JP4111488B2 - 人工土壌 - Google Patents

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  • Solid-Sorbent Or Filter-Aiding Compositions (AREA)
  • Soil Conditioners And Soil-Stabilizing Materials (AREA)

Description

【0001】
【産業の属する技術分野】
本発明は、パルプ工場において発生する樹皮の破砕品であるチップダストおよび古紙再生時に生ずるパルプスラッジを焼却して出る、いわゆるPS灰とを利用して、草木の生育できる土壌類似の屋上緑化などに使用できる構成物の製造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
パルプスラッジの焼却灰(以下、「PS灰」と称することもある。)は、従来、セメント製造の際に混入して使用されてきたが、含有する銅、亜鉛などの比率が高く、混合する量が限定されおり、そのために古紙の再生量そのものが制限される状況にある。
【0003】
チップダストは堆肥への混合や焼却によって処理されているが、そのものの酸性の性質故に、その処理に苦慮しているのが実情である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明によって解決しようとするのは、廃棄物として処理に窮しているPS灰およびチップダストを有効利用して屋上緑化、ガーデニングに使用できる人工土壌として、含水時に土より軽く、かつ保水能のある人工土壌を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくとも、保水能のある粒子、緩衝能力のある粒子、および植物の育成に必要な亜鉛および/または銅の溶出がわずかずつになるように固形化したパルプスラッジの焼却灰の粒子からなる微量成分の徐放と通気性のための粒子、を含有する複合系人工土壌を要旨としている。
【0006】
上記の保水能のある粒子が、吸水性樹脂で保水能を増強した粒子であり、その場合、本発明は、少なくとも、吸水性樹脂で保水能を増強した粒子からなる保水能のある粒子、緩衝能力のある粒子、および植物の育成に必要な亜鉛および/または銅の溶出がわずかずつになるように固形化したパルプスラッジの焼却灰の粒子からなる微量成分の徐放と通気性のための粒子、を含有する複合系人工土壌である。
【0007】
上記の緩衝能力のある粒子が、炭酸カルシュウムでpH緩衝能をもたせた粒子であり、その場合、本発明は、少なくとも、保水能のある粒子、より具体的には吸水性樹脂で保水能を増強した粒子からなる保水能のある粒子、炭酸カルシュウムでpH緩衝能をもたせた粒子からなる緩衝能力のある粒子、および植物の育成に必要な亜鉛および/または銅の溶出がわずかずつになるように固形化したパルプスラッジの焼却灰の粒子からなる微量成分の徐放と通気性のための粒子、を含有する複合系人工土壌である。
【0008】
さらに、チップダストを配合しており、その場合、本発明は、少なくとも、保水能のある粒子、より具体的には吸水性樹脂で保水能を増強した粒子からなる保水能のある粒子、緩衝能力のある粒子、より具体的には炭酸カルシュウムでpH緩衝能をもたせた粒子からなる緩衝能力のある粒子、および植物の育成に必要な亜鉛および/または銅の溶出がわずかずつになるように固形化したパルプスラッジの焼却灰の粒子からなる微量成分の徐放と通気性のための粒子、を含有し、さらに、チップダストを配合してなる複合系人工土壌である。
【0009】
【発明の実施の形態】
土壌の有する保水能力、緩衝能力、微量成分の徐放性、有効成分の吸着・放出能力、団粒形成による空隙保持などの機能をそれぞれに有する顆粒を特開2001−151551記載の方法に従って作成し、この顆粒を、土壌の機能を不均質な土の団粒が有する個々の性能が互いに作用し合う複合系であるとして、これに類似する性質を再現すべく、適宜混合する。これに堆肥を混合して人工土壌を構成する。
【0010】
上記公報記載の方法を説明する。4〜9%の珪酸アルミニウムを含むゲル状の4%PEG#200水分散液14〜17重量部、2%ペンタエリスリトール水溶液5〜6重量部、後述の組成よりなる樹脂液10〜29重量部を混合し、これにセリサイト、カオリン等と呼称される粘土質を単一または混合したものを40〜60重量部投入し、よく混練する。粘土質の混合比に制限はなく、必要とする色調、比重により調整する。見かけ比重はカオリン単独の方が大きくセリサイトの比率の上昇に伴い低下する。他の組成物の影響にもよるが混合物の見かけ比重は1.77〜1.06の間にある。 見かけ比重に対する影響は、樹脂液の増大は見かけ比重の増加、珪酸アルミニウム分散液の増大は見かけ比重の減少の傾向を示す。含水時の見掛け比重を1.0〜1.2の軽質な製品を得るためには、粘土質主原料(カオリン)10重量部に対しシラスバルーン0.5〜1.5重量部の割合で混合し、他の組成は各目的に応じた組成とすることで目的を達することができる。
【0011】
樹脂液の組成は、固形分27.5%のアクリル・スチレンエマルジョンを60〜64%、望ましくは62.5%、5.0〜6.0%のメチル化メラミン樹脂望ましくは5.9%、7.0〜8.0%の2−プロパノール、望ましくは7.8%を水中に分散してなる組成物である。混練を容易にするために加える水の量は、この後に続く乾燥の時間を短縮するためにできる限り少ない方が望ましいが、セリサイトの比率が増大するにつれて増え、セリサイト単独の場合には、セリサイト100重量部に対し、水49重量部にも及ぶこともある。
【0012】
混練が不充分で混合が不均一だと、製品の曲げ強度の低下を来す。スラリーはチキソトロピーがあり、型に充填したのち揺動して混入した気泡の浮上、離脱することができる。脱泡後、静置風乾し、充填量の約10%の重量減となり、固型化した時点で離型する。シリコーン離型剤は効果が薄く、型の底面に離型紙等のフィルムの使用が望ましい。離型後、一夜風乾すれば30〜40%の重量減となる。急速な乾燥は製品の反りの原因となる。風乾後は、50℃60〜90分、60℃2時間、100℃1時間の乾燥を行う。乾燥に続き110〜120℃ならば6時間、150℃ならば1〜2時間の加熱で架橋硬化する。架橋の加熱温度は110〜150℃の間で選択できる。乾燥の温度、時間は標準的なもので製品の厚み、粘土質の混合の具合で変更される。上記の触媒機能を付与する添加材料は二酸化マンガン、鉄粉、三二酸化鉄、四三酸化鉄のいずれか、または複合したものである。上記素焼板類似物の触媒能を増強するために、製品を添加する金属酸化物の金属よりもイオン化傾向の低い金属の水溶性金属塩を含浸させて、触媒能を増強することができる。
【0013】
本発明においては、土壌の有する保水能力、緩衝能力、微量成分の徐放性、有効成分の吸着・放出能力、団粒形成による空隙保持などの機能をそれぞれに有する顆粒を製造する。それぞれの性能を有する顆粒の製造方法は以下の如くである。ここにいう顆粒とは、球形に限るものではなく、集積した時に空隙のできる、小円柱、楕円体、無定形の粒などである。
【0014】
1.保水能のある粒子
a.WN−30−4
カオリン800重量部に対し、樹脂液50〜65重量部(望ましくは60重量部)、20%尿素溶液を樹脂液の1/3重量部すなわち16.7〜21.7重量部(望ましくは20重量部)、熱重合型吸水性樹脂液の1/3濃度液を110〜130重量部(望ましくは120重量部)、および成形に容易な固さとするに必要な量の水を加えて混練し、直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形して一夜風乾する。表面が乾いた状態から60℃で4時間、次いで100℃で1時間乾燥した後130℃で30分間加熱して架橋硬化する。
この粒子は、水分を吸って保水の役を果たし、若干のアンモニウム分を吸着、徐放する。
【0015】
b.WN−15−3
カオリン400重量部に対し、樹脂液45〜55重量部(望ましくは50重量部)、20%尿素溶液を11.2〜13.8重量部(望ましくは13.0重量部)、熱重合型吸水性樹脂液の1/3濃度液を25〜33重量部(望ましくは30重量部)、ヒドロキシメチル・セルローズ1.5%水溶液3〜8重量部(望ましくは5重量部)を加え、よく混練する。この混合物に成形の容易な固さとする量の水を加えて更に混練した後、WN−30−4と同様に成形、乾燥、加熱して架橋硬化して顆粒とする。
この粒子は、給水、保水能力に富み、水に浸漬すれば数週間で軟化し、徐々に崩壊する。
人工土壌の空隙率を下げ、湿潤した土壌とする際に適宜混合する目的で使用する。
【0016】
ここにいう樹脂液は特開2001−151551記載のものである。即ちその組成は、固形分27.5%のアクリル・スチレン・エマルジョンを60〜64%(望ましくは62.5%)、5.0〜6.0%(望ましくは5.9%)、7.0〜8.0%(望ましくは7.8%)の2−プロパノールを水中に分散してなる組成物である。
また、熱重合型吸水性樹脂とは、ウレタン系の水溶性樹脂溶液で固形分30%以上を含み、120℃以上で重合して吸水性樹脂を生成するものである。
【0017】
2.緩衝能力のある粒子
a.N1−44−4
カオリン400重量部に対し炭酸カルシウム末35〜45重量部(望ましくは40重量部)を混合し、これに樹脂液75〜90重量部(望ましくは80重量部)、20%尿素溶液を樹脂液の1/3重量部即ち25〜30重量部(望ましくは26.7重量部)加え成形の容易な固さとするに足る量の水を加えて混練する。この混合物をWN−30−4と同様に成形し、風乾して表面の乾いた後、60℃で4時間、次いで100℃で1時間乾燥し150℃30分間の加熱で架橋硬化する。 この粒子は人工土壌中で酸性化への緩衝作用をなし、燐酸イオンの保持、硫黄分の固定の作用をなす。
【0018】
b.N1−44−3
カオリン300重量部に対しセリサイト90〜110重量部(望ましくは100重量部)、炭酸カルシウム末35〜45重量部(望ましくは40重量部)を加えて混合する。この混合物に樹脂液70〜85重量部(望ましくは80重量部)および20%尿素溶液を樹脂液の1/3重量部、即ち23.3〜28.3重量部(望ましくは26.7重量部)加え、更に成形の容易な固さとするに足る量の水を加え混練する。混練した混合物をN1−44−4と同様に成形し、乾燥、加熱硬化する。
この粒子はN1−44−4と同じ効果を発揮するが、N1−44−4が見かけ比重1.5〜1.6であるに対しN1−44−3は見かけ比重1.2〜1.3となり全体の軽量化を計る時に混合する。
【0019】
3.微量成分の徐放と通気性のための粒子
a.N1−64−6
カオリン150重量部に対し、PS灰(含水率32%W/W)210〜230重量部(望ましくは220重量部)を加えて混合する。この混合物に樹脂液30〜50重量部(望ましくは40重量部)、20%尿素溶液を樹脂液の1/3重量部即ち10.0〜16.7重量部(望ましくは13.3重量部)加え、更に成形の容易な固さとするに足る水(通常は30重量部前後)を加えて混練する。混練した後は、N1−44−4と同様に成形、乾燥、加熱硬化する。
この粒子は、酸化珪素、酸化アルミニウムの他におよそ以下の成分を含んでいる。即ち、Fe23として1.5%、Na2Oとして0.01%、K2Oとして0.5%、CaOとして0.02%、MgOとして3.1%、TiO2として0.25%、Hgとして0.03ppm、Crとして19ppm、Pbとして11ppm、Cuとして100ppm、Znとして190ppm、Niとして37ppm、Vとして28ppm、Cdとして0.8ppm、その他には吸着水と有機物である。
水に浸漬しても崩壊せず空隙を保ち植物の必要とするCu、Zn、V、Cr、Niなどの微量成分を供給するに効果を発揮する。
【0020】
b.N1−38−3
カオリン400重量部に対しFe23粉(ベンガラ)40重量部を混合する。この混合物に樹脂液100重量部、20%尿素溶液33重量部を加え、更に成形の容易な固さとするに足る水(通常は60重量部で足りる)を加えて混練する。混練した後は、N1−44−4と同様にして成形、乾燥、加熱硬化する。この粒子はFeとして約7%含有しており、鉄を必要とする植物間の人工土壌の構成に使用する。
【0021】
c.N1−31
カオリン400重量部に対し、二酸化マンガン粉32重量部を混合する。この混合物に樹脂液100重量部、20%尿素溶液33重量部を加え、更に成形の容易な固さとするに足る水を加え混練する。混練した後はN1−44−4と同様に成形、乾燥、加熱硬化する。この粒子はMnO2を約8%含有しておいて、Mnを極めて微量ずつ溶出する。即ち水に浸漬すれば水中のMn+2濃度は2〜5ppmとなって止まるので、Mn欠乏防止のために少量づつ混合する。
【0022】
4.網目材
網目材は人工土壌の下に敷き、直接水流を経過させ、上層の人工土壌に水分を均等に上昇させる働きをする。材料としては、水不溶性の繊維を使用する。例えば硬質の合成繊維が使用できるが、チップダストは含有するリグニンが漸次浸み出し、団粒の生成を促すので適する。また、人工土壌の上面に張って人工土壌の風による飛散を防ぐには、樹脂製の網が使用できるが、柔軟性、消滅する分解性からはパーム油採取時に排出される椰子繊維が適する。以下にチップダストおよび椰子繊維による網目材の製造について記述する。
【0023】
a.チップダスト材
チップダスト(水分32%)200重量部(チップダストの量は水分の含有率により加減し、固形分の量を136重量部に調整する)に対して水160重量部を加え全体に湿潤させる。全体が湿った後に樹脂液20〜80重量部と樹脂液の1/3重量部即ち6.7〜26.7重量部の20%尿素溶液を加えチップダスト全体に付着するように混合する。樹脂液が20重量部以下となると、全体に行きわたらせることが困難となり、成形後の硬化が不均質となる。80重量部を超えて樹脂液を加えると、余分な樹脂液が成型時に底部に垂れて下部に膜を作り、水分の上昇を妨げるようになる。樹脂液の量が増大すれば、固い網目材となるが実施するには樹脂液30〜50重量部が適する。チップダスト全体に樹脂液を付着させ、縦22cm、横15cm、深さ3cmの型枠に入れ平らに均し、上から落としぶた状の蓋をして4g/cm2前後の圧力、即ちこの大きさならば1300gの重量をかけて1夜放置する。型枠よりはずし、表面が乾燥するまで風乾する。風乾後150℃、30分間加熱して硬化する。
縦22cm、横15cm、厚さ1.5〜2.0cmの板状の網目材を得る。
【0024】
b.椰子繊維材
椰子繊維を3〜5cmの長さに裁断したもの12.5重量部に水19重量部を加え繊維全体を湿らせる。これに樹脂液3〜5重量部、樹脂液量の1/3重量部の20%尿素溶液を加えて繊維全体に付着させる。これを縦22cm、横15cm、深さ3cmの型枠に入れ平らに均して、上から落としぶた状の蓋をして5〜8g/cm2前後の圧力、即ちこの大きさならば1700〜2600gの重量をかけて1夜放置する。型枠よりはずし、前出のチップダスト材に倣って処理し、縦22cm、横15cm、厚さ0.5cmの網目状の板を得る。
【0025】
5.ここに得た各粒子のうちN1−64−6、N1−44−3、WN−30−4を使用して人工土壌基材A−1を作成する。その構成は以下の通りである。
【0026】
A−1
1−64−6を300重量部、N1−44−3を100重量部、WN−30−4を400重量部、堆肥200重量部を混合し、これに水200重量部を加えてよく混練する。水を加えるのは、吸水能力のあるWN−30−4によって、堆肥中の水分が吸収されるのを補うためである。
このA−1は保水性、吸水性に優れているが、樹木のための土壌としては湿潤であるので、実際に使用する人工土壌作成に際しては、後述の実施例の如く調製して人工土壌を構成する。
このA−1の組成の概要はおおよそSiO2 29.3%、Al23 22.5%、Pとして0.003%、Sとして0.0003%、Fe23として1%、Na2Oとして0.008%、K2Oとして1%、CaOとして0.6%、MgOとして1.5%、TiO2として0.2%、Hgとして0.02ppm、Crとして9ppm、Pbとして5ppm、Cuとして50ppm、Znとして90ppm、Niとして18ppm、Vとして13ppm、Cdとして0.4ppm、その他は有機物および水分で、Mnの補充の必要があるが、土壌の構成に近い微量成分を含んでいる。ただし、植物による収奪の甚だしいN、Pについては追肥として補わなければならない。
A−1は湿潤な土壌を好む草木に適するが、植える植物の適正に応じて、これに他の基材を混合した人工土壌を構成することができる。
混合の指標を記せば以下のようになる。
【0027】
1.微量成分の調整
a.マンガン
A−1のMn含有量は極く僅かであるので、植物によっては欠乏の懼れもある。欠乏の出やすい、稲科やトマトのようななす科の植物の場合にはN1−31を加える。N1−31にはMnO2として7.5%含むから、人工土壌全体に0.1%加えればMnとして約50ppmの含有率となる。
【0028】
b.鉄
A−1中にも1%程度のFe23が存在するから、欠乏することはないと考えられるが、人工土壌の老朽化を防止する目的にはN1−38−3を10〜15%加える。これによってFe23の含有率を0.7〜1.0%増加できる。
【0029】
2.吸水性・保水能力の調製
A−1は吸水・保水の能力に富む構成となっているが人工土壌の層が厚く、水分の供給量を増大したい場合には、WN−15−3を3〜7%含む組成として、全体の層の下部1/3に充填すれば上層への水分の供給能力を増大することができる。
反対に、吸水・保水の能力を制する場合には、砂・硅砂などを加えて吸水・保水の能力を低下させることができる。この際人工土壌の厚さによって砂などの比率は変わるが、厚み25cmの場合で15〜20%W/Wが適当であり、厚みが増せば減少させる。吸水能も低下するので土壌の表面は乾燥した状況となる。
【0030】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
実施例1
A−1の276重量部に対し、堆肥100重量部、チップダスト80重量部、砂167重量部、N1−38−3を20重量部、燐酸アルミニウム末10重量部を加えて混合し人工土壌を構成する。この人工土壌を樹脂製の鉢に充填して、榊の苗木、西洋タンポポを移植する。当初この人工土壌の表面はpH5近辺である。苗木および西洋タンポポは根付き成長し始める。約2週間後には土壌表面のpHは5〜6となりpH6付近に安定する。その後は通常の鉢植えと同様に扱えば植物は成長する。
【0032】
実施例2
直径7.7cm、高さ10cmの樹脂製円筒の底部に厚さ2cmのチップダスト材を置き、その上にA−1を252g充填する。これを底が波状に突起した皿に立て、円筒の下部1cmが常に水に浸かる状態とする。水は底部より上昇して表面のpHは6〜7となる。この表面にレモンバウムの種子を播けば、7月ならば一日で発芽し成長を始める。
状況に応じて10日に1度位KH2PO4およびNH4SO4の各1%液を各1〜2ml追肥として与えれば成長は促進される。A−1のみで人工土壌とした場合は6ヶ月を経ると表面から少しずつ人工土壌は固くなってくる。これを防ぐには、A−1の237gに対しチップダスト10gの割合で混合すれば柔軟な土壌を保つことができる。
この方法によれば皿の水位を保って置けば、上部より撒水の必要はない。
【0033】
実施例3
市販の樹脂製プランター(内容量13cm×36cm、深さ11cm)の底部の目皿の上1cmの水位を保つように排水口を設け、また底部への給水口を付ける。このプランターの目皿の上に厚さ2cmのチップダスト材を敷く。その上にA−1を300g、堆肥50g、チップダスト30g、N1−31を10g、N1−64−6を200g混合した人工土壌を敷きつめて下層とする。この上にA−1を1500g、N1−64−6を500g混合した人工土壌を敷きつめ上層とし、二層構造の土壌を構成する。
このプランターに水を張れば底のチップダスト材を通して水分が上昇してくる。内部の水面がチップダスト材の面より低くなっても、水溜からの水蒸気が上昇し土壌の湿度を保持する。この土壌の表面のpHは初め5〜6であるが、3〜4日でpH6〜7に安定する。
このプランターに8月に白茎三つ葉の種子を播けば、13日位を経て発芽し成長が始まる。成長に応じて実施例2と同様に追肥すれば成長は促進される。
発芽から10日程で第2葉が出るが、その後は順調な生育を続ける。上部からの撒水の必要はない。根は普通の畑土に栽培した時と同様な張り方をする。
【0034】
実施例4
実施例3と同一のプランター2ヶに一方は実施例3と同じ組成および構成として、これをAとする。他方には下層にA−1を増し、上層にN1−64−6を減らした組成、即ち下層にはA−1を400g、堆肥50g、チップダスト30g、N1−31を10g、N1−64−6を200gで混合して敷きつめる。上層にはA−1を1500g、N1−64−6を400g混合した人工土壌を敷いた構成としてBとする。どちらも底にはチップダスト材を敷くものである。
この二つのプランターに、10月に「しゅんぎく」の種子を播けばA、Bともに6日程で発芽して成長する。発芽および初期の成長にはA、B間の差はない。実施例3と同様の追肥をすれば成長を続ける。2ヶ月を過ぎ、冬期に入り温室中でなお成長させると、Aは上方に伸びて蕾を持ち開花に到るが、BはAに比べ伸びが少なく横に拡がり蕾を持ち開花に到る。根の張り方に差は見られない。
【0035】
実施例5
A−1を1100g、N1−38−3を100g、チップダスト127g、N1−31を70g混合し、これに2%デキストリン溶液85gを加えてよく混練して、底にチップダスト材を敷いた鉢に充填する。これに榊の苗木を移植すれば根付いて生育する。この時根を深く張らない雑草を同時に植えると根は付くが成長しない。
この人工土壌は1ヶ月を経過すると、表面だけが固まり内部は軟らかい。このために根付いた雑草および発芽した雑草は成長しないと考えられる。
【0036】
実施例6
縦22cm、横15cm、高さ10cmの型枠の中にチップダスト材を入れて底板とする。これにA−1を1929gとチップダスト47g、2%デキストリン溶液215gを加えてよく混合したものを充填する。この上面に厚さ0.5cmの椰子繊維材を載せて圧着し、上から落としぶた形式の蓋をして5〜10g/cm2程の重みをかけて5時間放置する。蓋を取り、枠を外し、側面が乾くのを待って、側面にアクリル・スチレン樹脂エマルジョンを塗布して乾燥すれば植生床のブロックができる。このものの見掛比重は0.7〜0.8最大吸水時の見掛比重は1.05〜1.25となる。
このブロックは底部のチップダスト材を通して水分を吸い上げるので、土壌の厚さ7cmの場合、常に上面が湿った状態にあり水分を多く供給する必要のある植物の植栽に適する。本実施例の場合、「玉竜」を植え生育した。
このブロック上面の繊維は屋外で2〜3年で腐植化し土壌と同一の状態となるが、この時には表面は安定固定して風によって飛散しない。
【0037】
【発明の効果】
本発明は、化粧品などの規格外のカオリンやセリサイト、それに紙パルプ工場より廃棄物として排出されるPS灰、チップダストを原料として、特許第3226485号、特開2001−151551の技術を活用して人工土壌を提供しようというものであり、従来、その処分に苦慮してきた物質を組み合わせて成分の過不足を相補って有用な組成物として活用するものである。
この人工土壌は真比重1.3〜1.9と軽く、水分33%の時の見掛比重は0.7〜0.9となる。
実用に供されるであろう実施例6のブロックの場合には、水分33%の時の見掛比重は0.7〜0.9であり、充分に水を吸収した場合でも1.0〜1.3と軽い。これは土の気相の50%に水が入った時の比重といわれる1.5に対しその67〜87%に当たり、水分33%時の場合は47〜53%に当たる。
このことは屋上緑化の際の土壌重量を軽減し床面の負担を著しく軽減する。
人工土壌の各構成粒子は樹脂液によって固着してあるので土壌の微量成分の溶出は極めて僅かずつとなる。このため廃棄する場合にも別段の考慮を必要としない。

Claims (2)

  1. 少なくとも、記ア)およびイ)から選ばれる保水能のある粒子、下記ウ)およびエ)から選ばれる緩衝能力のある粒子、および下記オ)、カ)およびキ)から選ばれる植物の育成に必要な亜鉛および/または銅の溶出がわずかずつになるように固形化したパルプスラッジの焼却灰の粒子からなる微量成分の徐放と通気性のための粒子、を含有する複合系人工土壌。
    ア)カオリン800重量部に対し、樹脂液50〜65重量部、20%尿素溶液を16.7〜21.7重量部、熱重合型吸水性樹脂液の1/3濃度液を110〜130重量部、および成形に容易な固さとするに必要な量の水を加えて混練し、直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形して一夜風乾する。表面が乾いた状態から60℃で4時間、次いで100℃で1時間乾燥した後130℃で30分間加熱して架橋硬化する。
    イ)カオリン400重量部に対し、樹脂液45〜55重量部、20%尿素溶液を11.2〜13.8重量部、熱重合型吸水性樹脂液の1/3濃度液を25〜33重量部、ヒドロキシメチル・セルローズ1.5%水溶液3〜8重量部を加え、よく混練する。この混合物に成形の容易な固さとする量の水を加えて更に混練した後、直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形、乾燥、加熱して架橋硬化して顆粒とする。
    ウ)カオリン400重量部に対し炭酸カルシウム末35〜45重量部を混合し、これに樹脂液75〜90重量部、20%尿素溶液を樹脂液の1/3重量部即ち25〜30重量部加え成形の容易な固さとするに足る量の水を加えて混練する。この混合物を直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形し、風乾して表面の乾いた後、60℃で4時間、次いで100℃で1時間乾燥し150℃30分間の加熱で架橋硬化する。
    エ)カオリン300重量部に対しセリサイト90〜110重量部、炭酸カルシウム末35〜45重量部を加えて混合する。この混合物に樹脂液70〜85重量部および20%尿素溶液を23.3〜28.3重量部加え、更に成形の容易な固さとするに足る量の水を加え混練する。混練した混合物を直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形し、乾燥、加熱硬化する。
    オ)カオリン150重量部に対し、PS灰(含水率32%W/W)210〜230重量部を加えて混合する。この混合物に樹脂液30〜50重量部、20%尿素溶液を10.0〜16.7重量部加え、更に成形の容易な固さとするに足る水を加えて混練する。混練した後は、直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形、乾燥、加熱硬化する。
    カ)カオリン400重量部に対しFe23粉(ベンガラ)40重量部を混合する。この混合物に樹脂液100重量部、20%尿素溶液33重量部を加え、更に成形の容易な固さとするに足る水を加えて混練する。混練した後は、直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形、乾燥、加熱硬化する。
    キ)カオリン400重量部に対し、二酸化マンガン粉32重量部を混合する。この混合物に樹脂液100重量部、20%尿素溶液33重量部を加え、更に成形の容易な固さとするに足る水を加え混練する。混練した後は直径2〜4mm、長さ2〜5mmの円柱に成形、乾燥、加熱硬化する。
    ただし、上記のア)ないしキ)にいう樹脂液は、その組成は、固形分27.5%のアクリル・スチレン・エマルジョンを60〜64%、5.0〜6.0%のメチル化メラミン樹脂、7.0〜8.0%の2−プロパノールを水中に分散してなる組成物であり、熱重合型吸水性樹脂は、ウレタン系の水溶性樹脂溶液で固形分30%以上を含み、120℃以上で重合して吸水性樹脂を生成するものである。
  2. さらに、チップダストを配合した請求項の複合系人工土壌。
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