JP4112828B2 - 電気量発生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、等価抵抗および電圧、電流等の電気量を夫々任意の値で発生させることのできる電気量発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電圧、電流及び等価抵抗等の電気量を発生させる電気量発生装置に関しては、特許第3106459号公報にその内容が開示されている。開示内容としては、電圧、電流或いは熱電対出力等を測定する測定器を校正するための標準電圧・電流の発生と、抵抗計を校正するための等価抵抗を発生させるための装置の主要な構成要素を共通化して一体化するというものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許第3106459号公報に記載の発明による方式の場合、出力端子間に等価的に抵抗を作り出すのは、端子間に電流源を印加した場合に仮想抵抗に応じた電圧を発生させて所望の等価抵抗を作るもので、電圧源を印加した場合には所望の等価抵抗に応じた電流を流すことは困難であった。また、高抵抗を発生させる場合、あるいは高電圧の電圧源を印加する場合、既方式では、出力回路に高電圧を発生できる増幅器が必要であった。さらに、高電圧を出力するためには、当然高電圧の増幅器動作用電源が必要になる。
【0004】
一方、通常の抵抗器の場合は電源は外から供給されるので、抵抗器自身では本来電源を持つ必要がなく、この状況に出来るだけ近づけた方式を実現する必要がある。また、従来の等価抵抗発生装置では、交流信号に対応することは難しかった。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、高抵抗発生時や高電圧印加時にも、それに対応した高電圧電源を用意することなく実現でき、かつ交流信号にも対応できる等価抵抗発生装置を、簡単な構成で実現できるようにするとともに、上記回路を用いて、切換回路と若干の回路追加により、電圧または電流発生装置にも切り換えられるようにした電気量発生装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、出力端子間に電圧または電流を印加した時、前記出力端子に流入する電流に応じて出力端子間に所望の抵抗値に相当する電圧降下を発生させ、電子的に等価的な抵抗を発生させる電気量発生装置において、前記出力端子の一方に流入する電流を電圧に変換する回路と、所望の抵抗値に対応してディジタル値の設定によりゲインを可変とする乗算形D−A変換器と、該乗算形D−A変換器の出力電圧を入力とし、前記出力端子のもう一方の端子の電圧を直接または分圧器を介して誤差増幅器に帰還して、前記出力端子の電圧を制御する出力制御回路と、当該誤差増幅器を構成するOPアンプの前記出力端子にエミッタ電極が接続されてベース電極は抵抗を介して順方向の一定電圧源に接続され、コレクタはダイオードを介して前記出力端子に接続されたトランジスタとを備え、OPアンプで供給できる範囲を超える出力電圧を制御するのにあたり、OPアンプ出力でトランジスタのエミッタ電位を制御して当該トランジスタのコレクタ及びエミッタ間の電圧降下を制御する等価抵抗発生機構を有することを特徴とする。
【0007】
従って、請求項1に記載の発明によれば、トランジスタのエミッタ電位を制御しているので、印加電圧Vが大きくなり制御すべき出力電圧(Vo)が+Vsを超えようとすると、ベース電極へ一定電圧V+が供給されているので、Vaが増えようとするとトランジスタのベース電流が減少方向となり、トランジスタは飽和領域から制御領域に入り、電圧降下を生じて出力電圧Voを制御することが可能になる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記トランジスタによる制御素子として、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタを並列接続し、各々のトランジスタにはダイオードが接続されていることを特徴とする。
【0009】
従って、請求項2に記載の発明によれば、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタを並列接続しているため、印加電圧の正負両極性に対応することが可能になり、また各々のトランジスタにダイオードを接続することにより、逆方向の電圧に対する電流阻止を行うことを可能にしている。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記乗算形D−A変換器の入力を一定の基準電圧とし、前記出力制御回路のトランジスタのコレクタ電極と前記出力端子間に直流電源を挿入し、前記出力端子間の電圧を所望の値に制御するようにした標準電圧発生機構を備え、前記等価抵抗発生機構と前記標準電圧発生機構とを切換回路により機能切換を可能にすることを特徴とする。
【0011】
従って、請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の等価抵抗発生装置の乗算形D−A変換器及び出力制御回路を用いることにより標準電圧発生装置を実現することにより、構成要素の共通化を図ることが可能になるとともに、切換回路を用いることにより標準電圧発生装置から等価抵抗発生装置への機能切換を容易に実現することが可能になる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の構成に加え、前記出力端子に流れる電流をシャント抵抗で電圧に変換し、前記乗算形D−A変換器の出力と等しくなるように出力電流を制御する標準電流発生機構を備えることを特徴とする。
【0013】
従って、請求項4に記載の発明によれば、出力端子と回路コモン間にシャント抵抗器を設けており、電流に比例した電圧を帰還して出力を制御すれば、k設定に応じた定電流出力を得ることができ、乗算形D−A変換器の出力と等しくなる出力電流とすることが可能になる。
【0014】
さらに、請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の構成に加え、前記基準電圧を交流で振幅一定の正弦波基準電圧とし、前記トランジスタのコレクタと前記出力端子との間に印加する電源を、前記正弦波基準電圧と同一周波数、同一位相の電源として前記出力端子から交流の任意の値の可変電圧電流を発生可能にすることを特徴とする。
【0015】
従って、請求項5に記載の発明によれば、基準電圧を交流正弦波基準電圧とし、トランジスタのコレクタと出力端子との間に印加する電源を、前記正弦波基準電圧と同一の交流電源としているので、交流の可変電圧電流の実現を可能にする。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の構成に加え、前記出力電圧の発生に必要な挿入電源の値を、前記標準電圧発生機構においては略所望の電圧値にし、また前記標準電流発生機構においては負荷電圧に応じて、変化させるようにした第2の制御回路を併用することを特徴とする。
【0017】
従って、請求項6に記載の発明によれば、挿入電源の値を標準電圧発生機構及び標準電流発生機構に応じて変える第2の制御回路を備えることにより、トランジスタの電圧降下を小さく抑え、電圧制御の損失を少なくすることが可能になる。
【0018】
さらに、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の構成に加え、前記出力制御用の電圧降下素子に電界効果トランジスタを用いることを特徴とする。
【0019】
従って、請求項7に記載の発明によれば、電圧降下素子としてのトランジスタとして、MOSFET等の電界効果トランジスタを用いることが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1に本発明の実施の形態である電気量発生装置の回路のブロック図を示す。端子71、72の間には交流電源が設けられている。端子72には電流を電圧に変換するための電流・電圧変換回路20が接続されており、電流・電圧変換回路20からは乗算型D−A変換器30に接続されている。この乗算型D−A変換器30では、所定の抵抗値に対応してディジタル値の設定によりゲイン(GAIN)を可変にする機能を備えている。
【0021】
この乗算型D−A変換器30は出力制御用OPアンプ(誤差増幅器)41に接続されている。出力制御用OPアンプ(誤差増幅器)41の一方の入力端子には分圧器42が接続されており、分圧器42は電圧を分圧する機能を備えている。出力制御用OPアンプ(誤差増幅器)41の出力端子には、参照番号50に示すように、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタとが並列に接続してある。
【0022】
つぎに、図1を用いて等価抵抗発生動作について説明する。出力端子71、72間に電圧Vを印加した時、電流Iが流れる。電流Iを電流・電圧変換回路20により電圧V1に変換し、乗算形D−A変換器30に加える。乗算型D−A変換器30は、所望の発生抵抗値設定に応じて、GAINをkに設定する。乗算型D−A変換器30の出力は出力制御回路用OPアンプ(誤差増幅器)41に加えられ、誤差増幅器41のもう一方の入力端子には分圧器42を介して出力端子71の電圧が1/Nに分圧されて帰還される。誤差増幅器41は出力端子電圧の1/Nの値が入力電圧、即ち乗算型D−A変換器30の出力電圧と等しくなるよう出力を制御する。即ち、V1、Voを式で示すと(1)、(2)式のようになる。
【0023】
V1=I*Rs (1)
【0024】
V0=V1*k*N=I*Rs*k*N (2)
【0025】
一方、端子間に電圧Vを印加した時、Vは以下の(3)式で示される。
【0026】
Figure 0004112828
【0027】
等価抵抗Reqは、Req=V/Iであるから、以上よりReqは以下の(4)式になる。
【0028】
Req=(Rs*k*N)+R0 (4)
【0029】
出力端子71、72間に定電流源Iを印加した場合も、上記と同様である。
【0030】
ところで、出力電圧Voは誤差増幅器41の出力Vaで制御されるが、誤差増幅器41に使用するOPアンプの電源電圧が+Vs、−Vsの時、出力電圧は±Vsより大きくは出来ない(実際には±Vsより1〜2V少ない範囲である)。従来の方法によれば、印加電圧Vが大きい場合はそれに応じた出力電圧の制御が必要である。図1に示した本発明は、増幅器の出力のみで出力端子の電圧を制御するのではなく、トランジスタのVce制御による電流のSINK(吸い込み)動作と、通常の増幅器の出力電圧制御とを組み合わせた制御方式である。
【0031】
NPN形トランジスタQ1のベース電極は抵抗を介してOPアンプが発生できる最大電圧よりやや低い順方向の一定電圧V+に接続されている。たとえばOPアンプの最大振幅が±13Vのとき、V+は約+10Vにする。このようにすると、印加電圧Vが低く、Voが概略V+以内で制御される場合は、トランジスタはON(飽和領域)となり、Q1は単なる導通状態で、出力電圧はOPアンプ出力で制御される。なおVoは前述した通り下記の(5)式のようになる。
【0032】
V0=I*Rs*k*N (5)
【0033】
或いは、(6)式のように示すこともできる。
【0034】
V0=V*(Rs/Req)*k*N (6)
【0035】
しかし、印加電圧Vが大きくなり制御すべきVoが+Vsを超えようとすると、ベース電極へ一定電圧V+が供給されているので、Vaが増えようとするとトランジスタのベース電流が減少方向となり、トランジスタは飽和領域から制御領域に入り、電圧降下を生じて出力電圧Voを制御する。印加電圧Vに応じた各部の電圧の状態を図2に示す。図2(a)では、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタとの拡大図が示されており、図2(b)では、印加電圧Vに応じた各部の電圧の変化の状態が示されている。本発明では、エミッタ電極を制御するように構成したため、前記のような動作が可能となった。
【0036】
印加電圧正負に対応させるために、参照番号に示すように、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタとを並列接続してある。ダイオードは、逆方向の電圧に対する電流阻止用である。なお、ダイオードの順方向の電圧降下、及びトランジスタの順方向の飽和電圧は、誤差増幅器(OPアンプ)41の利得が充分大きいため(通常、直流信号の場合120dB以上)、制御系の入力換算値で見ると全く誤差とならない。
【0037】
このようにして、本発明によれば、低い電圧に対してはOPアンプが出力を直接制御し、高電圧になるとトランジスタが電圧を吸収して(電圧降下素子となり)、装置自身で高電圧電源を内蔵しなくとも任意の電圧に対し等価的に抵抗を発生することが出来る。ゼロを中心とした低レベルの出力制御は直接OPアンプ出力で制御されるので、ゼロ中心の正負電圧に対しても連続的に制御可能である。
【0038】
図3では、前述の等価抵抗発生機能と任意の標準可変電圧発生機能を切り換えて実現できる方式のブロック図が示してある。出力端子71、72及び、電流・電圧変換回路20と乗算形D−A変換器30との間に切換スイッチ80(連動した個別スイッチ81、82、83より成る)を設ける。スイッチ80をa側に切り換えれば、図1に示した等価抵抗発生装置の機能となる。そして、スイッチ80をb側に切り換えると電圧発生機能となる。
【0039】
電流・電圧変換回路20と乗算形D−A変換器30との間に設けられた個別スイッチ81のb側に接続されたVrefは基準電源であり、出力端子71に設けられた個別スイッチ83のb側に接続されたVcは高電圧発生時に必要な電圧源である。Vcは所望の出力電圧とほぼ同等またはそれ以上とする。そして、電圧発生機能選択時の動作は以下の通りになる。
【0040】
基準電圧は乗算形D−A変換器30で所望の可変電圧を発生し出力制御部の基準入力となる。帰還の作用により、出力電圧VoはVo=Vref*k*Nに制御されるが、出力電圧Voが±Vs以内ではQ1、またはQ2の回路はONとなりOPアンプの出力でVoが制御される。VoをOPアンプが発生できる電圧を超えて制御したい場合は、Vcを加える。VcはVo±Vs以上であればよい。ダイオードの順方向の電圧降下も含めたQ1またはQ2のコレクタC−エミッタE間の電圧降下をVceとした時、Vo=Va+Vceとなるように制御される。
【0041】
基準電圧Vrefを交流正弦波基準電圧とし、VcをVrefと位相の一致した交流電源とすれば、直流で説明したと同様の動作により、交流電圧の可変電圧発生機能が実現できる。
【0042】
特に図示しないが、電圧発生回路の分圧器42によるVo端子からの帰還ループの代わりに、端子72と回路コモン間にシャント抵抗器を挿入し電流に比例した電圧を帰還して出力を制御するようにすれば、k設定に応じた定電流出力を得る事が出来る。すなわち、出力電流をIo、シャント抵抗器をRshとした時、つぎの(7)式でIoを得ることができる(電流発生機能)。
【0043】
I0=(Vref*k)/Rsh (7)
【0044】
【発明の効果】
本発明によれば、高精度等価抵抗発生の機能、用途を、従来の抵抗計を校正するための用途だけでなく、より広範な電圧・電流や交流信号にも対応できるようになり、より汎用的な用途に供することが出来る。また、本等価抵抗発生装置の構成要素を共通に利用して、直流・交流の標準電圧・電流の発生も実現でき、小型、安価で上記諸種の電気量を発生させる装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態である電気量発生装置の等価抵抗発生機能の回路を示すブロック図である。
【図2】印加電圧Vに応じた各部の電圧の状態を示す説明図である。
(a)は図1に示すNPN形トランジスタとPNP形トランジスタとの部分図である。
(b)は印加電圧Vに応じた各部の電圧の変化の状態が示すグラフ図である。
【図3】本発明の実施の形態である電気量発生装置の等価抵抗発生機能と、任意の標準可変電圧発生機能とを切り換えて実現するための回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
20 電流・電圧変換回路
30 乗算形D−A変換器
41 出力制御回路用OPアンプ(誤差増幅器)
42 分圧器
71、72 出力端子
80 切換スイッチ
81、82、83 個別スイッチ

Claims (7)

  1. 出力端子間に電圧または電流を印加した時、前記出力端子に流入する電流に応じて出力端子間に所望の抵抗値に相当する電圧降下を発生させ、電子的に等価的な抵抗を発生させる電気量発生装置において、
    前記出力端子の一方に流入する電流を電圧に変換する回路と、
    所望の抵抗値に対応してディジタル値の設定によりゲインを可変とする乗算形D−A変換器と、
    該乗算形D−A変換器の出力電圧を入力とし、前記出力端子のもう一方の端子の電圧を直接または分圧器を介して誤差増幅器に帰還して、前記出力端子の電圧を制御する出力制御回路と、
    当該誤差増幅器を構成するOPアンプの前記出力端子にエミッタ電極が接続されてベース電極は抵抗を介して順方向の一定電圧源に接続され、コレクタはダイオードを介して前記出力端子に接続されたトランジスタとを備え、
    OPアンプで供給できる範囲を超える出力電圧を制御するのにあたり、OPアンプ出力でトランジスタのエミッタ電位を制御して当該トランジスタのコレクタ及びエミッタ間の電圧降下を制御する等価抵抗発生機構を有することを特徴とする電気量発生装置。
  2. 前記トランジスタによる制御素子として、NPN形トランジスタとPNP形トランジスタを並列接続し、各々のトランジスタにはダイオードが接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電気量発生装置。
  3. 前記乗算形D−A変換器の入力を一定の基準電圧とし、前記出力制御回路のトランジスタのコレクタ電極と前記出力端子間に直流電源を挿入し、前記出力端子間の電圧を所望の値に制御するようにした標準電圧発生機構を備え、
    前記等価抵抗発生機構と前記標準電圧発生機構とを切換回路により機能切換を可能にすることを特徴とする請求項1に記載の電気量発生装置。
  4. 前記出力端子に流れる電流をシャント抵抗で電圧に変換し、前記乗算形D−A変換器の出力と等しくなるように出力電流を制御する標準電流発生機構を備えることを特徴とする請求項3に記載の電気量発生装置。
  5. 前記基準電圧を交流で振幅一定の正弦波基準電圧とし、前記トランジスタのコレクタと前記出力端子との間に印加する電源を、前記正弦波基準電圧と同一周波数、同一位相の電源として前記出力端子から交流の任意の値の可変電圧電流を発生可能にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の電気量発生装置。
  6. 前記出力電圧の発生に必要な挿入電源の値を、前記標準電圧発生機構においては略所望の電圧値にし、また前記標準電流発生機構においては負荷電圧に応じて、変化させるようにした第2の制御回路を併用することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の電気量発生装置。
  7. 前記出力制御用の電圧降下素子に電界効果トランジスタを用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の電気量発生装置。
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