濾過滅菌したPBS(-)を用いて 200μg/mlに調製し、投与抗体とした。
1-2. メルファランの調製
骨髄腫に対する既存薬剤であるメルファラン(SIGMA製)は、 0.2%カルボメチルセルロース(CMC)(ダイセル化学工業製)を用いて、0.1mg/mlになるように調製した。
2-1. ヒト骨髄腫移植マウスの作製
ヒト骨髄腫移植マウスは、実施例14.2-1に従い作製した。
2-2. 薬剤投与
上記2-1 で作製したヒト骨髄腫移植マウスよりKPMM2 細胞移植9日目に血清を採取し、実施例12.2のELISA を用いて、血清中のヒトIgG を定量した。血清中のヒトIgG の上昇によりKPMM2 細胞の骨髄生着を確認した。これらマウスに対し、KPMM2 細胞移植後10日目に上記1-1 で調製した抗体をそれぞれ 100μl 静脈内投与した。さらに、移植後10日目から1日1回、5日間 0.2% CMC溶液 200μl を経口投与した。一方、メルファラン投与群については、上記1-2 で調製したメルファラン溶液をKPMM2 細胞移植後10日目から1日1回、5日間体重10g あたり 100μl(メルファランとして1mg/kg) を経口投与した。
再構成ヒト抗HM1.24抗体の抗腫瘍効果については、マウスの血清ヒトIgG 量の変化、および生存期間で評価した。
マウスの血清ヒトIgG 量の変化については、KPMM2 細胞移植35日目に血清を採取し、実施例12.2のELISA を用いてヒトIgG を定量した。その結果、図39に示すようにコントロールヒトIgG1投与群では、KPMM2 細胞移植35日目の血清ヒトIgG 量は移植9日目(抗体投与前日)と比較して1000倍程度増加し、マウス中でKPMM2 細胞が増殖しているものと思われた。
以上より、ヒト由来のエフェクター細胞を用いた場合、マウス抗HM1.24抗体は殆どヒト骨髄腫細胞に対して、細胞障害活性を示さなかったのに比して、再構成ヒト抗HM1.24抗体およびキメラ抗HM1.24抗体は強い細胞障害活性を示した。この事実は抗体をヒト型化することの重要性を示し、再構成ヒト抗HM1.24抗体のヒトでの有用性を期待させる。
骨髄腫モデルにおいて、再構成ヒト抗HM1.24抗体は既存の骨髄腫治療薬に比べ強い抗腫瘍効果を示したことより、再構成ヒト抗HM1.24抗体が画期的な骨髄腫治療薬になることが期待される。
Goto, T. et al., Blood (1994) 84, 1992-1930 に記載の方法にて、マウス抗HM1.24モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製した。
ヒト多発性骨髄腫患者の骨髄に由来するエプスタインーバーウィルスー核抗原(EBNA)ー陰性形質細胞株KPC-32(1x107 個)(Goto, T. et al., Jpn. J. Clin. Hematol. (11991) 32, 1400)をBALB/Cマウス(チャールスリバー製)の腹腔内に6 週間おきに2 回注射した。
その結果、30のハイブリドーマクローンが産生するモノクローナル抗体がKPC-32およびRPMI 8226 細胞と反応した。クローニングの後、これらのハイブリドーマの培養上清を他の細胞株と末梢血由来単核球との反応性を調べた。
1. cDNAライブラリーの作製
1)全RNA の調製
マウスモノクローナル抗体HM1.24が特異的に認識する抗原ポリペプチドであるHM1.24抗原をコードするcDNAを以下のように単離した。
ヒト多発性骨髄腫細胞株KPMM2 から、全RNA をChirgwinら(Biochcmistry, 18, 5294 (1979))の方法に従って調製した。すなわち、2.2 x 108 個のKPMM2 を20mlの4Mグアニジンチオシアネート(ナカライテスク製)中で完全にホモジナイズさせた。
前記のようにして調製した全RNA の約 500μg を材料としてFast Track 2.0m RNA Isolation Kit(Invitrogen製)を用いてキット添付の処方に従ってpoly(A) +RNA を精製した。
3)cDNAライブラリーの構築
上記poly(A) +RNA 10μg を材料としてcDNA合成キットTimeSaver cDNA Synthesis Kit(Pharmacia製)を用いてキット添付の処方に従って二本鎖cDNAを合成し、更にDirectional Cloning Toolbox (Pharmacia製)を用いてキット付属のEcoRI アダプターをキット添付の処方に従って連結した。EcoRI アダプターのカイネーション及び制限酵素NotI処理はキット添付の処方に従って行った。更に、約500bp 以上の大きさのアダプター付加二本鎖cDNAを 1.5%低融点アガロースゲル(Sigma製)を用いて分離、精製し、アダプター付加二本鎖cDNA約40μl を得た。
1)COS-7 細胞へのトランスフェクション
上記の形質導入した大腸菌約5 x 105 クローンを50μg/mlのアンピシリンを含む2-YT培地(Molecular Cloning : A Laboratory Mannual. Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)) にて培養することによりcDNAの増幅を行い、アルカリ法(Molecular Cloning : A Laboratory Mannual. Sambrookら、Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)) により大腸菌からプラスミドDNA を回収した。得られたプラスミドDNA はGene Pulser 装置(Bio-Rad製)を用いてエレクトロポレーション法によりCOS-7 細胞にトランスフェクションした。
マウス抗HM1.24抗体をコーティングしたパンニングデイッシュを、B.Seedら(Proc.Natl.Acad.Sci. USA, 84, 3365-3369 (1987)) の方法に従って調製した。すなわち、マウス抗HM1.24抗体を10μg/mlになるように50mM Tris-HCl (pH 9.5)に加えた。このようにして調製した抗体溶液3ml を直径60mmの細胞培養皿に加え、室温にて2時間インキュベートした。0.15M NaCl溶液にて3回洗浄した後、5%牛胎児血清、1mM EDTA、0.02% NaN3 を含むPBS を加え、ブロッキングした後、下記クローニングに用いた。
前述のようにトランスフェクトしたCOS-7 細胞は、5mM EDTAを含むPBS にて剥がし、5%牛胎児血清を含むPBS で一回洗浄した後、約1 x 106 細胞/ml となるように5%牛胎児血清及び0.02% NaN3 を含むPBS に懸濁し、上記のように調製したパンニングデイシュに加え、室温にて約2時間インキュベートした。5%牛胎児血清及び0.02% NaN3 を含むPBS で3度緩やかに洗浄した後、 0.6% SDS及び10mM EDTA を含む溶液を用いてパンニングデイシュに結合した細胞からプラスミドDNA の回収を行った。
配列番号:103 に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするcDNAはpUC19 ベクターのXbaI切断部位の間に挿入されて、プラスミドpRS38-pUC19 として調製されている。このプラスミドpRS38-pUC19 を含む大腸菌(E. coli) は平成5年(1993年)10月5日付で工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)にEscherichia coli DH5α (pRS38-pUC19)として、受託番号FERM BP-4434としてブダペスト条約に基づき国際寄託されている(特開平7−196694参照)。
キメラ抗HM1.24抗体はマウス抗HM1.24抗体の可変領域とヒト抗体定常領域からなり、再構成抗HM1.24抗体はマウス抗HM1.24抗体の相捕性決定領域とヒト抗体フレームワーク領域およびヒト抗体定常領域からなることから、ヒトにおける抗原性が低く、それ故に医薬組成物、特に骨髄腫治療剤として期待される。
Claims (2)
- 配列番号:103に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを特異的に認識する再構成ヒト抗体を有効成分として含有する医薬組成物であって、前記再構成ヒト抗体が、
(A)配列番号:9のアミノ酸番号1〜107に示すアミノ酸配列を含んで成るL鎖V領域と、ヒトL鎖C領域とを含んで成る再構成ヒトL鎖:並びに
(B)配列番号:28のアミノ酸番号1〜120に示すアミノ酸配列を含んで成るH鎖V領域と、ヒトH鎖C領域とを含んで成る再構成ヒトH鎖:
を含んで成る再構成ヒト抗体であることを特徴とする医薬組成物。 - 配列番号:103に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを特異的に認識する再構成ヒト抗体を有効成分として含有する骨髄腫治療剤であって、前記再構成ヒト抗体が、
(A)配列番号:9のアミノ酸番号1〜107に示すアミノ酸配列を含んで成るL鎖V領域と、ヒトL鎖C領域とを含んで成る再構成ヒトL鎖:並びに
(B)配列番号:28のアミノ酸番号1〜120に示すアミノ酸配列を含んで成るH鎖V領域と、ヒトH鎖C領域とを含んで成る再構成ヒトH鎖:
を含んで成る再構成ヒト抗体であることを特徴とする骨髄腫治療剤。
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