JP4111253B2 - 回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に電子部品のパワーモジュールに好適な高信頼性の回路基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ロボットやモーター等の産業機器の高性能化に伴い、大電力・高能率インバーター等パワーモジュールの変遷が進んでおり、半導体素子から発生する熱も増加の一途をたどっている。この熱を効率よく放散させるため、パワーモジュール基板では従来より様々な方法が取られてきた。特に最近、良好な熱伝導を有するセラミックス基板が利用できるようになったため、その基板上に銅板等の金属板を接合し、回路を形成後、そのままあるいはNiメッキ等の処理を施してから半導体素子を実装する構造も採用されている。
【0003】
このようなモジュールは、当初、簡単な工作機械に使用されてきたが、ここ数年、溶接機、電車の駆動部、電気自動車に使用されるようになり、より厳しい環境下における耐久性と更なる小型化が要求されるようになってきた。そこで、セラミックス基板に対しても、電流密度を上げるための金属回路厚の増加、熱衝撃等に対する耐久性の向上が要求され、セラミックス焼結体の新たな製造研究により対応している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来、汎用されている回路基板は、アルミナ基板又は窒化アルミニウム基板に銅回路を形成させてなるものであるが、更なるヒートサイクルに対する信頼性を向上させるため、最近では窒化アルミニウム基板にアルミニウム回路を形成させたものも開発されている。
【0005】
このような回路基板の問題点は、セラミックス基板と金属板の接合時における加熱冷却ないしは使用時の冷熱サイクルによって熱応力が発生し、セラミックス基板にクラックが発生したり、金属板が剥離したりして、耐ヒートサイクルに対する信頼性が十分でないということである。これを解消するため、従来より多くの提案がなされている。例えば、表面の金属板の厚みを裏面のそれよりも厚くする(特開平4−198070号公報)、金属板端部を薄肉形状とする(特公平5−25397号公報)、金属板とセラミックス基板の接合部に非接合部を形成する(実開平2−1408700号公報)、金属板外周縁部に溝又は孔を形成する(特開平8−250823号公報、特開平8−274423号公報)などである。
【0006】
このような提案によって、回路基板の信頼性はかなり高められたが、電車の駆動部や電気自動車等のパワーモジュールのように、超高信頼性の要求される分野においてはまだ不十分である。本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、熱履歴を受けても強度劣化の少ない高信頼性の回路基板を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、セラミックス基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が設けられてなるものであって、350℃空気中で5分間加熱した後の抗折強度が25kgf/mm2 以上、同じくJIS B 0621に従う平面度が150μm以下であることを特徴とする回路基板である。更に、本発明は、金属回路に対する金属放熱板の体積率が70〜115%であって、それらは活性金属成分を含むろう材によってセラミックス基板に接合されており、セラミックス基板の材質が窒化アルミニウム又は窒化ケイ素、金属回路及び/又は金属放熱板の材質がアルミニウム、アルミニウム合金及び/又はそれらの少なくとも一つを構成材とするクラッド材であることを特徴とする上記回路基板である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0009】
回路基板は、モジュールを組み立てる際に、Siチップ、ベース銅板の半田付け、シリコーンゲル、エポキシ樹脂の硬化等によって、4〜5回程度の熱履歴を受ける。熱処理の温度は、使用する半田の種類及び前工程で使用された半田が溶融しないように調整され、最高で350℃程度となる。この熱処理は、回路基板の抗折強度を劣化させる。
【0010】
すなわち、回路基板の金属板には、金属板とセラミックス基板の熱膨張率の違いにより、その接合時の熱応力が蓄積されているが、これに更にモジュール組立時の上記熱処理が加わると残留応力が増加し、セラミックス基板にクラックが生じたり、モジュールを放熱フィン等にボルト締めする際に割れたりすることがあった。このような残留応力は、回路パターンの周囲に集中するため、その周囲形状に工夫を凝らし、できるだけそれを分散させるべく上記提案がなされている。しかしながら、いずれの方法においても、ヒートサイクルに対する耐水平クラック性の改善効果が認められるが、その反面、抗折強度が劣化し、絶縁不良が発生する問題があった。
【0011】
この強度劣化の原因について追求したところ、金属板の残留応力の増加に伴い、回路基板に反りやネジレが発生していることであり、これを抑制するためには、回路パターンの形状や厚みに合わせて放熱板の体積を調整することであることを見いだした。すなわち、金属板及び金属放熱板として、アルミニウム材、アルミニウム合金材、及び/又はアルミニウムもしくはアルミニウム合金を構成材とするクラッド材を用い、しかも金属放熱板の体積を金属回路の体積の70〜115%とすることによって、アルミニウムの応力緩和作用が顕著となり、超高信頼性の回路基板となることを見いだしたものである。
【0012】
本発明の回路基板は、350℃の空気中で5分間加熱(以下、この加熱を「通炉」という。)した後の抗折強度が25kgf/mm2 以上であり、しかも通炉後のJIS B 0621に従う平面度が150μm以下である。平面度が150μmを越えると金属回路に応力集中が起こり、また抗折強度が25kgf/mm2 未満では絶縁不良が発生しやすくなり、超高信頼性回路基板とはいえなくなる。
【0013】
本発明において、金属回路の体積に対する金属放熱板の体積の割合が70%未満では通炉後の平面度が−150μmを越えてしまい、また115%以上であると+150μmを越えてしまう。ここで、平面度の「+」は金属回路面が凸、「−」は凹になることである。このような体積割合の調整は、放熱金属板の形状がベタパターンであることが好ましいので、通常は金属回路と金属放熱板の厚みを調整して行われるが、金属回路と金属放熱板の周囲に凹凸、溝、窪み、貫通孔等を設けて調整することもできる。
【0014】
本発明で使用されるセラミックス基板の材質は、窒化ケイ素又は窒化アルミニウムが一般的であるが、パワーモジュールには窒化アルミニウムが適している。セラミックス基板の厚みについては、薄すぎると耐久性がなくなるため0.5mm以上特に1mm以上が好ましい。その上限は、3mmであり、それを越えると熱抵抗が増加し放熱特性が低下する。
【0015】
セラミックス基板の表面性状は重要であり、微少な欠陥や窪み等は、金属回路、金属放熱板あるいはそれらの前駆体である金属板をセラミックス基板に接合する際に悪影響を与えるため、平滑であることが望ましい。
【0016】
金属回路及び金属放熱板を形成する金属板の材質は、アルミニウム材、アルミニウム合金材、アルミニウムないしはアミニウム合金を構成材とするクラッド材である。クラッド材の相手材は、銅、ニッケル、チタン、クロム等であり、二層又は三層以上のクラッド材として使用される。クラッド材の場合は、アルミニウムないしはアミニウム合金側をセラミックス側に接合する。金属回路及び金属放熱板の厚みは、100〜700μmが好ましい。
【0017】
セラミックス基板に金属回路及び金属放熱板を形成する方法としては、セラミックス基板と金属板との接合体をエッチングする方法、あるいは、あらかじめ打ち抜かれた回路及び/又は放熱板のパターンをセラミックス基板に接合する方法等によって行うことができる。
【0018】
金属板とセラミックス基板を接合するには、活性金属ろう付け法が使用される。本発明においては、アルミニウム又はアルミニウム合金とセラミックス基板との接合となるので、ろう材は例えば特開昭60−177634号公報に記載されているように、アルミニウムとシリコンを主成分とし、これに活性金属を添加したものが使用される。活性金属は、セラミックス基板と反応して酸化物や窒化物を生成し、ろう材とセラミックス基板との結合を強固なものにする。活性金属の具体例をあげれば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、マグネシウムやこれらの化合物である。
【0019】
本発明におけるこれらの比率としては、アルミニウム70〜95重量部、シリコン30〜5重量部及び銅0〜5重量部の合計100重量部あたり、活性金属1〜30重量部である。
【0020】
接合温度は、600〜640℃が好ましく、またその温度における保持時間は3〜30分が望ましい。温度が低く、保持時間が短すぎる場合は、接合が不十分となり、逆に高温で保持時間が長すぎると、金属板へのろう材成分の拡散が顕著となって金属板が固くなり、耐ヒートサイクル性が低下する。
【0021】
【実施例】
以下、本発明を実施例と比較例をあげて具体的に説明する。
【0022】
実施例1〜6 比較例1〜2
重量割合で、Al粉86部、Si粉10部、Cu粉4部、TiH2 粉20部にテルピネオール15部を配合し、ポリイソブチルメタアクリレートのトルエン溶液を加えて混練し、ろう材ペーストを調製した。これを窒化アルミニウム基板(サイズ:50mm×30mm×0.65mm、曲げ強さ:40kgf/mm2 、熱伝導率:135W/mK)の両面にスクリーン印刷によって回路パターン状に塗布した。その際の塗布量(乾燥後)は3mg/cm2 とした。
【0023】
次に、金属回路形成面と金属放熱板形成面に50mm×30mmの広さで表1に示される厚みと材質の金属板を接触配置してから、真空度0.1Torr以下の真空下で630℃×15分加熱した後、300℃まで急冷し、その後、2℃/分の降温速度で冷却して接合体を作製した。次いで、エッチングレジストを塗布し、塩化第2鉄溶液でエッチングした後、Ni−Pメッキを3μm施し回路基板とした。金属回路部分の平面形状は、二つのL字型パターンを互い違いに組合せた形状(平面パターン率68%)であり、金属放熱板のそれはベタ形状(平面パターン率90%)である。
【0024】
比較例3
表1に示す銅板を接触配置し、接合したこと以外は実施例1と同様にして回路基板を製造した。この比較例で用いたろう材ペーストは、Ag粉90部、Cu粉10部、TiH2 粉3部、Zr粉3部にテルピネオール15部を配合し、ポリイソブチルメタアクリレートのトルエン溶液を加えて混練した調製されたものであり、その塗布量(乾燥後)は9mg/cm2 とした。また、接合条件は830℃×30分とした。
【0025】
これら一連の同一条件で製作された複数の回路基板について、通炉前後にJIS B 0621に従う平面度をダイヤルゲ−ジを用いて測定した。また、JIS R 1601に従う抗折強度(3点曲げ強さ、条件:スパン30mm、クロスヘッド速度0.5mm/min)を測定した。それらの試料数5個の平均値を表1に示す。なお、通炉は、350℃の空気中、ホットプレート上に回路基板を5分間載置することによって行った。
【0026】
更に、気中で、−40℃×30分保持後、25℃×10分間放置し、125℃×30分保持後、25℃×10分間放置を1サイクルとするヒートサイクル試験を行い、金属回路又は金属放熱板が剥離するサイクル数を測定した。それらの結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【発明の効果】
本発明によれば、熱履歴を受けても強度劣化の少ない高信頼性の回路基板が提供される。
Claims (1)
- セラミックス基板の一方の面に金属回路、他方の面に金属放熱板が設けられてなるものであって、金属回路に対する金属放熱板の体積率が70〜115%で、それらは活性金属成分を含むろう材によってセラミックス基板に接合されており、セラミックス基板の材質が窒化アルミニウム、金属回路及び金属放熱板の材質がアルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一つを構成材とするクラッド材であることを特徴とし、350℃空気中で5分間加熱した後の抗折強度が25kgf/mm2 以上、同じくJIS B 0621に従う平面度が150μm以下である回路基板。
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JP05048098A JP4111253B2 (ja) | 1998-03-03 | 1998-03-03 | 回路基板 |
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1998
- 1998-03-03 JP JP05048098A patent/JP4111253B2/ja not_active Expired - Lifetime
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