JP4115012B2 - 体外式気道確保補助装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、筋の弛緩時等下顎が沈下し、それにより、舌根が沈下して起こる気道閉塞を防止する体外式気道確保補助装置に関する。
【0002】
外科・内科手術時における麻酔適用患者、病気・怪我等による昏睡状態の重傷患者、あるいは、睡眠時無呼吸症患者など、下顎周辺の筋が弛緩して下顎が沈下し、それにより、舌根が沈下して気道を閉塞することが多々存在する。このような意識の無い患者で、最も重要な処置は気道を確保することである。気道閉塞が起こり窒息するからである。
通常、用手にて気道確保をするには、患者の頭部を後屈させる方法(ヘッドティルト法)、下顎を挙上させる方法(ジョーリフト法)の2種類の方法が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ヘッドティルト法(図9参照)は、救命処置の第一歩として、一般の人達にも普及した方法で、比較的簡単に実施できる利点があるものの、麻酔時等筋肉が完全に弛緩した場合には効果が不確実である欠点がある。
また、ジョーリフト法(図10参照)は下顎部の筋肉が完全に弛緩した場合の最も確実な気道開通処置であり、麻酔導入時、マスク麻酔時、静脈麻酔時等に常に行われる方法である。この方法の欠点は、簡単なようで実際にはかなりの熟練を要するものである事である。特に、肥満患者や顔面、頚部の太くて短い患者では難度が高くなる。現在普及している気道確保の補助器具としては、口咽頭エアウエイと鼻咽頭エアウエイとがある。これらは、経口的、経鼻的に気道を確保する方法であり、欠点としては効果がやや不確実なこと、口腔内や舌根部に違和感が強く嘔吐を引き起こす事等がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、前述した従来の課題を解決し、熟練を要することなく簡単且つ確実に、睡眠時無呼吸症患者などの軽症患者から麻酔適用患者のように筋肉が完全に弛緩してしまっている患者まで気道を確保することができる体外式気道確保補助装置を提供することである。
また、本発明の目的は、また、気管、舌根、口腔内に対し刺激がなく、気道確保効果の良い体外式気道確保補助装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、筋の弛緩時等下顎が沈下し、それにより、舌根が沈下して起こる気道閉塞を防止するために下顎を挙上して気道を確保するための体外式気道確保補助装置であって、仰向けに寝かせた状態の患者の左右両側の下顎角部に接触して該部位をそれぞれ支持するための左右対称の一対の顎当て部を有し、顎当て部は、患者の顎部の荷重を安定して支えることができる支持部に立設された伸縮可能な左右一対の脚部であって、支持部から支えるべき顎の位置までの距離を調節可能とされた脚部の先端に取り付けられ、支持部と脚部との間又は脚部と顎当て部との間には角度調節機構が設けられて構成されてなる体外式気道確保補助装置を提供する。支持部からの高さ、該支持部に対する顎当て部の角度等を調節することにより体外的に下顎角部を支柱にて支え、下顎を挙上しジョーリフトを容易にして気道を確保する。
【0006】
上記目的を達成するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の体外式気道確保補助装置において、支持部が患者の首の下を横断する位置に1つ配置される支持台であることを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の体外式気道確保補助装置において、一対の顎当て部は、患者の下顎に沿って延在する連結部材で一体的に連結されていることを特徴とする。
請求項に記載の本発明は、請求項1−3のいずれか1項に記載の体外式気道確保補助装置において、さらに、患者の頭部を固定するための着脱可能なバンドを有していることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る体外式気道確保補助装置ついて図示された好ましい各実施形態を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る体外式気道確保補助装置の一実施形態を示す斜視図である。
【0014】
本発明の気道確保補助装置10は、概略的に、顎部の荷重を安定して支えることができる支持部12と、支持部12から支えるべき顎の位置までの距離を調節する伸縮可能な脚部14と、脚部14の先端に取り付けられ、患者の下顎角部に接触して該部位を支持するソフトで接触跡ができない素材から作られた顎当て部16と、そして、脚部14と顎当て部16との間に設けられた角度調節機構18とを含んで構成されている。図示された好ましい実施形態では、角度調節機構18は、脚部14と顎当て部16との間に設けられているが、支持部12と脚部14との間に設置することもできる。脚部14は、支持部12に立設され且つ断面がリップ付きの断面コ字形を有する下側部材14aと、この下側部材14aに入れ子式に嵌合し上下方向にスライド可能な上側部材14bと、そして、上側部材14bの下端付近に形成された雌ネジ孔(図示せず)にネジ係合した雄ネジを有する摘み14cとを有している。
【0015】
摘み14cを緩めると、上側部材14bは下側部材14aに対して、上下方向にスライド可能になる。そこで、患者の首の付近に支持部12を配置した後、上側部材14bが丁度良い高さとなるように、引き伸し又は押し下げて調節した後、摘み14cを再び締めて固定する。顎当て部16は、脚部14の上端部に蝶ボルト18aを中心として回転自在となっている。蝶ボルト18aの雄ネジ部は、上側部材14bの上端部に形成された雌ネジ孔(図示せず)にネジ結合しており、蝶ボルト18aを緩めると、顎当て部16は脚部14に対して回転自在となる。そこで、前記脚部14の高さを調節した後、顎当て部16が患者の下顎角部にフィットする位置まで回転した後、蝶ボルト18aを締めて固定する。
図示されていないが、患者の反対側の下顎角部にも設置されており、これら独立した一対の左右対称のユニットで気道確保補助装置10を構成する。
【0016】
図2は、本発明に係る体外式気道確保補助装置の他の実施形態を示す斜視図である。
本実施態様の気道確保補助装置20は、概略的に、頭部の下側に敷かれ、患者の下顎部の荷重を安定して支えることができる支持台22と、支持台22の両側部に角度調節機構28を介して立設され、該支持台22から支えるべき下顎の位置までの距離を調節する伸縮可能な一対の脚部24と、そして、各脚部24の先端に固定され、患者の下顎角部に接触して該部位を支持する顎当て部26とを含んで構成されている。図示された好ましい実施形態では、支持台22は、患者の頭部の下側全体に敷かれるような大きな面積を有しているが、患者の首の下のみを横断するような細長い板材であっても良い。
【0017】
図示された好ましい実施形態では、角度調節機構28は、支持台22と脚部24との間に設けられているが、図1の第一の実施態様のように、顎当て部26と脚部24との間に設けることもできる。支持台22には、また、患者の頭部を支持台22に固定し動かないように保持する着脱可能なバンド25が設置されている。バンド25は、2つの帯状体からなり、着脱の容易なマジックファスナ(登録商標)が取り付けられている。支持台22には、また、頭部の姿勢を正しく保持するように形態付けられた枕部(図示せず)を形成することができる。
一対の顎当て部26は、図3に示されているように、患者の頤の下方に沿って延在する連結部材27で一体的に連結することもできる。この場合、連結部材27の部位は、患者の皮膚表面に沿って任意の形状に屈曲できると共にある程度の剛性を持った素材、例えば、形状記憶合金、針金に粘土を付着したもの等で製作することが好ましい。尚、連結部材27は患者を仰向けに寝かせた後、支持台22に取り付けるか又は連結部材27を2つの部材で構成することにより連結部材の27の途中、例えば顎の先端部が支持される部分で着脱可能とするとよい。
【0018】
さらに、図4に示されているように、連結部材37を手術台又は病院用ベットに配置された離被架39に取り付けて構成することも可能である。すなわち、本実施例の気道確保補助装置30は、概略的に、手術台又は病院用ベットに配設された離被架39と、左右対称に一対形成された脚部34と、連結部材37と、そして、一対の顎当て部36とを備えている。一対の脚部34はそれぞれ板部材38bの下面に固定されて取り付けられ、板部材38bは患者の上部に位置し離被架39を構成する円筒状のパイプを外から覆うと共に、摺動可能に取り付けられた円筒部材38aに固定されている。連結部材37の部位は、前述のように、患者の皮膚表面に沿って任意の形状に屈曲できると共にある程度の剛性を持った素材、例えば、形状記憶合金、針金に粘土を付着したもの等で製作することが好ましい。また、顎当部36を最適な位置に移動させるために垂直に立設された離被架39の途中に高さ位置調節部材が設けられている。これは摘み33を緩めると、離被架39が上下方向にスライド可能とされ、丁度良い高さとなるように、引き伸し又は押し下げて調節した後、摘み33を再び締めて固定する。同様に、円筒部材38aは患者の上部に位置する離被架39に従って移動可能とされると共に固定可能に構成され、離被架39全体が手術台の長手方向に移動可能とされると共に固定可能に構成されている(但し、図示せず)。尚、脚部34に連結部材37が前後左右及び上下方向に僅かに移動可能となるような微動装置を設けてもよい。
【0019】
図5は、本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
本実施例の体外式気道確保補助装置40は、支持部の役割を果たす手術台42と、手術台42の頭部側所定位置に形成された凹部42a内に不使用時は収納されており、使用時に軸42bを中心として回転させ立設して使用する脚部44と、そして、脚部44の先端に回転自在に取り付けられた顎当て部46とを有している。図示された好ましい実施形態では、患者の頭部を正しい姿勢に保持すると共に頭の頂部を押さえる枕状体42cが設けられている。本発明は、また、図示しないが、救急車の移動式担架や病院用ベットにも適用可能である。
【0020】
図6は、本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
本実施例の体外式気道確保補助装置50は、支持部の役割を果たす患者の頭部を挿入可能なヘルメット状体52と、ヘルメット状体52の内側所定位置にエアにより膨脹させることができる樹脂製ジャバラ脚部54と、そして、このジャバラ脚部54の先端に取り付けられた顎当て部56とを有している。図示された好ましい実施形態では、ヘルメット状体52は、その後頭部に該ヘルメット状体52の転倒を防止する平坦部52aを有している。また、ヘルメット状体52の下顎付近には、患者の頭部をヘルメット状体52に固定し動かないように保持するバンド25が設置されている。バンド25は、2つの帯状体からなり、それぞれの先端部には、締結用の金具と孔が形成されえている。本実施形態の場合、ジャバラ脚部54は任意の方向に屈曲可能であるため、前述の各実施形態において用いられていた角度調節機構は必ずしも必要ではない。
【0021】
また、本発明の簡易な形態においては、同様に角度調節機構を省略したり、あるいは、さらに、脚部の長さ調節機構を省略することもできる。
【0022】
図7(a)は、本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
本実施態様の気道確保補助装置60は、概略的に、患者の上顎と下顎を側面側から押さえると共に、所定の力で挟みつける力を有する屈曲した腕部62と腕部62の先端に取り付けられた顎当部64とを含んで構成されている。図示された好ましい実施形態では、屈曲部66内に挟みつける方向に働く図示しないバネが内蔵されている。屈曲部66はこのようなバネに限るものではなく、例えば、患者の皮膚表面に沿って任意の形状に屈曲できると共にある程度の復元力のある素材、例えば、形状記憶合金等で製作してもよい。
顎当部64は、図7(b)に示すように、患者の下顎に直接触れると共に、所定の力で下顎を押圧するため、周囲には柔らかい素材、例えばスポンジやフェルト等の素材を用いて製作するのが好ましい。さらに、腕部62のうち、顎当部64が取り付けられた側とは反対側の端部側は患者の上顎を押圧するため、鼻下(上の歯茎辺り)に直接触れるためこの部分も顎当部64と同様に柔らかい素材で覆うことが好ましい。
【0023】
さらに、図8(a)に示すように、気道確保補助装置60を左右対称に形成してもよい。すなわち、腕部66及び顎当部64が、左右対称に形成し、患者の上顎と下顎両角部を支持するように構成することもできる。
図7(a)又は図8(a)のいずれの場合でも、顎当部64が確実に患者の下顎を支持するようにするために顎当部64に調節ネジ(図示せず)を設けてもよい。また、腕部62の長さ調整機構を設けて患者の顔幅に合わせるようにすることも可能である。
【0024】
【発明の効果】
発明によれば、顎部の荷重を安定して支えることができる支持部と、支持部から支えるべき顎の位置までの距離を調節する伸縮可能な脚部と、脚部の先端に取り付けられ、患者の下顎角部に接触して該部位を支持する顎当て部と、そして、支持部と脚部との間又は前記脚部と顎当て部との間に設けられた角度調節機構とを含んで構成されてなるため、熟練を要することなく簡単且つ確実に、睡眠時無呼吸症患者などの軽症患者から麻酔適用患者のように筋肉が完全に弛緩してしまっている患者まであらゆる種類の患者の気道を確保することができる効果を有する。 本発明は、また、気管、舌根、口腔内に対し刺激がなく、気道確保が必ず達成できる利点を有している。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る体外式気道確保補助装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る体外式気道確保補助装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の体外式気道確保補助装置の変形例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図である。
【図7】(a)は本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図、(b)はその使用例を示す平面図である。
【図8】(a)は本発明に係る体外式気道確保補助装置のさらに他の実施形態を示す斜視図、(b)はその使用例を示す平面図である。
【図9】従来の用手にて軌道確保をするヘッドティルト法の概略を説明するための斜視図である。
【図10】従来の用手にて軌道確保をするジョーリフト法の概略を説明するための斜視図である。
【符号の説明】
10 気道確保補助装置
12 支持部
14 脚部
16 顎当て部
18 角度調節機構

Claims (4)

  1. 筋の弛緩時等下顎が沈下し、それにより、舌根が沈下して起こる気道閉塞を防止するために下顎を挙上して気道を確保するための体外式気道確保補助装置であって、
    仰向けに寝かせた状態の患者の左右両側の下顎角部に接触して該部位をそれぞれ支持するための左右対称の一対の顎当て部を有し、
    前記顎当て部は、前記患者の顎部の荷重を安定して支えることができる支持部に立設された伸縮可能な左右一対の脚部であって、該支持部から支えるべき顎の位置までの距離を調節可能とされた脚部の先端に取り付けられ、
    前記支持部と前記脚部との間又は前記脚部と前記顎当て部との間には角度調節機構が設けられて構成されてなる体外式気道確保補助装置。
  2. 請求項1に記載の体外式気道確保補助装置において、
    前記支持部が患者の首の下を横断する位置に1つ配置される支持台であることを特徴とする体外式気道確保補助装置。
  3. 請求項1又は2に記載の体外式気道確保補助装置において、
    前記一対の顎当て部は、患者の下顎に沿って延在する連結部材で一体的に連結されていることを特徴とする体外式気道確保補助装置。
  4. 請求項1−3のいずれか1項に記載の体外式気道確保補助装置において、さらに、
    患者の頭部を固定するための着脱可能なバンドを有していることを特徴とする体外式気道確保補助装置。
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