以下、本発明に係るディスプレイの駆動装置及びディスプレイの駆動方法の実施の形態例(以下、単に実施の形態に係る駆動装置と記す)を図1〜図48Bを参照しながら説明するが、その前に、本実施の形態に係る駆動装置が適用されるディスプレイの構成について図1〜図28を参照しながら説明する。
ディスプレイの全体構成
このディスプレイDは、図1に示すように、光源(図示せず)からの光10が導入される光導波板12と、該光導波板12の背面に対向して設けられ、かつ多数のアクチュエータ部14が画素に対応して配列された駆動部16を有して構成されている。
駆動部16は、例えばセラミックスにて構成されたアクチュエータ基板18を有し、該アクチュエータ基板18の各画素に応じた位置にアクチュエータ部14が配設されている。前記アクチュエータ基板18は、一主面が光導波板12の背面に対向するように配置されており、該一主面は連続した面(面一)とされている。アクチュエータ基板18の内部には、各画素に対応した位置にそれぞれ後述する振動部を形成するための空所20が設けられている。各空所20は、アクチュエータ基板18の他主面に設けられた径の小さい貫通孔18aを通じて外部と連通されている。
前記アクチュエータ基板18のうち、空所20の形成されている部分が薄肉とされ、それ以外の部分が厚肉とされている。薄肉の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって振動部22として機能し、空所20以外の部分は厚肉とされて前記振動部22を支持する固定部24として機能するようになっている。
つまり、アクチュエータ基板18は、最下層である基板層18Aと中間層であるスペーサ層18Bと最上層である薄板層18Cの積層体であって、スペーサ層18Bのうち、画素に対応する箇所に空所20が形成された一体構造体として把握することができる。基板層18Aは、補強用基板として機能するほか、配線用の基板としても機能するようになっている。なお、前記アクチュエータ基板18は、一体焼成であっても、後付けであってもよい。
各アクチュエータ部14は、図示するように、前記振動部22と固定部24のほか、該振動部22上に直接形成された圧電/電歪層や反強誘電体層等の形状保持層26と、該形状保持層26の上面に形成された一対の電極28(ロー電極28a及びカラム電極28b)とを有するアクチュエータ部本体30と、図1に示すように、該アクチュエータ部本体30上に接続され、かつ光導波板12との接触面積を大きくして画素に応じた面積にする変位伝達部32とを有して構成されている。
即ち、このディスプレイDは、アクチュエータ基板18上に、形状保持層26及び一対の電極28からなるアクチュエータ部本体30を形成した構造を有する。一対の電極28は、形状保持層26に対して上下に形成した構造や片側だけに形成した構造でもかまわないが、アクチュエータ基板18と形状保持層26との接合性を有利にするには、このディスプレイDのように、アクチュエータ基板18と形状保持層26とが段差のない状態で直接接するように、形状保持層26の上部(アクチュエータ基板18とは反対側)のみに一対の電極28を形成した方が好ましい。
各構成部材の形状等の説明
各部材の形状については、特開平10−78549号公報に詳細に説明されているため、ここでは簡単に説明する。
まず、振動部22及び形状保持層26の平面形状は、円形状、長円形状(トラック形状)、楕円形状、矩形状(コーナー部が角のとれた形状を含む)、多角形状(例えば八角形状で各頂角部分が丸みを帯びた形状を含む)などである。
この場合、振動部22の大きさが最も大きく、次いで一対の電極28の外周形状とされ、形状保持層26の平面形状が最も小さく設定されている。なお、一対の電極28a及び28bの外周形状が最も大きくなるように設定してもよい。
一対の電極28(ロー電極28a及びカラム電極28b)の平面形状は、図2に示すように、多数のくし歯が相補的に対峙した形状としてもよく、その他、特開平10−78549号公報にも示されているように、渦巻き状や多枝形状などを採用することができる。
形状保持層26の平面形状を例えば楕円形状とし、一対の電極28をくし歯状に形成した場合は、図3A及び図3Bに示すように、形状保持層26の長軸に沿って一対の電極28のくし歯が配列される形態や、図4A及び図4Bに示すように、形状保持層26の短軸に沿って一対の電極28のくし歯が配列される形態などがある。
そして、図3A及び図4Aに示すように、一対の電極28のくし歯の部分が形状保持層26の平面形状内に含まれる形態や、図3B及び図4Bに示すように、一対の電極28のくし歯の部分が形状保持層26の平面形状からはみ出した形態などがある。図3B及び図4Bに示す形態の方がアクチュエータ部14の屈曲変位において有利である。
一対の電極28としては、例えば図5に示すように、形状保持層26の下面に例えばロー電極28aを形成し、形状保持層26の上面にカラム電極28bを形成するようにしてもよい。
この場合、図1に示すように、アクチュエータ部14を光導波板12側に凸となるように、一方向に屈曲変位させることが可能であるほか、アクチュエータ部14を空所20側に凸となるように、他方向に屈曲変位させることも可能である。
そして、各電極28a及び28bに通じる配線は、図6の例に基づいて説明すると、多数の画素の行数に応じた本数の垂直選択線40と、多数の画素の列数に応じた本数の信号線42とを有する。
各垂直選択線40は、各画素(アクチュエータ部14:図1参照)におけるロー電極28aに電気的に接続され、各信号線42は、各画素14のカラム電極28bに電気的に接続されている。また、前記各垂直選択線40は、前列の画素に関するロー電極28aから導出されて当該画素に関するロー電極28aに接続されて、1つの行に関し、シリーズに配線された形となっている。信号線42は、列方向に延びる本線42aと該本線42aから分岐して各画素14のカラム電極28bに接続される支線42bからなる。
各垂直選択線40への電圧信号の供給は、図示しない配線基板(アクチュエータ基板18の他主面に貼り合わされている)からスルーホール44を通じて行われ、各信号線42への電圧信号の供給も、図示しない前記配線基板からスルーホール46を通じて行われるようになっている。
垂直選択線40のスルーホール44は、信号線42の場合と異なって、垂直選択線40上に形成されないため、スルーホールと一方の電極28a間にそれらの電気的導通を図るための中継導体48が形成される。
なお、各垂直選択線40と各信号線42とが交差する部分には、互いの配線40及び42間の絶縁をとるためにシリコン酸化膜、ガラス膜、樹脂膜等からなる絶縁膜50(二点鎖線で示す)が介在されている。
また、振動部22の形状、形状保持層26の平面形状、一対の電極28にて形づくられる外周形状は、円と楕円の組み合わせでもよいし、矩形状と楕円の組み合わせでもよく、特に限定されるものではない。また、形状保持層26の平面形状は、ここでは図示しないが、リング状とすることも好ましく採用される。この場合も、外周形状として、円、楕円、矩形状など種々のものが挙げられる。形状保持層26の平面形状をリング状とすることにより、中空部分に電極を形成する必要がないため、変位量を小さくすることなく静電容量を小さくすることができる。
図6の例では、アクチュエータ基板18上での各アクチュエータ部14(画素)の配置をマトリクス状とした例を示したが、その他、各行に対して画素(アクチュエータ部14)を千鳥状に配置するようにしてもよい。
形状保持層の説明
ところで、形状保持層26として、圧電/電歪層を用いる場合、該圧電/電歪層としては、例えば、ジルコン酸鉛、マグネシウムニオブ酸鉛、ニッケルニオブ酸鉛、亜鉛ニオブ酸鉛、マンガンニオブ酸鉛、マグネシウムタンタル酸鉛、ニッケルタンタル酸鉛、アンチモンスズ酸鉛、チタン酸鉛、チタン酸バリウム、マグネシウムタングステン酸鉛、コバルトニオブ酸鉛等、又はこれらの何れかの組合せを含有するセラミックスが挙げられる。これらの化合物が50重量%以上を占める主成分であってもよいことはいうまでもない。また、上記セラミックスのうち、ジルコン酸鉛を含有するセラミックスは、本実施の形態の圧電/電歪層の構成材料として最も使用頻度が高い。
また、圧電/電歪層をセラミックスにて構成する場合、上記セラミックスに、更に、ランタン、カルシウム、ストロンチウム、モリブデン、タングステン、バリウム、ニオブ、亜鉛、ニッケル、マンガン等の酸化物、若しくはこれらの何れかの組合せ、又は他の化合物を、適宜、添加したセラミックスを用いてもよい。
例えば、マグネシウムニオブ酸鉛とジルコン酸鉛及びチタン酸鉛とからなる成分を主成分とし、更にランタンやストロンチウムを含有するセラミックスを用いることが好ましい。
圧電/電歪層は、緻密であっても、多孔質であってもよく、多孔質の場合、その気孔率は40%以下であることが好ましい。
形状保持層26として、反強誘電体層を用いる場合、該反強誘電体層としては、ジルコン酸鉛を主成分とするもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分を主成分とするもの、更にはジルコン酸鉛に酸化ランタンを添加したもの、ジルコン酸鉛とスズ酸鉛とからなる成分に対してジルコン酸鉛やニオブ酸鉛を添加したものが望ましい。
特に下記の組成のようにジルコン酸鉛とスズ酸鉛からなる成分を含む反強誘電体膜をアクチュエータ部14のような膜型素子として適用する場合、比較的低電圧で駆動することができるため、特に好ましい。
Pb0.99Nb0.02[(ZrxSn1-x)1-yTiy]0.98O3
但し、0.5 <x< 0.6,0.05<y< 0.063,0.01<Nb< 0.03
また、この反強誘電体層は、多孔質であっても良く、多孔質の場合には気孔率30%以下であることが望ましい。
そして、振動部22の上に形状保持層26を形成する方法としては、スクリーン印刷法、ディッピング法、塗布法、電気泳動法等の各種厚膜形成法や、イオンビーム法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、化学気相蒸着法(CVD)、めっき等の各種薄膜形成法を用いることができる。
この実施の形態においては、振動部22上に前記形状保持層26を形成するにあたっては、スクリーン印刷法やディッピング法、塗布法、電気泳動法等による厚膜形成法が好適に採用される。
これらの手法は、平均粒径0.01〜5μm、好ましくは0.05〜3μmの圧電セラミックスの粒子を主成分とするペーストやスラリー、又はサスペンション、エマルジョン、ゾル等を用いて形成することができ、良好な圧電作動特性が得られるからである。
特に、電気泳動法は、膜を高い密度で、かつ、高い形状精度で形成することができることをはじめ、「電気化学および工業物理化学 Vol.53,No.1(1985),p63〜68 安斎和夫著」あるいは「第1回電気泳動法によるセラミックスの高次成形法 研究討論会 予稿集(1998),p5〜6,p23〜24」等の技術文献に記載されるような特徴を有する。従って、要求精度や信頼性等を考慮して、適宜、手法を選択して用いるとよい。
ディスプレイの動作説明
次に、前記構成を有するディスプレイDの動作を図1を参照しながら簡単に説明する。まず、光導波板12の例えば端部から光10が導入される。この場合、光導波板12の屈折率の大きさを調節することにより、全ての光10が光導波板12の前面及び背面において透過することなく内部で全反射する。この状態において、あるアクチュエータ部14が選択状態とされて、光導波板12の背面に前記アクチュエータ部14に対応する変位伝達部32が光の波長以下の距離で接触すると、それまで全反射していた光10は、光導波板12の背面に接触している変位伝達部32の表面まで透過する。
一旦、変位伝達部32の表面に到達した光10は、変位伝達部32の表面で反射して散乱光52として、一部は再度光導波板12の中で反射するが、散乱光52の大部分は光導波板12で反射されることなく、光導波板12の前面を透過することになる。
つまり、光導波板12の背面にある変位伝達部32の接触の有無により、光導波板12の前面における光の発光(漏れ光)の有無を制御することができる。特に、本実施例に係るディスプレイでは、光導波板12に対して変位伝達部32を接触・離隔方向に変位動作させる1つの単位を1画素とし、更にこの画素を多数マトリクス状、あるいは各行に関し千鳥状に配列するようにしているため、入力される画像信号の属性に応じて各画素での変位動作を制御することにより、陰極線管や液晶ディスプレイ並びにプラズマディスプレイと同様に、光導波板の前面に画像信号に応じた映像(文字や図形等)を表示させることができる。
アクチュエータ部の動作原理
次に、形状保持層26として圧電層を用いた場合の各アクチュエータ部14での動作原理を図7の屈曲変位特性と図8の電荷−印加電圧特性に基づいて説明する。
図7に示す屈曲変位特性は、アクチュエータ部14に加えられる電圧を連続的に変化させたときのアクチュエータ部14の屈曲変位をみたものである。この例では、図1に示すように、アクチュエータ部14が一方向(光導波板12に接近する方向)に屈曲変位する場合を正方向としている。
図8に示す電荷−印加電圧特性は、同じくアクチュエータ部14に加えられる電圧を連続的に変化させた場合に、アクチュエータ部14における一対の電極28a及び28b間に蓄積される電荷量Qの変化をみたものである。図1に示すディスプレイDにおいては、図6に基づいて説明したように、一対の電極28a及び28bのうち、ロー電極28aに垂直選択線40が接続され、カラム電極28bに信号線42が接続されていることから、図7及び図8の横軸に示す印加電圧は、当該アクチュエータ部14に関する垂直選択線40と信号線42との間の電圧を示すことになる。
具体的に前記屈曲変位特性の測定について一例をあげて説明する。まず、アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間に周波数が1kHz、正側ピーク電圧が180V、負側ピーク電圧が−60Vのsin波を印加し、そのときの各ポイント(点A〜点H)での変位量を連続してレーザ変位計で測定する。そのときの測定結果を電圧−屈曲変位グラフにプロットしたものが図7の屈曲変位特性である。図7の矢印に示されるように、屈曲変位の変位量は、印加電圧の連続的な増減によってある程度のヒステリシスをもって連続的に変化している。また、図8に示すように、一対の電極28a及び28bに蓄積される電荷量Qも、図7の特性と同様に、印加電圧の連続的な増減によってある程度のヒステリシスをもって連続的に変化している。
具体的に、まず、測定を点Bで示す電圧無負荷状態(印加電圧=0V)から開始したとすると、この点Bにおいては、形状保持層26に伸びは生じず、変位伝達部32と光導波板12とは離隔された状態、即ち、消光状態にある。電荷量Qも最低のレベルにある。
次に、アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間に正側ピーク値(=180V)が印加されると、点Eに示すように、電荷量Qの増加に伴って、形状保持層26が伸びることとなり、アクチュエータ部14は、一方向(光導波板12に接近する方向)に屈曲変位する。このとき、電荷量Qは最大レベルとなる。このアクチュエータ部14の凸状変形によって変位伝達部32が光導波板12側に変位し、該変位伝達部32は光導波板12に接触することとなる。
変位伝達部32は、アクチュエータ部14の屈曲変位に対応して光導波板12の背面に接触するものであるが、変位伝達部32が光導波板12の背面に接触すると、例えば光導波板12内で全反射されていた光10が、光導波板12の背面を透過して変位伝達部32の表面まで透過し、変位伝達部32の表面で反射する。これによって、当該アクチュエータ部14に対応する画素が発光状態となる。
なお、変位伝達部32は、光導波板12の背面を透過した光を反射するため、更には光導波板12との接触面積を所定以上に大きくするために設けられるものである。即ち、変位伝達部32と光導波板12との接触面積により、発光面積が規定される。
そして、前記ディスプレイDでは、変位伝達部32は、実質的な発光面積を規定する板部材32aとアクチュエータ部本体30の変位を板部材32aに伝達するための変位伝達部材32bを有する。
なお、変位伝達部32と光導波板12との接触とは、変位伝達部32と光導波板12とが光10(光導波板12に導入される光10)の波長以下の距離に位置することを意味する。
また、光導波板12に接触する板部材32a以外のところを金属膜や、カーボンブラック、黒顔料、黒染料を含んだ膜で形成されたブラックマトリクスで覆うことが好ましい。中でも、Cr、Al、Ni、Ag等の金属膜をブラックマトリクスとして使うと光の吸収が小さいため、光導波板12を伝搬する光の減衰、散乱を抑制することができ、特に好ましく用いられる。また、カーボンブラック、黒顔料、黒染料を含んだ膜をブラックマトリクスとして使うと、光の吸収性がよく、コントラストを向上させることができる。
次に、アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間への電圧印加を停止して、電圧無負荷状態とした場合、アクチュエータ部14は、凸の状態から元の状態(点Bの状態)に戻ろうとするが、ヒステリシス特性の関係から、完全に点Bの状態までは戻らず、点Bよりも僅かに一方向に変位した状態(点Hの状態)となる。この状態においては、変位伝達部32と光導波板12とは隔離された状態、即ち、消光状態となっている。
アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28b間に負側ピーク電圧(−60V)が印加されると、点Aに示すように、形状保持層26は縮むこととなる。これによって、前記電圧無負荷状態での僅かな一方向への変位が打ち消されて、完全に元の状態に復元することになる。
そして、図7及び図8の特性図からもわかるように、前記一対の電極28a及び28b間に正側ピーク電圧(+180V)を印加して発光状態とした後に、印加電圧を例えば+20V〜+100Vにまで低下させても、形状保持層26の記憶作用(ヒステリシス特性)によって、前記発光状態を維持する。この記憶作用は、消光状態でも同じであり、一対の電極28a及び28b間に例えば0Vもしくは負側ピーク電圧(−60V)を印加して消光状態とした後に、印加電圧を例えば+20V〜+100Vにまで上昇させても、形状保持層26の記憶作用(ヒステリシス特性)によって、前記消光状態を維持する。
つまり、形状保持層26を有するアクチュエータ部14は、同じ電圧レベルにおいて、2つ乃至それ以上の変位状態を少なくとも有するアクチュエータ部14として定義することができる。
前記形状保持層26を有するアクチュエータ部14による特徴は以下の通りである。
(1) 消光状態から発光状態へのしきい値特性が形状保持層26が存在しない場合と比して急峻になるため、電圧の振れ幅を狭くでき、回路側の負担を軽減することができる。
(2) 発光状態及び消光状態の差が明確になり、コントラストの向上につながる。
(3) しきい値のばらつきが小さくなり、電圧の設定範囲に余裕が生まれる。 なお、アクチュエータ部14としては、制御の容易性から、例えば上向きに変位するアクチュエータ部14(電圧無負荷で離隔状態、電圧印加時に接触するもの)であることが望ましい。特に、表面に一対の電極28a及び28bをもつ構造であることが望ましい。
駆動装置の説明
次に、図9を参照しながら本実施の形態に係る駆動装置200について説明する。この駆動装置200は、多数のアクチュエータ部14がマトリクス状、あるいは千鳥状に配列された駆動部16における垂直選択線40(各行毎のアクチュエータ部14におけるロー電極28aにシリーズに接続されている)に選択的にロー信号SRを供給して、1行単位にアクチュエータ部14を順次選択するロー電極駆動回路202と、前記駆動部16の信号線42にパラレルにデータ信号SDを出力して、ロー電極駆動回路202にて選択された行(選択行)の各アクチュエータ部14のカラム電極28bにそれぞれデータ信号SDを供給するカラム電極駆動回路204と、入力される映像信号Sv及び同期信号Ssに基づいてロー電極駆動回路202及びカラム電極駆動回路204を制御する信号制御回路206とを有して構成されている。
ロー電極駆動回路202には、内部のロジック回路での論理演算のためのロジック電源電圧(例えば±5V)と、ロー信号SRを生成するための3種類のロー側電源電圧(例えば−100V、−20V及び+60V)が図示しない電源回路を通じて供給され、カラム電極駆動回路204には、前記ロジック電源電圧と、データ信号SDを生成するための2種類のカラム側電源電圧(例えば80V、0V)が図示しない電源回路を通じて供給されている。
ここで、3種類のロー側電源電圧のうち、−100Vは後述する選択パルスPsのピーク電圧として使用され、−20Vは非選択信号Suのピーク電圧として使用され、60VはリセットパルスPrのピーク電圧として使用される。また、2種類のカラム側電源電圧のうち、80Vは後述するON信号のピーク電圧として使用され、0VはOFF信号のピーク電圧として使用される。
信号制御回路206は、その内部にタイミングコントローラ、フレームメモリ及びI/Oバッファを有し、ロー電極駆動回路202に通じるロー側制御線208並びにカラム電極駆動回路204に通じるカラム側制御線210を通じてこれらロー電極駆動回路202及びカラム電極駆動回路204を時間変調方式で階調制御するように構成されている。
前記ロー電極駆動回路202及びカラム電極駆動回路204は、次の点を特徴とすることが望ましい。
(1) アクチュエータ部14が容量性負荷となるため、該容量性負荷を駆動することを考慮に入れて、例えばアクチュエータ部14を屈曲変位させる電圧(オン電圧)の印加終了時に容量性負荷に加わる分圧比が50%以上であることが望ましい。
(2) 画素の発光状態及び消光状態が表現できるだけのアクチュエータ部14の変位量を得るために、20V以上の電圧出力が可能であることが望ましい。
(3) 出力電流の向きが双方向にとられることを考慮に入れる。
(4) 行方向及び列方向の2電極構造の負荷を駆動することができるものとすることが望ましい。
ディスプレイの変形例
次に、ディスプレイDのいくつかの変形例について、図10〜図28を参照しながら説明する。なお、図1と対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
まず、第1の変形例に係るディスプレイDaは、図10に示すように、図1に示すディスプレイDとほぼ同じ構成を有するが、形状保持層26の上面に上部電極28aが形成され、形状保持層26の下面に下部電極28bが形成されている点と、図11に示すように、アクチュエータ基板18(図10参照)上における各アクチュエータ部14の近傍にスイッチング用のTFT(薄膜トランジスタ)60が形成されている点で異なる。この場合、各アクチュエータ部14の上部電極28aは、対応するTFT60のソース/ドレイン領域62にコンタクト64を通じて電気的に接続されている。
また、図11に示すように、上部電極28aの平面形状(実線参照)、形状保持層26の平面形状(一点鎖線参照)及び下部電極28bの外周形状(破線参照)はいずれも矩形状とされ、この場合、上部電極28aの大きさが最も大きく、次いで形状保持層26の平面形状とされ、下部電極28bの平面形状が最も小さく設定されている。
また、図11及び図12に示すように、各垂直選択線40は、各画素(アクチュエータ部14)に対応して形成されたTFT60のゲート電極にコンタクト66を通じて電気的に接続され、各信号線42は、各画素14に対応して形成されたTFT60のソース/ドレイン領域68にコンタクト70を通じて電気的に接続されている。
なお、各垂直選択線40と各信号線42とが交差する部分には、互いの配線40及び42間の絶縁をとるためにシリコン酸化膜、ガラス膜、樹脂膜等からなる絶縁膜72が介在されている。
各アクチュエータ部14における下部電極28bは、アクチュエータ基板18に形成されたスルーホール74を通じてアクチュエータ基板18の背面側に導出され、該アクチュエータ基板18の背面に形成された接地線76(図10参照)に電気的に接続されるようになっている。
従って、前記ロー電極駆動回路202にて1つの行が選択されると、当該選択行に関するTFT60がすべてオンとなり、これにより、カラム電極駆動回路204を通じて供給されたデータ信号は、TFT60のチャネル領域を通じてアクチュエータ部14の上部電極28aに供給されることになる。
この第1の変形例に係るディスプレイDaにおいては、各アクチュエータ部14への電圧印加をオンオフ制御するためのスイッチング素子であるTFT60を各アクチュエータ部14に対応して設けるようにしたので、非選択行に関するアクチュエータ部14に対応するTFT60をオフにさせることによって、非選択行へのデータ信号(動作電圧及びリセット電圧)の供給を防止することができ、非選択行に関する画素(アクチュエータ部)14を駆動させる必要がなくなり、消費電力の削減化を有効に図ることができる。
また、TFT60がオフになっても、アクチュエータ部14に対するデータ信号の供給(動作電圧又はリセット電圧の印加)が維持されることになるため、当該アクチュエータ部14は、一定以上の変位量を保持し続け、当該画素のオン状態あるいはオフ状態が維持されることになる。
このように、非選択行に関するアクチュエータ部14は、充電されたまま開放状態として維持され、行選択時に与えられた変位量を信号無印加状態で一定時間維持させることができるため、非選択期間の画素発光が可能となる。このため、高輝度化を実現させることができる。
また、この第1の変形例に係るディスプレイDaでは、アクチュエータ基板18上であって、各アクチュエータ部14の近傍にそれぞれTFT60を形成するようにしたので、アクチュエータ基板18上での大規模な配線パターンの形成を行う必要がなくなり、配線の簡略化を図ることができる。
この第1の変形例に係るディスプレイDaにおいては、アクチュエータ基板18上に、アクチュエータ部14、TFT60、垂直選択線40及び信号線42を形成し、アクチュエータ基板18の背面側に接地線76を形成するようにしたが、その他、アクチュエータ基板18上に、アクチュエータ部14及び接地線74を形成し、アクチュエータ基板18の背面側にTFT60、垂直選択線40及び信号線42を形成するようにしてもよい。
また、この第1の変形例に係るディスプレイDaにおいては、形状保持層26の上面及び下面に上部電極28a及び下部電極28bを形成するようにしたが、その他、図1に示すように、振動部22上に直接形状保持層26を形成し、該形状保持層26の上面に一対の電極28を形成するようにしてもよい。
この場合、図13Aに示すように、一対の電極28a及び28bが互い違いに配列されたくし歯形状であってもよく、図13Bに示すように、一対の電極28a及び28bが互いに並行に、かつ相互に離間された渦巻き状としてもよい。また、図14に示すように、一対の電極28a及び28bが、相互に離間されて相補形に配列された形状(多枝形状)であってもよい。この図14では、アクチュエータ基板18(図1参照)の裏面にスイッチング素子(図示せず)が形成され、一方の電極28aが中継導体78及びスルーホール74を通じて前記スイッチング素子に電気的に接続された例を示す。
ところで、図1及び図10に示すディスプレイD、Daでは、変位伝達部32における変位伝達部材32bをフィルム状に全面に形成した例を示したが、その他、図15及び図16に示す第2及び第3の変形例に係るディスプレイDb及びDcのように、前記変位伝達部32を画素単位に分離して形成するようにしてもよい。この場合、変位伝達部32の構成として、板部材32a及び変位伝達部材32bを一体化させた構造にすることが好ましい。また、これらの変形例においては、変位伝達部32上に色フィルタ100と透明層102を積層させるようにしている。
これにより、変位伝達部32の軽量化を図ることができ、各アクチュエータ部14での応答速度の向上を図ることができ、しかも、周辺画素の駆動(変位)の影響を受けにくいため、コントラストをより高めることができる。
そして、第2の変形例に係るディスプレイDbは、図15に示すように、光導波板12とアクチュエータ基板18とを桟104にて固定し、桟104の先端と光導波板12間にブラックマトリクス層106を設けることにより、該ブラックマトリクス層106にて上層の透明層102と光導波板12との間のギャップを調整するようにしている。これにより、全体の画素のギャップを更に均一化できるという効果を有する。
ここで、前記桟104の材質は、熱、圧力に対して変形しないものが好ましい。また、透明層102の上面と桟104の上面(ブラックマトリクス層106と接触する面)の位置を揃えておくと、前記ギャップを調整しやすいという利点がある。これを実現する方法としては、例えば、平坦なガラス面を用いて透明層102と桟104を同時に形成する方法や、透明層102と桟104を形成した後、研磨して面出しを行う方法などがある。
一方、第3の変形例に係るディスプレイDcは、図16に示すように、変位伝達部32のアクチュエータ基板18側に光反射層108を形成している点で特徴がある。図のように、光反射層108を変位伝達部32の直下に形成する場合においては、光反射層108を金属等の導電層にて構成すると、アクチュエータ部14における一対の電極28a及び28b間が短絡するおそれがあるため、前記光反射層108とアクチュエータ部14との間に絶縁層110を形成することが望ましい。
通常、光10の一部が変位伝達部32を透過する場合(例えば、変位伝達部32の層厚が薄い、同材質として有機樹脂中のセラミック粉末の含有量が低い場合等)においては、光導波板12により導入した光10の一部が変位伝達部32を通してアクチュエータ基板18側に透過してしまい、輝度が低下するおそれがある。
しかし、この第3の変形例に係るディスプレイDcにおいては、上述したように変位伝達部32のアクチュエータ基板18側に光反射層108を形成するようにしているため、前記変位伝達部32を透過する光10(光路bで示す)を光導波板12側に反射させることができ、輝度の向上を図ることが可能となる。
特に、変位伝達部32に光10の透過性があり、かつ、光10の吸収性もある場合、輝度向上のためには、変位伝達部32の厚みを厚くするよりも、この第3の変形例に係るディスプレイDcのように、光反射層108を形成する方がより効果的である。
ところで、変位伝達部32を構成する色フィルタ100等の着色層とは、特定の波長領域の光だけを取り出すために用いられる層であり、例えば特定の波長の光を吸収、透過、反射、散乱させることで発色させるものや、入射した光を別の波長のものに変換させるものなどがある。透明体、半透明体及び不透明体を単独、もしくは組み合わせて用いることができる。
構成は、例えば染料、顔料、イオンなどの色素や蛍光体を、ゴム、有機樹脂、透光性セラミックス、ガラス、液体等の内部に分散、溶解したものや、それらの表面に塗布したもの、更には上述の色素や蛍光体等の粉末を焼結させたり、プレスして固めたものなどがある。材質及び構造については、これらを単独で用いてもよいし、これらを組み合わせて用いてもよい。
前記着色層の膜形成法としては、特に制限はなく、公知の各種の膜形成法を適用することができる。例えば光導波板12やアクチュエータ部14の面上に、チップ状、フィルム状の着色層を直接貼り付けるフィルム貼着法のほか、着色層の原材料となる粉末、ペースト、液体、気体、イオン等を、スクリーン印刷、フォトリソグラフィ法、スプレー・ディッピング、塗布等の厚膜形成手法や、イオンビーム、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング、CVD、めっき等の薄膜形成手法により成膜し、着色層を形成する方法がある。
また、前記変位伝達部32としてその全部あるいは一部に発光層を設けるようにしてもよい。この発光層としては蛍光体層が挙げられる。この蛍光体層は、不可視光(紫外線や赤外線)によって励起され、可視光を発光するものや、可視光によって励起されて可視光を発光するものがあるが、いずれでもよい。
前記発光層として、蛍光顔料も用いることができる。この蛍光顔料を用いると、顔料自体の色、即ち、反射色にほぼ一致する波長の蛍光が加わるものは、それだけ色刺激が大きく、鮮やかに発光するため、表示素子やディスプレイの高輝度化に対してより好ましく用いられ、一般的な昼光蛍光顔料が好ましく用いられる。
発光層として、輝尽性蛍光体や、燐光体、あるいは蓄光顔料も用いられる。これらの材料は、有機材料、無機材料のいずれでもよい。
そして、上述した発光材料を単独で用いて発光層を形成したもの、これらの発光材料を樹脂に分散させたものを用いて発光層を形成したもの、あるいはこれらの発光材料を樹脂に溶解させたもので発光層を形成したものが好ましく用いられる。
発光材料の残光時間としては、1秒以下が好ましく、より好ましくは30m秒がよい。更に好ましくは数m秒以下がよい。
そして、前記変位伝達部32の全部あるいはその一部として前記発光層を用いた場合は、光源(図示せず)として、前記発光層を励起する波長の光を含み、励起に十分なエネルギー密度を有していれば、特に制限はない。例えば、冷陰極管、熱陰極管、メタルハライドランプ、キセノンランプ、赤外線レーザを含むレーザ、ブラックライト、ハロゲンランプ、白熱電球、重水素放電ランプ、蛍光ランプ、水銀ランプ、トリチウムランプ、発光ダイオード、プラズマ光源などが用いられる。
次に、第4の変形例に係るディスプレイDdは、図17に示すように、アクチュエータ部14のカラム電極28bと信号線42との間にバリスタ120が挿入接続され、1行の画素群に対して共通の垂直選択線40が接続され、信号線42がアクチュエータ基板18の背面側に形成されている点で異なる。
図18に示すように、垂直選択線40は、前列の画素に関するロー電極28aから導出されて当該画素に関するロー電極28aに接続されて、1つの行に関し、シリーズに配線された形となっている。また、カラム電極28bと信号線42とはアクチュエータ基板18に形成されたスルーホール122を通じて電気的に接続される。
バリスタ120は、印加電圧の変化に応じて抵抗値が非線形的に変わる抵抗素子であり、例えばSiCバリスタやSiのpnpバリスタ、または、ZnOを主体としたバリスタにて構成され、両端電圧が高くなると抵抗値が減少する負特性を有する。
図19及び図20に、この第4の変形例に係るディスプレイにおけるアクチュエータ部の屈曲変位特性と電荷−印加電圧特性を示す。図19及び図20において、各横軸に示された印加電圧は、当該アクチュエータ部14の一対の電極28a及び28bに直接印加される電圧ではなく、垂直選択線40と信号線42との間の電圧を示す。
ここで、第4の変形例に係るディスプレイDdの動作について簡単に説明すると、まず、例えば1行1列の画素に関し、該画素が選択されて、その垂直選択線40と信号線42との間の電圧(印加電圧)が最も高いレベルV1となった場合、バリスタ120はオン状態となり、そのときの抵抗は非常に小さいものとなる(以下、オン状態でのバリスタ120の抵抗をオン抵抗と記す)。従って、このオン抵抗とバリスタ120の静電容量による時定数も小さくなり、前記印加電圧の変化に対する応答が速くなる。これにより、アクチュエータ部14に印加される電圧は、急峻に規定の高電圧(例えば180V)まで立ち上がることになり、電荷量Qも急峻に増加することになる。その結果、図19の屈曲変位特性から、前記画素はオン状態とされて発光することになり、このときの電荷量Qは最大レベルとなる。
当該画素が非選択状態となって、その垂直選択線40と信号線42との間の電圧(印加電圧)が中位レベル(V2〜V3)となった場合、バリスタ120はオフ状態となり、そのときの抵抗は非常に大きいものとなる(以下、オフ状態でのバリスタ120の抵抗をオフ抵抗と記す)。従って、このオフ抵抗とバリスタ120の静電容量による時定数も大きくなり、前記印加電圧に対する応答が遅くなる。これにより、アクチュエータ部14に印加される電圧は、選択時に印加された電圧レベル(180V)をほぼ維持した状態となるため、電荷量Qもほぼ最大レベルを維持し、該画素での発光は維持される。
当該画素がリセットされて、その垂直選択線40と信号線42との間の電圧(印加電圧)が最も低いレベルV4となった場合、バリスタ120は再びオン状態となり、そのときのオン抵抗は非常に小さいものとなる。これにより、アクチュエータ部14に印加される電圧は、急峻に規定の低電圧(例えば−60V)まで立ち下がることになり、図19の屈曲変位特性から、前記画素はオフ状態とされて消光することになる。このときの電荷量Qは最小レベルとなる。
その後、当該画素が非選択状態となって、垂直選択線40と信号線42との間の電圧(印加電圧)が中位レベル(V2〜V3)となった場合、バリスタ120は再びオフ状態となってそのときの抵抗が非常に大きいものとなることから、該オフ抵抗とバリスタ120の静電容量による時定数も大きくなり、前記印加電圧に対する応答が遅くなる。これにより、アクチュエータ部14に印加される電圧は、リセット時に印加された電圧レベル(−60V)をほぼ維持した状態となるため、該画素での消光は維持される。
この第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、図19の電圧−屈曲変位特性及び図20の電荷−印加電圧特性からもわかるように、選択時での高電圧レベルV1から非選択時での中位レベル(V2〜V3)までにわたって、変位量及び電荷量Q共にほとんど変化がなくほぼ平坦な特性を示し、リセット時での低電圧レベルから非選択時での中位レベルまでにわたって、変位量及び電荷量共にほとんど変化がなくほぼ平坦な特性を示している。
つまり、第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、アクチュエータ部14として動作させる場合に、非常に良好なヒステリシス特性を有しており、ほぼ完全な形状保持としてのメモリ効果を有している。
このように、第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、バリスタ120自体にアクチュエータ部14への印加電圧のメモリ作用を有することから、アクチュエータ部14における形状保持層26の構成材料として、図21に示すように、屈曲変位特性にヒステリシスを持たない材料を用いることも可能となり、材料の選択の幅を広げることができる。
この第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、アクチュエータ基板18上に、アクチュエータ部14、バリスタ120及び垂直選択線40を形成し、アクチュエータ基板18の背面側に信号線42を形成するようにしたが、その他、図22A及び図22Bに示すように、アクチュエータ基板18上に、アクチュエータ部14及び垂直選択線40を形成し、アクチュエータ基板18の背面側にバリスタ120及び信号線42を形成するようにしてもよい。
この場合、図23に示すように、一主面に多数のアクチュエータ部14(図示せず)が形成されたアクチュエータ基板18のほかに、両面に電極300及び302が形成されたバリスタ基板304を用意する。アクチュエータ基板18の一主面から他主面につながるスルーホール74(図1参照)を各アクチュエータ部14に対応して多数設け、該スルーホール74におけるアクチュエータ基板18の他主面側に電極パッド306を形成する。即ち、これら電極パッド306は、一主面に設けられたアクチュエータ部14に対応した位置に設けられることになる。
一方、バリスタ基板304は、図23に示すように、アクチュエータ基板18の裏面に貼り合わせたときに、各アクチュエータ部14(正確には、各電極パッド306)に対応した位置にそれぞれ電極300、302が形成されている。この両面の電極300及び302とこれら電極300及び302間に存在する基板材料によって各アクチュエータ部14に対応したバリスタ120として機能することになる。
そして、バリスタ基板304の裏面(アクチュエータ基板18とは反対側の面)に形成された電極302、302同士を接続することによって信号線42が構成されることになる。バリスタ機能を必要としない電極308(例えば垂直選択線40の取り出し電極)は、例えばスルーホール310を用いてアクチュエータ基板18の他主面に形成されたゲート線取り出し用の電極パッド312に電気的に接続される。
これらアクチュエータ基板18とバリスタ基板304との貼り合わせは、アクチュエータ基板18の他主面(多数の電極パッド306が形成された面)とバリスタ基板304の一主面とを互いに合わせ、アクチュエータ基板18における電極パッド306とバリスタ基板304における電極300とを例えば半田や導電性樹脂などで貼り合わせる。この貼り合わせによって、アクチュエータ部14の一方の電極(例えばカラム電極28b)と信号線42とがバリスタ120を介して電気的に接続されることになる。
ここで、バリスタ基板304の厚みは、要求されるバリスタ電圧から決定され、バリスタ120の電極面積は要求される静電容量と電流容量から決定される。
また、バリスタ基板304の一主面において近接する電極300、300間やバリスタ基板304の他主面において近接する電極302、302間でのリーク電流を低減し、かつ、これら電極300及び302の配置についての自由度を高める方法としては、例えば、以下のような2つの方法が考えられる。
(1) 近接する電極300、300間並びに近接する電極302、302間に溝を切る。この場合、電極300、300間並びに電極302、302間の距離が実質的に増大し、バリスタ電圧が高くなる。
(2) バリスタ基板304の構成材料の粒径を細かくし、バリスタ基板304の厚みを薄くする。この場合、対向電極300及び302間のバリスタ電圧を維持しながら近接する電極300、300間並びに電極302、302間のバリスタ電圧が高くなる。
このように、アクチュエータ基板18とは別に、バリスタ120を構成するためのバリスタ基板304を用意し、該バリスタ基板304をアクチュエータ基板18に貼り合わせるようにしたので、各アクチュエータ部14と信号線42との間にバリスタ120を接続するための配線構造が非常に簡単になり、ディスプレイDdのサイズを小型化できると共に、ディスプレイDdの歩留まりの向上、製造コストの低廉化等で非常に有利となる。
また、この第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、形状保持層26の上面及び下面に上部電極28a及び下部電極28bを形成するようにしたが、その他、振動部22上に直接形状保持層26を形成し、該形状保持層26の上面に一対の電極28を形成するようにしてもよい。
この場合、図24Aに示すように、一対の電極28a及び28bが互い違いに配列されたくし歯形状であってもよく、図24Bに示すように、一対の電極28a及び28bが互いに並行に、かつ相互に離間された渦巻き状であってもよい。また、図14に示す場合と同様に、一対の電極28a及び28bを多枝形状としてもよい。この場合も第4の変形例に係るディスプレイDdと同様に、バリスタ120をアクチュエータ基板18(図1参照)の主面にも裏面にも形成することができる。図14に沿った構成では、アクチュエータ基板18の裏面にバリスタ(図示せず)が形成され、一方の電極28aが中継導体78及びスルーホール74を通じて前記バリスタに電気的に接続される形態とされたものとなる。
次に、図25〜図28を参照しながら第5の変形例に係るディスプレイDeについて説明する。なお、本実施の形態に係るディスプレイDと対応するものについては同符号を付してその重複説明を省略する。
この第5の変形例に係るディスプレイDeは、図25に示すように、基本的には、本実施の形態に係るディスプレイDとほぼ同様の構成を有するが、アクチュエータ部14の上部電極28aと接地線76との間に圧電リレー400が挿入接続されている点で異なり、この圧電リレー400を設ける関係から、構造的にも本実施の形態に係るディスプレイDと異なる。
具体的に説明すると、図26及び図27に示すように、この第5の変形例に係るディスプレイDeは、アクチュエータ基板18の各アクチュエータ部14に隣接した位置にそれぞれ圧電リレー400が配設される。アクチュエータ基板18の内部には、前記アクチュエータ部14を構成するための空所20のほかに、圧電リレー400を構成するための空所402が設けられている。該空所402も、アクチュエータ基板18の背面側に設けられた径の小さい貫通孔(図示せず)を通じて外部と連通されている。
従って、この場合も、前記アクチュエータ基板18のうち、前記空所402の形成されている部分が薄肉とされ、それ以外の部分が厚肉とされている。薄肉の部分は、外部応力に対して振動を受けやすい構造となって圧電リレー用の振動部404として機能し、空所402以外の部分は厚肉とされて前記振動部404を支持する圧電リレー用の固定部406として機能するようになっている。
各圧電リレー400は、図示するように、前記振動部404と固定部406のほか、該振動部404上に形成された圧電/電歪層や反強誘電体層等の形状保持層408と、該形状保持層408の下面に形成された下部電極28bと、前記形状保持層408の上面に形成された中間電極410(垂直選択線40につながる電極)と、該中間電極410上に形成された絶縁層412と、該絶縁層412上に形成された上部電極28aとを有するリレー本体414と、光導波板12における駆動部側の面のうち、各圧電リレー400に対応した位置に設けられたブラックマトリクス層416と、該ブラックマトリクス層416の前記圧電リレー400と対向する面に形成された接地電極418とを有して構成されている。ブラックマトリクス層416としては、例えばCr、Al、Ni、Ag等の金属膜を用いることが好ましい。光の吸収が小さいため、光導波板12を伝搬する光の減衰、散乱を抑制することができるからである。また、コントラスト向上のためには、カーボンブラック、黒顔料、黒染料を含んだ膜も好ましくは用いられる。この例では、ブラックマトリクス層416を形成した例を示しているが、その他、前記ブラックマトリクス層416を形成せずに、透明電極を接地電極418として使用する場合もある。
各種電極のうち、下部電極28bは、アクチュエータ部14の下部電極(信号線42につながる電極)28bと共通とされ、上部電極28aは、アクチュエータ部14の上部電極28aと共通とされている。
この第5の変形例に係るディスプレイDeにおいては、1つの垂直選択線40に対して例えば選択信号(例えば正の高レベル電位)を印加することによって当該垂直選択線40が選択されるようになっている。
この第5の変形例に係るディスプレイDeにおいても、本実施の形態に係るディスプレイDと同様に、非選択行へのデータ信号の供給を防止することができ、非選択行に関する画素(アクチュエータ部)14を駆動させる必要がなくなり、消費電力の削減化を有効に図ることができる。また、非選択期間Tuの画素発光が可能となるため、高輝度化を実現させることができる。また、アクチュエータ基板18上での大規模な配線パターンの形成を行う必要がなくなり、配線の簡略化を図ることができる。
この第5の変形例に係るディスプレイDeにおいては、アクチュエータ基板18上に、アクチュエータ部14、圧電リレー400及び接地電極418を形成したが、その他、図28に示すように、アクチュエータ基板18上にアクチュエータ部14を形成し、アクチュエータ基板18の背面側に圧電リレー400及び接地電極418を形成するようにしてもよい。
例えば、図28に示すように、アクチュエータ基板18のうち、アクチュエータ部14を構成するための空所20の下方に圧電リレー400を構成するための空所402を設けて、該空所402の下方にリレー本体414を形成することにより達成できる。
この場合、信号線42を共通化することができないため、新たにスイッチング専用の垂直選択線420をアクチュエータ基板18の背面側に配線する。また、圧電リレー400上に形成される上部電極28aをアクチュエータ部14からアクチュエータ基板18に設けられたスルーホール422を通じて配線し、上部電極28aと選択的に接触される接地電極418をアクチュエータ基板18の下方に配置されたプリント配線基板424に形成すればよい。
なお、電極28a及び28bを形状保持層26上に形成し、くし歯形状、渦巻き状又は多枝形状に一対の電極として形成してもよいのは、本実施の形態に係るディスプレイD並びに第1〜第4の変形例に係るディスプレイDa〜Ddと同様である。
時間変調方式による階調制御の説明
ここで、時間変調方式による階調制御について、図29〜図41を参照しながら説明する。まず、図29に示すように、1枚の画像の表示期間を1フィールドとし、該1フィールドを複数に等分割した際の1つの分割期間をサブフィールドとしたとき、各サブフィールド毎に表示サイクルTdが設定される。例えば1フィールドを7つに等分割した場合の最大階調レベルは8となる。
そして、ロー電極駆動回路202は、各サブフィールド内においてすべての行選択を終了するように信号制御回路206によってタイミング制御される。従って、ロー電極駆動回路202にて1つの行を選択する時間(選択期間)は、1つのサブフィールドの時間幅を駆動部16の行数で除算することにより得られる時間幅で規制され、該時間幅か、もしくは該時間幅よりも短い時間幅が選ばれる。好ましくは、前記時間幅の1/m(mは1〜5の任意の実数、好ましくは1〜3の実数)が選ばれる。
そして、本実施の形態に係る駆動装置200は、信号制御回路206において、前記1フィールド内に、選択された画素の階調レベルに応じて、その発光開始タイミングと、当該画素の選択/非選択状態によらない可変長の発光維持期間を決定するように制御する。
以下、本実施の形態に係る階調制御の具体例について図30A〜図41を参照しながら説明する。なお、図30A〜図41の例は、図面の複雑化を避けるために、1フィールドを7つのサブフィールドSF1〜SF7に分け、行数を4とした場合の簡略化したフォーマットを示す。
第1の具体例
第1の具体例は、図30Aに示すように、1フィールド内に、1つの選択期間Sと最大階調レベルに応じた数の表示サイクルTdを割り当てる方式である。この場合、表示サイクルTdは非選択期間Uとリセット期間Rとで構成される。
非選択期間Uは、基本的には、ロー電極駆動回路202を通じて当該画素の行以外の行をすべて選択するために使用されるもので、非選択期間U≧選択期間S×(行数−1)に設定される。リセット期間Rは、前記選択期間Sと同様に当該画素の行を選択するために使用されるもので、選択期間Sとほぼ同等の時間が設定される。
更に、図30Bに示すように、ロー電極駆動回路202を通じて、前記選択期間Sに選択パルスPsが出力され、表示サイクルTdにおける非選択期間Uに非選択信号Suが出力され、リセット期間RにリセットパルスPrが出力される。
カラム電極駆動回路204に対する信号制御回路206での制御は、発光維持期間においてON信号が出力され、発光維持期間以外の期間のうち、少なくとも発光維持期間の終了タイミングにおいてOFF信号が出力されるように制御する。
例えば1行1列の画素について、当該画素の階調レベルが例えば5であった場合は、選択期間S並びに第1の表示サイクルTd1から第4の表示サイクルTd4における各リセット期間Rに同期してON信号が出力され、第5の表示サイクルTd5から第7の表示サイクルTd7における各リセット期間Rのうち、少なくとも発光維持期間の終了を示す最初の第5の表示サイクルTd5におけるリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。残りの第6及び第7の表示サイクルTd6及びTd7における各リセット期間Rに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第1の具体例ではOFF信号を出力させた例を示している。
同様に、2行1列の画素について、図30Cに示すように、該画素の階調レベルが例えば3であった場合は、選択期間S並びに第1及び第2の表示サイクルTd1及びTd2における各リセット期間Rに同期してON信号が出力され、第3の表示サイクルTd3から第7の表示サイクルTd7における各リセット期間Rのうち、少なくとも発光維持期間の終了を示す最初の第3の表示サイクルTd3におけるリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。残りの第4〜第7の表示サイクルTd4〜Td7における各リセット期間Rに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。本実施の形態ではOFF信号を出力させた例を示している。
具体的に電圧の変化で見てみると、まず、1行1列の画素については、図30Bに示すように、選択期間Sにおいてピーク電圧が−100Vの選択パルスPsが出力され、このとき、ピーク電圧80VのON信号が信号線42に供給されているため、アクチュエータ部14には80−(−100)V=180Vが印加されることになり、図7の屈曲変位特性から、アクチュエータ部14は点Eまで一方向に変位することになる。即ち、当該画素は発光状態となる。
その後の第1の表示サイクルTd1における非選択期間Uでは、ピーク電圧−20Vの非選択信号Suが出力される。この期間においてはロー電極駆動回路202を通じて2行目以降の行が選択されて、1列目の信号線42にはON信号あるいはOFF信号がランダムに供給されることになる。つまり、1行1列のアクチュエータ部14には80−(−20)V=100Vあるいは0−(−20)V=20Vが印加されることになる。
従って、当該アクチュエータ部14は、図7の屈曲変位特性からもわかるように、点Fあるいは点Gの屈曲変位となり、アクチュエータ部14は当初の変位状態がほぼ維持されることになる。即ち、当該画素の発光状態は維持される。
第1の表示サイクルTd1におけるリセット期間Rでは、ピーク電圧60VのリセットパルスPrが出力される。このとき、1列目の信号線42にはON信号が供給されているため、アクチュエータ部14には80−60V=20Vが印加されることになり、当該画素の発光状態は維持される。
この第1の表示サイクルTd1での動作は、第5の表示サイクルTd5における非選択期間Uまで同様に行われる。次の第5の表示サイクルTd5におけるリセット期間R以降においては、1列目にOFF信号が供給される。これにより、第5の表示サイクルTd5のリセット期間Rにおいては、ピーク電圧60VのリセットパルスPrが出力され、このとき、ピーク電圧0VのOFF信号が信号線42に供給されているため、当該アクチュエータ部14には0−60V=−60Vが印加されることになり、図7の屈曲変位特性から、アクチュエータ部14は点Aまで復元(リセット)し、当該画素は消光状態となる。
その後の第6の表示サイクルTd6における非選択期間Uでは、ピーク電圧−20Vの非選択信号が出力される。この期間においてはロー電極駆動回路202を通じて2行目以降の行が選択されて、1列目の信号線にはON信号あるいはOFF信号がランダムに供給されることになり、1行1列のアクチュエータ部14には80−(−20)V=100Vあるいは0−(−20)V=20Vが印加されることになる。
従って、当該アクチュエータ部14は、図7の屈曲変位特性からもわかるように、点Cあるいは点Dの変位状態となり、当該画素の消光状態は維持される。
第6の表示サイクルTd6におけるリセット期間Rでは、ピーク電圧60VのリセットパルスPrが出力される。このとき、1列目の信号線42にはOFF信号が供給されているため、アクチュエータ部14には0−60V=−60Vが印加されることになり、当該画素の消光状態は維持される。この第6の表示サイクルTd6での動作は、第7の表示サイクルTd7においても同様に行われる。
このように、階調レベルが5である1行1列の画素においては、1フィールドの先頭から第5の表示サイクルTd5におけるリセット期間Rの開始時点まで発光状態とされ、第5の表示サイクルTd5におけるリセット期間Rの開始時点から1フィールドの終端まで消光状態とされる。
同様に、階調レベルが3である2行1列の画素においては、図30Cに示すように、1フィールドの先頭から第3の表示サイクルTd3におけるリセット期間Rの開始時点まで発光状態とされ、第3の表示サイクルTd3におけるリセット期間Rの開始時点から1フィールドの終端まで消光状態とされる。
この第1の具体例によれば、図30Aに示すように、選択期間Sを1フィールドの先頭に割り当てた場合を想定したとき、当該画素の階調レベルに応じて、1フィールドの先頭から1つの表示サイクルTdあるいは複数の表示サイクルTdが連続して選択され、先頭の選択期間S並びに選択された表示サイクルTdのリセット期間に同期してON信号が出力され、残りの表示サイクルTdにおける各リセット期間Rに同期してOFF信号が出力されることになる。
この場合、1フィールド内での当該画素に対する発光と消光のサイクルが1回のみとなり、1フィールドを複数のサブフィールドに分けて、各サブフィールド毎に強制リセットする駆動方式(プラズマディスプレイ等で採用)と比べ、消費電力を有効に低減させることができる。
ここで、1つの実験例を示す。この実験例は、本実施の形態に係るディスプレイDにおいて、第1の具体例に係る駆動方式と、比較例(プラズマディスプレイで使用されている一般的な駆動方式)でのアクチュエータ部14への印加電圧波形を計測しながら、当該画素から散乱される光の強度変化(Ld)をフォトダイオードで測定したものである。第1の具体例の測定結果を図31に示し、比較例の測定結果を図32に示す。
第1の具体例においては、図31に示すように、ON信号の出力期間中での選択パルスPsの出力に基づいて高レベルのパルス状の電圧VHがアクチュエータ部14に印加され、その後の表示サイクルでは20Vの電圧波形と100Vの電圧波形がランダムに印加され、OFF信号の出力期間でのリセットパルスPrの出力に基づいて低レベルのパルス状の電圧VLがアクチュエータ部14に印加されていることがわかる。
このことから、第1の具体例では、図8の電荷−印加電圧特性からもわかるように、−×−で囲まれた面積に相当する電力は1フィールド内に1回のみの消費で済む。このことは、第1〜第5の変形例に係るディスプレイDa〜Deでも同様である。特に、バリスタ120を用いた第4の変形例に係るディスプレイDdにおいては、図20の電荷−印加電圧特性において−×−で囲まれた面積に相当する電力が1フィールド内に1回のみの消費で済むことになる。
一方、比較例では、図32に示すように、1つの表示サイクルTdで印加電圧が高レベルVH(180V)から低レベルVL(−60V)まで変化することから、図8の電荷−印加電圧特性からもわかるように、−×−で囲まれた面積に相当する電力が1つの表示サイクルTdで消費されることとなる。つまり、1フィールド内で−×−で囲まれた面積に相当する電力は、表示サイクルTdの回数分だけ消費され、第1の具体例と比して消費電力が大きくなっていることがわかる。
このように、第1の具体例を採用することによって、パネル型ディスプレイの消費電力を有効に低減することができることとなる。
しかも、第1の具体例では、当該画素の階調レベルに応じて選択された表示サイクルにわたって発光状態が維持されることから輝度の向上も実現させることが可能となる。また、階調と輝度の線形性が良好となり、高精度な階調表現が可能となる。更に、発光時間の効率も高くなる。特に、第4の変形例に係るディスプレイにおいては、電圧−変位特性上、良好なヒステリシス特性を有することから、発光輝度を十分に維持させることができ、表示画像の高輝度化を実現させることができる。
第2の具体例
次に、第2の具体例に係る階調制御の方式を図33A〜図33Cを参照しながら説明する。この第2の具体例は、図33Aに示すように、前記第1の具体例(図30A参照)とほぼ同じ階調制御方式であるが、前記1フィールド内に、最大階調レベルに応じた数の表示サイクルTd1〜Td7と1つのリセット期間Rが割り当てられている点と、各表示サイクルTd1〜Td7が選択期間Sと非選択期間Uで構成されている点で異なる。
そして、カラム電極駆動回路204に対する信号制御回路206での制御は、発光維持期間以外の期間においてOFF信号が出力され、発光維持期間のうち、少なくともその発光開始タイミングにおいてON信号が出力されるように制御する。
例えば1行1列の画素について、該画素の階調レベルが例えば5であった場合、図33Bに示すように、第1及び第2の表示サイクルの各選択期間Sに同期してOFF信号が出力され、第3の表示サイクルTd3から第7の表示サイクルTd7における各選択期間Sのうち、少なくとも発光開始タイミングを示す最初の第3の表示サイクルTd3における選択期間Sに同期してON信号が出力され、1フィールドにおける終端のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。発光維持期間における第4〜第7の表示サイクルTd4〜Td7の各選択期間Sに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第2の具体例では、ON信号を出力させた例を示す。
同様に、2行1列の画素について、該画素の階調レベルが例えば3であった場合は、図33Cに示すように、第1の表示サイクルTd1から第4の表示サイクルTd4における各選択期間Sに同期してOFF信号が出力され、第5の表示サイクルTd5から第7の表示サイクルTd7における各選択期間Sのうち、少なくとも発光開始タイミングを示す最初の第5の表示サイクルTd5における選択期間Sに同期してON信号が出力され、1フィールドにおける終端のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。発光維持期間における第6及び第7の表示サイクルTd6及びTd7の各選択期間Sに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第2の具体例では、ON信号を出力させた例を示す。
具体的に電圧の変化で見てみると、まず、図33Bに示すように、1行1列の画素の第1の表示サイクルTd1については、その選択期間Sにおいてピーク電圧−100Vの選択パルスPsが出力され、このとき、ピーク電圧0VのOFF信号が信号線42に供給されているため、アクチュエータ部14には0−(−100)V=100Vが印加されることになる。アクチュエータ部14は、前フィールドで屈曲変位がリセットされて復元されているため、図7の屈曲変位特性から、点Dの変位状態となり、当該画素の消光状態は維持される。
第1の表示サイクルTd1における非選択期間Uでは、ピーク電圧−20Vの非選択信号Suが出力される。この期間においてはロー電極駆動回路202を通じて2行目以降の行が選択されて、1列目の信号線42にはON信号あるいはOFF信号がランダムに供給されることになり、1行1列のアクチュエータ部14には80−(−20)V=100Vあるいは0−(−20)V=20Vが印加されることになる。
従って、当該アクチュエータ部14は、図7の屈曲変位特性からもわかるように、点Cあるいは点Dの変位状態となり、当該画素の消光状態は維持される。
この第1の表示サイクルTd1での動作は、第2の表示サイクルTd2でも同様に行われる。次の第3の表示サイクルTd3における選択期間S以降においては、1列目にON信号が供給される。これにより、第3の表示サイクルTd3の選択期間Sは、ピーク電圧−100Vの選択パルスPsが出力され、このとき、ピーク電圧80VのON信号が信号線42に供給されるため、当該アクチュエータ部14には80−(−100)V=180Vが印加されることになり、図7の屈曲変位特性から、アクチュエータ部14は点Eまで屈曲変位し、当該画素は発光状態となる。
その後の第3の表示サイクルTd3における非選択期間Uでは、ピーク電圧−20Vの非選択信号Suが出力される。この期間においては1列目の信号線42にON信号あるいはOFF信号がランダムに供給され、当該アクチュエータ部14への印加電圧Vpは100Vあるいは20Vとなり、図7の屈曲変位特性からもわかるように、点Fあるいは点Gの屈曲変位となる。この場合、アクチュエータ部14は当初の変位状態がほぼ維持されることになり、当該画素の発光状態は維持される。
この第3の表示サイクルTd3での動作は、第4の表示サイクルTd4から第7の表示サイクルTd7まで同様に行われる。
そして、終端のリセット期間Rにおいては、1列目にOFF信号が供給される。これにより、当該アクチュエータ部14には0−60V=−60Vが印加されることになり、図7の屈曲変位特性から、アクチュエータ部14は点Aまで復元(リセット)し、当該画素は消光状態となる。
このように、階調レベルが5である1行1列の画素においては、図33Bに示すように、1フィールドの先頭から第2の表示サイクルTd2にかけて消光状態とされ、第3の表示サイクルTd3から第7の表示サイクルTd7まで発光状態とされ、終端のリセット期間Rにおいて消光状態とされる。
同様に、階調レベルが3である2行1列の画素においては、図33Cに示すように、1フィールドの先頭から第4の表示サイクルTd4にかけて消光状態とされ、第5の表示サイクルTd5から第7の表示サイクルTd7まで発光状態とされ、終端のリセット期間Rにおいて消光状態とされる。
この第2の具体例によれば、図33Aに示すように、リセット期間Rを1フィールドの後端に割り当てた場合を想定したとき、当該画素の階調レベルに応じて、1フィールドの後端から1つの表示サイクルTdあるいは複数の表示サイクルTdが連続して選択され、その選択された表示サイクルTdの各選択期間Sに同期してON信号が出力され、後端のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されることになる。
この場合も、1フィールド内での当該画素に対する発光と消光のサイクルが1回のみとなり、消費電力の低減を有効に図ることができる。階調と輝度の線形性が良好となり、高精度な階調表現が可能となる。更に、発光時間の効率も高くなる。特に、選択された表示サイクル毎に選択期間が存在するため、当該画素における発光維持期間にわたって十分に輝度を維持させることができる。
第3の具体例
次に、第3の具体例に係る階調制御の方式を図34を参照しながら説明する。この第3の具体例は、図34に示すように、前記第2の具体例(図33A参照)とほぼ同じ階調制御方式であるが、取り扱う最大階調レベルを下げて各表示サイクルTdにおける非選択期間Uの時間的長さを長くしたものである。この場合、選択期間Sの時間的長さを第2の具体例における選択期間Sの時間的長さ以下としてもよい。
この第3の具体例によれば、画素の発光維持期間の割合が高くなるため、更なる高輝度化を実現させることができる。
第4の具体例
次に、第4の具体例に係る階調制御の方式を図35A〜図35Cを参照しながら説明する。この第4の具体例は、図35Aに示すように、前記第1の具体例(図30A参照)とほぼ同じ階調制御方式であるが、前記1フィールド内に、2つの選択期間Sの間に所定長の単位非選択期間U(1)を有する奇偶調整サイクルTcと最大階調レベルに応じた数の表示サイクルTd1〜Td3が割り当てられ、各表示サイクルTd1〜Td3には前記所定長の2倍の長さを有する冗長非選択期間U(2)とリセット期間Rが設定されている点で異なる。
そして、カラム電極駆動回路204に対する信号制御回路206での制御は、奇偶調整サイクルに含まれるいずれかの選択期間SにおいてON信号が出力され、発光維持期間の終了タイミングにおいてOFF信号が出力されるように制御する。
例えば1行1列の画素について、図35Bに示すように、該画素の階調レベルが例えば5の奇数であった場合、発光維持期間の開始を示す奇偶調整サイクルTcの先頭の選択期間Sに同期してON信号が出力され、発光維持期間の終了を示す第2の表示サイクルTd2のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。その他の選択期間及びリセット期間に出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第4の具体例では、発光維持期間に含まれる奇偶調整サイクルTcの後端の選択期間Sと第1の表示サイクルTd1のリセット期間RにおいてON信号を出力させ、発光維持期間以外の期間に含まれる第3の表示サイクルTd3のリセット期間RにOFF信号を出力させた例を示す。
これによって、1行1列の画素は、1フィールドの先頭から第2の表示サイクルTd2におけるリセット期間Rの開始時点にかけて発光状態とされ、第2の表示サイクルTd2におけるリセット期間Rの終了時点から1フィールドの終端にかけて消光状態とされる。
また、例えば2行1列の画素について、図35Cに示すように、該画素の階調レベルが例えば6の偶数であった場合、発光維持期間の開始を示す奇偶調整サイクルTcの後端の選択期間Sに同期してON信号が出力され、発光維持期間の終了を示す第3の表示サイクルTd3のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。その他の選択期間S及びリセット期間Rに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第4の具体例では、発光維持期間に含まれる第1及び第2の表示サイクルTd1及びTd2における各リセット期間RにON信号を出力させ、発光維持期間以外の期間に含まれる奇偶調整サイクルTcの先頭の選択期間SにOFF信号を出力させた例を示す。
これによって、2行1列の画素は、1フィールドの先頭から奇偶調整サイクルTcの単位非選択期間U(1)の終端にかけて消光状態とされ、奇偶調整サイクルTcの後端の選択期間Sから第3の表示サイクルTd3におけるリセット期間Rの開始時点にかけて発光状態とされ、第3の表示サイクルTd3におけるリセット期間Rにおいて消光状態とされる。
この第4の具体例によれば、例えば1フィールドで8階調を表現する場合を想定したとき、単位表示サイクルのみで構成したときは、1つの行に関し、8回の選択走査が必要になるが、所定長の2倍の長さを有する冗長非選択期間U(2)が設定された表示サイクルを割り当てると、1つの行に関し、5回の選択走査で済み、1つの行を選択するためのサイクル(行走査サイクル)を低減させることができる。これは、図8の電荷−印加電圧特性における−▲−で囲まれた面積に相当する電力消費回数を低減することになり、これによって、消費電力の低減につながり、しかも、冗長非選択期間U(2)において発光状態が維持されることから、選択された画素の高輝度化にもつながる。
なお、電荷−印加電圧特性における−▲−で囲まれた面積に相当する電力消費回数を低減からみた場合は、第4の変形例に係るディスプレイDdのような良好なヒステリシス特性をもたないディスプレイに適用して十分に効果を発揮させることができる。もちろん、第4の変形例に係るディスプレイDdに適用した場合においても、行選択のための周波数の低減を図る上で非常に有利になる。
第5の具体例
次に、第5の具体例に係る階調制御の方式を図36A〜図36Cを参照しながら説明する。この第5の具体例は、図36Aに示すように、前記第4の具体例(図35A参照)とほぼ同じ階調制御方式であるが、前記1フィールド内に、最大階調レベルに応じた数の表示サイクルTd1〜Td3と2つのリセット期間Rの間に所定長の単位非選択期間U(1)を有する奇偶調整サイクルTcが割り当てられ、各表示サイクルTd1〜Td3に選択期間Sと前記所定長の2倍の長さを有する冗長非選択期間U(2)が設定されている点で異なる。
そして、カラム電極駆動回路204に対する信号制御回路206での制御は、発光維持期間の開始タイミングにおいてON信号が出力され、奇偶調整サイクルに含まれるいずれかのリセット期間RにおいてOFF信号が出力されるように制御する。
例えば1行1列の画素について、図36Bに示すように、該画素の階調レベルが例えば5の奇数であった場合、発光維持期間の開始を示す第2の表示サイクルTd2の選択期間Sに同期してON信号が出力され、発光維持期間の終了を示す奇偶調整サイクルTcの後端のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。その他の選択期間S及びリセット期間Rに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第5の具体例では、発光維持期間に含まれる第3の表示サイクルTd3における選択期間Sと奇偶調整サイクルTcの先頭のリセット期間RにおいてON信号を出力させ、発光維持期間以外の期間に含まれる第1の表示サイクルTd1の選択期間SにOFF信号を出力させた例を示す。
これによって、1行1列の画素は、1フィールドの先頭から第1の表示サイクルTd1において消光状態とされ、第2の表示サイクルTd2から奇偶調整サイクルTcにおける後端のリセット期間Rの開始時点にかけて発光状態とされ、終端のリセット期間Rにおいて消光状態とされる。
また、図36Cに示すように、例えば2行1列の画素について、該画素の階調レベルが例えば6の偶数であった場合、発光維持期間の開始を示す第1の表示サイクルTd1の選択期間Sに同期してON信号が出力され、発光維持期間の終了を示す奇偶調整サイクルTcの先頭のリセット期間Rに同期してOFF信号が出力されるように制御する。その他の選択期間S及びリセット期間Rに出力させる信号としては、ON信号又はOFF信号のどちらでもよい。この第5の具体例では、発光維持期間に含まれる第2及び第3の表示サイクルTd2及びTd3における各選択期間SにおいてON信号を出力させ、発光維持期間以外の期間に含まれる奇偶調整サイクルTcの後端のリセット期間RにOFF信号を出力させた例を示す。
これによって、2行1列の画素は、1フィールドの先頭から第3の表示サイクルTd3にかけて発光状態とされ、奇偶調整サイクルTcから1フィールドの終端にかけて消光状態とされる。
この第5の具体例においても、前記行走査サイクルを低減させることができ、消費電力の低減並びに高輝度化を図ることができる。
上述の第1〜第5の具体例は、1フィールド内に等間隔の表示サイクルTdを最大階調レベルに応じた数分だけ割り当てた例を示したが、その他、以下に示す第6の具体例及び第7の具体例に示すように、1フィールド内に、所定長の単位非選択期間を有する少なくとも1つの単位表示サイクルと、少なくとも1つの冗長表示サイクルを割り当て、前記冗長表示サイクルに前記所定長のn倍(nは2以上の整数)の長さを有する冗長非選択期間を設けるようにしてもよい。ここで、nを便宜的に冗長度と定義する。
そして、最大階調レベルをX、単位表示サイクルの個数をY、冗長表示サイクルの個数をZとしたとき、
Z=X÷nの商−1
Y=X−Z×n
サブフィールド総数(Y+Z)=(X/n−1)+n
を満足し、更に、1フィールドの先頭からa個の選択期間Sを表示サイクル毎に割り当て、1フィールドの後端からb個のリセット期間Rを表示サイクル毎に割り当てる。この場合に、
a+b=Y+Z+1
とする。このとき、b=nとした場合は、最大階調レベルに含まれるすべての階調を表現できるが、b=n−1として、1つあるいはいくつかの階調レベルを間引きするようにしてもよい。これにより、行走査サイクルが低減されるため、低消費電力化を図ることができる。
以下、この階調制御方式での具体例を図37〜図39を参照しながら説明する。
第6の具体例
第6の具体例は、図37に示すように、冗長度nを4、最大階調レベルXを16としたもので、この場合、冗長表示サイクルTDの個数Zは16÷4の商−1=3となり、単位表示サイクルTdの個数Yは16−3×4=4となる。
そして、この第6の具体例では、1フィールドの先頭から3つの冗長表示サイクルTD1〜TD3を連続して割り当て、その後に4つの単位表示サイクルTd1〜Td4を連続して割り当てる。更に、1フィールドの先頭から4つの選択期間Sを表示サイクル毎に割り当て、1フィールドの後端から4つのリセット期間Rを表示サイクル毎に割り当てるようにしている。
この第6の具体例において、階調レベル1〜4を表現する場合は、第1の単位表示サイクルTd1の前段に割り当てられた4番目の選択期間Sに同期してON信号を出力し、当該画素の階調レベルに応じた個数の単位表示サイクルTd1〜Td4におけるリセット期間に同期してON信号とOFF信号を出力する。
階調レベル5〜8を表現する場合は、第3の冗長表示サイクルTD3の前段に割り当てられた3番目の選択期間S及び前記4番目の選択期間Sに同期してON信号を出力し、当該画素の階調レベルに応じた個数の単位表示サイクルTd1〜Td4におけるリセット期間に同期してON信号とOFF信号を出力する。
また、階調レベル9〜12を表現する場合は、第2の冗長表示サイクルTD2の前段に割り当てられた2番目の選択期間S、前記3番目及び4番目の選択期間Sに同期してON信号を出力し、当該画素の階調レベルに応じた個数の単位表示サイクルTd1〜Td4におけるリセット期間Rに同期してON信号とOFF信号を出力する。
階調レベル13〜16を表現する場合は、先頭の選択期間S〜4番目の選択期間Sに同期してON信号の出力し、当該画素の階調レベルに応じた個数の単位表示サイクルTd1〜Td4におけるリセット期間Rに同期してON信号とOFF信号を出力する。
この第6の具体例によれば、例えば1フィールドで16階調を表現する場合を想定したとき、1つの行に関し、8回の選択走査で済み、行走査サイクルを大幅に低減させることができる。その結果、消費電力の低減並びに高輝度化を実現させることができる。
第7の具体例
第7の具体例は、図38に示すように、第6の具体例とほぼ同じ構成を有するが、1フィールドの先頭から4つの単位表示サイクルTd1〜Td4を連続して割り当て、その後に3つの冗長表示サイクルTD1〜TD3を連続して割り当てている点で異なる。
この第7の具体例において、階調レベル1〜4を表現する場合は、各リセット期間に同期してOFF信号を出力し、単位表示サイクルTd1〜Td4の個数を階調レベルに応じて増減させるように、ON信号の開始タイミングを制御する。階調レベル5〜8を表現する場合は、第1の冗長表示サイクルTD1の後端以降に割り当てられた各リセット期間Rに同期してOFF信号を出力し、前記第1の冗長表示サイクルTD1と共に含まれる単位表示サイクルTd1〜Td4の個数を階調レベルに応じて増減させるように、ON信号の開始タイミングを制御する。
階調レベル9〜12を表現する場合は、第2の冗長表示サイクルTD2の後端以降に割り当てられた各リセット期間Rに同期してOFF信号を出力し、第1及び第2の冗長表示サイクルTD1及びTD2と共に含まれる単位表示サイクルTd1〜Td4の個数を階調レベルに応じて増減させるように、ON信号の開始タイミングを制御する。
階調レベル13〜16を表現する場合は、1フィールドの後端に割り当てられたリセット期間Rに同期してOFF信号を出力するように制御し、第1〜第3の冗長表示サイクルTD1〜TD3と共に含まれる単位表示サイクルTd1〜Td4の個数を階調レベルに応じて増減させるように、ON信号の開始タイミングを制御する。
上述の第6の具体例及び第7の具体例では、冗長度nを4にした場合を示しているが、その他、冗長度nが2、3、5・・・である場合にも同様に適用可能である。
この場合に、単位表示サイクルTdと冗長表示サイクルTDの任意の組み合わせで得られる最大階調レベルに応じたサブフィールド総数のうち、最もサブフィールド総数が少ない組み合わせで単位表示サイクルと冗長表示サイクルを割り当てることが好ましい。
即ち、図39に示すように、単位表示サイクルTdと冗長表示サイクルTDの任意の組み合わせで得られるサブフィールド総数は最大階調レベルによって変わる。例えば、冗長度n=4の場合(U(1)とU(4)の組み合わせ)を考えると、そのサブフィールド総数は、最大階調レベルが16のときは7であり、最大階調レベルが256のときは67となる。冗長度n=8の場合(U(1)とU(8)の組み合わせ)は、最大階調レベルが16のときは9であって、最大階調レベルが256のときは39となる。
従って、本実施の形態では、最大階調レベルが16のときは、最もサブフィールド総数が少ない冗長度n=4の組み合わせ(U(1)とU(4)の組み合わせ)を採用し、最大階調レベルが32のときは、冗長度n=4又は8の組み合わせ(U(1)とU(4)の組み合わせ又はU(1)とU(8)の組み合わせ)を採用する。同様に、最大階調レベルが64のときは、冗長度n=8の組み合わせを採用し、最大階調レベルが128のときは、冗長度n=8又は16の組み合わせ(U(1)とU(8)の組み合わせ又はU(1)とU(16)の組み合わせ)を採用し、最大階調レベルが256のときは、冗長度n=16の組み合わせを採用する。
こうすることにより、各最大階調レベルでのサブフィールド総数が小さくなり、消費電力の低減化を更に有効に達成させることができ、しかも、走査回路の負担も軽減させることができることとなる。
第1〜第7の具体例では、1フィールド内での1つの画素に対する発光と消光のサイクルを1回のみとする階調制御を示したが、その他、以下の第8及び第9の具体例に示すように、1フィールド内での1つの画素に対する発光と消光のサイクルを2回とする階調制御を行うようにしてもよい。
第8の具体例
第8の具体例は、図40に示すように、1フィールド内に、3つの冗長表示サイクルTD1〜TD3で構成された第1のサブフィールドブロックSFB1と、4つの単位表示サイクルTd1〜Td4で構成された第2のサブフィールドブロックSFB2を割当て、更に、前記第1及び第2のサブフィールドブロックSFB1及びSFB2間に強制リセット期間TRを割り当てるようにしている。この第8の具体例での階調制御の方式は、第2の具体例の方式とほぼ同様であるため、その説明は省略する。
この場合、第1のサブフィールドブロックSFB1において冗長表示サイクルTDを使用していることから、行走査サイクルの低減を図ることができ、消費電力の低減化を実現させることができる。特に、強制リセット期間TRを設けるようにしているため、該期間において画素を消光させるに十分な信号を与えることができる。
第9の具体例
第9の具体例は、図41に示すように、第8の具体例とほぼ同じ構成を有するが、第2のサブフィールドブロックSFB2に2つの冗長表示サイクルTD1及びTD2と1つの単位表示サイクルTdが割当てられている点で異なる。この第9の具体例での階調制御の方式は、第1のサブフィールドブロックSFB1は第2の具体例の方式とほぼ同様であり、第2のサブフィールドブロックSFB2は第5の具体例の方式とほぼ同様であるため、その説明は省略する。
この場合、第2のサブフィールドブロックSFB2での行走査サイクルの低減化も図ることができるため、消費電力の低減化を更に実現させることができる。
以上、本実施の形態に係る駆動装置の階調制御を第1〜第9の具体例に基づいて説明してきたが、これらの駆動装置は、ディスプレイの構成として、図1に示す本実施の形態に係るディスプレイDや図10に示す第1の変形例に係るディスプレイDaに対し、図17に示すように、カラム電極28bと信号線42との間にバリスタ120が接続された構成のものにおいて好適となる。
この場合、図42に示すように、ロー電極駆動回路202から出力される選択パルスPsのピーク値として−100V、非選択信号Suのピーク値として−20V、リセットパルスPrのピーク値として60Vを使用し、また、カラム電極駆動回路204から出力されるON信号として80V、OFF信号として0Vを使用することが好ましい。
一方、図43に示すような第6の変形例に係るディスプレイDfに対して前記第1〜第9の具体例に係る駆動装置を使用するようにしてもよい。
このディスプレイDfは、アクチュエータ部14が自然状態、あるいはアクチュエータ部14にON信号が供給されることで変位伝達部32の板部材32aの端面が光導波板12の背面に対して光10の波長以下の距離で接触し(発光)、アクチュエータ部14にオフ信号が印加されることで、当該アクチュエータ部14が空所20側に凸となるように屈曲変位、即ち、他方向に屈曲変位して、板部材32aの端面が光導波板12から離隔する(消光)という構成を有する。
そして、上述した第1〜第9の具体例に係る駆動装置は、図43に示す第6の変形例に係るディスプレイDfに対し、図17に示すように、カラム電極28bと信号線42との間にバリスタ120が接続された構成のものにおいて好適となる。
この場合、図44に示すように、ロー電極駆動回路202から出力される選択パルスPsのピーク値として90V、非選択信号Suのピーク値として−10V、リセットパルスPrのピーク値として−110Vを使用し、また、カラム電極駆動回路204から出力されるON信号として0V、OFF信号として100Vを使用することが好ましい。
更に好ましくは、図45に示すように、ロー電極駆動回路202から出力される選択パルスPsのピーク値として170V、非選択信号Suのピーク値として0V、リセットパルスPrのピーク値として−160Vを使用し、また、カラム電極駆動回路204から出力されるON信号として0V、OFF信号として80Vを使用することがよい。
そして、本実施の形態に係る駆動装置における第1〜第9の具体例においては、電力回収回路との併用により更なる低消費電力化を図ることができる。
また、これらの駆動装置における階調制御は、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイで用いられている階調制御にも適用可能である。
例えばプラズマディスプレイにおいては、各画素(放電セル)は、容量性素子(コンデンサ)として等価回路で表され、かつ、本実施の形態に係るディスプレイの各画素と同様にメモリ効果を有するため、本実施の形態に係る駆動装置の階調制御を適用させることができる。
この場合に、以下の効果を得ることができる。
(1) 発光維持期間を長くとれるため、高輝度化を実現させることができる。
(2) 分割したサブフィールドの組み合わせで階調表現しないことから、いわゆる偽輪郭の発生を防止することができる。
(3) 点灯放電が1フィールドに1回(第1〜第7の具体例)又は2回(第8及び第9の具体例)しかないことから、低消費電力化を図ることができる。
また、TFT−LCD(アクティブマトリクス方式の液晶ディスプレイ)についても、スイッチング素子と容量性画素の組み合わせであるため、本実施の形態に係る階調制御が適用できる。この場合、高輝度化と低消費電力化を実現させることができる。
また、単純マトリクス方式のLCDも画素のフレーム応答を利用することにより、本実施の形態に係る階調制御(特に、第2、第3、第5、第8及び第9の具体例)が適用可能である。図46に本実施の形態の第2の具体例(図33A〜図33C参照)を単純マトリクス方式のLCDに適用して階調レベル=7を表現したフレーム応答波形を示す。
図46において、S/ONは選択された画素の選択期間SでON信号が出力されている場合を示し、S/OFFは当該画素の選択期間SでOFF信号が出力されている場合を示し、R/OFFは当該画素のリセット期間RでOFF信号が出力されている場合を示す。従って、この図46の例では、S/ONとされた時点からR/OFFとされる時点までが発光維持期間となる。
ところで、本実施の形態に係るディスプレイDにおいては、例えば図1に示すように、アクチュエータ部14の自然状態で消光とし、アクチュエータ部14のロー電極28aとカラム電極28b間に高レベル電圧を印加したときにアクチュエータ部14を光導波板12側に凸となるように屈曲変位させて発光させるようにしたが、その他、光導波板12の背面に変位伝達部32を接触・離隔することにより、アクチュエータ部14をオン動作/オフ動作させる際に、形状保持層26に電圧を印加して発生する歪みに加えて、光導波板12の背面と変位伝達部32の接触面(端面)との間に静電気を発生させ、この静電気による引力、斥力をアクチュエータ部14のオン動作/オフ動作に利用するようにしてもよい。
結果として、アクチュエータ部14の駆動中に、誘電分極を発生させて静電気による引力を利用してアクチュエータ部14のオン特性(変位伝達部32の接触性や接触方向への応答性等)の向上を図る構成や、静電気による引力のみならず、斥力も利用することにより、アクチュエータ部14のオン特性以外にオフ特性(変位伝達部32の離隔性や離隔方向への応答性等)の向上をも図ることができる。
例えば、アクチュエータ部14のオン特性のみの向上を図る場合は、単に変位伝達部32の接触面(端面)及び光導波板12自体又は光導波板12の背面にコーティング材を配して、これらを誘電分極させればよい。
更に、例えばアクチュエータ部14のオン特性とオフ特性の両方を向上させる場合は、誘電分極された変位伝達部32の接触面に対して、静電気による引力、斥力のいずれも発生するように、光導波板12の背面に透明電極や金属薄膜を配してその電気極性を切り換えればよい。
具体的に、前記構成について図47A〜図48Bを参照しながら説明する。アクチュエータ部14の自然状態で発光とし、図47A及び図47Bに示すように、形状保持層26の上面にロー電極28a、下面にカラム電極28bが形成されたディスプレイDにおいて、光導波板12の背面のうち、アクチュエータ部14に対応した位置にそれぞれ透明電極290を形成する。
そして、アクチュエータ部14をオン動作させて発光させる場合は、例えば図47Aに示すように、当該アクチュエータ部14に対応する透明電極290とロー電極28aとの間に電圧(Vc>Va)を印加し、ロー電極28aとカラム電極28bとの間の電圧はほぼゼロとしておく(Va≒Vb)。
これにより、透明電極290とロー電極28aとの間に働く静電引力で変位伝達部32は光導波板12側に押し付けられる。この押圧力により、輝度の向上、応答速度の向上が図られる。
一方、アクチュエータ部14をオフ動作させて消光させる場合は、図47Bに示すように、当該アクチュエータ部14に対応する透明電極290とロー電極28aとの間の電圧をほぼゼロにしておき(Vc≒Va)、ロー電極28aとカラム電極28bとの間に電圧(Va<Vb)を印加する。
これにより、アクチュエータ部14は空所20側に凸となるように屈曲変位し、変位伝達部32は光導波板12から離隔することになる。
ところで、前記透明電極290を、光導波板12の背面や、変位伝達部32の端面のいずれに形成してもよいが、変位伝達部32の端面に形成する方が好ましい。これは、アクチュエータ部14上のロー電極28aとの距離が小さくなり、より大きな静電力を発生させることができるからである。
また、光導波板12の背面に形成された透明電極290は、変位伝達部32の離隔性を向上させる効果がある。一般に、変位伝達部32の接触、離隔によって変位伝達部32や光導波板12に生ずる局所的な表面電荷を生ずるが、これは、変位伝達部32が光導波板12に接触するのを助ける。しかし、この場合、変位伝達部32が光導波板12に貼り付いてしまうという不都合が生じやすくなる。
そこで、光導波板12の背面に透明電極290を形成することで、局所的な表面電荷の発生を緩和し、前記不都合(貼り付き)が低減され、変位伝達部32の離隔性が向上する。
前記透明電極290を形成して静電気を利用する構成は、図48A及び図48Bに示すようなディスプレイD、即ち、形状保持層26の上面に一対の電極(ロー電極28aとカラム電極28b)を形成したディスプレイDにも適用することができる。
つまり、光導波板12の背面に透明電極290を形成し、この透明電極290とアクチュエータ部14の上面に設けられた一対の電極28a及び28bとの間に電圧(Vc>Va、Vc>Vb)を印加すると、両者の間に静電気が発生する。
ここで、アクチュエータ部14の自然状態で消光の場合を考えたとき、当該アクチュエータ部14をオン動作させて発光させる場合、一対の電極28a及び28b間の電圧(Va<Vb<Vc)によってアクチュエータ部14が光導波板12に向かって屈曲変位すると共に、前記静電気の引力によって、変位伝達部32が光導波板12側に急速に接近し、発光状態となる。反対に、透明電極290と一対の電極28a及び28bとの間に電圧を印加しない状態(Va≒Vb≒Vc)では、アクチュエータ部14がオフ動作し、アクチュエータ部14の剛性によって光導波板12から離隔し、消光状態となる。
このような静電気を利用したディスプレイDに対しても第1〜第9の具体例に係る駆動方式を適用させることができる。
なお、この発明に係るディスプレイの駆動装置及びディスプレイの駆動方法は、上述の実施の形態に限らず、この発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。