JP4112703B2 - 潤滑油の硫酸灰分の推算方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑油の硫酸灰分の推算方法に関し、更に詳細には、従来の技術と比較して推算精度が高く、金属種の制約が少なく、適用範囲が広い、潤滑油の硫酸灰分の推算方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガソリンエンジン油、ディーゼルエンジン油、舶用エンジン油、ギヤー油等の潤滑油には、金属を有効成分とする添加剤が、種々の目的を達成するために、添加されている。これらの金属は、エンジン内に堆積して燃焼性を低下させる恐れがある。
また、使用済潤滑油の金属量を測定して、エンジンの部品摩耗を推測できることもある。そこで、潤滑油中の金属は、潤滑油の品質管理項目の一つに挙げられている。
潤滑油に含まれる金属は、使用前潤滑油であれば、通常、添加剤に由来し、使用後潤滑油であれば、添加剤、及びそれに加えて潤滑油使用中にエンジン部品等の金属部品から潤滑油に混入した摩耗金属であると考えられる。
潤滑油中の金属分を知る目安としては、通常、硫酸灰分が計測されている。それは、潤滑油試料を燃やして生じた炭素質物質に硫酸を加え、加熱して恒量にした硫酸灰として定量する方法である。
【0003】
従来、潤滑油中の硫酸灰分は、JIS K 2272で規定されているJIS法(重量法)により定量されている。
JIS法は、潤滑油試料を燃焼させ、得た残渣に硫酸を加えて電気炉で775℃で加熱し、次いでデシケータに入れて室温まで放冷し、放冷した残渣を秤量する。この操作を残渣が恒量になるまで繰り返して、金属を金属硫酸塩、金属酸化物等に転化する。恒量になった段階の残渣が、硫酸灰であって、その質量%が潤滑油試料中の硫酸灰分である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、JIS法による潤滑油中の硫酸灰分の定量は、JIS法に規定された正確な硫酸灰分を求めることができるものの、プロセスが煩雑で結果を得るのに長時間、例えば一つの潤滑油試料当たり2日程度を要する。従って、多数個の潤滑油試料の硫酸灰分を定量するには、多くの人手と試験機材を必要とするという問題があった。
また、JIS法では、硫酸を加えて加熱する際に、酸性ガスが放出されるので、硫酸灰分定量試験室が酸性ガス雰囲気になって環境が悪い。
更には、硫酸灰分定量試験室の酸性ガス雰囲気のために試験機材の腐食、劣化が著しく、寿命が短いという問題もあった。
【0005】
従って、JIS法に代わる、潤滑油の硫酸灰分の定量方法の開発が望まれていた。
従来、JIS法に代わる定量方法として、二三の方法が提案されている。例えば、その一つの方法は、P、Mo、Bを除外し、Zn、Ca、Mg等のアルカリ金属のみを硫酸塩として取り出し、それを潤滑油の硫酸灰分として求める方法である。
しかし、この方法は、金属化合物が制約されているために、潤滑油の硫酸灰分を正しく推算することはできないので、潤滑油の油種に制約があり、しかも精度が悪いという問題があった。
【0006】
別の方法は、ICP発光分光分析−回帰法と言われる方法であって、多数の潤滑油試料についてそれぞれJIS法により硫酸灰分の定量値、及びICP発光分析法による金属部分を求め、多重回帰分析してJIS法による潤滑油の硫酸灰分の定量値とICP発光分析法による金属分との間に一つの回帰式を定める。回帰式を設定した後は、ICP発光分析法によって得た金属分から、この回帰式に従って硫酸灰分の量を推定するものである。
ICP発光分析法による金属分析では、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析装置を使っている。
しかし、この方法の適用範囲は、当然のこととして、回帰式を設定した際に使用した添加剤添加潤滑油試料の油種と金属の混合割合に制限されることになる。
【0007】
以上のように、従来、JIS法に代わる硫酸灰分の定量方法として提案されている方法は、JIS法と比較した際の精度が悪く、潤滑油の生産目的のために、実際の潤滑油製造工場の試験室で、実用的に使用することには問題があった。
そこで、本発明の目的は、定量精度が高く、定量法の適用範囲に制約のない硫酸灰分の定量方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、JIS法に代替できる硫酸灰分の精度の高い推算方法を開発するに当たり、潤滑油中の金属成分の種類、性状等について、後述する試験を行って研究し、次のことを見い出した。
1)使用済潤滑油に含有される金属は、大別して、次の二つのグループに分類できる。
a)第1のグループ
Zn、P、Ca、Mo、B、Mg、Ba、Na、K
第1のグループの金属は、JIS法による硫酸灰分の定量では、複合金属酸化物又は金属硫酸塩を形成すると考えられる。
b)第2のグループ
Fe、Cu、Pb、Cr、Mn、Ni、Al、Si、Sn
第2のグループの金属は、潤滑油の使用中に金属部品が摩耗して混入した摩耗金属であって、JIS法による硫酸灰分の定量では、各金属単独の酸化物を形成していると考えられる。
【0009】
2)第1のグループのうち、B、Moは、加熱により、揮散する性質があるので、JIS法による定量では、蒸発損失分は硫酸灰分として定量されない。
3)JIS法により硫酸灰分を生成させる際、潤滑油中の各金属元素が単純に各々単独の金属酸化物又は金属硫酸塩を形成しているのであれば、ICP発光分析法により潤滑油中の金属濃度を測定することにより、潤滑油中の硫酸灰分を正確に推算することができる。
しかし、上述のように、第1のグループの金属は、複合金属酸化物、又は硫酸塩を形成するので、複合金属酸化物及び硫酸塩の種類、組成によって推算値が変化する。
従って、ICP発光分析法によって得た金属種の測定値から単純に全て金属酸化物又は金属硫酸塩であるとして推算しても、JIS法で得た硫酸灰分の定量値とは大きく異なり、JIS法に相当する硫酸灰分量を求めることは出来ない。また、第1のグループのB、Moの一部は、揮散するので、それによる蒸発損失も誤差として生じる。
4)そこで、既知の分析法、例えばICP発光分析法により、潤滑油試料の金属種と各金属種の質量%を求め、金属種の化学的性質に基づいて、金属種の転化形態が、硫酸灰分を構成する複合金属酸化物、硫酸塩、及び単独金属酸化物のいずれであるかを特定し、かつ化学当量関係に基づいて、特定した複合金属酸化物、硫酸塩、及び単独金属酸化物の質量%を求め、その和を硫酸灰分とする。
各金属種及び各金属量の質量%を求める方法としてICP発光分析法の他、原子吸光分析法・蛍光X線法等の発光分析法を挙げることができる。また、使用前潤滑油の場合は、予め添加剤に含有される金属種を確認し、各金属量の質量%を算出する方法も挙げることができる。
【0010】
5)金属種の転化形態を特定する際、便宜的に、Bを含む潤滑油とBを含まない潤滑油とに試料潤滑油を分類する。
a)Bを含まない場合
潤滑油は、Zn、P、Mo、並びにCa、Mg、Ba、Na及びK等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属(以下、「Ca、Mg、Ba、Na及びK等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属」を「Ca等」と言う)のうちの1種以上の金属を含む。
i)Znは、Pと複合金属酸化物を形成する。Znを含む潤滑油は、ZnDTP(ジチオ燐酸亜鉛)を添加剤として使っている潤滑油が多いと考えられ、Znが存在すれば、通常、必ずPも存在する。
ii)Mo及び複合金属酸化物を形成したP以外のPは、Ca等と複合金属酸化物を形成する。反応に供されなかったCa等は硫酸塩を形成する。
iii )揮散した残りのMoが、潤滑油中に、Ca等と化学当量以上存在するときには、MoはCa等と複合金属酸化物を形成する。潤滑油中にMoが、Ca等と化学当量以下のときには、Moは全量複合金属酸化物となる。
Ca等は、Mo以外にPとも複合金属酸化物を形成するので、Moが揮散することなく複合金属酸化物を形成するには、Ca等/Mo比は1以上であることが必要である。
【0011】
b)Bを含む場合
i)Bを含まない場合と同様に、Znは、Pと複合金属酸化物を形成する。
ii)Mo、B、及び複合金属酸化物を形成したP以外のPは、Ca等と複合金属酸化物を形成する一方で、PはBとBPO4 を形成する。BとPとの反応と、BとCa等との反応との優先順位は不明であるから、BとMoとの存在比によって反応の優先順位が変わる。
【0012】
ICP発光分析法による金属種の定量では、ICP発光分析装置の形式には種々あるものの、例えば図22に示すようなICP発光分析装置を使用する。図22に示すICP発光分析装置は、噴霧室と、トーチ(石英管)と、ポリクロメータと、モノクロメータとを備えている。
ICPチャンバの誘導コイルに300MHz以下の周波数で高周波電流を流し、高周波磁界の時間的変化により電磁誘導によって電界を発生させる。ICPプラズマチャンバ内では、この電界により高温アルゴンプラズマが発生する。溶媒で希釈した潤滑油試料を噴霧室で霧化して、この高温アルゴンプラズマ中に導入すると、熱エネルギーにより励起され、光を発生する。この光をポリクロメータ及びモノクロメータの分光器で元素特有のスペクトルに分け、金属種を検出する。そのスペクトルの強さにより、金属の濃度を測定することができる。
【0013】
本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算方法
そこで、本発明者は、以上に説明した知見に基づいて、次のステップを有する、硫酸灰分の推算方法を考え、後述する検証試験を行って、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明に係る、潤滑油の硫酸灰分の推算方法は、金属種の化学的性質に基づいて、易揮散性金属種からなる第1の族、非アルカリ金属及び非アルカリ土類金属であって、複合金属酸化物を形成する金属種からなる第2の族、アルカリ金属又はアルカリ土類金属に属し、かつ複合金属酸化物及び金属硫酸塩の少なくとも一方を形成する金属種からなる第3の族、及び、金属酸化物を形成する金属種からなる第4の族の少なくともいずれかに潤滑油中の金属種を分類した分類表を予め作成し、
潤滑油試料の金属種及び各金属種の質量%を分析し、分析した金属種及び金属種の質量%に基づき、分類表の分類及び金属化合物を構成する元素間の化学当量関係に従って、JIS法による硫酸灰分を推算する方法であって、
潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出する第1のステップと、
第1のステップで得た金属種を分類表に従って第1の族、第2の族、第3の族及び第4の族のいずれかに分類する第2のステップと、
第1の族に分類したいずれかの金属種の質量%が所定値以上であって、かつ、第3の族に分類したいずれかの金属種の質量%が所定値以上の場合には、
第1の族の金属種の質量%に基づいて第1の族の各金属種の揮散残存質量%を求める第3のステップと、
揮散残存質量を有する第1の族の金属種の複合金属酸化物、及び、第2の族及び第3の族の金属種の質量%に基づいて第2の族及び第3の族の金属種の各複合金属酸化物の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第4のステップと、第4のステップで複合金属酸化物の形成に化学当量的に過剰な第3の族の金属種の質量%に基づいて第3の族の金属種の金属硫酸塩の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第5のステップと、
第4の族の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第6のステップと、
第4から第6のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとする第7のステップと
を有することを特徴としている。
【0014】
本発明方法は、使用前の潤滑油、使用後の潤滑油の別なく適用できる。
【0015】
分類表は、例えば、図23にしめすように、潤滑油に含まれると推測される金属種を第1の族から第4の族に分類した表であって、複数の族に重複していても良い。
実用的には、易揮散性金属がMo及びBであり、複合金属酸化物を構成する金属がZn、P、Ca、Mg、Ba、Na及びKであり、単独金属酸化物を構成する金属がFe、Cu、Pb、Cr、Mn、Ni、Al、Si及びSnである。
【0016】
本発明方法は、第1の族及び第3の族の金属種の質量%に大小によって、次のように区別される。
第1の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値(例えば、0.001%、以下同様)以下であって、かつ、第3の族に属するいずれかの金属種の質量%が所定値(第1の族の金属種の含有量と化学的に当量、以下同様)以上の場合には、
第3のステップを省略し、第4のステップでは、第2の族及び第3の族の金属種の質量%に基づいて第2の族及び第3の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求める。
【0017】
第1の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値(例えば、0.001%、以下同様)以下であって、かつ、第3の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値(第1の族の金属種の含有量と化学的に当量、以下同様)以下の場合には、
第3のステップを省略し、第4のステップでは、第2の族の金属種の質量%に基づいて第2の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求め、
のステップでは、第4の族の金属種の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を求め、
のステップでは、第4及び第のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとする。
【0018】
第1の族に属するいずれかの金属種の質量%が所定値以上であって、かつ、第3の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値以下の場合には、
第4のステップでは、揮散残存質量を有する第1の族の金属種の複合金属酸化物、及び、第2の族の金属種の質量%に基づいて第2の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求め、
のステップでは、第4の族の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を求め、
のステップでは、第4及び第のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとする。
【0019】
更に説明すると、本発明方法は、次のようなステップで構成されている。
1)ICP発光分析装置等を使って潤滑油中の金属種を検出し、その金属濃度(質量%)、即ち潤滑油の単位質量当たりの金属の質量の割合を測定する。
2)B、Moの揮散量を推算する。
3)前述した第1のグループの金属が形成する複合金属酸化物を特定する。
4)金属種の質量%から第1のグループの金属の複合金属酸化物及び硫酸塩の質量%を化学当量関係に基づいて推算する。
5)第2のグループの金属種及び質量%から金属酸化物質量%を推算する。
6)以上の結果から、第1のグループの金属の複合金属酸化物量、硫酸塩量、第2のグループの金属酸化物量の総量を算出し、最終的な硫酸灰分を求める。
【0020】
本発明方法の検証試験
本発明者は、上述した潤滑油の硫酸灰分の推算法を検証するために、以下の仕様で実験を行った。
1.潤滑油試料中の金属種の検出及び質量の計測
ICP発光分析法により潤滑油試料中の金属種を検出し、金属種の質量%を計測する。
使用したICP発光分析装置:サーモジャーレルアッシュ製POEMSII型
2.潤滑油試料
1)潤滑油試料
添加剤無添加の潤滑油に次の添加剤を添加し、更に希釈油で希釈して潤滑油試料を調製した。
有機金属化合物(Zn:9.0質量%、P:8.2質量%)
有機金属化合物(Mo:4.5質量%)
有機金属化合物(B:0.49質量%)
有機金属化合物(Ca:6.0質量%)
有機金属化合物(Mg:9.3質量%)
有機金属化合物(P:6.1質量%)
2)潤滑油試料の金属含量及び硫酸灰分
各試料番号の潤滑油試料の各金属含量及び硫酸灰分は、表1及び表2に示す。
【表1】
Figure 0004112703
【表2】
Figure 0004112703
表1及び表2の硫酸灰分(質量%)はJIS法により求めたものであり、各金属種の含量(質量%)は、潤滑油、添加剤及び希釈油の重量から計算して求めたものである。
【0021】
3.実験方法
1)硫酸灰分中の金属化合物形態の特定
潤滑油試料の硫酸灰をJIS法に従って調製し、硫酸灰を構成する金属化合物をX線回折法により特定した。無定型と考えられる金属化合物は、文献等により推定して特定した。摩耗金属として分類できる第2のグループの金属の金属化合物は、各金属の硫酸塩の分解温度から推定し、酸化物として硫酸灰中に含まれるものとした。
2)金属種の質量%から複合金属酸化物、硫酸塩、及び単独金属酸化物の質量%を求める際には、金属種別推算係数(K)を使用した。
推算係数(K)とは、金属種及び金属化合物形態(1〜n)毎に規定され、
K(1〜n)=〔金属化合物の分子量〕÷〔金属種の原子量〕
である。
【0022】
3)推算法の手順の概要
a)ICP発光分析法等により潤滑油試料の金属種及び金属種の金属濃度(質量%)を求める。
b)金属種及び金属濃度から本実験の適用可否を判断する。
c)Mo、Bの揮散量を推定して、硫酸灰として残存するMo、Bの質量%を推定する。
d)複合金属化合物の形成では、P、B及びMoが、Zn、Ca、Mg、Ba、Na及びKと化合物を形成しながら順次進行する。P、B及びMoと反応した残りの残存するCa、Mg、Ba、Na及びKは、硫酸塩を形成する。
また、Zn、Ca、Mg、Ba、Na及びKとの反応に化学当量的に過剰なP、B及びMoの化合物種を特定し、金属酸化物として推算する。
e)各金属の質量%に金属別推算係数(K)を乗じて、それぞれの積を求め、その積の合計を推算した硫酸灰分とする。
【0023】
4.実験結果
4.1 P、Zn・P(ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)に由来するZnとP)、Ca、Mg、Mo、Bの添加剤を単独で含む潤滑油の硫酸灰分推算
1)表1の試料番号1〜14の潤滑油試料を用いて、JIS法による硫酸灰分を求め、またICP発光分析法により硫酸灰中の金属及び硫黄の分析を行い、その結果を表3に示した。以下、硫酸灰のICP発光分析法による金属及び硫黄の分析をW−ICP法と言う。
【表3】
Figure 0004112703
2)Zn・P添加潤滑油試料
a)Zn・P添加潤滑油試料1、2の硫酸灰のX線回折定性分析を行い、その結果を図1に示す。
Zn・P系添加剤を添加した潤滑油試料1及び2では、硫酸灰からSは検出されず、図1に示すX線回折定性分析によれば、Zn・Pの主成分はZn2 2 7 と考えられる。ZnのZn2 2 7 に対する推算係数(K)は2.33である。
b)P添加剤の添加潤滑油試料9〜14では、油中P分に相当する硫酸灰分が定量されていることが判る。これから、Pは、酸化物を形成せず、るつぼと反応しているものと考えられる。従来、Pは蒸発するために定量不能と言われていたが、本実験ではそのような蒸発現象は確認できなかったので、Pが推算後に過剰に残る場合には、Pの分析値を硫酸灰分の推算に含めることにした。
【0024】
3)Mo添加潤滑油試料
Mo添加潤滑油試料3及び4では、Mo添加量の約0.1%が硫酸灰分として検出されたものの、大部分のMoは揮散した。そこで、本発明方法では、Moのみを含む試料を取り扱わないことにした。また、Sが検出されないので、MoはSと化合物を形成しないと推測できる。
4)B添加潤滑油試料
B添加潤滑油試料5及び6では、Sは微量検出されたものの、硫酸灰分と比較して少なかった。また、潤滑油試料6では、硫酸灰分の方が少なかった。これらの結果から、Bは揮散し、揮散の程度はB分の量により異なるものと推測した。また、Bのみを含む潤滑油の硫酸灰はB2 3 であると推定した。
【0025】
5)Ca添加潤滑油試料
Ca添加潤滑油試料7では、S分はCa分のCaSO4 に相当するCa/S比=1.3分が検出された。また、潤滑油試料7の硫酸灰分は0.81質量%であることから、Caのみを含む潤滑油の硫酸灰の成分はCaSO4 のみであるとした。
よって、Caのみを含む潤滑油の推定硫酸灰分は、Ca分に推算係数(K)=3.387を乗じたものとした。Ca分とは、Caの検出質量%を意味する。S分等も同様である。以下の明細書でも、同じである。
6)Mg添加潤滑油試料
Mg添加潤滑油試料8では、S分はMg分のMgSO4 に相当するMg/S比=0.81分が検出された。また、潤滑油試料8の硫酸灰分は2.471質量%であることから、Mgのみを含む潤滑油の硫酸灰の成分はMgSO4 のみであるとした。
よって、Mgのみを含む潤滑油の推定硫酸灰分は、Mg分に推算係数(K)=4.948を乗じたものとした。
【0026】
4.2 Zn・P−Ca混合系添加剤を含む潤滑油の硫酸灰分推算
1)Zn分及びP分が一定で、Ca分を変えたZn・P−Ca混合系潤滑油試料15〜20の硫酸灰分をJIS法により定量し、更にW−ICP法により硫酸灰中のZn、P及びS分を求め、Ca分とS分及びP分の関係を調べた。Ca分とS分及びP分の関係は図2に示す通りであり、硫酸灰のX線回折定性分析の結果は、図3に示す通りである。
図2に示すように、Zn、P分は一律に添加分が検出された。S分は、Ca分が少ないときには、検出されなかったが、Caが増加するにつれてS分も増加した。
また、X線回折定性分析では、CaSO4 及びCa3 (PO4 2 が検出された。S分を検出し始めるときのCa分は、Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なP分がCa3 (PO4 2 を形成するのに必要なCa分と同じ量であった。
【0027】
2)以上の結果から、Zn・P、Caを含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算手順は、
a)先ず、Zn2 2 7 が形成されるものとする。
b)Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なPは、Caと反応してCa3 (PO4 2 を形成する。この時、Pと比較して、Caが少ない時には、Pも単独に存在する。
c)Ca3 (PO4 2 の形成に必要なPが無くなると、CaはSと反応し、CaSO4 を形成する。
3)従って、Zn分、P分及びCa分の質量の違いにより、Zn2 2 7 、Ca3 (PO4 2 、P、及びCaSO4 が形成され、硫酸灰の成分は、それらの混合物からなると推測できる。
【0028】
4.3 Zn・P−Mg混合系添加剤を含む潤滑油の硫酸灰分推算
1)Zn分及びP分が一定で、Mg分を変えたZn・P−Mg混合系潤滑油試料21〜26の硫酸灰分をJIS法により求め、W−ICP法により硫酸灰中のZn、P及びS分を求め、Mg分、S分及びP分の関係を調べた。Mg分、S分及びP分の関係は図4に示す通りであり、硫酸灰のX線回折定性分析の結果は図5に示す通りである。
図4に示すように、Zn分、P分は、一律に添加分が検出された。S分は、Mg分が少ないときには、検出されなかったが、Mgが増加するにつれてS分も増加した。
また、X線回折定性分析では、MgSO4 及びMg3 (PO4 2 が検出された。S分を検出し始めるときのMg分は、Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なP分がMg3 (PO4 2 を形成するのに必要なMg分と同じ量であった。これらの結果は、Zn・P、Ca系潤滑油試料と同様であった。
【0029】
2)以上の結果から、Zn・P、Mgを含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算手順は、
a)先ず、Zn2 2 7 が形成するものとする。
b)Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なPは、Mgと反応してMg3 (PO4 2 を形成する。この時、Pと比較して、Mgが少ない時には、Pも単独に存在する。
c)Mg3 (PO4 2 の形成に必要なPが無くなると、MgはSと反応し、MgSO4 を形成する。
3)従って、Zn分、P分及びMg分の質量の違いにより、Zn2 2 7 、Mg3 (PO4 2 、P、及びMgSO4 が形成し、硫酸灰の成分は、それらの混合物からなると推測できる。
【0030】
4.4 Zn・P−Ca−Mg混合系添加剤を含む潤滑油の硫酸灰分推算
1)Zn分及びP分が一定で、Ca分及びMg分を変えたZn・P−Ca−Mg混合系潤滑油試料27〜31の硫酸灰分をJIS法により求め、W−ICP法により硫酸灰中のS分を求め、S分を分析した結果を表4に示す。
【表4】
Figure 0004112703
表4に示すように、S分は、Ca分とMg分の合計が少ないときには、検出されなかったが、Ca分とMg分の合計が増加するにつれて、S分も増加した。また、S分を検出し始めるときのCa分とMg分の合計は、Zn2 2 7 に寄与しなかったP分がCa3 (PO4 2 及びMg3 (PO4 2 を形成するのに必要な量と同じ量であった。これらの結果は、Zn・P、Ca系潤滑油試料及びZn・P、Mg系潤滑油試料と同様であった。
【0031】
2)以上の結果から、Zn・P、Ca及びMgを含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算手順は、
a)先ず、Zn2 2 7 が形成するものとする。
b)Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なPは、Caと反応してCa3 (PO4 2 を形成し、Mgと反応してMg3 (PO4 2 を形成する。この時、Pと比較して、Ca分とMg分の合計が少ない時には、Pも単独に存在する。
c)Ca3 (PO4 2 及びMg3 (PO4 2 の形成に必要なPが無くなると、Ca及びMgはSと反応し、CaSO4 及びMgSO4 を形成する。
3)従って、Zn、P、Ca及びMg分の質量の違いにより、Zn2 2 7 、Ca3 (PO4 2 、Mg3 (PO4 2 、P、CaSO4 及びMgSO4 が形成し、硫酸灰の成分は、それらの混合物からなると推測できる。
【0032】
尚、本発明方法を確立する際、Ca及びMgのPと反応する順位は、Zn2 2 7 の形成に化学当量的に過剰なPが、先ず、Caと反応してCa3 (PO4 2 を形成する。Ca3 (PO4 2 の形成に化学当量的に過剰なPが、Mgと反応し、Mg3 (PO4 2 を形成する。Mg3 (PO4 2 の形成に化学当量的に過剰なMgがMgSO4 を形成するとした。
尚、SO4 のモル数が硫酸灰分全体として加わるので、この順位の違いは、推定硫酸灰分の推算に影響しないことが、計算上からも確認されている。
【0033】
4.5 Ca−Mo混合系添加剤を含む潤滑油の硫酸灰分推算
1)Mo分が0.097質量%と一定で、Ca分が0.0093から0.23質量%の範囲で変わるCa−Mo混合系潤滑油試料32〜37の硫酸灰分をJIS法により定量し、W−ICP法により硫酸灰中のMo及びS分を求め、Ca分、Mo分及びS分の関係を調べた。Ca分、Mo分及びS分の関係は図6に示す通りであり、硫酸灰のX線回折定性分析の結果は、図7に示す通りである。
図6に示すように、Mo分は、Ca分が少ない時には、揮散したが、Ca分が増加するにつれて、Moの揮散は少なくなる傾向を示した。S分は、Moの揮散が少なくなるにつれて増加し始め、Ca分が増加するにつれて、S分も増加した。
また、X線回折定性分析では、CaSO4 及びCaMoO4 が検出された。
更に、Ca分の増加に伴い、Mo分も増加することから、〔Ca分/Mo分〕の比率を求め、各潤滑油試料32〜37の〔(W−ICP法で求めたMo分)/(潤滑油試料中のMo分)〕×100をMo残存率として求めた。そして、それらの関係を図8に示した。図8から判る通り、Moの残存率は、〔Ca分/Mo分〕の比率に依存し、図8に示す関係から求めることができる。
【0034】
2)以上の結果から、Ca及びMoを含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算手順は、
a)〔Ca分/Mo分〕の比率と図8のグラフからMo残存率を求め、〔Mo×Mo残存率〕/100から、推算に用いるMo分を求める。
b)Caは、Moと反応してCaMoO4 を形成する。
c)CaMoO4 の形成に化学当量的に過剰なCaは、Sと反応して、CaSO4 を形成する。
3)従って、Ca及びMo分のモル比により、CaMoO4 、CaSO4 が形成し、硫酸灰分の成分は、それらの混合物からなると推測できる。
【0035】
なお、他のMg、Ba、Na及びKのアルカリ金属も、それぞれ原子量比に応じて、Moと同様の傾向を有するものと推測できる。
【0036】
4.6 Ca−B混合系添加剤を含む潤滑油の硫酸灰分推算
表2の試料番号38〜43のB−Ca混合系潤滑油試料、すなわち、B分が0.0536質量%と一定で、Ca分を0.0093〜0.23質量%で変えた試料についてJIS法による硫酸灰分を測定した後、この硫酸灰中のB、Ca及びS分をW−ICP法によって求めた結果を表5に、硫酸灰のX線回折分析の分析結果を図9に、W−ICP法での(Ca分/S分)値と油中の(Ca分/B分)値の関係を図10に示す。
【表5】
Figure 0004112703
【0037】
表5に示すようにW−ICP法のB分は添加量と比較して少なくなっているが、W−ICP分析時に酸に不溶な白色物質が確認されている。また、図10に示すように、Ca分/B分比が小さい時のCa分/S分比がCaSO4 のCa分/S分比1.3よりも大きくなり、Caが全てCaSO4 になっていないことが考えられ、CaとBが化合物を生成していると推察された。しかし、図9のX線回折からはCaSO4 以外は検出されなかった。
文献からは、CaとBの化合物としてCaB4 7 が考えられるが、なお、このCaB4 7 は、X線回折では無定型とされており、検出することができない。
【0038】
また4.1で述べたように、Bは、Bのみで一部残存することが分かっている。そこで、Ca−B系試料での硫酸灰は、B系のみで生成するB2 3 とCa−B系から生成するCaB4 7 及びCaSO4 とからなると仮定し、それぞれの系でのB分を求める方法を以下に検討することとした。
先ず、B分が0.03〜0.2質量%の試料について、JIS法による硫酸灰分を測定した後、硫酸灰の成分が全てB2 3 とした時のB分を求め、油中B分と硫酸灰として残存するB分の関係を調べた結果を図11に示す。図11を用いれば、B2 3 としてのB分を推定できることが分かった。
【0039】
次に、表2の試料番号38−43のB−Ca混合系潤滑油試料、すなわち、B分が0.0536質量%と一定でCa分を0.0093〜0.23質量%で変えた試料について、次の連立方程式により、CaB4 7 及びCaSO4 とからなると仮定したCaB4 7 分に関係するCa分を推定した。
x+y=a
4.87x+3.39y=b
ここで、x:CaB4 7 に消費されるCa分(質量%)
y:CaSO4 に消費されるCa分(質量%)
a:油中Ca分(質量%)
b:CaB4 7 及びCaSO4 を組成とする硫酸灰分(質量%)
(図11を用いて、油中B分とから求めたB分から求めたB2 3 分、この値とJIS法硫酸灰分との差)
4.87:CaのCaB4 7 への推算係数
3.39:CaのCaSO4 への推算係数
【0040】
推定したCaB4 7 分に関係するCa分にB4 /Ca(質量比)1.081を乗じて、CaB4 7 分に関係するB分を求めた。さらに、このB分の油中B分に対する百分率をBの残存率として求め、油中Ca分/B分比との関係を求めた結果を図12に示す。油中Ca分/B分比とBの残存率の関係に相関がみられ、油中Ca分/B分比からBの残存率を推定できることが分かった。
【0041】
以上の結果から、Ca−B系試料の硫酸灰分を以下のように推察した。
(1)図11を用いて、油中B分からB2 3 相当のB分を求め、B2 3 に換算した質量%を求める。
(2)図12を用いて、油中Ca分/B分比からCaB4 7 相当のBの残存率を求め、油中B分と残存率からB分を求める。B分からCaB4 7 相当の質量%を求める。
(3)CaB4 7 の生成に化学当量的に過剰なCaは、SとCaSO4 を生成する。したがって、Ca−B系試料の硫酸灰の成分は、CaB4 7 、B2 3 及びCaSO4 の混合物であり、Ca及びB分の違いにより、その成分は異なるものと推察した。
なお、他のMg、Ba、Na、Kのアルカリ金属及びアルカリ土類金属についても、それぞれの原子量比において、Bと同様の傾向があるものと推察した。
【0042】
4.7 Zn・P、Mo、Ca混合系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算
1)Zn分、P分及びMo分が一定で、Caが0.0093〜0.231質量%の範囲で変わる潤滑油試料44〜49の硫酸灰分のX線回折定性分析の結果を図13に示す。図13に示すように、CaSO4 、及びCaMoO4 が検出された。
2)そこで、これらの試料では、Zn2 2 7 、Ca3 (PO4 2 、CaMoO4 、及びCaSO4 が存在すると推測した。
【0043】
4.8 Zn・P−B−Ca混合系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰分の推算
1)Zn分、P分及びB分が一定で、Caが0.0093質量%及び0.231質量%の潤滑油試料50、55の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を図14及び図15に示す。図14ではCaSO4 、BPO4 が、図15ではBPO4 が検出された。
2)そこで、これらの試料では、Zn2 2 7 、BPO4 、Ca3 (PO4 2 、CaB4 7 、及びCaSO4 が存在すると推測した。
【0044】
実験の総括
ICP発光分析法により求めた金属種及び金属種の質量%からJIS法による硫酸灰分を推算する方法について検討し、以下のことが分かった。
(1)Zn、P、Mo、B、Ca、及びMgの添加剤金属は、硫酸灰分中で、以下の化合物を形成する。
Zn :Zn2 2 7
P :Ca3 (PO4 2 、Mg3 (PO4 2 、P
Mo :CaMoO4 、MgMoO4
B :CaB4 7 、MgB4 7 、BPO4
硫酸塩:CaSO4 、MgSO4
(2)B及びMoは、単独では揮散するが、Ca及びMgの濃度に応じて硫酸灰中に残存する。
(3)Fe、Cu、Pb、Cr、Mn、Ni、Al、Si、Sn、Vの磨耗金属は酸化物として算出できる。
(4)上述した本実験により推算した潤滑油試料1〜64の硫酸灰分は、図16に示すように、JIS法による硫酸灰分と高い相関関係にあり、JIS法による硫酸灰分の±10%以内の数値であった。
【0045】
以上の実験結果を踏まえて、本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算方法の好適な実施態様は、
第2のステップと第3のステップとの間に、検出した金属種が、Mo、B及びPのいずれかの単独の金属のみか、又はZn・P、Mo、B、Pのうちの少なくとも二つの金属元素の組み合わせからなる金属群でないことを確認するステップを有し、
第4のステップが、
ZnとPとの複合金属酸化物の質量%を求め、次いで複合金属酸化物の形成に化学当量的に過剰なPの残存質量%を求める第4aのステップと、
第3のステップで求めた揮散残存質量%のBと、第4aのステップで求めた残存のPとの複合金属酸化物の質量%を求める第4bのステップと、
第4bのステップを経た後に残存するBとアルカリ金属及びアルカリ土類金属との複合金属酸化物の質量%を求める第4cのステップと、
第3のステップで求めた揮散残存質量%のMoと、第4bのステップを経た後に残存するPとの複合金属酸化物の質量%を求める第4dのステップと、
第4dのステップを経た後に残存するMoとアルカリ金属及びアルカリ土類金属との複合金属酸化物の質量%を求める第4eのステップと、
第4dのステップを経た後に残存するPとアルカリ金属及びアルカリ土類金属との複合金属酸化物の質量%を求める第4fのステップと、
第4fのステップを経た後に残存するPの質量%を求める第4gのステップと
を有する。
【0046】
更には、第3のステップ、第4のステップ、第5のステップ及び第6のステップでは、各金属種の金属化合物毎に予め求められている、推算係数(K)=金属化合物の分子量/金属種原子量を使用し、金属化合物の質量%=金属種の質量%×推算係数(K)から金属化合物の質量%を求める。
【0047】
本発明に係る記録媒体は、上述の潤滑油の硫酸灰分の推算方法をプログラム化し、記憶させたことを特徴としている。この記録媒体を既知の構成のコンピュータで使用することにより、容易に本発明方法を実施することができる。
また、本発明に係る推算装置は、上述の潤滑油の硫酸灰分の推算方法をプログラム化し、記憶させた記憶装置と、潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出し、出力する分析装置と、分析装置から出力された金属種及び各金属種の質量%に基づいて、記憶装置に記憶されたプログラムに従って演算する演算装置とを備えている。これにより、本発明方法に従って容易に潤滑油の硫酸灰分を推算することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照し、実施形態例を挙げて本発明の実施の形態を具体的かつ詳細に説明する。
推算方法の実施形態例
本実施形態例は、本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算方法の実施形態の一例であって、図17から図20は本実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法の手順を示すフローチャートである。
本実施形態例の推算法は、既知の構成のコンピュータにより実行され、推算係数、推算ステップ等を含む演算式は、プログラム化されてコンピュータの記憶装置に記憶され、記憶されたプログラムに従って、演算が実行される。
本実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法は、図17に示すように、先ず、ステップS1 で、ICP発光分析法により、潤滑油試料に含まれる金属の金属種と、各金属種の質量%(又は、潤滑油試料の単位質量当たりの金属種の割合、以下、同様)を求める。
次いで、ステップS2 で、得た金属種及び金属種の質量%に基づいて、本推算法の適用範囲にあるかどうか、判断する。
Zn、Ca、Mg、Ba、Na、Kが、それぞれ、<0.001質量%であって、かつ、P、Mo、Bのいずれかが、>0.001質量%の場合か、
又は、B>0.2質量%の場合には、本推算法を適用できない。
適用できる場合には、次のステップS3 に移行し、適用できない場合には、終了する。
【0049】
ステップS3 では、後述の〔数1〕のZn灰分:P残量計算式に従って、Znの硫酸灰分及びPの残量を求め、ステップS4 に移行する。
ステップS4 では、Zn量<Pの残存量であるかどうか判定し、YESであれば終了し、NOであれば、ステップS5 に移行する。
潤滑油中のZnとPは、ジチオ燐酸亜鉛の形で、ZnとPとは質量比で大体1:1(モル比で大体1:2)の割合で含有されている。ZnとPとは、Zn2 2 4 を形成するので、約半分のP分が残留する。よって、Zn2 2 4 の形成に寄与したZnの量と残留のPの比は、約1:0.5になり、必ずZn>Pとなる。本実施形態例では、本推算方法の適用に際し、ジチオ燐酸亜鉛以外の形態でPが存在する潤滑油試料の硫酸灰分の推算を除外する趣旨から、Zn量<Pの残存量であるかどうか判定している。
【0050】
ステップS5 では、揮散しないB量を後述の〔数2〕のB量推算式に従って求める。次いで、ステップS6 に移行する。
ステップS6 では、揮散しないMo量を後述の〔数3〕のMo量推算式に従って求める。次いで、ステップS7 に移行する。
【0051】
ステップS7 では、Mo/B比が、所定範囲、即ち9>Mo1 /B>0.2内にあるかどうか判断する。YESであれば、第1の流れのMo処理系統に入り、ステップS8 に移行する。NOであれば、第2の流れのB処理系統のステップS24に入る。
潤滑油試料にBが含まれている場合、BはPと反応してBPO4 を形成する。BがPと優先的に反応するのか、アルカリ金属及びアルカリ土類金属と優先的に反応するのかは、現在のところ、よくは判らない。しかし、上述した実験結果から、9>Mo1 /B>0.2かどうかにより場合分けすることによって、JIS法による硫酸灰分の測定値と本発明の推算法により得た推算値とが良く一致することが判っている。
【0052】
第1の流れのMo処理系統のステップS8 では、後述の〔数4〕のCa計算式に従ってCa計算を行う。次いで、ステップS9 に移行する。
ステップS9 では、後述の〔数5〕のMg計算式に従ってMg計算を行う。次いで、ステップS10に移行する。
ステップS10では、後述の〔数6〕のBa計算式に従ってBa計算を行う。次いで、ステップS11に移行する。
ステップS11では、後述の〔数7〕のNa計算式に従ってNa計算を行う。次いで、ステップS12に移行する。
ステップS12では、後述の〔数8〕のK計算式に従ってK計算を行う。次いで、P処理系統のステップS13に移行する。
【0053】
P処理系統のステップS13では、後述の〔数9〕のCa計算式(その2)に従ってCa計算を行う。次いで、ステップS14に移行する。
ステップS14では、後述の〔数10〕のMg計算式(その2)に従ってMg計算を行う。次いで、ステップS15に移行する。
ステップS15では、後述の〔数11〕のBa計算式(その2)に従ってBa計算を行う。次いで、ステップS16に移行する。
ステップS16では、後述の〔数12〕のNa計算式(その2)に従ってNa計算を行う。次いで、ステップS17に移行する。
ステップS17では、後述の〔数13〕のK計算式(その2)に従ってK計算を行う。次いで、B処理系統のステップS18に移行する。
【0054】
B処理系統のステップS18では、後述の〔数14〕のP計算式に従ってP計算を行う。次いで、ステップS19に移行する。
ステップS19では、後述の〔数15〕のCa計算式(その3)に従ってCa計算を行う。次いで、ステップS20に移行する。
ステップS20では、後述の〔数16〕のMg計算式(その3)に従ってMg計算を行う。次いで、ステップS21に移行する。
ステップS21では、後述の〔数17〕のBa計算式(その3)に従ってBa計算を行う。次いで、ステップS22に移行する。
ステップS22では、後述の〔数18〕のNa計算式(その3)に従ってNa計算を行う。次いで、ステップS23に移行する。
ステップS23では、後述の〔数19〕のK計算式(その3)に従ってK計算を行う。次いで、ステップS27に移行する。
【0055】
第2の流れのステップS24では、先ず、B処理系統の計算を行う。計算に際しては、Ca計算を除いては、第1の流れのB処理系統のステップに従い同じ式を使って計算を行う。Ca計算は、後述の〔数20〕のCa計算式(その4)に従って行う。次いで、ステップS25に移行する。
ステップS25では、Mo処理系統の計算を行う。計算に際しては、第1の流れのMo処理系統のステップに従い同じ式を使って計算を行う。次いで、ステップS26に移行する。
ステップS26では、P処理系統の計算を行う。計算に際しては、Ca計算を除いては、第1の流れのP処理系統のステップに従い同じ式を使って計算を行う。Ca計算は、後述の〔数21〕のCa計算式(その5)に従って行う。次いで、積算系統のステップS27に移行する。
【0056】
積算系統のステップS27では、後述の〔数22〕の金属硫酸処理式に従って金属硫酸処理の計算を行う。次いで、ステップS27に移行する。
ステップS27では、後述の〔数23〕の摩耗金属酸化物処理式に従って摩耗金属酸化物処理の計算を行う。次いで、ステップS27に移行する。
ステップS27では、後述の〔数24〕の硫酸灰分の積算式に従って硫酸灰分の積算を行う。必要に応じて、出力し、保存する。
【0057】
実験例
本発明方法による推算値の精度を評価するために、使用前及び使用後の実際の潤滑油試料について、JIS法による硫酸灰分の定量と本発明方法による硫酸灰分の推算をそれぞれ行った。
表6及び表7の各金属種毎の質量%は、ICP発光分析法により求めた値であり、最右欄の硫酸灰分の値はJIS法による値である。
本発明方法による硫酸灰分の推算値は、図21に示すように、JIS法による硫酸灰分の定量値に対して高い整合性を有し、JIS法により求めた硫酸灰分の定量値に対して偏差10%以内に収まる値であった。
【表6】
Figure 0004112703
【表7】
Figure 0004112703
【0058】
【数1】
Figure 0004112703
【0059】
【数2】
Figure 0004112703
【0060】
【数3】
Figure 0004112703
【0061】
【数4】
Figure 0004112703
【0062】
【数5】
Figure 0004112703
【0063】
【数6】
Figure 0004112703
【0064】
【数7】
Figure 0004112703
【0065】
【数8】
Figure 0004112703
【0066】
【数9】
Figure 0004112703
【0067】
【数10】
Figure 0004112703
【0068】
【数11】
Figure 0004112703
【0069】
【数12】
Figure 0004112703
【0070】
【数13】
Figure 0004112703
【0071】
【数14】
Figure 0004112703
【0072】
【数15】
Figure 0004112703
【0073】
【数16】
Figure 0004112703
【0074】
【数17】
Figure 0004112703
【0075】
【数18】
Figure 0004112703
【0076】
【数19】
Figure 0004112703
【0077】
【数20】
Figure 0004112703
【0078】
【数21】
Figure 0004112703
【0079】
【数22】
Figure 0004112703
【0080】
【数23】
Figure 0004112703
【0081】
【数24】
Figure 0004112703
【0082】
推算装置の実施形態例
本実施形態例は、本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算装置の実施形態の一例であって、図24は推算装置の構成を示すブロック図である。
本実施形態例の推算装置10は、図24に示すように、本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算方法をプログラム化し、記憶させた記憶装置12と、潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出し、出力する分析装置14と、分析装置14から出力された金属種及び各金属種の質量%に基づいて、記憶装置12に記憶されたプログラムに従って演算する演算装置16とを備えている。
【0083】
記憶装置12は、既知の構成の記憶装置であって、市販の記録媒体を利用して、容易に形成することができる。図24中、記憶装置12は、演算装置16内にメモリとして分散して図示されている。
分析装置14は、潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出し、出力することができる限り、その種類に制約はなく、例えばIPC発光分析装置を好適に使用することができる。
演算装置16は、既知の構成の演算装置であって、記憶装置12及び分析装置12とデータを授受する通信手段を設けることにより、市販のパーソナル・コンピュータを使用して容易に構成することができる。
【0084】
演算装置16は、図24に示すように、それぞれ、上述した本発明に係る潤滑油の硫酸灰分の推算方法に従って演算する、金属種の分類手段18、易揮散性元素の質量%演算手段20、複合金属酸化物質量%演算手段22、硫酸塩質量%演算手段24、単独金属酸化物質量%演算手段26、及び硫酸灰分演算手段28から構成されている。
【0085】
【発明の効果】
本発明によれば、潤滑油試料の金属種と各金属種の質量%を求め、金属種の化学的性質に基づいて、金属種の転化形態が、硫酸灰を構成する複合金属酸化物、硫酸塩、及び単独金属酸化物のいずれであるかを特定し、かつ化学当量関係に基づいて、特定した複合金属酸化物、硫酸塩、及び単独金属酸化物の質量%を求め、その和を硫酸灰分とすることにより、推算精度が高く、金属種の制約が少なく、適用範囲が広い、潤滑油の硫酸灰分の推算方法を実現している。
【図面の簡単な説明】
【図1】Zn・P系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図2】Zn・P−Ca系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のCa分とZn、P、S分の関係を示すグラフである。
【図3】Zn・P−Ca系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図4】Zn・P−Mg系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のMg分とZn、P、S分の関係を示すグラフである。
【図5】Zn・P−Mg系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図6】Ca、Mo系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のCa分とMo、S分の関係を示すグラフである。
【図7】Ca、Mo系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図8】Ca分/Mo分値とMo残存率の関係を示すグラフである。
【図9】Ca、B系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図10】油中Ca分/B分値と硫酸灰中のCa分/S分値との関係を示すグラフである。
【図11】B系添加剤を含む潤滑油試料のB分と硫酸灰分(B分での値に換算)との関係を示すグラフである。
【図12】Ca分/B分値とCaに起因するB残存率の関係を示すグラフである。
【図13】Zn・P、Mo、Ca系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図14】Zn・P、B、Ca(0.231質量%)系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図15】Zn・P、B、Ca(0.0095質量%)系添加剤を含む潤滑油試料の硫酸灰のX線回折定性分析の結果を示すグラフである。
【図16】潤滑油試料のJIS法により求めた硫酸灰分と本発明方法により求めた推算硫酸灰分との関係を示すグラフである。
【図17】実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法の手順を示すフローチャートである。
【図18】図17に続く、実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法の手順を示すフローチャートである。
【図19】図18に続く、実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法の手順を示すフローチャートである。
【図20】図19に続く、実施形態例の潤滑油の硫酸灰分の推算方法の手順を示すフローチャートである。
【図21】実際の潤滑油試料のJIS法により求めた硫酸灰分と本発明方法により求めた推算硫酸灰分との関係を示すグラフである。
【図22】ICP発光分析装置の構成を示す模式図である。
【図23】分類表の例である。
【図24】実施形態例の推算装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10 実施形態例の推算装置
12 記憶装置
14 分析装置
16 演算装置
18 金属種の分類手段
20 易揮散性元素の質量%演算手段
22 複合金属酸化物質量%演算手段
24 硫酸塩質量%演算手段
26 単独金属酸化物質量%演算手段
28 硫酸灰分演算手段

Claims (8)

  1. 金属種の化学的性質に基づいて、易揮散性金属種からなる第1の族、非アルカリ金属及び非アルカリ土類金属であって、複合金属酸化物を形成する金属種からなる第2の族、アルカリ金属又はアルカリ土類金属に属し、かつ複合金属酸化物及び金属硫酸塩の少なくとも一方を形成する金属種からなる第3の族、及び、金属酸化物を形成する金属種からなる第4の族の少なくともいずれかに潤滑油中の金属種を分類した分類表を予め作成し、
    潤滑油試料の金属種及び各金属種の質量%を分析し、分析した金属種及び金属種の質量%に基づき、分類表の分類及び金属化合物を構成する元素間の化学当量関係に従って、JIS法による硫酸灰分を推算する方法であって、
    潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出する第1のステップと、
    第1のステップで得た金属種を分類表に従って第1の族、第2の族、第3の族及び第4の族のいずれかに分類する第2のステップと、
    第1の族に分類したいずれかの金属種の質量%が所定値以上であって、かつ、第3の族に分類したいずれかの金属種の質量%が所定値以上の場合には、
    第1の族の金属種の質量%に基づいて第1の族の各金属種の揮散残存質量%を求める第3のステップと、
    揮散残存質量を有する第1の族の金属種の複合金属酸化物、及び、第2の族及び第3の族の金属種の質量%に基づいて第2の族及び第3の族の金属種の各複合金属酸化物の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第4のステップと、
    第4のステップで複合金属酸化物の形成に化学当量的に過剰な第3の族の金属種の質量%に基づいて第3の族の金属種の金属硫酸塩の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第5のステップと、
    第4の族の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を元素間の化学当量関係に従って求める第6のステップと、
    第4から第6のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとする第7のステップと
    を有することを特徴とする、潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  2. 請求項1に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法において、
    第1の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値以下であって、かつ、第3の族に属するいずれかの金属種の質量%が所定値以上の場合には、
    第3のステップを省略し、第4のステップでは、第2の族及び第3の族の金属種の質量%に基づいて第2の族及び第3の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求めることを特徴とする、潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  3. 請求項1に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法において、
    第1の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値以下であって、かつ、第3の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値以下の場合には、
    第3のステップを省略し、第4のステップでは、第2の族の金属種の質量%に基づいて第2の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求め、
    のステップでは、第4の族の金属種の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を求め、
    のステップでは、第4及び第のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとすることを特徴とする、潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  4. 請求項1に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法において、
    第1の族に属するいずれかの金属種の質量%が所定値以上であって、かつ、第3の族に属するいずれの金属種の質量%も所定値以下の場合には、
    第4のステップでは、揮散残存質量を有する第1の族の金属種の複合金属酸化物、及び、第2の族の金属種の質量%に基づいて第2の族の金属種の各複合金属酸化物の質量を元素間の化学当量関係に従って求め、
    のステップでは、第4の族の金属種の質量%に基づいて第4の族の金属種の単独金属酸化物の質量%を求め、
    のステップでは、第4及び第のステップで得た質量%の和を求め、その和を潤滑油試料の硫酸灰分であるとすることを特徴とする、潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  5. 第1の族に属する金属種がMo及びBの少なくともいずれかであり、第2の族に属する金属種がZn及びPの少なくともいずれかであり、第3の族に属する金属種がCa、Mg、Ba、Na及びKの少なくともいずれかであり、第4の族に属する金属種がFe、Cu、Pb、Cr、Mn、Ni、Al、Si及びSnの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか1項に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  6. 化学当量関係に従って複合金属酸化物、金属硫酸塩、又は金属酸化物に質量%を求める際には、各金属種の金属化合物毎に予め求められている、推算係数(K)=金属化合物の分子量/金属種の原子量を使用し、金属化合物の質量%=金属の質量%×推算係数(K)から金属化合物の質量%を求めることを特徴とする請求項1からのうちのいずれか1項に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法。
  7. 請求項1からのうちのいずれか1項に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法をプログラム化し、記憶させたことを特徴とする記憶媒体。
  8. 請求項1からのうちのいずれか1項に記載の潤滑油の硫酸灰分の推算方法をプログラム化し、記憶させた記憶装置と、
    潤滑油試料に含まれている金属の金属種及び各金属種の質量%を検出し、出力する分析装置と、
    分析装置から出力された金属種及び各金属種の質量%に基づいて、記憶装置に記憶されたプログラムに従って演算する演算装置と
    を備えていることを特徴とする潤滑油の硫酸灰分の推算装置。
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