JP4111638B2 - 金コロイド粒子とその調製方法並びに金イオンの選択的捕捉方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、金コロイド粒子とその調製方法並びに金イオンの選択的捕捉方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、選鉱精錬、あるいは資源回収における金イオンの捕捉回収をはじめ、コロイドの表面プラズマ共鳴を利用しての非線形光学材料、化学反応触媒、タンパク質の染色、微小電子材料等の分野において有用な新しい金コロイド粒子とその分散液、そしてこれらの製造方法、さらには金イオンの選択的な捕捉方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
従来より、各種の金錯体化合物が写真感光剤の増感用に用いられており、また金コロイド粒子の形成についても各種方法が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の技術においては、金のコロイド粒子についてその生成や粒径等を自在に制御することは難しく、実用的観点からのコロイドの調製は困難であるのが実情であった。このため、金コロイド粒子の応用についても発展させることが難しかった。
【0004】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりの従来の技術の限界を克服し、産業的応用を展開可能とするために、その生成をはじめ、粒径等の物性の制御も可能な、新しい金コロイドとその分散液、それらの調製方法、さらには新しい金イオンの捕捉方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、第1には、環内にチオール基もしくはジスルフィド結合基を有し、さらに環構成原子の一部が硫黄原子であるチアクラウンエーテル化合物と金とによりコロイド粒子が構成されていることを特徴とする金コロイド粒子を提供し、第2には、この金コロイド粒子が水系媒体に分散されていることを特徴とする水系金コロイド分散液を提供する。
【0006】
そして、この出願の発明は、第3には、前記の金コロイド粒子の調製方法であって、チアクラウンエーテル化合物によって金イオンを捕捉するとともに光照射することを特徴とする金コロイド粒子の調製方法を提供し、第4には、前記方法において、光照射にともなって生成する金コロイド粒子を水系媒体に移行させることを特徴とする水系金コロイド粒子分散液の調製方法を提供する。
【0007】
さらにこの出願の発明は、第5には、前記の第3もしくは第4の方法によって、金イオンを捕捉することを特徴とする金イオンの選択的捕捉方法をも提供する。
【0008】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は、上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に発明の実施の形態について説明する。
【0009】
この出願の発明においては、前記のとおりの環内にチオール基もしくはジスルフィド結合基を有し、さらに環構成原子の一部が硫黄原子であるチアクラウンエーテル化合物をホスト分子としている。そして、このホスト分子としての環状化合物は、金イオンを強く取込むことができ、しかもその構造によって、異なる大きさ(粒径)の金コロイド粒子を調製することが可能とされている。
【0010】
以上のようなチアクラウンエーテル化合物は、たとえば代表的には、次式
【0011】
【化1】
Figure 0004111638
【0012】
で表わされる各種の構造のものとして例示することができる。これらの化合物は、Ag+ 選択性を発現することがこの出願の発明者らによって見出されているが、金イオン(Au3+)に対して強い捕捉力と輸送能を有し、受容相において金コロイドが生成することは知られていなかった。
【0013】
この発明のチアクラウンエーテル化合物は、上記のものに限定されることはなく、たとえばベンゼン環や、アルキレン鎖が、許容される各種の置換基によって置換されていてもよい。チアクラウンエーテル化合物の環構成原子は、その一部が硫黄原子である限り、その数に制限はない。
【0014】
そして、以上のようなチアクラウンエーテル化合物と金原子とによってこの発明の金コロイド粒子が構成されるが、この金コロイド粒子の調製は、基本的には、
(I)チアクラウンエーテル化合物による金イオンの捕捉
(II)光照射
によって可能とされる。光を当てなければコロイドはほとんど生成しないことから、光によって、金コロイドの生成そのものを制御することが可能となる。
【0015】
この金コロイドの調製方法は、原理的には、たとえば図1に例示したように、塩化金等の金化合物水溶液を水性相1に配置し、チアクラウンエーテル化合物を含有する有機相と接触させることで金イオンをホストとしてのチアクラウンエーテル化合物により捕捉して有機相に移行させ、光照射下に、この有機相を脱イオン水としての水性相2と接触させることによって実現される。有機相に移行した金イオンは、金コロイドを生成して水性相2へと移行する。光照射によって、金イオンは金へと還元されてこれが有機相から水性相2にコロイドとして移行すると考えられる。
【0016】
光照射は、たとえば蛍光灯程度の弱い光量でも充分である。
金コロイド粒子は、水系分散液として生成されることになる。
以上のようなこの発明の調製方法においては、以下のとおりの優れた作用効果が得られる。
【0017】
1)ホストとしてのチアクラウンエーテル化合物の構造を変更することで金コ
ロイドの粒径を制御することができる。
2)粒径のそろった単分数の金コロイドを調製できる。
【0018】
3)光の照射とその停止とによって、金コロイドの生成そのものを制御するこ
とができる。
そこで以下に実施例を示し、さらにこの発明の実施の形態について説明する。
【0019】
【実施例】
図2にその構成概要を示した二重円筒構造の装置を用いた。図中のaq.1は内水相を示し、aq.2は外水相を示している。ガラスセル(A)には、aq.1がガラス管(B)内で、org.(有機相)およびaq.2とともに配置されている。また、ガラスセル(A)内には攪拌子(C)が配置され、ゴム栓(D)がセプタムキャップ(E)とともに用いられている。
【0020】
内水相aq.1に0.01M AuCl3 水溶液、外水相(受容相)aq.2には純水を、有機相にはホスト化合物の1,2−ジクロロエタン溶液(2×10-4M)を用いた。
【0021】
ホスト化合物としては、次式
【0022】
【化2】
Figure 0004111638
【0023】
のものを各々用いた。蛍光灯照射下に攪拌子(C)を回転させると、いずれのホスト化合物の場合にも、Au3+を輸送し、外水相は橙色あるいは赤色に変化して、いずれの場合もチンダル現象が見られた(表1)。
【0024】
【表1】
Figure 0004111638
【0025】
また、外水相のUV−Visスペクトルにおいて、金コロイドの表面プラズマ共鳴に起因する520−580nmの吸収が観察された(図3)。さらに、動的光散乱(DLS)の測定からも微粒子の生成が支持され(表2)、透過型電子顕微鏡(TEM)から金コロイドの生成が明らかとなった(図4)。
【0026】
【表2】
Figure 0004111638
【0027】
平均粒径34.9nmの均一な単分散金コロイドの生成が確認された。
なお、光を当てない場合や、チオール基、ジスルフィド基、硫黄原子を含まないクラウンエーテルをホストとした場合には金コロイドの生成は確認されなかった。
【0028】
【発明の効果】
以上詳しく説明したように、この出願の発明によって、従来の技術の限界を克服し、産業的応用を展開可能とするために、その生成をはじめ、粒径等の物性の制御も可能な、新しい金コロイドとその分散液、それらの調製方法、さらには新しい金イオンの捕捉方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の方法を原理的に示した概要図である。
【図2】実施例を用いた装置の概要図である。
【図3】実施例において、化合物2、4、6をホストとしたときの外水相のUV−Visスペクトルを示した図である。
【図4】実施例において、得られた金コロイドのTEM写真に代わる図である。

Claims (5)

  1. 環内にチオール基もしくはジスルフィド結合基を有し、さらに環構成原子の一部が硫黄原子であるチアクラウンエーテル化合物と金とによりコロイド粒子が構成されていることを特徴とする金コロイド粒子。
  2. 請求項1の金コロイド粒子が水系媒体に分散されていることを特徴とする水系金コロイド分散液。
  3. 請求項1の金コロイド粒子の調製方法であって、チアクラウンエーテル化合物によって金イオンを捕捉するとともに光照射することを特徴とする金コロイド粒子の調製方法。
  4. 請求項3の方法において、光照射にともなって生成する金コロイド粒子を水系媒体に移行させることを特徴とする水系金コロイド粒子分散液の調製方法。
  5. 請求項3もしくは4の方法によって、金イオンを捕捉することを特徴とする金イオンの選択的捕捉方法。
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