以下、本発明に係る表示装置の実施の形態例(以下、単に実施の形態に係る表示装置と記す)を図1〜図21を参照しながら説明する。
この実施の形態に係る表示装置Dは、図1に示すように、光源200から出射された光10が導入される光導波板12と、該光導波板12の背面に対向して設けられ、且つ、多数のアクチュエータ部14が画素に対応して配列された駆動部16を有して構成されている。 駆動部16は、例えばセラミックスにて構成された基体18を有し、該基体18の各画素に応じた位置にアクチュエータ部14が配設されている。前記基体18は、一主面が光導波板12の背面に対向するように配置されており、該一主面は連続した面(面一)とされている。基体18の内部には、各画素に対応した位置にそれぞれ後述する振動部を形成するための空所20が設けられている。各空所20は、基体18の他端面に設けられた径の小さい貫通孔18aを通じて外部と連通されている。
前記基体18のうち、空所20の形成されている部分が薄肉とされ、それ以外の部分が厚肉とされている。薄肉の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって振動部22として機能し、空所20以外の部分は厚肉とされて前記振動部22を支持する固定部24として機能するようになっている。
つまり、基体18は、最下層である基板層18Aと中間層であるスペーサ層18Bと最上層である薄板層18Cの積層体であって、スペーサ層18Bのうち、画素に対応する箇所に空所20が形成された一体構造体として把握することができる。基板層18Aは、補強用基板として機能するほか、配線用の基板としても機能するようになっている。なお、前記基体18は、一体焼成であっても、後付けであってもよい。
各アクチュエータ部14は、図1に示すように、前記振動部22と固定部24のほか、該振動部22上に直接形成された圧電/電歪層や反強誘電体層等の形状保持層26と、該形状保持層26の上面に形成された一対の電極28(ロー電極28a及びカラム電極28b)とを有するアクチュエータ部本体30と、図1に示すように、該アクチュエータ部本体30上に接続され、且つ、光導波板12との接触面積を大きくして画素に応じた面積にする変位伝達部32とを有して構成されている。
即ち、この表示装置Dは、基体18上に、形状保持層26及び一対の電極28からなるアクチュエータ部本体30を形成した構造を有する。一対の電極28は、形状保持層26に対して上下に形成した構造や片側だけに形成した構造であってもかまわないが、基体18と形状保持層26との接合性を有利にするには、この表示装置Dのように、基体18と形状保持層26とが段差のない状態で直接接するように、形状保持層26の上部(基体18とは反対側)のみに一対の電極28を形成した方が好ましい。
ここで、各部材の形状について図2〜図10を参照しながら説明する。まず、図2に示すように、基体18に形成される空所20の周面形状、即ち振動部22の平面形状は円形状とされ(破線参照)、形状保持層26の平面形状(一点鎖線参照)並びに一対の電極28にて形づくられる外周形状(実線参照)も円形状とされている。この場合、振動部22の大きさが最も大きく、次いで一対の電極28の外周形状とされ、形状保持層26の平面形状が最も小さく設定されている。なお、一対の電極28の外周形状が最も大きくなるように設定してもよい。
形状保持層26上に形成される一対の電極28(ロー電極28a及びカラム電極28b)の平面形状は、例えば図3に示すように、これら一対の電極28a及び28bが互いに並行し、且つ、相互に離間された数ターンの渦巻き状とされている。この渦巻きのターン数は、実際は、5ターン以上であるが、図3の例では、図面の複雑化を避けるために3ターンとして記載してある。
そして、各電極28a及び28bに通じる配線は、図2に示すように、多数の画素の行数に応じた本数の垂直選択線40と、多数の画素の列数に応じた本数の信号線42とを有する。各垂直選択線40は、各画素(アクチュエータ部14:図1参照)におけるロー電極28aに電気的に接続され、各信号線42は、各画素14のカラム電極28bに電気的に接続されている。また、前記各垂直選択線40は、前列の画素に関するロー電極28aから導出されて当該画素に関するロー電極28aに接続されて、1つの行に関し、シリーズに配線された形となっている。信号線42は、列方向に延びる本線42aと該本線42aから分岐して各画素14のカラム電極28bに接続される支線42bからなる。
各垂直選択線40への電圧信号の供給は、図示しない配線基板(基体18の他主面に貼り合わされている)からスルーホール44を通じて行われ、各信号線42への電圧信号の供給も、図示しない前記配線基板からスルーホール46を通じて行われるようになっている。
スルーホール44及び46の配置パターンとしては種々のものが考えられるが、図2の例では、垂直選択線40のスルーホール44は、行数をM、列数をNとしたとき、N=M又はN>Mの場合においては、n行n列(n=1,2・・・)の画素の近傍で、且つ、(n−1)列の信号線(本線)寄りの位置に形成され、N<Mの場合においては、(αN+n)行n列(α=0,1・・・(M/Nの商−1))の画素の近傍で、且つ、(n−1)列の信号線(本線)寄りの位置に形成される。
一方、信号線42のスルーホール46は、N=M又はN<Mの場合においては、各信号線42の本線42a上であって、且つ、n行n列(n=1,2・・・)の画素に近接する位置に形成され、N>Mの場合においては、各信号線42の本線42a上であって、且つ、n行(βM+n)列(β=0,1・・・(N/Mの商−1))の画素に近接する位置に形成される。また、垂直選択線40のスルーホール44は、信号線42の場合と異なって、垂直選択線40上に形成されないため、スルーホールと一方の電極28a間にそれらの電気的導通を図るための中継導体48が形成される。
なお、各垂直選択線40と各信号線42とが交差する部分には、互いの配線40及び42間の絶縁をとるためにシリコン酸化膜、ガラス膜、樹脂膜等からなる絶縁膜50(二点鎖線で示す)が介在されている。
前記一対の電極28の平面形状としては、図3に示す渦巻き形状のほかに、図4に示すような形状としてもよい。具体的には、一対の電極28a及び28bが共に、前記形状保持層26上の中心に向かって延びる幹部52及び54と該幹部52及び54から多数枝分かれしてなる枝部56及び58を有する形状を具備し、且つ、一対の電極28a及び28bが、相互に離間されて相補形に配列された形状(以下、便宜的に多枝形状と記す)としてもよい。
上述のような構成を有する表示装置Dでは、振動部22の平面形状、形状保持層26の平面形状及び一対の電極28にて形づくられる外周形状を円形状とした場合を示したが、その他、図5及び図6に示すように長円形状(トラック形状)や、図7に示すように楕円形状としてもよい。
また、図8に示すように、振動部22の平面形状及び形状保持層26の平面形状を共に矩形状とし、コーナー部が角のとれた形状や、図9に示すように、振動部22の平面形状及び形状保持層26の平面形状を共に多角形状(例えば八角形状)とし、各頂角部分が丸みを帯びた形状としてもよい。
また、振動部22の形状、形状保持層26の平面形状、一対の電極28にて形づくられる外周形状は、円と楕円の組合せでもよいし、矩形状と楕円の組合せでもよく、特に限定されるものではない。また、形状保持層26の平面形状は、ここでは図示しないが、リング状とすることも好ましく採用される。この場合も、外周形状として、円、楕円、矩形状等、種々のものが挙げられる。形状保持層26の平面形状をリング状とすることにより、中空部分に電極を形成する必要がないため、変位量を小さくすることなく静電容量を小さくすることができる。
図2、図8及び図9の例では、基体18上での各アクチュエータ部14(画素)の配置をマトリクス状とした例を示したが、その他、図7で示すように、各行に対して画素(アクチュエータ部14)を千鳥状に配置するようにしてもよい。この図7の配置パターンの場合は、各行に関するアクチュエータ部14(画素)の配置が千鳥状となることから、各行に関し、それぞれ垂直選択線40を結ぶライン(一点鎖線aで示す)はジグザグ状とされる。信号線42は、図示しない配線基板において、破線bに示すように、前記千鳥状に配される画素14のうち、例えば垂直方向上側に位置する画素(アクチュエータ部14)に対応する箇所に2本の信号線42を互いに近接させて配線したパターンを有する。そして、図7上、千鳥状に配される画素のうち、例えば垂直方向上側に位置する画素(アクチュエータ部14)のカラム電極28bが、前記互いに近接する2本の信号線42及び42のうち、右側の信号線42と中継導体60及びスルーホール62を通じて電気的に接続され、垂直方向下側に位置する画素(アクチュエータ部14)のカラム電極28bが、前記互いに近接する2本の信号線42及び42のうち、左側の信号線42と中継導体64及びスルーホール66を通じて電気的に接続される。
次に、前記構成を有する表示装置Dの動作を図1を参照しながら簡単に説明する。まず、光導波板12の例えば端部から光10が導入される。この場合、光導波板12の屈折率の大きさを調節することにより、全ての光10が光導波板12の前面及び背面において透過することなく内部で全反射する。この状態において、あるアクチュエータ部14が選択状態とされて、光導波板12の背面に前記アクチュエータ部14に対応する変位伝達部32が光10の波長以下の距離で接触すると、一旦、変位伝達部32の表面に到達した光10は、変位伝達部32の表面で反射して散乱光70として、一部は再度光導波板12の中で反射するが、散乱光70の大部分は光導波板12で反射されることなく、光導波板12の前面を透過することになる。
つまり、光導波板12の背面にある変位伝達部32の接触の有無により、光導波板12の前面における光の発光(漏れ光)の有無を制御することができる。特に、本実施例に係る表示装置Dでは、光導波板12に対して変位伝達部32を接触・離隔方向に変位動作させる1つの単位を1画素とし、更にこの画素を多数マトリクス状、あるいは各行に関し千鳥状に配列するようにしているため、入力される画像信号の属性に応じて各画素での変位動作を制御することにより、陰極線管や液晶表示装置並びにプラズマディスプレイと同様に、光導波板の前面に画像信号に応じた映像(文字や図形等)を表示させることができる。
ここで、光導波板12に入射される光10としては、紫外域、可視域、赤外域のいずれでもよい。光源200としては、白熱電球、重水素放電ランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、トリチウムランプ、発光ダイオード、レーザ、プラズマ光源、熱陰極管、冷陰極管等が用いられる。
次に、形状保持層26として圧電層を用いた場合の各アクチュエータ部14での動作原理を図10の屈曲変位特性に基づいて説明する。図10に示す屈曲変位特性は、アクチュエータ部14におけるロー電極28a及びカラム電極28b間に分極処理のための電圧を印加して、形状保持層26を分極処理した後、アクチュエータ部14に加えられる電圧を連続的に変化させたときのアクチュエータ部14の屈曲変位をみたものである。この例では、図1に示すように、アクチュエータ部14が一方向(光導波板12に接近する方向)に屈曲変位する場合を正方向としている。
具体的に前記屈曲変位特性の測定について一例をあげて説明する。まず、形状保持層26を分極処理するためにロー電極28a及びカラム電極28b間に電圧をかけると、形状保持層26の一主面において面方向に正方向の電界が生じる。
表示装置Dのアクチュエータ部14として使用する電圧の使用範囲(Vr〜Vh)を超えた電圧を例えば7時間、適度な温度下において印加することによって、発生した電界と同じ方向に分極処理される。
その後、ロー電極28a及びカラム電極28b間への電圧印加を停止して電圧無負荷状態とする。そして、測定開始と共に、アクチュエータ部14のロー電極28a及びカラム電極28b間に周波数が1kHz、正側ピーク電圧がVh、負側ピーク電圧がVrのsin波を印加し、各ポイント(点A〜点H)での変位量を連続してレーザ変位計で測定する。このときの測定結果を電界−屈曲変位グラフにプロットしたものが図10の屈曲変位特性である。図10の矢印に示すように、屈曲変位の変位量は、印加電圧の連続的な増減によってある程度のヒステリシスをもって連続的に変化している。
具体的に、まず、測定を点Bで示す電圧無負荷状態(印加電圧=0V)から開始したとすると、この点Bにおいては、形状保持層26に分極処理による一様の電界が生じているだけであるため、形状保持層26に伸びは生じず、変位伝達部32と光導波板12とは離隔された状態、即ち、オフ状態にある。
次に、アクチュエータ部14のロー電極28a及びカラム電極28b間に正側ピーク電圧(Vh)が印加されると、点Eに示すように、アクチュエータ部14は、一方向(光導波板12に接近する方向)に屈曲変位する。このアクチュエータ部14の凸状変形によって変位伝達部32が光導波板12側に変位し、該変位伝達部32は光導波板12に接触することとなる。
変位伝達部32は、アクチュエータ部本体30の屈曲変位に対応して光導波板12の背面に接触するものであるが、変位伝達部32が光導波板12の背面に接触すると、例えば光導波板12内で全反射されていた光10が、光導波板12の背面を透過して変位伝達部32の表面まで透過し、変位伝達部32の表面で反射する。これによって、当該アクチュエータ部14に対応する画素がオン状態となる。
なお、変位伝達部32は、光導波板12の背面を透過した光を反射するため、更には光導波板12との接触面積を所定以上に大きくするために設けられるものである。即ち、変位伝達部32と光導波板12との接触面積により、発光面積が規定される。
そして、前記表示装置Dでは、変位伝達部32は、実質的な発光面積を規定する板部材32aと、アクチュエータ部14の変位を板部材32aに伝達するための変位伝達部材32bを有する。
また、光導波板12に接触する板部材32a以外の部分をブラックマトリクスで覆うことが好ましい。中でも、Cr、Al、Ni、Ag等の金属膜をブラックマトリクスとして使うと光の吸収が小さいため、光導波板12を伝搬する光の減衰、散乱を抑制することができ、特に好ましく用いられる。
次に、アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間への電圧印加を停止して、電圧無負荷状態とした場合、アクチュエータ部14は、凸の状態から元の状態(点Bの状態)に戻ろうとするが、ヒステリシス特性の関係から、完全に点Bの状態までは戻らず、点Bよりも僅かに一方向に変位した状態(点Hの状態)となる。この状態においては、変位伝達部32と光導波板12とは隔離された状態、即ち、OFF状態となっている。
次に、アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間に負側ピーク電圧(Vr)が印加されると、点Aに示すように、前記電圧無負荷状態での僅かな一方向への変位が打ち消されて、完全に元の状態に復元することになる。
従って、図10の屈曲変位特性からもわかるように、正のピーク電圧Vhを動作電圧、負のピーク電圧をリセット電圧として定義することが可能である。以下、この定義に沿って説明を行う。
なお、前記形状保持層26を有するアクチュエータ部14の特徴は以下の通りである。
(1)オフ状態からオン状態へのしきい値特性が形状保持層26が存在しない場合と比して急峻になるため、電圧の振れ幅を狭くでき、回路側の負担を軽減することができる。
(2)オン状態及びオフ状態の差が明確になり、コントラストの向上につながる。
(3)しきい値のばらつきが小さくなり、電圧の設定範囲に余裕が生まれる。
なお、アクチュエータ部14としては、制御の容易性から、例えば上向きに変位するアクチュエータ部14(電圧無負荷で離隔状態、電圧印加時に接触するもの)であることが望ましい。
次に、前記アクチュエータ部14の各構成部材、特に各構成部材の材料等の選定について説明する。
まず、振動部22は、高耐熱性材料であることが好ましい。その理由は、アクチュエータ部14を有機接着剤等の耐熱性に劣る材料を用いずに、固定部24によって直接振動部22を支持させる構造とする場合、少なくとも形状保持層26の形成時に、振動部22が変質しないようにするため、振動部22は、高耐熱性材料であることが好ましい。
また、振動部22は、基体18上に形成される一対の電極28におけるロー電極28aに通じる垂直選択線40とカラム電極28bに通じる信号線42との電気的な分離を行うために、電気絶縁材料であることが好ましい。
従って、振動部22は、高耐熱性の金属あるいはその金属表面をガラス等のセラミック材料で被覆したホーロー等の材料であってもよいが、セラミックスが最適である。
振動部22を構成するセラミックスとしては、例えば安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。安定化された酸化ジルコニウムは、振動部22の厚みが薄くても機械的強度が高いこと、靭性が高いこと、形状保持層26及び一対の電極28との化学反応性が小さいこと等のため、特に好ましい。安定化された酸化ジルコニウムとは、安定化酸化ジルコニウム及び部分安定化酸化ジルコニウムを包含する。安定化された酸化ジルコニウムでは、立方晶等の結晶構造をとるため、相転移を起こさない。
一方、酸化ジルコニウムは、1000℃前後で、単斜晶と正方晶とで相転移し、この相転移のときにクラックが発生する場合がある。安定化された酸化ジルコニウムは、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、酸化スカンジウム、酸化イッテルビウム、酸化セリウム又は希土類金属の酸化物等の安定化剤を、1〜30モル%含有する。振動部22の機械的強度を高めるために、安定化剤が酸化イットリウムを含有することが好ましい。このとき、酸化イットリウムは、好ましくは1.5〜6モル%含有し、更に好ましくは2〜4モル%含有することであり、更に0.1〜5モル%の酸化アルミニウムが含有されていることが好ましい。
また、結晶相は、立方晶+単斜晶の混合相、正方晶+単斜晶の混合相、立方晶+正方晶+単斜晶の混合相等であってもよいが、中でも主たる結晶相が、正方晶、又は正方晶+立方晶の混合相としたものが、強度、靭性、耐久性の観点から最も好ましい。
振動部22がセラミックスからなるとき、多数の結晶粒が振動部22を構成するが、振動部22の機械的強度を高めるため、結晶粒の平均粒径は、0.05〜2μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましい。
固定部24は、セラミックスからなることが好ましいが、振動部22の材料と同一のセラミックスでもよいし、異なっていてもよい。固定部24を構成するセラミックスとしては、振動部22の材料と同様に、例えば、安定化された酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、スピネル、ムライト、窒化アルミニウム、窒化珪素、ガラス、これらの混合物等を用いることができる。
特に、本実施の形態に係る表示装置Dで用いられる基体18は、酸化ジルコニウムを主成分とする材料、酸化アルミニウムを主成分とする材料、又はこれらの混合物を主成分とする材料等が好適に採用される。その中でも、酸化ジルコニウムを主成分としたものが更に好ましい。
なお、焼結助剤として粘土等を加えることもあるが、酸化珪素、酸化ホウ素等のガラス化しやすいものが過剰に含まれないように、助剤成分を調節する必要がある。なぜなら、これらガラス化しやすい材料は、基体18と形状保持層26とを接合させる上で有利ではあるものの、基体18と形状保持層26との反応を促進し、所定の形状保持層26の組成を維持することが困難となり、その結果、素子特性を低下させる原因となるからである。
即ち、基体18中の酸化珪素等は重量比で3%以下、更に好ましくは1%以下となるように制限することが好ましい。ここで、主成分とは、重量比で50%以上の割合で存在する成分をいう。
形状保持層26は、上述したように、圧電/電歪層や反強誘電体層等を用いることができるが、形状保持層26として圧電/電歪層を用いる場合、該圧電/電歪層としては、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらの何れかの組合せを含有するセラミックスが挙げられる。
これらの化合物が50重量%以上を占める主成分であってもよいことはいうまでもない。また、前記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、形状保持層26を構成する圧電/電歪層の構成材料として最も使用頻度が高い。
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、前記セラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、若しくはこれらの何れかの組合せ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、更にランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
形状保持層26として反強誘電体層を用いる場合、該反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
特に下記の組成のようにジルコン酸鉛とスズ酸鉛からなる成分を含む反強誘電体膜をアクチュエータ部14のような膜型素子として適用する場合、比較的低電圧で駆動することができるため、特に好ましい。
Pb0.99Nb0.02[(ZrxSn1-x)1-yTiy]0.98O3
但し、0.5<x<0.6,0.05<y<0.063,0.01<Nb<0.03である。また、この反強誘電体膜は、多孔質であってもよく、多孔質の場合には気孔率が30%以下であることが望ましい。
そして、前記基体18における振動部22の厚みと該振動部22上に形成される形状保持層26の厚みは、同次元の厚みであることが好ましい。なぜなら、振動部22の厚みが極端に形状保持層26の厚みより厚くなると(1桁以上異なると)、形状保持層26の焼成収縮に対して、振動部22がその収縮を妨げるように働くため、形状保持層26と基体18界面での応力が大きくなり、はがれ易くなる。反対に、厚みの次元が同程度であれば、形状保持層26の焼成収縮に基体18(振動部22)が追従し易くなるため、一体化には好適である。具体的には、振動部22の厚みは、1〜100μmであることが好ましく、3〜50μmが更に好ましく、5〜20μmが更になお好ましい。一方、形状保持層26は、その厚みとして5〜100μmが好ましく、5〜50μmが更に好ましく、5〜30μmが更になお好ましい。
前記形状保持層26上に形成される一対の電極28は、用途に応じて適宜な厚さとするが、0.01〜50μmの厚さであることが好ましく、0.1〜5μmが更に好ましい。また、前記一対の電極28は、室温で固体であって、導電性の金属で構成されていることが好ましい。例えば、アルミニウム、チタン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、銀、スズ、タンタル、タングステン、イリジウム、白金、金、鉛等を含有する金属単体又は合金が挙げられる。これらの元素を任意の組合せで含有していてもよいことはいうまでもない。
変位伝達部32の変位伝達部材32bは、アクチュエータ部14の変位を直接光導波板12に伝達できる程度の硬度を有するものが好ましい。従って、前記変位伝達部材32bの材質としては、ゴム、有機樹脂、有機接着フイルム、ガラス等が好ましいものとして挙げられるが、電極層そのものあるいは圧電体ないしは上述したセラミックス等の材質であってもかまわない。最も好ましくは、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリオレフィン系等の有機樹脂又は有機接着フイルムがよい。更に、これらにフィラーを混ぜて硬化収縮を抑制することも有効である。
板部材32aの材質としては、前記変位伝達部材32bの材料のほか、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系等の有機樹脂に高屈折率を有するセラミック粉末、例えばジルコニア粉末、チタニア粉末、酸化鉛粉末、それらの混合粉末等を高分散させた材料が、発光効率、平坦性維持の点で望ましい。この場合、樹脂重量:セラミック粉末重量=1:(0.1〜10)がよい。更に、前記組成に平均粒径0.5〜10μmのガラス粉末をセラミック粉末に対して1:(0.1〜1.0)の割合で添加すると、光導波板12の面との接触性、離型性が改良されるため好ましい。
なお、前記板部材32aは、光導波板12と接触する部分(面)の平坦度、平滑度が、アクチュエータ部14の変位量に比較して十分小さくすることが好ましく、具体的には、1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.1μm以下である。但し、変位伝達部32の光導波板12と接触する部分(面)の平坦度は、変位伝達部32が光導波板12に接触した状態での隙間を減ずるために重要であって、接触した状態で当該接触部分が変形するものであれば前記平坦度に必ずしも限定されるものではない。
前記変位伝達部32のアクチュエータ部本体30への接続は、変位伝達部32として上述した材料を使用する場合には、接着剤を使って上述した材料の変位伝達部32を積層するか、上述した材料の溶液、ペーストないしスラリーをコーティングする等の方法によりアクチュエータ部本体30の上部、あるいは光導波板12上に形成することにより行えばよい。
前記変位伝達部32をアクチュエータ部本体30に接続する場合は、好ましくは、変位伝達部材32bの材料を接着剤として兼ねる材料とすればよい。特に、有機接着フイルムを用いれば、熱をかけることで接着剤として使えるため、好ましい。
光導波板12は、その内部に導入された光10が前面及び背面において光導波板12の外部に透過せずに全反射するような光屈折率を有するものであり、導入される光10の波長領域での透過率が均一で、且つ、高いものであることが必要である。このような特性を具備するものであれば、特にその材質は制限されないが、具体的には、例えばガラス、石英、アクリル等の透光性プラスチック、透光性セラミックス等、あるいは異なる屈折率を有する材料の複数層構造体、又は表面にコーティング層を設けたもの等が一般的なものとして挙げられる。
そして、この実施の形態に係る表示装置Dの周辺回路は、図11に示すように、多数のアクチュエータ部14がマトリクス状、あるいは千鳥状に配列された駆動部16における前記垂直選択線40に選択的に駆動信号を供給して、1行単位にアクチュエータ部14を順次選択する垂直選択線駆動回路100と、前記駆動部16の信号線42にパラレルにデータ信号を出力して、前記垂直選択線駆動回路100にて選択された行(選択行)の画素(アクチュエータ部)14にそれぞれデータ信号を供給するデータ線駆動回路102と、入力される映像信号Sv及び同期信号Ssに基づいて垂直選択線駆動回路100及びデータ線駆動回路102を制御する信号制御回路104とを有して構成されている。
従って、前記垂直選択線駆動回路100にて1つの行が選択され、データ線駆動回路102からデータ信号が出力されると、選択行に関する各画素に対して、それぞれの階調に応じた電圧が印加されることになる。
そして、前記垂直選択線駆動回路100には、内部のロジック回路での論理演算のためのロジック電源電圧と、2種類の垂直選択線用電源電圧が電源部106を通じて供給され、データ線駆動回路102には、前記ロジック電源電圧と、2種類のデータ線用電源電圧が同じく電源部106を通じて供給されている。
信号制御回路104は、その内部にタイミングコントローラ、フレームメモリ及びI/Oバッファを有し、垂直選択線駆動回路100に通じる制御線108並びにデータ線駆動回路102に通じる制御線110を通じてこれら垂直選択線駆動回路100及びデータ線駆動回路102を電圧変調方式で階調制御するように構成されている。
前記垂直選択線駆動回路100及びデータ線駆動回路102は、次の点を特徴とすることが望ましい。
(1)アクチュエータ部14が容量性負荷となるため、該容量性負荷を駆動することを考慮に入れて、例えばアクチュエータ部14を屈曲変位させる電圧(動作電圧)の印加終了時に容量性負荷に加わる分圧比が50%以上であることが望ましい。
(2)画素のオン状態及びオフ状態が表現できるだけのアクチュエータ部14の変位量を得るために、20V以上の電圧出力が可能であることが望ましい。
(3)出力電流の向きが双方向にとられることを考慮に入れることが望ましい。
(4)行方向及び列方向の2電極構造の負荷を駆動することができるものとすることが望ましい。
ここで、電圧変調方式による階調制御の2つの方式(第1及び第2の駆動方式)について、図12〜図19を参照しながら説明する。
まず、第1の駆動方式は、図12に示すように、1枚の画像の表示期間を1フィールドとしたとき、例えば図13に示すように、形状保持機能を有するアクチュエータ部14が印加電圧のレベルに応じてアナログ的に変位することを利用するものであり、画素への印加電圧を階調表現の分解能に応じて複数に分割(等分割あるいは任意の分割)し、画素の階調に合わせた電圧をアクチュエータ部14に印加することで電圧制御方式による階調制御を達成することができる。
具体的には、図12の選択期間Tsに、図11に示す垂直選択線駆動回路100にて、例えば1つの行を選択している場合において、当該選択行に配列される多数のアクチュエータ部14に対し、データ線駆動回路102を通じて各アクチュエータ部14の階調に応じた電圧が印加される。各アクチュエータ部14は、印加された電圧のレベルに応じて一方向に変位し、図13の例では、電圧V1,V2,・・・Vnに対して変位量がZ1,Z2,・・・Znというように、線形的に変位することになる。
そして、例えばアクチュエータ部14が変位量Z1ほど変位した時点で、例えば図14に示すように、変位伝達部32の板部材32aの一主面と光導波板12の背面との間の距離Dが光10(光導波板12に導入される光10)の波長λに相当する距離となり、例えば変位量Znほど変位した時点で、理想的には板部材32aの一主面が光導波板12の背面に完全に密着する。
変位伝達部32が光導波板12の裏面に向かって接近し、該変位伝達部32の板部材32aの一主面と光導波板12の背面間の距離が光10の波長λ以下となった場合、その距離が短くなるにつれて光導波板12の表面から放射される散乱光の光量が多くなり、当該アクチュエータ部14に対応する画素の輝度レベルが高くなる。
この現象は、以下の2つの根拠から説明できる。即ち、まず、第1の根拠は、画素のドット面積と接触性である。アクチュエータ部14が一方向に変位して変位伝達部32の板部材32aの一主面が光導波板12の背面に接近する際、一般に、該板部材32aの一部が光導波板12の背面に接触し、アクチュエータ部14の変位量の増加に応じて板部材32aの前記光導波板12との接触部分が多くなる。この接触部分の面積が増えることによって、板部材32aの表面で反射する光(散乱光)の量が増加し、当該アクチュエータ部14に対応する画素の輝度レベルが高くなる。反対に、アクチュエータ部14の変位量が減少して、板部材32aが光導波板12から離間すると、その離間幅Dに応じて画素の輝度レベルが低下する。
第2の根拠は、以下のエバネッセント効果で説明することができる。一般に、光導波板12における例えば背面の周囲には、図14に示すように、光のしみ出し(エバネッセント波)による領域(エバネッセント領域)120が存在する。そして、このエバネッセント領域120の深さdpは、光導波板12と外部空間との界面(この例では、光導波板12の背面)におけるエバネッセント波のエネルギー値が1/eになる深さを示し、以下の(1)式で与えられ、また、エバネッセント波のエネルギーEは、以下の(2)式で与えられる。
dp=λ/[2πn1√{sin2θ−(n2/n1)2}] …(1)
E=exp{−(D/dp)} …(2)
ここで、λは光10の波長を示し、θは図14に示すように、光導波板12から外部空間に光10が入射するときの角度(入射角)を表す。また、n1は光導波板12の光屈折率を示し、n2は外部空間の光屈折率を示す。
前記(1)式により、前記深さdpは、光10の波長λが増加するにつれて大きくなり、入射角θが臨界角に近づくほど大きくなることが予想できる。一方、エバネッセント波のエネルギーEは、(2)式に示すように、光導波板12の裏面に近づくほど大きく、前記光導波板12の裏面から離れるに従って指数関数的に減衰する。変位伝達部32の板部材32aの表面にて反射される光(散乱光70)の光量は、前記エバネッセント波のエネルギーEに比例することから、散乱光70の光量も、板部材32aが光導波板12の裏面に近づくほど多くなり、前記光導波板12の裏面から離れるに従って指数関数的に減少することになる。
前記選択期間Tsの終了時点からリセットパルスPrの印加時点までの非選択期間Tuにおいては、アクチュエータ部14における形状保持層26の形状保持効果により、当該アクチュエータ部14は、非選択期間Tuにわたって選択期間終了時の変位量を保持し続け、当該画素の発光状態が一定期間維持される。
次に、第2の駆動方式について図15〜図19を参照しながら説明する。この第2の駆動方式は、光導波板12の表面に静止画像を表示させるか、あるいは動画像を表示させるかによって、その時間制御が異なる。
具体的には、静止画像を表示させる場合においては、図15Aに示すように、動画像における1枚の画像を表示する期間を1フィールドとしたとき、静止画像の最小表示期間Tsi(最小静止画像表示期間)は、図15Bに示すように、前記1フィールドよりもかなり長い期間が設定される。この最小静止画像表示期間Tsiは、1枚の画像の表示開始時点tsから最初のリフレッシュを行う時点trまでの期間が相当し、表示装置の構造(CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等)によって左右される。例えば記憶作用のないCRTでは動画像を表示する場合と同様の1フィールドが設定され、液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイでは、液晶及びプラズマの放電時間を考慮して最小静止画像表示期間Tsiが設定される。
液晶ディスプレイ及びプラズマディスプレイは、CRTと異なって記憶作用があるため、一般に、前記最小静止画像表示期間Tsiは、1フィールドよりも長い期間が設定される。
そして、本実施の形態に係る表示装置Dの第2の駆動方式においては、図16A〜図16Cに示すように、垂直選択線駆動回路100を通じて選択された画素群に対応する各アクチュエータ部14に対し、行走査の開始時点t0で1つ又はそれ以上の微小パルスP1〜P6を有する駆動信号をデータ線駆動回路102を通じて供給する。図16Aは、ある列の画素群に対して1行単位に駆動信号を供給している例のタイミングチャートを示し、図16Bは当該列の任意の行におけるアクチュエータ部(画素)14に対して前記駆動信号を供給する場合の波形図を示す。また、図16Cは駆動信号の供給による画素の表示輝度の変化を示し、この例では、例えば最大階調6(微小パルスP1〜P6)に対して、階調レベル4(P1〜P4)を表示する場合を示している。
前記駆動信号は、図16Bからもわかるように、その画素が表示すべき階調レベルに応じた個数の微小パルスを有し、そのパルス周期Tpcは、垂直選択線駆動回路100によって全行(第1行〜第n行)を選択する期間(微小パルス走査期間)Tssか、あるいは該微小パルス走査期間Tssよりも短い期間とされている。もちろん、前記微小パルス走査期間Tssよりも長く設定してもよい。図16A及び図16Bの例では、微小パルスのパルス周期Tpcを微小パルス走査期間Tssと同じに設定してある。
この場合、アクチュエータ部14に印加されるパルス信号としてパルス幅が非常に短い微小パルスを用いているため、各微小パルス走査期間(Tss)は非常に短く、走査開始時点t0から最大階調6に対応する微小パルスP6の走査期間(Tss)の終了時点t6(=ts)までの期間(微小パルス印加期間)Tpiも最小静止画像表示期間Tsiと比して非常に短いものとなる。
そして、1つの微小パルスがアクチュエータ部14に印加されると、アクチュエータ部14は、そのパルスのエネルギー(電力)に応じた分だけ一方向に変位する。この現象を図17に示す。この図17は、光導波板12の表面のうち、測定対象のアクチュエータ部14に対応する箇所にフォトダイオードを設置し、当該アクチュエータ部14に種々の電圧を印加した場合のフォトダイオードの出力強度をみたものである。
この図17からもわかるように、ピーク値が130Vである微小パルスPが当該アクチュエータ部14に印加された時点で当該アクチュエータ部14に対応した画素が発光し、また、ピーク値が−50VのリセットパルスPrが印加された時点で当該画素が消光している。
このように、微小パルスPの電力に応じた分だけアクチュエータ部14が変位することから、図18に示すように、1つの微小パルスP1の印加によるアクチュエータ部14の変位量を1オフセット量Zo1と定義した場合、アクチュエータ部14は、2つの微小パルスP1及びP2の印加によって2オフセット量Zo2ほど変位し、3つの微小パルスP1〜P3の印加によって3オフセット量Zo3ほど変位し、4つの微小パルスP1〜P4の印加によって4オフセット量Zo4ほど変位する。一般的には、アクチュエータ部14は、n個の微小パルスP1〜Pnの印加によってnオフセット量Zonだけ変位することになる。
この場合、上述したように、アクチュエータ部14の変位量が多くなるに従って光導波板12の裏面に対する板部材32aの接触面積が増え、あるいは図14に示すように、光導波板12の裏面周囲に存在するエバネッセント領域120への突入量tが増加することから、図16Cに示すように、当該アクチュエータ部14に対応する画素の表示輝度もE1〜E4というように増加することになる。即ち、当該画素の階調が微小パルスPの個数によって制御されることになる。
また、微小パルス印加期間Tpi(図16A参照)を過ぎた段階では、アクチュエータ部14における形状保持層26の形状保持効果により、当該アクチュエータ部14は、微小パルス印加期間Tpi終了時の変位量を保持し続け、当該画素の発光状態が一定期間維持される。
そして、光導波板12の表面に静止画像を表示させる場合においては、前記微小パルス印加期間Tpiの終了後一定期間が経過する前に、即ち、アクチュエータ部14の変位量が低減する前に、1つの微小パルス(リフレッシュパルス)Prfをアクチュエータ部14に印加する。この操作は、全てのアクチュエータ部14に対して順次行われる。
このアクチュエータ部14に対するリフレッシュパルスPrfの印加によって、各アクチュエータ部14の変位量が微小パルス印加期間Tpiの終了時点における変位量まで復元され、アクチュエータ部14の変位は、更に一定期間維持されることになる。この操作を順次繰り返すことによって、光導波板12の表面には静止画像が表示されることになる。
なお、図12及び図13に基づいて説明した前記第1の駆動方式において、例えば静止画像を表示させる場合は、例えば図15Bに示すように、最小静止画像表示期間Tsiの終了時に、前記データ線駆動回路102を通じて、表示画像に応じてアナログ調整されたリフレッシュ電圧を各アクチュエータ部14に印加すればよい。
次に、この第2の駆動方法において、光導波板12の表面に動画像を表示させる場合について説明すると、この動画像を表示する場合も、基本的には、上述の静止画像を表示する場合とほとんど同じであるが、図19に示すように、1枚の画像を表示する期間を1フィールドとしたとき、各フィールドの終了の際に、前記データ線駆動回路102を通じて、前記アクチュエータ部14の変位をリセットさせるに十分な電圧を有するリセットパルスPrが印加される点で異なる。
この場合、微小パルス印加期間Tpiがすぐに終了するため、全画素に対してリセットパルスPrを印加する期間(リセット走査期間)Trsと前記微小パルス印加期間Tpiとは干渉することがなく、前記リセット走査期間Trsを前記微小パルス印加期間Tpiよりも長く設定することができる。これは、各画素に対するリセットパルスPrの印加期間を長くできることにつながり、各画素の変位を確実にリセットすることができる。
このように、この第2の駆動方法においては、アクチュエータ部14に対してその階調に応じた分の微小パルス信号を印加させるだけでよいため、非常に高速な行走査が可能となり、高品位の画像表示に容易に対応させることができる。
特に、デジタルデータをアナログ信号に変換するためのD/A変換器が不要となり、しかも、表示階調の範囲を広くしても、複雑な電圧切換えや電圧選択等を行う必要がないため、使用電圧の設定数を最小限に抑えることができ、周辺回路系(第1及び第2の駆動回路を含む)の構成の簡略化を実現させることができる。
また、前記光導波板12の表示面に静止画像を表示させる場合にあっては、各アクチュエータ部14に対する定期的なリフレッシュパルスPrfの印加により、各アクチュエータ部14の変位状態がその階調レベルまで復元されるため、前記最小静止画像表示期間Tsi以上に静止画像表示を維持させることができる。これにより、静止画像表示の応用例の一種である、いわゆる電子ポスタ等に用いて好適となる。これは、第1の駆動方式で静止画像を表示させる場合も同様である。
また、前記光導波板12の表示面に動画像を表示させる場合にあっては、1フィールドの開始時点t0において微小パルス信号が階調に応じた回数ほど印加され、1フィールドの終了時点においてリセットパルスPrが印加されるだけであり、その間におけるアクチュエータ部14への電圧印加等は不要とされる。そのため、アクチュエータ部14を駆動するためにかかる消費電力を大幅に低減することができ、しかも、信号処理における時間的な余裕を持たせることができる。その結果、より高速な処理、例えばハイビジョン画像の表示やコンピュータグラフィックスの表示等への移行にも容易に対応させることができる。
この実施の形態では、最大階調を6としたが、最大階調を7以上にしてもよい。一定のパルス幅及び一定の振幅とした場合には、最大階調の数に応じて、微小パルス印加期間Tpiが長くなるため、動画像表示において輝度不足になるおそれがある。そのため、各微小パルス信号のパルス幅及び/又は振幅は、最大の表示階調と許容できる微小パルス印加期間Tpiを考慮して設定することが好ましい。
また、上述したように、エバネッセント領域120の深さdpは、光10の波長λが長くなるに従って大きくなり、光導波板12に対する光10の入射角θが臨界角に近づくほど大きくなることから、光源200から光導波板12に赤色光、緑色光及び青色光を導入した場合を想定した場合、各光は波長が異なるため、各光でのエバネッセント領域120の深さdp及びエバネッセント波のエネルギー分布も異なる。
このことから、R/G/B別に微小パルスPのパルス幅及び振幅を設定することにより、1つの微小パルスの印加によるアクチュエータ部14の変位量(1オフセット量Zo1)をR/G/B別に任意に調整することができ、輝度の向上及びコントラストの向上を容易に図ることができる。
また、前記光導波板12に対する光の入射角θを前記光導波板12に導入される光の波長λに応じて設定するようにしてもよい。例えば、R/G/B別に光源200の位置をずらす、あるいはR/G/Bに対応して3種の光源200を設置する。これによって、各光(R/G/B)でのエバネッセント波のエネルギー分布をほぼ同じにすることが可能となり、各光(R/G/B)間での輝度ばらつきを有効に補正することができる。
R/G/Bの切り換えは、熱陰極管、冷陰極管、発光ダイオード、レーザ等のRGB光源に対して、機械的シャッタやスイッチのON/OFFを利用することにより実現できる。また、RGB以外の紫外、単色可視光、赤外光源に対しては、例えば三原色フィルタ、補色フィルタ、不透明体で例えば樹脂等に顔料等の色素を散乱させたもの、蛍光体等を組み合わせて使用することにより実現できる。
ところで、光源200から出射され、光導波板12に導入される光10が可視光である場合、光導波板12内の欠陥(傷や異物等)によって散乱光が発生するおそれがあり、コントラストを損ねる場合がある。
また、実施の形態に係る表示装置Dにおいては、光導波板12に対するアクチュエータ部14の接触・離隔方向の変位動作を制御して、光導波板12の所定部位の漏れ光70を制御することにより画像を表示しているが、画素の接触が不完全になると、表示輝度が小さくなるおそれがある。これを解決するには、変位伝達部32として柔軟性をもったもので構成する方法が考えられるが、応答性の点で不利になるという問題がある。
そこで、以下に示す本実施の形態に係る表示装置Dの変形例Da及びDbにおいては、図20及び図21に示すように、光源200から出射されて光導波板12に導入される光10を不可視光とし、この不可視光10によって励起されて所定の可視光204が発光される蛍光体(図20及び図21の例では蛍光体層202)を画素に形成して構成する。
図20の第1の変形例に係る表示装置Daでは、変位伝達部32の板部材32aの上面に蛍光体層202を形成した場合を示し、図21の第2の変形例に係る表示装置Dbでは、前記板部材32aの代わりに蛍光体層202を形成した場合を示す。また、前記不可視光10としては紫外光や赤外光があるが、いずれを使用してもよい。なお、その他の構成は、図1に示す本実施の形態に係る表示装置Dと同じであるため、その詳細な説明を省略する。
前記第1及び第2の変形例に係る表示装置Da及びDbの具体例を示すと、光源200として、例えば赤外線光源を使用でき、画素に形成する発光体(図20及び図21の例では蛍光体層202)として赤外光励起による蛍光体を用いることができる。この場合、赤外光励起蛍光体について特に限定はなく、赤外輝尽効果を利用するものや、量子計数作用を利用するもの、多段エネルギー伝達によるもの等を用いることができる。
また、この表示装置Da及びDbにおいては、赤外光とともに輝尽励起光源を併用することで輝尽性蛍光体を用いることが可能であり、カラー表示を行う場合、光の三原色である赤、緑及び青色発光をそれぞれ示す3種類の蛍光体材料を用いて、それらを2次元的なパターンに並べて形成することが可能である。
光源200としては、蛍光体を励起するのに必要な波長の光を含み、励起に十分なエネルギー密度を有していれば、特に制限はない。例えば、赤外光励起蛍光体に対しては、赤外線レーザ、ハロゲンランプ等が好ましく用いられる。
このように、前記第1及び第2の変形例に係る表示装置Da及びDbにおいては、光導波板12に導入される光10として不可視光を用いるようにしたので、画素発光以外での光導波板12内での可視光の発光が皆無となり、コントラストの向上に有利になる。
また、光源200から出射される不可視光10のエネルギー密度、波長、入射角を調整することにより、有効なエバネッセント領域120の深さdp(図14参照)を大きくとることができ、画素の接触が不完全でも輝度の大きい表示が可能となる。
この場合、画素の接触性を考慮した設計(柔軟性のある材料を用いた設計)から、応答性を重視した剛性の高い設計に改善することができる。これは、行走査の更なる高速化につながり、高品位の画像表示への実現が非常に容易になる。
また、階調制御の変調方式については、上述した電圧変調方式や時間変調方式の全てが適用できるが、特に電圧変調方式を用いた場合、有効なエバネッセント領域120の深さdpが大きくなるため、多階調化に有利になる。
特に、例えば図20に示すように、光導波板12の側面に対する光源200からの不可視光10の入射角をθ、この不可視光10が光導波板12の表面に達したときの空気に対する入射角をθwとしたとき、エネルギー密度が大きいほど、波長が大きいほど、入射角θ(但し、入射角θwが臨界角より大きいことが必須条件)が大きいほど有利になる。
なお、この発明に係る表示装置は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。