JP4113349B2 - Dnaチップ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はDNAチップ及びその製造方法に関し、特に、遺伝子の解析などに有用な、DNAとの吸着効率に優れ、単位面積あたりに多くのDNAを固定化させうるDNAチップ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生物の遺伝子機能を効率的に解析するための手段として、DNAチップが注目されている。DNAチップは通常、スライドガラス等の固相担体に多数のDNA断片を整列固定させた態様を有し、その使用方法としては、DNAチップに固定されているDNA断片と相補性を持つDNA断片試料をハイブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定し、検出する方法などが挙げられる。
このようなDNAの固定化技術は、DNA以外の生体分子にも適用可能であり、創薬研究、疾病の診断や予防法の開発、エネルギーや環境問題対策等の研究開発に新しい手段を提供するものとして期待されている。
【0003】
固相担体表面にDNA断片を固定化する方法は従来から種々検討されてきており、代表的な例としては、ガラス基板上にアミノプロピルシランを反応させて基板表面にアミノ基を結合させ、このアミノ基を介してDNA断片を基板上に結合する方法が挙げられる。
具体的には、例えば、特開2001−178459号公報にはガラス表面のアミノ基に無水マレイン酸を反応させてマレイド被覆ガラススライドとし、これにフルフリルアミノ基が導入されたDNA断片を反応させることにより、ガラス表面とDNAとを共有結合で固定化する技術が開示されている。また、特開2001−178466ではガラス表面に固定されたアミノ基にクロロイソシアネート、スクシンイミジル(4−ビニルスルホニル)ベンゾエートなどの反応性基を2個有する連結剤の片末端に基板のアミノ基を反応させ、次いで、残ったもう一方の末端にアミノ基導入DNAを共有結合で連結させる方法が開示されている。
また、固相担体表面とDNA断片とは、共有結合以外にも、イオン結合、水素結合、疎水結合などで結合される例もある。例えば、特開2001−178458号公報には、ホストゲスト相互作用を用いて担体表面とDNA断片とを固定化させる方法が記載されている。
【0004】
これらのDNAチップは、検出に必要な量のDNAを担持できる性能を有しているが、遺伝子解析などの目的に応じた検出感度向上の観点から、一定面積に多くのDNA断片を固定化する技術が求められている。すなわち、これら公知のDNA断片の固定化方法においては期待した反応がすべて効率よく進行するわけではなく、固相担体の一部は未反応のままでDNAが固定化されずに残っているのが現状であった。
【0005】
また、DNAチップに固定されているDNA断片と相補性を持つDNA断片試料をハイブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定する検出方法を実施する場合、検出感度の向上の観点からハイブリダイゼーションの効率を高め、担体表面上に固定化された一定量のDNAに対して、標識されたDNAがより高い効率でハイブリダイゼーションすることが要望されている。しかしながら、従来の方法で作成されたDNAチップは、担体に対するDNA断片の固定化率のみならず、このハイブリダイゼーションの効率も必ずしも高いとはいい難く、さらなる検出感度の向上が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術の欠点を考慮してなされた本発明の目的は、DNAとの吸着効率に優れ、単位面積あたりに多くのDNAを固定化させうるDNAチップ及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、生物の遺伝子機能の解析などに有用な、DNAチップに固定されているDNA断片と相補性を持つDNA断片試料をハイブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定する際に、ハイブリダイゼーションを高効率で行ない得るDNAチップを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、固相担体表面からグラフトポリマー鎖を介してDNAを固定化することにより高密度でかつ高効率でDNAを固定化できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明のDNAチップは、固相担体表面にDNA断片を固定化したDNAチップであって、該固相担体表面とDNA断片とが、固相担体表面に結合されたグラフトポリマーを介して固定化されており、そのようなグラフトポリマーは、固相担体表面に設けた光重合性層に結合されたものであるか、固相担体表面に設けられたポリマー架橋膜構造の中に導入されているグラフトポリマーであることを特徴とする。
また、該グラフトポリマーは、固相担体表面に重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光重合性層を形成し、そこに、分子内に重合可能な2重結合と反応性官能基とを有する化合物を接触させ、光照射する方法、反応性官能基を有するマクロマーと反応性官能基を有する他のモノマーとを共重合させてなるグラフト共重合ポリマーを合成し、ポリマーの反応性官能基と反応する架橋剤とともに固相担体表面に塗布し、熱により反応させて架橋させる方法、或いは、反応性官能基をマクロマーと、光架橋性基、若しくは重合性基を有するグラフトポリマーと、を固相担体表面に塗布して光照射により反応させて架橋させる方法などにより作製することができる。
【0008】
本発明の作用は明確ではないが、本発明のDNAチップにおいては、固相担体表面にDNAの固定化をグラフトポリマー鎖を介して行なっているが、グラフトポリマー鎖は片末端が固相担体表面に強固に結合されると共に、グラフト鎖中には反応性官能基、即ち、DNA断片との結合に寄与する活性点が固相担持体の単位面積に対して高密度で存在するため、高密度でDNA断片を固定化することが可能となり、さらに、反応性官能基を有するポリマーのグラフト鎖部分が互いに架橋されておらず、溶媒中で自由な動きをとることができ、運動性の高い状態を維持するため、グラフトポリマー鎖にある反応性官能基とDNA断片との反応性が高まり、高効率でのDNAの固定化が実現できたものと考えられる。
さらに、このような運動性の高いグラフト鎖に固定化されたDNA断片自体も自由な運動性を有し、このような自由度の高いDNA断片は、それと相補性を持つDNA断片試料をハイブリダイゼーションによってDNAチップ上に固定する際にも、相補性を持つDNA断片試料に対して高い反応性を発現するため、ハイブリダイゼーションを高効率で行ない得るものと考えられる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
〔グラフトポリマー〕
本発明において、固相担体とDNA断片との結合に使用されるグラフトポリマーには特に制限はなく、ポリマーの側鎖にDNA断片と結合し得る反応性官能基を有するグラフトポリマーであれば、いずれも使用することできる。
このような反応性官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、酸無水物基、スルホン酸基、イソシアネート基、トリアルコキシシリル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、リン酸基、ホスホン酸基などを挙げることができる。またそれらの官能基から誘導される官能基も特に有用である。例えば、カルボキシル基から誘導されるものとしては、酸無水物、および、N−ヒドロキシスクシンイミド、ベンジルアルコールなどの活性エステル、カルボン酸ハロゲン化物、などが挙げられ、スルホン酸基から誘導されるものとしては、ベンジルアルコールなどの活性エステル、スルホン酸ハロゲン化物などを例として挙げることができる。
【0010】
〔グラフトポリマーを介してDNA断片を固定化する方法〕
グラフトポリマーの側鎖に存在する反応性官能基を用いて、従来公知の方法を適用してDNA断片を固定化することができる。たとえば、特開2001−178460号公報には、カルボキシル基を持つモノマーを構成成分とするポリマーを表面に担持した固相担体を使用し、DNA断片を固定化する方法が開示されている。この方法を使用して、アクリル酸グラフトポリマーを担持(結合)してなる固相担体を脱水剤により処理することで末端を環状の酸無水物とし、これを反応性官能基として、末端部にアミノ基を有するDNA断片を有する水性液体を点着することで、この反応性官能基とDNA断片のアミノ基との相互作用により、DNA断片を固定化することができる。
また、アクリル酸グラフトポリマーが結合された固相担体を用いて、水溶性のカルボジイミドを使用して、カルボン酸を活性エステルに変換し、これを反応性官能基として、アミノ基を有するDNA断片を有する水性液体を点着することでDNAを固定化することができる。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、DNAチップには、塩基性配列が既知であり、末端にアミノ基を有するDNAを用い、反応性官能基として、該アミノ基と共有結合を形成するものと選択するのであるが、この際に、より高い反応性を有する官能基を形成するため、カルボン酸を酸無水物もしくは活性エステルに変換することが好ましい。
ここでカルボン酸を酸無水物もしくは活性エステルに変換する際に用いられる試薬としては、公知の試薬を使用することができる。具体的には、酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、酸ハロゲン化物(メタンスルホニルクロリド、クロロ炭酸イソブチルなど)、カルボジイミド類(ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩など)、2−ハロピリジニウム化合物(ヨウ化−2−フルオロ−1−メチルピリジニウムなど)、2位に離脱基を有する1,1,3,3−テトラアルキルアミジニウム化合物(O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩、塩化2−クロロ−1,3−ジメチルイミダゾリニウムなど)、活性エステルおよび活性アミド類(酢酸1−スクシンイミジル、カルボニルジイミダゾールなど)などが好ましく用いられる。
【0012】
以下に、このようなグラフトポリマーを固相担体表面に導入する方法について説明する。
本発明における固相担体は、その表面にグラフトポリマー鎖が結合されていることを特徴とする。これはグラフトポリマー鎖が直接固相担体の表面に結合しているものでもよく、また、固相担体表面にグラフトポリマーが結合しやすい中間層を設けてその層の上に末端に反応性の官能基を有するポリマーがグラフトされているものでもよい。さらに、本発明における固相担体表面には、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合したポリマー、若しくは、グラフトポリマー鎖が幹高分子化合物に結合し、かつ、架橋しうる官能基が導入されたポリマーを用いて、塗布或いは塗布架橋により固相担体表面上に配置されたものや、ポリマー末端に架橋性基を有する親水性ポリマーと架橋剤とを含む組成物を用いて、塗布或いは塗布架橋により固相担体表面上に配置されたものも包含される。
【0013】
本発明に用いられるグラフトポリマーの特徴は、ポリマーの末端が固相担体表面若しくは固相担体表面層に結合しており、且つ、DNA断片と相互作用を形成する反応性官能基が存在するグラフト部分が実質的に架橋されていない構造を有することにある。この構造によりDNAと結合を形成し得る反応性官能基を有するポリマー部分の運動性が制限されたり、強固な架橋構造内に埋没されることがなく、高い運動性を保持できる特徴を有する。このため、通常の架橋構造を有し、且つ、反応性官能基を分子内に有する親水性ポリマーに比較して、優れたDNAとの結合性が発現されるものと考えられる。
このようなグラフトポリマー鎖の分子量は、Mw500〜500万の範囲であり、好ましい分子量はMw1000〜100万の範囲であり、さらに好ましくはMw2000〜50万の範囲である。
【0014】
本発明においては、(a)グラフトポリマー鎖が直接固相担体表面若しくは固相担体表面上に設けた中間層の上に結合しているものを「表面グラフト」と称し、(b)グラフトポリマー鎖がポリマー架橋膜構造の中に導入されているものを用いる場合は「グラフト鎖導入架橋層」と称する。また、本発明では固相担体若しくは固相担体上に中間層を設けた材料を「基材」と称する。
【0015】
〔(a)表面グラフトの作製方法〕
基材上にグラフトポリマーからなる反応性官能基を有する表面を作製する方法としては、基材とグラフトポリマーとを化学結合にて付着させる方法と、基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマーとする2つの方法がある。
【0016】
まず、基材とグラフトポリマーとを化学結合にて付着させる方法について説明する。
この方法においては、ポリマーの末端若しくは側鎖に基材と反応する官能基を有するポリマーを使用し、この官能基と、基材表面の官能基とを化学反応させることでグラフトさせることができる。基材と反応する官能基としては、基材表面の官能基と反応し得るものであれば特に限定はないが、例えば、アルコキシシランのようなシランカップリング基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、エポキシ基、アリル基、メタクリロイル基、アクリロイル基等を挙げることができる。ポリマーの末端若しくは側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーである。また、この時に使用されるポリマーとしては、反応性官能基を有するものであれば特に限定はないが、具体的には、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びそれらの塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドなどを挙げることができる。その他、以下の表面グラフト重合で使用される反応性官能基を有するモノマーの重合体、若しくはそのようなノマーを含む共重合体を有利に使用することができる。
【0017】
基材を基点として重合可能な2重結合を有する化合物を重合させ、グラフトポリマーを形成させる方法は、一般的には表面グラフト重合と呼ばれる。表面グラフト重合法とは、プラズマ照射、光照射、加熱などの方法で基材表面上に活性種を与え、基材と接するように配置された重合可能な2重結合を有する化合物を重合によって基材と結合させる方法を指す。
【0018】
本発明を実施するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、P135には、表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線等の放射線照射グラフト重合法が記載されている。光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法においては、上記記載の文献、及びY.Ikada et al, Macromolecules vol. 19、 page 1804(1986)などに記載の方法を適用することができる。
具体的には、PETなどの高分子表面を、プラズマ、若しくは、電子線にて処理して表面にラジカルを発生させ、その後、その活性表面と親水性官能基を有するモノマーとを反応させることによりグラフトポリマーが結合された表面層を得ることができる。
光グラフト重合は、上記記載の文献のほかに、特開昭53−17407号公報(関西ペイント)や、特開2000−212313号公報(大日本インキ)に記載されるように、フィルム基材の表面に光重合性組成物を塗布し、その後、水性ラジカル重合化合物とを接触させて光を照射することによっても実施することができる。
【0019】
(表面グラフト重合するのに有用な重合可能な2重結合を有する化合物)
グラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な2重結合を有しており、かつ、分子内に反応性官能基を有するという、2つの特性を兼ね備えていることが必要である。これらの化合物としては、分子内に2重結合を有していれば、反応性官能基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーのいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物は反応性官能基を有するモノマーである。
本発明で有用な反応性官能基を有するモノマーとは、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離し得る酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基、などの非イオン性の基を有するモノマーを用いることもできる。
【0020】
本発明において、特に有用な反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン酸塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0021】
〔(b)グラフト鎖導入架橋層の作製方法〕
本発明に係るグラフト鎖が導入された架橋層は、一般的にグラフト重合体の合成法として公知の方法を用いてグラフトポリマーを作製し、それを架橋することで作製することができる。具体的には、グラフト重合体の合成は“グラフト重合とその応用”井手文雄著、昭和52年発行、高分子刊行会、及び“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)(1995)に記載されている。
【0022】
グラフト重合体の合成は、基本的に、1.幹高分子から枝モノマーを重合させる、2.幹高分子に枝高分子を結合させる、3.幹高分子に枝高分子を共重合させる(マクロマー法)、の3つの方法に分けられる。これらの3つの方法のうち、いずれを使用しても本発明に係るグラフトポリマーを結合した固相担体を作製することができるが、特に、製造適性、膜構造の制御という観点からは「3.マクロマー法」が優れている。マクロマーを使用したグラフトポリマーの合成は前記の“新高分子実験学2、高分子の合成・反応”高分子学会編、共立出版(株)1995に記載されている。また山下雄他著“マクロモノマーの化学と工業”アイピーシー、1989にも詳しく記載されている。
具体的には、アクリル酸、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N−ビニルアセトアミドなど、上記の有機架橋層として具体的に記載した反応性官能基を有するモノマー使用して文献記載の方法に従いこのような官能基を有するマクロマーを合成することができる。
【0023】
本発明で使用される反応性官能基を有するマクロマーのうち特に有用なものは、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロマー、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系マクロマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸基含有モノマーから誘導されるマクロマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート等のアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロマーとして有用に使用することができる。
これらのマクロマーのうち有用な分子量は、400〜10万の範囲、好ましい範囲は1000〜5万、特に好ましい範囲は1500〜2万の範囲である。分子量が400以下では効果を発揮できず、また10万以上では主鎖を形成する共重合モノマーとの重合性が悪くなる。
【0024】
これらのマクロマーを合成後、グラフト鎖が導入された架橋層を作製する一つの方法は、上記の反応性官能基を有するマクロマーと反応性官能基を有する他のモノマーと共重合させ、グラフト共重合ポリマーを合成しその後、合成したグラフト共重合ポリマーとポリマーの反応性官能基と反応する架橋剤とを固相担体上に塗布し、熱により反応させて架橋させ作製する方法である。また、他の方法としては、反応性官能基を有するマクロマーと光架橋性基、若しくは重合性基を有するグラフトポリマーを合成し、それを固相担体上に塗布して光照射により反応させて架橋させ作製する方法が挙げられる。
【0025】
このようにして、基材上にグラフトポリマー鎖が存在する表面を設けることができる。架橋層の膜厚は目的により選択できるが、一般的には0.001μm〜10μmの範囲が好ましく、0.01μm〜5μmの範囲がさらに好ましく、0.1μm〜2μmの範囲が最も好ましい。膜厚が薄すぎると耐キズ性が低下する傾向があり、厚すぎる場合には固定化反応の進行速度が低下する傾向がある。
【0026】
〔固相担体〕
DNAチップを形成する固相担体としては、特に制限はなく、目的に応じて選択して使用することができるが、DNA断片を所望の部位に選択的に固定化するという観点からは、表面疎水性の担体、或いは親水性の低い担体を用いることが好ましい。
固相担体は、表面が平滑なものであってもよく、また、凹凸を有する平面性の低いものであっても好ましく用いることができる。
固相担体の材質としては、ガラス、セメント、セラミックス、ニューセラミックスなどの無機非晶質材料、Si基板などにも用いられるシリコン、或いは、活性炭などの無機材料、金などの導電性材料等の無機材料が挙げられる。また、担体の形状は、固相の板状物が一般的であるが、これに限定されず、多孔質ガラス、多孔質セラミックス、多孔質シリコン、多孔質活性炭、メンブレンフィルター等の多孔質物質であってもよく、また、前記したような材料を原料とする長繊維或いは短繊維を用いて形成された織布、編物、不織布などの形態をとるものであってもよい。固相担体として、表面に微細な凹凸を有するものや多孔質物質を用いることで、表面積を大きくとることができる。そのような場合に用いる多孔質物質の細孔の大きさは、2〜1000nmの範囲にあることが好ましく、2〜500nmの範囲にあることが特に好ましい。
【0027】
これらのなかでも、固相担体の材質としては、表面処理の容易さや電気化学的方法による解析の容易さの観点から、ガラスもしくはシリコンであることが特に好ましい。また、固相担体の厚さは、DNAチップの使用目的にもよるが、一般的には100μm〜2000μmの範囲にあることが好ましい。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
[固相担体へのグラフトポリマーの導入]
スライドガラス〔スライド(A):25mm×75mm〕の上に、下記の光重合性組成物をロッドバー17番で塗布し80℃で2分間乾燥させた。次にこの塗布されたフィルムを、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、10分間照射し、予備硬化させた。
【0029】
(光重合性組成物)
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(東亞合成(株)M210)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0030】
次に、このスライドガラス(A)をアクリル酸:10質量%及び次亜塩素酸ナトリウム:0.01質量%を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間光照射した。
光照射後得られたスライドガラスをイオン交換水で良く洗浄し、アクリル酸がグラフトされた表面を有する固相担体〔スライド(B)〕をを得た。
【0031】
[アクリル酸の活性エステルへの変更]
グラフト鎖にアクリル酸が導入されたスライド(B)において、アクリル酸末端のカルボン酸基を活性エステルに変換する目的で、4質量%の1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(東京化成社製)および10質量%のN−ヒドロキシスクシンイミドのアセトニトリル(50mL)溶液に2時間浸し、アセトニトリルで洗浄し、1時間減圧下に乾燥し、スクシンイミド基が導入されたスライド(C)を得た。
【0032】
[DNA断片の点着と蛍光強度の測定]
5’末端および3’末端がそれぞれアミノ基であり、蛍光標織試薬(FluoroLink Cy5dCTP、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されたDNA断片〔(5’末端→3’末端):CAGGCATACACTGAAGTGAAAACTG〕を0.1M炭酸緩衝液(pH9.8)に分散してなる水性液(1×10-6M、1μL)を、上記で得たスライド(C)に点着した。点着後のスライドを40℃、湿度90%にて1時間放置した後、このスライドを0.1質量%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)と2×SSC〔標準食塩−クエン酸緩衝液(20×SSC:3.0M NaCl 及び 0.3M クエン酸ナトリウム含有)の原液を10倍に希釈した溶液)との混合溶液で2回、0.2×SSC水溶液〔標準食塩−クエン酸緩衝液(20×SSC)の原液を100倍に希釈した溶液〕で1回順次洗浄した。次いで、室温で乾燥させ、DNA断片が固定されたスライド(D1)、即ち、本発明のDNAチップを得た。
このスライド(D1)表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、1500であった。本発明の固定化方法により、DNA断片が効率よくスライドガラスに固定されたことが確認された。
【0033】
〔実施例1〕
[ハイブリダイゼーションの評価]
蛍光標織試薬(FluoroLink Cy5dCTP、アマシャム・ファルマシア・バイオテック社製)で修飾されていないDNA断片を用いた他は、実施例1と同様にして、DNA断片が固定されたスライド(D’1)(DNAチップ)を得た。
5’末端にCy5が結合した22merの標的オリゴヌクレオチド(CTAGTCTGTGAAGTTCCAGATC−5’)をハイブリダイゼーション用溶液(4×SSCおよび10質量%のSDSの混合溶液)(20μL)に分散させたものを、上記(1)で得たスライド(D’1)に点着し、表面を顕微鏡用カバーガラスで保護した後、モイスチャーチャンバー内にて60℃で20時間インキュベートした。次いで、このものを0.1質量%SDSと2×SSCとの混合溶液、0.1質量%SDSと0.2×SSCとの混合溶液、および0.2×SSC水溶液で順次洗浄した後、600rpmで20秒間遠心し、室温で乾燥した。スライドガラス表面の蛍光強度を蛍光スキャニング装置で測定したところ、1200であり、バックグランドの蛍光強度より大きく増加した。従って、本発明のDNAチップを用いることによって、DNAチップに固定されているDNA断片と相補性を有する試料DNA断片を効率的に検出できることが分かる。
【0034】
【発明の効果】
本発明のDNAチップは、DNAとの吸着効率に優れ、単位面積あたりに多くのDNAを固定化させることができ、生物の遺伝子機能の解析などに有用である。さらに、このDNAチップを用いると、DNAチップに固定されているDNA断片と相補性を持つDNA断片試料をハイブリダイゼーションによって固定する際に、高効率でハイブリダイゼーションを行ない得るという効果を奏する。
【0035】
【配列表】
Claims (5)
- 固相担体表面にDNA断片を固定化したDNAチップであって、固相担体表面に光重合性層を有し、該光重合性層に結合されたグラフトポリマーを介してDNA断片が、固相担体表面固定化されていることを特徴とするDNAチップ。
- 固相担体表面にDNA断片を固定化したDNAチップであって、固相担体表面に設けられたポリマー架橋膜構造の中に導入されているグラフトポリマーを介してDNA断片が、固相担体表面固定化されていることを特徴とするDNAチップ。
- 固相担体表面に重合性化合物と光重合開始剤とを含有する光重合性組成物を塗布して、光重合性層を形成し、そこに、分子内に重合可能な2重結合と反応性官能基とを有する化合物を接触させ、光照射により該光重合性層に結合したグラフトポリマーを生成させ、該グラフトポリマーの反応性官能基にDNA断片を固定化することを特徴とするDNAチップの製造方法。
- 反応性官能基を有するモノマーにより合成したマクロマーを、反応性官能基を有する他のモノマーと共重合させ、グラフト共重合ポリマーを合成した後、合成したグラフト共重合ポリマーとポリマーの反応性官能基と反応する架橋剤とを固相担体表面に塗布し、熱により反応させて架橋させることで、ポリマー架橋膜構造の中に導入されているグラフトポリマーを形成し、該グラフトポリマーの反応性官能基にDNA断片を固定化することを特徴とするDNAチップの製造方法。
- 反応性官能基を有するモノマーにより合成したマクロマーと、光架橋性基、若しくは重合性基を有するグラフトポリマーを合成し、それを固相担体表面に塗布して光照射により反応させて架橋させることで、ポリマー架橋膜構造の中に導入されているグラフトポリマーを形成し、該グラフトポリマーの反応性官能基にDNA断片を固定化することを特徴とするDNAチップの製造方法。
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